以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る補機駆動装置について説明する。なお、以下の説明では、図1の左側および右側をそれぞれ「左」および「右」という。同図に示すように、本実施形態の補機駆動装置1は、ECU2と、図示しない車両に搭載されたエンジン3と、このエンジン3の動力によって駆動される補機4と、エンジン3と補機4の間に設けられ、両者に機械的に連結された回転機10などを備えている。
ECU2は、回転機10およびエンジン3などを制御するためのものであり、RAM、ROM、CPUおよびI/Oインターフェースなどからなるマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)で構成されている。
ECU2には、クランク角センサ20、プーリ角センサ21、PDU30などが接続されている。クランク角センサ20は、エンジン3のクランクシャフトの回転角度位置を検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。本実施形態の場合、ECU2は、このクランク角センサ20の検出信号に基づき、後述する第2ロータ15の回転角度位置や第2ロータ電気角θ2などを算出する。
また、プーリ角センサ21は、後述する駆動プーリ7の回転角度位置を検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。本実施形態の場合、ECU2は、このプーリ角センサ21の検出信号に基づき、後述する第1ロータ14の回転角度位置や第1ロータ電気角θ1などを算出する。さらに、PDU30は、インバータなどを含む電気回路で構成され、回転機10およびバッテリ31に接続されている。ECU2は、後述するように、2つのセンサ20,21の検出信号に基づき、PDU30を介して、回転機10の運転を制御し、それにより、補機4の駆動状態を制御する。
一方、エンジン3は、ガソリンを燃料とする多気筒内燃機関であり、ECU2によって、その運転状態が制御される。また、補機4は、車両用エアコンディショナーのコンプレッサで構成されており、回転軸4aを有している。この回転軸4aは、軸受4bによって回転自在に支持されており、その先端部には、従動プーリ5が同心に固定されている。
この従動プーリ5は、ベルト6の歯と噛み合う歯付きプーリで構成されており、この従動プーリ5と後述する駆動プーリ7との間には、ベルト6が掛け渡されている。それにより、駆動プーリ7の回転に伴って、従動プーリ5が回転し、補機4が駆動される。
次に、図2および図3を参照しながら、回転機10について説明する。図2は、回転機10の断面構成を模式的に示したものであり、図3(a)〜(c)はそれぞれ、図2のA−A線、B−B線およびC−C線の位置で周方向に沿って破断した断面の一部を模式的に示したものである。なお、両図においては、理解の容易化のために断面部分のハッチングが省略されている。
図2に示すように、回転機10は、車両の駆動系ハウジング(図示せず)に固定されたケース11と、互いに同心の入力軸12および出力軸13と、ケース11内に収容され、出力軸13と一体に回転する第1ロータ14と、ケース11内に収容され、入力軸12と一体に回転する第2ロータ15と、ケース11の周壁11cの内周面に固定されたステータ16などを備えている。これらの第1ロータ14、第2ロータ15およびステータ16は、互いに同心の状態で、径方向の内側から外側に向かって配置されている。
ケース11は、左右の側壁11a,11bと、これらの側壁11a,11bの外周端部に固定された円筒状の周壁11cなどで構成されている。左右の側壁11a,11bの中心部には、軸受11d,11eがそれぞれ取り付けられており、入力軸12および出力軸13はそれぞれ、これらの軸受11d,11eによって回転自在に支持されている。さらに、2つの軸12,13は、図示しないスラスト軸受などによって、その軸線方向の移動が規制されている。
また、入力軸12は、その左端部がエンジン3のクランクシャフトに直結されており、右端部には、第2ロータ15が同心に固定されている。それにより、エンジン3の運転中、エンジン3の動力によって第2ロータ15が駆動される。さらに、出力軸13の左端部には、第1ロータ14が同心に固定され、右端部には、駆動プーリ7が同心に固定されている。それにより、回転機10の運転中で第1ロータ14が回転しているときには、回転機10の動力によって駆動プーリ7が駆動される。
一方、第1ロータ14は、出力軸13の左端部に同心に固定された回転盤部14aと、この回転盤部14aの外端部に固定された円筒状のリング部14bなどを備えている。このリング部14bは、軟磁性体で構成され、その外周面には、永久磁石列が周方向に沿って設けられている。この永久磁石列は、2n(nは整数)個の永久磁石14cで構成されており、これらの永久磁石14c(磁極)は、隣り合う各2つが互いに異なる極性を有するとともに、電気角πに相当する所定角度の間隔で配置されている(図3(a)〜(c)参照)。また、各永久磁石14cは、左右方向に所定幅を有している。
さらに、ステータ16は、ケース11の周壁11cの内周面に取り付けられたリング状の取付部16aと、この取付部16aの内周面に周方向に沿って設けられた3つの第1〜第3電機子列を有している。これらの第1〜第3電機子列は、回転磁界を発生するものであり、エンジン3側から駆動プーリ7側に向かって順に配置されているとともに、後述するPDU30に電気的に接続されている。
また、第1電機子列は、3n個の第1電機子17で構成され、これらの第1電機子17は、取付部16aの内周面に、電気角2π/3に相当する所定角度の間隔で配置されている(図3(a)参照)。第1電機子17の各々は、鉄芯17aと、鉄芯17aに集中巻きで巻かれたコイル17bなどを備えており、3n個のコイル17bは、n組のU相、V相およびW相の三相コイルを構成している。
この第1電機子列では、ECU2によって、第1電機子17への電力の入出力状態が制御されることで、鉄芯17aの内側端部に磁極が発生するように構成されており、これらの磁極の発生に伴い、第1回転磁界が、第1ロータ14の永久磁石列との間に第1電機子列に沿って回転するように発生する。以下、鉄芯17aの内側端部に発生する磁極を、「第1電機子磁極」という。これらの第1電機子磁極の数は、ECU2によって、永久磁石14cの磁極と同じ数(すなわち2n個)になるように制御される。
さらに、第2電機子列は、3n個の第2電機子18で構成され、これらの第2電機子18は、取付部16aの内周面に、電気角2π/3に相当する所定角度の間隔で配置されている(図3(b)参照)。第2電機子18の各々は、鉄芯18aと、鉄芯18aに集中巻きで巻かれたコイル18bなどを備えており、3n個のコイル18bは、n組のU相、V相およびW相の三相コイルを構成している。
この第2電機子列でも、ECU2によって、第2電機子18への電力の入出力状態が制御されることで、鉄芯18aの内側端部に磁極が発生するように構成されており、これらの磁極の発生に伴い、第2回転磁界が、第1ロータ14の永久磁石列との間に第2電機子列に沿って回転するように発生する。以下、鉄芯18aの内側端部に発生する磁極を、「第2電機子磁極」という。ECU2によって、これらの第2電機子磁極の数も、第1電機子磁極の数と同様に、永久磁石14cの磁極と同じ数(すなわち2n個)になるように制御される。
また、第3電機子列は、3n個の第3電機子19で構成され、これらの第3電機子19は、取付部16aの内周面に、電気角2π/3に相当する所定角度の間隔で配置されている(図3(c)参照)。また、第3電機子19の各々は、鉄芯19aと、鉄芯19aに集中巻きで巻かれたコイル19bなどを備えており、3n個のコイル19bは、n組のU相、V相およびW相の三相コイルを構成している。
