JP2010001700A - 制震ダンパー - Google Patents
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Abstract
【課題】制震ダンパー自体にギャップ機構を付加することにより、経済性及び施工性を維持しつつ建物の層崩壊あるいは最弱層の甚大な被害を防止することを可能にし、且つ建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合においても制震効果を発揮させることが可能な制震ダンパーを提供する。
【解決手段】制震ダンパーAが奇数枚の複数の鋼板1、2、3と粘弾性体4、5とを交互に積層して構成され、積層方向O1最外方の鋼板1(3)を含んで1枚おきに配された鋼板1、3が外鋼板とされ、隣り合う外鋼板1、3の間に配された鋼板2が中鋼板とされており、隣り合う外鋼板1、3の側端部1c、1d、3c、3d側の間に、中鋼板2と隙間Hをあけて、且つ隣り合う外鋼板1、3に一体に固着して、ギャップ機構のストッパー部材6、7を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】制震ダンパーAが奇数枚の複数の鋼板1、2、3と粘弾性体4、5とを交互に積層して構成され、積層方向O1最外方の鋼板1(3)を含んで1枚おきに配された鋼板1、3が外鋼板とされ、隣り合う外鋼板1、3の間に配された鋼板2が中鋼板とされており、隣り合う外鋼板1、3の側端部1c、1d、3c、3d側の間に、中鋼板2と隙間Hをあけて、且つ隣り合う外鋼板1、3に一体に固着して、ギャップ機構のストッパー部材6、7を設ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、建物の架構内に架設されてこの建物に作用した地震エネルギーを減衰させる制震ダンパーに関する。
例えば中高層建物がレベル1地震動、レベル2地震動の特大地震を受けると、建物の最弱層に損傷が生じて耐力が低下し始め、この層に地震エネルギーが集中して層崩壊が生じ、他の層は健全性が確保されているにもかかわらず、層崩壊モードによって建物が崩壊に至るという現象が発生する。また、崩壊に至らない場合においても、最弱層の被害が甚大となり、補修による復旧が困難になる。
一方、従来から、壁内蔵型、間柱型、ブレース型の制震ダンパーを建物の架構内に設置(架設)する対策が多用されている(例えば、特許文献1参照)。この種の制震ダンパーは、地震によって建物に層間変形が生じると、層間変形量に応じて制震ダンパー内の鋼材あるいは粘弾性系材料が変形し、この変形とともに地震エネルギーを吸収して減衰させ、建物の応答を低減させる。
しかしながら、特大地震を受けると、制震ダンパー内の鋼材あるいは粘弾性系材料に過大な変形が生じて剛性が低下し、制震ダンパーによる応答低減効果が小さくなってしまう。このため、制震ダンパーを建物の架構内に設置した場合においても、特大地震時には、やはり建物の最弱層に損傷が集中的に生じ、建物の崩壊、最弱層の甚大な被害を避けることが難しい。
これに対し、特許文献2に開示されるように、交点が上部梁と対峙するようにK型ブレースを設け、上部梁に鋼材ダンパー(制震ダンパー)を設け、さらに鋼材ダンパーとの間にギャップが形成されるように、K型ブレースの交点に突起(ギャップ機構)を設けて構成した制震機構がある。
この制震機構においては、ギャップ幅以上の層間変形が生じた際に、鋼材ダンパーと突起が当接し、鋼材ダンパーの剛性によって梁の水平力がK型ブレースに伝達され、このK型ブレースがせん断力を負担する層せん断耐力増強部材(層せん断力増強機構)として機能する。これにより、制震機構を設置した層の剛性が高められ、地震エネルギーを建物の各層に分散させることが可能になる。一方、層間変形がさらに大きくなり、鋼材ダンパーの剛性が限界点を超えると、鋼材ダンパーが塑性変形することによって地震エネルギーを吸収するエネルギー吸収機構として機能する。これにより、過大な層間変形が阻止される。
このようにギャップ幅以上の層間変形が生じた際に、K型ブレースや鋼材ダンパーが層間変形量に応じて層せん断耐力増強機構、エネルギー吸収機構として機能することにより、地震時に建物の層間変形が平準化され、建物全体で地震エネルギーを吸収することが可能になる。よって、この制震機構を建物の架構内に設置することにより、建物の層崩壊を防止することが可能になる。
