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JP2009298348A - 回転速度制御装置 - Google Patents

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JP2009298348A
JP2009298348A JP2008156739A JP2008156739A JP2009298348A JP 2009298348 A JP2009298348 A JP 2009298348A JP 2008156739 A JP2008156739 A JP 2008156739A JP 2008156739 A JP2008156739 A JP 2008156739A JP 2009298348 A JP2009298348 A JP 2009298348A
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Abstract

【課題】またぎ登坂路を走行中に、回転速度差を良好に抑制可能とする。
【解決手段】左側駆動輪と右側駆動輪との間の回転速度差が開始しきい値以上になると、回転速度が大きい方の車輪の液圧ブレーキを作動させて、駆動スリップを小さくして、回転速度差を低減するブレーキLSD制御が行われる。この場合において、車両が上り坂を走行している場合(S2がYES)には、開始しきい値がそうでない場合より、小さい値とされる(S4)。またぎ登坂路の走行中において、ブレーキLSD制御が早期に開始されることになるのであり、その結果、ブレーキLSD制御において、ブレーキ力の増加勾配が小さくなるため、作動音を小さくしたり、振動を小さくしたりすることができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、またぎ路走行中に、左右駆動輪の間の回転速度差を小さくする回転速度制御装置に関するものである。
特許文献1には、左側駆動輪と右側駆動輪との間の回転速度が開始しきい値以上である場合に、回転速度が大きい方の車輪のブレーキを作動させて、回転速度差を小さくする回転速度差低減部を備えた回転速度制御装置が記載されている。
特開2005−47313号公報
本発明の課題は、車両が上り坂でまたぎ路を走行している場合に、左右駆動輪の間の回転速度差を良好に低減可能とすることである。
課題を解決するための手段および効果
本願に係る回転速度制御装置は、(1)車両の左側駆動輪と右側駆動輪との間の回転速度差が開始しきい値以上の場合に、回転速度が大きい方の車輪の回転速度を小さくする回転速度差低減部と、(2)前記開始しきい値を、前記車両が上り坂を走行している場合に、そうでない場合より、小さい値とする開始しきい値変更部とを含む。
例えば、またぎ路走行中に、駆動輪に駆動トルクが加えられた場合において、左側駆動輪と右側駆動輪とのうち、路面の摩擦係数(以下、路面μと略称する)が小さい方の路面に接する車輪に加えられた駆動トルクが路面μに対して大きくなると、その車輪の駆動スリップが大きくなり、回転速度が大きくなる。
また、車両が上り坂を走行している場合には、運転者によるアクセル操作部材の操作量が大きくされるのが普通であり、駆動源の出力トルクが大きくなるのが普通である。そのため、上り坂で、またぎ路を走行している場合には、そうでない場合より、路面μが低い方の路面に接する駆動輪において、駆動スリップが大きくなり易く、左右回転速度差が大きくなり易い。
その結果、車両が上り坂で、またぎ路を走行している場合には、そうでない場合より、左右回転速度差を小さくする制御(以下、回転速度差低減制御と称する)において、駆動スリップが大きい方の車輪の回転速度を速やかに小さくする要求が強くなる。回転速度差低減制御における制御量の増加勾配が大きくなり、作動音が大きくなったり、振動が大きくなったりする。また、応答遅れ等に起因して駆動スリップが大きくなり、回転速度差低減制御に要する時間が長くなる。
それに対し、本願に係る回転速度制御装置においては、車両が上り坂を走行している場合には、そうでない場合より、開始しきい値が小さくされる。それによって、回転速度差低減制御が早期に開始されることになるため、作動音を小さくしたり、振動を抑制したりすることができる。また、回転速度を速やかに小さくすることができ、制御に要する時間を短くすることができる。
