JP2010069306A - 組換えヒト血清アルブミンを用いた生体材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた細胞非接着性及び抗血栓性を持つ医療用器具ならびにその製造方法の提供。
【解決手段】組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、水分保持可能な可塑剤および抗血栓剤を含有する生体材料、該生体材料を用いた血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤、ならびにその製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、水分保持可能な可塑剤および抗血栓剤を含有する生体材料、該生体材料を用いた血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤、ならびにその製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、組換えヒト血清アルブミンとそれを架橋する架橋剤および可塑剤を含有する生体材料、さらに抗血栓剤を含有する生体材料、ならびにそれらの用途に関する。
近年、人工臓器、カテーテル、カニューレ等、血液と接触して用いられる医療材料は多数あり、その医療現場への貢献は計り知れない。しかし、このような血液と接触して用いられる医療用材料の解決すべき最重要課題として、材料が血液に接触すると速やかに材料表面で血が固まり血栓が形成されるという問題がある。よって、このような医療材料には、その表面で血が固まらないような性質、すなわち抗血栓性の付与が求められている。この血栓形成においては、血液中のフィブリノーゲンなどの蛋白質や血小板などの血球細胞の材料表面への吸着が関与している。血液中に大量に含まれているタンパク質である血清アルブミンの上にはタンパク質や細胞が接着しないという性質が知られていることから、医療用器具又はその部材の表面に、抗血栓性を付与する目的で、材料表面を血清アルブミンで被覆しようとする試みが検討されている。材料をアルブミン溶液に浸漬することにより、アルブミンを材料表面に吸着させる方法(非特許文献1)は、非常に簡便であるが、このアルブミンを吸着させた材料が血液と接触した際には、血液中に含まれる他のタンパク質がアルブミンの代わりに表面に吸着し、吸着していたアルブミンが脱離する吸着交換反応がおこる。また、医療用器具表面の材料の物性によってアルブミンの表面材料への吸着の程度が大きく異なるなどの問題もある。そこで、アルブミンと表面材料との親和性を高め、医療用器具の表面に、より強固にアルブミンを吸着させて、優れた抗血栓性を付与する研究が試みられている。特許文献1においては、まず、アルブミンと疎水性を有する物質を共有結合で結合して疎水性を付与したアルブミンを作製し、この疎水化アルブミンを用いて疎水性表面を有する医療用基材を被覆する方法を報告しているが、ここでのアルブミンと基材表面との結合は疎水結合を介した吸着であるため、完全に吸着交換反応を防止することはできないばかりか、材料表面全体を完全にアルブミンで被覆できているとは断言できず、アルブミンに被覆されていない部分の存在を否定できない。また、特許文献2においては、高分子材料表面を、アルブミン吸着性を有することが既に知られている色素(ブルーデキストラン)で表面コーティングしておき、この材料表面が血液と接触した時に、血液中のアルブミンがより優先的に材料表面に吸着されることを利用して、表面をアルブミンコーティングする方法が報告されている。当該方法も、吸着交換反応が完全には防止できず、また、材料表面全体が完全にアルブミンで被覆されていない点では同様である。このように、従来方法では、基材を完全に被覆できず、吸着交換反応によりアルブミンが基材表面から脱離してしまうため、アルブミンの持つ優れた細胞非接着性及び抗血栓性効果を持続的に十分利用できていなかった。しかも、これらの従来方法では、材料調製の手順が非常に煩雑であり、多くの労力を有するなどの難点がある。
また、アルブミン自体についても医療上の安全性の観点から、ヒト由来血清アルブミンを用いることが好ましいが、天然のヒト由来血清アルブミンを調達するためには、ドナーから血漿を提供してもらい、そこから複数の精製工程を経て調製する必要があるため、大量に調達する場合は手間と費用がかかる問題もある。
また、アルブミン自体についても医療上の安全性の観点から、ヒト由来血清アルブミンを用いることが好ましいが、天然のヒト由来血清アルブミンを調達するためには、ドナーから血漿を提供してもらい、そこから複数の精製工程を経て調製する必要があるため、大量に調達する場合は手間と費用がかかる問題もある。
Brash,Trans.Am.Soc.Artif.Int.Organs,p.69(1974)
「Chem Pharm Bull」第16巻、第601−605頁、1968年
本発明の目的は、組換えヒト血清アルブミンの持つ優れた細胞非接着性及び抗血栓性を有する生体材料、さらにそこに抗血栓剤を有する生体材料を提供することである。本発明のさらなる目的は、該生体材料で医療用器具表面を被覆し、優れた細胞非接着性及び抗血栓性を持つ医療用器具ならびにその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、組換えヒト血清アルブミンにポリエポキシ化合物からなる架橋剤を用いてアルブミンの架橋処理を行い、水分保持可能な可塑剤を添加した後、細胞培養用ディッシュまたは粘度測定装置のパーツ表面に架橋アルブミンを被覆したところ、アルブミンが本来有する細胞非接着性と多分子結合能を損なうことなく、材料表面全体を完全に架橋アルブミンで被覆することができるという知見を得た。さらに、組換えヒト血清アルブミンに血小板凝集抑制剤を混合して担持させた後、ポリエポキシ化合物からなる架橋剤及び水分保持可能な可塑剤を用いて得た架橋アルブミンによって、ディッシュに被覆処理を施すことで、長時間持続的に組換えヒト血清アルブミンに担持させた血小板凝集抑制剤を徐放できるという知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
[1]組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[2]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[1]に記載の抑制剤;
[3]生体材料がさらに水分保持可能な可塑剤を含有する、上記[1]または[2]に記載の抑制剤;
[4]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[3]に記載の抑制剤;
[5]組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[6]生体材料がさらにグリセリンを含有する、上記[5]に記載の抑制剤;
[7]組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、および抗血栓剤を含有する生体材料;
[8]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[7]に記載の生体材料;
[9]抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、上記[7]または[8]に記載の生体材料;
[10]抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、上記[7]または[8]に記載の生体材料;
[11]抗血栓剤が、シロスタゾールである、上記[10]に記載の生体材料;
[12]さらに水分保持可能な可塑剤を含有する、上記[7]から[11]のいずれか1つに記載の生体材料;
[13]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[12]に記載の生体材料;
[14]組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびシロスタゾールを含有する生体材料;
[15]さらにグリセリンを含有する、上記[14]に記載の生体材料;
[16]上記[7]から[15]のいずれか1つに記載の生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[17]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(b)架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[18]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[17]に記載の製造方法;
[19]工程(a)と工程(b)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、上記[17]または[18]に記載の製造方法:
工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(b)で用いる架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程;
[20]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[19]に記載の製造方法;
[21]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[22]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液にグリセリンを添加する工程、および
(c)工程(b)得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[23]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させる工程、
