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JP2011037811A - 脂肪低減用組成物 - Google Patents

脂肪低減用組成物 Download PDF

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JP2011037811A JP2009199154A JP2009199154A JP2011037811A JP 2011037811 A JP2011037811 A JP 2011037811A JP 2009199154 A JP2009199154 A JP 2009199154A JP 2009199154 A JP2009199154 A JP 2009199154A JP 2011037811 A JP2011037811 A JP 2011037811A
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Hiroshi Onoki
宏 大野木
Shigetoshi Mizutani
滋利 水谷
Sachiko Hayamizu
▲祥▼子 速水
Yoko Kudo
庸子 工藤
Takeshi Sakai
武 酒井
Fumitsugu Hino
文嗣 日野
Ikunoshin Kato
郁之進 加藤
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Takara Bio Inc
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Abstract

【課題】トゲドコロ及び/又は明日葉の新規な用途を提供すること。
【解決手段】トゲドコロ由来物質及び/又は明日葉由来物質を有効成分として含むことを特徴とする体内脂肪低減用組成物を提供する。トゲドコロ由来物質としては、トゲドコロの処理物が使用される。また、明日葉由来物質としては、カルコン含有物が使用される。前記の体内脂肪低減用組成物は、生体内において脂質代謝に関与する酵素群の遺伝子の発現を向上させる作用を示すことから、肥満防止、脂質代謝に関連する各種の疾患の治療、予防に有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は体内脂肪低減用組成物に関し、本発明の体内脂肪低減用組成物を摂取すると、内臓脂肪等の蓄積を解消して、成人病の原因ともいわれている内臓脂肪型肥満等を防止することができる。
近年、わが国では食生活が豊かになり、動脈硬化や糖尿病のような成人病が急増している。これらの原因としては、加齢によって基礎代謝量が減少しているにも拘わらず、脂肪や糖類を過剰摂取し、さらには運動不足の要因も重なり、肥満体型になることが指摘されている。特に、内臓に脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満は、皮下に脂肪が蓄積する皮下脂肪型肥満と比べて、成人病にかかる危険が極めて高く、成人病の予防のためには内臓脂肪型肥満を防止することが重要であるとされている。かかる点から、内臓脂肪等の蓄積を解消する物質や剤の開発が求められているが、未だその目的を充分に達成できていないのが実情である。
トゲドコロは、古来より滋養強壮効果があること、抗疲労効果や筋肉増強効果があること、またトゲドコロから得られるグルコマンナンには血清及び肝臓の脂質低下作用があることが知られている(非特許文献1)。
グルコマンナンの作用機作は食べたものを胃で包み込み消化吸収を抑制する機作であり、またその物性は高い水膨潤性を有し使用方法に制限のあるものである。また、ジオスゲニン含量が高いことに着目したトゲドコロの用途開発も行われている(特許文献1)。
また、明日葉は、さまざまな健康促進効果があることが知られており、明日葉由来のカルコンにはコレステロール生合成系の律速酵素である3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害作用があり、高脂血症の予防等に有効であることが知られている(特許文献2)。
特開2007−27985号公報 国際公開第2005/074906号パンフレット
Br.J.Nutr.(ブリティシュ ジャーナル オブ ニュートリーション)、2006年、第96巻、第1021〜1029頁
しかしながら、これまでのトゲドコロや明日葉に関する研究、用途開発は十分なものではない。これまでに知られていなかったトゲドコロや明日葉の機能を明らかにし、利用を図っていくことが望まれている。
上記のような状況下に、本発明者らは、トゲドコロに含有されている、水に不溶性で機能性素材として使用し難い食物繊維以外の成分に関して鋭意研究を重ね、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]トゲドコロ由来物質及び/又は明日葉由来物質を有効成分として含むことを特徴とする体内脂肪低減用組成物、
[2]トゲドコロ由来物質がトゲドコロ処理物である[1]の体内脂肪低減用組成物、
[3]トゲドコロ処理物が加熱処理されたトゲドコロの粉末である[2]の体内脂肪低減用組成物、
[4]トゲドコロ処理物が脂溶性トゲドコロ由来物質を含有する抽出物である[2]記載の体内脂肪低減用組成物、
[5]トゲドコロ処理物が加熱処理されたトゲドコロから含水エタノール抽出された抽出物である[4]の体内脂肪低減用組成物、
[6]トゲドコロ由来物質が、ジオスゲニン配糖体である[1]の体内脂肪低減用組成物、
[7]明日葉由来物質がカルコン含有物である[1]の体内脂肪低減用組成物、
[8][1]〜[7]いずれかの体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする食品、
[9][1]〜[7]いずれかの体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする飼料、
[10][1]〜[7]いずれかの体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする生物飼育用剤、
