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JP2009221336A - 樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルム - Google Patents

樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルム Download PDF

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JP2009221336A JP2008066649A JP2008066649A JP2009221336A JP 2009221336 A JP2009221336 A JP 2009221336A JP 2008066649 A JP2008066649 A JP 2008066649A JP 2008066649 A JP2008066649 A JP 2008066649A JP 2009221336 A JP2009221336 A JP 2009221336A
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Abstract

【課題】引裂き強度が強く、引張り伸び特性が良好な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とし、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分である樹脂組成物であって、該樹脂組成物全体に対する、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量割合が30〜95%であり、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部が過酸化物処理された樹脂組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルムに関する。詳細には、樹脂の少なくとも一部に過酸化物を反応させて物性を改良した樹脂組成物及び、該樹脂組成物からなる農業用フィルム、ゴミ袋、コンポスト袋、レジ袋、ショッピングバッグ、食品包装材料、食料品容器などの用途に使用可能な成形品及びフィルムに関する。
従来、各種食品、薬品、雑貨等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等の幅広い用途において、紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等が用いられてきた。この中でも特に、プラスチックフィルムは、強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。
該プラスチックフィルムを構成するプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、これらプラスチックフィルムは石油由来の原料から生産されるため、化石資源の枯渇問題や、焼却時に発生する二酸化炭素による地球温暖化の問題を有している。また、殆どのプラスチックは、環境中での耐久性があるため、廃棄した場合にその形状が保たれ、環境汚染や、埋立地の不足等の廃棄物問題が深刻となっている。
近年、上記問題を解決することを目的として、植物由来の原料や植物から製造される樹脂、生分解性樹脂が使用されるようになってきている。植物由来の樹脂原料についての研究は数多くなされており、植物由来樹脂原料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートといった脂肪族ポリエステルが挙げられる。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンテレフタレートサクシネートといった脂肪族ポリエステル又は芳香脂肪族ポリエステルが挙げられる。しかしながら、これら脂肪族ポリエステルや芳香族脂肪族ポリエステルは、フィルムの引裂き強度などの機械物性が不十分であった(特許文献1)。
この問題を解決するために、脂肪族ポリエステル樹脂に過酸化物を反応させることにより物性を改良する試みが行われている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に開示された樹脂では、引裂き強度は改善されているものの引張り伸びや耐衝撃性等が悪化しており、これらの機械特性を全て満足する生分解性樹脂が求められていた。
特開平8−239461号公報 特開2005−523354号公報
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、引裂き強度が強く、引張り伸び特性が良好な樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に関して検討を行った結果、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂の一部に過酸化物を反応させた特定の樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち本発明の第一の態様は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とし、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分である樹脂組成物であって、該樹脂組成物全体に対する、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量割合が30〜95%であり、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部が過酸化物処理されていることを特徴とする樹脂組成物を提供して前記課題を解決するものである。
ここで、「脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とする」とは、樹脂組成物における樹脂成分の少なくとも60%以上が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とからなることをいい、「過酸化物処理」とは、樹脂を過酸化物と溶融混練することによって樹脂を過酸化物と反応させることをいう。また、本発明において、メルトフローレート(MFR)とは、JIS K7210に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定した値をいう。
この態様において、過酸化物処理に用いられる過酸化物は有機過酸化物であることが好ましい。
また、この態様において、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とする、ポリブチレンサクシネート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂であることが好ましく、また、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネート系樹脂であることが好ましい。
本発明の第二の態様は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とする樹脂組成物の製造方法であって、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部に溶融混練により過酸化物を反応させる工程を含むことを特徴とする樹脂組成物の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
本発明の第三の態様は、第一の態様(前記好ましい態様も含む。)の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とする成形品を提供して前記課題を解決するものである。
本発明の第四の態様は、第一の態様(前記好ましい態様も含む。)の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とするフィルムを提供して前記課題を解決するものである。
なお、第三及び第四の態様において、「樹脂組成物を主成分として含む」とは、樹脂組成物の含有量が、成形品又はフィルムの総質量の少なくとも60質量%以上であることをいう。
本発明によれば、特に引張り強度や引裂き強度に優れた、成形性の良好な樹脂組成物を得ることができる。このため、該樹脂組成物から得られる成形体、特にフィルムは、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等に広く利用することができる。
