JP2009209234A - 樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリアミド1010樹脂(A)と、繊維状充填材(B1)および/または熱可塑性樹脂(B2)とを含有し、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の質量比(A/(B1+B2))が25/75〜99/1であり、熱可塑性樹脂(B2)の曲げ弾性率が3.0GPa以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
しかし、これらの樹脂材料は再生が困難な石油を原料として製造されており、近年、このような石油を原料とした樹脂製品の大量生産、大量消費が、資源枯渇といった地球環境問題を大きくする要因となっている。また樹脂製品の最終処分の形態として焼却処理した場合、原料が地中の石油であるため、炭素を地表に放出することになり、地球温暖化の問題にもつながる。このような問題から、リサイクルによる再生利用が検討されているが、分別や強度低下等の問題があり、技術的、経済的に受け入れ難いというのが現状である。
ポリアミド11樹脂は、柔軟性とともに耐久性をも併せ持つことから、柔軟剤や自動車関係の流体輸送チューブなどに好適に用いられてきた。しかしながら、ABSやHIPSなどの石油系材料に比較し、ポリアミド11樹脂は生産面の問題から非常に高価であり、ポリアミド11樹脂系材料の現実的な普及を妨げる要因となっている。
また、ポリアミド1010樹脂もポリアミド11樹脂と同様に柔軟性を要する部材には使用されるが(例えば、特許文献2など)、その低剛性の面から、射出成形での金型離型時に変形してしまい、ポリアミド1010樹脂を使用して射出成形品を製造することは困難であった。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリアミド1010樹脂(A)と、繊維状充填材(B1)および/または熱可塑性樹脂(B2)とを含有し、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の質量比(A/(B1+B2))が25/75〜99/1であり、熱可塑性樹脂(B2)の曲げ弾性率が3.0GPa以上であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)繊維状充填材(B1)が、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)繊維状充填材(B1)が、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維から選ばれる1種以上の植物由来充填材であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(4)熱可塑性樹脂(B2)が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)ポリ乳酸樹脂が、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋されていることを特徴とする(4)記載の樹脂組成物。
(6)さらに変性ポリオレフィン(C)を含有し、その含有量が、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、1〜50質量部であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)さらに層状珪酸塩(D)を含有し、その含有量が、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド1010樹脂(A)と繊維状充填材(B1)および/または熱可塑性樹脂(B2)とを含む樹脂組成物である。
本発明に用いられるポリアミド1010樹脂(A)は、環境負荷を考慮するとASTM(D6866)に準拠して測定したバイオマス炭素含有率が50%以上であることが望ましい。
本発明においては、繊維状充填材(B1)として、特に、性能向上や入手しやすさから、ガラス繊維を使用することが好ましい。
また、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維などの植物由来充填材を使用することも好ましい。植物由来充填材を用いた場合は、樹脂組成物のバイオマス度を高く保ったまま物性を改善することができる。これらの繊維状充填材を使用した場合、主成分がポリアミド11樹脂の場合と比べて耐衝撃性をはるかに向上させることができる。
また、繊維断面の長径は10〜50μmであることが好ましく、15〜40μmであることがより好ましく、20〜35μmであることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物中におけるガラス繊維の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は2〜120であることが好ましく、2.5〜70であることがより好ましく、3〜50であることがさらに好ましい。繊維長と平均繊維径の比が2未満であると機械的強度の向上効果が小さく、繊維長と平均繊維径の比が120を超えると異方性が大きくなる他、成形品外観も悪化するようになる。なお、扁平断面を有するガラス繊維の平均繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。
また、扁平断面を有するガラス繊維はEガラスのような一般的なガラス繊維組成の繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであればどのような組成でも使用可能であり、特に限定されるものではない。
扁平断面を有するガラス繊維は、公知のガラス繊維の製造方法により製造され、マトリックス樹脂との密着性、均一分散性の向上のためシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤などのカップリング剤を少なくとも1種類、帯電防止剤、及び皮膜形成剤などを含んだ配合する樹脂に適した公知の集束剤により集束され、集束されたガラス繊維ストランドを集めて一定の長さに切断したチョップドストランドの形態で使用される。