[11][1]〜[7]いずれかの体内脂肪低減用組成物を生物に投与することを特徴とする生物の飼育方法、及び
[12]トゲドコロ由来物質及び明日葉由来物質を含む組成物、
に関する。
本発明の体内脂肪低減用組成物を摂取することにより、脂質代謝に関与する酵素群の遺伝子発現が向上し、この結果として生物個体において体内の脂肪が減少する。本発明の体内脂肪低減用組成物は、運動負荷のない状態で良く作用する点において著効を有する。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明において使用されるトゲドコロ(学名Dioscorea esculenta)とは、クーガイモとも呼ばれる主に九州以南で栽培されているヤムイモの一種である。
本発明の組成物には、トゲドコロのいずれの部位を使用してもよく、特に限定はないが、特に好適には根茎(いわゆるイモ)の使用が好ましい。
本発明において使用される明日葉(学名Angelica keiskei)とは、八丈芹とも呼ばれる主に太平洋岸に自生する日本固有のセリ科の大型多年草である。本発明の組成物には、明日葉のいずれの部位に由来する物質を使用してもよく、果実、種子、種皮、花、葉、茎、根、根茎及び/又は植物全体に由来する物質が使用でき、葉及び茎に由来する物質が好適に使用できる。
本発明の好適な態様においては、トゲドコロ由来物質としてトゲドコロの処理物が使用される。また、明日葉由来物質として明日葉の処理物が使用される。処理物には特に限定はないが、例えば、原料のトゲドコロや明日葉に対し何らかの加工を施したものであればよく、磨砕物、乾燥粉末、粉砕物、搾汁液、破砕物、抽出物が例示される。
本発明において磨砕物とは、植物体を摩り下ろしたもののことをいい、通常は種々の自動すり機を使用するか、もしくは手作業により摩り下ろして調製する。
本発明において粉砕物、破砕物とは、例えば、植物体を裁断したものや、乾燥させた後に砕いたもののことを指し、一般には粒径の大きいものを破砕物と称し、粒径の小さいものを粉砕物と称す。また、本発明において、乾燥粉末とは、前記の粉砕物、破砕物よりもさらに粒径が小さなもののことを指し、このような乾燥粉末の製造方法としては、例えばトゲドコロの根茎を乾燥させ、粉砕機を使用して粉砕することで粉状のトゲドコロ由来の乾燥粉砕物を得る方法が挙げられる。また、例えば国際公開第2004/112817号パンフレットに記載されるように、含水エタノールにより抽出した明日葉抽出物を乾燥させ、さらに粉砕機を使用して粉砕することで、明日葉カルコンを含有するアシタバ抽出物の乾燥粉末を得ることができる。また、凍結粉砕や、凍結乾燥後粉砕することにより乾燥粉末を得てもよい。
破砕物とは、原料植物を砕き壊したものであり、一般には粉砕物よりも組織片が大きく、例えば、破砕機を使用することにより製造することができる。搾汁液は、公知の植物の搾汁方法により調製することができる。得られた搾汁液はそのまま、あるいは賦形剤の添加、スプレードライ、凍結乾燥等の手段で固形化して使用することができる。
本発明の態様の一つとして、根茎を乾燥させた後、加熱処理を行って粘性物質を不溶化させた処理物を含有する組成物が例示される。加熱処理は50℃以上、好ましくは60〜150℃の温度条件で数秒〜1日、好ましくは5〜12時間の範囲で実施される。加熱処理は乾式加熱処理、例えば温風処理、焙煎処理、焙炒処理、遠赤外線処理が好ましい。当該加熱処理により、医薬製造や飲食品製造時における取扱いの障害となる粘性物質が不溶化される。
抽出物とは原料植物に対し抽出溶媒を用いて抽出操作を行う工程を経て得られる物質そのもののことをいう。抽出は、公知の抽出方法により以下のように行うことができる。例えば原料を粉砕もしくは裁断した後、溶媒を用いてバッチ式もしくは連続式で行うことができる。前記の、加熱処理物を抽出に供してもよい。抽出物を得る際の抽出溶媒としては、特に限定はないが、水、クロロホルム、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等の親水性もしくは親油性の溶媒を挙げることができ、所望により単独で、もしくは適宜混合液として用いることができる。混合液を抽出溶媒として用いる例としては、特に限定はないが、例えば各種水溶液を用いることができ、例えば10〜95%、好適には15〜90%、さらに好適には20〜85%のアルコール水溶液を使用することができる。
抽出溶媒の量は適宜決定すればよいが、通常、原料植物に対し、使用時の原料植物の形態そのまま(例えば原料植物が生の植物であれば生の植物)の重量の、好ましくは2〜100倍量の抽出溶媒を使用すれば良い。抽出温度も適宜、目的に応じて決定すれば良いが、水抽出の場合は通常、好ましくは4〜130℃、より好ましくは25〜100℃である。また、溶媒中にエタノールが含まれる場合は安全性の観点から4〜60℃の範囲が好適である。抽出時間も、抽出効率を考慮し決定すればよいが、通常、好ましくは数秒〜数日間、より好ましくは5分〜24時間の範囲となるように、原料、抽出溶媒、抽出温度を設定するのが好適である。抽出操作は、たとえば、攪拌しながら又は静置して行えばよく、また、必要に応じて数回繰り返してもよい。
抽出物は溶媒に溶解した溶液のまま、濃縮液もしくは固形化物として本発明に使用することができる。濃縮、固形化には公知の手段が使用できる。
以上の操作により調製された抽出物に対して、必要に応じてろ過、遠心分離、濃縮、限外ろ過、分子ふるい等の処理を施すことで、体内脂肪低減作用を有する有効成分が濃縮された処理物を調製することができる。また、原料植物から異なった抽出法で得られた抽出物を2種以上含有させて本発明の組成物とすることもできる。
特に本発明を限定するものではないが、本発明の組成物の有効成分としてはトゲドコロ由来の脂溶性物質が例示される。当該脂溶性物質としては、トゲドコロ根茎加熱処理物の60%(v/v)含水エタノール抽出物が挙げられる。この抽出物と同等の効果を有する脂溶性物質は本発明の有効成分として使用でき、この抽出物と同等の効果を有する脂溶性物質の使用は本願発明に包含される。なお当業者であれば本願の開示から容易に当該脂溶性物質を製造できる。