本発明の樹脂組成物は、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを原料とし、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の少なくとも一部が過酸化物処理されてなるものである。以下、各成分及び樹脂組成物の製造方法等について詳細に説明する。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とは、脂肪族オキシカルボン酸や、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との混合物等の脂肪族単量体を主原料とし、分子中に芳香族環を実質的に有さないポリエステル系樹脂をいう。ここで、「主原料」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、脂肪族単量体成分の割合が80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であることをいう。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料となる脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
本発明に用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)が特に好ましい。該脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を具体的に示すと、例えば、下記式(1)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオ−ル単位と、下記式(2)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位とからなるものである。
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
なお、上記式(1)、式(2)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基」の「及び」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)の1分子中に2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
式(1)のジオール単位を与える脂肪族ジオール成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジオール成分が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール成分が特に好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。脂肪族ジオール成分は2種類以上用いることもできる。
式(2)のジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸成分が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸成分が特に好ましい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸又はアジピン酸が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分も2種類以上用いることができる。
また、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)にも、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料として上述したものが挙げられる。脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)に含有させる好ましい脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を構成する単量体成分全体を基準(100モル%)として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)は、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」、「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」のうちの、少なくとも1種を共重合させたものであると、得られる脂肪族ポリエステル系樹脂の溶融粘度を高めることができるため好ましい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。また、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられる。また、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には、リンゴ酸等が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
このような3官能以上の化合物の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を構成する単量体全体を基準(100モル%)として、下限は通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限は通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)としては、ポリブチレンサクシネート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂を用いることが特に好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができる。中でも、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。重合触媒は、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート錯体等の有機基を含む化合物、さらには前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物又はゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒が重合時に溶融又は溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、触媒は、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物であること好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであり、常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限は通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.001×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器として、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した撹拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入してもよい。
本発明の樹脂組成物に用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の、過酸化物処理されていない状態でのメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、通常0.1g/10分以上であり、好ましくは、0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、最も好ましくは、2.0g/10分以上である。またMFRの上限は、通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。
本発明の樹脂組成物における、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100%)として、質量割合で、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、含有量の上限は、95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が多すぎると、フィルムの引裂き強度や引張り伸び、衝撃強度等が低下し好ましくない。一方、脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が少なすぎると、フィルムとした場合はコシがなくなり、シート成形、射出成型した場合は剛性が低下して好ましくない。
<芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とする芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含む。この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
