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JP2010241063A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び、ノズル基板の製造方法 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び、ノズル基板の製造方法 Download PDF

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JP2010241063A JP2009094616A JP2009094616A JP2010241063A JP 2010241063 A JP2010241063 A JP 2010241063A JP 2009094616 A JP2009094616 A JP 2009094616A JP 2009094616 A JP2009094616 A JP 2009094616A JP 2010241063 A JP2010241063 A JP 2010241063A
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和史 大谷
Masashi Kasuga
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Abstract

【課題】液滴吐出ヘッドにおけるドット抜け及び容量変化を容易かつリアルタイムに検出することを可能とする液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び、ノズル基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る液滴吐出ヘッド100は、ノズル孔10のそれぞれを中心として各ノズル孔10の縁に形成された一対の吐出検出用導通電極12、及び、吐出検出用導通電極12の上に形成された液滴保護膜11を有するノズル基板1と、底壁が振動板23を構成し、ノズル孔10に連通して液滴を収容する複数のキャビティ20を有するキャビティ基板2と、個別電極31を有する電極基板3と、吐出検出用導通電極12に電圧を印加する吐出検出回路42と、を有し、ノズル孔10に存在する液滴の量により変化する静電容量によって液滴吐出状況の良否を検知可能にしている。
【選択図】図2

Description

本発明は、液滴を吐出する複数のノズルを有するノズル基板を有する液滴吐出ヘッド、この液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置、及び、そのノズル基板の製造方法に関するものである。
液滴吐出装置の代表例として、画像記録用のインクジェットヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。インクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。このようなインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェットヘッドと、記憶媒体をインクジェットヘッドの走査方向と垂直に移動させる紙送り機構を備え、インクジェットヘッドをキャリッジ上で記録媒体の幅方向(主走査方向)に移動させながらインクジェットヘッドに対して機械的圧力や熱エネルギーを発生させることで記録媒体に対してインク滴を吐出させることで記録が行なわれる。
このようなインクジェット式記録装置に用いられるインクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズルが形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズルに連通する圧力室(キャビティ)、リザーバー等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、駆動部により圧力室に圧力を加え、圧力室の一部を構成する振動板を変位させることにより、インク滴を、選択されたノズルより吐出するように構成されている。駆動手段としては、静電気力を利用する方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用するバブルジェット(登録商標)方式等がある。
この種のインクジェットヘッドでは、インクジェットヘッドの圧力室内に気泡が発生したり、浮遊する紙粉やゴミなどがノズル近傍に付着したり、ノズル(内のインク)が乾燥したりすると、ノズルからインク滴が吐出されず、記録媒体にドットが形成されないことがある。インク滴の吐出不良を、一般に「ドット抜け」と呼んでいる。ドット抜けの現象が生じた場合には、クリーニング装置によって回復を図る。たとえば、気泡の発生によってドット抜け現象が生じた場合には、ポンプでノズル内のインクを吸引して圧力室内部の気泡を排出し、その後、ワイパーと呼ばれる拭い取り部材で吐出面に付着したインクを拭い去り、更にフラッシングと呼ばれるインク滴の無印字吐出を行って混色したインクを放出する。この一連のクリーニング工程によって、気泡によるドット抜け現象が回復する。
上記のようなドット抜けを検出する方法としては、「複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記ノズルの近傍に設けられた第一の電極および第二の電極と、前記ノズル近傍にインク滴が付着した時に、前記第一の電極と前記第二の電極間の静電容量の変化を検出する静電容量検知手段と、を備えたインクジェット式記録装置」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この技術は、ヘッド表面のノズル近傍に対向電極を設け、電極間の静電容量変化を検出することでノズル周辺のインク滴残留を検知している。この技術では、クリーニング不良及び吐出中のインク滴付着を対象としてドット抜けを検出している。