一方、開始しきい値が小さくされると、またぎ路走行中でない場合であっても、またぎ路走行中であると誤って判定されて、回転速度差低減制御が開始される可能性が高くなる。しかし、そのことを考慮しても、上り坂走行中に、開始しきい値を小さくすることのメリットは大きい。
回転速度差低減部は、請求項2に記載のように、前記左側駆動輪と前記右側駆動輪とにそれぞれ設けられた摩擦ブレーキのブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ力制御部を含むものとすることができる。
左側駆動輪と右側駆動輪とのうち、駆動スリップが大きい方の車輪にブレーキ力が加えられて、駆動方向のトルクが小さくされるのである。
その結果、駆動スリップを小さくすることができ、回転速度を小さくし、左右駆動輪間の回転速度差を小さくすることができる。
ブレーキ制御部は、摩擦ブレーキのブレーキ力を制御するものであるが、摩擦ブレーキは、車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦材を、液圧により押し付ける液圧ブレーキであっても、電動モータの駆動力により押し付ける電動ブレーキであってもよい。
また、回転速度差低減部は、自動差動制限装置を有する車両において、自動差動制限装置を制御することにより、回転速度が大きい方の駆動輪に伝達される駆動トルクの回転速度が小さい方の駆動輪に伝達される駆動トルクに対する比率を小さくする駆動トルク分配比制御部を含むものとすることができる。駆動源および駆動伝達装置を含む駆動・駆動伝達系と、左側駆動輪、右側駆動輪との間に、自動差動制限装置が設けられた車両において、駆動・駆動伝達系の出力トルクが、左側駆動輪と右側駆動輪とに分配される場合に、その分配比率が自動で制御されるようにするのである。
さらに、回転速度差低減部は、左側駆動輪と右側駆動輪とのうち、駆動スリップが大きい方の車輪に設けられたホイールインモータを制御して、その車輪に加えられる駆動トルクを小さくして、回転速度を小さくする駆動トルク個別制御部を含むものとすることができる。
回転速度差低減部は、ブレーキ力制御部、駆動トルク分配比制御部、駆動トルク個別制御部のうちの1つ以上を含むものとしたり(3つのうちの1つを含む場合、任意の2つを含む場合、3つを含む場合がある)、これら以外のものをさらに含むものとしたりすることができる。ブレーキ、自動差動制限装置、ホイールインモータ等の制御が併せて行われるようにすれば、左右駆動輪の間の回転速度差を、速やかに小さくすることができる。
開始しきい値変更部は、請求項3に記載のように、前記車両が上り坂を走行していることを取得する登坂路取得部を含むものとすることが望ましい。
駆動・駆動伝達系の作動状態と、車両の実際の走行状態(車両の走行速度や前後加速度)とを比較して、車両の走行状態が、駆動・駆動伝達系の作動状態に対して、十分でない場合には、上り坂を走行しているとすることができる。例えば、車両の実際の前後方向の加速度あるいは走行速度が、駆動・駆動伝達系の作動状態で決まる車両の前後方向の加速度あるいは走行速度(車両が平坦な路面を走行していると想定した場合の前後方向の加速度あるいは走行速度)に対して小さい場合には、上り坂を走行しているとすることができる。駆動・駆動伝達系の作動状態は、駆動源および駆動伝達装置における実際の作動状態(制御状態)に基づいて取得することができるが、アクセル操作部材の操作状態、車両の走行状態(走行速度)、シフトポジション等に基づいて推定することもできる。シフトポジションが、車両の走行速度等に基づいて自動で決まる場合には、シフトポジションを考慮する必要性は低い。
車両の実際の走行状態には、車両の実際の走行速度、実際の前後加速度(例えば、対地車速センサを利用して取得することができる)、駆動スリップが小さい車輪の回転加速度等が該当する。駆動スリップが小さい車輪の回転加速度(周加速度)は車両の進行方向の実際の加速度とみなすことができる。
また、回転速度が最も小さい車輪は、またぎ路走行中において高μ側の路面に接している車輪であり、駆動スリップが小さい車輪である。したがって、回転速度が最小である車輪の回転加速度に基づけば、またぎ路走行中であっても、上り坂を走行しているか否かを検出することができる。
なお、駆動・駆動伝達系の作動状態で決まる前後加速度から、車両の実際の前後加速度を引いた値が大きい場合は、小さい場合より路面勾配が大きいとすることも可能である。