式(3)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
式(4)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、コハク酸又はアジピン酸が好ましい。
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸も挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分及び芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。また、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)にも、その性質を損なわない範囲で脂肪族オキシカルボン酸単位が少量含有されていてもよい。芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)としては、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネート系樹脂であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の、過酸化物処理されていない状態でのメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、通常1.0g/10分以上、好ましくは2.0g/10分以上であり、最も好ましくは3.0g/10分以上、上限が通常6.0g/10分以下、好ましくは5.0g/10分以下、さらに好ましくは4.0g/10分以下である。MFRが1.0g/10分より小さいと成形時の流動性が悪く好ましくない。またMFRが6.0g/10分より大きいとフィルムや成形品の機械物性が低下する。
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100%)として質量割合で、通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、上限は、70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が多すぎると、フィルムのコシが不足し、各種包装材料として使用するためにはフィルムの厚さを厚くする必要があり好ましくない。また生分解性が必要な用途には生分解速度が低下して好ましくない。一方、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が少なすぎると、引張り伸び率、引裂き強度などが不足し好ましくない。
<その他の成分>
(相溶化剤)
本発明の樹脂組成物には、相溶化剤を配合してもよい。相溶化剤とは、非相溶性の異種樹脂を混合する際に、相溶性を改良する添加剤である。相溶化剤を添加することにより、相溶性を向上させることができる。
相溶化剤は、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、通常0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上添加するのが好ましい。添加量の上限は、通常10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
相溶化剤の例としては、高分子型相溶化剤、低分子の有機化合物、無機化合物、有機無機複合体等が挙げられるが、高分子型相溶化剤、低分子の有機化合物が成形品の物性の点で好ましく、成形プロセスの観点から、高分子型相溶化剤がより好ましい。また、相溶化剤としては、酸無水物基、グリシジル基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれか1つ又は2つ以上の構造を有するものであることが好ましく、これらいずれかの構造を有する高分子型相溶化剤がより好ましい。これらの構造を有する相溶化剤を用いることにより、上記相溶性を向上させる効果が大きくなる。また、相溶化剤としては、過酸化物も好ましく挙げられる。過酸化物については後述する。
高分子型相溶化剤としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、ポリアセタール系、オレフィン系エラストマー、不飽和脂肪族系エラストマー、水添不飽和脂肪族系エラストマーなどの樹脂及びこれらの2種類以上のブロック、グラフト又は、ランダム共重合体が挙げられる。これらの共重合体にさらに不飽和脂肪酸無水物を付加させるなどして極性基を分子中に導入してもよい。付加させる不飽和脂肪酸無水物としては無水マレイン酸が好ましく用いられる。
この中でも、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、オレフィン系エラストマー、不飽和脂肪族系エラストマー、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体等がより好ましく、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体がさらに好ましい。
ポリエステル系の相溶化剤としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレート等構造を分子構造の一部に含むポリエステルブロック又はランダム又はグラフト共重合体が挙げられる。
ポリアミド系の相溶化剤としては、6ナイロン、6,6ナイロン、12ナイロン等が挙げられる。ポリエーテル系の相溶化剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
スチレン系の相溶化剤としては、ポリスチレン、ポリp−メチルスチレン、ポリα−メチルスチレンなどが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、エチレンプロピレンランダム共重合体、ポリ1−ブテン等が挙げられる。不飽和脂肪族系エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBS、SIS等が挙げられる。水添不飽和脂肪族系エラストマーとしては、SEBS、SEPS等が挙げられる。ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体の中でも特に好ましい例としては、ポリオレフィン/グリシジルアクリレート共重合体、ポリオレフィン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体、ポリエーテルエステルアミド、SEBS、無水マレイン酸変性SEBS等が挙げられる。
本発明の相溶化剤として最も好ましく用いられるのは脂肪族系ポリエステル樹脂構造と芳香族脂肪族系樹脂構造を一分子中に合わせ持つ構造の共重合体である。具体的にはこれら2種の二元ブロック共重合体、三元ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。これら共重合体の製造方法は、脂肪族ポリエステル系樹脂と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂をエステル交換する方法、これら2種類の樹脂をジイソシアネート化合物、多官能カルボジイミド化合物などで共有結合させる方法などが挙げられる。
(無機充填剤)
本発明の樹脂組成物には、無機充填剤を配合してもよい。かかる無機充填剤としては、シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウムや珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の樹脂組成物に含有される無機充填剤の量は特に限定はないが、樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましく、5質量部以上15質量部以下が特に好ましい。無機充填剤が少なすぎる場合は、機械物性改良効果が少なくなる場合があり、一方、多すぎる場合は、成形性及び耐衝撃性が悪化する場合がある。
(有機充填剤)
本発明の樹脂組成物には、有機充填剤を配合してもよい。有機充填剤としては、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。樹脂組成物中の有機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、60質量部以下が好ましい。
(末端封止剤)
本発明の樹脂組成物には、末端封止剤を配合してもよい。末端封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられるが、その中でもカルボジイミド化合物が好適に用いられる。用いられるカルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
上記のカルボジイミド化合物のうち、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