特開2007−230008号公報(第5頁、第6頁、図4)
特許文献1に記載の技術は、インク滴の吐出不良を未然に防ぐ、または、インク滴の吐出不良の発生を早期に発見できるようにしたものである。しかしながら、ヘッド表面のノズル近傍にインク滴が付着しないと、つまりインク滴による液溜まりができないとインク滴の吐出不良を検出することができない。したがって、特許文献1に記載の技術では、非吐出ノズルの検出、つまりドット抜けの検出には利用することができなかった。また、特許文献1に記載の技術では、インク滴の吐出量の検出にも利用することができなかった。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、液滴吐出ヘッドにおけるドット抜け及び容量変化を容易かつリアルタイムに検出することを可能とする液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び、ノズル基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出する複数のノズル孔、ノズル孔のそれぞれを中心として各ノズル孔の縁に形成された一対の電極、及び、電極の上に形成された液滴保護膜を少なくとも有するノズル基板と、底壁が振動板を構成し、ノズル基板の複数のノズル孔に連通して液滴を収容する複数の圧力室を有し、ノズル基板に積層されるキャビティ基板と、振動板を駆動する個別電極を有し、キャビティ基板に積層される電極基板と、一対の電極に電圧を印加し、ノズル孔に存在する液滴の量により変化する一対の電極間の静電容量によって液滴吐出状況の良否を判断する吐出検出回路と、を有することを特徴とする。
これにより、液滴吐出状況を一対の電極間の静電容量の変化により検知することができる。したがって、液滴吐出動作を中断することなく直接確認することができ、吐出不良ノズルを容易に特定できる。吐出不良ノズルを特定した場合には、別のノズル孔からの吐出液滴により、被対象物の品質を補完することができることになる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記吐出検出回路が、吐出液の有無により前記一対の電極間の静電容量が変化することで発生する微弱電流を検知して液滴吐出状況の良否を判断することを特徴とする。
これにより、ノズル孔に存在する液滴が静電容量を変化させる物質として作用することになり、ドット抜けだけでなく、液滴の吐出量の異常検出ができることになる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記吐出検出回路が、一対の電極に定電圧を印加していることを特徴とする。
これにより、前記電極間の静電容量の変化を微弱電流に変換することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、一対の電極がノズル孔を中心として対向配置されていて、その一部が前記ノズル孔の内壁にまで及んでいることを特徴とする。
これにより、吐出液の通過を確実に静電容量の変化として検知することが可能になる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記一対の電極が、耐擦性及び耐薬品性を有する導電性材料で構成されていることを特徴とする。
これにより、ヘッドクリーニング時の機械的接触、および、吐出液に対する耐久性を確保でき、長期間の使用に渡って信頼性を確保することができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記導電性材料が、Pt、Au、Mo、Ta、これらの合金又はこれらの化合物のいずれかであることを特徴とする。
これにより、ノズル基板を構成するシリコンとの密着性が良好で、耐擦性および耐薬品性を有する電極を形成することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記液滴保護膜が、耐擦性及び耐薬品性を有する絶縁材料で構成されていることを特徴とする。
これにより、紙送りの際に電極の表面が媒体に接触して摩耗する等の不都合を防止できる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記絶縁材料が、SiO2 、Al2 3 、Ta2 5 、Nb2 5 のいずれかであることを特徴とする。
これにより、液滴保護膜の耐薬品性、特に耐アルカリ性が向上する。
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。
したがって、液滴吐出装置は、上述の液滴吐出ヘッドが有している効果と同じ効果を有している。
本発明に係るノズル基板の製造方法は、シリコン基板にノズル孔となる凹部を形成する工程と、シリコン基板に液滴保護膜を熱酸化により形成する工程と、シリコン基板の凹部形成面にサポート基板を貼り合わせる工程と、シリコン基板の凹部形成面とは反対側面を薄板化し凹部を開口する工程と、開口させた各ノズル孔の縁の一方側に斜方スパッタ又は斜方蒸着によって第1の電極を形成する工程と、開口させた各ノズル孔の縁の他方側であって一方側に形成した第1の電極にノズル孔を中心として対向する位置に斜方スパッタ又は斜方蒸着によって第2の電極を形成する工程と、シリコン基板の薄板化した面及び凹部内部に液滴保護膜を形成する工程と、液滴保護膜の上に撥液膜を形成する工程と、シリコン基板からサポート基板を剥離し、シリコン基板に形成した撥液膜をサポート基板を剥離した側から親水化処理する工程と、を有することを特徴とする。
これにより、一方側の電極と他方側の電極とを別工程で形成するので、これらが接続することによる短絡の発生を確実に防止することができる。
