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JP2010189411A - 病原菌株に特異的な新規生成物およびそのワクチンとしての使用および免疫療法における使用 - Google Patents

病原菌株に特異的な新規生成物およびそのワクチンとしての使用および免疫療法における使用 Download PDF

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Abstract

【課題】新規単離抗原性ポリペプチド、およびコアB2/Dゲノムに属し、偏共性大腸菌には存在しないポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】本発明は、患者の集団において免疫応答を誘導することおよび細菌感染を予防することを可能にするワクチン組成物の製造のための、配列番号134のポリペプチドの使用に関する。好ましくは、この使用において、ワクチン組成物は、腸管外大腸菌株に特異的であり、配列番号134の抗原性ポリペプチドの有効量を、配列番号1〜66および133、135〜145の任意のポリペプチド(ただし、配列番号8は除外)、担体とともに含有してなるものである。
【選択図】なし

Description

本発明は病原菌株、特に腸管外大腸菌株に特異的な新規生成物に関する。
より詳しくは、本発明は生成物としての抗原性ポリペプチドおよび当該ポリペプチドに対する抗体、ならびにそれぞれのワクチンとしての使用および免疫療法における使用に関する。
大腸菌(Escherichia coli)は恐らくもっとも良く知られた細菌種であって、臨床微生物学研究室においてもっとも一般的に単離される菌の一つであり、種々の型の大腸菌に関し、またそれらが原因となる感染症に関して多くの誤解のある菌の一つでもある。
ヒトに対し生物学的意味のある大腸菌株は大まかに以下の3つの主要群に分類することができる:
1.偏共性株であり、正常細菌叢の一部である。
2.腸内病原菌であり、正常細菌叢の一部ではない。この群は種々の病原型(EPEC、EHEC、ETEC、EIEC)を含むが、シゲラ(Shigella)は含まない。
3.腸管外菌株(ExPEC)であり、胃腸管(GI)外での感染に関与するが、正常菌叢の一部でもあり得る。宿主はすべて易感染性であってもなくてもこれらの感染に対して感受性である。
ExPEC菌株は主たる尿路感染症(UTI)、取分け膀胱炎、腎盂腎炎、およびカテーテル関連感染症の原因となる。
また、これらの菌株は腹部感染症、院内肺炎、新生児髄膜炎、柔組織感染、および骨感染の原因ともなる。これら局在化のいずれもが臓器不全の場合の敗血症の危険のある菌血症となり得る。事実、ExPEC菌株は血液培養から分離されるもっとも一般的なグラム陰性細菌である。
米国では、細菌性敗血症の発症が毎年750,000事例あり、その225,000例が死亡原因となっている。1690の症例に関する最近の研究では、同定された主たるバクテリア種がExPEC(症例の16%)であり、次が黄色ブドウ球菌(症例の14%)であることを示した。
これらの数値は院内感染および市中感染両方におけるExPEC菌株の重要性を証明するものである。
ExPEC株は大腸菌株の同種亜集団に相当する。大腸菌株内の系統発生的関連性を分析すると、大腸菌はA、B1、B2およびDと命名される4つの主要な系統発生群に属すことが判明した。
ExPEC株の病原性は細胞外微生物の病原性であること、すなわち、これらの菌株は細胞外液での増殖によく適合し、多形核による食作用に効率的に抵抗する。初期の研究は、細胞外増殖に重要であるとされる病原性因子が主にB2/D大腸菌に見出されること、従ってB2/DサブグループにはExPECの大半が含まれることを示唆しているとしていた。このことはB2/D菌株がAおよびB1菌株よりもより病原性であることを示す動物実験により再確認された。引き続いての疫学的研究が事実上これらの仮説を確認した。B2/D分離株は主として新生児髄膜炎(87%)および市中または院内尿性敗血症(それぞれ93%および85%)の原因菌株である。
同様の結果が膀胱炎(70%がB2大腸菌単独による)について報告されており、従って、ExPECの重要性を証明するものである。
これらの最近の知見は、B2/Dサブグループの菌株が細胞外液中での増殖にもっとも適合する大腸菌コア・ゲノムであることを示している。
