以下、本発明に係る回転電機の固定子の実施形態について図1〜図24を参照しつつ具体的に説明する。図1は本実施形態に係る回転電機の固定子の平面図である。図2はその固定子の底面図である。図3はその固定子の斜視図である。図4は外筒を外した状態の固定子の斜視図である。
本実施形態の固定子20は、例えば車両の電動機及び発電機を兼ねる回転電機に使用されるものであって、内周側に回転子(図示せず)を回転自在に収容する。回転子は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を固定子20の内周側と向き合う外周側に複数形成している。固定子20は、図1〜図4に示すように、固定子コア30と、複数(本実施形態では12本)の導線50から形成される三相の固定子巻線40と、を備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
固定子コア30は、内周に複数のスロット31が形成された円環状を呈している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。なお、図1および図2には、48個のスロット31が形成された位置に対応してスロット番号1〜48が付されている。
固定子コア30は、所定数(本実施形態では24個)の分割コアを周方向に連結して形成されている。この分割コアの外周には、外筒37が嵌合されている。分割コアは、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コアとの間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。固定子コア30を構成する分割コアは、複数枚の電磁鋼板を積層させて形成されている。積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。分割コアは、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
図5は本実施形態に係る固定子巻線の平面図であり、図6はその固定子巻線の底面図であり、図7は固定子巻線の斜視図である。図5〜図7に示す固定子巻線40は、所定の波形形状に成形した12本の導線50を所定の状態に積み重ねて帯状に形成した導線集積体60(図8〜図11参照)を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成されている。なお、本実施形態では、導線集積体60が6周巻き付けられている。
固定子巻線40を構成する導線50は、図23(A)に示すように、銅製の導体67と、導体67の外周を覆い導体67を絶縁する内層68a及び外層68bからなる絶縁被膜68とから形成されている。内層68aおよび外層68bを合わせた絶縁被膜68の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の厚みが厚いので、導線50同士を絶縁するために導線50同士の間に絶縁紙等を挟み込む必要がなくなっているが、導線50同士の間あるいは固定子コア30と固定子巻線40との間に絶縁紙を配設してもよい。
外層68bはナイロン等の絶縁材、内層68aは外層68bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機100に発生する熱により外層68bは内層68aよりも早く軟化するので、同じスロット31に設置されている導線50同士が外層68b同士で熱接着する。その結果、同じスロット31に設置されている複数の導線50が一体化し導線50同士が剛体化するので、スロット31内の導線50の機械的強度が向上する。また、過剰な振動が発生しても、内層68aと導線50の接着箇所よりも内層68aと外層68bとの接着箇所が先に剥離するので、内層68aと導線50との接着を維持し絶縁を確保できる。
さらに、導線50は、図23(B)に示すように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材69で被覆してもよい。これにより、回転電機に発生する熱により融着材69は絶縁被膜68よりも早く溶融するので、同じスロット31に設置されている複数の導線50同士が融着材69同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に設置されている複数の導線50が一体化し導線50同士が鋼体化することで、スロット31の導線50の機械的強度が向上する。なお、絶縁被膜68には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる被膜を用いてもよい。
図8〜図11に示す導線集積体60は、図12〜図14に示すように3種類に大別される導線50A、50B、50Cにより形成されている。即ち、図8〜図11に示す導線集積体60において、導線50A(図12)は丸1の導線に用いられ、導線50B(図13)は丸12の導線に用いられ、導線50C(図14)は丸2〜丸11の導線に用いられている。導線50A〜50Cは、長手方向に沿って並列配置され固定子コア30のスロット31に設置されるスロット収容部51と、スロット31から突出して隣り合うスロット収容部51の一端部同士および他端部同士をそれぞれ接続するターン部52とを有する波形に形成されている。