本発明においては、カルボジイミド化合物としてポリカルボジイミド化合物を用いてもよい。その重合度は、下限が2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、20以下である。この重合度が大きすぎると、組成物中における分散性が不十分となり、例えばインフレフィルムにおいて外観不良の原因になる場合がある。ポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619〜p.621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
カルボジイミド化合物は、後述する樹脂組成物の調製時に添加してもよいし、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂のうちの1種類又は2種類のポリエステルに練り混み、成形時に他の成分とドライブレンドすることによって樹脂組成物の全成分と混合して成形してもよい。あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂で高濃度のカルボジイミド化合物のマスターバッチを調整し、成形時にカルボジイミド化合物が所定濃度となるように、脂肪族ポリエステル系樹脂及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂をドライブレンドして希釈してもよい。
(その他添加剤)
本発明の樹脂組成物には、さらに、従来公知の各種添加剤を配合することもできる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、スリップ剤、加水分解防止剤、鮮度保持剤、抗菌剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤を配合することが好ましい。
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼオライト、タルク等が挙げられる。
スリップ剤としては、炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられるが、最も好ましくはエルカ酸アマイドが挙げられる。
酸化防止剤としては、BHT、2,2'−メチレンビス(4-メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン-2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物などが例示できる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
耐光剤としては具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネートが挙げられる。
防曇剤としては具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。防曇剤は予め樹脂に練りこんでもよいし、成形後、成形品表面に塗布してもよい。
これらの添加剤の添加量は、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、通常0.001質量%以上10質量%以下である。添加量の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。添加量の上限は好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で生分解性樹脂及び天然物、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等やセルロース、紙、木粉、澱粉、変性澱粉、米分、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末又はこれらの混合物を配合することができる。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、ブレンドした脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して樹脂組成物を調整すると同時に、その成形体を得ることも可能である。上述した各種添加剤、有機充填剤等は、任意の段階で添加することができる。この際、各種添加剤等を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。
樹脂の混合及び混練に際しては、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また、混練機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機等を使用できる。
本発明の樹脂組成物の製造の際には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の少なくとも一部が、過酸化物処理される。ここで、過酸化物処理とは、樹脂を過酸化物と溶融混練することによって過酸化物と反応させることをいい、該処理によって樹脂中に架橋構造が形成されて樹脂の物性が改良される。
本発明の樹脂組成物において、過酸化物処理は、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部になされていればよく、脂肪族ポリエステル(A)全部や、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の一部又は全部に過酸化物処理がなされていてもよい。本発明において、過酸化物処理は、樹脂組成物における脂肪族ポリエステル(A)成分のうちの、1質量%以上されていることが好ましく、5質量%以上が特に好ましい。また脂肪族ポリエステル(A)の全量が過酸化物処理されていてもよいが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。1質量%未満では過酸化物処理の効果が少なく好ましくない。また50%を超えると非効率であるためコスト高になり好ましくない。
過酸化物処理は、樹脂組成物の原料である脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のそれぞれに予め行われていてもよいし、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練して樹脂組成物を得る工程の際に同時に行ってもよい。
また、予め過酸化物処理された樹脂又は樹脂組成物を、過酸化物処理されていない樹脂又は樹脂組成物と任意の割合で混合、溶融混練することによって、任意の割合で各樹脂が過酸化物処理された樹脂組成物を得ることもできる。
過酸化物処理に用いる過酸化物としては、無機過酸化物、有機過酸化物のいずれを用いることもでき、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを任意の比率で用いることができる。過酸化物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。中でも、有機過酸化物が好ましく、特に、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
ケトンパーオキサイドの具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイドの具体例としては、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネートの具体例としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステルの具体例としては、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
パーオキシケタールの具体例としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドの具体例としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジーt−ヘキシルパーオキサイド、2.5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドの具体例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
無機過酸化物としては、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウムなどが挙げられる。
本発明において、過酸化物処理に用いる過酸化物の使用量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、また、その上限は、通常0.50質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下である。過酸化物の量が少なすぎる場合、架橋効果が得られなくなる場合があり、また、多すぎる場合、本発明の樹脂組成物に未反応の過酸化物、残渣等が残る場合やゲルが生じたり、成形性が低下したりする場合があるので好ましくない。
