本発明に係る連結クリップパッケージおよびクリップ装填方法を、添付の図面に示す好適実施例に基づいて、以下に詳細に説明する。
図1(A)および(B)は、本発明の連発式クリップ処置具の第1実施形態を示す模式的断面図であり、図1(B)は、図1(A)と90度異なる角度から見た図である。
図1に示すクリップ処置具10は、クリップを連続して使用できる連発式のクリップ処置具であり、複数のクリップ12(12A、12B、12C、12D、12E)と、最後尾のクリップ12Dに接続されたダミークリップ18と、接続部材19を介してダミークリップ18に接続された操作ワイヤ20と、隣り合うクリップ12の係合部を覆ってクリップ12の連結状態を維持する連結リング14(14A、14B、14C、14D、14E)とを有し、これらがシース16内に嵌入されている。図1(A)および(B)は、先頭のクリップ12によるクリップ処置動作開始直前の初期状態を示している。
1つのクリップ12と1つの連結リング14は、1つの内視鏡用止血クリップ体を構成し、クリップ処置具10は、この止血クリップ体が長尺なシース16の先端内部に複数装填されたものである。連続する止血クリップ体の終端は、ダミークリップ18に噛み合い結合し、操作ワイヤ20は、シース16の基端部まで延びて、後述する操作部につながっている。操作部から操作ワイヤ20を所定の長さだけ牽引し、ダミークリップ18を一方向に所定長さ移動させることで、一連のクリップ12が同量だけ移動し、先頭のクリップ12がそれを保持する連結リング14によって締め付けられて、先頭のクリップ12による止血やマーキング等のためのクリップ処置(クリッピング)が行われる。先頭のクリップ12によるクリップ処置が完了した後、シース16を操作部側へ所定の長さだけ引くことで、次のクリップ12が使用可能な状態(スタンバイ状態)となり、続けてクリップ処置を行うことができる。
図1(A)および(B)は、先頭のクリップ12Aがシース16の先端から突出した状態の図としてあるが、クリップ12等をシース16へ装填するときは、後述する図5(A)に示すように、先頭のクリップ12Aがシース16の内部に完全に納まった状態でセットされる。また、図1ではクリップ12を5つとし、5連発式のクリップ処置具としてあるが、クリップ12の数は、2つ以上いくつであってもよい。
図2は、クリップ12の斜視図である。クリップ12は、爪部22に対して180度ターンしたターン部24を有するクローズクリップである。すなわち、クリップ12は、一枚の長細い板を180度湾曲させて閉塞端を作った後、その両片を交差させ、かつ、2つの開放端に、端部が対向するように屈曲させて爪部22,22を形成した形状をしている。この交差部26を境にして、開放端側が腕部28,28であり、閉塞端側がターン部24である。腕部28,28の中央部分には、部分的に広幅とされた凸部30,30が形成されている。クリップ12には、生体適合性のある金属を用いることができ、例えば、ばね用ステンレス鋼であるSUS631を用いることができる。
クリップ12は、その交差部26に嵌められた連結リング14の先端部分(後述する締付部40)が、腕部28,28を押圧しながら爪部22,22の方へ向かって所定量移動することにより、その腕部28,28および爪部22,22が閉じ、爪部22,22において所定の嵌合力、例えば0.62Nを発揮する。
爪部22,22は、対象部を確実に摘むために、V字のオス型とメス型に形成されている。また、図2に示すように、クリップ12の腕部28は、交差部26から凸部30に掛けて徐々に幅が広くなっている。
凸部30は、連結リング14の先端側の開口および基端側の開口の、凸部30が当接する部分よりも広い幅とされている。したがって、クリップ12の凸部30以外の部分は、連結リング14の内部に侵入できるが、凸部30は、連結リング14の先端側からも基端側からも、その内部に侵入できない。
図1(A)および(B)に示すように、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、第2クリップ12Bの爪部22が第1クリップ12Aのターン部24に係合して閉じた状態で連結リング14Aに保持されることで、連結状態とされる。図1(A)に示すように、第2クリップ12Bの爪部22,22は、第1クリップ12Aのターン部24に直交方向に噛みあって結合し、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、90度異なる向きで連結される。同様に、以下の各クリップ12C、12D、12Eは、90度ずつ交互に向きを変えて連結される。
連結リング14は、2つのクリップ12,12の係合部を覆って連結状態を維持しつつ、シース16に進退可能に嵌入されている。すなわち、連結リング14は、外径がシース16の内径とほぼ等しく、クリップ12の移動に伴ってシース16内をスムーズに進退移動することができる。図3(A)〜(C)に、連結リング14の概略構成を示す。図3(A)は、連結リング14の正面図、図3(B)は断面図、図3(C)は、底面図である。
連結リング14は、締付部40と保持部42とから成る。連結リング14は、樹脂製の保持部42の先端に、金属製の締付部40を固定し、2部材で一体構造とされている。樹脂製の保持部42が連結状態の維持およびクリップの連結リング内での保持を担当し、金属製の締付部40がクリップの締め付けを担当する。なお、連結リング14は、締付部40および保持部42の両機能を発揮できれば、1部材で形成してもよい。
締付部40は、連結リング14の先端側に取り付けられた金属製の円筒状(リング状)の部品であり、クリップ12の交差部26近傍の幅よりも大きく、凸部30の幅よりも小さい内径の穴が形成されている。したがって、締付部40は、保持するクリップ12の交差部26の近傍を移動することができるが、凸部30を超えて先端側へは抜けられない。すなわち凸部30が、クリップ12に対して前進する連結リング14の移動限界を決めるストッパーとして機能する。
締付部40は、クリップ12の交差部26の近傍の所定位置にセットされる。締付部40は、その初期位置から、クリップ12の腕部28が幅広になる、交差部26から凸部30の側へ移動することで、拡開しているクリップ12の両方の腕部28,28を閉じさせて固定する締め付け機能を有している。締付部40には、生体適合性のある金属が用いられ、例えばステンレス鋼SUS304を用いることができる。締付部40を金属製としたことで、金属製のクリップ12に対して締付力となる摩擦力を発揮させることができる。
保持部42は、樹脂成形された概略円筒状(リング状)の部品である。保持部42は、先のクリップ12を保持する第1領域32と、先のクリップに連結した状態で次のクリップ12を保持する連結保持領域である第2領域34とを有している。