このコア・ゲノムに加えて、ExPEC菌株は腸管外大腸菌感染症(尿路感染症(UTI)、尿性敗血症、新生児髄膜炎など)の異なる病因と関連する病原性因子をコードする様々な病原性の島を持つ。主たる病原性因子としては、細胞外増殖にとって重要であることがよく知られている被膜、および鉄キレート化システム(例えば、エロバクチン(aerobactin)およびエンテロケリン(enterochelin))がある。さらに、病因によっては、これらの菌株が毒素(CNF、ヘモリシンなど)、アドヘシン(pap、sfaなど)およびその他の鉄キレート化システムを産生し得る。
B2/D大腸菌が病原性大腸菌株の別個の亜集団に相当するという概念は、B2/D大腸菌がヒトの糞便からあまねく分離されるものではないという事実により再確認される。これら菌株は僅か11%の個体から回収されるが、一方、AおよびB1のサブグループはヒト母集団個体の74%の糞便に存在する。
上記のように、ExPEC株の病原性は細胞外液で繁殖する能力に、また多形核による補体と食作用の殺菌活性に抵抗する能力に依存する。従って、他の細胞外病原菌(ヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonieae)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))については、ExPECに対する防御抗原が、血清のオプソニン作用および/または殺菌活性を増進する抗体を誘発しなければならない。
上記の論述を考慮すると、有効な抗原はB2/D大腸菌の母集団に主として提示されなければならない。他の細胞外病原と同様に、被膜の多糖は理想的な抗原であるはずであるが、殆どの病原性B2株はK1多糖を発現する。後者はB群の髄膜炎菌の構造に一致する構造を有し、非抗原性で、脳と共通の抗原を共有する。もう一つの可能な標的はリポ多糖(LPS)である。しかし、様々なサブグループか共有する多くの異なるLPS血清型が存在する。
本発明者らは今回、B2/Dゲノムによりコードされるが、AおよびB1大腸菌株には欠けている幾つかの特定の成分が、抗原として特に有用であり、またExPECによる病因を特異的に予防することができることを見出した。これら抗原性成分の相同体は他の病原性バクテリア種にも見出され、従って、これらバクテリアが原因となる病因を予防するために有用である。従って、ExPEC株に特異的な生成物およびその使用についての文献は、いずれもこれらの種の成分を包含する。
例えば、相同性抗原は以下の種に存在し、そのままバクテリアによる疾患の予防に使用し得る:
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)O157:H7、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、バシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、ブルコルデリア・カパシア(Burkholderia cepacia)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ・パラティフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、モキサレラ・カタラリス(Moxarella catarrhalis)、シゲラ・ジセンテリア(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、スタフィロコッカス・エピエルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、および上記種のいずれかの属に入る種。
従って、本発明の目的は、新規単離抗原性ポリペプチド、およびコアB2/Dゲノムに属し、偏共性大腸菌には存在しないポリヌクレオチドを提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、かかる抗原性ポリペプチドまたはペプチド性フラグメントに対して生起させた抗体を提供することにある。
本発明のさらなるもう一つの目的は、当該ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、ExPECに起因する腸管外感染症およびExPEC抗原性ポリペプチドに相同の抗原性ポリペプチドを発現する他の病原性菌株に起因する病因に特異的なワクチン組成物を提供することにある。
また、本発明は腸管外であるヒトまたは動物のコンパートメントにおける大腸菌の成長(全身性下痢性感染症、例えば、敗血症、腎盂腎炎、または新生児髄膜炎)を検出および処置する手段に関する。