なお、過酸化物処理された樹脂又は樹脂組成物と、過酸化物処理されていない樹脂又は樹脂組成物とを混合して本発明の樹脂組成物を製造する場合には、過酸化処理の際に上記好ましい過酸化物の使用量の上限値を超える範囲の過酸化物を用いてもよい。その後の過酸化処理されていない樹脂又は樹脂組成物との溶融混練によって濃度が希釈されるため、結果的に過酸化物の使用量が上記配合範囲内にある樹脂組成物に調整することができる。
<樹脂組成物及び樹脂組成物成形体>
上記得られた本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、通常1〜100g/10分以上であり、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上である。好ましい上限は50g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、最も好ましくは5.0g/10分以下である。MFRが1g/10分より低いと成形が困難となり、また100g/10分より多いと成形品の機械物性が低下して好ましくない。
本発明の樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形に供することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、押出成形、射出成形、発泡成形、中空成形が好適に適用される。樹脂組成物成形体の具体的な形状としては、フィルム、容器及び繊維への適用が好ましい。
また、これら樹脂組成物成形体に、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、適宜二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は成形性に優れ、該樹脂組成物により形成した成形体の表面特性及び力学特性が優れたものである。このため、本発明の樹脂組成物を主成分とする成形体は、各種食品、薬品、雑貨等の液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。その具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレイ、ファーストフードの容器、野外レジャー製品等)、押出成形品(フィルム、例えば、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。さらに、その他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙等の他、手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等の医療用材料としても好適に用いられる。
さらに、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料等の自動車部品等に使用できる。また、包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレイ、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等にも好適に使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法、及び樹脂の種類は次の通りである。
<引裂き強度の測定方法>
JIS K7128に準拠してエレメンドルフ引裂き強度を測定した。
<降伏強度、破断強度、引張り破断伸びの測定方法>
JIS K6781に準拠した引張り試験により測定した。
<メルトフローレートの測定方法>
MFR(g/10分):JIS K7210に準拠して190℃、2.16Kg荷重で測定した。
<使用樹脂>
脂肪族ポリエステル系樹脂:三菱化学社製GSPla(グレード名:AZ91TN)(PBS(ポリブチレンサクシネート)系樹脂;MFR=4.5)
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(比較例2以外):BASF社製エコフレックス(PBAT(ポリブチレンテレフタレートアジペート)系樹脂;MFR=3.3)
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(比較例2のみ):ポリブチレンサクシネートテレフタレート(MFR=6.8)
(実施例1)
GSPla7部、エコフレックス3部に、有機過酸化物として日本油脂社製パーヘキサ25B(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)を0.005部添加し、30mmΦ二軸押出機により、190℃で混練ペレット化してマスターバッチを製造した。
上記得られたマスターバッチ10部と、GSPla63部と、エコフレックス27部とを30mmΦ二軸押出機により190℃で混練、ペレット化した。このペレットを70℃、窒素流通下で10時間乾燥後、インフレ成形機(エンプラ産業株式会社製形式E30SP)により、ブロー比2.5、折り径300mm、成形温度160℃で厚さ20μmのフィルムを成形した。フィルムの表面は平滑であり成形性は良好であった。物性測定結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1のマスターバッチ30部、GSPla49部、エコフレックス21部を用いて、実施例1と同様に混練、ペレット化、インフレフィルム成形を行った。フィルムの表面は平滑であり成形性は良好であった。物性測定結果を表1に示す。
(実施例3)
GSPlaに対して、質量割合で0.05%のパーヘキサ25Bを添加して実施例1と同様に混練し、ペレットを作成した。この過酸化物処理されたGSPlaのペレット70部に対し、エコフレックス30部を用いて実施例1と同様に樹脂組成物を製造した。さらに、この樹脂組成物を原料として実施例1と同様にインフレフィルム成形を行った。フィルムの表面は平滑であり成形性は良好であった。物性測定結果を表1に示す。
(比較例1)
過酸化物を用いず、GSPla70部、エコフレックス30部を用いて、実施例1と同様に混練、ペレット化、インフレフィルム成形を行った。物性測定結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例3のエコフレックスに変えて、ポリブチレンサクシネートテレフタレートを用いた以外は実施例3と同様に樹脂組成物の製造、インフレフィルム成形を行った。物性測定結果を表1に示す。
(比較例3)
エコフレックスに対して、質量割合で0.05%のパーヘキサ25Bを添加して実施例1と同様に混練し、ペレットを作成した。この過酸化物処理されたエコフレックスのペレット30部に対し、GSPla70部を用いて実施例1と同様に樹脂組成物を製造した。さらに、この樹脂組成物を原料として実施例1と同様にインフレフィルムを成形した。物性測定結果を表1に示す。
Figure 2009221336
表1より、本発明の樹脂組成物(実施例1〜実施例3)は、成形性が良好であったばかりでなく、全ての機械物性の評価結果が良好であった。一方、過酸化物処理が脂肪族ポリエステル(A)に全く行われていない比較例1、比較例3や、MFRが低すぎる比較例2では、特にMD方向の引裂き強度の点で劣っていた。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (7)

  1. 脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とし、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分である樹脂組成物であって、該樹脂組成物全体に対する、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量割合が30〜95%であり、少なくとも前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部が過酸化物処理されていることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記過酸化物処理に用いられる過酸化物が有機過酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とする、ポリブチレンサクシネート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネート系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを主成分とする樹脂組成物の製造方法であって、少なくとも前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の一部に溶融混練により過酸化物を反応させる工程を含むことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とする成形品。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とするフィルム。
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