第1領域32には、クリップ12のターン部24を収容可能な、締付部40の穴よりも大きな円形の穴が形成されている。第1領域32の先端部の外面には、締付部40を嵌めるための段付き部が形成されており、締付部40と保持部42とは、シース16に装填された状態およびクリッピング操作時において外れない程度の締まり嵌めで嵌め合わされている。また、第1領域32は、連結リング14本体の軸に対してスカート状に傾斜して広がるスカート部38を有している。
スカート部38は、先端側、すなわち図3における上方の付け根が保持部42の本体につながっており、下方の広がり部分が、本体から一部切り離されて、半径方向に広がったり閉じたりするようになっている。スカート部38は、クリップ12の牽引方向、すなわち図3の上下方向において同じ位置に、180度離れた2箇所に形成されている。
スカート部38,38は、外力が付与されない自然状態では、図3(A)に示すように、スカート状に広がる。このとき、保持部42の第1領域32の内部は、図3(B)に示すように、円柱状の空間となっている。一方、連結リング14がシース16内へ装填されるときは、例えば、図1(B)の2つめの連結リング14Bに示すように、スカート部38が内側に押し込まれて内部空間へ入り込み、スカート部38の内周側の部分が、第1領域32に保持されるクリップ12Bのターン部24の側面(エッジ部)を押圧して、クリップ12Bが連結リング14B内で回転方向および進退方向に移動しないように保持する。なお、スカート部38が、第2領域34に保持されるクリップ、すなわち後ろ側のクリップを押圧して保持するようにしてもよい。
スカート部38,38は、図1(A)の1つめの連結リング14Aに示すように、シース16の先端から抜け出ると同時に、それ自体の弾性によって開き、クリップ12Aの保持を解除するとともに、シース16の内径よりも広幅となって、連結リング14Aのシース16内への後退を阻止する。この状態で操作ワイヤ20が引かれ、クリップ12Aが後退することで、連結リング14Aがクリップ12Aに対して相対的に前進し、クリップ12Aを締め付ける。
したがって、スカート部38は、シース16の内部では内側へ閉じることができ、シース16の先端から出て外力から解放されるとスカート状に広がるように、弾性を有していることが必要である。それとともに、スカート部38は、シース16の内部でクリップ12を保持できる剛性と、シース16の先端でクリップ12の締付力の反力に耐える剛性とを有していることも必要である。
これらの観点から、保持部42には、生体適合性があり、かつ、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たす材料が用いられる。また、その形状は、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たすように定められる。このような保持部42の材料としては、例えば、PPSU(ポリフェニルサルホン、polyphenylsulfone)を用いることができる。製造の容易さから、保持部42は、一体成形されるのが好ましい。
第2領域34は、第1領域32の基端側に設けられており、第1領域32に保持されるクリップ12に係合する次のクリップ12を、その爪部22,22が先のクリップ12のターン部24の閉塞端(尾部)を挟んで閉じた状態で保持する。
第2領域34は、領域長さとして、クリップ12に対して初期位置にセットされた締付部40が、クリップ12の締め付けを完了するまでに要する移動長さとほぼ等しい長さを有している。すなわち、連結リング14の第2領域34は、クリップ12が連結リング14に対して相対的に後退して締め付けられていく間、その内部に保持する2つのクリップ12,12の連結を保持して、後ろのクリップ12の牽引力が先端のクリップ12へ伝達されるようにするとともに、締め付けが完了したときには、2つのクリップ12,12の係合部が第2領域34から外れることにより、そのクリップ12,12の連結を解除する。
第2領域34には、図3(C)に示すように、第1領域32の基端側部分と同じ内径の穴43が形成され、さらに、その対向する2箇所に、溝(凹部)43aが形成されている。溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28を、爪部22,22が閉じた状態で収容可能である。また、第2領域34には、図3(A)〜(C)に示すように、その基端から切り込むスリット44が2箇所に形成されている。
溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22の開閉方向(図3中、左右方向)の2箇所に設けられている。第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28の板面は、溝43a,43aの内壁に当接する。溝43aの幅(開口幅)は、クリップ12の腕部28の最大幅よりわずかに大きく、一方の溝43aの壁面から他方の溝43aの壁面までの距離は、クリップ12の2つの爪部22,22の長さ(拡開方向の長さ)を足し合わせた長さにほぼ等しい。また、溝43aの幅は、腕部28に形成された凸部30の幅よりは小さい。したがって、第2領域34に保持されるクリップ12の凸部30は、溝43aに進入できない。
なお、両溝43a,43aの壁面から壁面までの距離は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が外れない寸法にすればよく、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも短くすればよい。
例えば、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22,22は、少し重なった状態となっていてもよいし、爪部22,22の間にわずかな隙間がある状態で、先のクリップ12との連結が維持されるようにしてもよい。
2つのクリップ12,12の係合部は、第2領域34の、第1領域32との境目に近接する部分に保持される。先のクリップ12(例えば、図1(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12B)は、シース16の内部においては、ターン部24が第1領域32の閉じたスカート部38によって保持されているので、進退移動および回転移動が抑えられている。また、先のクリップ12に係合する次のクリップ12(例えば、図1(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12C)は、第2領域34の溝43aによって先のクリップと90度異なる方向に保持されることにより、回転移動が抑えられ、進退移動が抑えられた先のクリップに係合することにより、進退移動が抑えられている。すなわち、前後のクリップの係合部は、遊びが非常に小さい状態で、連結リング14によって保持される。
スリット44は、スカート部38,38から90度ずれた2箇所に、第2領域34の上端よりも浅い位置まで形成されている。言い換えれば、スリット44は、第2領域34に保持されるクリップ12の拡開方向から90度ずれた位置に設けられている。
