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JP2009268834A - 視覚再生補助装置 - Google Patents

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JP2009268834A
JP2009268834A JP2008124026A JP2008124026A JP2009268834A JP 2009268834 A JP2009268834 A JP 2009268834A JP 2008124026 A JP2008124026 A JP 2008124026A JP 2008124026 A JP2008124026 A JP 2008124026A JP 2009268834 A JP2009268834 A JP 2009268834A
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Yasuo Terasawa
靖雄 寺澤
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Nidek Co Ltd
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Abstract

【課題】 電極が網膜と離れた位置に置かれていても効率よく網膜を構成する細胞を電気刺激することのできる視覚再生補助装置を提供する。
【解決手段】 所定のパターンにて形成され患者の網膜を構成する細胞を電気刺激するために脈絡膜または強膜に設置される複数の電極と、電極に接続され電気刺激パルス信号を電極から出力させる制御手段と、複数の電極と対となり,網膜を構成する細胞を貫通するように電気刺激パルス信号の電流経路を形成するための帰還電極と、を備える視覚再生補助装置において、網膜に当接するように配置され生体適合性を有すると共に絶縁性を有する素材にてフィルム状に形成される電流経路制限部材であって,電気刺激パルス信号の電流が通過可能で複数の電極の電極径と同程度の径か又は電極径よりも小さい径の貫通孔を複数の電極の数以上有した電流経路制限部材を有する。
【選択図】 図3

Description

本発明は患者の視覚を再生するための視覚再生補助装置に関する。
近年、失明治療技術の一つとして、複数の電極が形成された基板を有する体内装置を体内に埋植し、網膜を構成する細胞を電気刺激して視覚の再生を試みる視覚再生補助装置の研究がされている。このような視覚再生補助装置は、例えば、体外装置を用いて撮像された映像を所定の信号に変換して体内に設置された体内装置に送信し、電極から電気刺激パルス信号を出力して網膜を構成する細胞(又は組織)を電気刺激することにより、視覚の再生を試みる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、電極を網膜上や網膜下ではない位置(例えば強膜内)に置くとともに、帰還電極(不関電極)を硝子体内に設置し、網膜を構成する細胞を電気刺激する構成としている。
特開2004−57628号公報
特許文献1に示すような視覚再生補助装置は、電極を網膜上または網膜下に設置させない構成とすることにより、装置を眼内に設置する際の術式の容易さや患者への負担を軽減することができる。しかし、その一方で、電極が網膜に接触せず離れた位置に置かれることから、電極から出力される電気刺激パルス信号は、帰還電極へ向かって流れるものの、拡散しやすい。このため細胞を電気刺激する際の電気刺激効率が低下してしまう可能性がある。
上記従来技術の問題点に鑑み、電極が網膜と離れた位置に置かれていても効率よく網膜を構成する細胞を電気刺激することのできる視覚再生補助装置を提供することを技術課題とする。
上記技術課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 所定のパターンにて形成され患者の網膜を構成する細胞を電気刺激するために脈絡膜または強膜に設置される複数の電極と、該電極に接続され電気刺激パルス信号を前記電極から出力させる制御手段と、前記複数の電極と対となり,前記網膜を構成する細胞を貫通するように前記電気刺激パルス信号の電流経路を形成するための帰還電極と、を備える視覚再生補助装置において、前記網膜に当接するように配置され生体適合性を有すると共に絶縁性を有する素材にてフィルム状に形成される電流経路制限部材であって,前記電気刺激パルス信号の電流が通過可能で前記複数の電極の電極径と同程度の径か又は電極径よりも小さい径の貫通孔を前記複数の電極の数以上有した電流経路制限部材を有することを特徴とする。
