JP2009539346A - Obフォールドドメイン - Google Patents
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Abstract
Description
この出願は、2006年5月26日に出願された表題「OB Fold Domains」の米国仮特許出願第60/809,105号の優先権の利益を主張する。
分子認識は、シグナル伝達経路の高親和性のタンパク質‐リガンド相互作用からより一過性のタンパク質‐タンパク質認識事象までに至る生物学的プロセスの中心をなす。このような事象は、生物の進化に伴い新たな役割に適応しているタンパク質の多様性に依存する。一例として、外来抗原を捕らえるために、(約107個の変異体を含む)免疫系のナイーブライブラリに由来する少数の抗体が、抗原を認識し、中等度の親和性でその抗原に結合する。選択とマチュレーションによってさらなる変異が導入され、抗原の除去に必要な強固で特異的な結合がもたらされる。このようにして、膨大な数の結合様式を基本的な抗体スキャフォールドにグラフトして、小分子から細胞全体までの種々の標的を捕捉することができる。
本発明は、所望の特性を有する改変OBフォールドドメイン、および改変OBフォールドドメインのライブラリを作製する方法を提供する。本発明はまた、このような方法によって作成される改変OBフォールドドメインのライブラリ、およびこのような改変OBフォールドドメインのライブラリを所望の生物活性についてスクリーニングする方法も提供する。さらに、本発明は、このようなライブラリから同定される改変OBフォールドドメインも提供する。本明細書ではまた、改変された結合相互作用を示す、Pyrobaculum aerophilumから得られる改変OBフォールドドメインも提供される。改変OBフォールドドメインは、天然OBフォールドドメインと比較して、同じ基質に結合することもできれば、あるいは天然OBフォールドドメインと比較して、異なる基質に結合することもでき、あるいは天然OBフォールドドメインと比較して、同じ基質と異なる基質の両方に結合することもできる。あるいは、天然OBフォールドドメインと結合する既知の基質がない改変OBフォールドドメインを作成することもでき、この改変OBフォールドドメインは基質と結合する。
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
天然に存在するOBフォールドドメインから取得可能な単離された改変OBフォールドドメインであって、この改変OBフォールドドメインは、
(a)この天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、このOBフォールドドメイン結合表面のβストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、または
(b)このOBフォールドドメイン結合表面のβストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、およびこのOBフォールドドメインループ領域のストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、または
(c)このOBフォールドドメインループ領域のストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基
を含み、この改変OBフォールドドメインが、この天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、変化した結合特性を有する、
改変OBフォールドドメイン。
(項目2)
上記ドメインが、上記天然に存在するOBフォールドドメインとは異なる結合パートナーに特異的に結合するか、またはその天然に存在する結合パートナーとの改変された結合を有する、項目1に記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目3)
上記天然に存在するOBフォールドドメインが、ブドウ球菌ヌクレアーゼタンパク質、細菌性エンテロトキシン、TIMP様タンパク質、ヘムシャペロンCcmEタンパク質、尾結合リゾチームgp5、N末端ドメインタンパク質、核酸結合タンパク質、無機ピロホスファターゼ、Mop様タンパク質、CheW様タンパク質、tRNA_anti(OBフォールド核酸結合ドメイン)、Telo_bind(テロメア結合タンパク質αサブユニット、中心ドメイン)、SSB(一本鎖結合タンパク質ファミリーのOBフォールドドメイン)、DUF338のOBフォールドドメイン、DNA_ligase_aden(NAD依存性DNAリガーゼOBフォールドドメイン)、Stap‐Strp毒素(ブドウ球菌/連鎖球菌毒素、OBフォールドドメイン)、EIF‐5a(真核生物開始因子5A Hypusine、DNA結合OBフォールドドメイン)、GP5_OB(GP5 N末端OBフォールドドメイン)、CSD、DNA_ligase_OB、DUF388、EFP、eIF‐1a、mRNA_cap_C、OB_RNB、Phage_DNA_bind、Rep‐A_N、Rho_RNA_bind、Ribosomal_L2、Ribosomal_S12、Ribosomal_S17、RNA_pol_Rpb8、RuvA_N、S1、TOBE、TOBE_2、およびtRNA_bindからなる群から選択されるタンパク質またはタンパク質クラス内に存在する、項目1または項目2の改変OBフォールドドメイン。
(項目4)
上記天然に存在するOBフォールドドメインが好熱性生物に由来する、項目1または項目2に記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目5)
上記好熱性生物がPyrobaculum aerophilumである、項目4に記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目6)
上記改変アミノ酸残基が、フォールド関連結合表面のβストランド内に存在する、項目1〜5のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目7)
上記改変OBフォールドドメインの上記結合パートナーが、核酸、オリゴ糖、タンパク質、ホルモン、および有機小分子からなる群から選択される、項目1〜6のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目8)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインを取得する方法であって、
a)天然に存在するOBフォールドドメインをコードする核酸あるいは結合表面のストランドおよび/またはループのストランドを含む天然に存在するOBフォールドドメインの一部分をコードする核酸を取得する工程と、
b)この天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、この結合表面のβストランド上の少なくとも1つの改変アミノ酸残基および/またはループのストランド上の少なくとも1つの改変アミノ酸をコードするようにこの核酸を変化させる工程であって、ここで、改変OBフォールドドメインが得られ、この改変OBフォールドドメインが、この天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、変化した結合を有する、工程と、
を含む、方法。
(項目9)
上記改変OBフォールドドメインをコードする核酸を変化させる工程、および/またはこの改変OBフォールドドメインを含むタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸をコードする核酸を変化させる工程もさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
ディスプレイのための改変OBフォールドドメインタンパク質のライブラリを作製する方法であって、
a)OBフォールドドメインまたはその一部分をコードする核酸を取得する工程と、
b)この核酸をランダムな変化に供することにより、少なくとも1つのランダム化したアミノ酸残基を有する改変OBフォールドドメインをコードする変化させた核酸の集合体を生成する工程と、
を含む、方法。
(項目11)
上記核酸が、上記OBフォールドドメイン結合表面のストランドおよび/またはOBフォールドドメインのループのストランドの少なくとも1つのアミノ酸残基をコードする、項目10に記載の方法。
(項目12)
改変OBフォールドドメインをコードする変化させた核酸の上記ライブラリを、上記改変OBフォールドドメインをその表面に提示し得る宿主細胞の集団に導入する工程もさらに含む、項目10または項目11に記載の方法。
(項目13)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする、単離された核酸。
(項目14)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、宿主細胞。
(項目15)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、ファージ。
(項目16)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、組成物。
(項目17)