実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。 液滴吐出ヘッドの長手方向の断面を示す縦断面図である。 液滴吐出ヘッドを上から見た状態を示す平面図である。 ノズル孔と吐出検出用導通電極との関係を説明するための説明図である。 吐出検出の際の動作原理を模式的に示す概念図である。 ノズル基板の製造工程例の一部を示す縦断面図である。 ノズル基板の製造工程例の一部を示す縦断面図である。 ノズル基板の製造工程例の一部を示す縦断面図である。 実施の形態1の液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例を示した斜視図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100を分解した状態を示す分解斜視図である。図2は、液滴吐出ヘッド100の長手方向の断面を示す縦断面図である。図3は、液滴吐出ヘッド100を上から見た状態を示す平面図である。図1〜図3に基づいて、液滴吐出ヘッド100の構成及び動作を説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下とし、ノズル孔10が並んでいる方向を短手方向、短手方向と垂直な方向を長手方向として説明する。
この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエーターの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。この液滴吐出ヘッド100は、ノズル基板1、キャビティ基板2、及び、電極基板3の3つの基板が順に積層されるように接合された3層構造となっている。つまり、液滴吐出ヘッド100は、キャビティ基板2の一方の面(上面)にはノズル基板1が接合されており、他方の面(下面)には電極基板3が接合され、キャビティ基板2を電極基板3とノズル基板1とが上下から挟む構造となっている。
この液滴吐出ヘッド100には、電極基板3上に形成された個別電極31と、この個別電極31に所定の駆動ギャップ30を介して対向配置されたキャビティ基板2の振動板23とから構成される静電アクチュエーターを備えている。この実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100は、電極基板3とキャビティ基板2とを陽極接合により接合するものとし、キャビティ基板2とノズル基板1とをエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合するものとして説明する。また、液滴吐出ヘッド100の電極基板3に形成する個別電極31には、図2で示すドライバIC等の電力供給手段である駆動回路4によって駆動信号(パルス電圧)が供給されるようになっている。
[ノズル基板1]
ノズル基板1は、たとえば厚さ約65μm(マイクロメートル)の(100)面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)を主要な材料として構成されている。そして、キャビティ基板2の上面(電極基板3を接合する面の反対面)と接合している。ノズル基板1には、キャビティ(吐出室)20のそれぞれと連通している複数のノズル孔10が所定のピッチで貫通形成されている。各ノズル孔10は、キャビティ20から移送されたインク滴等の液滴を外部に吐出するようになっている。なお、ノズル基板1における液滴が吐出される面を液滴吐出面1aとし、液滴吐出面1aの反対側面を接着面1bとして説明するものとする。
各ノズル孔10は、吐出方向の先端側の円筒状の第1ノズル孔10aと、第1ノズル孔10aよりも径の大きい円筒状の第2ノズル孔10bとから構成され、第1ノズル孔10aと第2ノズル孔10bとは同軸上に設けられている。かかる構成により、液滴の吐出方向をノズル孔10の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、ノズル孔10を複数段で形成することによって、液滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、また液滴の飛び散りがなく、液滴の吐出量のばらつきを抑制することが可能となっている。
ノズル基板1の液滴吐出面1a上には、ドット抜け検出を行う際に使用する吐出検出用導通電極12が設けられている(ドット抜け検出については図4以下で詳細に説明する)。一対の吐出検出用導通電極12(便宜的に、紙面右側の電極を吐出検出用導通電極12a、紙面左側の電極を吐出検出用導通電極12bと称する)が各ノズル孔10を中心として、各ノズル孔10の縁に形成されている。吐出検出用導通電極12は、各ノズル孔10の縁から各ノズル孔10の内壁上部に至るように形成されている。
吐出検出用導通電極12aは、配線50を介して吐出検出回路42へと接続されるようになっている。吐出検出用導通電極12bは、配線51を介して吐出検出回路42へと接続されるようになっている。吐出検出用導通電極12は、耐擦性及び耐薬品性(耐アルカリ性)に優れた導電性材料(たとえばPt(プラチナ)、Au(金)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、これらの合金又はこれらの化合物等)で構成されている。なお、ノズル基板1と吐出検出用導通電極12とは、たとえばSiO2 からなる絶縁膜等によって絶縁してもよい。
また、ノズル基板1の液滴吐出面1a、接着面1b、及び、ノズル孔10の内壁には、これらの面を液滴から保護する液滴保護膜11が形成されている。したがって、吐出検出用導通電極12上に液滴保護膜11が形成されることになる。この液滴保護膜11は、耐薬品性(特に耐アルカリ性)、耐擦性に優れた絶縁材料(たとえば、SiO2 、Al2 3 、Ta2 5 、Nb2 5 等)で構成されている。よって、液滴吐出動作、たとえば印刷動作中における紙等の媒体送りの際に吐出検出用導通電極12の表面が媒体に接触して摩耗する等の不都合を防止できる。