また、特に本発明を限定するものではないが、本発明の有効成分としてはカルコンを含有する明日葉に由来する物質が挙げられる。当該物質としては、明日葉の55%(v/v)含水エタノール抽出物やその乾燥粉末が挙げられる。
本発明の組成物は、上記のトゲドコロ処理物及び/又は明日葉処理物を摂取可能な形状と成すことにより作製することができる。トゲドコロ処理物又は明日葉処理物はそれぞれ単独で使用してもよく、トゲドコロ処理物と明日葉処理物とを組み合わせて使用してもよく、他の複数の種類の処理物を組み合わせて使用してもよい。トゲドコロ由来物質の体内脂肪低減効果と明日葉由来物質の体内脂肪低減効果とは相乗効果を示すため、トゲドコロ由来物質及び明日葉由来物質を含む組成物は本発明の好ましい態様の一つである。本発明の組成物は、好ましくは経口での摂取が可能な形状とされる。その製造にあたっては、固形状、液状の適当な担体、好ましくは薬学的に許容される担体と混合し、加工すればよい。さらに、体内脂肪減少作用やその他の生理作用を有する他の成分を添加することもできる。その形状には、特に限定はなく、固形状(粉末状、顆粒状の組成物を包含する)、液状のいずれであってもよい。前記組成物は公知の加工方法により、任意の形状で製造することができる。本発明を特に限定するものではないが、例えば、トゲドコロの処理物及び/又は明日葉の処理物を公知の方法で造粒して粒状の固形物として使用することができる。造粒方法としては、特に限定はないが、転動造粒、攪拌造粒、流動層造粒、気流造粒、押出し造粒、圧縮成型造粒、解砕造粒、噴射造粒又は噴霧造粒等が例示される。粉状の当該処理物を液体、例えば水やアルコール等に溶解又は懸濁して液状とし、本発明の組成物として使用することもできる。さらに、タブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取が容易な形状物としてもよい。
また、本発明の組成物は、体脂肪や内臓脂肪の低減効果、及び/又は脂質代謝の改善効果が知られている物質をさらに含有してもよい。例えば、
(A)トゲドコロ由来物質及び/又は明日葉由来物質、並びに
(B)アスタキサンチン、エルカンプーレ、カツオペプチド、ガルシニア、カワラケツメイ、柑橘系フルーツエキス、キウイ果皮抽出物、キノコキトサン、共役リノール酸、黒大豆種皮抽出物、桑葉、ケツメイシ、コタラヒム、米ケフィラン、コレウスフォルスコリ、シッサスクアドラングラリス、ジャガイモ抽出物、植物ステロール、植物油脂乳化物(ファビュレス)、タマネギケルセチン、チアシード、ツルアラメ抽出物、DHA結合リン脂質、ニーム、フェヌグリーク(コロハ)、ブドウレスベラトロール、ポリコサノール、マイタケ抽出物(グリスリン)、マカエキス、マンゴージンジャー、及びリン脂質からなる群より選択された少なくとも1種の物質を含有する組成物も本発明の態様の一つである。
また、本発明は、本発明の処理物を含有する食品を提供する。ここで、「含有」とは、含有、添加及び/又は希釈を意味する。前記「含有」とは食品中に本発明で使用される有効成分が含まれるという態様を、前記「添加」とは食品の原料に、本発明で使用される有効成分を添加するという態様を、前記「希釈」とは本発明で使用される有効成分に、食品の原料を添加するという態様をいうものである。当該食品も本発明の組成物に包含される。
本発明の処理物を含有する食品の製造法に特に限定はない。例えば、配合、調理、加工等は一般の食品のものに従えばよく、それらの製造法により製造することができ、得られた食品に前述の本発明の組成物が含有されていればよい。前記食品の種類にも特に限定はなく、例えば、本発明に係る前記有効成分が含有されてなる、穀物加工品、油脂加工品、大豆加工品、食肉加工品、水産製品、乳製品、野菜・果実加工品、菓子類、アルコール飲料、嗜好飲料、調味料、香辛料などの農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品などが挙げられる。前記食品は液体形状であってもよい。すなわち、前記の食品は飲料を包含する。
本発明の他の態様として、トゲドコロ由来の体内脂肪低減作用を有する有効成分及び/又は明日葉由来の体内脂肪低減作用を有する有効成分を含有させたアルコール飲料が挙げられる。当該アルコール飲料はトゲドコロ及び/又は明日葉を飲用に適するエタノールもしくは含水エタノールに浸漬して製造することができる。トゲドコロや明日葉はそのまま、もしくは磨砕物、乾燥粉末、粉砕物、破砕物等を調製して浸漬すればよく、また、前記の、加熱処理した処理物を浸漬してもよい。トゲドコロや明日葉の搾汁液や抽出物をアルコールもしくは含水アルコールに添加してアルコール飲料を製造することもできる。浸漬する時間には特に限定はないが、通常6時間以上、好ましくは12時間〜1年、より好ましくは1日〜3ヶ月の浸漬が行われる。浸漬に非含水エタノールを使用した場合には、これを水もしくは適切な飲料、飲料水で所望の濃度に調整し、飲料とすればよい。含水エタノールとしては食品用エタノールの水希釈液、市販のアルコール飲料、焼酎、ウオッカ、ジン等から適宜選択して使用すればよい。エタノール濃度として特に限定はないが10%(v/v)〜35%(v/v)の範囲での使用が好ましい。使用した含水エタノールのエタノール濃度が飲用に適した範囲となるよう、水もしくは適切な飲料、飲料水で希釈できることは言うまでもない。さらに飲料の製造にあたっては、通常の飲料の製造に使用される成分(甘味料、酸味料、香料、果汁、増粘剤、着色料、保存料、酸化防止剤)等を配合することができる。さらに、炭酸を含有させたアルコール飲料としてもよい。
本発明の体内脂肪低減用組成物は、そのまま直接摂取しても、又は公知の担体や助剤等を使用して液剤、顆粒剤、錠剤等の形態にして使用することができる。更に、体内脂肪低減用組成物を、脂質を多く含む食品や飲料に添加、混合、含有及び/又は希釈せしめて使用することができる。そして、本発明の体内脂肪低減用組成物を食品や飲料に使用する場合、当該組成物は加熱処理工程を経て製造されたものであるので熱安定性があること、水膨潤性がないので使用しやすいことの利点を保有する。また、本発明の体内脂肪低減用組成物を食品に使用する場合は、1食当たり、0.1mg〜1gになるように調製するのが好ましい。