導線集積体60は、丸1〜丸12の導線を長手方向に1スロットピッチずつずれせた状態で、丸1の導線に対して図8において手前側へ順番に積み重ねることにより形成されている。これにより、丸1と丸7、丸2と丸8、丸3と丸9、丸4と丸10、丸5と丸11、丸6と丸12の導線のスロット収容部51同士が重なり合った状態になっている。この重なり合ったスロット収容部51同士が固定子コア30の同一スロット31に収容される。
導線50A〜50Cのスロット収容部51は、同一に形成されており、導線50A〜50Cのターン部52は、以下の点で同一に形成されている(図15〜図18参照)。即ち、ターン部52の中央部には、固定子コア30の端面から軸方向外方へ最も離れた部位となる頂部53が、固定子コア30の端面32と平行に形成されている。
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所に、導線50A〜50Cがまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面に沿って段部55が形成されている。これにより、スロット31から突出している導線50A〜50Cのターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導線50A〜50Cがまたがって設置されているスロット31同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、固定子コア30の両端面から突出しているターン部52の部分(以下、「コイルエンド」という)の高さ(軸方向長さ)が低くなる。
また、固定子コア30の端面に沿った段部55の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、導線50A〜50Cの段部55が周方向に隣り合うスロットから突出する導線50A〜50Cと干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロット31から突出する導線50A〜50C同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンドの高さが高くなったり、あるいはコイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンドの高さが低くなる。さらに、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
さらに、導線50A〜50Cには、ターン部52の中央部の頂部53と、ターン部52の突出箇所に形成した段部55との間に、それぞれ2個の段部56が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の軸方向端面側の導線50A〜50Cのターン部52には、合計6個の段部55、56と1個の頂部53が形成されている。これにより、段部を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さが低くなる。段部56の形状も、段部55と同様に、固定子コア30の端面に平行に形成されている。したがって、導線50A〜50Cのターン部52は、頂部53を挟んで両側が階段状に形成されている。
次に、導線50A〜50Cの異なる構成について説明する。導線集積体60の丸1の導線に用いられる導線50Aは、図12および図15に示すように、ターン部52の根元部に、スロット収容部51の一端から固定子コア30の径方向外方に向かって折れ曲がるクランク部57が設けられている。この場合、クランク部57は、導線50Aの1周目の範囲において、始端側(図12の右側)から2番目までのスロット収容部51が位置する所には設けられておらず、3番目から8番目までのスロット収容部51が位置する所に設けられている。そして、導線50Aの2周目以降の範囲においても、1周目のクランク部57の配置パターンと同様に、クランク部57が繰り返し設けられている。
クランク部57の径方向外方への折れ曲がり量は、固定子コア30の径方向における1本の導線50Aの幅寸法と略同じである。このクランク部57は、導線50Aの軸線方向中央部に位置する直線状部57aと、直線状部57aと連続して軸線方向両端に位置する曲げR部57bとからなる(図21参照)。直線状部57aは、導線50Aの延伸方向に垂直な方向の幅寸法が他の部分(スロット収容51、ターン部52)よりも所定量小さくされている。
導線50A(図12)に設けられたクランク部57は、導線集積体60の丸2〜丸5、丸7〜丸11の導線に用いられる導線50C(図14)にも同様に設けられている(図14、図17参照)。即ち、丸2〜丸5、丸7〜丸11の導線にも、ターン部52の根元部に、スロット収容部51の一端から固定子コア30の径方向外方に向かって折れ曲がるクランク部57が設けられている。この場合、クランク部57の折れ曲がり量は、固定子コア3の同一スロット31に配置される、丸1と丸7、丸2と丸8、丸3と丸9、丸4と丸10、丸5と丸11の導線同士が同じにされている。