改変OBフォールドドメインのライブラリを、結合パートナーとの結合についてスクリーニングする方法であって、
a)改変OBフォールドドメインのライブラリをその表面に提示する宿主細胞またはウイルス粒子の集団を取得する工程と、
b)この改変OBフォールドドメインとこの結合パートナーとの結合に適した条件下で、この宿主細胞またはウイルス粒子の集団をこの結合パートナーと接触させる工程と、
c)この結合パートナーとこの改変OBフォールドドメインとの結合を決定する工程と、
を含む、方法。
(項目18)
上記宿主細胞またはウイルス粒子が、上記改変OBフォールドドメインをその表面に提示するファージである、項目17に記載の方法。
(項目19)
項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインのファージライブラリであって、この改変OBフォールドドメインがPyrobaculum aerophilumから取得可能である、ファージライブラリ。
(項目20)
細胞またはウイルス粒子の表面に提示される、項目1〜7のいずれか1項に記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目21)
上記細胞またはウイルス粒子が、ファージ、細菌、または酵母である、項目20に記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目23)
固体支持体に結合した、項目1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
(項目24)
上記支持体が、ビーズ、ガラス、スライド、チップ、およびゼラチンからなる群から選択される、項目23に記載の改変OBフォールドドメイン。
元々、オリゴ糖‐オリゴヌクレオチド結合特性が観察されたことからその名が付けられた、「OBフォールドドメイン」または「OBフォールド」または「OBフォールドタンパク質ドメイン」は、改変OBフォールドドメインを作成するために、ならびに所望の生物活性(例えば、所望の標的への結合)および変化した酵素特性についてスクリーニングが可能な改変OBフォールドドメインのライブラリを作製するために、分子認識ドメインまたはスキャフォールドとして使用できることを、本発明者等は発見した。OBフォールドドメインは元々、それ自体が有するオリゴ糖‐オリゴヌクレオチド結合特性からその名が付けられたが、その後、タンパク質間の境界面にも認められている(Theobaldら、Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,Vol.32:115‐33(2003))。したがって、本発明は、所望の特性を有する改変OBフォールドドメインの作成方法における、OBフォールドドメインまたはその一部分の使用と、改変OBフォールドドメインのライブラリを作製する方法と、このような方法によって作成される改変OBフォールドドメインのライブラリと、このような改変OBフォールドドメインのライブラリを所望の生物活性についてスクリーニングする方法と、このようなライブラリから同定される改変OBフォールドドメインと、に部分的に関する。例えば、このような改変OBフォールドドメインのライブラリは、1つ以上の特定の対象標的(例えば、ヌクレオチド、タンパク質、または炭水化物)との増加または低下した結合相互作用、あるいは増加または低下した酵素活性を有する、改変OBフォールドドメインまたはその一部分についてスクリーニングすることができる。
本発明の実施においては、特に記載がない限り、当該技術分野の範囲に含まれる分子生物学(遺伝子組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技法が使用される。このような技法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrookら、1989)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir&C.C.Blackwell,eds)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller&M.P.Calos,eds,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら、eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、eds.,1991),The Immunoassay Handbook(David Wild,ed.,Stockton Press NY,1994)、およびMethods of Immunological Analysis(R.Masseyeff,W.H.Albert,and N.A.Staines,eds.,Weinheim:VCH Verlags gesellschaft mbH,1993),およびGennaroら、2000,Remington:the Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.Lipincott Williams and Wilkins:Baltimore,MDのような文献に詳細に説明されている。
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語とその同種の用語は、包括的な意味で使用され、すなわち、「含む(including)」という用語とその対応する同種の用語に等しい。
最も一般的なレベルでは、OBフォールドドメインは、5つのストランドからなる混合型βバレルである。例えば、Arcus,2002,Curr.Opin.Struct.Biol.Vol 12:794‐801を参照されたい。OBフォールドドメインは、3つすべての界に認められ、本明細書に詳述する通り、配列および構造学的データベースの両方で表される。一般的に言うと、OBフォールドドメインには、フォールドと機能的結合表面が保存されている。種々のOBフォールドドメインは、それらのフォールド関連結合表面を使用して、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、金属イオン、および触媒基質と様々に結合する。
n=5およびS=10またはS=8であり、グリークキーモチーフを有し、すべてがβの閉鎖型または部分開放型のバレル構造としてSCOPによって特徴付けられているOBフォールドドメインのクラスに関しては、SCOPは現在、以下のスーパーファミリーを同定している(括弧内の数字はSCOP照合番号である):
1.ブドウ球菌ヌクレアーゼ(50199)
ブドウ球菌ヌクレアーゼに関しては現在のところこのファミリーの単独のメンバーが存在するが、ブドウ球菌ヌクレアーゼのデータベースには多くの構造が存在する。OBフォールドは閉鎖型βバレルであり、n=5、S=10である。
細菌性エンテロトキシンの場合、このスーパーファミリーには、細菌性AB5毒素(Bサブユニット)およびスーパー抗原毒素のN末端ドメインという2つのファミリーが存在する。細菌性AB5毒素には、大腸菌由来の易熱性毒素、コレラ毒素、および百日咳毒素が含まれる。すべてが閉鎖型βバレルトポロジーを有し、n=5でS=10であるが、バレルが部分開放型のコレラ毒素が唯一の例外である。スーパー抗原様毒素およびスーパー抗原毒素のN末端ドメインは、黄色ブドウ球菌および化膿性連鎖球菌由来のすべてのタンパク質であり、典型的にn=5、S=10の閉鎖型バレルのトポロジーを有する。これらの微生物のゲノムにコードされこれらのタンパク質は数多く存在する。ブドウ球菌のタンパク質は、“Standard Nomenclature for the Superantigens Expressed by Staphylococcus.”Gerard Lina,Gregory A.Bohach,Sean P.Nair,Keiichi Hiramatsu,Evelyne Jouvin‐Marche,and Roy Mariuzza,for the International Nomenclature Committee for Staphylococcal
Superantigens The Journal of Infectious Diseases 2004;189:2334‐6に基づき、近年名称が改められた。
TIMP様タンパク質は、現在3つのファミリーに分類される真核生物のタンパク質であり、すべてn=5、S=10の閉鎖型バレルのトポロジーを有する:
a.組織メタロプロテイナーゼインヒビター、TIMP(50243)(C末端伸長部に不規則なα+βサブドメインを含む)。
c.アグリンのラミニン結合ドメイン(63767)
4.ヘムシャペロンCcmE(82093)
ヘムシャペロンCcmEに関しては、このスーパーファミリーにアノテーションを付けた1つのファミリーが存在する。代表的な構造は、大腸菌およびS.putrefaciensに由来する。
尾結合リゾチームgp5、N末端ドメインについては、ファミリーとこのスーパーファミリーの両方を表す1つの構造が存在する。このタンパク質はバクテリオファージT4に由来し、N末端ドメインは、ファージの細胞貫通部を形成するさらに大きなタンパク質複合体の一部である。
核酸結合タンパク質は、多数のタンパク質を包含する大きなスーパーファミリーである。以下はファミリーの区分と記述子である:
a.アンチコドン結合ドメイン(50250)