クローニングと発現後のタンパク質精製結果を示す、アフィニティカラム精製後の組換えタンパク質のクマシーブルー染色SDSゲルである。 B2/D対照標準株からのゲノムDNAとのハイブリダイゼーション後のDNAアレイの写真である。
本発明にて使用される単離した抗原性ポリペプチドはB2/D大腸菌に特異的であり、大腸菌のAおよびB1分離株には存在しないポリペプチド内から選択する。それらはコアB2/Dゲノムに属する遺伝子がエンコードし、共生大腸菌には存在しない。
それらは配列番号11から66もしくは133〜145の配列または配列番号11から66もしくは133〜145の全配列のそれぞれと最少25%の同一性を有する相同配列からなる群において選択される配列を有する。
配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52から55、58、60、63、133〜138の配列を有する単離したポリペプチドは新規のポリペプチドであり、従って、本発明の一部である。
また、本発明は相同性単離抗原性ペプチドにも関係し、該べプチドは上記定義の配列番号の配列を有するポリペプチド、取分け配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52から55、58、60、63、133〜138の配列を有するポリペプチドに少なくとも25%の同一性を有するポリペプチド、またはデフォルトパラメータによるBLASTPまたはBLASTXを用いて決定した場合に、当該配列番号に対応する配列をもつポリペプチドの少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個もしくは60個を超える連続的アミノ酸からなるフラグメントに少なくとも25%の同一性を有するポリペプチドを含んでなる。
当該ポリペプチドは以下の工程からなる方法により得られる:
a−配列分析にもとづき、外膜に位置しているか、またはバクテリアが分泌するポリペプチドの配列を選択する工程;
b−B2/D臨床分離株に保存された当該ポリペプチドをコードする遺伝子を同定する工程;
c−工程aにて同定し、工程bにてB2/D分離株に保存されたものであると判定したポリペプチドを精製する工程;
d−動物モデルを使用し、該ポリペプチドの免疫原性を試験する工程。
本発明において、用語“保存された”(conserved)とは、該ポリペプチドをコードする遺伝子が、B2/D分離株中に少なくとも50%の頻度で、好ましくは60%を超える頻度、より好ましくは80%を超える頻度、さらにより好ましくは85%を超える頻度で存在し、またA/B分離株中には40%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満存在することを意味する。
工程cにおいて使用される動物モデルは感染成熟(adult)動物で、最終的に免疫低下する動物である。
成熟動物、取分けマウスを腹腔内感染させ、最終点では動物が死に至るかおよび/または菌血症となるか測定する。
動物は、例えば、好中球減少を誘発するシクロホスファミドを注射することにより免疫低下させることができる。かかるモデルは免疫低下した患者において、大腸菌による敗血症予防のために該抗原を使用することを保証するだろう。もう一つの動物モデルは2〜3日令の乳仔マウスである。
B2/Dの性質を保存し、上記方法の工程dに定義した抗原である変異体または分別配列もまた本発明の一部である。本明細書において“変異体”という用語は元の基本配列に関して挿入および/または欠失および/または置換を有する配列を意味するものとする。本明細書において“分別”(fractional)という用語は元の基本配列のフラグメントを意味するものとする。
本発明はまた、普遍的遺伝子コードに従い、またこのコードの縮重を考慮した上記定義のようなポリペプチドをコードする単離したポリヌクレオチドの使用にも関する。“ポリヌクレオチド”という用語はcDNAを含むDNAなど、mRNAを含むRNAなどのヌクレオチド配列を包含する。
当該ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号77から配列番号132または146から158に相当する配列を有する。
より好ましくは、当該ポリヌクレオチドは配列番号80、81、83、87、88、89、94,95、96、98、102、104、105、107〜110、112、115、116、118、119、126、127、130、132、135、146〜151に相当する配列を有する。