そして、丸1〜丸5、丸7〜丸11の導線のターン部52の根元部に設けられたクランク部57の折れ曲がり量は、丸1(丸7)側から丸5(丸11)側に向かって徐々に小さくなるように変化している。なお、丸7〜丸11の導線の最内周(1周目)の第1層においては、ターン部52の始端側の根元部に設けられたクランク部57bの折れ曲がり量が零(ストレート)で一定にされている。また、同一のスロット31に配置される丸6の導線50Cと丸12の導線50Bには、クランク部57は設けられていない。
したがって、上記の丸1〜丸12の導線50A、50B、50Cにより形成された導線集積体60の最内周(1周目)の第1層には、図10に示すように、丸7〜丸12の導線のターン部52の終端側(図10の左側)の根元部に設けられた、折れ曲がり量が徐々に変化するクランク部57により第1のクランク部群58が形成されている。この場合、折れ曲がり量は、丸7側から丸12側に向かって徐々に小さくなるように変化している。なお、丸12の導線は、クランク部57が設けられていないが、その折れ曲がりのないストレート部は、丸11の導線50に設けられるクランク部57の折れ曲がり量より小さいとみなすことができるので、第1のクランク部群58に含められている(以下、同じ)。また、第1のクランク部群58の始端側には、丸7〜丸12の導線のターン部52の始端側(図10の右側)の根元部に設けられた、折れ曲がり量が一定(この場合は零)のクランク部57bにより第2のクランク部群59が形成されている。
そして、導線集積体60の2周目には、図11に示すように、丸7〜丸12の導線のターン部52の終端側(図11の左側)の根元部に設けられた、折れ曲がり量が徐々に変化するクランク部57により第1のクランク部群58が形成されている。また、第1のクランク部群58の始端側に連続して、丸7〜丸12の導線のターン部52の始端側(図11の右側)の根元部に設けられた、折れ曲がり量が徐々に変化するクランク部57により第1のクランク部群58が形成されている。これら2つの第1のクランク部群58は、丸7側から丸12側に向かって折れ曲がり量が徐々に小さくなるように変化している。これら2つの第1のクランク部群58は、導線集積体60が6周巻き付けられることに対応して、2周目以降に繰り返し配置されている。
なお、第1のクランク部群58および第2のクランク部群59におけるクランク部57の折れ曲がり量は、導線集積体60を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成される固定子巻線40の内周面および外周面に発生する径方向の凹凸部の位置、或いはそれらの径方向への凹み量や突出量などを考慮して適宜設定することができる。
上記のようにクランク部57が設けられた導線50A、50Cおよび導線50Bを用いて円筒状に形成された固定子巻線40は、固定子コア30に対して、クランク部57の折れ曲がり量が同じ導線50のスロット収容部51同士が、固定子コア30の同一スロット31に交互に配置された状態に組み付けられる(図19参照)。この場合、導線50A、50Cに固定子コア30の径方向外方に向かって折れ曲がるクランク部57が設けられていることにより、固定子巻線40のスロット収容部51における内周面および外周面から径方向内方および外方へそれぞれ突出する部分の突出量が低減され、内周面および外周に発生する径方向の凹凸が周方向において均一化されている。
そのため、固定子コア30の各スロット31内に配置されるべきスロット収容部51は、スロット31から一部がはみ出したり、スロット31の底面との間に隙間が形成されたりすることなく、確実にスロット31内に配置される。これにより、スロット31内での導線50の占積率が向上し、性能の低下が回避される。また、クランク部57は、固定子コア30の径方向外方に向かって折れ曲げられているので、クランク部57やターン部52が固定子コア30の内周側に配設される回転子と干渉する恐れもない。
なお、図20に示すように、上記のクランク部57が設けられていない場合には、スロット31内に収容されるべき導線50のスロット収容部51の一部がスロット31からはみ出すと共に、スロット31の底面との間に大きな隙間Sが形成された状態となる。よって、スロット31内での導線50の占積率が低下してしまい、性能の低下を招く。また、スロット31から内周側にはみ出した導線50(スロット収容部51)が回転子と干渉する恐れも発生する。
また、導線50A、50Cに設けられたクランク部57は、導線の延伸方向に垂直な向の幅寸法(であって導線同士が重なり合う方向、以下同じ)dが他の部分Dよりも所定量小さくされている。そのため、固定子コア3の同一スロット31に配置される例えば丸1と丸7の導線50は、図21に示すように、各ターン部52に設けられたクランク部57の曲げ開始位置が固定子コア30の端面32から等距離離れた位置に揃えられている。これにより、固定子コア30の端面32から突出しているターン部52の突出高さHを低くすることができる。