(2) (1)の視覚再生補助装置において、前記複数の電極は基板上に所定の間隔で形成されており、前記貫通孔は、前記複数の電極の前記間隔と同じ間隔のパターンで前記電流経路制限部材に形成されることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の視覚再生補助装置において、前記電流経路制限部材の周辺部には、前記電流経路制限部材を前記網膜上に固定するために用いられる固定部を有することを特徴とする。
(4) (1)〜(3)のいずれかの視覚再生補助装置において、前記電流経路制限部材は、光透過性を有することを特徴とする。
本発明によれば、電極が網膜と離れた位置に置かれていても効率よく網膜を構成する細胞を電気刺激することができる。
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は視覚再生補助装置の外観を示した概略図、図2は視覚再生補助装置における体内装置を示す図である。
視覚再生補助装置1は、図1及び図2に示すように、外界を撮影するための体外装置10と、網膜を構成する細胞に電気刺激を与え視覚の再生を促す体内装置20とからなる。体外装置10は、患者が掛けるバイザ11と、バイザ11に取り付けられるCCDカメラ等からなる撮影装置12と、外部デバイス13、一次コイルからなる送信手段14等にて構成されている。
外部デバイス13には、CPU等の演算処理回路を有するデータ変調手段13a、視覚再生補助装置1(体外装置10及び体内装置20)の電力供給を行うためのバッテリ13bが設けられている。データ変調手段13aは、撮影装置12にて撮影した被写体像を画像処理し、さらに得られた画像処理後のデータを、視覚を再生するための電気刺激パルス用データに変換する処理を行う。送信手段14は、データ変調手段13aにて変換された電気刺激パルス用データ及び後述する体内装置20を駆動させるための電力を所定の信号、本実施形態では、電磁波として体内装置20側に伝送(無線送信)する。また、送信手段14の中心には図示なき磁石が取り付けられている。磁石は後述する受信手段31との位置固定に使用される。
バイザ11は眼鏡形状を有しており、図1に示すように、患者の眼前に装着して使用することができるようになっている。また、撮影装置12はバイザ11の前面に取り付けてあり、患者に視認させる被写体を撮影することができる。
次に、体内装置20の構成を説明する。図2(a)は、体内装置20の外観を示し、図2(b)は刺激部40及びシート60の側方向からの断面図である。体内装置20は、大別して体外装置10から送信される電気刺激パルス信号用データや電力を電磁波にて受け取る受信部30と、網膜を構成する細胞を電気刺激する刺激部40により構成される。また、シート60は、刺激部40に対向するように配置され、用いられる。
受信部30には、体外装置10からの電磁波を受信する2次コイルからなる受信手段31と、体内装置20の制御部32が設けられている。制御部32は、受信手段31にて受信された電気刺激パルス用データと電力とを分けるとともに、電気刺激パルス用データと電力を基に、視覚を得るための電気刺激パルス信号と、電気刺激パルス信号と対応する(電気刺激パルス信号を出力させる)電極を指定する電極指定信号等を含む制御信号とに変換し、刺激部40へ送信するための役割を持っている。
受信手段31と制御部32は、基板33上に形成されている。なお、受信部30には送信手段14を位置固定させるための図示なき磁石が設けられている。また、帰還電極(不関電極、対向電極)34は、その先端が眼内に置かれ網膜を挟んで電極44に対向して配置されることにより、効率的よく細胞等を電気刺激するための部材である。具体的には、帰還電極34は、各電極44と対となり、電極44から出力される電気刺激パルス信号の電流経路が網膜を貫通させる役割を持つ。従って、帰還電極44は、電極44とで網膜を挟むように対向して配置される構成に限るものではない。
また、刺激部40は、電気刺激パルス信号を出力する複数の電極44、刺激制御部42(制御手段)、これらが設置される基板43で構成される。各電極44は、所定のパターン(例えば、正方格子状、六方格子状等)、ここでは、5×5の正方行列状にて基板43上に形成され、各々が刺激制御部42に接続される(後述)。電極44のパターンにおいて、縦横を規定した際に、縦の電極44間の間隔(電極44の外壁間の距離)及び横の電極44間の間隔が一定、例えば、100〜500μm程度とされる。