開始しきい値変更部は、請求項4に記載のように、前記登坂路取得部によって前記車両が上り坂を走行していることが取得された場合に、そうでない場合より、前記開始しきい値を予め定められた設定値だけ小さい値とする手段を含むものとすることができる。
例えば、上り坂を走行している場合の開始しきい値(以下、登坂路用開始しきい値と称する)をΔVwdとし、そうでない場合(例えば、平坦な路面を走行している場合、下り坂を走行している場合)の開始しきい値(以下、標準開始しきい値と称する)をΔVwcとした場合に、登坂路用開始しきい値ΔVwdを、標準開始しきい値ΔVwcより、予め定められた設定値Swだけ小さい値とすることができる。
ΔVwd=ΔVwc−Sw
また、登坂路用開始しきい値ΔVwdを、標準開始しきい値ΔVwcに、予め定められた設定比率γw(0<γw<1)を掛けた値とすることができる。
ΔVwd=ΔVwc・γw
さらに、標準開始しきい値ΔVwcは、予め定められた固定値としたり、さらに、操舵操作部材の操作量を考慮して決まる値としたりすることができる。固定値は、例えば、左右駆動輪が接する路面の摩擦係数が異なり、回転速度差低減制御を行う必要性があると考え得る大きさとすることができる。また、標準開始しきい値ΔVwcは、車両がまたぎ路でない路面を旋回している場合に生じる左右回転速度差を考慮して決めることもできる。ただし、回転速度差低減制御が必要となるまたぎ路走行中に生じる回転速度差が、旋回中に生じる回転速度差に比較して十分に大きい場合には、考慮する必要性は低い。
なお、路面勾配θの大きさが取得される場合には、勾配θが大きい場合は小さい場合より、登坂路用開始しきい値ΔVwdを小さい値とすることができる。登坂路用開始しきい値ΔVwdは、勾配θの増加に伴って連続的に小さくなる値としても、段階的に小さくなる値としてもよい。
以下、本発明の一実施例である回転速度制御装置について図面に基づいて説明する。
図1において、本実施例の回転速度制御装置を備えた車両は後輪駆動車であり、駆動輪10,12は後輪である。左側駆動輪10,右側駆動輪12には、駆動源14および駆動伝達装置16を含む駆動・駆動伝達系17の出力が、ディファレンシャル18,ドライブシャフト20,22を介して、それぞれ、伝達される。
なお、駆動源14は、エンジンを含むものであっても、駆動用の電動モータを含むものであってもよい。車両は、エンジン駆動車であっても、電気自動車であっても、ハイブリッド自動車であってもよいのである。
また、本車両の左側駆動輪10,右側駆動輪12(以下、左後輪10,右後輪12と称することがある)および左右前輪30,32には、それぞれ、摩擦ブレーキ40が設けられる。前後左右の各輪10,12,30,32の摩擦ブレーキ40の各々において、摩擦材のブレーキ回転体(車輪10,12,30,32とともに回転させられる)への押付力が、押付力制御アクチュエータ44によって個別に制御される。
本実施例において、摩擦ブレーキ40は、ブレーキシリンダ46の液圧により作動させられる液圧ブレーキであり、図2に、液圧ブレーキ40および押付力制御アクチュエータとしての液圧制御アクチュエータ44を含む液圧ブレーキ装置50の一例を示す。
液圧ブレーキ装置50には、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル54,マスタシリンダ56,動力液圧源58(後述するように液圧制御アクチュエータ44の構成要素である)等が含まれる。
動力液圧源58は、ポンプ64およびポンプモータ66を含むポンプ装置68と、アキュムレータ70とを含む。ポンプ64によってリザーバ72から作動液が汲み上げられて吐出され、アキュムレータ70に加圧された状態で蓄えられる。アキュムレータ70に蓄えられた作動液の液圧はアキュムレータ圧センサ74によって検出されるが、アキュムレータ圧センサ74によって検出された液圧が予め定められた設定範囲内にあるように、ポンプモータ66が制御される。符号75は、リリーフ弁を表す。
液圧ブレーキ40は、それぞれ、ブレーキシリンダ46を含む。ブレーキシリンダ46の液圧により、摩擦材がブレーキ回転体に押し付けられることにより、摩擦材とブレーキ回転体とが摩擦係合させられ、ブレーキ回転体の回転が抑制されて、車輪10,12,30,32の回転が抑制される。