本発明はまた当該ポリヌクレオチドの相同体にも関する。当該相同体は、デフォルトパラメータによるBLASTNを用いて決定した場合に、当該配列をもつポリヌクレオチドに少なくとも25%の同一性を有するか、または当該配列番号の1つを有するポリヌクレオチドの少なくとも15個、少なくとも30個、少なくとも60個、少なくとも90個、少なくとも120個、少なくとも150個、少なくとも180個もしくは180個を超える連続したヌクレオチドからなるフラグメントに少なくとも25%の相同性を有し、それらは本発明によるポリペプチドの抗原性を有するポリペプチドをコードし得る限りにおいて、本発明に包含されるものである。
本出願はまた当該ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含んでなるベクターおよび遺伝子工学により形質転換した細胞を目的とするものであり、該細胞は形質移入により当該ポリヌクレオチドの少なくとも1種および/または本発明による少なくとも1種のベクターを含んでなることを特徴とし、および/または当該形質転換がこの細胞により上記定義のようなポリヌクレオチドに相当する少なくとも1種のポリペプチドの産生を誘導することを特徴とする。
本発明はまたそれ故に大腸菌に対するワクチンとして有用な抗原性ポリペプチドを単離同定する方法に関する。
かかる方法は以下の工程を含んでなる:
a−配列分析にもとづき、外膜に位置しているか、またはバクテリアが分泌するポリペプチドの配列を選択する工程;
b−B2/D臨床分離株に保存された当該ポリペプチドをコードする遺伝子を同定する工程;
c−工程aにて同定し、工程2にてB2/D分離株に保存されたものであると判定したポリペプチドを精製する工程;
d−動物モデルを使用し、該ポリペプチドの免疫原性を試験する工程。
選択した抗原性ポリペプチドは、単独または組合せで、病原性および感染部位(UTI、腎盂腎炎、敗血症、菌血症、新生児髄膜炎)に関係なく、ExPEC株による感染予防のために抗体応答を誘発することが可能である。
かかるポリペプチドは取分け配列番号1から配列番号66もしくは133〜145の配列を有するか、または相同性配列に相当する。
従って、本発明は大腸菌腸管外感染に特異的なワクチン組成物であって、上記定義の少なくとも1種の抗原性ポリペプチドまたはそのフラグメントの有効量と担体とを含んでなり、特に、配列番号1から配列番号66の少なくとも1種のポリペプチドを含んでなる組成物に関するが、配列番号8と133〜145およびその相同性ポリペプチドは除外する。
かかるワクチン組成物は尿路系感染、腎盂腎炎、敗血症、菌血症、新生児髄膜炎の予防に特に有用である。
本発明のワクチン組成物は以下の患者について適応とする:
−免疫抑制した患者、理想的には免疫抑制療法の開始前の患者;癌、糖尿病、白血病の患者、移植患者、長期ステロイド療法を受けている患者。
−大腸菌感染の危険の高い外科手術前の患者(腹部外科手術)
−すべての症例において、本発明の大腸菌ワクチンは黄色ブドウ球菌ワクチンと併用して投与し得る。
−再発UTIの患者、取分け1回の腎盂腎炎のエピソードをもつ患者
−新生児感染の予防には母体のワクチン接種を必要とし、潜在的な問題を避けるために妊娠のかなり前にワクチン接種を要する。理想的には、かかるワクチンは遅発性新生児感染をも予防するために、B群連鎖球菌多糖感染ワクチンと併用すべきである。指摘すべきことは、妊婦においてB2/D大腸菌に対する抗体のレベルを誘発することは、常に妊娠という状況下で危険性のあるUTIをも予防し得ることである。
当該ワクチン組成物の剤形および用量は、標的とした適応症、所望の投与方法、および検討下の患者(年齢、体重)の関数として当業者が開発し、調整することが可能である。
これらの組成物は1種以上の生理学的に不活性な基剤(ベヒクルvehicle)と、特に、剤形および/または所望の投与方法に適した賦形剤を含有してなる。
例えば、該ワクチンはアジュバントとしてアルミニウム・ベース無機塩を含む無菌水中の精製ポリペプチド懸濁液とし、最初と追加(ブースター)の注射として皮下投与することができる。
上で同定したポリペプチドに対して起こした抗体もまた本発明の一部である。
該抗体は生理的条件下に(インビボまたはインビボ類似)ヒトまたは動物生体に投与した場合、またELISA型条件下に当該結合生成物をアッセイおよびインビトロ法に使用しようとする場合に、当該ポリペプチドに結合することができる。かかる抗体はヒトまたは動物において、ExPEX株の腸管外増殖を有利に阻害する。
該抗体は新生児または外科的手技を受ける患者などのリスク集団における重篤な感染症の処置および予防のために、ポリペプチド抗原に特異的な抗体による免疫療法での適用に特に有用である。これらの適用のために、特異的ヒトモノクローナル抗体(Mab)を該ペプチドまたはポリペプチドから誘導し得る。