バレル、閉鎖型、n=5、S=10
b.RecG「ウェッジ」ドメイン(69259)
c.DNAヘリカーゼRuvAサブユニット、N末端ドメイン(50259)
バレル、閉鎖型、n=5、S=10
d.一本鎖DNA結合ドメイン、SSB(50263)
バレル、閉鎖型、n=5、S=10
e.Myfドメイン(50277)
f.コールドショックDNA結合ドメイン様(50282)
バレル、閉鎖型、n=5、S=8
g.Hypothetical protein MTH1(MT0001)、インサートドメイン(74955)
h.DNAリガーゼ/mRNAキャッピング酵素、ドメイン2(50307)
i.ファージssDNA結合タンパク質(50315)(4)
バレル、開放型、n*=5、S*=8、メンバーの構造は、細胞性生物由来のものよりも大きく変化する。
k.RNAポリメラーゼサブユニットRBP8(50321)
二重。2つの不完全なOBフォールドのタンデムリピートを含む。単一のバレルを形成、n=8、S=10。
無機ピロホスファターゼについては、このスーパーファミリーに唯一のファミリーが存在する。このファミリーは、細菌、古細菌、および真核生物の例があるように、非常に古くからの系統を有する。
バレル、閉鎖型、n=5、S=8
1.無機ピロホスファターゼ(50326)
真核生物の酵素は、N末端およびC末端の両方に他の二次構造を有する。
b.古細菌Sulfolobus acidocaldarius(50328)
c.大腸菌(50329)
d.Thermus thermophilus(50330)
8.MOP様(50331)
MOP様グループ分類には3つのファミリーが存在し、すべてが類似の機能性を有し、すべて細菌に由来する。
b.BiMOP、モリブデン酸塩結合二重ドメイン(50335)
二重。C末端ストランドにスワッピングを生じた2つのOBフォールドドメインのタンデムリピート。
おそらくbiMOPドメインに由来。
これはThermotoga maritima由来の2つの構造(CheWおよびCheA)を有する1つのファミリーで表される。
SCOPの記載は、X線結晶学またはNMRのいずれかによってその3次元構造が決定されている、タンパク質由来のOBフォールドドメインに関する。Pfamデータベースに配列類似性に基づき、およびSuperfamilyデータベースにSCOP由来の配列プロファイルに基づき同定された後、主要な配列データに適用されている、他のOBフォールドタンパク質ドメインは、本発明の適用範囲内に包含される。本発明は、当業者に既知の他のOBフォールドドメインを包含する。
ファミリー名
アノテーション
Pfam受入番号
Pfamデータベースにおけるこのファミリー内のタンパク質の総数
tRNA_anti
OBフォールド核酸結合ドメイン
受入番号:PF01336
タンパク質数:1351
Telo_bind
テロメア結合タンパク質αサブユニット、コアドメイン
受入番号:PF02765
タンパク質数:33
SSB
一本鎖結合タンパク質ファミリー
受入番号:PF00436
タンパク質数:415
DUF388
機能が未知のドメイン(DUF388)
受入番号:PF04076
タンパク質数:49
DNA_ligase_aden
NAD依存性DNAリガーゼOBフォールドドメイン
受入番号:PF03120
タンパク質数:190
Stap_Strp_toxin
ブドウ球菌/連鎖球菌毒素、OBフォールドドメイン
受入番号:PF01123
タンパク質数:180
eIF‐5a
真核生物開始因子5A Hypusin、DNA結合OBフォールド
受入番号:PF01287
タンパク質数:104
Gp5_OB
Gp5 N末端OBドメイン
受入番号:PF06714
タンパク質数:6。
改変OBフォールドドメインおよび/または改変OBフォールドドメインのライブラリは、本明細書に記載されるか、当該技術分野で既知であるか、または後に同定されるものを含めたいずれかのOBフォールドドメインの構造に基づいて作成することができる。改変OBフォールドドメインのライブラリは、本明細書に記載され、当該技術分野で既知の方法に基づいて作成することができる。例えば、ある任意のOBフォールドドメインについて、1つ以上のアミノ酸残基(例えば、外側の結合表面のストランド内のアミノ酸残基、および/またはループのストランド内のアミノ酸残基、および/またはOBフォールドドメインを含むタンパク質の他の部分内のアミノ酸残基)をコードする核酸は、アミノ酸残基のランダム化(すなわち、核酸の改変による1つ以上のアミノ酸残基のランダム変異)の標的とすることができる。いくつかの実施例において、OBフォールドドメインの外側の結合表面のストランド内のアミノ酸残基は、アミノ酸残基のランダム化の標的とされる。他の実施例において、OBフォールドドメイン内の特定の構造をアミノ酸残基のランダム化の標的とすることができる。例えば、OBフォールドドメイン結合表面のストランド内に存在する1つ以上のアミノ酸残基は、ランダム化の標的とすることができる。OBフォールドドメイン結合表面は、βストランド1、βストランド2、βストランド3からなるC末端側の半分と、βストランド4およびβストランド5からなるC末端側の半分を含む。図1A〜1Cを参照されたい。別の実施例において、コアOBフォールドドメインのβストランド間のループ内のアミノ酸残基は、ランダム変異の標的される場合がある。別の実施例において、OBフォールドコアドメインに隣接するループ領域内に主要な挿入がある場合(例えば、無機ピロフォスファターゼ)、これらの挿入ループ上のアミノ酸残基は、ランダム化のために選択される場合がある。本発明はまた、タンパク質に対する安定性の変化を生じるように改変されたコアの一部分(すなわち、アミノ酸残基)を有する改変OBフォールドドメインも包含する。
本明細書の実施例に記載の例示的実施形態において、変異が導入された2つの好熱性OBフォールドタンパク質ドメイン、翻訳開始因子IF‐5A(S=8)、およびアスパルチルtRNAシンテターゼaspRS(S=10)を、OBフォールドタンパク質の結合表面内のアミノ酸残基をランダム化することによって、改変OBフォールドドメインのライブラリの作成に使用した。これらのタンパク質はともに、超好熱性クレンアーキアのPyrobaculum aerophilumに由来する。ライブラリは、OBフォールドドメインの結合表面内の特定のアミノ酸位置がランダム化されているロングオリゴヌクレオチドを使用して合成により作成した後、PCRを使用して遺伝子構築を行った。ライブラリを、それらのコードしたタンパク質の過剰発現率に関して検査し、ライブラリによってコードした可溶性および耐熱性タンパク質の割合に関して計算を行った。本明細書には、aspRS OBフォールドドメイン(aspRS‐OB)がファージ表面に提示および選択できることが示されている。tRNA、タンパク質、およびセルロースリガンドを含めた種々の基質への結合能を有する改変OBフォールドドメインが作成可能であることを示すために、本明細書の実施例に記載のように、aspRSのスキャフォールドに基づく種々の改変OBフォールドドメインのライブラリを作製し、ファージディスプレイ法に供した。本明細書に開示する一例示的実施形態においては、天然の状態で核酸結合ドメインであった改変OBフォールドドメインと、リゾチームとの間の結合相互作用が示されている。
ディスプレイ技術は、発現したタンパク質からなる大きなライブラリを、固定化したリガンドを使用してスクリーニングし、個々のタンパク質と標的リガンドの間の新たな相互作用を特徴付けるまたは発見する工程を伴う。ディスプレイ技術の最も重要な特徴は、スクリーニングしているタンパク質(発現型)をそれらをコードする遺伝情報(遺伝子型)と結び付けることができる点である。すべてのディスプレイ技術において、遺伝情報は、スクリーニングしたタンパク質と同時に単離される。これは一般的に、タンパク質またはタンパク質断片を生物実体(例えば、ファージ、酵母、または細菌)の表面に提示し、ライブラリの増幅に生物の複製系を使用することによって行われる。これらのin vivo系の代わりとして、プロセス全体をin vitroで行うことも可能であり、このような技術は、リボソームディスプレイまたはmRNAディスプレイと呼ばれる。このような場合、in vitroで作成した転写物は、細胞抽出物に翻訳され、RT‐PCRを使用して、mRNA‐リボソーム‐タンパク質複合体のリガンドを媒介した単離後に、遺伝情報の増幅が行われる。
糸状バクテリオファージの表面への外来ペプチドおよびタンパク質の提示は、「ファージディスプレイ」と呼ばれ、現在では分子間相互作用の研究に一般的に使用されている方法である。通常、スクリーニングするタンパク質ライブラリは、バクテリオファージ粒子の一端のgene IIIタンパク質産物との融合体として、またはファージ粒子表面のgVIIIタンパク質との融合体として発現される。このようなファージライブラリを細菌に感染させると、非常に効率的なライブラリ増幅が可能となる(Griffithら、1994)。典型的なファージディスプレイプロトコルは、細菌性宿主内でファージ粒子を作成する工程を伴い、各粒子は、自身の外殻タンパク質の内の1種(gIIIまたはgVIIIタンパク質)との融合体として、遺伝子ライブラリの1メンバーの遺伝子産物を提示する。ファージライブラリの標的への結合、非結合ファージを除去する洗浄工程、および結合粒子の溶出を伴う、固定化した標的分子への結合の選択プロセス(バイオパニング)によって、ファージ粒子のライブラリが得られる。通常は、所望の特性を有する分子の選択には、溶出したファージを細菌性宿主における再増幅と、固定化した標的上での選択とを伴う、複数回のパニングが必要となる。本明細書の実施例に開示する例示的実施形態において、改変OBフォールドドメインの提示およびスクリーニングには、ファージディスプレイ法が使用される。