刺激制御部42は、制御部32から送られてきた制御信号(電極指定信号を含む)に基づいて、対応する電気刺激パルス信号を電極44の各々へ振り分けるマルチプレクサ機能を有する。電極44には生体適合性が高い貴金属が用いられる。各電極44は、貴金属の薄膜形成又は貴金属塊からの切り出し成型等により形成され、外径が100〜500μm、高さ(基板43から突出した高さ)が50〜500μm程度とされる。基板43は、眼内、特に、層状の眼組織内に設置されるため、眼球の形状に沿うことが好ましく、層間(層内)に長期埋植されても患者の負担が少ないことが好ましい。このため、基板43は、生体適合性が高く、所定の厚さにおいて折り曲げ可能(フレキシブル)な素材を長手方向に延びた平板状に加工したものを用いる。基板43の厚みは、10〜100μmとされる。この基板43には、電極44と刺激制御部42とを電気的に接続する導線であるワイヤ41が配置される。ワイヤ41は、生体適合性の高い貴金属で形成され、ワイヤ41の厚み(径)は、基板43のフレキシブル性や長期設置性に好ましい程度の厚み、例えば、10〜100μmとされる。
刺激制御部42は、各半導体素子の組合せにより機能を果たす半導体の集積回路であり、半導体基板上に集積回路を機能させるパターン配線が形成された面を基板43側にして接合されている。また、詳細な説明は略すが、刺激制御部42は、その周囲をメッキなどに覆われており、生体からの浸潤等を低減させる構成とされる。なお、刺激制御部42は、セラミックスや金属にて形成された気密ケースを用いて密封処理される構成としてもよい。このような場合、刺激制御部42は、ケースに設けられたビアを介してワイヤ41と接続される。
また、体内において離れた位置に置かれる受信部30と刺激部40(刺激制御部42)とは複数のワイヤ(導線)にて接続され電気的に接続されている。これらの複数の導線は取扱いがし易いように生体適合性を有する樹脂にて包埋され、ケーブル50として用いられる。
なお、図示は略すが、受信部30は、ケーブル50、帰還電極34を外に出して、気密性の高い容器に収められ、その容器の蓋を密閉される。さらに、容器の上から生体適合性がよく絶縁性を有する樹脂等でコーティングされる。これにより、受信部30はハーメチックシールされる。
図2に示すシート60は、体内装置20とは分離された別部材であり、眼内に設置することによって、刺激部40(電極44)から出力される電気刺激パルス信号の拡散を防ぐための電流経路制限部材となる。詳細は後述するが、シート60は、刺激部40と共に患者眼の眼内に設置され、シート60と電極44とで患者眼の網膜を挟むように対向して設置される。シート60は、生体適合性を有すると共に絶縁性を有する素材、例えば、ポリプロピレン、パリレン、ポリイミド、シリコーン等の樹脂をフィルム状(10〜100μm程度)としたものをベース61とし、ベース61に複数の貫通孔62がレーザ加工又は穿孔加工等により所定のパターンにて形成されて構成される。なお、ベース61は光を透過する(光透過性を有する)構成とされ、好ましくは透明とされる。また、ベース61は、眼球の曲率に合うように、予め湾曲した構成としてもよい。
この貫通孔61は、電極44の径以下で、電気刺激パルス信号の電流が通過可能(体液が通過可能)な程度の径とされ、具体的には、10〜500μm程度とされる。ここで、シート60のベース61が有する絶縁性は、貫通孔62に電流が流れ、相対的にベース61に電流が流れない程度を指すものとする。また、複数設けられた貫通孔62は、電極44と同様のパターン、ここでは、正方行列状に形成され、貫通孔62間の間隔も電極44と同様とされる。従って、貫通孔62同士の中心間間隔と電極44同士の中心間間隔が同じとされる。また、所定のパターンで形成された貫通孔62の外周(外縁)は、所定のパターンで配置された複数の電極44の外周以上に長く形成される。従って、貫通孔62の配置数は、電極44の配置数以上とされる。具体的には、貫通孔62は、5×5の正方行列よりも行列数の多いパターン、ここでは、11×11の正方行列とされる。