本発明の体内脂肪低減用組成物を摂取することにより、生物個体において体内脂肪、特に内臓脂肪が減少する。さらに、本発明の組成物の摂取により、脂質代謝に関与する酵素群の遺伝子、例えば、エネルギー代謝に係る遺伝子の転写活性化因子であるPGC−1a(PPARγ coactivator−1)、脂質代謝に係る遺伝子の発現を調節するPPAR−α(peroxisome proliferator−activated receptor−alpha)やPPAR−δ(peroxisome proliferator−activated receptor−delta)、ペルオキシソームにおける脂肪酸β酸化に関与するACO(acyl−CoA oxidase)、ミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化に関与するMCAD(medium chain acyl−CoA dehydrogenase)、ミトコンドリアのエネルギー転換、熱産生に関与するUCP3(uncoupling protein 3)等の発現量が増加する。また、血中のアディポネクチン濃度が増加する。このことより、本発明の組成物が脂肪吸収抑制ではなく、代謝系に関与して脂肪減少効果を発揮していることが示される。
本発明の組成物は、脂肪減少作用を有していることから、体内脂肪の減少が治療、予防に有効な疾患にも使用することができる。さらに、前記のとおり本発明の組成物は脂質代謝に関与する酵素群の遺伝子の発現を活性化することから、これら遺伝子の産物の増加が症状の改善や治癒に有効な疾患にも本発明の組成物は有効である。本発明の組成物が治療、予防に有効な疾患としては、例えばメタボリック症候群、糖尿病、高血圧、脂質異常症、インスリン抵抗性等が挙げられる。
また、本発明は、本発明の体内脂肪低減用組成物を含有、添加及び/又は希釈してなる、体内脂肪低減用の生物用飼料を提供する。ここでも以下「含有」とは、「含有、添加及び/又は希釈」を意味する。別の一態様として、本発明の体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする生物飼育用剤をも提供する。さらに、本発明の体内脂肪低減用組成物もしくは当該組成物を含有飼料を生物に投与することを特徴とする生物の飼育方法を提供する。当該飼育方法は、前記の本発明の飼料、本発明の生物飼育用剤を生物に給餌もしくは投与することにより実施することができる。
本明細書において、生物としては、限定はないが、たとえば養殖動物、ペット動物、競技動物などが挙げられる。養殖動物としてはウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマなどの家畜、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの実験動物、ニワトリ、アヒル、七面鳥、駝鳥などの家禽、魚類が例示される。ペット動物としてはイヌ、ネコなどが例示される。競技動物としては、競走馬、競走犬、競走ラクダ等が例示される。動物飼料としては体調の維持及び/又は改善用飼料が例示される。生物飼育用剤としては飼料添加剤、飲料用添加剤又は魚類浸漬用剤が例示される。
本発明の飼料の製造法に特に限定はなく、例えば、飼育しようとする生物に適した公知の飼料に本発明の体内脂肪低減用組成物を含有せしめればよい。また、配合も一般の飼料に準じた、飼育しようとする生物の生育や健康に影響を与えないものとすればよい。生物飼育用剤も前記の本明細書の開示に沿って適切な形状の組成物に調製すればよく、錠剤、粉末、注射剤のような直接生物に投与可能な形状でもよく、飼料や飲料水と混合可能な形状であってもよい。飼料添加剤の場合には粉状、顆粒状、ペレット状、液状といった飼料との混合に適した形状が例示される。飲料用添加剤又は魚類用浸漬用剤は水に可溶もしくは懸濁可能な形状とすればよい。
これらの発明によれば、生物の脂肪、例えば内臓脂肪が低減し、かつ体重に減少は見られない。本発明の飼育方法によって得られる養殖生物は、脂身や肉中の脂肪分が減少していることから、成人病やメタボリック症候群のリスクが低減された食肉を提供できる。すなわち、本発明により生物の肉質改変方法が提供される。さらに、本発明の飼料はペット動物の肥満防止、健康維持にも効果を発揮する。
現在の家畜の飼育は非常に集約的であり、運動量の低い環境下で生育されるが、このような環境下でも本発明の飼料の摂取により低脂肪の良質な食肉が生産できる。また低エネルギー食や減食を必要としないペット用餌も提供される。
本発明はまたヤムイモ、その処理物、明日葉、及び/又はその処理物を有効成分とする抗肥満用組成物を提供する。
ヤムイモとしてはトゲドコロが挙げられる。処理物としては乾燥処理物、例えば乾式加熱処理物、例えば遠赤外線処理物や脂溶性ヤムイモ由来物質、例えば脂溶性トゲドコロ処理物、例えば含水エタノール抽出物が挙げられ、これらを有効成分とする抗肥満用組成物が提供される。
また、本発明によりトゲドコロ処理物を有効成分とする細胞内エネルギー消費活性化用組成物又は細胞内エネルギー消費促進用組成物が提供され、トゲドコロ処理物を有効成分とする細胞内エネルギー消費関連遺伝子活性化用組成物又は細胞内エネルギー消費関連遺伝子発現促進用組成物が提供される。トゲドコロ処理物としてはジオスゲニン配糖体含有処理物が挙げられ、当該処理物を有効成分とする細胞内エネルギー消費活性化用組成物又は細胞内エネルギー消費促進用組成物が提供される。なお、本発明の一つの態様としてはジオスゲニン配糖体を含有する組成物が例示される、本態様においては、ジオスゲニン配糖体を含有する組成物であれば当該組成物がトゲドコロ由来に限定されるものではない。