細菌ディスプレイおよび酵母ディスプレイ技術によって、酵母細胞サッカロミセス・セレビシエ(Boder and Wittrup,1997)または細菌(大腸菌、スタフィロコッカス・カルノーサス)(Daughertyら、1998;Wernerusら、2003)の表面に、それぞれアグルチニン酵母接着受容体または細菌性外膜タンパク質(OMP)との融合体として、組換えタンパク質を発現させることができる。
リボソームディスプレイおよびmRNAディスプレイは、in vitroでの大きなタンパク質ライブラリの選択や溶出を可能にする技法である。必要となる唯一の生物成分は、タンパク質配列をコードするin vitro作成転写物の翻訳に必要な因子を含有する細菌性細胞抽出物である。リボソームディスプレイの遺伝子型と発現型は、リボソーム複合体を介して互いに結合しており、選択に使用される、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソーム、およびコードされたタンパク質から構成されている(Hanes and Pluckthun,1997)。mRNAディスプレイ法では、mRNAと翻訳されたタンパク質との結合にピューロマイシンを使用し、それによって遺伝子型および表現型の情報を含有するmRNA‐タンパク質複合体の精製を行う。選択後、単離したmRNAまたはmRNA複合体はRT‐PCRによって増幅され、別の回の選択のために転写および翻訳することができる(Lipovsek and Pluckthun,2004)。ディスプレイ法の参考文献には以下の一覧が含まれ、これらはすべて全体が参考として本明細書で援用される:Boder ET and Wittrup KD(1997)Nat Biotechnol.15:553−7;Feldhaus MJら、(2003)Nat Biotechnol.21:163−70;Griffiths,ADら、(1994)EMBO Journal 13,3245−3260;Hanes J,Pluckthun A.,et al(1997)PNAS May 13;94(10):4937−42;およびLipovsek D,Pluckthun A.,(2004)J.Immunological Meth.290 51−67;Wernerus Hら、(2003)Appl Environ Microbiol.69(9):5328−35。
天然OBフォールドドメインのリガンドは多種多様である。改変OBフォールドドメインのライブラリを作製することにより、OBフォールドドメインに利用できる可能性がある標的の多様性が拡大する。改変OBフォールドドメインのライブラリに対するスクリーニングに有力な標的は、例えば核酸、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、オリゴ糖、およびホルモンを含むがこれらに限定されない種々の分子を包含する。
多数のOBフォールドドメインが、一本鎖DNAおよびRNAへの結合に関与する。これらのドメインには、腫瘍遺伝子BRCA2の一本鎖DNA結合ドメイン、ヒト複製タンパク質A由来の複数のドメイン、ならびにアスパルチル‐およびリジル‐tRNAシンテターゼのアンチコドン結合ドメインが含まれる。したがって、一本鎖DNAおよびtRNAは、改変OBフォールドドメインライブラリのスクリーニングのためのリガンド標的として使用することができる。
改変OBフォールドドメインライブラリのスクリーニングに使用できるタンパク質には、例えば酵素、調節タンパク質、タンパク質およびペプチドホルモン、輸送タンパク質など、種々のものがある。本明細書に開示する例示的実施形態においては、リゾチームがタンパク質標的として使用される。その他の標的には、ユビキチン、補体成分C4、プラスミノゲン前駆体、アポリポタンパク質A‐II、血漿プロテアーゼC1インヒビター、トランスサイレチン、および血清アミロイドP成分が含まれるが、これらに限定されない。
オリゴ糖は、すべての生物の生物学において重要な役割を果たす。例えばラミナリヘキソース(laminarihexose)、マンノペンタオース、およびキシロペンタオースなどがあるがこれらに限定されないオリゴ糖基質が標的として使用可能である。
OBフォールドドメインライブラリのスクリーニングには、例えばステロイドホルモン(エストロゲン、テストステロン、およびコルチゾール)、カテコールアミン(例えば、エピネフリン)、およびその他同じような分子などがあるがこれらに限定されないホルモンが使用可能である。現在のところ、OBフォールドドメインがステロイドホルモンまたはその他の補因子を天然のリガンドとして有するというエビデンスは存在しない。さらに、ステロイドに対する特異性が高い抗体は、これまでのところ作成が困難であり、OBフォールドドメイン結合表面のようなくぼんだ結合表面が、特定のホルモンに対する結合特異性の向上により優れていることが証明される可能性がある。
有機小分子(約1000ダルトン以下の分子量を有する有機分子として定義される)も、OBフォールドドメインの標的として使用可能である。有機小分子は、天然分子である場合もあれば、非天然の合成分子である場合もある。天然有機小分子は、生物系と関連する場合もあれば(例えば、ステロイドホルモン;上述を参照)、非生物的に発生する場合もある。有機小分子には、汚染物質またはその他の望ましくない物質、例えばDDTまたはポリ塩化ビフェニル(PCB)が含まれるが、これらに限定されない。有機小分子には、薬物および医薬品、例えばドキソルビシンおよびパクリタキセルが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で記載の通り、OBフォールドドメインは、多様な分子認識プラットフォームである。種々のOBフォールドドメインが当該技術分野で既知であり、本明細書に開示されており、そしてSCOPやその他のデータベース、例えばPfamおよびSuperfamilyにおいて同定されている。このようなOBフォールドドメインは、改変OBフォールドドメインだけでなく、例えば核酸、タンパク質、ホルモン、炭化水素、およびオリゴ糖などの標的に対してスクリーニングが可能な改変OBフォールドドメインのライブラリを作製する方法においても使用可能である。このようなスクリーニング方法は、所望の特性を有する改変OBフォールドドメインの同定に使用可能である。例えば、ヒトOBフォールドドメインは、ヒトへの治療に応用できる可能性があるヒト標的に対するスクリーニングを行うための改変OBフォールドドメインライブラリを作製するスキャフォールドとして使用可能である。別の例において、酵母のOBフォールドドメインは、バイオテクノロジーまたは発酵用途に応用できる可能性がある改変OBフォールドドメインライブラリを作製するスキャフォールドとして使用可能である。さらに別の例において、酵素のOBフォールドドメインを、新たな酵素特性を有する改変OBフォールドドメインライブラリを作製するスキャフォールドとして使用可能である。
化学物質および生化学物質
標準的なオリゴヌクレオチドはInvitrogenから購入し、ランダム化ロングオリゴヌクレオチドはすべてMWG(ドイツ マルティンスリート)より入手した。PfxおよびTaqポリメラーゼならびにすべての制限酵素はInvitrogen(米国カリフォルニア州カールズバッド)より入手した。エビ由来アルカリフォスファターゼ(SAP)およびT4リガーゼはRoche(スイス バーゼル)より入手した。ファージミドベクターpRPSP2ならびにファージVCS‐M13およびVCSM‐13d3(Vd3)はDr.J.Rakonjacより入手した(31、32)。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズおよびProtector(登録商標)RNaseインヒビターは、ニワトリ卵白リゾチームと同様にRocheより入手した。ウシ血清アルブミンはSigmaより入手した。ビオチン化トランスファーRNAは、Ambion(米国)のMEGAscript in vitro転写キットと、RocheのビオチンRNA標識ミックスを使用して作成した。ウェスタン解析用のニトロセルロース膜は、Schleicher&Schuell(ドイツ ダッセル)より入手し、Pierce(米国)のSuperSignal(登録商標)を基質として使用した。
Swiss‐pdbViewerおよびPymol(pymol.sourceforge.net)を使用して、構造の観察、解析、またはPDBファイル(33)から図への変換を行った。IF‐5Aの構造解析にはPDB entry 1bkb(34)を使用した。aspRSには、aspRSホモログ1b8a(35)、1eov(36)、1coa(37)のPDBファイルを使用した。