また、ベース61の周辺部(端部)には、シート60を眼内(網膜上)に固定するための固定部63が形成されている。ここで、固定部63はシート60を囲うように四方に配置される。固定部63は、板状の部材に縫合糸を通すための貫通孔があけられて構成される。網膜上に置かれた固定部63に縫合糸が通され、固定部63を網膜(又は強膜等)に縫い付けることで、シート60が網膜に固定される。なお、固定部としては、シート60(ベース61)の周辺部に設けられるものであればよく、タック等であってもよい。また、貫通孔62の周辺部に近いものを固定部の代わりに用いてもよい。
次に、このような体内装置20(刺激部40とシート60)の設置状態を説明する。図3は、刺激部40とシート60を患者眼Eの眼内に埋植した状態を示す模式図である。図示するように、基板43上に形成される電極44を脈絡膜E2に接触させた状態で、基板43の一部が、強膜E3と脈絡膜E2との間に設置される。また、基板43の刺激制御部42部分は、強膜E3の外側に置かれる。この基板43の設置は、強膜E3の一部を切開して強膜ポケットを形成させておき、この強膜ポケット内(脈絡膜E2と強膜との間)に基板43の電極部分を挿入し設置後、縫合等により基板43を固定することにより行われる。なお、本実施形態では、電極部分を強膜と脈絡膜との間に置くものとしているが、これに限るものではなく、強膜内(強膜組織の中)に置くことも可能である。
また、シート60は、眼内の網膜上に置かれ、網膜に当接した状態で沿うように設置される。このとき、個々の電極44対して、その直上に貫通孔ができるだけ位置するように、シート60の位置が合せられた後、固定部63に縫合糸が通されシート60が網膜E1に縫いつけられてシート60が固定される。
また、帰還電極34は図示するように眼内(硝子体内)に置かれる。このため、網膜E1は電極44と帰還電極34との間に位置することとなる。電極44から出力された電気刺激パルス信号は帰還電極34へと向かうため、電気刺激パルス信号は、網膜E1を通過することとなる。
また、シート60は網膜E1に当接して設置されている。これにより、電極44から出力される電気刺激パルス信号が拡散しにくくなり、電流密度が向上され、網膜を構成する細胞を効率的に刺激することができる(詳細は後述する)。
一方、受信手段31は、体外装置10に設けられた送信手段14からの信号(電気刺激パルス用データ及び電力)を受信可能な生体内の所定位置に設置される。例えば、図1に示すように、患者の側頭部の皮膚の下に受信部30(図では受信手段31のみ示している)を埋め込むとともに、皮膚を介して受信部30と対向する位置に送信手段14を設置しておく。受信部30には、送信手段14と同様に磁石が取り付けられているため、埋植された受信部30上に送信手段14を位置させることにより、磁力によって送信手段14と受信部30とが引き合い、送信手段14が側頭部に保持されることとなる。
なお、ケーブル50は、側頭部に埋め込まれた受信部30から側頭部に沿って皮膚下を患者眼に向かって延び、患者の上まぶたの内側を通して眼窩に入れられる。眼窩に入れられたケーブル50は、図3に示すように強膜E3の外側を通り、基板43に設置された刺激制御部42に接続される。
次に、シート60と電極44の位置関係と、シート60の役割について説明する。図4は、眼内に設置した電極44とシート60の一部を拡大した模式的断面図である。図4(a)では、シート60が電極44に対して好ましい状態で位置合せされた場合、図4(b)では、シート60が電極44に対してずれた状態で位置合せされた場合を示している。図において、電極44は脈絡膜E2に当接し、シート60は網膜E1上側に当接して配置されている。なお、説明の簡便のため、強膜は図示を略した。
ここでは、帰還電極の図示を略したが、前述したように、帰還電極はシート60を挟んで電極44に対向して位置し、図では上方に位置することとなる。従って、電極44から出力された電気刺激パルス信号は、脈絡膜E2,網膜E1、シート60(貫通孔62)を通過し、帰還電極へと到る。
図4(a)において、電極44の中心軸(基板43から突出する方向に延びる軸に沿う)L1と、貫通孔62の中心軸(貫通方向に沿って延びる軸を指す)L2とが、それぞれ合致している(図では、各電極44の真上に貫通孔62が位置している)。これが、好適にシート60と電極44(刺激部40)との位置が合わされた状態となる(実際には、図のような1次元上ではなく、2次元的に位置合せが行われる)。