スリット44を設けることにより、連結リング14のフレキシブル性を向上させることができ、クリップ処置具10は、曲率の小さい湾曲部を通過することができる。また、スリットを設けることにより、連結リング14の裾(基端部)が一部めくれるようになるため、シース16へのクリップ12の装填前に前後のクリップ12,12を連結させる際に、連結リング14の裾をめくることで容易に連結させることができるという利点もある。
スリット44の深さは、スカート部38よりも浅い位置までとされており、連結リング14の強度が大幅に低下するのが防止されている。また、スリット44の深さは、第1領域32に保持されるクリップ12の後端の位置、すなわちクリップ12,12の係合位置よりも浅い位置までとされており、シース16に装填される前の連結クリップユニットにおいても、連結リング14の第2領域34におけるクリップ12の保持を保つことができる。
図1に示すように、第1クリップ12Aのターン部24に第2クリップ12Bの爪部22,22が係合し、その係合部を連結リング14Aが保持する。連結リング14A(その第2領域34)の内壁によって、第2クリップ12Bの爪部22,22は閉じた状態に保持されている。それにより、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bの連結状態が維持される。同様に、第2クリップ12Bと第3クリップ12Cとの連結状態は、連結リング14Bによって、第3クリップ12Cと第4クリップ12Dとの連結状態は、連結リング14Cによって、第4クリップ12Dと第5クリップ12Eとの連結状態は、連結リング14Dによって、第5クリップ12Eとダミークリップ18との連結状態は、連結リング14Eによって維持される。
最後尾のクリップ12Eには、クリップ処置には用いられないダミークリップ18が係合している。ダミークリップ18は、先端部に、クリップ12の交差部26から開放端側半分の部分と類似の形状をしたバネ性を持つ部分を有しており、爪部を閉じた状態でクリップ12Eのターン部に係合し、爪部を開くとクリップ12Eを開放する。ダミークリップ18の基端部には接続部材19があり、この接続部材19に操作ワイヤ20が接続されている。
接続部材19(ダミークリップ18の後端部)と操作ワイヤ20の先端は、着脱可能であり、かつ、操作ワイヤ20の進退移動によっては外れない構成となっていればよく、その構成は特に限定されない。
シース16は、例えば、金属ワイヤを密着巻きした可撓性のコイルシースである。シース16の内径は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が解除される寸法とされている。すなわち、シース16の内径は、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも大きい。
操作ワイヤ20およびシース16の基端は、操作部に取り付けられている。図4は、操作部の概略構成を示す部分断面図であり、図4(A)は平面図、図4(B)は正面図である。図4(A)および(B)において、左側がクリップ処置具10に接続する先端側、右側が後端側(または基端側)である。
操作部50は、操作部の筒状本体であるワイヤ操作ハンドル52と、シース操作子であるシース操作ハンドル54とを有している。操作部50は、操作ワイヤ20を牽引によるクリップ処置操作、および、シース16の牽引によるクリップの初期状態へのセットを行う。
ワイヤ操作ハンドル52は、円筒状のケース58と、ケース58の先端に軸を一致させて固定された位置決めパイプ56と、ケース58の内部に保持されたレバー60およびスプリング62とを有している。
レバー60は、ケース58の内部において、前後方向(ワイヤ操作ハンドル52の軸方向)に移動可能に保持されている。レバー60の後端側の一部は、ケース58の中央部分に設けられた貫通窓59に現れており、操作者が指を掛けてレバー60を後端側に引けるようになっている。レバー60の後端にはスプリング62が取り付けられている。スプリング62は、レバー60が後方へ引かれることによって圧縮され、レバー60を引く力が解除されると、反発力によってレバー60を前方へ押し戻す。それにより、レバー60は元の位置(ホームポジション)へ戻る。
レバー60の後方への移動限界は、貫通窓59によって規定される。すなわち、レバー60の指が掛かる面60aが、貫通窓59の後端に一致する位置が、レバー60の移動限界である。なお、レバー60の後方に規制板を設け、レバー60の後端がその規制板に当たることにより、レバー60の後方への移動限界を規定するようにしてもよい。
一方、レバー60の前方には、規制板61が設けられており、レバー60のホームポジションを規定している。レバー60は、スプリング62に付勢されて前方へ移動し、規制板61に当たって停止してホームポジションに戻る。
このように、レバー60は、ホームポジションから後方への移動限界までの一定量だけを前後方向に移動できる。
なお、図4では、スプリング62をコイルスプリングとして示しているが、スプリング62は、レバー60を前方へ付勢できればよく、板ばねやその他の弾性体を用いても良い。
レバー60の先端には、クリップ12を牽引するための操作ワイヤ20が、回転自在に、かつ前後方向へは固定的に保持されている。例えば、操作ワイヤ20の後端部は、その周方向は、滑り性の良い部材やベアリング機構等により、レバー60に対して回転可能に保持され、レバー60を後方に引くときはレバー60と一体的に動くように保持される。
操作ワイヤ20は、シース操作ハンドル54および位置決めパイプ56の内部を通過して、レバー60に到達している。
操作者が貫通窓59に指を挿入してレバー60を引くことで、レバー60が後方へ移動すると、レバー60の先端に取り付けられた操作ワイヤ20も同様に移動して、操作ワイヤ20の先端が後方へ移動する。また、レバー60を引く力が解除されてレバー60が元の位置に戻ると、操作ワイヤ20も同様に移動して、その先端が元の位置に戻る。
操作ワイヤ20の先端は、クリップ12に接続されており、クリップ12が軸周りに回転したときは操作ワイヤ20も回転するが、レバー60は、操作ワイヤ20の後端部を回転自在に保持しているので、操作ワイヤ20がねじれのストレスを蓄積するのを防止できる。
なお、クリップ処置における操作ワイヤ20の牽引量は、例えば3.1mmなどの非常に小さい量なので、操作部50における確かな操作感覚を与えるために、操作ワイヤ20の牽引量とレバー60の操作量との間に、操作ワイヤ20の牽引量の変倍機構を設けて、レバー60の移動量を、操作ワイヤ20の移動量の所定倍としてもよい。
位置決めパイプ56は、中空のパイプ状の部材であり、その中を操作ワイヤ20が通過する。また、位置決めパイプ56の内径はシース16の外径よりも大きく、位置決めパイプ56の内部にシース16を挿入可能である。位置決めパイプ56の先端部は、シース操作ハンドル54の中に挿入され、その先端部に抜け止めリング64が取り付けられている。抜け止めリング64の中心部には、図4(A)に示すように、シース16の外径よりわずかに大きい穴が形成されており、抜け止めリング64は、シース16を軸線方向に移動可能に保持する。