マスタシリンダ56は、ダンデム式のものであり、2つの加圧室を含む。2つの加圧室には、それぞれ、左前輪30のブレーキシリンダ46、右前輪32のブレーキシリンダ46が接続される。左前輪30、右前輪32のブレーキシリンダ46と加圧室の各々との間には、マスタ遮断弁80,82が設けられる。マスタ遮断弁80,82は常開の電磁開閉弁である。
前後左右の各輪10,12,30,32のブレーキシリンダ46には動力液圧源58が接続される。動力液圧源58とブレーキシリンダ46の各々との間には、常閉の保持弁86が設けられ、左右前輪30,32のブレーキシリンダ46とリザーバ72との間には、常閉の減圧弁88が設けられ、左右後輪10,12のブレーキシリンダ46とリザーバ72との間には、常開の減圧弁89が設けられる。保持弁86、減圧弁88、89はリニア弁であり、ソレノイドへの供給電流の連続的な制御により、バルブ開度が連続的に制御可能なものである。保持弁86については、前後の差圧が同じ場合において、図3(a)に概念的に示すように、ソレノイドへの供給電流量Iが大きくなるのに伴って開度Aが連続的に大きくされる。なお、図示は省略するが、減圧弁89については、前後の差圧が同じ場合において、ソレノイドへの供給電流量Iが大きくなるのに伴って開度Aが連続的に小さくなる関係にある。
また、マスタ遮断弁80より上流側には、シミュレータ装置90が設けられる。ストロークシミュレータ92は、マスタ遮断弁80,82の閉状態において、マスタシリンダ56に連通させられる。
液圧ブレーキ装置50において、システムが正常である場合には、マスタ遮断弁80,82が閉状態とされる。左右前輪30,32のブレーキシリンダ46がマスタシリンダ56から遮断された状態で、動力液圧源58の作動液を利用して、左右前輪30,32のブレーキシリンダ46の液圧が、保持弁86,減圧弁88の制御により制御され、左右後輪10,12のブレーキシリンダ46の液圧が、保持弁86,減圧弁89の制御により制御される。動力液圧源58の作動液が利用されるため、運転者によってブレーキペダル54が操作されなくても、ブレーキシリンダ46に液圧を供給することができるのであり、自動で液圧ブレーキ40を作動させることができる。本実施例においては、動力液圧源58,保持弁86,減圧弁88,89等により液圧制御アクチュエータ44が構成される。
駆動源14、駆動伝達装置16は駆動・駆動伝達系ECU100によって制御され、液圧制御アクチュエータ44はブレーキECU102によって制御される。駆動・駆動伝達系ECU100,ブレーキECU102は、それぞれ、コンピュータを主体とするものであり、実行部、記憶部、入出力部(CPU,ROM,RAM,I/F)等を含む。また、これらECU100,102は、CAN(Car Area Network)104を介して互いに接続され、情報の通信が行われる。
駆動・駆動伝達系ECU100には、アクセル操作部材としてのアクセルペダル110の操作量を検出するアクセル開度センサ112,シフトポジションを検出するシフトポジションセンサ114,駆動源14、駆動伝達装置16等が接続される。ブレーキECU102には、各車輪10,12,30,32の回転速度をそれぞれ検出する車輪速度センサ122,ブレーキシリンダ46の液圧をそれぞれ検出するブレーキシリンダ液圧センサ124(図2参照)、操舵部材としてのステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ126等が接続されるとともに、液圧制御アクチュエータ44等が接続される。
以上のように構成された車両がまたぎ路を走行している場合において、左右駆動輪10,12の間の回転速度差が大きくなった場合に、回転速度が大きい方の車輪(駆動スリップが大きい方の車輪)の液圧ブレーキ40が自動で作動させられて、回転速度差が小さくされる。
いわゆる、自動差動制限装置(Auto Limited Slip Differential)が設けられていない車両であっても、自動差動制限装置が設けられている場合と同様の効果が得られるように、液圧ブレーキ40が制御される。このように、左右回転速度差を小さくする制御(回転速度差低減制御)を、以下、ブレーキLSD制御と称することがある。
ブレーキLSD制御は、左右駆動輪10,12の回転速度差が開始しきい値ΔVwth以上であることを含む開始条件が成立した場合に開始され、終了条件が成立した場合に終了する。