ここで、ベース61は絶縁性を持つことから、電極44から出力される電気刺激パルス信号の電流は、帰還電極へと到る経路がベース61に一部が制限される(ベース61が抵抗となる)。このとき、ベース61を貫通するように形成された貫通孔62は、電解質である体液を通す開口を有するため、電流の経路を制限しない。このため、電極44から出力された電気刺激パルス信号の電流の大部分(図中矢印で示す)は、貫通孔62を通過して帰還電極34へと向かうこととなる。このとき、それぞれの電極44から出力された電気刺激パルス信号の電流の大部分は、それぞれの電極44に最も近いそれぞれの貫通孔62(ここでは、中心軸L1、L2が互いに合致する電極44と貫通孔62とが対応する)に到り、その電流はそれぞれ貫通孔62を通って帰還電極へと流れる。
また、電流が電極44の径よりも小さい貫通孔62へと向かうため、電極44から出力された電気刺激パルス信号の電流は、中心軸L1周辺から中心軸L2の周辺にかけて集中することとなる。これにより、電極44から出力される電気刺激パルス信号の電流密度が向上する。従って、それぞれの電極44から最も近い位置にあるそれぞれの貫通孔62に向かう間(対応する電極44と貫通孔62との間)に位置している網膜を構成する細胞が効率的に刺激されることとなる。これは、電流を制限する部材であるベース61に電流を通過させる貫通孔62が電極44の径以下で構成されるため、電流の集中が起こり易いためである。このため、シート60(貫通孔62)は、できるだけ網膜E1に当接していることが好ましい。
なお、貫通孔62の配置のパターンは、電極44から出力される電気刺激パルス信号の電流密度が向上する構成であればよく、電極44の間隔よりも短い間隔にて形成されていてもよい。
一方、図4(b)では、電極44の中心軸L1と貫通孔62の中心軸L2とがずれた状態で位置固定された例を示している。この場合であっても、シート60に形成される貫通孔62は、その形成間隔が電極44の形成間隔と同じであるため、位置ずれが生じていたとしても各電極44に対して最も近いとされる貫通孔62は各々対応づけられることとなる。したがって、図4(a)の場合と同様に、電極44から出力された電気刺激パルス信号の大部分の電流(図中矢印で示す)が、各電極44から最も近い位置にある対応する貫通孔62へと流れる(それぞれの電極44とそれぞれの貫通孔62が対応している)。この場合も、中心軸L1周辺から中心軸L2周辺に向かって大部分の電流が集中することとなり、各電極44から出力される電気刺激パルス信号の拡散が抑制され、電流密度が向上する。従って、それぞれの電極44に対応するそれぞれの貫通孔62との間に位置する網膜E1を構成する細胞が効率的に刺激されることとなる。特に、網膜E1に当接する貫通孔62付近の網膜E1を構成する細胞が効率的に刺激される。
なお、シート60に形成される貫通孔62は、電極44と同じ配置パターンにて形成されると共に、電極44の数よりも十分に多いため、シート60が電極44に対してずれた状態で位置合せされても、ベース61の周辺部に形成された貫通孔62のいずれかが各電極44に対応することとなる。このようにして、シート60の位置合せでずれが生じても、電極44に貫通孔62を対応させることができ、それぞれの電極44から出力される電気刺激パルス信号の電流密度を向上させることができる。
以上のような構成を備える視覚再生補助装置1において、図5に示す視覚再生補助装置1の制御系ブロック図に基づいて、その動作を説明する。
図1に示す撮影装置12により撮影された被写体の撮影データ(画像データ)は、データ変調手段13aに送られる。データ変調手段13aは、撮影した被写体を患者が認識するために必要となる所定のデータパラメータ(電気刺激パルス用データ)に変換し、さらに電磁波として伝送するのに適した変調信号を生成し、送信手段14より電磁波として体内装置20側に送信する。
また同時に、データ変調手段13aは、バッテリ13bから供給されている電力を前述した変調信号(電気刺激パルス用データ)の帯域と異なる帯域の電磁波として前記変調信号と合わせて体内装置20側に送信する。
体内装置20側では、体外装置10より送られてくる変調信号と電力とを受信手段31にて受け取り、制御部32に送る。制御部32では受けとった信号から、電力を得ると共に変調信号が使用する帯域の信号を抽出するとともに、この変調信号に基づいて電気刺激パルス用パラメータ信号と制御信号とを形成し、電極指定信号である制御信号を刺激制御部42に送信する。