さらに、液滴吐出面1aの液滴保護膜11上には、撥液膜(図7で示す撥液膜105)を形成するとよい。液滴吐出面1aに撥液膜を形成する場合、ノズル孔10の吐出口縁部を境界にしてノズル孔10の内壁及び接着面1bには撥液膜を形成しないようにする。これにより、液滴に対する耐久性向上及び液滴吐出面1a上の液滴残留防止を図ることが可能になる。
なお、ノズル基板1の接着面1bに、後述するオリフィスや振動板23によりリザーバー22側の液滴に加わる圧力を緩衝するダイアフラムを形成してもよい。また、ここでは、ノズル基板1を上面とし、電極基板3を下面として説明しているが、実際に用いられる場合には、ノズル基板1の方が電極基板3よりも下面となることが多い。
[キャビティ基板2]
キャビティ基板2は、たとえば厚さ約50μmのシリコン基板を主要な材料として構成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたは異方性ウエットエッチングのいずれかあるいは双方を行ない、液滴の流路となる各部材(キャビティ20、オリフィス21、リザーバー22等)が形成されている。キャビティ基板2の各部材の一つであるキャビティ20は、底壁が可撓性を有する振動板23となっており、吐出室(圧力室)として作用し、ノズル孔10に対応する位置に独立に複数個形成されている。したがって、ノズル基板1とキャビティ基板2とを接合すると、キャビティ20は、ノズル孔10及びオリフィス21を介してリザーバー22と連通することになる。
キャビティ20は、個別電極31の電極列に対応して形成されており、液滴が保持されて吐出圧が加えられるようになっている。また、キャビティ20は、紙面手前側から奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。リザーバー22は、液滴供給口25を介して供給される液滴を貯留し、各キャビティ20に液滴を供給するための共通インク室として機能している。つまり、リザーバー22は、各オリフィス21を介して全てのキャビティ20に連通している。
このリザーバー22の底面には、リザーバー22の底面を貫通する液滴供給口25が形成されている。この液滴供給口25は、電極基板3の液滴供給口32と連通するようになっている。そして、液滴供給口25及び液滴供給口32を介して外部からリザーバー22に液滴が供給されるようになっている。オリフィス21は、細溝状に形成されており、リザーバー22とキャビティ20とを連通する液滴供給口として作用している。なお、オリフィス21は、ノズル基板1の接着面1bに形成してもよい。
振動板23は、高濃度のボロンドープ層で構成されている。所望の厚さの振動板23を形成するために、同じだけの厚さのボロンドープ層を形成する。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液による単結晶シリコンのエッチングにおけるエッチングレートは、ドーパントがボロンの場合、約5×1019atoms/cm3 以上の高濃度の領域において、非常に小さくなる。このため、振動板23の部分を高濃度のボロンドープ層とし、アルカリ溶液による異方性エッチングによってキャビティ20を形成する際に、ボロンドープ層が露出してエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を用いることにより、振動板23の厚さ及び吐出室の容積を高精度に形成することができる。
キャビティ基板2の下面(電極基板3と対向する面、振動板23の下面)には、振動板23と個別電極31との間を電気的に絶縁するためのTEOS膜(ここでは、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いてできるSiO2 膜をいう)である絶縁膜24をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:TEOS−pCVDともいう)法を用いて、たとえば0.1μm程の膜厚で成膜している。この絶縁膜24は、振動板23の駆動時における絶縁破壊及びショートを防止するためと、液滴によるキャビティ基板2のエッチングを防止するためのものである。
ここでは、絶縁膜24がTEOS膜である場合を例に説明するが、これに限定するものではなく、絶縁性能が向上する物質であればよい。たとえば、Al23(酸化アルミニウム(アルミナ))や酸窒化シリコン等の酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料を用いてもよい。また、プラズマCVDで成膜する場合に限らず、ALD(Atomic Layer Deposition)法やECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ等で絶縁膜を成膜してもよい。
さらに、キャビティ基板2の上面にも、図示省略の液体保護膜となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜するとよい。このような液体保護膜を成膜することによって、インク滴で流路が腐食されるのを防止できるからである。この液体保護膜の応力と絶縁膜24の応力とを相殺させ、振動板23の反りを小さくできるという効果もある。また、絶縁膜24の表面(絶縁膜24の電極基板3側の表面)であって、個別電極31との当接部分には、DLC等で構成されている高潤滑硬質膜を形成するとよい。
また、キャビティ基板2には、外部電極端子としての共通電極26が形成されている。この共通電極26は、駆動回路4から図示省略のFPC(Flexible Printed Circuit)を介して振動板23に個別電極31と反対の極性の電荷が供給する際の端子となるものである。