この第3電機子列でも、第3電機子19への電力の入出力状態が制御されることで、鉄芯19aの内側端部に磁極が発生するように構成されており、これらの磁極の発生に伴い、第3回転磁界が、第1ロータ14の永久磁石列との間に第3電機子列に沿って回転するように発生する。以下、鉄芯19aの内側端部に発生する磁極を、「第3電機子磁極」という。ECU2によって、これらの第3電機子磁極の数も、第1および第2電機子磁極の数と同様に、永久磁石14cの磁極と同じ数(すなわち2n個)になるように制御される。
以上の第1〜第3電機子列では、図3(a)〜(c)に示すように、第2電機子列の三相コイルの各々は、第1電機子列の三相コイルの各々に対して、同図の下側に向かって電気角2π/3に相当する角度分ずつずれた状態に配置され、第3電機子列の三相コイルの各々は、第2電機子列の三相コイルの各々に対して、同図の下側に向かって電気角2π/3に相当する角度分ずつずれた状態に配置されている。
なお、この回転機10のステータ16では、第1電機子列と第2電機子列と第3電機子列との間で磁束が漏れないようにするために、バックヨーク(図示せず)が設置されており、それにより、3つの電機子列間で磁気短絡が発生しないように構成されている。
一方、第2ロータ15は、入力軸12の右端部に固定された回転盤部15dと、この回転盤部15dの外端部から駆動プーリ7側に延びる支持部15eと、この支持部15eに固定され、第1ロータ14の永久磁石列とステータ16の第1〜第3電機子列の間に配置された第1〜第3軟磁性体コア列を有している。これらの第1〜第3軟磁性体コア列はそれぞれ、軟磁性体(例えば鋼板の積層体)製の、2n個の第1〜第3軟磁性体コア15a〜15c(軟磁性体)で構成されている。
第1軟磁性体コア(以下「第1コア」という)15aは、第1電機子列と永久磁石列の間に、電気角πに相当する所定角度の間隔で周方向に沿って設けられているとともに、永久磁石列の永久磁石14cとの径方向の間隙が第1電機子列の鉄芯17aとの径方向の間隙と等しくなるように、構成されている。また、第2軟磁性体コア(以下「第2コア」という)15bは、第2電機子列と永久磁石列の間に、電気角πに相当する所定角度の間隔で周方向に沿って設けられているとともに、永久磁石列の永久磁石14cとの径方向の間隙が第2電機子列の鉄芯18aとの径方向の間隙と等しくなるように、構成されている。
さらに、第3軟磁性体コア(以下「第3コア」という)15cは、第3電機子列と永久磁石列の間に、電気角πに相当する所定角度の間隔で周方向に沿って設けられているとともに、永久磁石列の永久磁石14cとの径方向の間隙が第3電機子列の鉄芯19aとの径方向の間隙と等しくなるように、構成されている。また、以上の第1〜第3コア15a〜15cでは、第2コア15bの各々は、第1コア15aの各々に対して、図3の下側に電気角π/3に相当する角度分ずつずれた状態に配置され、第3コア15cの各々は、第2コア15bの各々に対して、同図の下側に電気角π/3に相当する角度分ずつずれた状態に配置されている。
次に、以上のように構成された回転機10の動作原理を説明するために、まず、図4に示す回転機40について説明する。この回転機40は、本出願人が特許文献1の補機駆動装置において用いたものである。また、図5は、図4のD−D線の位置で周方向に沿って破断した断面の一部を模式的に展開したものであり、図6は、図5と等価の構成を示すものである。
図4に示すように、回転機40は、ケース46と、ケース46に固定された2つの軸受47,47と、これらの軸受47,47に回動自在にそれぞれ支持された第1軸41および第2軸42と、ケース46内に設けられた第1ロータ43と、ケース46内に第1ロータ43に対向するように設けられたステータ44と、両者43,44の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第2ロータ45などを備えている。第1ロータ43、第2ロータ45およびステータ44は、第1軸41の径方向の内側から外側に向かってこの順で並んでいる。なお、2つの軸41,42は、互いに同心に配置されている。
第1ロータ43は、2n個の第1永久磁石43aおよび第2永久磁石43bを有しており、第1および第2永久磁石43a,43bはそれぞれ、第1軸41の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。これらの第1および第2永久磁石43a,43bは、リング状の固定部43cの外周面に、軸線方向に並び、互いに接した状態で取り付けられている。以上の構成により、第1および第2永久磁石43a,43bは、第1軸41と一体に回動自在になっている。
また、図5および図6に示すように、第1軸41を中心として、周方向に隣り合う各2つの第1および第2永久磁石43a,43bの間のピッチは、電気角πに設定されている。また、第1および第2永久磁石43a,43bの極性は、軸線方向に並んだもの同士は同じ極性で、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。以下、第1および第2永久磁石43a,43bの磁極をそれぞれ、「第1磁極」および「第2磁極」という。
ステータ44は、第1および第2回転磁界をそれぞれ発生させるものであり、周方向に等間隔で並んだ3n個の電機子44aを有している。各電機子44aは、鉄芯44bと、鉄芯44bに集中巻で巻回されたコイル44cなどで構成されている。鉄芯44bの内周面の軸線方向の中央部には、周方向に延びる溝44dが形成されている。3n個のコイル44cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している(図5,6参照)。また、電機子44aは、ケース46の周壁46aの内周面に、リング状の固定部44eを介して取り付けられている。
さらに、電機子44aは、図示しない可変電源に接続されており、可変電源から電力が供給されたときに、鉄芯44bの第1および第2永久磁石43a,43b側の端部に、互いに異なる極性の磁極がそれぞれ発生するように構成されている。また、これらの磁極の発生に伴って、第1ロータ43の第1永久磁石43a側の部分との間および第2永久磁石43b側の部分との間に、第1および第2回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯44bの第1および第2永久磁石43a,43b側の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1電機子磁極」および「第2電機子磁極」という。また、これらの第1および第2電機子磁極はそれぞれ、第1永久磁石43aの磁極と同じ数(すなわち2n個)に設定される。
第2ロータ45は、第1永久磁石43aと同じ数(すなわち2n個)の第1軟磁性体コア(以下「第1コア」という)45aおよび第2軟磁性体コア(以下「第2コア」という)45bを有している。これらのコア45a,45bはそれぞれ、周方向に電気角πに相当する所定角度の間隔で並んでいるとともに、両者の位相差は電気角π/2に相当する角度分ずれている。また、第1および第2コア45a,45bはいずれも、軟磁性体(具体的には複数の鋼板を積層したもの)で構成されている。
第1および第2コア45a,45bはそれぞれ、円板状のフランジ45eの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部45c,45dを介して取り付けられており、フランジ45eは、第2軸42に一体に同心状に設けられている。以上の構成により、第1および第2コア45a,45bは、第2軸42と一体に回動自在になっている。
以上の回転機40の場合、特許文献1で説明されているように、2つのロータ43,45およびステータ44の間でのエネルギの入出力関係と、ロータ43,45の回転速度および回転磁界の回転速度の関係とが、遊星歯車装置における3つの部材(サンギヤ、リングギヤおよびプラネタリキャリア)のトルクの関係および回転速度の関係と同じ動作特性を示すように、回転機40を制御することができる。