位置決めパイプ56の表面には、図4(B)に示すように、螺旋状の案内溝67が形成されている。案内溝67は、先端側から最初の長さLの区間に、軸線に平行な経路を有し、それより後端側の部分に、軸線方向に長さL移動する毎に、周方向の同じ向きに90度回転する螺旋状の経路を有している。また、案内溝67には、軸線方向に所定の間隔Lで複数の窪み(凹部)66が形成されている。隣り合う窪み66は、先端側から1番目と2番目の窪み66を除き、周方向に90度ずつずれている。窪み66は、クリップ12の連発数に対応する数以上が設けられている。図4の例では、6つの窪み66が設けられており、5連発のクリップに対応可能である。
シース操作ハンドル54は、後端が解放された円筒状のケース68と、支持ブロック70と、シース保持リング72と、ボール76を保持するボール保持部材74と、カバーケース78とを有している。
支持ブロック70は、シース操作ハンドル54の後端部分(図示例では、ボール保持部材74の先端側)に配置されており、シース操作ハンドル54に挿入された位置決めパイプ56を、摺動可能に支持する。また、支持ブロック70は、図4(B)に示すように、その先端側の面が、位置決めパイプ56の先端に取り付けられた抜け止めリング64に当接して、位置決めパイプ56がシース操作ハンドル54から抜けるのを防止する。
シース保持リング72は、ケース68の先端の、シース操作ハンドル54の軸線上に設けられており、シース操作ハンドル54に挿入されたシース16の外周を固定的に保持する。したがって、シース操作ハンドル54が軸線方向または周方向に移動すると、シース16も共に移動する。
ボール保持部材74は、内径が位置決めパイプ56の外径よりも大きいリング状の部品であり、ケース68の後端部分に固定されている。ボール保持部材74は、1つのボール76を、その一部がボール保持部材74の内周面から突出した状態で保持している。ボール76は、ボール保持部材74に保持された状態で回転可能である。
ボール保持部材74には、位置決めパイプ56が挿通されており、ボール76が位置決めパイプ56の案内溝67に係合している。
また、ボール保持部材74は、ボール76を内周側へ付勢する手段(図示しない)を備えている。この付勢手段としては、ボール76とボール保持部材74との間に設けたバネや高弾性部材などを用いることができる。
なお、ボール76は、位置決めパイプ56の案内溝67との摩擦が小さければ、回転可能でなくてもよいし、ボール保持部材74およびボール76に代えて凸状部材を用いてもよい。
カバーケース78は、ケース68の外側を覆い、ケース68の先端と後端に接触している。ケース68とカバーケース78との接触面は、低摩擦面とされており、ケース68は、先端と後端がカバーケース78に接触した状態で、カバーケース78に対して回転移動することができる。また、ケース68は、先端と後端がカバーケース78に保持されているので、カバーケース78が軸方向に移動すると、それと一緒に軸方向に移動する。
シース操作ハンドル54のカバーケース78が、操作者によってワイヤ操作ハンドル52の方に引き寄せられると、カバーケース78に保持されるケース68も、軸方向にワイヤ操作ハンドル52の側へ移動する。ここで、ボール保持部材74に保持されるボール76の突出部分(凸部)が、位置決めパイプ56の案内溝67に係合しているので、案内溝67が軸方向の長さLだけ移動する毎に周方向に90度回転移動する経路となっている部分では、ケース68が軸方向に移動するとき、ボール76が案内溝67に案内されることによって、ケース68は、周方向にも移動する。それにより、シース保持リング72によってケース68に固定的に保持されたシース16が、軸方向の長さLだけ移動する毎に周方向に90度回転する。
このように、カバーケース78を軸方向に移動させることによって、シース16を軸方向に移動させると同時に回転させることができる。
なお、カバーケース78に代えて、ケース68の外面に、ケース68に対して軸周りに回転自在なフランジ状の部品を設け、そのフランジ部を軸方向に移動させることにより、カバーケース78を軸方向および回転方向に移動させるようにしてもよい。また、カバーケース78を設けずに、操作者がケース68を捻りながら、あるいは、ケース68を後方へ引くときにケース68が回転するのに任せながら、シース操作ハンドル54をワイヤ操作ハンドル52の側へ移動させるようにしてもよい。
ボール76は、図示しない付勢手段によって内周側に付勢されているので、案内溝67の窪み66以外の部分では、案内溝67に向けてわずかに押圧されている。窪み66は、ボール76が嵌る(引っ掛かる)大きさとされており、案内溝67を付勢されながら移動するボール76は、窪み66に嵌ると、その前後への移動の抵抗が大きくなって、ワイヤ操作ハンドル52に対するシース操作ハンドル54の動きを規制する。
したがって、シース操作ハンドル54およびシース16は、軸方向に長さLだけ移動する毎に、周方向に90度回転し、その位置で一旦停止する。その後、カバーケース78がさらに引き寄せられることによって、ボール76に窪み66から乗り上げるだけの力が掛かると、ボール76が次の窪み66まで案内溝67に沿って移動する。それにより、シース操作ハンドル54およびシース16が、さらに軸方向に長さLだけ移動し、かつ周方向に90度回転する。
このように、シース16は、案内溝67における窪み66の軸方向の間隔Lを1ストロークとして、その1ストロークの長さ単位Lで移動できる。このLは、例えば15.5mmである。そして、1ストロークの移動の間に軸周りに90度回転する。
シース操作ハンドル54の移動に伴ってシース16が移動すると、シース16の基端は、抜け止めリング64の穴を進んで、位置決めパイプ56の内部に侵入する。
次に、連発式のクリップ処置具10の作用について、図5を参照して説明する。図5(A)〜(E)は、クリップ処置具10のクリップ処置動作時における段階的な状態を示す部分断面図である。
まず、図5(A)に示すように、シース16にクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eからなる5つの止血クリップ体(以下単にクリップ体という。)が装填された後、シース16が内視鏡の鉗子チャンネルに挿入される。図示例では、図5(A)に示すように、クリップ12Aの先端がシース16の先端にほぼ一致している。
先頭のクリップ12Aは、シース16の内壁によって閉じた状態に保持される。各連結リング14A〜14Eは、その締付部40がクリップ12A〜12Eの交差部26の近傍の初期位置に来るように嵌め込まれている。このとき、クリップ12B〜12Eの凸部30の上端が、それぞれ、連結リング14A〜14Dの直下に位置する。