細胞内エネルギー消費関連遺伝子又は細胞内エネルギー消費関連遺伝子としては脂肪酸をエネルギー源として使用する際に発現される遺伝子、例えば脂肪酸のβ酸化に関与する遺伝子、例えば前出のMCAD遺伝子、ACO遺伝子が挙げられ、これらの遺伝子の発現を調節する転写因子、例えば前出のPGC−1a遺伝子、PPAR−α遺伝子、PPAR−δ遺伝子の発現も昂進する。すなわち本発明の組成物を摂取することにより、脂肪が分解され脂肪酸となり細胞内でエネルギー源として消費され、体内脂肪が減少し、その結果抗肥満作用を発揮することが見出された。本発明の組成物は運動負荷を伴うことなくこれらの作用を有することにより抗肥満用組成物として著効を有する。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの例により限定されない。
実施例1 トゲドコロ処理物投与による脂肪の減少
(1)トゲドコロ加熱処理物の調製
トゲドコロ(Dioscorea esculenta)を約5mmにスライスしたものを70℃で約8時間加熱することにより乾燥した。その後、乾燥物をさらに加熱処理(135〜140℃、15秒)し、粉砕することによりトゲドコロ粉末を得た。
(2)トゲドコロ60%(v/v)含水エタノール抽出物の調製
上記トゲドコロ加熱処理粉末800gを8Lの60%含水エタノールに撹拌しながら加え、スターラーを用いて25℃で24時間攪拌した後、ブフナーロート(ろ紙No.2 ワットマン社製)を用いて吸引ろ過した。ろ液はエバポレーターにて乾固し、60%含水エタノール抽出物98.9gを得た。
(3)トゲドコロ加熱処理粉末及び含水エタノール抽出物の体内脂肪減少効果。
雄性BALB/cマウスを日本SLC社から購入し、予備飼育の後7週齢より実験に用いた。実施例1−(1)で調製したトゲドコロ加熱処理粉末を標準飼料CE−2(日本クレア社製)に1%(w/w)の割合で混ぜ合わせて試験食を作製した。また、実施例1−(2)で調製した60%含水エタノール抽出物を標準粉末試料CE−2に混ぜた試験食も用いた。試験食投与前に、あらかじめ一定時間以上泳ぐことが可能な個体を選別して均等に各運動群、非運動群に振り分けた。
更にその後、試験食を自由摂取させる試験群と標準飼料CE−2を自由摂取させる対照群を設定し、各運動群は試験食投与開始3日目を1回目とし、週1回水泳運動をさせた。水泳運動時間は、マウスに体重の1%の重りを負荷して強制水泳を始めさせ、疲労して頭部が完全に5秒間水中に沈むまでの時間とした。試験食投与8週目に疲労して頭部が完全に5秒間水中に沈むまで水泳運動を実施した翌日に、マウスを麻酔下で脱血致死させた。また非運動群のマウスも同様に処置した。各群のマウスの精巣周辺の脂肪を摘出して重量を測定した。各群9〜15匹の平均を表1に示す。対照群と比べて、トゲドコロ加熱処理粉末1%(w/w)と60%含水エタノール抽出物投与群で脂肪量が減少した。なお、マウスの体重に関しては各群に有意な差は見られなかった。
Figure 2011037811
表1に示すように、飼育期間中の運動の有無にかかわらず、トゲドコロ加熱処理粉末(及び60%含水エタノール抽出物)投与群では脂肪量の減少が観察された。この結果よりトゲドコロ処理物が体内脂肪減少効果を発揮することが初めて見出された。更に60%含水エタノール抽出物では加熱処理粉末よりも強い効果を発揮した。
実施例2 トゲドコロ粉末摂取による血液中の遊離脂肪酸の減少
実施例1に記載の実験において、摂取終了後に非運動群のマウスの血液を採血し、血清中の遊離脂肪酸濃度をNEFA C−テストワコー(和光純薬社製)を用いて測定した。その結果を表2に示す。トゲドコロ粉末摂取群では、対照群に比べて血液中の遊離脂肪酸濃度の低下が認められた。
Figure 2011037811
実施例3 肝臓及び骨格筋におけるトゲドコロ粉末摂取による各種遺伝子発現への影響
実施例2に記載の実験において、脱血致死させた非運動群のマウスより肝臓及び骨格筋(腓腹筋)を摘出した。RNAiso(タカラバイオ社製)を使用し、その取扱い説明書の記載に従って肝臓及び骨格筋よりtotal RNA水溶液を調製した。
逆転写反応及びリアルタイムPCRは、SYBR(登録商標) PrimeScript(登録商標) RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて行い、mRNA発現量をThermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System(タカラバイオ社製)を用いて測定した。肝臓ではβ−Actin遺伝子、骨格筋ではGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子を補正遺伝子に用い、トゲドコロ粉末摂取群のmRNA発現量を対照群との相対比として算出した。
PGC−1a、PPAR−α、ACO、MCAD、UCP3、β−Actin、GAPDHの各遺伝子より転写されるmRNA発現量の測定に使用されたプライマー対の塩基配列を、配列番号1及び2、配列番号3及び4、配列番号5及び6、配列番号7及び8、配列番号9及び10、配列番号11及び12、配列番号13及び14にそれぞれ示す。
その測定結果を以下の表3、表4に示す。すなわち、表3、表4はトゲドコロを投与したマウスの各臓器におけるmRNA発現量の増加率を示すものであり、トゲドコロ粉末摂取によって、肝臓ではPGC−1a、PPAR−α、ACO、MCADのmRNA発現量が、骨格筋ではPGC−1a、UCP3のmRNA発現量がそれぞれ増加した。
Figure 2011037811
Figure 2011037811
実施例4 トゲドコロ60%エタノール抽出物による脂肪燃焼作用
(1)トゲドコロ60%エタノール抽出液の調製
実施例1で調製したトゲドコロ加熱処理粉末10gに対して、60%エタノール100mLを添加し、攪拌しながら25℃で24時間抽出を行った。抽出液を吸引濾過後、濃縮乾固し、乾固物を60%DMSO溶液10mLに溶解したものをトゲドコロ60%エタノール抽出液とした。
(2)肝細胞における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