[電極基板3]
電極基板3は、たとえば厚さ1mmのホウ珪酸系の耐熱硬質ガラス等のガラスを主要な材料として形成するとよい。これは、電極基板3とキャビティ基板2とを陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。電極基板3のキャビティ基板2側表面における各振動板23に対向する位置には、キャビティ基板2のキャビティ20の形状に合わせた凹部(ガラス溝)30aが、たとえばエッチングにより深さ0.3μm程度で形成されている。
また、この凹部30aの内部(特に底部)には、固定電極となる個別電極31が、たとえばスパッタ法により0.1μmの厚さで作製されている。そして、この凹部30aは、その内部に個別電極31、FPCに接続される端子部31b及び端子部31bと個別電極31とを接続する個別電極リード部31a(特に区別する必要がない限り、個別電極31は、個別電極リード部31a及び端子部31bを含んだものとして説明する)を装着できるように、これらの形状に類似したやや大きめの形状にパターン形成するとよい。また、凹部30aの深さが約0.2μmである場合を例に示しているが、凹部30a内に作製する個別電極31の厚さに応じて、変更可能になっている。
個別電極31は、たとえば酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を0.1μmの厚さでスパッタして作製するとよい。このように、ITOで個別電極31を作製すると、透明なので放電したかどうかの確認が行いやすいという利点がある。なお、個別電極31の材料をITOに限定するものではなく、クロム等の金属材料を用いてもよい。また、電極基板3には、リザーバー22の液滴供給口25と連通し、外部のインクタンクから供給される液滴を取り入れる流路となる液滴供給口32が貫通形成されている。
さらに、電極基板3には、FPC実装部35が凹部30aとともに形成されている。FPC実装部35には、端子部31bが形成されている。つまり、端子部31bは、配線のためにキャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部29内に露出しているのである。このFPC実装部35に図示省略のFPCを実装して、個別電極31の一端(端子部31b)と駆動回路4とを接続するようにしている。したがって、個別電極31には、駆動回路4からFPCを介して駆動信号が供給されるようになっている。
電極基板3とキャビティ基板2とを陽極接合して積層体を形成すると、振動板23と個別電極31との間には、振動板23を撓ませる(変位させる)ことができる一定の駆動ギャップ(空隙)30が、電極基板3の凹部30aにより形成されるようになっている。この駆動ギャップ30は、凹部30aの深さ、及び、個別電極31の厚さにより決まることになる。この駆動ギャップ30は、液滴吐出ヘッド100の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。駆動ギャップ30は、各振動板23に対向する位置に細長く所定の深さを有するように形成されている。この駆動ギャップ30の開放端部は、内部に湿気や埃等が侵入しないようにエポキシ等の樹脂による封止部33で気密封止される。
なお、FPC実装部35の深さが約0.3μmである場合を例に示しているが、これに限定するものではなく、凹部30aの深さに応じて変更するとよい。なお、駆動ギャップ30は、気相処理を行なった後、封止部33で気密封止するとよい。気相処理は、駆動ギャップ30内の水分除去を行なった後に、疎水処理をするように実行される。また、駆動ギャップ30は、キャビティ基板2となるシリコン基板に凹部を形成したり、スペーサーを挟むことによって形成することも可能である。
この液滴吐出ヘッド100は、複数の個別電極31が長辺及び短辺を有する長方形状に形成されており、この個別電極31が、互いの長辺が平行になるように配置されている。そして、図1では、個別電極31の短辺方向に伸びる1つの電極列を示している。なお、個別電極31の短辺が長辺に対して斜めに形成されており、個別電極31が細長い平行四辺形状になっている場合には、長辺方向に直角方向に伸びる電極列を形成するようにすればよい。なお、電極基板3とキャビティ基板2とは陽極接合により、キャビティ基板2とノズル基板1とは接着剤を用いての接合または直接接合により接合することができる。
液滴吐出ヘッド100の動作について簡単に説明する。
キャビティ基板2のリザーバー22には、液滴供給口32及び液滴供給口25を介して外部からインク等の液滴が供給されている。また、キャビティ基板2のキャビティ20には、オリフィス21を介してリザーバー22から液滴が供給されている。駆動回路4は、FPCを介して個別電極31と接続されており、個別電極31への電荷の供給及び停止を制御するようになっている。この駆動回路4は、たとえば24kHzで発振し、選択された個別電極31に0V〜30V程度のパルス電位を印加して電荷供給を行ない、その個別電極31を正に帯電させる。
このとき、共通電極26を介してキャビティ基板2には負の極性を有する電荷が供給され、正に帯電された個別電極31に対応する振動板23を相対的に負に帯電させる。そのため、選択された個別電極31と振動板23との間では静電気力(クーロン力)が発生することになる。そうすると、振動板23は、静電気力によって個別電極31側に引き寄せられて撓む(変位する)ことになる。つまり、個別電極31は、個別電極31に引き寄せられて当接することになる。これによってキャビティ20の容積が増大する。