次に、以上のように構成された回転機40の電圧方程式の導出法について説明する。この回転機40の場合、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータと比較して、ステータ44の構成は同じであるのに対し、永久磁石などで構成された第1ロータ43だけでなく、軟磁性体などで構成された第2ロータ45を有するという点が異なっている。このことから、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwに対する電圧は、一般的なブラシレスDCモータの場合とほぼ同じであるのに対し、第1および第2ロータ43,45の回転に伴ってU相〜W相のコイル44cに発生する逆起電圧(すなわち逆起電力,誘導起電力)は、一般的なブラシレスDCモータの場合と異なるものとなる。
この逆起電圧は、具体的には、以下に述べるように求められる。図7は、2n個の第1永久磁石43a、2n個の第1コア45aおよび3n個の電機子44aを1組の回転機構造(すなわち電動機構造)とした場合において、この回転機構造に相当する等価回路の一例を示している。なお、同図は、便宜上、極数=2の場合を示しているが、回転機40の極数は、前述したように2nである。この場合、第1コア45aを介さずに、U相〜W相のコイル44cをそれぞれ直接、通過する第1永久磁石43aの磁束Ψua1、Ψva1、Ψwa1は、下式(1)〜(3)でそれぞれ表される。
ここで、Ψfbは、各相のコイル44cを直接、通過する第1永久磁石43aの磁束の最大値である。また、θe1は、第1ロータ電気角であり、基準となるステータ44の1つの電機子44a(以下「基準電機子」という)に対する第1ロータ43の回転角を電気角で表したものである。この第1ロータ電気角θe1は、具体的には、図示しない回転角センサを用いて第1ロータ43の回転角を検出し、その検出値を電気角に変換することによって算出される。
また、第1コア45aを介してU相〜W相のコイル44cをそれぞれ通過する第1永久磁石43aの磁束Ψua2、Ψva2、Ψwa2は、下式(4)〜(6)でそれぞれ表される。
ここで、Ψfaは、第1コア45aを介して各相のコイル44cを通過する第1永久磁石43aの磁束の最大値である。また、θe2は、第2ロータ電気角であり、上記基準電機子に対する第2ロータ45の回転角を電気角で表したものである。この第2ロータ電気角θe2は、具体的には、図示しない回転角センサを用いて第2ロータ45の回転角を検出し、その検出値を電気角に変換することによって算出される。
U相〜W相のコイル44cをそれぞれ通過する第1永久磁石43aの磁束Ψua、Ψva、Ψwaは、上述したU相〜W相のコイル44cを直接、通過する磁束Ψua1、Ψva1、Ψwa1と、第1コア45aを介して通過する磁束Ψua2、Ψva2、Ψwa2との和、すなわち、(Ψua1+Ψua2)、(Ψva1+Ψva2)および(Ψwa1+Ψwa2)でそれぞれ表される。したがって、これらの磁束Ψua、Ψva、Ψwaは、上述した式(1)〜(6)より、下式(7)〜(9)でそれぞれ表される。
また、これらの式(7)〜(9)を変形すると、下式(10)〜(12)が得られる。
さらに、U相〜W相のコイル44cをそれぞれ通過する第1永久磁石43aの磁束Ψua、Ψva、Ψwaを時間微分することによって、第1永久磁石43aおよび/または第1コア45aの回転に伴ってU相〜W相のコイル44cに発生する逆起電圧(以下、それぞれ「第1U相逆起電圧Vcu1」「第1V相逆起電圧Vcv1」「第1W相逆起電圧Vcw1」という)がそれぞれ得られる。したがって、これらの第1U相〜W相の逆起電圧Vcu1、Vcv1、Vcw1は、式(10)〜(12)を時間微分することにより得られた下式(13)〜(15)でそれぞれ表される。
ここで、ωe2は、θe2の時間微分値、すなわち、第2ロータ45の角速度を電気角速度に換算した値(以下「第2ロータ電気角速度」という)であり、ωe1は、θe1の時間微分値、すなわち、第1ロータ43の角速度を電気角速度に換算した値(以下「第1ロータ電気角速度」という)である。
また、図8は、2n個の第2永久磁石43b、2n個の第2コア45bおよび3n個の電機子44aを1組の回転機構造とした場合において、この回転機構造に相当する等価回路の一例を示している。この場合、第2永久磁石43bおよび/または第2コア45bの回転に伴ってU相〜W相のコイル44cに発生する逆起電圧は、上述した第1永久磁石43aおよび第1コア45aの場合と同様に、次のようにして求められる。以下、これらのU相〜W相のコイル44cに発生する逆起電圧をそれぞれ、「第2U相逆起電圧Vcu2」「第2V相逆起電圧Vcv2」「第2W相逆起電圧Vcw2」という。
すなわち、前述したように第1および第2永久磁石43a,43bは互いに一体であるので、各相のコイル44cを直接、通過する第2永久磁石43bの磁束の最大値は、各相のコイル44cを直接、通過する第1永久磁石43aの磁束の最大値と等しく、かつ、第2コア45bを介して各相のコイル44cを通過する第2永久磁石43bの磁束の最大値は、第1コア45aを介して各相のコイル44cを通過する第1永久磁石43aの磁束の最大値と等しい。また、前述したように、第1および第2コア45a,45bの間の電気角は、互いに電気角π/2ずれている(図8参照)。以上から、U相〜W相のコイル44cをそれぞれ通過する第2永久磁石43bの磁束Ψub、Ψvb、Ψwb(すなわち第2コア45bを介して通過する磁束と、介さずに直接、通過する磁束との和)は、下式(16)〜(18)でそれぞれ表される。
また、これらの式(16)〜(18)を変形すると、下式(19)〜(21)が得られる。
さらに、U相〜W相のコイル44cをそれぞれ通過する第2永久磁石43bの磁束Ψub、Ψvb、Ψwbを時間微分することによって、上述した第2U相〜W相の逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2がそれぞれ得られる。したがって、これらの逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2は、式(19)〜(21)を時間微分することにより得られた下式(22)〜(24)でそれぞれ表される。
また、前述したように、ステータ44は、その鉄芯44bの第1および第2永久磁石43a,43b側の端部に、互いに異なる極性の磁極が発生するように構成されている。さらに、第1および第2永久磁石43a,43bのうち、軸線方向に並んだもの同士の極性は、同じになっている。これらのことから明らかなように、軸線方向に並んだ第1および第2永久磁石43a,43bの電気角は、互いに電気角πずれている。このため、第1および/または第2のロータ43,45の回転に伴ってU相〜W相のコイル44cに発生する逆起電圧Vcu、Vcv、Vcwはそれぞれ、前述した第1U相〜W相の逆起電圧Vcu1、Vcv1、Vcw1と、第2U相〜W相の逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2との差、すなわち、(Vcu1−Vcu2)、(Vcv1−Vcv2)および(Vcw1−Vcw2)となる。したがって、これらの逆起電圧Vcu、Vcv、Vcwは、式(13)〜(15)および式(22)〜(24)より、下式(25)〜(27)で表される。
ここで、回転機40全体の総磁束量をΨとすると、Ψ=2・Ψfaが成立するので、これを上記式(25)〜(27)に適用すると、下式(28)〜(30)が得られる。
また、U相〜W相のコイル44cの電圧(以下、それぞれ「U相電圧Vu」「V相電圧Vu」「W相電圧Vw」という)は、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwに対する電圧と、U相〜W相のコイル44cの逆起電圧Vcu,Vcv,Vcwとの和でそれぞれ表される。したがって、回転機40の電圧方程式は、下式(31)のようになる。