脱リグニン処理としては、公知の方法を適宜用いればよいが、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液等の強アルカリ溶液による方法、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを用いて加熱する方法、酸性条件下で、モリブデン酸塩と過酸化水素によって処理する方法などが挙げられる。なお、脱リグニン処理に加えてさらに漂白を施すことによりリグニンの発色を抑えることもできる。
また、ポリ乳酸樹脂としては、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋されたポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。これにより、成形時の結晶化度を向上させ、成形品の耐熱性を改善することができる。
変性ポリオレフィン(C)としては、市販のものを含め、各種の変性ポリオレフィンを用いることができる。そのうち、耐衝撃性効果の大きさから、特に、変性エチレンおよび/またはプロピレンとαオレフィンとの共重合体や、エチレン成分および/またはプロピレン成分を主たる構成成分とするオレフィンとα、β−不飽和カルボン酸もしくはその誘導体との共重合物や、上記オレフィンの重合物にα,β−不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をグラフトさせたグラフト重合物などが好ましい。ここで変性成分である不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸(エンドシスービシクロ〔2,2〕ヘプトー5−エンー2,3−ジカルボン酸)等が挙げられ、またその誘導体としては、酸ハライド、エステル、アミド、イミド、無水物等が挙げられ、例えば、塩化マレニル、マレイミド、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、無水ントラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン駿ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。これらの中でも、無水マレイン酸が、反応性が高いため、強度および外観の良好な成形品を得ることができる点で好ましい。市販の変性ポリオレフィンの具体例としては、三井化学社製『タフマー』(変性エチレン・αオレフィン共重合体)などが挙げられる。
樹脂組成物における変性ポリオレフィン(C)の含有量は、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることがさらに好ましい。変性ポリオレフィン(C)の含有量が1質量部未満では耐衝撃改善の効果が十分に得られない場合がある。一方50質量部を超えると、剛性や耐熱性が低下する場合があり、また植物由来度も低下してしまい環境問題の観点からは好ましくない。
層状珪酸酸塩(D)の具体例としては、モンモリロナイト、層状フッ素雲母(合成雲母)、タルク、マイカ、クレイ、などが挙げられる。そのうち、ポリアミド樹脂の物性向上効果の点から、モンモリロナイト、および/または、層状フッ素雲母(合成雲母)を用いることが好ましい。
層状珪酸塩(D)は、ポリアミド1010樹脂(A)の重合時に添加することが最適であるが、それが、困難である場合は、混練前に、層状珪酸塩を第4アンモニウム塩あるいはホスホニウム塩で化学修飾しておくことが好ましい。
樹脂組成物における層状珪酸塩(D)の含有量は、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがさらに好ましい。層状珪酸塩(D)の含有量が0.1質量部未満では、充分な効果を得ることできない場合があり、30質量部を超えると、混練/成形時の流動性不良などの悪影響を及ぼす場合がある。
(1)使用材料
・ポリアミド1010樹脂(A):
セバシン酸(豊国製油製)100質量部を熱メタノールに撹拌しながら溶かした。次にデカメチレンジアミン(小倉合成工業製)85質量部をメタノールに溶かし、先のセバシン酸メタノール溶液にゆっくり加えた。すべて加えた後、15分程度撹拌し、析出物をろ過、メタノール洗浄することにより、デカメチレンジアンモニウムセバケートを得た。
次にデカメチレンジアンモニウムセバケート100質量部と水33質量部をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、設定温度240℃、25rpmで撹拌しながら加熱を開始した。2MPaの圧力で2時間保持した後、水蒸気を排気して圧力を常圧まで下げた。常圧〜0.02MPaで2〜3時間撹拌した後、1時間静置し、払出した。その後、減圧乾燥しポリアミド1010樹脂を得た。
・ポリアミド11樹脂:アルケマ製 リルサン BECN O TL
・ガラス繊維A:日東紡績製CS3J−451 (直径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維)
・ガラス繊維B:日東紡績製CSG3PA820S (長径28μm、短径7μm、長短径の比が4.0の偏平断面を有する偏平ガラス繊維)
・ケナフ繊維:
5mm程度の一定長に切断したケナフをターボミル(マツボー製T−250)にて粉砕・ほぐして、直径20〜50μm、繊維長1〜5mmとした。これを水酸化ナトリウム溶液を用いて加圧・加熱処理を施すことによりリグニンを除去した。
・ポリ乳酸樹脂A:ユニチカ製 テラマックTE−4000(曲げ弾性率:3.7GPa)
・ポリ乳酸樹脂B:
二軸押出機(東芝機械製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂Aの100質量部を押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数280rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出を実施した。さらに、エチレングリコールジメタクリレート0.1質量部と、過酸化物(日本油脂製 パーブチルD)0.2質量部とをシリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥して、架橋されたポリ乳酸樹脂B(曲げ弾性率:4.2GPa)を得た。