本実施例において、アクセルペダル110が操作中であり(アクセル開度センサ112によって検出されたアクセル開度が、アクセルペダル110の踏込み操作が行われているとみなし得る設定値以上であり)、かつ、左側駆動輪10の回転速度VwLと右側駆動輪12の回転速度VwRとの差の絶対値が開始しきい値ΔVwth以上である場合に、開始条件が成立したとされる。
|VwL−VwR|>ΔVwth
なお、左右回転速度差の絶対値が開始しきい値以上であることは、またぎ路走行中であることの判定条件であると考えることもできる。
ブレーキLSD制御においては、左側駆動輪10と右側駆動輪12とのうち、回転速度が大きい方の車輪が制御対象輪とされ、回転速度が小さい方の車輪が基準輪とされて、制御対象輪の回転速度である実回転速度Vwが基準輪の回転速度である目標回転速度Vw*とほぼ同じになるように、制御対象輪のブレーキシリンダ46の液圧が制御される。
−δ<Vw−Vw*<δ
制御対象輪のブレーキシリンダ46の液圧は、実回転速度Vwから目標回転速度Vw*を引いた値である偏差(ε=Vw−Vw*)が予め定められた設定範囲内にある場合(上式が成立する場合)には保持され、偏差εが正の設定値δ以上である場合(実回転速度Vwが目標回転速度Vw*より設定値δ以上大きい場合)には、増加させられ、偏差εが設定値(−δ)以下である場合(実回転速度Vwが目標回転速度Vw*より設定値δ以上小さい場合)には、減少させられる。
そして、制御対象輪に対応する保持弁86,減圧弁89のソレノイドへの供給電流は、偏差εに応じて制御されるのであり、例えば、PID制御あるいはPD制御等が行われる。保持弁86の開度Aは、図3(b)に概念的に示すように、偏差εが大きい場合は小さい場合より大きくされる。偏差εが大きい場合は小さい場合よりバルブ開度Aが大きくされて、ブレーキシリンダ46に作動液が流入させられる場合の流量が大きくされ、液圧の増加勾配が大きくされる。それによって、実回転速度Vwを目標回転速度Vw*に速やかに近づけることが可能となる。なお、減圧弁89についても同様である。
上述の開始しきい値ΔVwthの標準値は標準開始しきい値ΔVwcとされ、上り坂を走行していることが検出された場合には、それより、設定値Sw(Sw>0)だけ小さい値(登坂路用開始しきい値)ΔVwdとされる。
ΔVwd=ΔVwc−Sw
標準開始しきい値ΔVwcは、本実施例においては、予め定められた固定値であり、左側駆動輪10が接する路面の路面μと右側駆動輪12が接する路面の路面μとの差が設定値以上である場合に生じる回転速度差であって、ブレーキLSD制御を行う必要性が高いと考え得る大きさとされる。
車両が上り坂を走行しているか否かは、駆動・駆動伝達系17の作動状態から推定される前後加速度(以下、駆動加速度GAと称する)と、車両の実際の前後加速度(実加速度)Gとを比較し、駆動加速度GAから実加速度Gを引いた値が予め定められた設定値Sd(Sg>0)より大きい場合に、上り坂を走行しているとされる。
A−G>Sg
本実施例において、駆動加速度GAは、アクセル開度センサ112によって検出されたアクセルペダル110の踏込量、車両の走行速度Vs、シフトポジションセンサ114によって検出されたシフトポジション等に基づいて決定される。車両の走行速度Vsは、前後左右の各輪10,12,30,32の回転速度に基づいて推定される。車両が平坦な路面を走行していると仮定した場合の前後加速度が推定されるのである。
実加速度Gは、車輪10,12,30,32のうち、回転速度が最も小さい車輪の回転加速度Gwに基づいて求められる。回転速度が最も小さい車輪は、駆動スリップが小さい車輪であると推定される。駆動スリップが生じていない車輪の回転加速度Gw(周加速度)は車両の実際の進行方向における前後加速度Gであるとみなすことができる。
また、回転速度が最も小さい車輪の回転加速度Gwに基づくようにすれば、またぎ路走行中においても、車両が上り坂を走行しているか否かを検出することが可能である。回転速度が最も小さい車輪は、高μ側の車輪であり、駆動スリップが生じていないと推定される。
上り坂を走行している場合には、運転者によるアクセルペダル110の踏込量が、そうでない場合より、大きくされるのが普通である。そのため、上り坂でまたぎ路を走行している場合には、路面μが低い側の路面に接する駆動輪の駆動スリップが大きくなり易く、左右駆動輪間の回転速度差が大きくなり易い。