本発明によるポリペプチドを使用してかかる抗体を製造する方法は、当業者が利用可能である。当該方法は簡便な方法であり、詳しくは、ウサギなどの動物の免疫と生成した血清の採取、および任意工程としての得られた血清の精製からなる。モノクローナル抗体の製造に適した技法はケーラーとミルシュタインの方法である(Kohler and Milstein, Nature 1975, 256: 495-497)。
当該抗体は意図するヒトまたは動物の細胞を認識しない。
特に、ポリペプチド抗原に特異的なモノクローナル抗体による免疫療法適用例としては、新生児または外科的手技を受ける患者などのリスク集団における重篤な感染症の処置および予防である。これらの適用のためには、特異的ヒトモノクローナル抗体を該ペプチドまたはポリペプチドから誘導する。
該抗体またはそのフラグメントをヒトに投与しようとする場合には有利にヒト化する。
別法として、ヒト化Mabは該抗原に特異的なマウスまたはラットのMabから誘導し得る。これらの完全にヒト化したMabは、常套の分子技法を用いて、親となるマウスまたはラットの抗菌性抗体の相補性決定領域をヒトのIgG1カッパ重鎖および軽鎖の枠組みに接続することで構築する。
本発明はまた望ましくない腸管外大腸菌の存在もしくは不存在の診断のために、および/または腸管外大腸菌の感染の診断のために、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52から55、58、60、63、133〜138の配列を有するポリペプチド、抗体またはポリヌクレオチドの少なくとも1種をその有効量で使用することを目的とする。
かかる化合物の存在または不存在の検出は、具体的には、ヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより、PCR増幅により、またはそのポリペプチド生成物の検出により実施し得る。かかる化合物の存在検出により、B2/D大腸菌が存在すると結論することができる。
本発明はまた望ましくない大腸菌増殖を軽減および/または予防および/または処置するための医薬組成物に関し、該組成物は上記定義の少なくとも1種のポリペプチド、特に、配列番号1〜66から133〜145の配列を有するポリペプチドの有効量を、医薬的に許容し得る担体と組合わせて、含有してなる。
好適な医薬組成物は、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52から55、58、60、63、133〜138の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドを含有してなる。
また、本発明は組成物の製造、詳しくは、大腸菌感染(例えば、全身性および非下痢性感染症)などの望ましくない大腸菌の増殖、腸管外大腸菌の存在または衛生上の汚染を軽減および/または予防および/または処置する医薬組成物製造のために、上記定義のポリペプチドを使用することを目的とする。
図1および2を参照しながら、以下の実施例に従い本発明を説明するが、これら実施例は本発明を制限するものではない。
配列1〜66および133〜145から選択したポリペプチドの免疫原性アッセイ(配列番号8を除く)
選択したポリペプチドのクローニング発現と精製
配列番号28に相当するポリペプチドをエンコードする配列番号95を有する核酸を、古典的なクローニング法に従って、原核細胞発現ベクター中で、シグナル配列(16個の最初のアミノ酸をコードする)なしにクローン化した。組換えプラスミドを用い、大腸菌株BL21を形質転換した。組換えプラスミドを含む形質転換細胞をアンピシリン100μg/ml含有するLB培地で選択した。個々のクローンを取り出し、1mMのIPTG存在下に増殖させ、組換えタンパク質の発現を誘導した。培養細胞の全タンパク質を細胞溶解により抽出した。組換えタンパク質はアフィニティカラムで精製した。
クローニングおよび発現後のタンパク質精製
IPTG誘発バクテリアの全細胞溶菌液をNi−NTAマトリックス(キアゲン(Qiagen)登録商標)と4℃で60分間混合し、カラムに負荷load)した。カラムを洗浄して非特異結合を除き、組換えタンパク質は溶出バッファー(pH5.9)1mlにより3回溶出した。次いで該タンパク質を溶出バッファー(pH4.5)1mlにより4回溶出した。
図1はアフィニティカラム精製後の組換えタンパク質のクマシーブルー染色SDSゲルを表す;PM:マーカー;E1〜E4:各精製フラクションから収集したサンプル。矢印は組換えタンパク質に相当するバンドを示す。