一般的なクローニングはSambrook and Russel(41)にしたがって行った。aspRS‐OB(Pyrobaculum aerophilum IM2由来のasp‐tRNAシンテターゼ、塩基1〜327番、アミノ酸1〜109番、NCBI受入番号NP_558783)およびIF5A‐OB(Pyrobaculum aerophilum IM2由来のIF‐5A、NP_560668、塩基208〜399番、アミノ酸76〜139番)の野生型遺伝子は、aspRS‐OBの場合オリゴヌクレオチド005および006を、IF5A‐OBの場合オリゴヌクレオチド011および012を使用して、Pyrobaculum aerophilum IM2ゲノムDNA(NC003364、(42))からPCRで増幅した。オリゴヌクレオチドの配列は付表Iに列挙する。過剰発現のためのすべてのPCR産物をBamHIおよびEcoRIで消化し、pProEx‐Htbにライゲーションした。pProEX‐Htbは、N末端にHis6タグが付いた融合タンパク質としてタンパク質を作成する。aspRS‐OB遺伝子をpJARA140にクローニングする場合は、オリゴヌクレオチド対050/044を使用してaspRS‐OBをPCRで増幅し、NcoIおよびNotIを使用して消化した。pJARA140も同じ酵素で消化し、ライゲーションの前に脱リン酸化した。サブクローニングを行う場合は、ベクターに特異的なプライマーを使用して選択した突然変異遺伝子を増幅し、ドナーベクターpDONR221に挿入した後、pDEST15に挿入した(これらのベクターはいずれもGATEWAY(登録商標)クローニング系(Invitrogen)の一部である)。pDEST15は、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)の融合体としてタンパク質を発現することが可能である。
pProEXから得たすべての構築物のクローニングやプラスミド調製、ならびに小規模のタンパク質合成には、大腸菌K12株XL1‐blue(43)を使用し、すべてのpRPSP2構築物のクローニング、ならびにVCS‐M13ヘルパーファージにより作成したすべてのファージには、大腸菌JM101誘導体TG1を使用した。pJARA131およびpJARA112で形質転換した大腸菌K561(大腸菌K1762(44)を生成)は、多価ディスプレイ用のVCS‐M13d3ヘルパーファージの調製に使用した。大規模なタンパク質作成および精製には大腸菌BL21(DE3)(Novagen)を使用した。
ライブラリは、コドンNNK(N=A、C、GまたはT、K=TまたはG)を含む変異原性オリゴヌクレオチドを、選択した位置に組み込むことにより構築した。組み込んだ変異を担持するaspRS‐OB遺伝子断片をPCRで作成し、次いで完全長遺伝子に構築した。ランダム化した位置を組み込むロングオリゴヌクレオチドは表1に列挙する。最初のPCR工程では、対応するフランキングプライマーを使用し、選択した位置にランダム化したオリゴヌクレオチドを組み込んで遺伝子断片を作成した(30サイクル、94℃1分間、52.5℃30秒間、68℃1分間)。第2の工程では、オーバーラップ伸長PCR(25サイクル、94℃1分間、52.5℃30秒間、68℃1分間)によって遺伝子断片を完全長遺伝子に構築した。その後の工程で108の多様性が維持されるようにするため、構築した産物の量は1011個の分子をよりも多くなるように分光光度法で算出した。構築した産物を、aspRS‐OBの場合はベクター特異的プライマー005/006を、IF5A‐OBの場合はベクター特異的プライマー011/012をそれぞれ使用して、PCR(30サイクル、94℃1分間、52.5℃30秒間、68℃1分間)で増幅し、消化した後、pProEx‐Htbにライゲーションした。aspRS‐OBのファージライブラリの場合は、プライマー050/044を、pRPSP2へのクローニングに使用した(下記を参照)。野生型遺伝子または構築したライブラリのいずれかを含むプラスミドを、大腸菌XL1‐Blueに形質転換し、アンピシリン(50μg/mL)を添加したLB寒天平板培地上で37℃にて一晩培養した。個々のコロニーをピックアップし、それらを50μLのLB/Amp中で数時間培養することにより、診断PCRを行った。この培養液の1μLを使用して、pProEx‐HtbまたはpRPSP2それぞれの診断プライマーを使用する10μLのPCR増幅(25サイクル、94℃1分間、52.5℃30秒間、68℃1分間)を行った。Pfxポリメラーゼはすべての調製PCR反応に使用したのに対し、Taqポリメラーゼは診断PCR反応にのみ使用した。各OBフォールド遺伝子の構築計画を概説するスキームは図2Aおよび図2Bに示す。
各ライブラリでは、形質転換した細菌を寒天(LB‐amp含有)上に接種し、シングルコロニーをピックアップして、Eppendorfのサーモミキサーで1200rpmにて振盪しながら、96ウェルの深型プレートで100μLのLB‐amp(50μg・mL−1)中で一晩培養した。これらの培養液を、新しいLB‐ampを900μL添加して希釈し、さらに60分間培養した後、1mMのイソプロピル‐D‐チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用して37℃にて4時間誘導した。細菌細胞を遠心分離により回収し、150μLのトリス緩衝生理食塩水(TBS:50mMトリス‐HCl、pH7.5、150mMのNaCl)に再懸濁し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE、15%ポリアクリルアミド)で解析した。表1は、aspRS‐OBおよびIF5A‐OBライブラリの構築に使用したロングオリゴヌクレオチドの一覧である。それぞれのランダム化したコドンは、NNK(N=A/T/G/C、K=T/G)またはアンチセンスコドンの場合はMNN(M=A/C)で定義される。図3および図3Bも参照されたい。
野生型OBフォールドドメインであるaspRS‐OBおよびIF5A‐OB、ならびに変異体であるIF5A‐OB/A2およびaspRS‐OB/13mRLを、ミリグラム量で発現および精製した。大腸菌XL1‐BlueをLB‐amp(50μg・mL−1)中で一晩培養した25mLを使用して、500mLのLB‐amp培養液を播種した。OD600が0.6になるまで37℃にて培養物を培養し、1mMのIPTGで4時間誘導した。細菌を遠心分離により回収し、−20℃にて保存した。25mLのTBS+10mMイミダゾールに細胞を再懸濁して、ソニケーションで溶解した。IF‐5A由来のOBフォールドタンパク質を、85℃30分間のインキュベーションを含む加熱工程で処理した。これにより、大腸菌タンパク質の大部分が変性する。溶解した細胞をSorvall SS‐34ローターで16,000rpmにて30分間遠心分離した。精製のため、溶解物をNi‐NTA Highトラップカラム(Amersham Pharmacia、スウェーデン)に充填した。カラムからの溶出は、イミダゾールグラジエントを使用して行った。精製したタンパク質を、イミダゾールフリーの20mMトリスHCl pH7.5、150mMのNaClで透析し、濃縮した後、Superdex(登録商標)200カラム(Amersham)を使用したサイズ排除による2回目の精製工程に供した。
ファージの一般的な取扱い工程は、Barbasら、(45)にしたがって行った。選択用のファージaspRS‐OB‐pIII‐Vd3のストックを調製するため、pJARA140にaspRS‐OBを含む約6×109個の大腸菌TG1細胞を使用して、200mLの2×YT‐amp(50μg・mL−1)に播種した。この培養液を37℃にて振盪しながら1時間培養した後、振盪せずに37℃にて30分間約1×1012単位のVd3ヘルパーファージを感染させた。次いで細胞を洗浄し、2×YT‐amp中でさらに4時間培養した。次にポリエチレングリコール(PEG)沈殿によってファージを培養上清から濃縮し、TBSに再懸濁した後、4℃にて保存した。ファージの力価は3.0×1011TDP・mL−1と判定した。
ビオチン標識asp‐tRNAは、MEGAscriptキット(Ambion、米国)およびビオチン‐16‐UTPを含むビオチンRNA標識ミックス(Roche、スイス)を使用したin vitro転写を行うことによって作成した。Pyrobaculum aerophilum由来の78bpのasp‐tRNA遺伝子(Gene_ID:1464263)をカバーする合成オリゴヌクレオチドと、T7プロモーター領域を3’末端に含むpET28(Invitrogen)から増幅した150bpのDNA断片のPCR構築を行った後、T7に関する最近のプロモーター認識研究(42)にしたがって最適なプロモーター活性についてのGGを行うことによって、発現PCR(41)に基づきDNA鋳型を作成した。これにより、230bpの産物が構築され、これをエタノールで沈殿し、乾燥させ、RNaseフリーの水に再懸濁し、さらにクローニングを行わずに転写用鋳型として使用した(41)。in vitro転写は、製造業者(Ambion)の取扱説明書にしたがって行い、25μLの反応物から約5μgのビオチン化asp‐tRNAを得た。
ビオチン化asp‐tRNAは、ライブラリ「RL」および「13mRL」からの選択で標的として使用し、ニワトリ卵白リゾチーム(Roche、スイス)は「13mRL」からの選択にのみに使用した。
aspRS‐OBのファージ試料を、PEG沈殿によって1×1011TDP/mLになるよう濃縮し、10μLをゲルローディングバッファー(SDSおよびBME含有)と混合し、ボイルして、10%のSDS‐PAGEゲル上で分離した。ニトロセルロース膜(Protran、Schleicher&Schuell、ドイツ)上に転写した後、マウス抗c‐myc一次抗体(Zymed、Invitrogen)とHRP結合抗マウス二次抗体(Amersham‐Pharmacia、スウェーデン)を使用して、aspRS‐OB‐pIII融合タンパク質を検出した。SuperSignal(登録商標)基質(Pierce、米国)を使用して可視化を行った。