マウス肝臓由来Hepa1c1c7細胞を、10%ウシ胎児血清、1%Penicillin−Streptomycin含有、ダルベッコ改良イーグル培地(シグマ社製、D5796)に4×10個/mLになるように懸濁し、12穴プレートの各ウェルに2mLずつ加えた後、5%炭酸ガス存在下、37℃で一晩培養した。その後培地を新鮮な培地に交換し、各ウェルに実施例4−(1)で調製したトゲドコロ60%エタノール抽出液を終濃度0.05%、0.1%、あるいは0.2%になるように被検物として添加し、24時間培養した。なお、陰性対照として60%ジメチルスルホキシド(DMSO)添加の区分を設定した。
培養終了後、培地を除き0.5mLのRNAiso(タカラバイオ社製)を加え、細胞を1.5mLのエッペンチューブに回収した。室温で5分間放置後、0.1mLのクロロホルムを加え、乳白色になるまでよく振り混ぜた。再度室温で5分間放置した後、10,000rpm 、15分間、4℃で遠心し、上清を別のエッペンチューブに移した。この上清に0.25mLのイソプロパノールを加え、よく混合し、室温で10分間放置した。10,000rpm 、10分間、4℃で遠心し、得られた沈殿を0.5mLの75%エタノールで洗浄した。10,000rpm、5分間、4℃で遠心後、沈殿を乾燥させた。20μLの注射用水で沈殿を溶解し、total RNA水溶液を得た。逆転写反応及びリアルタイムPCRは実施例3と同様の方法で行った。対照としてβ−Actin遺伝子に特異的なプライマー対を用いたリアルタイムRT−PCRを行った。測定は、全て3連で行った。
その結果を以下の表5に示す。すなわち、表5はトゲドコロ60%エタノール抽出物を添加した肝細胞における陰性対照の細胞に対するPGC−1a及びACOのmRNA発現量比を示すものであり、トゲドコロ60%エタノール抽出物に顕著なPGC−1a及びACOのmRNAを発現誘導する活性が認められた。
Figure 2011037811
(3)筋肉細胞における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
C2C12細胞を、10%ウシ胎児血清、1%Penicillin−Streptomycin含有、低グルコース含有ダルベッコ改良イーグル培地(シグマ社製、D6046)に8×10個/mLになるように懸濁し、12穴プレートの各ウェルに2mLずつ加えた後、5%炭酸ガス存在下、37℃で3日間培養した。
次に培地を2%ウマ血清、1%Penicillin−Streptomycin含有、低グルコース含有ダルベッコ改良イーグル培地に交換し、2〜3日おきに培地を交換ながら1週間培養し、C2C12細胞を筋肉細胞に分化させた。その後培地を新鮮な培地に交換し、ウェルに実施例4−(1)で調製したトゲドコロ抽出液を終濃度0.05%、0.1%、0.2%になるように添加し、24時間培養した。なお、陰性対照として60%ジメチルスルホキシド(DMSO)添加の区分を設定した。
培養終了後、実施例4−(2)と同様の方法により、PGC−1aのmRNAの発現量を測定した。なお、対照としてGAPDH遺伝子に特異的なプライマー対を用いたリアルタイムRT−PCRを行った。
その結果を以下の表6に示す。すなわち、表6はトゲドコロ60%エタノール抽出物を添加した細胞における陰性対照の細胞に対するPGC−1aのmRNA発現量比を示すものであり、トゲドコロ60%エタノール抽出物に顕著なPGC−1aのmRNAを発現誘導する活性が認められた。
Figure 2011037811
実施例5 トゲドコロからの脂肪酸代謝関連遺伝子の発現増強成分の単離と同定
(1)トゲドコロ60%エタノール抽出物の分画
実施例1で調製したトゲドコロ加熱処理粉末10gに対して、60%エタノール100mLを添加し、攪拌しながら25℃で24時間抽出を行った。抽出液を吸引濾過後、濃縮乾固し、乾固物を60%エタノール10mLに溶解した。得られた溶解液のうち2.5mL分をHPLCに処し分画を行った。HPLC条件を表7に示す。
Figure 2011037811
各フラクションはUV205nmの吸収を指標に表8に示す保持時間ごとに分画した。
Figure 2011037811
次に、分画した各フラクションを濃縮乾固し、乾固物を60%エタノール1mLに溶解した。
(2)トゲドコロ60%エタノール抽出物の分画物の活性測定
実施例5−(1)で得られたトゲドコロ60%エタノール抽出物の分画物について、実施例4−(2)と同様の方法で脂肪酸代謝関連遺伝子のmRNAを発現誘導する活性を確認した。その結果、フラクション7、8、9、10にPGC−1a及びACOのmRNAを発現誘導する活性が認められた。
(3)フラクション7〜10の構造解析
質量分析装置(API300、Applied Biosystems社製)を用いてフラクション7〜10の分子量の測定を行った。その結果、フラクション7と8はともに分子量1014、フラクション9は分子量868、フラクション10は分子量884であった。
次に、フラクション7〜10を以下の条件で酸加水分解した。フラクション7〜10の各0.1mLに80%エタノール0.2mLを加えて撹拌し、次に10M硫酸0.2mLを加えて100℃で1時間酸加水分解を行った。反応終了後、水3mLを加え、2mLのt−ブチルメチルエーテル(BME)で液―液分配しBME層を回収した。水層については2mLのBMEによる液―液分配をさらに2回繰り返した。次に、計3回の液−液分配により得られたBME層を混合し、そこに1M水酸化ナトリウム水溶液1mLを加え攪拌後BME層を回収した。回収したBME層に再度1M水酸化ナトリウム水溶液1mlを加えて攪拌後、BME層を回収した。得られたBME層に水1mLを加えて攪拌後、BME層回収して濃縮乾固し、乾固物をエタノール1mLに溶解した。こうして得られた酸加水分解物を表9の条件でHPLC分析し、市販のジオスゲニン標準物質(和光純薬工業社製)と比較した。その結果、全てのフラクションからジオスゲニンが検出されたことから、フラクション7〜10がジオスゲニン配糖体であることが明らかとなった。