刺激制御部42は、受け取った信号に基づき電力及び制御信号を抽出する。刺激制御部42は、制御信号に基づき制御部32から供給される電気刺激パルス信号を各電極44に分配し、出力させる。各電極44から出力される電気刺激パルス信号は、帰還電極34へと向かって脈絡膜E2,網膜E1、シート60を通過する。このとき、それぞれの電極44に対応するシート60に設けられたそれぞれの貫通孔62に向かって電気刺激パルス信号の電流が流れ、この電流の密度が増す。また、貫通孔62付近では、電気刺激パルス信号の電流の集中が起こる。これにより、それぞれの電極44と対応する貫通孔62の間に位置する網膜E1を構成する細胞が効率的に刺激され、患者は視覚(擬似光覚)を得る。
ここで、シート60が透明であるため、外界からの光がシート60を透過して網膜E1に結像できる。これにより、患者眼の網膜E1で視機能を持った細胞が残存している場合に残存した細胞による光の知覚を利用することができる。なお、シート60は必ずしも光透過性を有していなくてもよい。また、以上説明した本実施形態では、シート60を網膜上に置くものとしているが、これに限るものではなく、網膜下(脈絡膜と網膜との間)に置くこともできる。
なお、以上説明した本実施形態では、シートに形成した貫通孔は、電気刺激パルス信号を出力する電極の電極径よりも小さい(ここでは、半分程度の径)としたが、これに限るものではない。貫通孔の径は、電極にて出力される電気刺激パルス信号の電流が通過可能で、電流経路を制限できる程度であればよく、貫通孔に対応する電極から出力される電気刺激パルス信号(の電流)の大部分が、この貫通孔に流れ込む構成であればよい。具体的には、電極から出力される電気刺激パルス信号の電流の広がりがシート付近(網膜付近)で制限され、網膜を構成する細胞を好適に刺激できるような貫通孔の径であればよく、電極径と同程度であってもよい。例えば、電極が網膜から離れた位置に配置されるにつれ、網膜付近での電気刺激パルス信号の電流の広がりは大きくなる。従って、このような場合、貫通孔の径が電極径と同程度(例えば、電極径より若干大きい場合)であっても、貫通孔で電気刺激パルス信号の電流経路は制限され、電気刺激パルス信号は網膜を構成するに充分な電流密度を持つこととなる。
視覚再生補助装置1の外観を示した概略図である。 視覚再生補助装置1の体内装置20を示した概略図である。 刺激部40及びシート60を体内に設置した状態を示した図である。 眼内に設置された電極44とシート60の拡大断面図である。 視覚再生補助装置1の制御系を示したブロック図である。
符号の説明
1 視覚再生補助装置
10 体外装置
20 体内装置
30 受信部
31 受信手段
32 制御部
34 帰還電極
40 刺激部
42 刺激制御部
43 基板
44 電極
50 ケーブル
60 シート
62 貫通孔

Claims (4)

  1. 所定のパターンにて形成され患者の網膜を構成する細胞を電気刺激するために脈絡膜または強膜に設置される複数の電極と、該電極に接続され電気刺激パルス信号を前記電極から出力させる制御手段と、前記複数の電極と対となり,前記網膜を構成する細胞を貫通するように前記電気刺激パルス信号の電流経路を形成するための帰還電極と、を備える視覚再生補助装置において、
    前記網膜に当接するように配置され生体適合性を有すると共に絶縁性を有する素材にてフィルム状に形成される電流経路制限部材であって,前記電気刺激パルス信号の電流が通過可能で前記複数の電極の電極径と同程度の径か又は電極径よりも小さい径の貫通孔を前記複数の電極の数以上有した電流経路制限部材を有する
    ことを特徴とする視覚再生補助装置。
  2. 請求項1の視覚再生補助装置において、前記複数の電極は基板上に所定の間隔で形成されており、
    前記貫通孔は、前記複数の電極の前記間隔と同じ間隔のパターンで前記電流経路制限部材に形成されることを特徴とする視覚再生補助装置。
  3. 請求項1又は2の視覚再生補助装置において、前記電流経路制限部材の周辺部には、前記電流経路制限部材を前記網膜上に固定するために用いられる固定部を有することを特徴とする視覚再生補助装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかの視覚再生補助装置において、前記電流経路制限部材は、光透過性を有することを特徴とする視覚再生補助装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118454113A (zh) * 2024-03-26 2024-08-09 杭州暖芯迦电子科技有限公司 磁吸式人工视网膜及其制造方法

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