シース16の先端が、生体内に挿入された内視鏡の挿入部の先端まで到達し、内視鏡先端から突出すると、図4に示した操作部50において、シース操作ハンドル54のボール76が1番目の窪み66から2番目の窪み66へ、軸方向に長さLだけ移動するように、シース操作ハンドル54(そのカバーケース78)が引かれる。シース操作ハンドル54のケース68にはシース16が固定されているので、シース操作ハンドル54の移動量Lと同じ量Lだけシース16が後退する。このとき、操作ワイヤ20は移動せず、したがって、操作ワイヤ20に接続されたクリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18等は軸方向には移動せず、シース16のみが操作部側に引かれる。
1番目の窪み66から2番目の窪み66までの案内溝67は、操作部50の軸方向、すなわちシース16の牽引方向に平行なので、ボール76が1番目の窪み66から2番目の窪み66へ移動しても、ケース68は回転しない。したがって、ケース68に固定されているシース16は回転しない。
シース16が1番目の窪み66と2番目の窪み66の間隔に対応する所定量Lだけ引っ張られると、シース16の先端が、先頭の連結リング14Aのスカート部38が開く位置まで下がり、シース16から突出したクリップ12Aの爪部22,22は付勢力によって広がって、図5(B)の状態となる。これにより、1発目のクリップ12Aが使用可能な状態となる。なお、図5(B)では、連結リング14Aのスカート部38は紙面垂直方向にあるため、図に表れていない。
クリップ12Aとクリップ12Bの結合部は、連結リング14Aのスカート部38の直下に位置しているため、図5(B)の状態のとき、クリップ12Bの先端が、シース16の先端にほぼ一致している。
シース16を引くとき、シース16とシース16に嵌入されている連結リング14A〜14Eとの間に摩擦力が働く。しかし、連結リング14A〜14Eとクリップ12A〜12Eとの間には、閉じたスカート部38の内側部分によるクリップ12の押圧力、および、後ろ側のクリップ12の爪部22が開こうとするバネ力による連結リング14(その第2領域34、図3参照。)の内壁面への押圧力が働いている。さらに、クリップ12B〜12Eの凸部30が連結リング14A〜14Dの基端に当接し、連結リング14の穴43(図3参照)には進入できない。そのため、シース16を引いても連結リング14A〜14Eは不要に移動することがない。したがって、連結リング14A〜14Eは、それぞれ、クリップ12A〜12Eを保持した状態を維持することができる。
次に、図5(B)の状態のクリップ処置具10を移動させて、拡開したクリップ12Aの爪部22,22をクリップ処置したい部位に押し付けて、操作部50(図4参照)のレバー60を引くことにより、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。操作ワイヤ20を引くことで、ダミークリップ18から順に係合している全クリップ12A〜12Eが、一様に引っ張られる。
このとき、図5(B)および(C)の状態では、シース16の先端に出た連結リング14Aは、スカート部38が開いており、スカート部38によるクリップ12Aの押圧保持は解除されている。また、連結リング14Aは、スカート部38がシース16先端で開いていることにより、シース16内への後退が阻止されている。そのため、図5(C)に示すように、先頭のクリップ12Aは連結リング14Aに対して後退する。連結リング14Aの先端、すなわち締付部40が、クリップ12Aの凸部30の直下まで押し込まれることにより、連結リング14Aによるクリップ12Aの締め付けが完了する。
それと同時に、クリップ12Aと次のクリップ12Bとの係合部が連結リング14Aの後端から抜け出る。クリップ12Aとクリップ12Bの係合部が連結リング14Aから外れると、クリップ12Bのバネ力によって腕部28がシース16の内壁に当たるまで拡開し、爪部22,22の間がクリップ12Aのターン部24の幅よりも広く開いて、クリップ12Aとクリップ12Bとの連結が解除される。それにより、クリップ12Aおよび連結リング14Aは、シース16から離脱可能となり、クリップ12Aおよび連結リング14Aによるクリップ処置が完了する。
一方、後続のクリップ12B〜12Eは、スカート部38が閉じた連結リング14B〜14Eによって、連結リング14B〜14Eに対して回転方向および進退方向に移動しないように保持されている。さらに、クリップ12B〜12Eに係合するクリップ12C〜12Eの爪部22およびダミークリップ18の爪部の広がろうとする力(付勢力)によって、爪部22が連結リング14B〜14Eの第2領域34(図3参照)の内壁に押し付けられており、クリップ12B〜12Eと連結リング14B〜14Eとの間の摩擦力が高まっている。そのため、連結リング14B〜14Eは、クリップ14B〜14Eの移動とともに移動する。
すなわち、先頭クリップ12Aおよびそれを保持する連結リング14A以外のクリップ12B〜12Eと連結リング14B〜14Eは、操作ワイヤ20を操作することで、シース16に対して一体的に進退移動し、クリップ14B〜14Eおよびダミークリップ18の連結状態は、連結リング14B〜14Eによって維持される。
操作ワイヤ20は、初期状態から一定量引けるように構成されている。この一定量とは、連結リング14の第2領域34の領域長さに等しいか、それよりもわずかに大きい量であると同時に、クリップ12の凸部30の下端からそのクリップ12を保持している連結リング14の先端までの長さと等しいか、それよりもわずかに小さい量である。この一定量は、図4(A)の操作部50において、レバー60のホームポジションから後方への移動限界までの長さによって定められる。
操作ワイヤ20は、操作部50のレバー60を付勢するスプリング62により、一定量引いた後、すぐにその一定量だけ戻るようになっている。図5(B)の状態から図5(C)の状態まで引っ張った操作ワイヤ20は、操作部50においてレバー60の引っ張り力を解放すると、レバー60が元の位置に戻り、それにより、操作ワイヤ20が元の位置に戻って、図5(D)の状態となる。すなわち、2発目のクリップ12Bの先端は、図5(B)のときと同様の、シース16の先端にほぼ一致する位置に戻る。
一方、クリップ12Aとクリップ12Bとは爪部22,22の拡開方向を90度ずらして噛み合い結合しているため、図5(D)のとき、シース16の内部において、先頭になったクリップ12Bの拡開方向は、図5(B)に示した先のクリップ12Aの拡開方向とは90度異なっている。しかし、クリップ処置具10では、次の操作により、クリップ12Bの拡開方向を90度変更し、クリップ12Aの拡開方向と揃えることができる。
すなわち、2発目のクリップ12Bを使用可能な状態とするために、操作部50(図4参照)において、シース操作ハンドル54が、2番目の窪み66から3番目の窪み66へ長さLだけ動かされる。それにより、シース16が所定の1ストローク分、すなわち長さLだけ引っ張られて、シース16の先端が、次の連結リング14Bのスカート部38が開く位置まで下がる。また、操作部50において、ボール76が2番目の窪み66から3番目の窪み66へ移動することによって、ケース68は、周方向に90度回転する。したがって、ケース68に固定されているシース16は、軸周りに90度回転する。