(b)抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(c)架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[24]抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、上記[23]記載の製造方法;
[25]抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、上記[23]に記載の製造方法;
[26]抗血栓剤が、シロスタゾールである、上記[25]に記載の製造方法;
[27]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、もしくは、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[23]から[26]のいずれか1つに記載の製造方法;
[28]工程(b)と工程(c)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、上記[23]から[27]のいずれか1つに記載の製造方法:
工程(b)で得られた架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(c)で用いる架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程;
[29]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[28]に記載の製造方法;
[30]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[31]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に対して、グリセリンを添加する工程、および
(d)工程(c)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンとグリセリンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
を提供する。
[1]組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[2]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[1]に記載の抑制剤;
[3]生体材料がさらに水分保持可能な可塑剤を含有する、上記[1]または[2]に記載の抑制剤;
[4]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[3]に記載の抑制剤;
[5]組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[6]生体材料がさらにグリセリンを含有する、上記[5]に記載の抑制剤;
[7]組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、および抗血栓剤を含有する生体材料;
[8]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[7]に記載の生体材料;
[9]抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、上記[7]または[8]に記載の生体材料;
[10]抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、上記[7]または[8]に記載の生体材料;
[11]抗血栓剤が、シロスタゾールである、上記[10]に記載の生体材料;
[12]さらに水分保持可能な可塑剤を含有する、上記[7]から[11]のいずれか1つに記載の生体材料;
[13]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[12]に記載の生体材料;
[14]組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびシロスタゾールを含有する生体材料;
[15]さらにグリセリンを含有する、上記[14]に記載の生体材料;
[16]上記[7]から[15]のいずれか1つに記載の生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤;
[17]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(b)架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[18]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[17]に記載の製造方法;
[19]工程(a)と工程(b)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、上記[17]または[18]に記載の製造方法:
工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(b)で用いる架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程;
[20]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[19]に記載の製造方法;
[21]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[22]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液にグリセリンを添加する工程、および
(c)工程(b)得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[23]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させる工程、
(b)抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(c)架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[24]抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、上記[23]記載の製造方法;
[25]抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、上記[23]に記載の製造方法;
[26]抗血栓剤が、シロスタゾールである、上記[25]に記載の製造方法;
[27]ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、もしくは、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、上記[23]から[26]のいずれか1つに記載の製造方法;
[28]工程(b)と工程(c)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、上記[23]から[27]のいずれか1つに記載の製造方法:
工程(b)で得られた架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(c)で用いる架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程;
[29]水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、上記[28]に記載の製造方法;
[30]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
[31]血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に対して、グリセリンを添加する工程、および
(d)工程(c)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンとグリセリンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程;
を提供する。
本発明により、細胞、血液又は血液生成物と接触して使用する器具又はその表面全体を完全に組換えヒト血清アルブミンで被覆することができる。組換えヒト血清アルブミン分子間は架橋反応により共有結合で強固に結合しているので、血液と接触した際、血液中のタンパク質との吸着交換による基材表面からの脱落の問題もない。基材表面上に被覆された組換えヒト血清アルブミンは、架橋反応や材料表面への被覆処理後も本来アルブミンが保有している細胞非接着の性質を保持しており、優れた抗血栓性を長期間保持することを特徴とする、細胞、血液又は血液生成物と接触使用する器具又はその部材を提供することができる。
また、本発明によれば、基材表面に架橋組換えヒト血清アルブミンを溶液状態のまま被覆処理を施すので、種々の周知の被覆手段を採ることができ、複雑な形状を有する器具又はその部材であっても、また、種々の組成を有する器具又はその部材であっても完全にかつ持続的な被覆が達成できるため、幅広く種々の器具又はその部材に対して、細胞非接着性及び抗血栓性を付与することが可能である。
さらに、本発明における架橋組換えヒト血清アルブミンは、本来アルブミンの有している細胞非接着性のみでなく、薬物を含めた多数の分子と吸着する能力も失わないため、本発明においては、アルブミン吸着性分子(血小板凝固抑制剤等)を吸着させたアルブミンに対し、同様の架橋反応を起こさせた溶液で各種器具又はその部材表面を被覆処理し、当該架橋組換えヒト血清アルブミンから徐放させることにより、更なる抗血栓性能の向上を計ることができる。