ここで、Ru,RvおよびRwはそれぞれU相〜W相のコイル44cの抵抗であり、Lu,LvおよびLwはそれぞれ、U相〜W相のコイル44cの自己インダクタンスであり、いずれも所定値である。また、Muvは、U相コイル44cとV相コイル44cの間の相互インダクタンスであり、Mvwは、V相コイル44cとW相コイル44cの間の相互インダクタンスであり、Mwuは、W相コイル44cとU相コイル44cの間の相互インダクタンスであり、いずれも所定値である。さらに、sは微分演算子である。
また、上記の式(31)を参照すると明らかなように、この式(31)の(2θe2−θe1)および(2ωe2−ωe1)を、一般的なブラシレスDCモータのロータの電気角θeおよび電気角速度ωeにそれぞれ置き換えた数式は、一般的なブラシレスDCモータの電圧方程式において磁束量を値1/2に設定したものに相当する。このことから、回転機40を作動させるためには、前述した第1および第2回転磁界のベクトルの電気角θxを、θx=(2θe2−θe1)が成立するように制御すればよいことが判る。また、以上の点は、極数やコイル44cの相数にかかわらず成立する。
一方、本実施形態の回転機10の場合、前述したように、ECU2によって、第1〜第3電機子17〜19への電力の入出力状態が制御されることで、第1〜第3回転磁界が発生する。ここで、回転機10の構成において、永久磁石14c、第1〜第3コア15a〜15cの回転半径と、第1〜第3電機子17〜19における第1〜第3回転磁界の回転半径とが無限大に大きいものと仮定すると、永久磁石14c、3つのコア15a〜15cは直線的に移動し、かつ3つの電機子17〜19の磁界も直線的に移動するものと見なすことができるので、前述した図3の構成は、図9の構成と等価であると見なすことができる。
さらに、図9の構成において、第1〜第3回転磁界を図10に示すように3つの仮想磁石17x〜19xの回転に置き換えた場合、本実施形態では、仮想磁石17x〜19xの磁極(すなわち第1〜第3電機子磁極)の極性および互いの位相において同図10に示す関係が成立するように、第1〜第3電機子17〜19への供給電力が制御される。なお、同図中の黒塗りで示す磁極が永久磁石の磁極を表しており、この点は以下の図面においても同様である。
同図10を参照すると明らかなように、第1〜第3コア15a〜15cの場合、互いに隣り合う2つのコアは、同図の下側に電気角π/3ずつずれている。すなわち、第1〜第3コア15a〜15cはスキュー配置されている。さらに、仮想磁石17x〜19xの磁極すなわち第1〜第3電機子磁極の場合、互いに隣り合う2つの磁極は、同図の下側に電気角2π/3ずつずれた状態に制御される。
ここで、前述した永久磁石列、第1軟磁性体コア列および第1電機子列を1組の回転機構造(以下「第1回転機構造」という)とした場合、この第1回転機構造に相当する等価回路の一例は、図11に示すものとなる。また、永久磁石列、第2軟磁性体コア列および第2電機子列を1組の回転機構造(以下「第2回転機構造」という)とした場合、この第2回転機構造に相当する等価回路の一例は、図12に示すものとなる。
さらに、永久磁石列、第3軟磁性体コア列および第3電機子列を1組の回転機構造(以下「第3回転機構造」という)とした場合、この第3回転機構造に相当する等価回路の一例は、図13に示すものとなる。なお、これらの図11〜図13は、便宜上、極数=2の場合を例示したものである。以上のような3つの回転機構造の各々では、回転磁界が発生した際、各回転機構造の永久磁石、軟磁性体コアおよび電機子の間に、磁気回路(図示せず)が構成される。
次に、以上のような3つの回転機構造を有する回転機10の逆起電圧について説明する。第1および第2ロータ14,15が回転した場合、3つの回転機構造のU相にそれぞれ表れる磁束Ψu1〜Ψu3は、下式(32)〜(34)に示すものとなる。
ここで、ψfは、3つのコア15a〜15cを介して3つのU相コイル17b〜19bを通過する永久磁石14cの磁束の最大値である。また、θ1は、第1ロータ電気角であり、基準位置に対する第1ロータ14の回転角を電気角で表したものである。さらに、θ2は、第2ロータ電気角であり、基準位置に対する第2ロータ10の回転角を電気角で表したものである。これらの電気角θ1,θ2はそれぞれ、プーリ角センサ21およびクランク角センサ20の検出信号に基づいて算出される。これに加えて、ω1,ω2はそれぞれ、2つの電気角θ1,θ2の時間微分値を表している。
次いで、三角関数の積和公式cosαcosβ=(1/2){cos(α+β)+cos(α−β)}を上式(32)〜(34)に適用すると、下式(35)〜(37)が得られる。
ここで、回転機10のU相全体に表れる磁束Ψuは、3つのΨu1〜Ψu3の和となるので、磁束Ψuは下式(38)によって算出される。
以上の磁束Ψuの算出式の導出法と同じ手法により、回転機10のV相全体およびW相全体に表れる磁束Ψv,Ψwの算出式を導出すると、下式(39),(40)が得られる。
ここで、3つのコア15a〜15cを介することなく、3つのU相コイル17b〜19bを直接、通過する永久磁石14cの磁束は、極めて小さく、その影響を無視できる。これと同様に、3つのコア15a〜15cを介することなく、V相コイル17b〜19bおよびW相コイル17b〜19bをそれぞれ直接、通過する永久磁石14cの磁束も、極めて小さく、その影響を無視できる。以上の理由によって、U相、V相およびW相の逆起電圧はそれぞれ、磁束Ψu、Ψv、Ψwを時間微分した値dΨu/dt、dΨv/dt、dΨw/dtに相当することになり、それにより、U相、V相およびW相の逆起電圧の算出式は、以上の式(38)〜(40)を時間微分することによって、下式(41)〜(43)として導出される。
ここで、回転機10全体の総磁束量をΨとすると、Ψ=3・ψfが成立するので、これを式(41)〜(43)に適用すると、下式(44)〜(46)が得られる。
以上の逆起電圧dΨu/dt、dΨv/dt、dΨw/dtの算出式(44)〜(46)を、前述した回転機40の逆起電圧Vcu、Vcv、Vcwの算出式(28)〜(30)と比較すると、両者は同じであることが判る。
したがって、この回転機10の場合においても、前述した第1〜第3回転磁界のベクトルの電気角θyを、θy=(2θ2−θ1)が成立するように制御することによって、回転機10を、回転機40と同様に、遊星歯車装置と同じ作動特性を示すように運転することができる。
次に、図14および図15を参照しながら、以上のように構成された回転機10におけるコギングトルクについて説明する。図14は、回転機10において、第1ロータ14を回転させたときのコギングトルクの発生状態を示したものであり、同図(a)〜(c)のTrq1〜Trq3はそれぞれ、第1〜第3回転機構造におけるコギングトルク成分を表しており、TrqRは正の所定値を表している。また、同図(d)のTrq4は、3つのコギングトルク成分Trq1〜Trq3の和、すなわち回転機10全体のコギングトルクを表している。
一方、図15は、比較のために、前述した回転機40におけるコギングトルクの発生状態を示したものであり、同図(a),(b)のTrqA,TrqBはそれぞれ、回転機40の2組の回転機構造におけるコギングトルク成分を表しており、同図(c)のTrqCは、2つのコギングトルク成分TrqA,TrqBの和、すなわち回転機40全体のコギングトルクを表している。
両図を比較すると明らかなように、回転機10のコギングトルク成分Trq1〜Trq3の振幅は、回転機40のコギングトルク成分TrqA,TrqBの振幅±TrqRと比べて、その2/3倍の値[±(2/3)・TrqR]に減少していることが判る。これは、回転機10の場合、3組の回転機構造を備えているので、2組の回転機構造を備えた回転機40と比べて、各組の回転機構造における磁束量が2/3になるためである。また、同じ理由により、回転機10におけるトルクリップルは、回転機40と比べて2/3に減少することになる。