リゾチームへの結合のために選択したクローンを解析するために、ファージELISA実験を行った。96ウェルのELISA用プレートを、5μg/mLのニワトリ卵白リゾチーム、5μg/mLのRNaseA、または1%BSA含有PBSで、4℃にて一晩コーティングした。TBSで2回洗浄した後、プレートを室温にてブロッキングバッファー(5%スキムミルク含有TBS)で1時間ブロッキングして、その後、ファージ(109cfu/ウェル、VCS‐M13d3由来)を2.5%のスキムミルク‐TBS‐Tに添加した。プレートを、攪拌しながら室温にて2時間インキュベートした。水で10回洗浄した後、ブロッキングバッファーで希釈したマウス抗M13タンパク質VIIIを添加し、室温にて1時間インキュベートした。プレートを水で4回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ウサギ抗マウス免疫グロブリン(Pierce)を含有するブロッキングバッファーをウェルに添加し、室温にて1時間インキュベートした。ウェルを水で4回洗浄し、50μLの基質溶液(1mg/mLのo‐フェニレン‐ジアミン含有PBS 0.030%H2O2)をウェルごとに添加した。約15分後に25μLの2.5MH2SO4を添加して反応を停止させ、492nmで吸光度を記録した。
ファージ結合実験では、VCS‐M13d3(Vd3)のgIII欠失変異体(Rakonjac et al,1999)をヘルパーファージとして使用して、モノクローナルファージ試料を多価ディスプレイとして作成した。マイクロパニングによるプレスクリーニングでは、wtVCS‐M13由来の一価ファージを使用した。ヘルパーファージVCS‐M13およびVd3のストックは、一般的なプロトコル(Barbas IIIら、2001)にしたがって、単一のプラークから作成したが、但し、VCS‐M13はTG1上で培養し、大腸菌K1762(プラスミドpJARA131(cam1)およびpJARA112(amp1)で形質転換したK561)上のVd3は、ファージ構築用のpIIIを供給するための宿主株として使用した。Vd3試料は65℃にて20分間加熱して、細菌性宿主由来のλ溶原菌を死滅させた。
ファージに提示したタンパク質のasp‐tRNAへの結合を試験するため、モノクローナルファージ試料を使用して、Vd3上で融合タンパク質を多価提示させた。実施した工程は、上で概説した1回目の選択のものと基本的に同じであった。ビオチン化したasp‐tRNAを、ストレプトアビジンでコーティングした常磁性ビーズと結合させ、TDP試料を添加した(109cfu/本)。インキュベーションおよび洗浄工程の後、RNaseAを添加することによりRNAを消化し、溶出したTDPを細菌感染によってカウントした。
リゾチームで選択された変異体を、GATEWAY(登録商標)のpDEST15にサブクローニングし、GST融合タンパク質として発現させた。構築物を大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、培養液を3mLのLB/Ampで培養した。最終濃度1mMにIPTGを添加して細胞の誘導を行い、37℃にてさらに4時間培養した。細胞を沈降させ、300μLの溶解バッファー(トリス‐HCl 7.5 150mM NaCl)に再懸濁した後、ソニケーションで溶解した。不溶性物質を沈降させ、可溶性画分を10μLのグルタチオン結合セファロースビーズ(Amersham)とともに4℃にて1時間インキュベートした。TBS‐Tによる2回の洗浄工程の後、150μLのリゾチーム(1mg/mL)と0.1%BSAとを含む300μLのTBS‐Tとともに、ビーズを4℃にて1時間インキュベートした。洗浄は、TS(50mMトリス‐HCl pH7.5、150mM NaCl)、TBS‐T(20mM トリス‐HCl pH7.5、150mM NaCl、0.1%Tween20)、TBS‐T‐500(TBS‐T、500mM NaCl)といった異なるバッファーを使用して行った。ビーズをゲルローディングバッファー(SDSおよびBME含有)に再懸濁し、ボイルして、SDS‐PAGEで解析した。
リガンドリゾチームを、pH4.3の酢酸ナトリウムバッファー中の30μg/mLでタンパク質の一次アミン基を介して、CM5 Biacoreセンサーチップに結合させた。チップ上の4つのフローセルの内の2つ目を、EDC:NHSの1:1(等量)混合液(Biacoreより販売)35μLで5μL/分にて活性化した。十分な反応が認められるまで10〜20μLを連続注入することにより、活性化表面にリゾチームを結合させた。チップ上に残された非結合活性基を、エタノールアミン‐HClを注入して失活させた。解析のため、OB3 13mRL L6を、ランニングバッファーに370μMを含む濃度から始めて、バッファーのみのブランクも含めた6段階濃度の1:2希釈系列に調整した。7つの試料それぞれを順不同に25μL/分にて1分間2回解析し、最初のフローセルを基準として使用した。BIAevaluation(Biacore)を使用して、反応曲線の可視化と処理を行った。Sigma Plot(Systat Software,Inc.)を使用して、各濃度における相対レスポンスを平均化し、プロットして、RmaxおよびkDを判定した。
OBフォールドドメインは特異的結合および酵素特性を有するタンパク質を作成するためにスキャフォールドとして使用できるかどうかを試験するために、提案した結合表面全体の変異に対する個々のOBフォールドドメインタンパク質の耐性を試験した。超好熱性クレンアーキアのPyrobaculum aerophilum(Tmax=104℃、Topt=100℃)由来の2つのOBフォールドドメインを選択した。この選択は、Pyrobaculum aerophilumゲノム(42)中のOBフォールドタンパク質の検索にSuperfamilyデータベース(バージョン1.65(46))を使用したデータベース検索にしたがって行った。このデータベースは、1294個のSCOPスーパーファミリー(SCOP:タンパク質の構造的分類)に区分された既知の構造を有するすべてのタンパク質のライブラリを使用して、隠れマルコフモデルを開発しており、次いでこれらモデルをプロファイルとして使用して、類似のフォールドを含む可能性があるタンパク質の配列決定ゲノムを検索した。この検索により、Pyrobaculum aerophilum IM2のゲノム由来の有力なOBフォールドドメインを含むタンパク質配列を表す14件がヒットした。
2つのOBフォールドドメインのランダム化のための残基を、それらの3次元構造に基づいて選択した。IF‐5Aの構造は利用可能である。SwissModel(38〜40)と大腸菌(36、37)およびPyrococcus kodakaraensis(35)由来の利用可能な構造とを構造鋳型として使用してモデリングを行うことにより、Pyrobaculum aerophilum由来のaspRSのOBフォールドの構造を作成した。
各OBフォールドドメインの所定の領域を扱うライブラリセットを構築した。aspRS‐OBフォールドドメインでは、βストランドを個別に、また互いを組み合わせて変異させた。野生型OBフォールドドメイン(すなわち、天然OBフォールドドメイン)および完全にランダム化したライブラリでは、ストランド4と5の間のループを個別にランダム化した。その結果、大きさが異なり、ランダム化位置の配置が異なる5つのライブラリが構築された(表3A〜3Bを参照)。
基本的にライブラリは、縮重コドンを所望の位置に有する合成オリゴヌクレオチドを組み込むオーバーラップ伸長PCRに基づいて構築した。まず、遺伝子全体をカバーし、オーバーラップ領域を含む遺伝子断片を通常のPCR法により作成した。ランダム化した断片は、ランダム化したコドンを含む対応するロングオリゴヌクレオチドを組み込むことによって作成した。等モル量のこれらの遺伝子断片を遺伝子フランキングプライマーと組み合わせて使用して、断片をPCRにより構築し、ランダム化した位置を組み込んだ完全長遺伝子を増幅した。種々の組み合わせの縮重オリゴヌクレオチドを使用して、結合表面の種々の部位にランダムな変異を含む複数のライブラリを作製した。aspRS‐OBでは、βシート上の残基W28、E29、R31、I33、R35、V36、F38、V40、R42、F47、Q49、T51、K53、およびループ領域の残基I85、A86、K87、S88に多様性を生じた。ライブラリRL(ランダム化したループ)は、βストランド4と5の間のループ領域に4つのランダム化した位置を含む。RLライブラリの理論上の多様性は、204=160000種類の変異体である。形質転換の後、ライブラリRLは約107個のクローンを含み、その内の94%が適切なサイズのインサートを有しており、ライブラリの多様性を完全にカバーした。13mRLの理論上の多様性は非常に高く、約5×1022種類の変異体である。形質転換の後、89%の適切なインサートを有する108個のクローンが得られた。配列決定した10個のクローンの内の8個が所望の変異配列を有していたが、2個のクローンには、ナンセンス翻訳をもたらすフレームシフトが認められた。13mRLライブラリでは、全体の多様性が約8×107種類の変異体と算出された。