なお、本発明の原料となる血清アルブミンは、リコンビナント技術を利用して開発され、ヒト患者に投与可能な医薬品レベルの非常に高品質なヒト血清アルブミンであり、安全面においても非常に有用である。
また、本発明によれば、基材表面に架橋組換えヒト血清アルブミンを溶液状態のまま被覆処理を施すので、種々の周知の被覆手段を採ることができ、複雑な形状を有する器具又はその部材であっても、また、種々の組成を有する器具又はその部材であっても完全にかつ持続的な被覆が達成できるため、幅広く種々の器具又はその部材に対して、細胞非接着性及び抗血栓性を付与することが可能である。
さらに、本発明における架橋組換えヒト血清アルブミンは、本来アルブミンの有している細胞非接着性のみでなく、薬物を含めた多数の分子と吸着する能力も失わないため、本発明においては、アルブミン吸着性分子(血小板凝固抑制剤等)を吸着させたアルブミンに対し、同様の架橋反応を起こさせた溶液で各種器具又はその部材表面を被覆処理し、当該架橋組換えヒト血清アルブミンから徐放させることにより、更なる抗血栓性能の向上を計ることができる。
なお、本発明の原料となる血清アルブミンは、リコンビナント技術を利用して開発され、ヒト患者に投与可能な医薬品レベルの非常に高品質なヒト血清アルブミンであり、安全面においても非常に有用である。
本発明は、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤を提供し、それは組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料からなる。
本明細書において「細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤」は血液に接触して用いられる医療用器具の表面を被覆する用途に用いられるものである。ここで「細胞」とは、典型的には、血液系の細胞である白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球)、赤血球、血小板であるが、付着性の株化された哺乳動物細胞、癌細胞、または、神経、内皮、皮膚、肺、筋肉、腎臓、肝臓、腸など由来の初代培養細胞や哺乳類の細胞以外も含めることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物細胞であってもよい。また、遺伝子導入した組換え体細胞などであっても良い。従って、「細胞接着抑制」とは上記の細胞の接着の抑制をいうが、特に、細胞が血球、血小板であった場合には、それらの細胞は血栓を形成するトリガーとなることから、血液に対しては、「血栓形成抑制」と表現することもできる。
本明細書において「血液に接触して用いられる医療用器具」とは、典型的には、抗血栓性を必要とする血液と接触して用いられる医療用器具であり、人工心臓、人工臓器、人工血管、コネクター、カテーテル、ステント、チューブ、血液回路、血液貯蔵用容器、透析膜、注射筒、注射針、人工透析器、血管カニューレ、シャント等の医療用器具があげられるが、医療用といえない場合であってもよい。たとえば、細胞、血液又は血液生成物に接触する可能性のある細胞解析用装置、検査キットなども含まれる。当該器具の材料としては、ポリエステル、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸エステルなどの医療用高分子材料、アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸カルシウムなどのセラミクス材料、ステンレス鋼、チタン合金、コバルト−クロム合金などの金属材料等が挙げられるがそれらに限定されない。使用される器具又はその部材の用途により要求される諸性能により適宜選択される。また、その形状は、平板状、チューブ状などの単純な形状に限定されることなく、各種医療用器具の内面のような複雑な形状であってもよい。
上記血液に接触して用いられる医療用器具を「被覆」する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、通常の溶液のコーティング法、たとえば、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が使用できる。
本発明の血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤は、「組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料」からなる。
本明細書において、「組換えヒト血清アルブミン」とは、遺伝子組換え技術により微生物もしくは培養細胞に産生させたものから単離精製することにより、又はそれらを化学的修飾もしくは生物的修飾することにより得られたヒト血清アルブミン(以下、HSAと表記する場合もある。)をいう。そのようなHSAは、遺伝子操作によって得られるのであれば、その由来に特に制限はない。したがって、当該HSAを産生させるためのHSA産生宿主は、遺伝子操作を経て調製されたものであれば特に限定されず、公知文献記載のものの他、今後開発されるものであっても適宜利用することができる。当該宿主としては、具体的には遺伝子操作を経てHSA産生性とされた菌(例えば、大腸菌、酵母、枯草菌など)、動物細胞などが挙げられる。特に、宿主として、酵母、就中サッカロマイセス属〔例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)〕、もしくはピキア属〔例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)〕を使用して得られたHSAが好ましい。また、栄養要求性株や抗生物質感受性株を使用して得られたHSAであってもよい。さらにまた、サッカロマイセス・セレビシエAH22株(a, his 4, leu 2, can 1)、ピキア・パストリスGTS115株(his 4)などを使用して得られたHSAが好適に用いられる。
また、HSA産生宿主の調製方法およびその培養によるHSAの生産方法、培養物からのHSAの分離採取方法はすべて公知ならびにそれに準じた手法を採用することによって実施される。例えば、HSA産生性宿主(またはHSA産生株)の調製方法としては、例えば通常のヒト血清アルブミン遺伝子を用いる方法(特開昭58−56684号、同58−90515号、同58−150517号の各公報)、新規なヒト血清アルブミン遺伝子を用いる方法(特開昭62−29985号、特開平1−98486号の各公報)、合成シグナル配列を用いる方法(特開平1−240191号公報)、血清アルブミンシグナル配列を用いる方法(特開平2−167095号公報)、組換えプラスミドを染色体上に組込む方法(特開平3−72889号公報)、宿主同士を融合させる方法(特開平3−53877号公報)、メタノール含有培地中で変異を起こさせる方法、変異型AOX2プロモーターを用いる方法(特願平3−63598号、同3−63599号の各公報)、枯草菌によるHSAの発現(特開昭62−25133号公報)、酵母によるHSAの発現(特開昭60−41487号、同63−39576号、同63−74493号の各公報)、ピキア酵母によるHSAの発現(特開平2−104290号公報)などが例示される。
本明細書において、「ポリエポキシ化合物」とは、組換えヒト血清アルブミンを架橋するものであって、架橋反応後に親水性が付与される架橋剤であれば制限されないが、特に複数のエポキシ基を有する架橋剤であるポリエポキシ化合物からなる架橋剤であり、たとえば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等を用いることができる。中でも、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=1〜8)、すなわちエチレングリコール繰り返し単位(n)が1〜8である場合のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。nが増大するほど架橋後の組換えヒト血清アルブミンが疎水的になるため、nが9以上の場合は、水分保持用の可塑剤を添加してもなお脆く、良好なしなやかさを保持した被覆膜が作製できない。
本明細書において、「生体材料」とは、哺乳動物、好ましくはヒトの生体に移植することを目的とした素材のことであって、生体に用いた際に炎症や体外排除などの拒絶反応が無いものをいう。生体材料の具体的な例としては、上記特性を備えたものであれば如何なる形状であってもよいが、例えば、フィルム状のものが好ましく挙げられる。従って、「組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料」とは、架橋された組換えヒト血清アルブミンフィルムであることが好ましい。