さらに、回転機10全体のコギングトルクTrq4は、3つのコギングトルク成分Trq1〜Trq3が互いに重なり合って打ち消し合うことで、回転機40全体のコギングトルクTrqCよりもかなり小さい値に減少していることが判る。以上のように、回転機10の場合、3組の回転機構造を備えていることによって、2組の回転機構造しか備えていない回転機40と比べて、3つのコギングトルク成分Trq1〜Trq3の振幅を2/3の値に低減できるとともに、これらが互いに重なり合って打ち消し合うように構成できる。その結果、コギングトルクおよびトルクリップルを回転機40と比べて大幅に低減できる。
次に、図16を参照しながら、補機駆動装置1の動作について説明する。以下の説明では、駆動プーリ7(すなわち第1ロータ14)の回転速度を「プーリ回転速度VP」といい、クランクシャフト(すなわち第2ロータ15)の回転速度を「クランク軸回転速度VC」といい、ステータ16の回転磁界の回転速度を「磁界回転速度VS」という。なお、この磁界回転速度VSは、ステータ16における第1〜第3回転磁界を互いに同じ回転速度に制御したときのものであり、同図16中の値VREFは、補機4を駆動するのに最適な、プーリ回転速度VPの所定値を表している。
この場合、前述したように、回転機10は、遊星歯車装置と同じ動作特性を示すように運転可能なものであり、より具体的には、3つの回転速度VP,VC,VSの間において、VC=(VP+VS)/2の関係が成立するように運転可能に構成されている。そのため、エンジン停止中でVC=0の場合には、図16(a)に示す関係が成立するように、回転機10を作動させることができる。すなわち、磁界回転速度VSをVS=−VREFになるように制御することで、プーリ回転速度VPを所定値VREFに制御することができる。
また、エンジン3の運転中は、クランクシャフトの回転に伴って第2ロータ15が回転するので、ECU2により、PDU30を介してステータ16に流れる電流を制御すると、誘導起電力がステータ16に発生し、発電が行われる。それにより、電力がステータ16に供給されていない場合でも、この誘導起電力に起因して、図16(b),(c)に示すように、ステータ16において、図16(a)の回転磁界とは逆方向に回転する回転磁界が発生する。
その結果、ステータ16で発生した電力をバッテリ31に充電しながら、補機4を駆動することができる。すなわち、電力回生を実行しながら、補機4を駆動することができる。特に、図16(b)に示すように、エンジン3が低回転運転されている場合でも、図16(c)に示すように、エンジン3が高回転運転されている場合でも、ステータ16に流れる電流を適切に制御することによって、プーリ回転速度VPを所定値VREFになるように制御することができる。言い換えれば、エンジン回転数の高低にかかわらず、プーリ回転速度VPを、補機4を駆動するのに最適な所定値VREFに制御することができる。
また、図16(d)に破線で示すように、クランク軸回転速度VCが非常に小さい場合、ステータ16で電力回生を実行しながら磁界回転速度VSを制御しても、プーリ回転速度VPを所定値VREFまで上昇させることができないときがある。そのような場合には、電力をステータ16に供給し、磁界回転速度VSを制御することによって、図16(d)に実線で示すように、プーリ回転速度VPを所定値VREFに上昇させることができる。
以上のように、第1実施形態の補機駆動装置1によれば、エンジン3および回転機10の動力によって、補機4を駆動することができる。また、前述したように、回転機10が3組の回転機構造を備えていることによって、3つのコギングトルク成分Trq1〜Trq3の振幅を、2組の回転機構造しか備えていない従来の補機駆動装置の回転機40と比べて2/3の値に低減できるとともに、これらのコギングトルク成分Trq1〜Trq3が互いに重なり合って打ち消し合うように構成できる。その結果、コギングトルクおよびトルクリップルを従来と比べて大幅に低減でき、商品性を向上させることができる。
なお、第1実施形態は、原動機として、ガソリンを燃料とする内燃機関を用いた例であるが、本発明の原動機はこれに限らず、動力を発生する原動機であればよい。例えば、原動機として、軽油または天然ガスを燃料とする内燃機関や、スターリングエンジンなどの外燃機関、電気モータなどの回転機を用いてもよい。
また、第1実施形態の補機駆動装置1の回転機10の第1ロータ14において、永久磁石列に代えて、電機子列を設けるとともに、これらの電機子列に発生する磁極が永久磁石14cの磁極と同じになるように、電機子列への供給電力を制御してもよい。
さらに、第1実施形態の回転機10は、第1ロータ14の永久磁石列とステータ16の電機子列とを径方向に互いに対向するように配置するとともに、両者の間に、軟磁性体列を配置した例であるが、本発明の回転機において、第1ロータの永久磁石列とステータの電機子列とを回転機の回転軸線方向に互いに対向するように配置するとともに、両者の間に、軟磁性体列を配置するように構成してもよい。
一方、第1実施形態の補機駆動装置1は、回転機10の第1〜第3回転機構造において、回転機10の運転中、永久磁石14cの磁極と、3つの軟磁性体コア15a〜15cと、3つの電機子17〜19に発生する磁極との位置関係が、前述した図10に示す位置関係になるように、第1〜第3電機子17〜19への供給電力を制御した例であるが、本発明の電機子に発生する磁極と、第1ロータの永久磁石の磁極と、第2ロータの軟磁性体コアとの間の位置関係はこれに限らず、回転機10の運転中、第1〜第3回転機構造において、電機子に発生する磁極と第1ロータの永久磁石の磁極との間の電気角の位相差が、電機子の配置方向に対して電気角2π/3ずつずれた状態になるとともに、電機子に発生する磁極と第2ロータの軟磁性体コアとの間の電気角の位相差が、電機子の配置方向に対して電気角π/3ずつずれた状態になるように、3つの電機子への供給電力が制御されるものであればよい。
例えば、電機子に発生する磁極と、第1ロータの永久磁石の磁極と、第2ロータの軟磁性体コアとの間の位置関係を、図17に示すように構成してもよい。同図に示すように、この回転機10Xでは、第2ロータ15の第1〜第3コア15a〜15cが同図の左右方向に同じ位置になるように配置され、永久磁石14cに代えて、3つの永久磁石14c’が、隣り合う各2つが電機子17〜19の配置方向に対して電気角π/3ずつずれた状態に配置されている。この回転機10Xでは、その運転中、第1〜第3回転機構造において、3つの電機子17〜19に発生する磁極すなわち仮想磁石17x〜19xの磁極と、永久磁石14c’の磁極との間の電気角の位相差が、電機子17〜19の配置方向に対して電気角2π/3ずつずれた状態になるとともに、仮想磁石17x〜19xの磁極と、第1〜第3コア15a〜15cとの間の電気角の位相が、電機子17〜19の配置方向に対して電気角π/3ずつずれた状態になるように、第1〜第3電機子17〜19への供給電力が制御される。このように構成した場合でも、3つの電気角θy,θ1,θ2において、θy=(2θ2−θ1)の関係が成立し、それにより、第1実施形態の回転機10を用いた場合と同じ作用効果を得ることができる。
一方、図10に示す3つの回転機構造において、永久磁石14cと、3つの電機子17〜19の磁極とを左右方向に入れ換えて配置してもよい。これに加えて、永久磁石14cを3つの永久磁石に分割し、これらの永久磁石を図10の左右方向の同じ位置ではなく、回転機10の回転方向に沿ってスキュー配置してもよい。以上の場合でも、3つの回転機構造において、上記の電気角のずれの関係が成立するように、第1〜第3電機子17〜19への供給電力を制御することによって、図10に示す3つの回転機構造を備えた回転機10と同じ作用効果を得ることができる。
また、第1実施形態の補機駆動装置1の回転機10は、第1〜第3回転機構造を図10に示すように配置した例であるが、第1〜第3回転機構造をこれらと異なるように配置してもよい。例えば、第1実施形態の回転機10と同じ動作状態を確保しながら、第1〜第3回転機構造を、第2回転機構造⇒第3回転機構造⇒第1回転機構造の順に並ぶように構成してもよく、第1回転機構造⇒第3回転機構造⇒第2回転機構造の順に並ぶように構成してもよい。