特開2004−132415号公報
特開2000−17887号公報
しかしながら、上記従来の制震機構においては、制震ダンパー(鋼材ダンパー)と個別に新たにギャップ機構(突起)を設ける必要があり、ギャップ機構の製作、施工に手間がかかり、コスト高を招くという問題があった。
また、中小地震時など建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合には、制震ダンパーとギャップ機構とが当接しないため、制震ダンパーに変形が生じることがなく、制震ダンパーが全く制震効果を発揮しないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑み、制震ダンパー自体にギャップ機構を付加することにより、経済性及び施工性を維持しつつ建物の層崩壊あるいは最弱層の甚大な被害を防止することを可能にし、且つ建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合においても制震効果を発揮させることが可能な制震ダンパーを提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の制震ダンパーは、建物の架構内に架設されて前記建物に作用した地震エネルギーを減衰させる制震ダンパーであって、奇数枚の複数の鋼板と、粘弾性体とを交互に積層して構成され、前記複数の鋼板のうち、積層方向最外方の鋼板を含んで1枚おきに配された鋼板が、第1接合部材を介して一端部を前記架構に接続する外鋼板とされ、隣り合う前記外鋼板の間に配された鋼板が、第2接合部材を介して他端部を前記架構に接続する中鋼板とされており、前記隣り合う外鋼板の側端部側の間には、該隣り合う外鋼板の間に配された前記中鋼板の側端部との間に隙間を設けて、且つ前記隣り合う外鋼板に一体に固着して、ギャップ機構のストッパー部材が設けられていることを特徴とする。
この発明においては、地震エネルギーが作用して建物に層間変形が生じるとともに、互いに隣り合う外鋼板と中鋼板とが相対変位する。そして、ギャップ機構のストッパー部材と中鋼板とのギャップ幅未満(隙間の幅未満)で外鋼板と中鋼板とが相対変位する場合には、これら外鋼板と中鋼板が相対変位するとともに粘弾性体が変形し、この粘弾性体の粘弾性抵抗力によって地震エネルギーが吸収され、建物の応答を低減させることが可能になる。すなわち、この制震ダンパーは、奇数枚の複数の鋼板と粘弾性体とを交互に積層した粘弾性ダンパーに対し、隣り合う外鋼板の間にストッパー部材を設けるようにして構成されている。このため、建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合には、従来の粘弾性ダンパーの制震効果をそのまま発揮させることが可能になる。
一方、建物にギャップ幅以上の層間変形が生じる場合には、中鋼板の側端部がストッパー部材に当接し、この制震ダンパーを設置した層に作用するせん断力の一部がストッパー部材を介して外鋼板と中鋼板に伝達され、制震ダンパーを層せん断耐力増強部材として機能させることが可能になる。さらに、このようにギャップ幅以上の層間変形が生じて外鋼板と中鋼板が相対変位する場合においても、粘弾性体が変形することによるエネルギー吸収効果が発揮される。
また、本発明の制震ダンパーにおいて、前記積層方向最外方の前記外鋼板には、表面に座屈防止用の補強リブが設けられていることが望ましい。
この発明においては、最外方の外鋼板の表面に補強リブを設けることによって、せん断力の一部がストッパー部材を介して外鋼板と中鋼板に伝達され、制震ダンパーが層せん断耐力増強部材として機構する際に、高い応力まで最外方の外鋼板がせん断座屈することを防止でき、確実に層せん断耐力増強効果を発揮させることが可能になる。
本発明の制震ダンパーによれば、中小地震時に建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合には、外鋼板と中鋼板とが相対変位するとともに粘弾性体が変形することで、地震エネルギーを吸収して減衰させることができ、従来の粘弾性ダンパーと同様の制震効果をそのまま発揮させることが可能になる。