シース16とシース16に嵌入されている連結リング14B〜14Eとの間には、クリップ12B〜12Eの腕部28が拡開使用とする付勢力、および、連結リング14B〜14Eのスカート部38が広がろうとする付勢力による摩擦力が、連結リング14の数の分だけ働いている。また、クリップ12B〜12Eおよび連結リング14B〜14Eの軸周りの回転移動を制限する機構は設けられていない。そのため、シース16が回転すると、連結リング14B〜14Eおよびそれに保持されるクリップ12B〜12E、ダミークリップ18も、シース16と一緒に回転する。それにより、シース16から突出したクリップ12Bの爪部22,22は、先のクリップ12Aの爪部22,22と同じ方向に広がって、図5(E)の状態となる。
その後、上述のクリップ12Aのときと同様に、クリップ処置したい部位にクリップ12Bの爪部を押し付けて、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。これにより、連結リング14Bによるクリップ12Bの締め付けが完了すると同時に、クリップ12Bとクリップ12Cとの連結が解除され、クリップ12Bによるクリップ処置が完了する。
上記の操作を繰り返すことにより、シース16に装填されたクリップ12の数だけ連続して、クリップ処置を行うことができる。ここで、操作部50によってシース16がクリップ処置の回数分だけ同じ方向へ回転され、それに追随して、クリップ12(ダミークリップ18)に接続する操作ワイヤ20も回転する。しかし、上述したように、操作ワイヤ20の後端部は、操作部50に回転自在に保持されているため、シース16の回転に伴う操作ワイヤ20のねじれを適宜解消することができ、ねじれのストレスが溜まるのを抑制することができる。
なお、操作ワイヤ20の先端と、ダミークリップ18の後端部の接続部材19との結合部において、牽引力を伝達し、回転トルクを伝達しない方法で接続する構成とした場合は、操作ワイヤ20の後端を、操作部50において回転不能な形態で保持してもよい。また、操作部50における案内溝67の経路は、軸線方向に長さL移動する毎に周方向の異なる向きに回転する経路としてもよい。
次に、本発明の連結クリップパッケージについて説明する。
本発明の連結クリップパッケージは、上述のような連発式クリップ処置具10において用いられるクリップ体(クリップ12に連結リング14を嵌めたもの)を、予め所定数が連結された状態でケースに収納し、パッケージ化したものである。
図6(A)〜(C)は、本発明の連結クリップパッケージの一実施形態を示す図であり(A)は正面図、(B)は断面図、(C)はケースの軸に直交する面の断面図である。以下では、図6(A)および(B)における左側を先端、右側を後端と呼ぶ。
図6(A)に示すように、連結クリップパッケージ80は、ケース82と、上キャップ84と、下キャップ86とから成る。
ケース82は、円筒状であり、内部にクリップ12および連結リング14からなるクリップ体を収容する。このケース82は、図6(A)および(C)に示すように、半円筒状でほぼ同形状の2つのケース部品82a,82bを組み合わせて構成されている。2つのケース部品82a,82bの先端には上キャップ84が、後端には下キャップ86が嵌められており、ケース82を閉じた状態に保っている。
ケース82は、内部が見えるように、透明または半透明とするのが好ましい。また、耐衝撃性、扱い易さ、および成形の容易さから、周辺温度の変動範囲(例えば5℃〜38℃)で変質しない樹脂によって形成するのが好ましい。なお、本実施形態では、ケース82を円筒状としているが、ケース82の外形は、円柱状には限定されず、角柱であってもよい。
連結クリップパッケージ80は、医療用のクリップを収納するため、ケース82内を密閉に保つことが必要である。そのため、ケース82は、ケース部品82a,82bの外表面を透明樹脂製のカバー88で覆っており、ケース82内の密閉性を確保している。あるいは、ケース82は、ケース部品82a,82bを弾性のある材料で作り、ケース部品82aおよび82bを、合わせ面で押し付けた状態で上キャップ84および下キャップ86で保持し、密閉性を確保するようにしてもよい。また、ケース部品82aおよび82bの間にパッキンを設けて密閉性を確保してもよい。
上キャップ84および下キャップ86は、ケース部品82a,82bを密閉状態で封じる物であればよく、ゴム製や樹脂製とすることができる。下キャップ86は取り外し可能である。ケース82内のクリップ体をシースへ装填するときは、下キャップ86が外されて内部のクリップ体が連結状態のまま引き出される。上キャップ84は取り外し可能でもそうでなくてもよい。また、ケース82で先端部分を構成し、上キャップ84を設けない形態としてもよい。
図6(B)に示すように、ケース82には、連結リング14の外径よりわずかに大きく、クリップ体が装填されるシースの内径とほぼ等しい内径の穴が、ケース82全体を貫いて形成されており、その穴に、連結された5つのクリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18と、その連結部分を覆う5つの連結リング14A〜14Eが収容されている。先頭のクリップ12Aの先端は、上キャップ84からケース82内に突出する部分に保護されている。また、最後尾のクリップ12Eにつながるダミークリップ18の後端の接続部材19は、下キャップ86によって保持される。
ケース82の後端部分には、シースが挿入可能なシース嵌合部98が形成されている。シース嵌合部98は、クリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eを装填するシースの外径にほぼ等しい径を有している。シース嵌合部98の径は、ケース82の穴のストレート部90の径よりも、シースの肉厚分程度大きいので、シース嵌合部98の先端にはその分の段差ができている。ケース82内のクリップ体をシースへ装填するときは、シース嵌合部98の先端までシースが挿入される。
図7は、図6(B)の部分拡大図である。図7に示すように、ケース82の内面には、連結リング14A〜14Eが収容される位置に、スカート部38の形状に対応する凹部96が設けられている。この凹部96は、ストレート部90から、自然状態におけるスカート部38の傾斜とほぼ同じ角度で、スカート部38の広がりにほぼ一致して、外側へ半径方向に広がる第1斜部92と、第1斜部92の広がった端部(後端)から半径方向に狭まる第2斜部94とによって形成される。