さらに、第1実施形態の補機駆動装置1の回転機10は、第1ロータ14における1つの磁極を1つの永久磁石の磁極で構成した例であるが、1つの磁極を複数の永久磁石の磁極で構成してもよい。例えば、2つの永久磁石の磁極をV字状に並べて1つの磁極を構成した場合、磁力線の指向性を高めることができる。
また、第1実施形態の補機駆動装置1の回転機10は、ステータ16の電機子17〜19のコイルを集中巻とした例であるが、これらの電機子のコイルの巻き方として、分布巻などの他の巻き方を用いてもよい。
一方、第1実施形態は、補機駆動装置1の回転機10を3組の回転機構造を備えるように構成した例であるが、本発明の回転機はこれに限らず、回転機を4組以上の回転機構造を備えるように構成してもよい。以下、m(mは3以上の整数)組の回転機構造を備えた回転機(図示せず)における逆起電圧の算出式について説明する。
この回転機では、その運転中、m組の回転機構造において、電機子に発生する磁極と永久磁石の磁極との間の電気角の位相差が、電機子の配置方向に対して電気角2π/mずつずれた状態になるとともに、電機子に発生する磁極と軟磁性体コアとの間の電気角の位相差が、電機子の配置方向に対して電気角π/mずつずれた状態になるように、電機子への供給電力が制御される。また、m組の永久磁石列が、1つの第1ロータ上に設けられ、m組の軟磁性体コア列が1つの第2ロータ上に設けられているものとする(いずれも図示せず)。さらに、以下の説明では、基準位置に対する第1および第2ロータの回転角に相当する電気角をそれぞれ、便宜上、第1および第2ロータ電気角θ1,θ2と表記し、これらの電気角θ1,θ2の時間微分値をそれぞれ、ω1,ω2と表記する。
この回転機の場合、m組の回転機構造のうちのγ(1≦γ≦m)番目の回転機構造のU相に表れる磁束Ψuγの算出式は、下式(47)に示すものになる。
ここで、ψfは、軟磁性体コアを介してU相のコイルを通過する永久磁石の磁束の最大値である。
上式(47)のγを値1から値mにそれぞれ置き換えると、下式(48)〜(50)が得られる。
次に、三角関数の積和公式cosαcosβ=(1/2){cos(α+β)+cos(α−β)}を上式(48)〜(50)に適用すると、下式(51)〜(53)が得られる。
回転機のU相全体に表れる磁束Ψuは、m個のΨu1〜Ψumの和となるので、下式(54)が得られる。
ここで、上式(54)の右辺の第2項における中括弧{}内の演算式に着目すると、この演算式は、下式(55)のように書き換えることができる。
次に、級数の総和の公式およびオイラーの公式を用いて、上式(55)の右辺の第1項を変形すると、下式(56)が導出される。
さらに、級数の総和の公式およびオイラーの公式を用いて、上式(55)の右辺の第2項を変形すると、下式(57)が得られる。
以上の式(56),(57)より、下式(58)が得られる。
したがって、上式(58)を前述した式(54)に適用すると、下式(59)が最終的に導出される。
さらに、以上と同様の手法により、回転機のV,W相全体に表れる磁束Ψv,Ψwの算出式を導出すると、下式(60),(61)が得られる。
そして、以上の式(59)〜(61)の左辺および右辺を時間微分すると、逆起電圧の算出式として、下式(62)〜(64)が得られる。
ここで、m組の回転機構造を備えた回転機の場合、モータ全体の総磁束量をΨとすると、Ψf=Ψ/mが成立するので、これを上記式(62)〜(64)に適用すると、下式(65)〜(67)が得られる。
これらの式(65)〜(67)は、前述した回転機10における逆起電圧の算出式(44)〜(46)と同じである(すなわち、前述した回転機40の逆起電圧の算出式(28)〜(30)とも同じである)。したがって、m組の回転機構造を有する回転機においても、m個の回転磁界のベクトルの電気角θzを、θz=(2θ2−θ1)が成立するように制御することによって、前述した回転機10と同じように作動させることができる。それにより、m組の回転機構造を有する回転機を備えた補機駆動装置においても、第1実施形態の補機駆動装置1と同じ作用効果を得ることができる。特に、この場合には、mの値が大きいほど、トルクリップルおよびコギングトルクをより低減することができる。
一方、第1実施形態は、回転機10の運転を制御する制御装置として、ECU2およびPDU30を用いた例であるが、回転機10を制御する制御装置はこれに限らず、回転機10の運転を制御できるものであればよい。例えば、回転機10を制御する制御装置として、マイクロコンピュータを搭載した電気回路などを用いてもよい。
次に、図18を参照しながら、第2実施形態に係る補機駆動装置1Aについて説明する。同図に示すように、この補機駆動装置1Aは、第1実施形態の補機駆動装置1と比較すると、回転機10に代えて回転機10Aを備えている点と、駆動プーリ7に代えて駆動プーリ7Aを備えている点とが異なっており、それら以外は、補機駆動装置1と同様に構成されているので、以下、回転機10Aおよび駆動プーリ7Aを中心に説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態の補機駆動装置1と同じ構成については、同じ符号を付すとともに、その説明を省略する。
この補機駆動装置1Aの回転機10Aでは、径方向の内側から順に、ステータ16、第2ロータ15および第1ロータ14が配置されており、ステータ16は、固定部16bを介してエンジン3の本体に固定されている。
また、駆動プーリ7Aは、第1ロータ14の外周面に固定されており、この駆動プーリ7Aと従動プーリ5との間には、前述したベルト6が巻き掛けられている。また、第1ロータ14のエンジン3側の端部は、中空の円筒部14dになっており、この円筒部14dは、その内周面で入力軸12に回転自在に嵌合しているとともに、軸受14eによって回転自在に支持されている。以上の構成により、駆動プーリ7Aは、第1ロータ14と一体に回転可能になっている。
また、この回転機10Aでは、第1ロータ14の永久磁石14aと、第2ロータ15の第1〜第3コア15a〜15cと、ステータ16の第1〜第3電機子17〜19との位置関係は、前述した回転機10と同様に構成されており、それによって、この回転機10Aも、前述した回転機10と同様に、遊星歯車装置と同じ動作特性を示すように運転可能になっている。
以上のように構成された第2実施形態の補機駆動装置1Aによれば、第1実施形態の補機駆動装置1と同様に、コギングトルクおよびトルクリップルを従来と比べて大幅に低減でき、商品性を向上させることができる。これに加えて、この補機駆動装置1Aでは、駆動プーリ7Aと回転機10Aが一体化され、駆動プーリ7Aが第1ロータ14の径方向の外側に配置されているので、駆動プーリ7と回転機10が軸線方向に並べて配置されている第1実施形態の補機駆動装置1と比べて、軸線方向のサイズを小型化することができる。
なお、第2実施形態の補機駆動装置1Aにおいて、図19に示すように、ワンウェイクラッチ50を設けてもよい。このワンウェイクラッチ50は、第1ロータ14および固定部16bに連結されており、このワンウェイクラッチ50によって、第1ロータ14は、エンジン運転中のクランクシャフトの回転方向と同じ方向に回転する場合にのみ、その回転が許容される。
以上のように構成した場合、第2実施形態の補機駆動装置1Aと同じ作用効果を得ることができる。これに加えて、図20に示すように、ステータ16の回転磁界を、エンジン運転中のクランクシャフトの回転方向と同じ方向に回転するように発生させた場合、前述した回転機10Aの動作特性に起因して、第2ロータ15が回転磁界と同じ方向に回転し、それに伴ってクランクシャフトが第2ロータ15と一体に回転する。このように、クランクシャフトを駆動できることによって、エンジン3を始動させることができる。