また、特大地震時に建物にギャップ幅以上の層間変形が生じた場合には、中鋼板の側端部がストッパー部材に当接することにより、制震ダンパーを層せん断耐力増強部材として機能させることが可能になる。このため、特大地震時の建物全体の応答を平準化させることが可能になり、建物の層崩壊あるいは最弱層の被害が甚大となり補修による復旧が困難になる事態を防止することが可能になる。
そして、中鋼板の側端部との間に隙間をあけて隣り合う外鋼板の間にストッパー部材を設けるというシンプルな構成であるため、制震ダンパー自体に安価でギャップ機構を付加することが可能になる。また、従来の粘弾性ダンパーの隣り合う外鋼板の間にストッパー部材を設けるようにして構成されているため、従来の粘弾性ダンパーの設置方法を変更することなく、建物の架構内に設置することが可能である。これにより、制震ダンパーにギャップ機構を付加した場合においても、経済性及び施工性を維持することが可能になる。
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る制震ダンパーについて説明する。本実施形態は、建物の架構内に架設されて、地震時に建物に作用した地震エネルギーを吸収して減衰させ、建物の応答を低減させるための制震ダンパーに関するものである。
本実施形態の制震ダンパーAは、壁内蔵型の粘弾性ダンパーであり、図1から図3に示すように、矩形平板状に形成された3枚の鋼板1、2、3(奇数枚の複数の鋼板)と、例えばアスファルト系ゴムや高減衰ゴムなどの粘弾性体4、5とを交互に積層して構成されている。また、積層方向O1最外方の2枚の鋼板1、3(積層方向O1最外方の鋼板1(3)を含んで1枚おきに配された鋼板)が外鋼板とされ、これら外鋼板1、3の間に配された鋼板2(隣り合う外鋼板1、3の間に配された鋼板)が中鋼板とされている。
この制震ダンパーAは、外鋼板1、3の上端部(一端部1a、3a)が中鋼板2の上端部(一端部2a)よりも上方に延出し、中鋼板2の下端部(他端部2b)が外鋼板1、3の下端部(他端部1b、3b)よりも下方に延出して形成されている。また、外鋼板1、3の側端部1c、1d、3c、3dが中鋼板2の側端部2c、2dよりも外側に延出して形成されている。
さらに、本実施形態の制震ダンパーAにおいては、2枚の外鋼板1、3の両側端部1c、1d、3c、3d側のそれぞれの間に、これら外鋼板1、3で挟み込むように、ギャップ機構を構成するストッパー部材6、7が設けられている。このストッパー部材6、7は、例えば帯状の鋼板であり、外鋼板1、3の側端部1c、1d、3c、3dに沿って配置され、中鋼板2の側端部2c、2dとの間に所定幅の隙間H(ギャップ)をあけて設けられている。また、ストッパー部材6、7は、中鋼板2が当接した際にせん断力の一部を外鋼板1、3に伝達させる必要があるため、例えばボルト締めや溶接などによって2枚の外鋼板1、3に一体かつ強固に固着して設けられている。
そして、このように構成した制震ダンパーAは、従来の粘弾性ダンパーに対し、中鋼板2の側端部2c、2dとの間に隙間をあけて(ギャップHを設けて)2枚の外鋼板1、3の間にストッパー部材6、7を設けるというシンプルな構成であり、この制震ダンパーA自体に安価でギャップ機構(ストッパー部材6、7)が付加されている。
ついで、本実施形態の制震ダンパーAの作用及び効果について説明する。
はじめに、本実施形態の制震ダンパーAは、アンカーなどで上部梁10a(架構10)に固設した接合部材(第1接合部材11)に、2枚の外鋼板1、3の上端部1a、3a側をボルトとナットで接続するとともに、アンカーなどで下部梁10b(架構10)に固設した接合部材(第2接合部材12)に、中鋼板2の下端部2b側をボルトとナットで接続して、建物の架構10内に設置(架設)される。このとき、本実施形態においては、2枚の外鋼板1、3の上端部1a、3a側の間に第1接合部材11が挿入され、フィラープレート13、14を介して、外鋼板1、3と第1接合部材11とがボルトとナットで一体に接続される。また、中鋼板2と第2接合部材12とが、接合プレート15、16を介してボルトとナットで一体に接続される。
このように本実施形態の制震ダンパーAは、従来の粘弾性ダンパーの設置方法を変更することなく、建物の架構10内に設置される。このため、ギャップ機構(ストッパー部材6、7)を設けた場合においても、施工性を損なうことがない。