また、上記生体材料は、組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物以外にも生体に拒絶反応を誘導しないものであればさらに含有していてもよく、例えば、生体材料に水分を保持させるための可塑剤、細胞接着又は血栓形成を抑制するための有効成分、またはその両者を含有していてもよい。従って、本発明はさらに、組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物および水分保持可能な可塑剤を含有する生体材料、組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物および抗血栓剤を含有する生体材料ならびに組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、水分保持可能な可塑剤および抗血栓剤を含有する生体材料を提供する。ここで、「水分保持可能な可塑剤」とは、水分保持可能なものであれば何でもよいが、親水性に優れたものが望ましい。特に、グリセリン、糖類、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物等が好ましく、その中でもグリセリンがより好ましい。また、「抗血栓剤」は、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤であることが好ましい。ここで、「吸着性または親和性」とは、血清アルブミンが有する多数の物質を吸着させることができる性質のことである。血清アルブミンに吸着可能な物質としてはラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Pb2+、Hg2+などの金属イオン、メチルオレンジ、bromocresol green 、2−(4’−phenylazo)−benzoic acidなどの色素のほか、血栓形成を抑制するための抗血栓剤が挙げられる。抗血栓剤としては、ワルファリンカリウムなどの経口抗凝固剤、乾燥濃縮アンチトロンビンIII、乾燥濃縮人活性プロテインC、ダナバロイドナトリウム、輸血用クエン酸ナトリウムなどの血液凝固阻止剤、アスピリン、イコサペント酸エチル、塩酸サルボグラレート、塩酸チクロピジン、オザグレルナトリウム、合剤、リマプロストアルファデスク、シロスタゾールなどの血小板凝集抑制剤、アルテプラーゼ、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、ナサルプラーゼ、ナテプラーゼ、バトロキソビン、パミテプラーゼ、モンテプラーゼなどの血栓溶解剤、アルガトロパンなどの抗トロンピン剤、ダルテパリンナトリウム、パルナパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム、ヘパリンナトリウム、硫酸プロタミン、レビパリンナトリウムなどの抗ヘパリン製剤などが挙げられるが、その中でも、シロスタゾールが好ましい。生体材料として用いる場合、抗血栓剤はあらかじめ血清アルブミンに吸着させることが好ましい。
また本発明は、上記の生体材料で被覆された血液に接触して用いられる医療器具の製造方法(I)を提供する。具体的には、本発明の製造方法(I)は以下の工程を含む。
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(b)架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(b)架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。
工程(a)の架橋反応において、用いられる「組換えヒト血清アルブミン」は、上記した調製方法に基づいて予め準備することができる。架橋処理前の組換えヒト血清アルブミンは、そのまま用いることもできるが、透析用セルロースチューブを用いて、リン酸緩衝生理食塩水に対して数日間(例えば、4日間)透析処理し、不純物(例えば、N−アセチル−DL−トリプトファン、カプリル酸ナトリウム、塩化ナトリウムなど)を除いておくことが好ましい。次に、PBS溶液中に組換えヒト血清アルブミン溶液を調製し、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)(315〜900mM、好ましくは345〜360mM)を添加し、一定時間(例えば、24時間)、一定温度(例えば、25℃)で強く攪拌し、架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を得ることができる。該溶液は、そのままPBS溶液で濃度調整を行い、医療用器具の被覆に用いることもできるが、透析用セルロースチューブを用いて、PBS溶液に対して数日間透析処理し、未反応EGDEを除去することが好ましい。
工程(b)の被覆工程において、上記架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆することができる。「血液に接触して用いられる医療用器具」、「被覆」の方法は上記の器具、方法を適宜用いることができる。
工程(b)の被覆工程において、上記架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆することができる。「血液に接触して用いられる医療用器具」、「被覆」の方法は上記の器具、方法を適宜用いることができる。
また、本発明は、さらに抗血栓剤を生体材料に含有させる工程を含む、血液に接触して用いられる医療器具の製造方法(II)を提供する。具体的には、本発明の製造方法(II)は、以下の工程を含む。
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させる工程、
(b)抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(c)架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させる工程、
(b)抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(c)架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程
工程(a)において、組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させることができる。用いられる「組換えヒト血清アルブミン」は、製造方法(I)に記載の通りに適宜調製・精製することができる。「抗血栓剤」は上記に記載したものを適宜用いることができるが、担持させる抗血栓剤が疎水性である場合、予め適当な溶媒を組換えヒト血清アルブミンに添加しておくことが好ましい。添加する溶媒は当業者であれば、担持する抗血栓剤に応じて適切なものを選択・使用することができる。例えば、抗血栓剤がシロスタゾールであった場合には、30%メタノール/PBS溶液中に3%組換えヒト血清アルブミン溶液を調製し、該溶液中にシロスタゾール溶液を添加して、一晩攪拌することで組換えヒト血清アルブミンにシロスタゾールを担持させることができる。工程(b)の架橋反応工程および工程(c)の被覆工程は製造方法(I)で記載した工程と同様の工程で行われて良い。
また、本発明の製造方法(I)または(II)は、さらに水分保持用の可塑剤を生体材料に含有させる工程を含む、血液に接触して用いられる医療器具の製造方法(I’)または(II’)を提供する。具体的には、本発明の製造方法(I’)または(II’)は、製造方法(I)または(II)の架橋工程と被覆工程の間に、架橋工程で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液(または架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液)に水分保持可能な可塑剤を添加して、被覆工程で用いる架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液(または架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液)とする工程を更に含む。「水分保持可能な可塑剤」は、上記に記載したものを適宜用いることができる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、本実施例中では、特に断らないかぎり、アルブミンは全て組換えヒト血清アルブミンを用いている。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、本実施例中では、特に断らないかぎり、アルブミンは全て組換えヒト血清アルブミンを用いている。
血小板凝集抑制剤を担持したヒト血清アルブミンの架橋
透析用セルロースチューブ(分子量カットオフ値 12KDa;日本メディカルサイエンス)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4,0.15mM KH2PO4,0.27mM KCl、13.7mM NaCl,0.81mM Na2PO4)に対して組換えヒト血清アルブミン(田辺三菱製薬株式会社)溶液を4日間透析処理し、N−アセチル−DL−トリプトファン、カプリル酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの添加物を除いた。次に、30%メタノール/PBS溶液中に3%組換えヒト血清アルブミン溶液10mLを調製し、該溶液中にシロスタゾール(大塚製薬株式会社)ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液5.07μLを終濃度152μMになるように添加した。一晩攪拌してアルブミンとシロスタゾールを結合させた後、シロスタゾールを担持させたアルブミン溶液、または、担持させていないアルブミンの溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)(225,270,315,345,360,または900mMの各濃度)(和光純薬工業株式会社)を添加し、24時間、25℃で強く攪拌し、シロスタゾール担持架橋アルブミン(cilo−albumin)溶液または架橋アルブミン溶液を得た。透析用セルロースチューブを用いて、152μMシロスタゾールを含有する30%メタノール/PBS溶液または30%メタノール/PBS溶液に対して、それぞれシロスタゾール担持架橋アルブミンの反応混合液または架橋アルブミンの反応混合液を4日間透析処理し、未反応EGDEを除去した。その後、30%メタノール/PBS溶液を添加し、終濃度2%に調整した。