その後、個別電極31への電荷の供給を止めると、振動板23と個別電極31との間の静電気力がなくなり、振動板23はその弾性力により元の状態に復元する。このとき、キャビティ20の容積が急激に減少するため、キャビティ20内部の圧力が急激に上昇する。これにより、キャビティ20内のインクの一部がインク滴としてノズル孔10より吐出されることになる。このインク滴が、たとえば記録紙に着弾することによって印刷等が行われるようになっている。その後、液滴がリザーバー22からオリフィス21を通じてキャビティ20内に補給され、初期状態に戻る。このような方法は、引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
ここから、実施の形態1の特徴事項であるドット抜け検出について詳細に説明する。図4は、ノズル孔10と吐出検出用導通電極12との関係を説明するための説明図である。図5は、吐出検出の際の動作原理を模式的に示す概念図である。図4(a)が液滴吐出面1aの一部分を示す拡大平面図を、図4(b)が図4(a)のA−A’断面を示す拡大断面図を、それぞれ示している。また、図5(a)が液滴吐出前の状態を示す模式図を、図5(b)が液滴吐出時の状態を示す模式図を、それぞれ示している。なお、図5には、吐出検出用導通電極12と吐出検出回路42で構成される回路図を併せて図示している。
図4(a)に示すように、各ノズル孔10の縁には、一対の吐出検出用導通電極12がノズル孔10を中心として形成されている。また、吐出検出用導通電極12上には、液滴保護膜11が形成されている。したがって、吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとは、ノズル孔10及び液滴保護膜11によって電気的に切断された状態になっている。このような状態において、ノズル孔10に存在する液滴の位置、つまり液滴の量によって、吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとの間における静電容量が変化することになる。
吐出検出用導通電極12と吐出検出回路42で構成される回路に吐出検出回路42から定電圧を加えておけば、静電容量が変化することにより微弱電流が発生することになる。たとえば、液滴吐出前における電極対の静電容量(図5(a)に示すC0)が、液滴吐出時における電極対の静電容量(図5(b)に示すC1)に切り替わることによって微弱電流が発生することになる。つまり、液滴が吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとの間における静電容量を変化させる物質として作用することになる。
この原理を利用することによって、実施の形態1では、ドット抜け検出及び吐出量の異常検出をリアルタイムで実行可能にしている。したがって、液滴吐出ヘッド100では、発生した微弱電流の有無を検知することで、液滴吐出状況(ドット抜け検出及び吐出量の異常検出)をリアルタイムにモニタリングすることができる。つまり、回路状態に何の変化も起きない場合(微弱電流が全く発生していない場合)にはドット抜けが発生していると判断でき、回路状態に変化があった場合(微弱電流が発生している場合)にはその電流値により液滴の吐出量を判断できる。なお、微弱電流の検知は、回路に電流検知器を接続して実行すればよい。
液滴吐出ヘッド100のドット抜け検出動作は、ノズル基板1に形成されたすべてのノズル孔10のドット抜けを検査する動作である。したがって、液滴吐出ヘッド100では、ノズル孔10から液滴が吐出されたかどうか、つまりドット抜けが発生している吐出不良ノズルがあるかどうかを吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとの間の静電容量の変化により検知することができる。よって、液滴吐出動作、たとえば記録紙等の被対象物の印字品質を印刷動作を中断することなく直接確認することができ、吐出不良ノズルを容易に特定できる。さらに、吐出不良ノズルを特定した場合には、別のノズル孔10からの吐出液滴により、被対象物の品質を補完することができる。
なお、ドット抜け検出動作で吐出不良ノズルが発見されると、吐出不良ノズルの数や状態によって自動的に回復処理を実行するか、回復処理を実行せずにオペレーターに報知するか、回復処理や報知を行わずにそのまま印刷処理を再開するかの処置を選択するとよい。すなわち、吐出不良ノズル数や分布状態が許容できない状態であるときには、吐出不良ノズルの吐出特性を回復する回復手段による回復動作を自動的に実行し、吐出不良ノズル数や分布状態が所定の許容範囲内である場合には、回復動作を実行せずにオペレーターに報知し、吐出不良ノズル数や状態が吐出品質すなわち印刷品質への影響が小さい許容範囲以内である場合には、そのままつぎの印刷動作を開始する。
このときの判断基準としては、たとえば、検出された吐出不良ノズルの数が、ノズル群を構成するノズル数に対して印刷品質にほとんど影響を及ぼさない程度の少ない数である場合にはそのままつぎの印刷動作を開始することができる。また、検出された吐出不良ノズルの数が、ノズル群を構成するノズル数に対して印刷品質に無視はできないがある程度許容できそうな範囲の数である場合は、オペレーターに報知してオペレーターの判断により無視してもよい状態であれば印刷を開始し、無視できないレベルであれば回復動作を行なう。さらに、検出された吐出不良ノズルの数が、ノズル群を構成するノズル数に対して印刷品質に影響するくらい多い数である場合は、自動的に回復動作を実行する。
また、吐出不良ノズルの分布状態として、たとえば隣接したノズル孔10が複数吐出不良であると検出されたような場合は、印刷品質に影響する可能性が高いので、吐出不良ノズルの数に係わらず自動的に回復動作を行なうとよい。なお、上記判断基準となる、吐出不良ノズル数等は、予め設定してRAM等の記憶手段に記憶させておくとよい。そうすれば、記憶させた設定値を用いて判断するよう制御されることになる。たとえば、1色ベタの面積が多いデザインだと吐出不良ノズルによる印刷不良が目立ちやすく、細かい柄だと多少吐出不良ノズルがあっても目立ちにくいため、印刷するデザインや記録媒体の種類等に応じてオペレーターが設定できるようにしている。