上述したように、クリップ12A〜12Eは90度ずつ向きを変えて連結されており、それに対応して、連結リング14A〜14Eも前後の連結リング14と90度向きを変えてクリップ12A〜12Eに嵌められている。したがって、ケース82における凹部96の位置も、各連結リング14A〜14Eに対応する位置において、周方向に90度ずつずれている。図6(B)には、連結リング14A,14C,14Eのスカート部38に対応する凹部96が上下2箇所に示されている。連結リング14B,14Dのスカート部38に対応する凹部96は、図6(B)の紙面に垂直な方向の2箇所に形成されている。
この凹部96の第1斜部92により、連結リング14A〜14Eは、スカート部38が外力を受けずに広がった状態でケース82に収納される。そのため、ケース82に保管されている間にスカート部38の弾性が劣化することを防止でき、連結リング14A〜14Eの性能を維持することができる。
また、ケース82からクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eが引き出されるときは、凹部96で開いているスカート部38は、第2斜部94に案内されて徐々に閉じるので、凹部96を出るときにめくれてしまうことがなく、ストレート部90に収まってケース82内を移動することができる。
連結クリップパッケージ80を得るには、予め、クリップ12A〜12Eを順に連結させ、最後のクリップ12Eにダミークリップ18を連結させて、連結クリップを組み立てておき、その連結クリップを、ケース82の一方のケース部品82aに収納した後、もう一方のケース部品82bをケース部品82aに被せて、上キャップ84および下キャップ86を嵌めればよい。
また、図6(A)に示すように、ケース82の後端部の表面には、シース16との周方向の位置を合わせるための識別部として、位置合わせマーク100が記されている。ケース82の位置合わせマーク100は、図示例では、ケース部品82aおよび82bの接部に付されている。上述したように、ケース部品82a,82bには、連結リング14のスカート部38が収容される位置に凹部96が形成されているため、ケース部品82a,82bにおけるクリップ12A〜12Eの周方向の向きは、規定される。したがって、位置合わせマーク100と、ケース82の中の先頭のクリップ12Aの拡開方向(開閉方向)との関係が、常に一定となる。
一方、図8に示すように、シース16の先端の外周面には、その周方向の基準位置を示す識別部として、位置合わせマーク102が記されている。
クリップの装填のために連結クリップパッケージ80をシース16の先端に嵌めるときは、連結クリップパッケージ80の位置合わせマーク100とシース16の位置合わせマーク102とを合わせてセットする。これにより、シース16に対するクリップ12Aの拡開方向を、常に一定に規定することができる。
次に、図9(A)〜(C)を参照して、連結クリップパッケージ80からシース16へのクリップ体の装填方法について説明する。
まず、図9(A)に示すように、連結クリップパッケージ80の下キャップ86を外し、シース16の先端から突出させた操作ワイヤ20を、ケース82内のダミークリップ18の後端部の接続部材19に接続する。既に使用したクリップ12の最後尾に係合していたダミークリップ18は、シース16から操作ワイヤ20を突出させた状態で、予め取り外される。
操作ワイヤ20をケース82内のダミークリップ18に接続したら、図9(B)に示すように、シース16をシース嵌合部98の先端まで挿入して、ケース82と嵌合させる。操作者がシース16とケース82を持って、シース16の端部をケース82のシース嵌合部98に挿入した後、操作部50(図4参照)のシース操作ハンドル54を、ワイヤ操作ハンドル52に対して前進させることで、シース16を操作ワイヤ20に対して前進させて、シース16をシース嵌合部98の先端まで挿入することができる。このとき、ケース82の位置合わせマーク100が、シース16の位置合わせマーク102と合うように嵌合させる。
ケース82のシース嵌合部98にシース16を嵌合させた状態において、ケース82のストレート部90の内径と、シース16の内径は、ほぼ等しくなっている。
次に、図9(C)に示すように、操作ワイヤ20の位置はそのままで、シース16だけを先端側へ移動させ、それと一緒にケース82を先端側へ移動させる。シース16の移動は、操作部50のシース操作ハンドル54をワイヤ操作ハンドル52に対して先端側へ移動することによって行う。このとき、図9(B)および(C)に矢印で示した、シース嵌合部98の先端部近傍を押さえながら、シース16およびケース82を移動させるのが好ましい。シース16およびケース82の移動により、ケース82内のクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eが、後端側から順に、シース16内へ装填される。
なお、クリップの装填には、シース16を操作ワイヤ20に対して相対的に前進させて、先頭のクリップ12Aを完全にシース16内に収容する位置まで移動させればよく、シース16およびケース82を移動させずに、操作ワイヤ20を引っ張って、クリップ体をシース16内に引き込んで装填するようにしてもよい。
ケース82において、連結リング14A〜14Eのスカート部38は、開いた状態で凹部96に収容されているが、ケース82が先端側へ移動するときには、スカート部38は、凹部96の第2斜部94に案内されながら閉じていき、ストレート部90に収まって、そのままシース16内へ引き込まれる。連結リング14A〜14Cのスカート部38は、後端側の他の凹部96を通過するが、その際に、第1斜部92でスカート部38が一端開いても、第2斜部94で再び閉じて、ストレート部90へ案内される。
連結リング14A〜14Eは、その後端側の第2領域34(図3参照)の内壁が、後ろ側のクリップ12B〜12Eおよびダミークリップ18の爪部22が広がろうとする付勢力によって、押圧されている。そのため、ケース82内において、クリップの連結状態、および、クリップ12A〜12Eと連結リング14A〜14Eとの位置関係が維持される。
さらに、シース16への装填時には、スカート部38が凹部96からストレート部90へ移動して閉じることで、連結リング14A〜14Eの内部のクリップ12A〜12Eがスカート部38の内側の部分によって押圧され、連結リング14A〜14Eがクリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18の連結状態を保持する。そのため、シース16への装填時に、クリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18の連結が外れたり、連結リング14A〜14Eとの位置関係がずれるのを防止することができる。
シース16の先端が、先頭のクリップ12Aの先端を収容する位置まで移動して、シース16へのクリップの装填が完了する。装填完了時、操作部50(図4参照)は、シース操作ハンドル54が先端側へ移動し、ボール76が最初の窪み66に嵌った状態となる。