いずれの天然OBフォールドドメインも大腸菌で良好に発現し(培養液の10〜20mg・l−1)、細胞溶解後に大部分は可溶性を有する。これらは、熱処理(85℃にて15分間)後も可溶性を維持し、Ni‐NTAビーズに定量的に結合する。OBフォールドライブラリをクローニングし、N末端をHis6タグで結合したタンパク質として発現させた。一連のタンパク質特性を記録して、タンパク質の安定性と構造的完全性を検討した。
ライブラリ作成用のスキャフォールドとしての、タンパク質ドメインの重要な基準は、選択されたディスプレイ系において機能的に提示される能力をもつことである。本明細書に開示する実験ではファージディスプレイを使用した。aspRS‐OB変異体の選択用としてのこの技術の実現性を評価するため、繊維状バクテリオファージM13の表面上にgIII融合体として提示させた組換え野生型aspRS‐OBを評価した。作成したファージ粒子内におけるpIII‐aspRS‐OB融合体の存在をウェスタンブロッティングで解析した。提示されたaspRS‐OBの機能的提示を、asp‐tRNAを標的リガンドとして使用するファージ結合アッセイで検討した。
asp‐tRNAでの選択
細菌性aspRSのアンチコドン結合ドメイン内のβシート4と5の間のループ領域は、tRNAへの結合にとってだけでなく、アンチコドン内の塩基の特異的認識にとって重要である(49)。そのため、asp‐tRNAは、aspRS‐OBライブラリの実現性をテストするのに好ましい標的であると考えられた。ライブラリaspRS‐OB RLを使用したが、これは、このライブラリが理論上の多様性の全範囲を含むため、tRNA標的と良好に結合することが予想された野生型aspRS‐OBフォールド配列のコピーを含むからである。たとえtRNAと結合する変異体がなかったとしても、少なくとも野生型はバイオパニングプロセスによって選択されるはずである。aspRS‐OB RL遺伝子ライブラリをすでに述べたように作成し、pRPSP2にクローニングして約107のクローンを得て、ファージ上に一価提示させた。4回のパニング後、入力ファージに対する出力ファージの割合が表すように著しい濃縮が観察され、これは、標的特異性結合ドメインの濃縮を示すものである(図9)。選択されたフラクションからクローンを無作為にピックアップし、シークエンシングを行った。配列は、asp‐tRNAと結合するための、ループ領域内の4個のアミノ酸のコンセンサスR/K G C Rを示した(図10)。シークエンシングを行った12のクローンのうち、5つがこのコンセンサスを完全に満たしており、残りの7つの内の3つは、4個のアミノ酸位置の3つが一致した。コンセンサス配列は野生型配列(IAKS)とは著しく異なり、新たなコンセンサス配列が、野生型ドメインと比べるとより強力にasp‐tRNAと結合することを示唆している。これは、モノクローナルファージ調製品を使用するファージ結合実験において確認され、この実験では、2つのクローンが野生型aspRS‐OBよりもasp‐tRNAに対して強い親和性を有していた(図16)。この実験では、対応する変異ドメインを提示するファージを固定化asp‐tRNAとともにインキュベートした。結合したファージは、RNaseAで特異的に溶出され、カウントされた。回収率Rを、[(出力/入力)B/(出力/入力)RNA]として算出し、式中、(出力/入力)は、回収されたファージ(出力)を入力されたファージの数で割った比を意味し、下付き文字‘B’はビーズのみを意味し、下付き文字‘RNA’は固定化asp‐tRNAを指す。aspRS‐OB変異体から得られたファージライブラリから、固定化asp‐tRNAに対する結合親和性が向上したコンセンサス配列を我々が濃縮したことを結果は示している(図10および11)。
別のタンパク質に結合する、ナイーブライブラリ由来のOBフォールド変異ドメインの選択の原理の証明を示すため、リゾチームを標的として選択した。ニワトリ卵白リゾチームは、販売されている安定した小さいタンパク質であり、多くの医学的に重要なヒトホモログを有する。固定化リゾチームでの4回のパニング後、結合したファージの濃縮が観察された。クローンを無作為にピックアップし、リゾチームに対する結合についてスクリーニングする前に、さらに2回のパニングを行った。次に、モノクローナルファージ試料を調製し、96ウェルのELISA用プレート上に固定化したリゾチームでの結合を特性化するために‘マイクロパニング’手法で検討を行った。結合したファージを溶出しカウントした。22のクローンのうち9つは、pIII、OB野生型、およびBSAバックグラウンドを上回る回収ファージ数を示した(クローンL4、L5、L6、L8、L14、L15、L16、L18、L21、図13)。これらのクローンのシークエンシングを行った。クローンのうちいくつかの配列は同一であったため(L14とL15、L4とL18、L8とL21)、ユニークなクローンの数は6つに絞り込まれた。この重複性は、濃縮によって、同一配列を有するクローンが試料中に高い割合で存在することを示していた。さらに2回のパニングを行い、さらなる6つのクローンの配列決定を行った(L32、L33、L34、L42、L43、L44)。3つの配列が前回のクローンと一致した(L32=L14=L15、L33=L8=L21=L43)が、L44は、βシート領域においてL5と同一であったが、ループ領域では異なるパターンを示した。L34およびL42は新たな配列であった。6回の後の選択されたプール中のクローンの数は非常に少なく、図12、パネルEに示す9つの配列によってかなりの程度がカバーされることが予想できる。クローンL14(L32、L15)、L8(L33、L21、L43)、L34、L4、L5、およびL6を、多価提示を使用するELISA手法での結合研究の対象とした(図14)。結果は、すべてのクローンがリゾチームに結合したが、aspRS‐OBの提示がない粒子(pIII)は結合しなかったことを示した。その他の陰性対照には野生型aspRS‐OB(OBwt)が含まれた。解析されたすべてのクローンのリゾチームへの結合数は、RNaseまたはBSAに対してのものより多く(ELISA実験でOD値がより高かった)、リゾチームに対する結合の特異性を示す。図11に示すように、クローンL6およびL33はtRNAに結合しなかった。
クローンL4(L18)、L5、L6、L16、およびL33(L21)を発現ベクターにサブクローニングし、‘プルダウン’アッセイでのリゾチーム結合の解析用にGST融合タンパク質として発現させた。図15A〜15Bに示すように、固定化した変異体はリゾチームと結合したが、非選択変異体13mRL81は結合しなかった。これは、選択された変異体のリゾチームへの結合を確認するものであった。L6のリゾチームへの結合を、異なるバッファーの存在下で研究した。図15Bは、500mMのNaClでの洗浄後に、L6がリゾチームと結合することを示す。クローンL6を発現させ、精製し、表面プラズモン共鳴(Biacore)を使用して固定化リゾチーム上での結合反応速度を解析した。結合定数は3.6×10−5Mと算出された(図16)。
ナイーブ標的asp‐tRNAでのファージ結合および選択実験は、M13ファージ上でのaspRS‐OBとその誘導体ライブラリの良好かつ機能的な提示を示した。小さいRLライブラリから、モノクローナルパニング実験において示されるように、野生型より高い親和性を有する変異体に相当するコンセンサス配列が得られた。得られたコンセンサス配列R/K G C Rは野生型配列とは異なり、2つの正に帯電したアミノ酸を含んでおり、負に帯電するRNA骨格への結合を示唆する。このループ領域内のグリシンの存在によってループの柔軟性が確保されている可能性があるが、システインの機能は未だに明らかでない。
ニワトリ卵白リゾチームで13mRLライブラリの選択を行った。複数回のパニング後、多数のクローンを単離し、配列と標的分子への結合について解析した。プレスクリーニング段階での22のクローンのうち、ファージELISA実験において、最終的に6つがリゾチームに対する検出可能な結合を示した。14のクローンの配列試験で、2つが2回、また、1つは4回も検出されたことが明らかになった。これは、選択されたフラクションに存在する異なるクローンの数が適度に少ないことを示唆する。9つの異なるクローンの配列は、それらの組成における類似性を示していた。少数の位置はいくつかの興味深い類似性を示しており、例えば9つのうち6つのクローンで29番は酸性の残基(DまたはE)であり、9つの配列のうち5つで31番はバリンであり、35番には正に帯電した残基が4つのクローンで現れ、5例において38番は芳香族残基(Y、F、W)であり、さらに、5つのクローンで85番はグリシンである。また、βストランド3では、ETETおよびPETEという目を引くパターンがクローンL16およびL34に存在し、βストランド1では、D V/L A/LがL32、L2、L6、L5、L44に存在する。さらに目を引くのは、βシートにおけるL5とL44の同一性であるが、ループ領域は異なる。L6を除くすべての変異体にシステインは存在しない。しかし、より明確なコンセンサス配列は得られず、これはおそらく非常に大きなライブラリの範囲が狭いことと、得られた配列の少なさに起因する。複数のクローンをGST融合タンパク質として発現、精製し、プルダウン実験で解析すると、リゾチームへのクローンの結合が示された。クローンL6は、500mMの塩化ナトリウムの存在下であっても結合し、妥当な親和性の結合を示した。クローンL6を発現、精製し、結合の反応速度および熱力学を表面プラズモン共鳴によって解析したところ、約3.6×10−5MのKdを示した。このナイーブライブラリのサイズの小ささと組成を考慮すると、μMレンジの結合定数は非常に重要な結果であり、アフィニティーマチュレーション工程による最適化に対して優れた出発点を提供する。