以上より、液滴吐出ヘッド100は、ノズル孔10内に存在する液滴の量により吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとの間における静電容量を変化し、そのとき発生する微弱電流を検出することで、各ノズル孔10のドット抜けと吐出量を検出できる。したがって、液滴吐出ヘッド100では、液滴の吐出状況をリアルタイムにモニタリングすることが可能となる。よって、吐出不良ノズルを迅速に発見することができ、被対象物の品質が悪化するのを未然に防止することができる。
また、吐出検出用導通電極12上に液滴保護膜11を形成する構造であるため、液滴保護膜11によって吐出検出用導通電極12も保護することが可能である。また、吐出検出用導通電極12に使用する導電性材料は、耐擦性及びインクに対する耐インク性(耐薬品性)を有する材料としたので、実用上、電圧制御しやすく、また、吐出検出用導通電極12の耐久性を確保でき、長期間の使用に渡って信頼性を確保することができる。
次に、液滴吐出ヘッド100のノズル基板1の製造工程について説明する。図6〜図8は、ノズル基板1の製造工程例の一部を示す縦断面図である。図6〜図8に基づいて、ノズル基板1の製造工程についてその特徴事項を中心に説明する。
(A)厚み725μmで導電性を有するシリコン基板1’を用意し、図示省略の熱酸化装置にセットして酸化温度1075℃、酸化時間90分、酸素と水蒸気の混合雰囲気中の条件で熱酸化処理し、シリコン基板1’の表面に膜厚0.5μmの熱酸化膜(SiO2 膜)101を均一に成膜する。そして、シリコン基板1’の接着面1bの熱酸化膜101に第2ノズル孔10bとなる部分101aをパターニングする。
(B)シリコン基板1’の接着面1b上に、厚さ1.0μmのレジスト膜102を形成し、フォトリソグラフィにより第1ノズル孔10aとなる部分102aをパターニングする。
(C)図示省略のICPドライエッチング装置により、レジスト膜102の第1ノズル孔10aとなる部分102aを、たとえば深さ40μmで垂直に異方性ドライエッチングし、第1ノズル孔10aを形成する。この場合のエッチングガスとしては、C4 8 、SF6 を使用し、これらのエッチングガスを交互に使用すればよい。ここで、C4 8 は形成される溝の側面にエッチングが進行しないように溝側面を保護するために使用し、SF6 はシリコン基板1’の垂直方向のエッチングを促進させるために使用する。
(D)レジスト膜102を除去した後、ICPドライエッチング装置により熱酸化膜101の第2ノズル孔10bとなる部分101aを、深さ40μmで垂直に異方性ドライエッチングし、第2ノズル孔10bを形成する。この際に、第1ノズル孔10aも深さが70〜80μm程度までエッチングされ、ノズル孔10が完成する。
(E)シリコン基板1’の表面に残る熱酸化膜101を剥離した後、シリコン基板1’の液滴吐出面1a、接着面1b及びノズル孔10の内壁に、膜厚0.1μmの液滴保護膜103をドライ酸化で形成する。
(F)シリコン基板1’の接着面1bにサポート基板110を貼り付け、液滴吐出面1a側から板厚が65μmになるまで薄板化する。
(G)液滴吐出面1aにメタルマスク160を設置し、厚さ0.1μmの吐出検出用導通電極12の片側(吐出検出用導通電極12a)を斜方スパッタ又は斜方蒸着によって形成する。このとき、斜方スパッタ又は斜方蒸着の角度を制御して、吐出検出用導通電極12aをノズル孔10の内壁上部にまで形成する。
(H)メタルマスク160を取り外し、メタルマスク161を設置し、厚さ0.1μmの吐出検出用導通電極12のもう片側(吐出検出用導通電極12b)を斜方スパッタ又は斜方蒸着によって形成する。このとき、斜方スパッタ又は斜方蒸着の角度を制御して、吐出検出用導通電極12bをノズル孔10の内壁上部にまで形成する。このように、吐出検出用導通電極12aと吐出検出用導通電極12bとを別工程で形成するので、これらが接続することによる短絡の発生を確実に防止することができる。
(I)メタルマスク161を取り外し、シリコン基板1’の液滴吐出面1aの表面に、液滴保護膜11となる厚さ0.2μmのシリコーン重合膜をシロキサン原料のプラズマCVDで形成する。そして、空気中でUVを照射して脱水縮合させ、液滴保護膜11の表面をSiO2 化する。
(J)シリコン基板1’の液滴吐出面1aにさらに撥液処理を施す。この場合、シランカップリング材をディップコートし、液滴吐出面1aに撥液膜105を形成する。このとき、第1ノズル孔10a及び第2ノズル孔10bの内壁にも、撥液膜105が形成される。
(K)液滴吐出面1aに、サポートテープ120を貼り付け、その状態で接着面1b側のサポート基板110を剥離する。そして、接着面1b側から酸素又はアルゴンのプラズマ処理を行い、ノズル孔10の内壁に形成された撥液膜105を破壊して親水化する。
(L)サポートテープ120を剥離する。
(M)吐出検出用導通電極12の配線接続部分の液滴保護膜11および撥液膜105を、レーザー照射により選択的に破壊する。そして、吐出検出用導通電極12の配線接続部分を露出させる。
以上の製造工程により、ノズル基板1を容易に製造することができる。
このようにして作製したノズル基板1を用いて液滴吐出ヘッド100を作成する際には、ノズル基板1の接着面1bに、キャビティ基板2の接合面を貼り合せて、ノズル基板1とキャビティ基板2の接合体を形成する。その後、ノズル基板1とキャビティ基板2からなる接合体において、キャビティ基板2の他の接合面に電極基板3の接合面を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、ノズル基板1、キャビティ基板2及び電極基板3の接合体を形成し、液滴吐出ヘッド100を完成する。
実施の形態2.