透析用セルロースチューブ(分子量カットオフ値 12KDa;日本メディカルサイエンス)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4,0.15mM KH2PO4,0.27mM KCl、13.7mM NaCl,0.81mM Na2PO4)に対して組換えヒト血清アルブミン(田辺三菱製薬株式会社)溶液を4日間透析処理し、N−アセチル−DL−トリプトファン、カプリル酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの添加物を除いた。次に、30%メタノール/PBS溶液中に3%組換えヒト血清アルブミン溶液10mLを調製し、該溶液中にシロスタゾール(大塚製薬株式会社)ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液5.07μLを終濃度152μMになるように添加した。一晩攪拌してアルブミンとシロスタゾールを結合させた後、シロスタゾールを担持させたアルブミン溶液、または、担持させていないアルブミンの溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)(225,270,315,345,360,または900mMの各濃度)(和光純薬工業株式会社)を添加し、24時間、25℃で強く攪拌し、シロスタゾール担持架橋アルブミン(cilo−albumin)溶液または架橋アルブミン溶液を得た。透析用セルロースチューブを用いて、152μMシロスタゾールを含有する30%メタノール/PBS溶液または30%メタノール/PBS溶液に対して、それぞれシロスタゾール担持架橋アルブミンの反応混合液または架橋アルブミンの反応混合液を4日間透析処理し、未反応EGDEを除去した。その後、30%メタノール/PBS溶液を添加し、終濃度2%に調整した。
架橋反応効率の評価
上記の手法に従って、345mM EGDEを添加して1,8,または24時間反応の各条件下で調製したシロスタゾール担持アルブミン溶液または架橋アルブミン溶液を試料として用いて、架橋反応効率の評価を行った。4%重炭酸ナトリウム(pH=8.5)200μLおよび0.1%2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(和光純薬工業株式会社)200μLの水溶液に0.02%の架橋反応後のアルブミン試料または架橋反応後のシロスタゾール担持アルブミン試料200μLを添加した。混合液を暗所、40℃で反応させ、30分後に3%ドデシル硫酸ナトリウム200μLを添加した後、1N塩酸を100μLを添加した。試料溶液の波長340nmにおける吸光度をUV−2450 UV−VISIBLE分光計(島津製作所)を用いて測定した。架橋の反応効率(RE)を下記の式:
RE(%)=(Na−Nc/Na)×100(Na:未架橋の天然アルブミン試料の吸光度;Nc:架橋アルブミン試料の吸光度)
に基づいて計算した。各値は5回の独立実験から得た。結果を図1に示す。反応効率は反応時間が長くなるに従って高くなった。シロスタゾールを担持していないアルブミンの方が、シロスタゾール担持アルブミンよりも反応効率が高いのは、シロスタゾールとの結合によりアルブミンの高次構造がわずかに変化したためであると考えられる。
上記の手法に従って、345mM EGDEを添加して1,8,または24時間反応の各条件下で調製したシロスタゾール担持アルブミン溶液または架橋アルブミン溶液を試料として用いて、架橋反応効率の評価を行った。4%重炭酸ナトリウム(pH=8.5)200μLおよび0.1%2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(和光純薬工業株式会社)200μLの水溶液に0.02%の架橋反応後のアルブミン試料または架橋反応後のシロスタゾール担持アルブミン試料200μLを添加した。混合液を暗所、40℃で反応させ、30分後に3%ドデシル硫酸ナトリウム200μLを添加した後、1N塩酸を100μLを添加した。試料溶液の波長340nmにおける吸光度をUV−2450 UV−VISIBLE分光計(島津製作所)を用いて測定した。架橋の反応効率(RE)を下記の式:
RE(%)=(Na−Nc/Na)×100(Na:未架橋の天然アルブミン試料の吸光度;Nc:架橋アルブミン試料の吸光度)
に基づいて計算した。各値は5回の独立実験から得た。結果を図1に示す。反応効率は反応時間が長くなるに従って高くなった。シロスタゾールを担持していないアルブミンの方が、シロスタゾール担持アルブミンよりも反応効率が高いのは、シロスタゾールとの結合によりアルブミンの高次構造がわずかに変化したためであると考えられる。
架橋アルブミンフィルムの調製と特性評価
各種濃度のEGDEで架橋した2%架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンそれぞれ3mLをグリセリン(0.5%)と混合し、ポリプロピレン製の鋳型(2×4cm2)にキャストして、一晩室温で乾燥させた。対照として、同様の手法で未架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持未架橋アルブミンからもフィルムを調製した。
アルブミンフィルムの膨潤度を下記の通りに評価した。フィルム(1×1cm2)を室温、3時間、蒸留水中に浸し、辺長を測定した。フィルムの膨潤度を下記の式:
膨潤度(%)=[(含水フィルムの面積−乾燥フィルムの面積)/乾燥フィルムの面積]×100
に従って計算した。架橋アルブミンフィルムおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルムの可溶性および膨潤度について、表1に結果を示す。
各種濃度のEGDEで架橋した2%架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンそれぞれ3mLをグリセリン(0.5%)と混合し、ポリプロピレン製の鋳型(2×4cm2)にキャストして、一晩室温で乾燥させた。対照として、同様の手法で未架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持未架橋アルブミンからもフィルムを調製した。
アルブミンフィルムの膨潤度を下記の通りに評価した。フィルム(1×1cm2)を室温、3時間、蒸留水中に浸し、辺長を測定した。フィルムの膨潤度を下記の式:
膨潤度(%)=[(含水フィルムの面積−乾燥フィルムの面積)/乾燥フィルムの面積]×100
に従って計算した。架橋アルブミンフィルムおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルムの可溶性および膨潤度について、表1に結果を示す。
架橋アルブミンフィルムおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルムの両者は、EGDE濃度に関して、可溶性および膨潤度について似通った挙動を示した。EGDE濃度が低い場合(225、270、315mM)、フィルムは容易に水に可溶した。不溶性フィルムを得るためにはEGDE濃度が345mM以上必要であり、またフィルムの膨潤度もEGDE濃度上昇依存的に抑制された。但し、一定以上のEGDE濃度(例えば、900mM)で架橋反応を行うと、架橋反応中にアルブミンの凝集を引き起こした(データ非開示)。
架橋アルブミンフィルムの機械的特性評価
上記で調製したEGDE濃度315mMの各フィルムを長方形の切片状(5×40mm2)に切断し、万能試験機(UCT−500、オリエンテック)を用いて機械的検査を行った。少なくとも6回の独立測定結果から、限界強度、限界伸長、ヤング率を計算した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。限界強度、限界伸長、ヤング率について、結果を表2に示す。
上記で調製したEGDE濃度315mMの各フィルムを長方形の切片状(5×40mm2)に切断し、万能試験機(UCT−500、オリエンテック)を用いて機械的検査を行った。少なくとも6回の独立測定結果から、限界強度、限界伸長、ヤング率を計算した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。限界強度、限界伸長、ヤング率について、結果を表2に示す。
シロスタゾール担持アルブミンフィルムは脆く、機械的性質試験の操作に耐えなかった。これはシロスタゾールの疎水的化学構造によるものと推察される。一方、架橋後のアルブミンフィルムは、未架橋のものよりも柔軟性が増し、限界伸長値が高くなり、ヤング率が小さくなった。同様の傾向が、シロスタゾール担持架橋アルブミンでも観察できた。エポキシ基がアルブミンと反応することによりヒドロキシル基ができるので、それがフィルムに親水性を与え、結果としてフィルムに柔軟性を与えているものと推測される。架橋アルブミンとシロスタゾール担持架橋アルブミン間には、架橋前に観察された著しい機械的特性の違いが見られなくなっていた。これは、シロスタゾールの疎水性を上回る十分なヒドロキシル基が架橋によって導入されたことによると推察される。
シロスタゾール担持架橋アルブミンフィルムに対する細胞接着
2%架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミン溶液を0.22μmフィルターを通してフィルター滅菌した。溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュ(IWAKI)に流し込み、室温で一晩乾燥させた。アルブミンフィルムへの細胞接着を調べるため、マウス繊維芽細胞L929細胞の細胞懸濁液を被覆した各ディッシュに2.5×104細胞/cm2の濃度で播種し、5%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco)、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを添加した最小必須培地(MEM)(Gibco)中にて培養を行った。対照として、被覆処理されていない培養ディッシュ上にも同様に細胞を播種し、上記と同様の組成の培地2mL、終濃度51μMになるようにシロスタゾールDMSO溶液0.34μL添加した培地2mL、または、DMSO 0.34μL添加した培地2mLの各培地中にて培養を行った。37℃、加湿された5%CO2インキュベーター中で2時間培養後、細胞をPBSで3回洗浄し、非接着細胞を除去した。2時間培養後のディッシュ上のL929細胞の顕微鏡像を図2に示す。被覆未処理ディッシュには細胞が接着しているが、架橋していない天然のアルブミンを吸着させたアルブミン被覆ディッシュと同様に、架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンで被覆されたディッシュ上では、細胞接着がおこらなかった。これは、架橋処理、フィルム調製工程を経ても、アルブミンの細胞非接着特性が維持されていることを示している。