なお、図22(A)に示すように、クランク部57の導線の延伸方向に垂直な方向の幅寸法dが他の部分の幅寸法Dと同じにされていると、隣り合うクランク部57同士が干渉して突出高さH方向にずれるため、固定子コア30の端面32から突出しているターン部52の突出高さHが高くなる。この場合、各ターン部52に設けられたクランク部57の曲げ開始位置を、固定子コア30の端面32から等距離離れた位置に揃えることによって、ターン部52の突出高さHを低くすることも可能である。しかし、クランク部57の曲げ開始位置を無理に揃えると、図22(B)に示すように、隣り合うクランク部57同士が干渉して径方向にずれるため、固定子巻線40の径方向幅Wが増大する。したがって、上記のように、クランク部57の導線の延伸方向に垂直な方向の幅寸法dを他の部分の幅寸法Dよりも所定量小さくすることによって、固定子巻線40の径方向幅Wを増大させることなく、ターン部52の突出高さHを低くすることができる。
次に、本実施形態において、導線50A〜50Cの更に異なる構成について説明する。第一の導線として丸2〜丸11に用いられる導線50C(図14)には、図17に示すように、ターン部52の頂部53の中央に、固定子コア30の径方向に折れ曲がるねじりを伴わないクランク部54aが設けられている。このクランク部54aは、固定子コア30の端面32に平行となるように形成されており、導線50Cの全ての頂部53に設けられている。各クランク部54aの径方向への折れ曲がり量は、導線50Cの略幅分に統一されている。これにより、固定子巻線40において径方向に隣接している導線50のターン部52同士を密に巻回できる。その結果、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。なお、ターン部52の頂部53に設けられるクランク部54aの径方向への折れ曲がり量とは、クランク部54aの両側に位置する頂部53の周方向両端の径方向への変位量のことをいう(以下、ターン部52の頂部53に設けられるクランク部については同じ。)。
また、第二の導線(請求項3)として丸1に用いられる導線50A(図12)には、所定の折れ曲がり量で形成された2個の第1クランク部54bと、第1クランク部54bよりも折れ曲がり量の小さい6個の第2クランク部54cとを一組としてなる複数(本実施形態では6組)のクランク部群が繰り返し配置されている。本実施形態では、導線50Aの始端(図12の右端)から2番目までの2個のターン部52にそれぞれ第1クランク部54bが設けられ、導線50Aの始端側の3〜8番目までの6個のターン部52にそれぞれ第1クランク部54bが設けられており、合計8個のクランク部54b、54cを一組としたクランク部群が周方向に繰り返し配置されている。
このクランク部群は、導線集積体60が6周巻き付けられることに対応して、6組のクランク部群が始端側から順に繰り返し配置されている。第1クランク部54bの折れ曲がり量は、導線50Cのクランク部54aと同じであり、導線50Aの略幅分に統一されている。また、本実施形態では、第2クランク部54cは、折れ曲がりのないストレート部とされている
また、第二の導線(請求項4)として丸12に用いられる導線50B(図13)は、所定の折れ曲がり量で形成された42個の第1クランク部54dと、第1クランク部54dよりも折れ曲がり量の小さい6個の第2クランク部54eとを有する。第2クランク部54eは、導線50Bの始端(図13の右端)から6番目までのターン部52にそれぞれ設けられ、導線50Bの始端から7番目以降の全ターン部52にそれぞれ第1クランク部54dが設けられている。第1クランク部54dの折れ曲がり量は、導線50Cのクランク部54aと同じであり、導線50Bの略幅分に統一されている。また、第2クランク部54e量は、第2クランク部54cと同様に、折れ曲がりのないストレート部とされている(図18参照)。
なお、第2クランク部54c、54eは、折れ曲がり量が零ではなく、第1クランク部54a、54b、54dの折れ曲がり量よりも小さい範囲で適宜設定するようにしてもよい。
以上のように、ターン部52の頂部53に設けられた第1および第2クランク部54a〜54eの折れ曲がり量、およびクランク部54a〜54eの配置の仕方において異なる3種類の導線50A〜50Cにより形成される円筒状の固定子巻線40は、第1クランク部54a、54b、54dに対して折れ曲がり量の異なる第2クランク部54c、54e(折れ曲がり量が零のストレート部)が周方向の複数箇所に設けられている。即ち、導線50Aおよび導線50Bの頂部53に設けられた折れ曲がり量が零の第2クランク部54c、54eは、図1、図2、図5および図6に示すように、周方向の3箇所に配置されている。