Figure 2011037811
さらに、フラクション9について、表10の条件でHPLC分析し、市販のジオスシン標準物質(ChromaDex社製)と比較した。その結果、フラクション9はジオスシンであることが明らかとなった。
Figure 2011037811
(4)フラクション7〜10の脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
実施例4−(2)と同様の方法で、Hepa1c1c7細胞に実施例5−(1)で調製したジオスゲニン配糖体画分フラクション7〜10をジオスゲニン配糖体の終濃度が2.5〜10μMとなるよう添加し、24時間培養した。なお、陰性対照としてDMSO添加の区分を設定した。培養終了後、実施例4−(2)と同様の方法により、PGC−1a及びACOのmRNAの発現量を測定した。その結果を表11に示す。すなわち、表11はトゲドコロ由来のジオスゲニン配糖体を添加した細胞における陰性対照の細胞に対するPGC−1a及びACOのmRNA発現量比を示すものであり、ジオスゲニン配糖体に顕著なPGC−1a及びACOのmRNAを発現誘導する活性が認められた。
Figure 2011037811
(5)ジオスゲニン配糖体フラクション8の脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
実施例4−(2)と同様の方法で、Hepa1c1c7細胞に実施例5−(1)で調製したジオスゲニン配糖体画分フラクション8をジオスゲニン配糖体の終濃度が2〜4μMとなるように添加し、24時間培養した。また、実施例4−(3)と同様の方法で、筋肉に分化したC2C12細胞に実施例5−(1)で調製したジオスゲニン配糖体画分フラクション8をジオスゲニン配糖体の終濃度が1〜2μMとなるように添加し、24時間培養した。なお、いずれの細胞についても陰性対照としてDMSO添加の区分を設定した。培養終了後、プライマーとしてPPAR−δ遺伝子に特異的なプライマー対を用いる以外は実施例4−(2)と同様の方法によりリアルタイムRT−PCRを行い、PPAR−δのmRNAの発現量を測定した。Hepa1c1c7の結果を表12に、C2C12の結果を表13に示す。また、PPAR−δの遺伝子より転写されるmRNA発現量の測定に使用されたプライマー対の塩基配列を配列番号15及び16に示す。
すなわち、表12及び表13はトゲドコロ由来のジオスゲニン配糖体を添加した細胞における陰性対照の細胞に対するPPAR−δのmRNA発現量比を示すものであり、ジオスゲニン配糖体に顕著なPPAR−δのmRNAを発現誘導する活性が認められた。
Figure 2011037811
Figure 2011037811
(6)ジオスゲニン配糖体とジオスゲニンの活性比較
実施例4−(2)と同様の方法でHepa1c1c7細胞に実施例5−(1)で調製したジオスゲニン配糖体画分フラクション8及びジオスゲニンを終濃度1〜4μMとなるように添加し24時間培養した。なお、ジオスゲニン配糖体の陰性対照としてDMSO添加の区分を、ジオスゲニンの陰性対照としてDMFを設定した。培養終了後、実施例4−(2)と同様の方法により、PGC−1a及びACOのmRNAの発現量を測定した。その結果を表14に示す。
すなわち、表14はジオスゲニン配糖体及びジオスゲニンを添加した細胞における陰性対照の細胞に対するPGC−1a及びACOのmRNA発現量比を示すものであり、ジオスゲニン配糖体に顕著なPGC−1a及びACOのmRNAを発現誘導する活性が認められたが、ジオスゲニンにはこれらの活性はほとんど認められなかった。この結果から、トゲドコロ処理物に含まれる体内脂肪を低減する活性を有する成分は、ジオスゲニン配糖体であることが明らかになった。
Figure 2011037811
実施例6 トゲドコロ加熱処理粉末を用いた浸漬酒の製造(1)
実施例1−(1)で調製したトゲドコロ加熱処理粉末100gを広口瓶に入れ、ホワイトタカラ35%(宝酒造社製)900mLを注ぎ1ヶ月間熟成させ、トゲドコロ加熱処理粉末を用いた浸漬酒を製造した。
実施例7 トゲドコロ加熱処理粉末を用いた浸漬酒の製造(2)
実施例1−(1)で調製したトゲドコロ加熱処理粉末100gを広口瓶に入れ、食品用60%エタノール水溶液900mLを注ぎ1週間抽出した。抽出液を水道水で2倍に希釈しトゲドコロ加熱処理粉末を用いた浸漬酒を製造した。
実施例8 明日葉による脂肪の減少
ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上のメタボリックシンドローム該当者及び予備軍の中高年(35〜65歳)男女9名(男性7名、女性2名)を被験者として、明日葉カルコンを含有するアシタバ抽出粉末(国際公開第2004/112817号パンフレットの実施例12の記載に従って調製)を明日葉青汁(タカラバイオ社製、1包3g)に1包当たり100mg配合したもの(明日葉カルコンを1包当たり6mg含有している)を水に溶かし1日2包、8週間摂取させた。評価項目として、体重、BMI、体脂肪率、CTスキャンによる腹部脂肪面積、血中アディポネクチン、血中LDL−コレステロール濃度をそれぞれ測定した。その結果を表15に示す。なお、全ての被験者からは、インフォームドコンセントを得ている。
すなわち表15は、明日葉による脂肪の減少を各種評価項目を検討した結果であり、明日葉青汁の摂取により、腹部脂肪面積の減少がみられ、特に腹部内臓脂肪面積の減少が顕著であった。また、体重、BMI、体脂肪率、血中LDL−コレステロール濃度も減少した。さらに、血中アディポネクチンは摂取により増加した。
Figure 2011037811
実施例9 明日葉カルコン及び明日葉カルコンとジオスゲニン配糖体との共添加による脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
(1)明日葉カルコンの調製
国際公開第2005/074906号パンフレットの実施例1及び実施例2に記載の方法に従って、明日葉よりキサントアンゲロール(XA)及び4−ハイドロキシデリシン(4−HD)を調製した。