このように、連結クリップパッケージ80は、クリップを連結した状態で流通および保管することができ、さらに、その連結状態を保ったまま、簡単な操作でシース16へ装填できる。そのため、操作者の作業負担が小さく、短時間で簡単にクリップの装填をすることができる。さらに、連結クリップパッケージ80は、クリップの拡開方向をシース16に対して一定の方向に合わせて装填できるので、例えば、処置の途中でクリップを再装填した場合でも、操作者は、速やかに処置の続きをすることができる。
次に、本発明の連結クリップパッケージの他の実施形態について説明する。
上記の例では、連結クリップパッケージ80のケース82に記した位置合わせマーク100およびシース16にしるした位置合わせマーク102によって、シースに対する連結クリップパッケージ80の内部のクリップの方向を合わせるようにしたが、連結クリップパッケージ80とシース16との位置合わせは、他の構成によって行ってもよい。
図10(A)は、ケース82Aの後端部分の軸方向断面を示しており、図10(B)は、ケース82Aの後端側から見た図を示している。図10の例では、ケース82Aは、シース嵌合部98の周方向の所定の位置に、内表面から内周側へ突出する突起104を有している。突起104は、ストレート部90の内表面までよりも低い高さとする。
また、このケース82Aに勘合するシース16Aには、図11に示すように、先端の外面に、軸方向に延びる溝106が形成されている。溝106の深さは、突起104の高さに対応する。シース16Aの先端部は、クリップ12によるクリップ処置動作時に機能する部分なので、溝106は、シース16Aの肉厚を貫通させないのが好ましい。溝106の長さは、ケース82Aのシース嵌合部98の先端(図10(A)における左端)から突起104の後端(図10(A)における右端)までの長さに等しい。
ケース82Aにシース16Aを嵌合させるときは、ケース82Aの突起104とシース16Aの溝106の位置が一致するように嵌合させる。ケース82Aの突起104の位置によって、ケース82A内の先頭のクリップ12Aの拡開方向が決まるので、シース16Aに対し、装填されたクリップ12Aの拡開方向を一定の方向に規定することができる。
なお、上記の例とは反対に、シース16Aの外面に突起を設け、ケース82Aのシース嵌合部98の内面に溝を設ける構成によっても、シース16Aとケース82Aの方向を合わせることができるが、シース16Aの外面に突起を設けることにより、内視鏡の鉗子チャンネルを傷付ける可能性がある場合には、シース16Aに溝を設ける上記の構成の方が好ましい。
次に、本発明の連結クリップパッケージのさらに異なる実施形態について説明する。
上記の例では、連結クリップパッケージ80のケース82内のクリップ収容部に、連結リング14のスカート部38に対応する凹部96を設けることにより、ケース82のケース部品82a,82bと、収容されるクリップ12A〜12Eの周方向の位置関係が定まることとしたが、それに加えて、または、凹部96を設けない場合に、他の方法によってケース82と内部のクリップ12の方向を合わせるようにしてもよい。
例えば、クリップ12の連結部に連結リング14を有さない場合には、ケース82に凹部96を設けず、以下の方法によりケース82とクリップ12の位置を規制する。また、上記の例において、凹部96をスカート部38に対応する位置に全周にわたって形成してもよいが、その場合も、以下のようにケース82とクリップ12の位置を規制する構成を設ける。
図12(A)は、ケース82Bのシース嵌合部98にシース16が嵌合し、ケース82Bに収容されたクリップ列後端の接続部材19に、クリップ処置具10の操作ワイヤ20が連結した状態の、ケース82Bの後端部分の軸方向断面を示している。また、図12(B)は、図12(A)のケース82Bのみを後端側からみた図を示している。
図12の例では、ケース82Bは、シース嵌合部98の先端部分に、ストレート部90よりも径が大きく、シース嵌合部98よりも径が小さい誘い溝110を有している。また、接続部材19Bの後端部分には、周方向の一部に、外周側へ突出する板状の位置規制部材108を有している。位置規制部材108の外縁は、ストレート部90よりも径が大きく、誘い溝110に係合する径の位置まで突出している。
連結クリップパッケージ80の組み立て時に、連結状態に組み立てた連結クリップをケース82B(ケース部品82aまたは82b)に収納するときに、接続部材19Bの位置規制部材108が、ケース82Bの誘い溝110に一致するようにセットする。これにより、ケース82Bにおけるクリップ12の方向が定まる。
一方、図13に示すように、シース16Bの先端の内周面には、位置規制部材108を逃がす溝112が形成されている。図12の連結クリップパッケージ80からシース16Bへクリップ12を装填するときは、シース16Bの溝112が、接続部材19Bの位置規制部材108に一致するように、位置を合わせて、シース16Bをケース82Bに嵌合させる。接続部材19Bの位置規制部材108の位置によって、ケース82B内の先頭のクリップ12Aの拡開方向が決まるので、シース16Bに対し、装填されたクリップ12Aの拡開方向を一定の方向に規定することができる。
なお、接続部材19Bの位置規制部材108は、周方向に複数設けてもよい。その場合は、ケース82Bの誘い溝110およびシース16Bの溝112も、対応する位置に複数設ければよい。
また、溝112は、連結リング14のスカート部38の幅よりも狭くし、スカート部38がシース16の先端部を通過するとき、およびその先端で広がった時に、溝112に引っ掛からないようにする。また、連結リング14を有さないクリップ体の場合にも、溝112の幅および位置は、クリップ等が引っ掛からないようにすることが重要である。
また、図11の例や、図13の例のように、シース16の先端部分に溝を設ける場合には、シース16の先端に方向を合わせて着脱可能な補助部材を用意し、溝をその補助部材の先端に形成し、クリップ装填時には、シース16の先端にその補助部材を取り付けて、装填を行うようにしてもよい。
上記では、好ましい例として、連結リングによってクリップの連結が保持される形態について説明したが、本発明は、連結リングを用いずに、90度ずつ交互に向きを変えて直接連結したクリップを用いるクリップ処置具にも適用できる。
また、上記の各例ではクリップ12を90度ずつ向きを変えて連結するものとしているが、本発明はこれには限定されない。例えば、爪部22,22とターン部24との間の部分で90度だけ捻った形状のクリップを使用し、連続するクリップを同じ向きで連結するようにしてもよい。
また、ターン部を有するクローズクリップを用いることで、ターン部を押圧して腕部に拡開するバネ力(付勢力)を与えることができる点で好ましいが、本発明は、ターン部を有さないオープンクリップ(U字状のクリップ)を用いるものに適用することもできる。
以上、本発明に係る連結クリップパッケージおよびクリップ装填方法について詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。また、本発明の連発式クリップ処置具は、軟性鏡のほか、硬性鏡にも用いることができる。