この場合、第2クランク部54c(図中の斜線部)は、表面側(図1、図5)においてスロット番号21〜23、33〜35、45〜47の3箇所にそれぞれ6層ずつ配置され、裏面側(図2、図6)においてスロット番号15〜17、27〜29、39〜41の3箇所にそれぞれ5層ずつ配置されている。これにより、第2クランク部54cが配置されている箇所に形成される径方向外方へ突出する突出部の突出量が第2クランク部54cによって低減されると共に、第1クランク部54bが配置されている周移り箇所に形成される段差が第1クランク部54bによって低減されるので、固定子巻線40の外径を効果的に小さくすることができる。
また、第2クランク部54e(図中の斜線部)は、表面側(図1、図3)においてスロット番号20〜22、32〜34、44〜46の3箇所の最内周にそれぞれ1層ずつ配置され、裏面側(図2、図4)においてスロット番号14〜16、26〜28、38〜40の3箇所の最内周にそれぞれ1層ずつ配置されている。これにより、第2クランク部54eが配置されている箇所の径方向内方への突出量が第2クランク部54eによって低減され、内周側に配設される回転子との干渉を回避することができる。
上記のように構成される固定子巻線40は、図8〜図11に示す帯状の導線集積体60を渦巻き状に6周巻き付けることにより円筒状に形成されている。固定子巻線40は、図24に示すように、それぞれが2本の三相巻線(U1、U2、V1、V2、W1、W2)により形成されている。固定子巻線40を構成する導線50は、固定子コア30の内周側で周方向に沿って波巻きされた形状で成形されている。導線50のスロット収容部51は、所定のスロット数(本実施形態では、3相×2個=6個)ごとのスロット31に収容され、ターン部52は、固定子コア30の軸方向の両端面からそれぞれ突出している。この固定子コア30の軸方向の両端面から突出しているターン部52により、固定子巻線40のコイルエンドが形成される。
固定子巻線40は、複数の導線50を、一方の端部がスロット51の最外周側で固定子コア30の軸方向の端面から突出した状態で、周方向に沿って波状に巻装した状態で形成されている。複数の導線50の他方の端部は、スロット31の最内周側で固定子コア30の軸方向の端面から一方の端部と同一方向に突出している。そして、同一のスロット31には、2本の導線50が巻装されている。同一のスロット31に収容される二つのスロット収容部31は、そのスロット31の深さ方向での位置が交互に位置するように設置されている。
以上のように、本実施形態の回転電機の固定子によれば、ターン部52の頂部53に、固定子コア30の径方向に折れ曲がる第1および第2クランク部54a〜54eを有し、第2クランク部54c、54e(折れ曲がりのないストレート部)が周方向の3箇所に設けられているので、固定子巻線40の外径を小さくし小型化することができる。
また、固定子巻線40は、所定の折れ曲がり量の第1クランク部54aを有する第一の導線と、第1クランク部54b、54dおよび第2クランク部54c、54e(折れ曲がりのないストレート部)を有する第二の導線とにより構成されているので、外径が小さくされ小型化された固定子巻線40を簡易に得ることができる。
また、第二の導線として用いられる丸1の導線50Aは、所定の折れ曲がり量で形成された2個の第1クランク部54bと、第1クランク部54bよりも折れ曲がり量の小さい6個の第2クランク部54c(折れ曲がりのないストレート部)とを一組としてなる6組のクランク部群が繰り返し配置されている。これにより、第2クランク部54cが配置されている箇所に形成される径方向外方へ突出する突出部の突出量が第2クランク部54cによって低減されると共に、第1クランク部54bが配置されている周移り箇所に形成される段差が第1クランク部54bによって低減されるので、固定子巻線40の外径を効果的に小さくすることができる。
また、第二の導線として用いられる丸12の導線50Bは、固定子巻線40の最内周に、第1クランク部54dよりも折れ曲がり量が小さくされた第2クランク部54e(折れ曲がりのないストレート部)が位置するように配置されているので、径方向内方へ突出する突出部の突出量を低減することができる。これにより、固定子コア30の内周側に配設される回転子との干渉を回避することができる。
また、第一の導線として用いられる丸2〜丸11の導線50Cは、12本の導線50を所定の状態に積み重ねて帯状の導線集積体60を形成する際に、積み重ね順番の2番目から11番目までの導線として用いられているので、外径が小さくされ小型化された固定子巻線40を簡易に得ることができる。
また、ターン部52は、階段形状に形成されていることによって、固定子コア30の端面から突出しているターン部52(コイルエンド)の突出高さHを低くすると共に、径方向幅を小さくすることができるので、固定子巻線40を小型化することができる。
そして、本実施形態では、断面形状が矩形状の導体部67を有する導線50を採用していることから、固定子コア30のスロット31内に配置される導線50のスロット収容部51をより密な状態に配置することができるため、占積率の向上を図ることができる。また、ターン部52もより密な状態に配置することができる。