また、接着した細胞をトリプシン処理で集めて、その数をカウントした。細胞のカウントおよび細胞の形態観察は血球計数器および位相差顕微鏡(IX71)(オリンパス)を用いて行った。接着細胞画分は4回の独立実験から計算した。結果を表3に示す。
2%架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミン溶液を0.22μmフィルターを通してフィルター滅菌した。溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュ(IWAKI)に流し込み、室温で一晩乾燥させた。アルブミンフィルムへの細胞接着を調べるため、マウス繊維芽細胞L929細胞の細胞懸濁液を被覆した各ディッシュに2.5×104細胞/cm2の濃度で播種し、5%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco)、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを添加した最小必須培地(MEM)(Gibco)中にて培養を行った。対照として、被覆処理されていない培養ディッシュ上にも同様に細胞を播種し、上記と同様の組成の培地2mL、終濃度51μMになるようにシロスタゾールDMSO溶液0.34μL添加した培地2mL、または、DMSO 0.34μL添加した培地2mLの各培地中にて培養を行った。37℃、加湿された5%CO2インキュベーター中で2時間培養後、細胞をPBSで3回洗浄し、非接着細胞を除去した。2時間培養後のディッシュ上のL929細胞の顕微鏡像を図2に示す。被覆未処理ディッシュには細胞が接着しているが、架橋していない天然のアルブミンを吸着させたアルブミン被覆ディッシュと同様に、架橋アルブミンおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンで被覆されたディッシュ上では、細胞接着がおこらなかった。これは、架橋処理、フィルム調製工程を経ても、アルブミンの細胞非接着特性が維持されていることを示している。
また、接着した細胞をトリプシン処理で集めて、その数をカウントした。細胞のカウントおよび細胞の形態観察は血球計数器および位相差顕微鏡(IX71)(オリンパス)を用いて行った。接着細胞画分は4回の独立実験から計算した。結果を表3に示す。
DMSO添加培地とシロスタゾールDMSO添加培地で培養された細胞は未添加の場合に比べてわずかにその接着率が減少したが、大部分は接着しており、シロスタゾール担持架橋アルブミン被覆ディッシュで細胞が接着していないのはシロスタゾールの細胞毒性によるものではないといえる。
アルブミンフィルムからの薬剤徐放性
2%シロスタゾール担持架橋アルブミン溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュに流し込み、室温で一晩乾燥させた。0.01%、0.1%、または0.5%Tween80(和光純薬工業株式会社)を含有するPBS1mLを添加後、ディッシュを25℃で培養した。0.5,1,3,6,24,48,72,96,120,144,168および192時間後に、ディッシュから上清を一部回収し、同量のフレッシュな培地を加えた。回収した試料溶液の波長257nmの吸光度を分光計を用いて測定し、フィルムから放出されたシロスタゾールを検出した。シロスタゾールの累積放出は、下記の式:
累積放出率(%)=(累積放出されたシロスタゾール量/アルブミンフィルム中に含有される全シロスタゾール量)×100
を用いて、培地中に放出されたシロスタゾール量から計算した。シロスタゾールは酢酸に良く溶解するため、フィルム中に含有される全シロスタゾール量は、酢酸に曝露した場合のフィルムからの放出量から見積もった。図3にTween80の各濃度におけるシロスタゾール放出率の結果を示す。いずれのTween80濃度の条件下においても、シロスタゾールは最初の6時間以内に大量に放出され、以降は一定量で徐々に放出された。これはアルブミンと弱い結合状態であったシロスタゾールについては短期間内に放出され、それ以外は時間依存的に徐々に放出されることによる。また、放出量はTween80濃度依存的であり、0.5%Tween80の場合、144時間後にアルブミンフィルム中のほとんど全てのシロスタゾールが放出された。
2%シロスタゾール担持架橋アルブミン溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュに流し込み、室温で一晩乾燥させた。0.01%、0.1%、または0.5%Tween80(和光純薬工業株式会社)を含有するPBS1mLを添加後、ディッシュを25℃で培養した。0.5,1,3,6,24,48,72,96,120,144,168および192時間後に、ディッシュから上清を一部回収し、同量のフレッシュな培地を加えた。回収した試料溶液の波長257nmの吸光度を分光計を用いて測定し、フィルムから放出されたシロスタゾールを検出した。シロスタゾールの累積放出は、下記の式:
累積放出率(%)=(累積放出されたシロスタゾール量/アルブミンフィルム中に含有される全シロスタゾール量)×100
を用いて、培地中に放出されたシロスタゾール量から計算した。シロスタゾールは酢酸に良く溶解するため、フィルム中に含有される全シロスタゾール量は、酢酸に曝露した場合のフィルムからの放出量から見積もった。図3にTween80の各濃度におけるシロスタゾール放出率の結果を示す。いずれのTween80濃度の条件下においても、シロスタゾールは最初の6時間以内に大量に放出され、以降は一定量で徐々に放出された。これはアルブミンと弱い結合状態であったシロスタゾールについては短期間内に放出され、それ以外は時間依存的に徐々に放出されることによる。また、放出量はTween80濃度依存的であり、0.5%Tween80の場合、144時間後にアルブミンフィルム中のほとんど全てのシロスタゾールが放出された。
シロスタゾール担持架橋アルブミンフィルムに対する血小板接着
透析用セルロースチューブ(分子量カットオフ値 12KDa)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4,0.15mM KH2PO4,0.27mM KCl、13.7mM NaCl,0.81mM Na2PO4)に対して組換えヒト血清アルブミン溶液を4日間透析処理し、N−アセチル−DL−トリプトファン、カプリル酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの添加物を除いた。次に、30%メタノール/PBS溶液中に3%組換えヒト血清アルブミン溶液10mLを調製し、該溶液中にシロスタゾールジメチルスルホキシド(DMSO)溶液5.07μLを終濃度152μMになるように添加した。一晩攪拌してアルブミンとシロスタゾールを結合させた後、シロスタゾールを担持させたアルブミン、または、担持させていないアルブミンの溶液に345mMエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)を添加し、24時間、25℃で強く攪拌し、シロスタゾール担持架橋アルブミン(cilo−albumin)溶液または架橋アルブミン溶液を得た。透析用セルロースチューブを用いて、152μMシロスタゾールを含有する30%メタノール/PBS溶液または30%メタノール/PBS溶液に対して、それぞれシロスタゾール担持架橋アルブミンの反応混合液または架橋アルブミンの反応混合液を4日間透析処理し、未反応EGDEを除去した。その後、30%メタノール/PBS溶液を添加し、終濃度2%に調整し、0.22μmフィルターを通してフィルター滅菌した。溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュ(IWAKI)に流し込み、室温で一晩乾燥させた。一方、アルブミンを吸着させた細胞培養ディッシュを調製するため、ディッシュを未架橋の5%天然アルブミン溶液に一晩浸した。得られたアルブミン吸着ディッシュ、架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュをPBSまたは10μg/mL仔牛血漿フィブロネクチン(FN)(Invitrogen)PBS溶液中で一晩培養した。
ウサギの鮮血5mLを採血し、0.077mM EDTA2Na375μLと混和した。混和物を900G、5分間遠心分離することで血小板豊富な血漿(PRP)を得て、また混和物を800G、15分間遠心分離することで血小板に乏しい血漿(PPP)を得た。血小板濃度はPPPでPRPを希釈することで調整した。FN溶液に曝露した、または、曝露していない、アルブミン吸着ディッシュ、架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュのそれぞれについて、血小板を2×105細胞/cm2の細胞濃度で播種した。対照として、ガラス板(松浪硝子工業株式会社)および金被覆ガラス板を4mM α−メルカプトエチル−ω−メトキシ−ポリオキシエチレン(SUNBRIGHT ME−020SH、Mn=20)溶液(水:エタノールを1:6で混合)中、室温で6時間浸し、自己集合単分子層(SAM)を形成させることによって調製したPEG表面被覆ガラス板にも血小板を播種した。37℃で2時間培養後、接着した血小板をPBSで洗浄し、0.1%カコジル酸緩衝液(Wako)中の2%グルタルアルデヒドで室温、一晩固定した。試料をPBSで洗浄し、段階的なエタノール水溶液(70%、80%、90%、95%)で15分間培養し、最終的にエタノールで3回、15分間培養することによって脱水処理をおこなった。凍結乾燥機(Freeze Dryer DC 41)(ヤマト科学株式会社)で乾燥後、試料を金でスパッタ被覆し、走査電子顕微鏡(SEM,XL30)(FEI)を用いて調べた。各試料の走査電子顕微鏡写真を図4に示す。また、接着した血小板数を同一試料の異なる4箇所から計測した。4回の独立実験を行い、結果をガラス板上に接着した血小板の数に対する試料上に接着した血小板の数の割合として示した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。各試料における接着血小板数の割合を図5に示す。