(2)明日葉カルコン及びジオスゲニン配糖体による脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量の増強
トゲドコロ60%エタノール抽出物の代わりに実施例9−(1)で調製した明日葉カルコン4HD、及びXA、並びに実施例5−(1)で調製したジオスゲニン配糖体画分フラクション8を表16及び表17に示す終濃度でHepa1c1c7細胞に被検物として添加する点、及び陰性対照としてDMSO添加の区分を設定する点以外は実施例4−(2)と同様の方法で、被検物が示すPGC−1aのmRNAを発現誘導する活性を確認した。その結果を表16及び表17に示す。すなわち、表16及び表17はトゲドコロ由来のジオスゲニン配糖体と明日葉由来のカルコンを単独あるいは共添加した細胞における、陰性対照の細胞に対するPGC−1aのmRNA発現量比を示すものであり、明日葉カルコン単独でもPGC−1aのmRNAを発現誘導する活性が認められ、また、単独添加よりも明日葉カルコン及びジオスゲニン配糖体を共添加することで、PGC−1aのmRNAをさらに発現誘導する活性が認められた。この結果は、トゲドコロ由来物質の体内脂肪低減効果と明日葉由来物質の体内脂肪低減効果との相乗効果を示すものである。
Figure 2011037811
Figure 2011037811
本発明によりトゲドコロ由来物、及び/又は明日葉由来物を有効成分とする体内脂肪低減用組成物が提供され、当該組成物を利用し抗肥満用医薬品や飲食品が提供される。
SEQ ID NO:1 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PGC-1 gene.
SEQ ID NO:2 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PGC-1 gene.
SEQ ID NO:3 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PPAR-alpha gene.
SEQ ID NO:4 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PPAR-alpha gene.
SEQ ID NO:5 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse ACO gene.
SEQ ID NO:6 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse ACO gene.
SEQ ID NO:7 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse MCAD gene.
SEQ ID NO:8 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse MCAD gene.
SEQ ID NO:9 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse UCP3 gene.
SEQ ID NO:10 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse UCP3 gene.
SEQ ID NO:11 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse beta-actin gene.
SEQ ID NO:12 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse beta-actin gene.
SEQ ID NO:13 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse GAPDH gene.
SEQ ID NO:14 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse GAPDH gene.
SEQ ID NO:15 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PPAR-delta gene.
SEQ ID NO:16 ; Primer to amplify the cDNA fragment of mouse PPAR-delta gene.

Claims (12)

  1. トゲドコロ由来物質及び/又は明日葉由来物質を有効成分として含むことを特徴とする体内脂肪低減用組成物。
  2. トゲドコロ由来物質がトゲドコロ処理物である請求項1記載の体内脂肪低減用組成物。
  3. トゲドコロ処理物が加熱処理されたトゲドコロの粉末である請求項2記載の体内脂肪低減用組成物。
  4. トゲドコロ処理物が脂溶性トゲドコロ由来物質を含有する抽出物である請求項2記載の体内脂肪低減用組成物。
  5. トゲドコロ処理物が加熱処理されたトゲドコロから含水エタノール抽出された抽出物である請求項4記載の体内脂肪低減用組成物。
  6. トゲドコロ由来物質が、ジオスゲニン配糖体である請求項1記載の体内脂肪低減用組成物。
  7. 明日葉由来物質がカルコン含有物である請求項1記載の体内脂肪低減用組成物。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする食品。
  9. 請求項1〜7いずれか記載の体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする飼料。
  10. 請求項1〜7いずれか記載の体内脂肪低減用組成物を含有することを特徴とする生物飼育用剤。
  11. 請求項1〜7いずれか記載の体内脂肪低減用組成物を生物に投与することを特徴とする生物の飼育方法。
  12. トゲドコロ由来物質及び明日葉由来物質を含む組成物。
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