そして、建物の所定階(所定の層)の架構10内に設置した制震ダンパーAは、中小地震の発生時に、建物に作用した地震エネルギーによって上部梁10aと下部梁10bが相対的に変位し層間変形が生じるとともに、外鋼板1、3と中鋼板2がこの層間変形量に応じて相対変位する。このとき、中小地震時の層間変形量に対し、ストッパー部材6、7と中鋼板2のギャップ幅T未満(隙間Hの幅未満)の相対変位量で外鋼板1、3と中鋼板2が変位するように、予めギャップ幅T(すなわちストッパー部材6、7(ギャップ機構)の位置)を設定しておくことで、中鋼板2の動きがストッパー部材6、7で妨げられることがない。このため、ストッパー部材6、7と中鋼板2とのギャップ幅T未満で外鋼板1、3と中鋼板2とが相対変位する中小地震時には、これら外鋼板1、3と中鋼板2が相対変位するとともに粘弾性体4、5が変形し、粘弾性体4、5の粘弾性抵抗力によって地震エネルギーが吸収され、建物の応答が低減される。すなわち、建物の層間変形量がギャップ幅T未満である場合には、従来の粘弾性ダンパーの制震効果がそのまま発揮される。
一方、レベル1地震動(構造物の供用期間内に1〜2度発生する確率をもつ地震動)やレベル2地震動(極めて稀であるが非常に強い地震動)の特大地震が発生した際には、建物にギャップ幅T以上の層間変形が生じ、外鋼板1、3と中鋼板2が相対変位するとともに中鋼板2の側端部2c、2dがストッパー部材6、7に当接する。そして、中鋼板2とストッパー部材6、7とが接触するとともに、制震ダンパーAを設置した層に作用するせん断力の一部がストッパー部材6、7を介して外鋼板1、3と中鋼板2に伝達され、制震ダンパーAが層せん断耐力増強部材として機能する。このように制震ダンパーAが層せん断耐力増強部材として機能することで、建物に作用したせん断力が建物全体に分散され、建物全体の応答が平準化される。さらに、ギャップ幅T以上で外鋼板1、3と中鋼板2が相対変位する場合においても、粘弾性体4、5が変形することによるエネルギー吸収効果が発揮され、このエネルギー吸収効果によって建物の応答が低減される。これにより、建物の層崩壊あるいは最弱層の甚大な被害の発生が防止される。
ここで、図4は、制震ダンパーAを設置していない場合と、ギャップ機構を備えていない従来の制震ダンパーを設置した場合と、1cmのギャップ幅Tでストッパー部材6、7(ギャップ機構)を設けた本実施形態の制震ダンパーAを設置した場合における40階建ての高層建物の各階の層間変位(層間変形量)のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、建物にセンター波L2の地震動(70kine)を入力している。この図から、制震ダンパーAを設置していない場合には、低層階の層間変位が大きくなり、従来の制震ダンパーを設置した場合には、制震ダンパーAを設置していない場合に対し、中層階の層間変位が小さくなる反面、低層階及び上層階の変位が大きくなることが確認された。一方、本実施形態の制震ダンパーAを設置した場合には、制震ダンパーAを設置していない場合に対し、ほぼ全ての階で層間変位が小さくなり、特大地震時の応答が平準化されることが確認された。
したがって、本実施形態の制震ダンパーAにおいては、ギャップ機構のストッパー部材6、7と中鋼板2とのギャップ幅T未満で外鋼板1、3と中鋼板2とが相対変位する中小地震時に、外鋼板1、3と中鋼板2が相対変位するとともに粘弾性体4、5が変形し、粘弾性体4、5の粘弾性抵抗力によって地震エネルギーが吸収され、建物の応答を低減させることが可能になる。このため、建物の層間変形量がギャップ幅T未満である場合には、従来の粘弾性ダンパーの制震効果をそのまま発揮させることが可能になる。
また、建物にギャップ幅T以上の層間変形が生じる特大地震時には、中鋼板2の側端部2c、2dがストッパー部材6、7に当接し、制震ダンパーAを設置した層に作用するせん断力の一部がストッパー部材6、7を介して外鋼板1、3と中鋼板2に伝達されることで、制震ダンパーAを層せん断耐力増強部材として機能させることが可能になる。これにより、特大地震時の建物全体の応答を平準化させることが可能になり、建物の層崩壊あるいは最弱層の被害が甚大となり補修による復旧が困難になる事態を防止することが可能になる。