ガラス板と同様に、アルブミン吸着ディッシュはFN溶液の曝露の有無に関わらず、著しい血小板の接着が観察された(図4a,c,d)。また、接着血小板の細胞形態から、血小板の活性化が促進されていることが分かった。これはPRPに含有される他の細胞接着性タンパク質およびFNによって吸着アルブミンが置換されることによると推察される。予想に反し、FN溶液にアルブミン吸着ディッシュを一晩曝露してもしなくても著しい差が見られなかったが、これは吸着アルブミンが、2時間以内にPRP中のFN、フォン・ヴィレブランド因子、ビトロネクチン、フィビリノゲンのような細胞接着分子に急速に置換されたためであると考えられる。一方で、PEG表面被覆ガラス板と同様、アルブミンフィルム被覆ディッシュは、FN溶液に一晩曝露した場合であっても、血小板接着が阻害された(図4b,e−h)。このことは、アルブミンフィルムは血小板接着抑制の特性を維持しており、また、架橋によってタンパク質の置換が抑制されていることを示唆している。
透析用セルロースチューブ(分子量カットオフ値 12KDa)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4,0.15mM KH2PO4,0.27mM KCl、13.7mM NaCl,0.81mM Na2PO4)に対して組換えヒト血清アルブミン溶液を4日間透析処理し、N−アセチル−DL−トリプトファン、カプリル酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの添加物を除いた。次に、30%メタノール/PBS溶液中に3%組換えヒト血清アルブミン溶液10mLを調製し、該溶液中にシロスタゾールジメチルスルホキシド(DMSO)溶液5.07μLを終濃度152μMになるように添加した。一晩攪拌してアルブミンとシロスタゾールを結合させた後、シロスタゾールを担持させたアルブミン、または、担持させていないアルブミンの溶液に345mMエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)を添加し、24時間、25℃で強く攪拌し、シロスタゾール担持架橋アルブミン(cilo−albumin)溶液または架橋アルブミン溶液を得た。透析用セルロースチューブを用いて、152μMシロスタゾールを含有する30%メタノール/PBS溶液または30%メタノール/PBS溶液に対して、それぞれシロスタゾール担持架橋アルブミンの反応混合液または架橋アルブミンの反応混合液を4日間透析処理し、未反応EGDEを除去した。その後、30%メタノール/PBS溶液を添加し、終濃度2%に調整し、0.22μmフィルターを通してフィルター滅菌した。溶液1mLを3.5cm細胞培養ディッシュ(IWAKI)に流し込み、室温で一晩乾燥させた。一方、アルブミンを吸着させた細胞培養ディッシュを調製するため、ディッシュを未架橋の5%天然アルブミン溶液に一晩浸した。得られたアルブミン吸着ディッシュ、架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュをPBSまたは10μg/mL仔牛血漿フィブロネクチン(FN)(Invitrogen)PBS溶液中で一晩培養した。
ウサギの鮮血5mLを採血し、0.077mM EDTA2Na375μLと混和した。混和物を900G、5分間遠心分離することで血小板豊富な血漿(PRP)を得て、また混和物を800G、15分間遠心分離することで血小板に乏しい血漿(PPP)を得た。血小板濃度はPPPでPRPを希釈することで調整した。FN溶液に曝露した、または、曝露していない、アルブミン吸着ディッシュ、架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュおよびシロスタゾール担持架橋アルブミンフィルム被覆ディッシュのそれぞれについて、血小板を2×105細胞/cm2の細胞濃度で播種した。対照として、ガラス板(松浪硝子工業株式会社)および金被覆ガラス板を4mM α−メルカプトエチル−ω−メトキシ−ポリオキシエチレン(SUNBRIGHT ME−020SH、Mn=20)溶液(水:エタノールを1:6で混合)中、室温で6時間浸し、自己集合単分子層(SAM)を形成させることによって調製したPEG表面被覆ガラス板にも血小板を播種した。37℃で2時間培養後、接着した血小板をPBSで洗浄し、0.1%カコジル酸緩衝液(Wako)中の2%グルタルアルデヒドで室温、一晩固定した。試料をPBSで洗浄し、段階的なエタノール水溶液(70%、80%、90%、95%)で15分間培養し、最終的にエタノールで3回、15分間培養することによって脱水処理をおこなった。凍結乾燥機(Freeze Dryer DC 41)(ヤマト科学株式会社)で乾燥後、試料を金でスパッタ被覆し、走査電子顕微鏡(SEM,XL30)(FEI)を用いて調べた。各試料の走査電子顕微鏡写真を図4に示す。また、接着した血小板数を同一試料の異なる4箇所から計測した。4回の独立実験を行い、結果をガラス板上に接着した血小板の数に対する試料上に接着した血小板の数の割合として示した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。各試料における接着血小板数の割合を図5に示す。
ガラス板と同様に、アルブミン吸着ディッシュはFN溶液の曝露の有無に関わらず、著しい血小板の接着が観察された(図4a,c,d)。また、接着血小板の細胞形態から、血小板の活性化が促進されていることが分かった。これはPRPに含有される他の細胞接着性タンパク質およびFNによって吸着アルブミンが置換されることによると推察される。予想に反し、FN溶液にアルブミン吸着ディッシュを一晩曝露してもしなくても著しい差が見られなかったが、これは吸着アルブミンが、2時間以内にPRP中のFN、フォン・ヴィレブランド因子、ビトロネクチン、フィビリノゲンのような細胞接着分子に急速に置換されたためであると考えられる。一方で、PEG表面被覆ガラス板と同様、アルブミンフィルム被覆ディッシュは、FN溶液に一晩曝露した場合であっても、血小板接着が阻害された(図4b,e−h)。このことは、アルブミンフィルムは血小板接着抑制の特性を維持しており、また、架橋によってタンパク質の置換が抑制されていることを示唆している。
血液凝固実験
外筒回転タイプの共軸二重円筒形回転粘度計(Rheologia A3000)(Elquest株式会社)を用いて、アルブミンフィルム被覆された表面で血液凝固過程を観測した(図6)。血液凝固は血小板接着のほかに内因性凝固カスケードの活性化が関与していると考えられている。そこで、内因性凝固カスケードに対するアルブミンフィルムの効果を評価するため、血小板が欠乏した血液を用いた。血液試料として、50%アルセバー溶液(コージンバイオ株式会社)を含有する羊抗凝固処理血液を計測の直前にヘモクロンレスポンス(International Technidyne Corporation)を用いて、CaCl2を添加することで、活性凝固時間を150±10秒に調整した血液を用いた。内筒と外筒をアルブミンフィルムで被覆するために、1.8%ポリスチレン(PS)のトルエン溶液に5分間浸し、真空乾燥することによって、まずチタンの内筒と外筒をPSで被覆した。次に、PS被覆した内筒と外筒を架橋アルブミンフィルムに室温、1時間浸して、35℃で一晩乾燥させた。対照として、PS被覆した内筒と外筒を一晩5%プルロニックF68溶液(Sigma)に浸すことによって調製したPEG被覆内筒と外筒を用いた。剪断率50s−1で粘度測定を行い、出力信号を10秒ごとに得た。測定温度は37℃で維持した。図6bのように、基底線と勾配の近似直線の交差点から得られる凝固開始時間によって、各試料の抗凝固性を評価した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。各試料の凝固開始時間を図7に示す。
アルブミンフィルムで被覆した表面は、被覆されていないチタン表面と比較して、著しく血液凝固開始時間が延長され、優れた抗血栓性表面として広く知られているPEG被覆よりもわずかに長かった。これは、因子XII、高分子キニノゲン、プレカリクレインが表面に吸着することによって開始される内因性凝固カスケードの活性化が、アルブミンフィルム被覆の表面上では抑制されているためであると考えられる。
また、粘度計測後の内筒において、PEGまたはアルブミンフィルム被覆されている場合、血栓が表面から容易に剥がれてきたが、被覆されていない内筒では、表面に強固に結合していた(図8)。これはアルブミンフィルムの有するタンパク質非吸着性および細胞非接着性により、血漿タンパク質、フィブリンゲル、血球細胞などの血栓構成要素の表面への吸着が妨げられたためであると考えられる。
外筒回転タイプの共軸二重円筒形回転粘度計(Rheologia A3000)(Elquest株式会社)を用いて、アルブミンフィルム被覆された表面で血液凝固過程を観測した(図6)。血液凝固は血小板接着のほかに内因性凝固カスケードの活性化が関与していると考えられている。そこで、内因性凝固カスケードに対するアルブミンフィルムの効果を評価するため、血小板が欠乏した血液を用いた。血液試料として、50%アルセバー溶液(コージンバイオ株式会社)を含有する羊抗凝固処理血液を計測の直前にヘモクロンレスポンス(International Technidyne Corporation)を用いて、CaCl2を添加することで、活性凝固時間を150±10秒に調整した血液を用いた。内筒と外筒をアルブミンフィルムで被覆するために、1.8%ポリスチレン(PS)のトルエン溶液に5分間浸し、真空乾燥することによって、まずチタンの内筒と外筒をPSで被覆した。次に、PS被覆した内筒と外筒を架橋アルブミンフィルムに室温、1時間浸して、35℃で一晩乾燥させた。対照として、PS被覆した内筒と外筒を一晩5%プルロニックF68溶液(Sigma)に浸すことによって調製したPEG被覆内筒と外筒を用いた。剪断率50s−1で粘度測定を行い、出力信号を10秒ごとに得た。測定温度は37℃で維持した。図6bのように、基底線と勾配の近似直線の交差点から得られる凝固開始時間によって、各試料の抗凝固性を評価した。統計的評価のために、実験群をウェルチのt検定による分散分析を用いて比較した。各試料の凝固開始時間を図7に示す。