動物モデルにおける免疫原性試験
配列番号28からのポリペプチド調製物をスイスマウスに注射し、以下のように抗体応答を誘発した:
第0日に該タンパク質20μgをPBSと完全フロイントアジュバントの1:1溶液100μgとして注射することにより第1回の免疫を実施した。対照動物にはPBSと完全フロイントアジュバントの1:1溶液100μlを注射した。
追加の注射(ブースター)は第21日目にPBSと完全フロイントアジュバントの1:1溶液100μl中タンパク質10μgで実施した。
ワクチン接種動物の血清はマウスの尾部に穿刺し、血液を引き抜き調製した。
動物血清中の特異抗体検出はブースター注射前20日目に、標準的プロトコールに従い、ウエスタンブロット法により実施した。精製したポリペプチドを電気泳動(1レーンあたり10μg)に付し、ニトロセルロース膜に移行させた。
この膜は次いでPBS/0.1%トゥイーン20/5%粉ミルクと35分間インキュベーションして飽和させた。
希釈した血清をこの膜と45分間インキュベートした。膜はPBS/トゥイーンで5分間3回洗浄した。次いで、結合した抗体を西洋わさびペルオキシダーゼ酵素にカップル結合した抗マウスIgGで認識した。PBS/トゥイーンで3回、PBSで3回洗浄した後、色素源基質DABと過酸化水素を添加して酵素活性を呈示させた。
結果:1/100に希釈したワクチン接種動物の血清は、注射したポリペプチドに相当するユニークバンドを呈示した。対照動物の血清には該ポリペプチドに対する抗体を検出できなかった。
第42日目にシクロホスファミド300μlを、また第45日目に200μlをマウスの腹腔内に注射し、好中球減少症を誘発して攻撃感染に対する感受性を上昇させた。第46日目にワクチン接種マウスおよび対照マウスに、大腸菌Bwt2/D株C5をLD50(致死用量)の10倍に等しい用量で腹腔内注射し、攻撃した。
選択したポリペプチドの免疫原性と選択したポリペプチドによるワクチン接種が賦与した予防効果を、攻撃後3日目のワクチン接種動物の生存により評価した。
ポリペプチドの免疫原性を証明するワクチン接種のもう一つの例:
−24匹のBalb/cマウス、メス、6週令に該タンパク質と完全フロイントアジュバントを皮下注射することにより免疫し、14匹の対照マウスにはCFAとPBSを注射した。
−3週間後、10μgのタンパク質と不完全フロイントアジュバントをブースター注射した。
ワクチン接種プロトコール:
0日目:組換えタンパク質20μgのCFA溶液0.1mlにより、マウス(24匹)を皮下投与免疫化
21日目:組換えタンパク質10μgのIFA溶液0.1mlによる追加免疫
61日目:血液サンプル採取−免疫マウス4匹−対照マウス2匹
→抗原特異抗体応答の分析(ELISA)
全溶菌液のWB(ウエスタンブロット)
62日目:マウスの攻撃
62日目の攻撃の前に、61日目に血清を集め、ワクチン接種動物での抗体応答を分析した。
・免疫マウスの血清WB分析を実施し、上記の免疫に使用した組換えタンパク質に対する抗体応答を検出した。
・ELISAアッセイを設定し、ワクチン接種動物の抗体力価を測定した。
− 各組換えタンパク質は96穴プレート上に200ng/100μlコーティングバッファーと共に被覆し、そのプレートを3%BSA/PBSで飽和した。
− 血清はPBS1×/1%BSAにより1:500から1:1024000に2倍系列希釈し、ペルオキシダーゼ結合したウサギ抗マウスIgGおよびOPD(o−フェニレンジアミン)色素源基質を用いて抗体結合を呈示させた。
− サノフィ(Sanofi)ディアグノスティック・パスツールPR2100(登録商標)によりOD495を読み取る。
・結果:
Figure 2010189411
・バクテリアが発現した未変性抗原を認識する血清能力を評価するために、ウエスタンブロットを全バクテリア溶菌液についても実施した。
この目的のために、OD600=0.5〜0.6まで鉄キレート化剤を添加したかまたは添加しないLB培地中でバクテリアを増殖させ、10000rpmで5分間遠心分離することによりペレット化した。このペレットをSDS含有1X負荷バッファー中に再懸濁して溶菌し、ゲル上を移動させる前に95℃で5分間加熱した。次いで、ウエスタンブロットアッセイを対照の血清およびワクチン接種動物の血清について実施した。
表2の結果は、組換えタンパク質に対しての、また大腸菌溶菌液に対してのワクチンを接種したマウスの血清について得られた結果を示す。
Figure 2010189411
・防御アッセイ、エンドポイント:死亡率