次に、図21を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る補機駆動装置1Bについて説明する。同図に示すように、この補機駆動装置1Bは、第1実施形態の補機駆動装置1と比べると、回転機10における、入出力軸12、13と2つのロータ14,15との連結関係が異なっており、それ以外は第1実施形態の補機駆動装置1と同様に構成されているので、以下、第1実施形態の補機駆動装置1と異なる点を中心に説明するとともに、同じ構成に関しては同一の符号を付し、その説明を省略する。
この補機駆動装置1Bでは、回転機10の第1ロータ14が、入力軸12を介してエンジン3のクランクシャフトに直結され、第2ロータ15が、出力軸13を介して駆動プーリ7に連結されている。前述したように、この回転機10は、遊星歯車装置と同じ動作特性を示すように運転可能なものであり、本実施形態の場合、第1ロータ14が入力軸12に、第2ロータ15が出力軸13にそれぞれ固定されている関係上、3つの回転速度VP,VC,VSの間において、VP=(VC+VS)/2の関係が成立するように、回転機10を運転することが可能になる。そのため、本実施形態の補機駆動装置1Bの動作は、図22に示すようになる。
まず、エンジン停止中でVC=0の場合には、図22(a)に示すように、回転機10の磁界回転速度VSを制御することによって、プーリ回転速度VPを所定値VREFに制御することができる。また、エンジン運転中の場合にも、エンジン停止中の場合と同様に、図22(b),(c)に示すように、磁界回転速度VSを制御することによって、プーリ回転速度VPを所定値VREFに制御することができる。すなわち、エンジン回転数の高低にかかわらず、プーリ回転速度VPを、補機4を駆動するのに最適な所定値VREFに制御することができる。
さらに、図22(d)に破線で示すように、クランク軸回転速度VCが非常に高い場合、ステータ16への電力供給によって磁界回転速度VSを制御しても、プーリ回転速度VPを所定値VREFまで上昇させることができないときがある。そのような場合には、ステータ16における電力回生制御を実行しながら、磁界回転速度VSを制御することによって、図22(d)に実線で示すように、プーリ回転速度VPを所定値VREFに上昇させることができる。
以上のように構成された第3実施形態の補機駆動装置1Bによれば、第1実施形態の補機駆動装置1と同様に、コギングトルクおよびトルクリップルを従来と比べて大幅に低減でき、商品性を向上させることができる。
なお、第3実施形態の補機駆動装置1Bの回転機10において、前述した回転機10Aのように、第1ロータ14を第2ロータ15の外側に、ステータ16を第2ロータ15の内側にそれぞれ配置するとともに、前述した駆動プーリ7Aを、第1ロータ14の径方向の外側にこれと一体に回転するように配置してもよい。そのように構成した場合には、軸線方向のサイズを小型化することができる。
次に、図23を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る補機駆動装置1Cについて説明する。同図に示すように、この補機駆動装置1Cは、第1実施形態の補機駆動装置1と比べると、回転機10に代えて回転機60を備えている点が異なっており、それ以外は第1実施形態の補機駆動装置1と同様に構成されている。したがって、以下、回転機60を中心に説明するとともに、第1実施形態の補機駆動装置1と同じ構成に関しては同一の符号を付し、その説明を省略する。
まず、図24は、回転機60の一部を破断した分解斜視図であり、図25は、この回転機60を径方向の外側から中心に向かって透視したときの回転機構造の配置を模式的かつ平面的に示したものである。なお、以下の図25の説明では、便宜上、図中の下向きの電気角を正値とし、上向きの電気角を負値として表記するとともに、後述する図27,28の説明においても同様に表記する。
この回転機60は、径方向の内側から順に、第1ロータ70、第2ロータ80およびステータ90を備えている。これらの第1ロータ70、第2ロータ80およびステータ90は、いずれも円筒状のものであり、互いに同心に配置されているとともに、図示しないケース内に収容されている。
第1ロータ70は、ベース71と、このベース71の外周面に固定された2f(fは自然数)個の永久磁石72などを有している。このベース71は、鋼板を積層したものであり、出力軸13に同心に固定されている。出力軸13は、図示しない軸受によって、回転機60の回転軸線回りに回転自在に支持されており、それにより、第1ロータ70も、回転機60の回転軸線回りに回転自在に構成されている。
また、2f個の永久磁石72(磁極)は、ベース71の外周面の周方向に等間隔で並んでいるとともに、各永久磁石72の両端部間が回転方向にずれた位置関係になるように、スキュー配置されている(図25参照)。さらに、各永久磁石72は、その表面が鋼板73によってカバーされている。
一方、第2ロータ80は、入力軸12に同心に固定されており、その内周面が第1ロータ70の外周面との間に所定の間隙を有するように構成されている。入力軸12は、図示しない軸受によって回転機60の回転軸線回りに回転自在に支持されており、それにより、第2ロータ80も、回転機60の回転軸線回りに回転自在に構成されている。さらに、第2ロータ80は、永久磁石72と同数(すなわち2f個)の軟磁性体コア81を、非磁性体(ステンレスや合成樹脂など)の保持部材82によって一体に固定したものであり、これらの軟磁性体コア81(軟磁性体)は、軸線方向に所定長さで延び、第2ロータ80の周方向に互いに等間隔かつ平行に並んでいる。
また、ステータ90は、回転磁界を発生させるものであり、3f個の電機子91を有している。これらの電機子91は、円筒状の基部から内側に突出した3f個の鉄芯92と、これらの鉄芯92に巻回されたコイル93などで構成されており、これらのコイル93は、f組の3相コイルを構成している。また、3f個の鉄芯92は、ステータ90の内周面の周方向に互いに等間隔で並んでおり、各鉄芯92の両端部間は、永久磁石72の両端部間と逆方向にずれた位置関係になるように、スキュー配置されている。
さらに、電機子91は、PDU30を介してECU2およびバッテリ31に接続されており、電力回生制御時または力行制御時には、ECU2によって、永久磁石72の磁極と同じ数(すなわち2f個)の磁極が鉄芯92の先端部に発生するように、電力の入出力状態が制御される。以下、鉄芯92の先端部に発生する磁極を、「電機子磁極」という。この電機子磁極の発生に伴い、回転磁界がステータ90に沿って回転するように発生するとともに、電機子磁極、軟磁性体コア81および永久磁石72の間に、磁気回路(図示せず)が形成される。
以上の回転機60では、回転磁界の発生中、電機子磁極の両端部間の電気角(すなわち鉄芯92の両端部間の電気角)をθsとし、永久磁石72の両端部間の電気角をθaとし、軟磁性体コア81の両端部間の電気角をθbとした場合、θs=2θb−θaが成立するとともに、2つの電気角θs,θaの一方が電気角θbに対して電気角π分大きく、2つの電気角θs,θaの他方が電気角θbに対して電気角π分小さくなるように構成されている。ここで、図25の場合、θb=0、θa=πであるので、θs=−πとなる。
また、前述した図17の回転機10Xでは、3組の回転機構造における第1〜第3コア15a〜15cが左右方向に延びる同一直線上に並ぶとともに、3つの永久磁石14c’,14c’,14c’の磁極と第1〜第3コア15a〜15cとの間の電気角の位相差は、電気角π/3ずつ大きくなるように配置されており、それにより、同図の右端の回転機構造では、永久磁石14c’の磁極とコア15cとの間の電気角の位相差は2π/3となっている。したがって、前述したm組の回転機構造を備えた回転機を考えると、永久磁石の磁極と軟磁性体コアとの間の電気角の位相差において、位相差の最大値(以下「最大位相差」という)は(m−1)π/mとなる。この最大位相差(m−1)π/mは、mの値が大きいほど、値πに近づくことになるので、m→∞とすると、最大位相差(m−1)π/m=πと近似できることになる。