・ポリスチレン樹脂:日本ポリスチレン製 G440K(曲げ弾性率:3.2GPa)
・ポリプロピレン樹脂:日本ポリプロ製 ノバテックPP MA3(曲げ弾性率:1.5GPa)
・層状珪酸塩(D):ホージュン製 エスベンW
(A)曲げ弾性率:ASTM D790に準拠して測定した。
(B)アイゾット衝撃値:ASTM D256−56に準拠して測定した。
(C)荷重たわみ温度:ASTM D648に準拠し、荷重1.8MPaで熱変形温度を測定した。
(D)流動性:
バーフローによる測定法に準じた。すなわち、幅20mm、厚さ2mmのスパイラル状の金型を用い、樹脂温度220℃、金型温度50℃、射出圧力100MPaで射出成形し、流動長を測定した。400mm以上の場合は○、200mm以上400mm未満の場合は△、200mm未満の場合は×で評価した。
(E)変形の有無:
樹脂温度220℃、金型温度50℃、射出圧力100MPa、冷却時間15sの条件でASTM曲げ試験片を射出成形し、離型時のエジェクタピンによる試験片の変形の有無を調べた。
二軸押出機(東芝機械製TEM37BS型)を用い、ポリアミド樹脂、ケナフ繊維、熱可塑性樹脂、変性ポリオレフィン、層状珪酸塩を表1に示した質量部でドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、さらにガラス繊維を押出機のサイド供給口から表1に示した質量部で供給して、バレル温度240℃、スクリュー回転数230rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを80℃×24時間真空乾燥したのち、射出成形機(ファナック製ロボショットS−2000i型)を用いて、金型表面温度を50℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ASTM型)およびバーフロー用試験片を作製し、各種測定に供した。
ポリアミド1010樹脂(A)またはポリアミド11樹脂を射出成形機(ファナック製ロボショットS−2000i型)を用いて、金型表面温度を50℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ASTM型)およびバーフロー用試験片を作製し、各種測定に供した。
実施例2において、ガラス繊維として扁平断面を有するガラス繊維Bを用いることで、実施例1と比べて耐衝撃性が改善された成形体が得られた。また、実施例8、9、11〜13においては、ポリ乳酸樹脂として架橋されたポリ乳酸樹脂Bを用いたことにより、ポリ乳酸樹脂Aを用いた場合と比べて耐熱性に優れた成形体が得られた。実施例12、13においては、変性ポリオレフィン(C)を配合したため、耐衝撃性が著しく優れた成形体が得られた。特に、実施例13においては、さらに層状珪酸塩(D)を用いたことにより、各種物性が向上した成形体が得られた。
これに対し、比較例1においては、ポリアミド1010樹脂単体であるため、射出成形するには柔軟すぎて離型が困難であった。
比較例2では用いた熱可塑性樹脂の曲げ弾性率が3.0GPa以上でないため、得られた樹脂組成物には曲げ弾性率の向上が認められなかった。
また、比較例3では、繊維状充填材(B1)の含有量が多すぎるため、得られる樹脂組成物は脆くなり、金型離型時に成形体の破損が生じた。さらに流動性も悪いものであった。比較例4では、熱可塑性樹脂(B2)の含有量が多すぎるため、耐熱性、耐衝撃性の低下がみられた。
ポリアミド11樹脂単体を用いた比較例5では、比較例1と同様に、離型が困難であった。また、これにガラス繊維やポリ乳酸樹脂を添加しても(比較例6、7)、ポリアミド1010樹脂に添加させた場合(実施例2、11)にみられたような耐衝撃性の向上はなく、低下した。このことから、ポリアミド1010樹脂とガラス繊維との組み合わせにおいて、特異的な効果が現れていることがわかる。
Claims (8)
- ポリアミド1010樹脂(A)と、繊維状充填材(B1)および/または熱可塑性樹脂(B2)とを含有し、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の質量比(A/(B1+B2))が25/75〜99/1であり、熱可塑性樹脂(B2)の曲げ弾性率が3.0GPa以上であることを特徴とする樹脂組成物。
- 繊維状充填材(B1)が、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 繊維状充填材(B1)が、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維から選ばれる1種以上の植物由来充填材であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B2)が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- ポリ乳酸樹脂が、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋されていることを特徴とする請求項4記載の樹脂組成物。
- さらに変性ポリオレフィン(C)を含有し、その含有量が、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、1〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- さらに層状珪酸塩(D)を含有し、その含有量が、ポリアミド1010樹脂(A)、繊維状充填材(B1)、熱可塑性樹脂(B2)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
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