第62日目に、ワクチン接種マウス20匹および対照マウス10匹に、B2群に属する大腸菌病原性株を、LD50(5.10cfu/マウス)に等しい用量で腹腔内注射により攻撃投与した。死亡率を48時間目に記録する。表3の結果はワクチン接種マウス群と対照マウス群における生存の差を表す防御率として表したものである。
Figure 2010189411
・防御アッセイ、エンドポイント:菌血症
第62日目に、ワクチン接種マウス10匹および対照マウス5匹に、B2群に属する大腸菌病原性株をLD50(1.10cfu/マウス)の1/5に等しい用量で腹腔内注射により攻撃投与した。この感染用量でマウスは48日まで生きながらえた。48時間目に各マウスについてヘパリンの存在下に血液採取した。菌血症を評価するために、血液をLB培地に塗布し、一夜培養後にコロニー数を計測した。
臨床分離株においてB2/D群大腸菌に特異的なORFのDNA配列の分布
B2/D群大腸菌に特異的なDNAアレイ(array)膜を作製するために、大腸菌のB2/Dコアゲノムに特異的なものとして同定したORFに相当するDNAをPCRにより増幅し、当業者の標準法を用いてナイロン膜にスポットした。
30種の大腸菌臨床分離株(その内の23種は病理学的症状からのもので、6種はヒトの正常叢から単離)からの染色体DNAを調製し、33Pにて放射性標識した。
これら臨床分離株からのDNAを次いでB2/D特異DNAアレイにハイブリッド形成させた。その結果をリン画像分析計で読取り、スポットの反応性は画像分析ソフトウエアにて分析した。ハイブリダイゼーションが特定のORFに対して陽性シグナルを与えた場合、このORFは分離株のゲノムに存在すると考えられる。該アレイの精度管理は、図2に示した大腸菌の対照標準株からのプローブDNAのハイブリダイゼーションにより行う。図2はB2/D対照標準株のゲノムとハイブリダイゼーションさせた後のDNAアレイの写真を示す。
これらの実験に用いた方法の詳細はティンスレイら(Tinsley et al., Methods Enzymol., 2002, 358; 188-207)が以前に記載している。
表4に示した結果は、大腸菌株の3つの異なる群、A、BおよびDにおける各ORF検出の頻度として表す。
Figure 2010189411
Figure 2010189411
Figure 2010189411
ExPECによる如何なる感染をも予防することを企図するワクチン組成物
配列番号28からなる配列がコードするポリペプチドを毒素と接合させ、生理的に不活性な基剤に加える。
この接合ペプチドは小児用ワクチンに任意に加える。
組成物は無菌とし、非経口、皮下または筋肉内に注射し得る。
当該組成物はスプレーによって粘膜に噴霧してもよい。

Claims (8)

  1. 患者の集団において免疫応答を誘導することおよび細菌感染を予防することを可能にするワクチン組成物の製造のための、配列番号134のポリペプチドの使用。
  2. ワクチン組成物は、腸管外大腸菌株に特異的であり、配列番号134の抗原性ポリペプチドの有効量を、配列番号1〜66および133、135〜145の任意のポリペプチド(ただし、配列番号8は除外)、担体とともに含有してなるものである、請求項1に記載の使用。
  3. 尿路系感染症、腎盂腎炎、敗血症、菌血症、新生児髄膜炎を予防するための請求項2に記載の使用。
  4. ワクチン組成物は、さらに、黄色ブドウ球菌またはB群ブドウ球菌などの他のバクテリア、または全身性感染症に関する他のバクテリアに対しての成分を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。
  5. ExPEC B2/Dサブグループに帰属する大腸菌株に引き起こされた腸管外感染の予防に用いられる医薬組成物であって、配列番号134のペプチドの有効量を、医薬的に許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
  6. 大腸菌感染を予防するための医薬組成物の製造のための配列番号134のポリペプチドの使用。
  7. ExPEC B2/Dサブグループに属する大腸菌株に引き起こされる腸管外感染を緩和するか、および/または処置するための医薬組成物であって、配列番号134のペプチドに対する抗体を、医薬的に許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
  8. 大腸菌感染を緩和するか、および/または処置するための医薬組成物の製造のための、配列番号134のポリペプチドに対する抗体の使用。
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