さらに、本実施形態の制震ダンパーAにおいては、中鋼板2の側端部2c、2dとの間に隙間Hをあけて、隣り合う外鋼板1、3の間にストッパー部材6、7を設けるというシンプルな構成であるため、制震ダンパーA自体に安価でギャップ機構を付加することが可能になる。また、このように従来の粘弾性ダンパーの外鋼板1、3の間にストッパー部材6、7を設けるようにして構成されているため、従来の粘弾性ダンパーの設置方法を変更することなく、建物の架構10内に設置することが可能である。これにより、制震ダンパーAにギャップ機構6、7を付加した場合においても、経済性及び施工性を維持することが可能になる。
以上、本発明に係る制震ダンパーの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、ストッパー部材6、7を設けることで、特大地震時に建物全体の応答を平準化し、建物の層崩壊あるいは最弱層の甚大な被害の発生を防止するものとして説明を行ったが、本発明の制震ダンパーは、特大地震に対してだけでなく、長周期地震動を伴う地震時に中高層建物が共振して応答が大きくなるような場合においても、本実施形態と同様に応答低減効果、応答標準化の効果を発揮する。このため、本発明の制震ダンパーは、特大地震時の建物の応答を低減させることに限定して用いる必要はない。
また、本実施形態では、制震ダンパーAが壁内蔵型の制震ダンパーであるものとして説明を行ったが、本発明の制震ダンパーは、間柱型、ブレース型の制震ダンパーとして用いてもよい。
さらに、本実施形態では、矩形平板状の3枚の鋼板(2枚の外鋼板1、3と中鋼板2)と、粘弾性体4、5とを交互に積層して制震ダンパーAが構成されているものとしたが、本発明の制震ダンパーは、3枚以上の奇数枚の鋼板と粘弾性体とを交互に積層して構成されていればよく、例えば図5から図7に示すように、5枚以上の奇数枚の鋼板20、21、22、23、24と粘弾性体25、26、27、28とを交互に積層して構成した場合には、これら複数の鋼板20〜24のうち、積層方向O1最外方の鋼板20(24)を含んで1枚おきに配された鋼板20、22、24が外鋼板とされ、隣り合う外鋼板(20と22、22と24)の間にそれぞれ配された鋼板21、23が中鋼板とされる。また、隣り合う外鋼板(20と22、22と24)の側端部20a、20b、22a、22b、24a、24b側の間にそれぞれ、ギャップ機構のストッパー部材29、30、31、32が、隣り合う外鋼板(20と22、22と24)の間に配された中鋼板21、23の側端部21a、21b、23a、23bとの間に隙間H(ギャップ)をあけて、且つ隣り合う外鋼板(20と22、22と24)に一体に固着して設けられる。そして、このように5枚以上の鋼板20〜24を備えて構成した場合においても、隣り合う外鋼板(20と22、22と24)とこの隣り合う外鋼板(20と22、22と24)の間の中鋼板21、23とが相対変位した際に、中鋼板21、23の側端部21a、21b、23a、23bがストッパー部材29、30、31、32に当接することで、制震ダンパーAを層せん断耐力増強部材として機能させることが可能であり、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
さらに、本実施形態では、図1、図3などに、ストッパー部材6、7が外鋼板1、3の側面のほぼ全域にわたって設置されているように図示したが、せん断力の伝達が行い得る程度に強固にストッパー部材6、7が隣り合う外鋼板1、3に固着されているのであれば、外鋼板1、3の側面の例えば下半分や上半分など、部分的にストッパー部材を設置するようにしてもよい。あるいは、複数のストッパー部材を上下に間隔をあけて配置するようにしてもよい。
また、本実施形態では、積層方向O1最外方に配された外鋼板1、3が矩形平板状に形成されているものとして説明を行った。そして、この場合には、特大地震時や長周期地震動を伴う地震時にギャップ幅T以上の層間変形が生じて中鋼板2の側端部2c、2dがストッパー部材6、7に当接し、制震ダンパーAを設置した層に作用するせん断力の一部がストッパー部材6、7を介して外鋼板1、3に伝達された際に、これら積層方向O1最外方に配された外鋼板1、3にその応力に応じた歪みが発生してせん断座屈が発生することも考えられる。