GATEWAY(Invitrogen)を使用して、L8をpDONR221にクローニングした後、発現ベクターpDEST15にサブクローニングし、これをBL21(DE3)大腸菌細胞に形質転換した。これらの細胞を、500mLの自動誘導培地に播種し、2L容量のバッフル付きフラスコ内で37℃にて振盪した。GSHアフィニティーカラム(GE Biosciences)を使用して、細菌溶解物から融合タンパク質GST‐L8を精製し、rTEVプロテアーゼを使用してGSTタグを取り除き、サイズ排除クロマトグラフィー(S75 16/60分取用、GE Biosciences)によりL8から分離した。次に、溶液中での単分散を向上させるため、再びサイズ排除(S75 10/300分析用、GE Biosciences)により、L8の3回目の精製を行った。
付表II
各種Obodyのアミノ酸配列。配列のナンバリングは、図10および図12のナンバリングと一致する。
Claims (23)
- 天然に存在するOBフォールドドメインから取得可能な単離された改変OBフォールドドメインであって、該改変OBフォールドドメインは、
(a)該天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、該OBフォールドドメイン結合表面のβストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、または
(b)該OBフォールドドメイン結合表面のβストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、および該OBフォールドドメインループ領域のストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基、または
(c)該OBフォールドドメインループ領域のストランド内の少なくとも1つの改変アミノ酸残基
を含み、該改変OBフォールドドメインが、該天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、変化した結合特性を有する、
改変OBフォールドドメイン。 - 前記ドメインが、前記天然に存在するOBフォールドドメインとは異なる結合パートナーに特異的に結合するか、またはその天然に存在する結合パートナーとの改変された結合を有する、請求項1に記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記天然に存在するOBフォールドドメインが、ブドウ球菌ヌクレアーゼタンパク質、細菌性エンテロトキシン、TIMP様タンパク質、ヘムシャペロンCcmEタンパク質、尾結合リゾチームgp5、N末端ドメインタンパク質、核酸結合タンパク質、無機ピロホスファターゼ、Mop様タンパク質、CheW様タンパク質、tRNA_anti(OBフォールド核酸結合ドメイン)、Telo_bind(テロメア結合タンパク質αサブユニット、中心ドメイン)、SSB(一本鎖結合タンパク質ファミリーのOBフォールドドメイン)、DUF338のOBフォールドドメイン、DNA_ligase_aden(NAD依存性DNAリガーゼOBフォールドドメイン)、Stap‐Strp毒素(ブドウ球菌/連鎖球菌毒素、OBフォールドドメイン)、EIF‐5a(真核生物開始因子5A Hypusine、DNA結合OBフォールドドメイン)、GP5_OB(GP5 N末端OBフォールドドメイン)、CSD、DNA_ligase_OB、DUF388、EFP、eIF‐1a、mRNA_cap_C、OB_RNB、Phage_DNA_bind、Rep‐A_N、Rho_RNA_bind、Ribosomal_L2、Ribosomal_S12、Ribosomal_S17、RNA_pol_Rpb8、RuvA_N、S1、TOBE、TOBE_2、およびtRNA_bindからなる群から選択されるタンパク質またはタンパク質クラス内に存在する、請求項1または請求項2の改変OBフォールドドメイン。
- 前記天然に存在するOBフォールドドメインが好熱性生物に由来する、請求項1または請求項2に記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記好熱性生物がPyrobaculum aerophilumである、請求項4に記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記改変アミノ酸残基が、フォールド関連結合表面のβストランド内に存在する、請求項1〜5のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記改変OBフォールドドメインの前記結合パートナーが、核酸、オリゴ糖、タンパク質、ホルモン、および有機小分子からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインを取得する方法であって、
a)天然に存在するOBフォールドドメインをコードする核酸あるいは結合表面のストランドおよび/またはループのストランドを含む天然に存在するOBフォールドドメインの一部分をコードする核酸を取得する工程と、
b)該天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、該結合表面のβストランド上の少なくとも1つの改変アミノ酸残基および/またはループのストランド上の少なくとも1つの改変アミノ酸をコードするように該核酸を変化させる工程であって、ここで、改変OBフォールドドメインが得られ、該改変OBフォールドドメインが、該天然に存在するOBフォールドドメインと比較して、変化した結合を有する、工程と、
を含む、方法。 - 前記改変OBフォールドドメインをコードする核酸を変化させる工程、および/または該改変OBフォールドドメインを含むタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸をコードする核酸を変化させる工程もさらに含む、請求項8に記載の方法。
- ディスプレイのための改変OBフォールドドメインタンパク質のライブラリを作製する方法であって、
a)OBフォールドドメインまたはその一部分をコードする核酸を取得する工程と、
b)該核酸をランダムな変化に供することにより、少なくとも1つのランダム化したアミノ酸残基を有する改変OBフォールドドメインをコードする変化させた核酸の集合体を生成する工程と、
を含む、方法。 - 前記核酸が、前記OBフォールドドメイン結合表面のストランドおよび/またはOBフォールドドメインのループのストランドの少なくとも1つのアミノ酸残基をコードする、請求項10に記載の方法。
- 改変OBフォールドドメインをコードする変化させた核酸の前記ライブラリを、前記改変OBフォールドドメインをその表面に提示し得る宿主細胞の集団に導入する工程もさらに含む、請求項10または請求項11に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする、単離された核酸。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、宿主細胞。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、ファージ。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインをコードする核酸を含む、組成物。
- 改変OBフォールドドメインのライブラリを、結合パートナーとの結合についてスクリーニングする方法であって、
a)改変OBフォールドドメインのライブラリをその表面に提示する宿主細胞またはウイルス粒子の集団を取得する工程と、
b)該改変OBフォールドドメインと該結合パートナーとの結合に適した条件下で、該宿主細胞またはウイルス粒子の集団を該結合パートナーと接触させる工程と、
c)該結合パートナーと該改変OBフォールドドメインとの結合を決定する工程と、
を含む、方法。 - 前記宿主細胞またはウイルス粒子が、前記改変OBフォールドドメインをその表面に提示するファージである、請求項17に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメインのファージライブラリであって、該改変OBフォールドドメインがPyrobaculum aerophilumから取得可能である、ファージライブラリ。
- 細胞またはウイルス粒子の表面に提示される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記細胞またはウイルス粒子が、ファージ、細菌、または酵母である、請求項20に記載の改変OBフォールドドメイン。
- 固体支持体に結合した、請求項1〜7のいずれかに記載の改変OBフォールドドメイン。
- 前記支持体が、ビーズ、ガラス、スライド、チップ、およびゼラチンからなる群から選択される、請求項23に記載の改変OBフォールドドメイン。
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