その結果、車両が上り坂で、またぎ路を走行している場合には、そうでない場合より、ブレーキLSD制御において、応答遅れ等に起因して、偏差が大きくなり易く、制御対象輪のブレーキシリンダ46の液圧の増加勾配が大きくなり、作動音が大きくなったり、振動が大きくなったりする。また、ブレーキLSD制御に要する時間が長くなる。
そこで、本実施例においては、開始しきい値が、車両が上り坂を走行している場合にはそうでない場合より小さくされて、早期にブレーキLSD制御が開始されるようにする。その結果、速やかに回転速度差を小さくすることができ、作動音や振動を抑制することが可能となる。
なお、(i)左右駆動輪間の回転速度差の絶対値が終了しきい値以下となり、かつ、制御対象輪のブレーキシリンダ46の液圧が予め定められた設定値以下になったことと、(ii)アクセルペダル110の操作が解除されたこととの少なくとも一方が満たされた場合に、終了条件が成立したとされる。
図4のフローチャートで表される開始しきい値決定ルーチンは、予め定められた設定時間毎に、駆動・駆動伝達系ECU102において実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、車両が上り坂を走行しているか否かが判定される。この場合、実加速度Gを表す情報等は、ブレーキECU102からCAN104を介して供給される。駆動加速度GAが実加速度Gより設定値Sg以上大きくない場合には、車両が上り坂を走行していない(例えば、平坦路を走行している)と判定され、S2の判定がNOとなり、S3において、開始しきい値ΔVwthが標準しきい値ΔVwcとされる。それに対して、駆動加速度GAが実加速度Gより設定値Sg以上大きい場合には、上り坂を走行していると判定され、S4において、開始しきい値ΔVwthが上り坂用しきい値ΔVwdとされる。
図5のフローチャートで表されるブレーキLSD制御ルーチンは、予め定められた設定時間毎に、ブレーキECU102において実行される。S11において、ブレーキLSD制御中であるか否かが判定され、制御中でない場合には、S12において、開始条件が満たされるか否かが判定される。左右後輪10,12の回転速度VwL,VwRがそれぞれ検出され、これらの差の絶対値が開始しきい値ΔVwth以上であるか否か等が判定されるのである。開始しきい値ΔVwthを表す情報、アクセルペダル110が操作中であるか否かを表す情報等は、駆動・駆動伝達系ECU102からCAN104を経て供給される。開始条件が満たされない場合には、判定はNOとなり、以下、S11,12が繰り返し実行される。
開始条件が満たされると、S12の判定がYESとなり、S13において、ブレーキLSD制御が行われる。上述のように、制御対象輪の液圧ブレーキ40の液圧が、目標回転速度Vw* と実回転速度Vwとの差である偏差εに応じて制御されるのである。
次に、本プログラムが実行される場合には、S11の判定がYESとなるため、S14において、終了条件が満たされるか否かが判定される。
終了条件が成立しない場合には、S13においてブレーキLSD制御が継続して実行される。終了条件が成立するまでの間、S11,14,13が繰り返し実行され、終了条件が満たされると、S14がYESとなり、S15において、ブレーキLSD制御の終了処理が行われる。例えば、液圧制御アクチュエータ44において、各制御弁が図示する原位置に戻される。
本実施例においては、車両が上り坂を走行している場合には、開始しきい値ΔVwthが上り坂用開始しきい値ΔVwdとされるため、ブレーキLSD制御が早期に開始される。その結果、速やかに回転速度差を小さくすることができ、ブレーキLSD制御に要する時間を短くすることができる。
また、目標回転速度Vw*と実回転速度Vwとの差である偏差εが過大になることが回避されるため、ブレーキシリンダ46の液圧の増加勾配を小さくすることができ、大きな作動音が発せられたり、大きな振動が生じたりすることを回避することができる。
さらに、ブレーキLSD制御において要する消費エネルギを低減させることもできる。