このため、例えば図8及び図9に示すように、積層方向O1最外方の外鋼板1、3に対し、これら外鋼板1、3の表面に座屈防止用の補強リブ33、34を設けるようにしてもよい。このように外鋼板1、3のそれぞれの表面に補強リブ33、34を設けた場合には、せん断力の一部がストッパー部材6、7を介して外鋼板1、3に伝達された際に、高い応力まで外鋼板1、3のせん断座屈を防止することができ、確実に制震ダンパーAの層せん断耐力増強効果を発揮させることが可能になる。
1 外鋼板
1a 一端部(上端部)
1b 他端部(下端部)
1c 側端部
1d 側端部
2 中鋼板
2a 一端部(上端部)
2b 他端部(下端部)
2c 側端部
2d 側端部
3 外鋼板
3a 一端部(上端部)
3b 他端部(下端部)
3c 側端部
3d 側端部
4 粘弾性体
5 粘弾性体
6 ストッパー部材(ギャップ機構)
7 ストッパー部材(ギャップ機構)
10 架構
10a 上部梁
10b 下部梁
11 第1接合部材
12 第2接合部材
20 外鋼板
20a 側端部
20b 側端部
21 中鋼板
21a 側端部
21b 側端部
22 外鋼板
22a 側端部
22b 側端部
23 中鋼板
23a 側端部
23b 側端部
24 外鋼板
24a 側端部
24b 側端部
25 粘弾性体
26 粘弾性体
27 粘弾性体
28 粘弾性体
29 ストッパー部材(ギャップ機構)
30 ストッパー部材(ギャップ機構)
31 ストッパー部材(ギャップ機構)
32 ストッパー部材(ギャップ機構)
33 補強リブ
34 補強リブ
A 制震ダンパー
H 隙間(ギャップ)
O1 積層方向
T ギャップ幅
1a 一端部(上端部)
1b 他端部(下端部)
1c 側端部
1d 側端部
2 中鋼板
2a 一端部(上端部)
2b 他端部(下端部)
2c 側端部
2d 側端部
3 外鋼板
3a 一端部(上端部)
3b 他端部(下端部)
3c 側端部
3d 側端部
4 粘弾性体
5 粘弾性体
6 ストッパー部材(ギャップ機構)
7 ストッパー部材(ギャップ機構)
10 架構
10a 上部梁
10b 下部梁
11 第1接合部材
12 第2接合部材
20 外鋼板
20a 側端部
20b 側端部
21 中鋼板
21a 側端部
21b 側端部
22 外鋼板
22a 側端部
22b 側端部
23 中鋼板
23a 側端部
23b 側端部
24 外鋼板
24a 側端部
24b 側端部
25 粘弾性体
26 粘弾性体
27 粘弾性体
28 粘弾性体
29 ストッパー部材(ギャップ機構)
30 ストッパー部材(ギャップ機構)
31 ストッパー部材(ギャップ機構)
32 ストッパー部材(ギャップ機構)
33 補強リブ
34 補強リブ
A 制震ダンパー
H 隙間(ギャップ)
O1 積層方向
T ギャップ幅
Claims (2)
- 建物の架構内に架設されて前記建物に作用した地震エネルギーを減衰させる制震ダンパーであって、
奇数枚の複数の鋼板と、粘弾性体とを交互に積層して構成され、
前記複数の鋼板のうち、積層方向最外方の鋼板を含んで1枚おきに配された鋼板が、第1接合部材を介して一端部を前記架構に接続する外鋼板とされ、隣り合う前記外鋼板の間に配された鋼板が、第2接合部材を介して他端部を前記架構に接続する中鋼板とされており、
前記隣り合う外鋼板の側端部側の間には、該隣り合う外鋼板の間に配された前記中鋼板の側端部との間に隙間をあけて、且つ前記隣り合う外鋼板に一体に固着して、ギャップ機構のストッパー部材が設けられていることを特徴とする制震ダンパー。 - 請求項1記載の制震ダンパーにおいて、
前記積層方向最外方の前記外鋼板には、表面に座屈防止用の補強リブが設けられていることを特徴とする制震ダンパー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008163274A JP2010001700A (ja) | 2008-06-23 | 2008-06-23 | 制震ダンパー |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008163274A JP2010001700A (ja) | 2008-06-23 | 2008-06-23 | 制震ダンパー |
Publications (1)
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