このように最大位相差=πが成立する回転機構造を仮想の回転機構造とした場合、例えば、この仮想の回転機構造を図17の回転機10Xに1つ加えると、図26に示す回転機10X’のようになる。この回転機10X’において、4つの永久磁石の中心間を結んだ線分と、4つの軟磁性体コアの中心間を結んだ線分と、4つの電機子磁極の中心間を結んだ線分を作成した場合、これらの3つの線分を左右方向に位置合わせしたときの三者の位置関係は、図25における永久磁石72、軟磁性体コア81および電機子磁極の位置関係と等しいものになる。
すなわち、図25に示す、回転機60における永久磁石72、軟磁性体コア81および電機子磁極の配置は、m組の回転機構造を備えた回転機において、m→∞とした構成と等価のものであるので、この回転機60も、m組の回転機構造を備えた回転機と同じように動作することが判る。また、前述したように、ステータ90での回転磁界の発生中、3つの電気角θs,θa,θbにおいて、θs=2θb−θaが成立するとともに、2つの電気角θs,θaの一方が電気角θbに対して電気角π分大きく、2つの電気角θs,θaの他方が電気角θbに対して電気角π分小さくなるという関係が成立するように、永久磁石72、軟磁性体コア81および電機子91を配置することによって、m組の回転機構造を備えた回転機と同じ動作状態を確保できる。
これに加えて、この回転機60によれば、前述したm組の回転機構造を備えた回転機において、m→∞に設定したものに相当するので、前述した回転機10,10A,10Xや、m組の回転機構造を備えた回転機などと比べて、トルクリップルおよびコギングトルクをより低減することができる。さらに、軸線方向における回転機構造間の磁気短絡の発生を回避できるので、回転機60の軸線方向のサイズを小型化することができる。以上により、補機駆動装置1Cの商品性を向上させることができる。
なお、第4実施形態の補機駆動装置1Cは、回転機60における回転機構造を図25に示すように構成した例であるが、本発明の補機駆動装置における回転機の回転機構造はこれに限らず、前述したθs=(2θb−θa)が成立するような構成であればよい。例えば、回転機の回転機構造を、図27に示す回転機60Aや、図28に示す回転機60Bのように構成してもよい。これらの場合にも、2つの電気角θs,θaの一方が電気角θbに対して電気角π分大きいとともに、2つの電気角θs,θaの他方が電気角θbに対して電気角π分小さくなるように、永久磁石72、軟磁性体コア81およびステータ90の電機子を配置すればよい。なお、これらの図27,28の場合、便宜上、回転機60と同じ構成に関しては同じ符号を用いている。
図27に示す回転機60Aの場合、ステータ90の3f個の電機子が互いに平行にかつ軸線方向に延びるように配置されるので、回転機60と比べて、コイルの占積率を高めることができるとともに、コイルを鉄芯に巻き付ける作業が容易になるものの、永久磁石のねじれ度合が回転機60よりも大きくなることで、製作が難しく、その分、製造コストが増大する。
一方、図28に示す回転機60Bの場合、第1ロータ70の2f個の永久磁石が互いに平行にかつ軸線方向に延びるように配置されるので、回転機60と比べて、第1ロータ70の製作が容易で、その分、製造コストを低減できるものの、鉄芯のねじれ度合が回転機60よりも大きくなることで、製作が難しく、その分、製造コストが増大する。
また、以上の図25,27,28に示す回転機構造は、永久磁石、電機子および軟磁性体コアのいずれか1つを軸線方向に延びるように配置した例であるが、永久磁石、電機子および軟磁性体コアの配置はこれに限らず、前述したθs=(2θb−θa)が成立し、2つの電気角θs,θaの一方が電気角θbに対して電気角π分大きいとともに、2つの電気角θs,θaの他方が電気角θbに対して電気角π分小さくなるような関係であればよい。例えば、永久磁石、電機子および軟磁性体コアをすべてスキュー配置してもよく、電機子を軸線方向に延びるように配置するとともに、電機子に発生する磁極が回転方向に対して斜めの状態(すなわちスキュー状態)で発生するように構成してもよい。
次に、図29を参照しながら、第5実施形態に係る補機駆動装置1Dについて説明する。同図に示すように、この補機駆動装置1Dは、第4実施形態の補機駆動装置1Cと比較すると、回転機60に代えて回転機60Cを備えている点と、駆動プーリ7に代えて前述した駆動プーリ7Aを備えている点とが異なっており、それら以外は、補機駆動装置1Cと同様に構成されているので、以下、回転機60Cおよび駆動プーリ7Aを中心に説明する。なお、以下の説明では、第4実施形態の補機駆動装置1Cと同じ構成については、同じ符号を付すとともに、その説明を省略する。
この補機駆動装置1Dの回転機60Cでは、径方向の内側から順に、ステータ90、第2ロータ80および第1ロータ70が配置されており、ステータ90は、固定部90aを介してエンジン3の本体に固定されている。
また、駆動プーリ7Aは、第1ロータ70の外周面に固定されており、この駆動プーリ7Aと従動プーリ5との間には、前述したベルト6が巻き掛けられている。また、第1ロータ70のエンジン3側の端部は、中空の円筒部70aになっており、この円筒部70aは、その内周面で入力軸12に回転自在に嵌合しているとともに、軸受70bによって回転自在に支持されている。以上の構成により、駆動プーリ7Aは、第1ロータ70と一体に回転可能になっている。
また、この回転機60Cでは、第1ロータ70の永久磁石72と、第2ロータ80の軟磁性体コア81と、ステータ90の電機子91との位置関係は、前述した回転機60と同様に構成されており、それによって、この回転機60Cも、前述した回転機60と同様に、遊星歯車装置と同じ動作特性を示すように運転可能になっている。
以上のように構成された第5実施形態の補機駆動装置1Dによれば、第4実施形態の補機駆動装置1Cと同様に、コギングトルクおよびトルクリップルを従来と比べて大幅に低減でき、商品性を向上させることができる。これに加えて、この補機駆動装置1Dでは、駆動プーリ7Aと回転機60Cが一体化され、駆動プーリ7Aが第1ロータ70の径方向の外側に配置されているので、駆動プーリ7と回転機60が軸線方向に並べて配置されている第4実施形態の補機駆動装置1Cと比べて、軸線方向のサイズを小型化することができる。
なお、第5実施形態の補機駆動装置1Dにおいて、前述した図19と同様に、第1ロータ70および固定部90aに連結されたワンウェイクラッチを設けてもよい。このように構成した場合、クランクシャフトを駆動できることによって、エンジン3を始動させることができる。
次に、図30を参照しながら、本発明の第6実施形態に係る補機駆動装置1Eについて説明する。同図に示すように、この補機駆動装置1Eは、第4実施形態の補機駆動装置1Cと比べると、回転機60における、入出力軸12、13と2つのロータ70,80との連結関係が異なっており、それ以外は第4実施形態の補機駆動装置1Cと同様に構成されているので、以下、第4実施形態の補機駆動装置1Cと異なる点を中心に説明するとともに、同じ構成に関しては同一の符号を付し、その説明を省略する。
この補機駆動装置1Eでは、回転機60の第1ロータ70が、入力軸12を介してエンジン3のクランクシャフトに直結され、第2ロータ80が、出力軸13を介して駆動プーリ7に連結されている。さらに、前述したように、この回転機60は、遊星歯車装置と同じ動作特性を示すように運転可能に構成されている。
以上のように構成された第6実施形態の補機駆動装置1Eによれば、第4実施形態の補機駆動装置1Cと同様に、コギングトルクおよびトルクリップルを従来と比べて大幅に低減でき、商品性を向上させることができる。
なお、第6実施形態の補機駆動装置1Eの回転機60において、前述した回転機60Cのように、第1ロータ70を第2ロータ80の径方向の外側に、ステータ90を第2ロータ80の径方向の内側にそれぞれ配置するとともに、前述した駆動プーリ7Aを、第1ロータ70の径方向の外側にこれと一体に回転するように配置してもよい。そのように構成した場合には、軸線方向のサイズを小型化することができる。