以上のように、本実施例において、駆動・駆動伝達系ECU100,ブレーキECU102,車輪速センサ122,液圧制御アクチュエータ44等によって回転速度制御装置が構成される。駆動・駆動伝達系ECU100の図4のフローチャートで表される開始条件決定ルーチンを記憶する部分、実行する部分等により開始しきい値変更部が構成され、ブレーキECU102の図5のフローチャートで表されるブレーキLSD制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により回転速度差低減部が構成される。回転速度差低減部は、ブレーキ力制御部でもある。また、開始しきい値変更部のうちのS2を記憶する部分、実行する部分等により登坂路検出部が構成され、S4を記憶する部分、実行する部分等により登坂路である場合に開始しきい値を小さくする手段が構成される。
なお、上記実施例においては、ブレーキ制御装置が搭載された車両が後輪駆動車であったが、ブレーキ制御装置が搭載された車両は前輪駆動車であっても、四輪駆動車であってもよい。
また、駆動加速度GAから実加速度Gを引いた値が大きい場合は小さい場合より、勾配θが大きいと推定することができる。この場合には、勾配θが大きい場合は、小さい場合より、開始しきい値ΔVwthをより小さい値に変更することもできる。
駆動加速度GA、実加速度G、路面勾配による加速度(g・sinθ:θは路面勾配)の間には、式
A−G=g・sinθ
が、成立するため、駆動加速度GA、実加速度Gに基づけば、路面勾配θを推定することができる。
さらに、車両が旋回中である場合には、旋回に起因する左右回転速度差ΔVs(例えば、操舵角センサ126によって検出された操舵角、走行速度等に基づいて取得することができる)を考慮して開始条件が満たされるか否かが判定されるようにすることができる。例えば、旋回外輪の回転速度Vwoから旋回内輪の回転速度Vwiを引いた値から、さらに、旋回に起因する左右回転速度差ΔVsを引いた値の絶対値が、開始しきい値ΔVwthより大きい場合にまたぎ路走行中であるとすることができる。
|(Vwo−Vwi)−ΔVs|>ΔVwth
また、左右駆動輪10,12の回転速度差が開始しきい値以上である場合には、駆動源14の出力が小さくされるようにすることもできる。
さらに、摩擦ブレーキは電動ブレーキとする等、本発明は、上述の記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施種々の態様で、実施することができる。
本発明の一実施例である回転速度制御装置を含むブレーキ制御装置が搭載された車両全体を示す概念図である。 上記ブレーキ制御装置を含むブレーキ装置の回路図である。 (a)上記ブレーキ制御装置に含まれる保持弁のソレノイドへの供給電流量と開度との関係を示すグラフである。(b)上記保持弁のソレノイドへの供給電流量を決定する供給電流量決定テーブルを概念的に示すマップである。 上記駆動・駆動伝達系ECUの記憶部に記憶された開始条件決定プログラムを表すフローチャートである。 上記ブレーキECUの記憶部に記憶されたブレーキLSD制御プログラムを表すフローチャートである。
符号の説明
10,12:駆動輪 14:駆動源 16:駆動伝達装置 40:液圧ブレーキ 44:液圧制御アクチュエータ 50:液圧ブレーキ装置 58:動力液圧源 86:保持弁 100:駆動・駆動伝達系ECU 102:ブレーキECU 112:アクセル開度センサ 122:車輪速センサ

Claims (4)

  1. 車両の左側駆動輪と右側駆動輪との間の回転速度差が開始しきい値以上の場合に、回転速度が大きい方の車輪の回転速度を小さくする回転速度差低減部と、
    前記開始しきい値を、前記車両が上り坂を走行している場合に、そうでない場合より小さい値とする開始しきい値変更部と
    を含むことを特徴とする回転速度制御装置。
  2. 前記回転速度差低減部が、前記左側駆動輪と前記右側駆動輪とにそれぞれ設けられた摩擦ブレーキのブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ力制御部を含む請求項1に記載の回転速度制御装置。
  3. 前記開始しきい値変更部が、前記車両が上り坂を走行していることを取得する登坂路取得部を含む請求項1または2に記載の回転速度制御装置。
  4. 前記開始しきい値変更部が、前記登坂路取得部によって前記車両が上り坂を走行していることが取得された場合に、そうでない場合より、前記開始しきい値を予め定められた設定値だけ小さい値とする手段を含む請求項3に記載の回転速度制御装置。
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