アルブミンフィルムで被覆した表面は、被覆されていないチタン表面と比較して、著しく血液凝固開始時間が延長され、優れた抗血栓性表面として広く知られているPEG被覆よりもわずかに長かった。これは、因子XII、高分子キニノゲン、プレカリクレインが表面に吸着することによって開始される内因性凝固カスケードの活性化が、アルブミンフィルム被覆の表面上では抑制されているためであると考えられる。
また、粘度計測後の内筒において、PEGまたはアルブミンフィルム被覆されている場合、血栓が表面から容易に剥がれてきたが、被覆されていない内筒では、表面に強固に結合していた(図8)。これはアルブミンフィルムの有するタンパク質非吸着性および細胞非接着性により、血漿タンパク質、フィブリンゲル、血球細胞などの血栓構成要素の表面への吸着が妨げられたためであると考えられる。
本発明により、細胞、血液又は血液生成物と接触使用する器具又はその表面全体を架橋組換えヒト血清アルブミンで被覆し、幅広く種々の器具又はその部材に対して、細胞非接着性及び抗血栓性を付与することが可能である。
また、本発明における架橋組換えヒト血清アルブミンは、本来アルブミンの有している細胞非接着性のみでなく、薬物を含めた多数の分子と吸着する能力も失わないため、抗血栓剤等を担持させた架橋アルブミンから徐放させることにより、更なる抗血栓性能の向上を計ることができる。
なお、近年、ヒト患者に投与可能な医薬品レベルの非常に高品質なヒト血清アルブミンもリコンビナント技術を利用して開発されており、アルブミンを原料とした医療材料は安全面においても非常に有用である。
また、本発明における架橋組換えヒト血清アルブミンは、本来アルブミンの有している細胞非接着性のみでなく、薬物を含めた多数の分子と吸着する能力も失わないため、抗血栓剤等を担持させた架橋アルブミンから徐放させることにより、更なる抗血栓性能の向上を計ることができる。
なお、近年、ヒト患者に投与可能な医薬品レベルの非常に高品質なヒト血清アルブミンもリコンビナント技術を利用して開発されており、アルブミンを原料とした医療材料は安全面においても非常に有用である。
Claims (31)
- 組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物を含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤。
- ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、請求項1に記載の抑制剤。
- 生体材料がさらに水分保持可能な可塑剤を含有する、請求項1または2に記載の抑制剤。
- 水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載の抑制剤。
- 組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含有する生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤。
- 生体材料がさらにグリセリンを含有する、請求項5に記載の抑制剤。
- 組換えヒト血清アルブミン、ポリエポキシ化合物、および抗血栓剤を含有する生体材料。
- ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、請求項7に記載の生体材料。
- 抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、請求項7または8に記載の生体材料。
- 抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、請求項7または8に記載の生体材料。
- 抗血栓剤が、シロスタゾールである、請求項10に記載の生体材料。
- さらに水分保持可能な可塑剤を含有する、請求項7から11のいずれか1項に記載の生体材料。
- 水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項12に記載の生体材料。
- 組換えヒト血清アルブミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびシロスタゾールを含有する生体材料。
- さらにグリセリンを含有する、請求項14に記載の生体材料。
- 請求項7から15のいずれか1項に記載の生体材料からなる、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆するための細胞接着及び/又は血栓形成抑制剤。
- 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(b)架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。 - ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、請求項17に記載の製造方法。
- 工程(a)と工程(b)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の製造方法:
工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(b)で用いる架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程。 - 水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項19に記載の製造方法。
- 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。 - 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(b)工程(a)で得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液にグリセリンを添加する工程、および
(c)工程(b)得られた架橋処理された組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。 - 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液に抗血栓剤を添加して担持させる工程、
(b)抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にポリエポキシ化合物を添加して架橋処理する工程、および
(c)架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。 - 抗血栓剤が、組換えヒト血清アルブミンに対して吸着性または親和性を有する抗血栓剤である、請求項23記載の製造方法。
- 抗血栓剤が、経口抗凝固剤、血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制剤、血栓溶解剤、抗トロンビン薬または抗ヘパリン製剤である、請求項23に記載の製造方法。
- 抗血栓剤が、シロスタゾールである、請求項25に記載の製造方法。
- ポリエポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、もしくは、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである、請求項23から26のいずれか1項に記載の製造方法。
- 工程(b)と工程(c)の間に以下の工程を更に含むことを特徴とする、請求項23から27のいずれか1項に記載の製造方法:
工程(b)で得られた架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に水分保持可能な可塑剤を添加して、工程(c)で用いる架橋処理された抗血栓剤を担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液とする工程。 - 水分保持可能な可塑剤が、グリセリン、糖類およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項28に記載の製造方法。
- 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、および
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。 - 血液に接触して用いられる医療器具の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(a)組換えヒト血清アルブミン含有溶液にシロスタゾールを添加して担持させる工程、
(b)工程(a)で得られたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して架橋処理する工程、
(c)工程(b)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミン含有溶液に対して、グリセリンを添加する工程、および
(d)工程(c)で得られた架橋処理されたシロスタゾールを担持した組換えヒト血清アルブミンとグリセリンを含有する溶液を用いて、血液に接触して用いられる医療器具表面を被覆する工程。
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2009
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