図9は、実施の形態1で作製した液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。図10に示す液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンターである。なお、この液滴吐出装置150は、周知の製造方法によって製造することができる。なお、液滴吐出ヘッド100は、図10に示す液滴吐出装置150の他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。また、配線基板をインクジェット法により作成するプリント配線基板製造装置の液滴吐出装置としても適用することができる。
また、液滴吐出ヘッド100は、圧電駆動方式の液滴吐出装置や、バブルジェット(登録商標)方式の液滴吐出装置にも使用できる。たとえば、液滴吐出ヘッド100をディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。
液滴吐出ヘッド100に搭載されている静電アクチュエーターは、たとえば光通信や光演算、光記憶装置、光プリンター、映像表示装置等に用いられている光スイッチ、ミラーデバイス、レーザプリンターのレーザ操作ミラーの駆動部、その他の微細加工の素子(デバイス)、あるいは装置等にも適用することも可能である。いずれに適用される場合であっても、液滴帯電方式の吐出不良ノズル検出方法に対応することが可能である。
なお、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び、液滴吐出ヘッドの製造方法は、上述の実施の形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において変更することができる。また、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100が電極基板3、キャビティ基板2及びノズル基板1からなる3層構造である場合を例に説明したが、ガラス基板、キャビティ基板、リザーバー基板及びノズルプレートからなる4層構造であってもよい。
1 ノズル基板、1’ シリコン基板、1a 液滴吐出面、1b 接着面、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 駆動回路、5 液滴、10 ノズル孔、10a 第1ノズル孔、10b 第2ノズル孔、11 液滴保護膜、12 吐出検出用導通電極、12a 吐出検出用導通電極(第1の電極)、12b 吐出検出用導通電極(第2の電極)、20 キャビティ、21 オリフィス、22 リザーバー、23 振動板、24 絶縁膜、25 液滴供給口、26 共通電極、29 電極取り出し部、30 駆動ギャップ、30a 凹部、31 個別電極、31a 個別電極リード部、31b 端子部、32 液滴供給口、33 封止部、35 FPC実装部、42 吐出検出回路、50 配線、51 配線、100 液滴吐出ヘッド、101 熱酸化膜、101a 第2ノズル孔となる部分、102 レジスト膜、102a 第1ノズル孔となる部分、103 液滴保護膜、105 撥液膜、110 サポート基板、120 サポートテープ、150 液滴吐出装置。

Claims (10)

  1. 液滴を吐出する複数のノズル孔、前記ノズル孔のそれぞれを中心として各ノズル孔の縁に形成された一対の電極、及び、前記電極の上に形成された液滴保護膜を少なくとも有するノズル基板と、
    底壁が振動板を構成し、前記ノズル基板の前記複数のノズル孔に連通して液滴を収容する複数の圧力室を有し、前記ノズル基板に積層されるキャビティ基板と、
    前記振動板を駆動する個別電極を有し、前記キャビティ基板に積層される電極基板と、
    前記一対の電極に電圧を印加し、前記ノズル孔に存在する液滴の量により変化する前記一対の電極間の静電容量によって液滴吐出状況の良否を判断する吐出検出回路と、を有する
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記吐出検出回路は、
    吐出液の有無により前記一対の電極間の静電容量が変化することで発生する微弱電流を検知して液滴吐出状況の良否を判断する
    ことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記吐出検出回路は、
    前記一対の電極に定電圧を印加している
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記一対の電極が、
    前記ノズル孔を中心として対向配置されていて、
    その一部が前記ノズル孔の内壁にまで及んでいる
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記一対の電極は、
    耐擦性及び耐薬品性を有する導電性材料で構成されている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記導電性材料は、
    Pt、Au、Mo、Ta、これらの合金又はこれらの化合物のいずれかである
    ことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 前記液滴保護膜は、
    耐擦性及び耐薬品性を有する絶縁材料で構成されている
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  8. 前記絶縁材料は、
    SiO2 、Al2 3 、Ta2 5 、Nb2 5 のいずれかである
    ことを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出ヘッド。
  9. 前記請求項1〜8のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載した
    ことを特徴とする液滴吐出装置。
  10. シリコン基板にノズル孔となる凹部を形成する工程と、
    前記シリコン基板に液滴保護膜を熱酸化により形成する工程と、
    前記シリコン基板の凹部形成面にサポート基板を貼り合わせる工程と、
    前記シリコン基板の凹部形成面とは反対側面を薄板化し前記凹部を開口する工程と、
    開口させた各ノズル孔の縁の一方側に斜方スパッタ又は斜方蒸着によって第1の電極を形成する工程と、
    開口させた各ノズル孔の縁の他方側であって前記一方側に形成した前記第1の電極に前記ノズル孔を中心として対向する位置に斜方スパッタ又は斜方蒸着によって第2の電極を形成する工程と、
    前記シリコン基板の薄板化した面及び前記凹部内部に液滴保護膜を形成する工程と、
    前記液滴保護膜の上に撥液膜を形成する工程と、
    前記シリコン基板から前記サポート基板を剥離し、前記シリコン基板に形成した前記撥液膜を前記サポート基板を剥離した側から親水化処理する工程と、を有する
    ことを特徴とするノズル基板の製造方法。
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