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JP2009259601A - ナトリウムイオン二次電池用電極活物質およびその製造方法 - Google Patents

ナトリウムイオン二次電池用電極活物質およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】充放電を繰り返した際のサイクル効率に優れる非水電解質二次電池を与えることのできる電極活物質及びその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶構造がカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有することを特徴とするナトリウムイオン二次電池用電極活物質。Na化合物、Fe化合物およびM(但し、MはNaとFeと除く1種以上の金属元素である。)を含む化合物からなる混合物を酸化性雰囲気下、650℃以上1300℃以下で焼成することを特徴とする、以下の式(I)で表される複合酸化物からなる電極活物質の製造方法。
NaxFe(2-y)y4 (I)
(式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池用電極活物質およびその製造方法に関する。特に、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質およびその製造方法に関する。
ポータブル電子機器用の非水電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池が実用化されており、広く用いられている。近年、リチウムイオン二次電池はハイブリッド自動車、電力貯蔵用途等の中型・大型用途においてもその適用が試みられている。しかし、現在使用されているリチウムイオン二次電池の電極活物質には、資源的に豊富とはいえないリチウムが使用されており、また、特に正極活物質に、資源としての埋蔵量が少なく高価なコバルトやニッケルが用いられていることが多い。そのため、資源として豊富で安価な元素を用いる非水電解質二次電池用電極活物質が求められている。
そこで、資源として埋蔵量豊富なナトリウムや鉄を含む複合酸化物が非水電解質二次電池用の電極活物質として提案されており、ナトリウムイオン二次電池のようなより安価な非水電解質二次電池を実現できるものとして期待されている。
そして、前記複合酸化物として、非特許文献1では、層状構造であるNaFeO2が提案され、これを電極活物質として用いることが報告されている。
マテリアルズ・リサーチ・ブレティン(Materials Research Bulletin)、(米国)、ペルガモン プレス(Pergamon Press)、1994年、Vol.29、No.6、p.659−666
しかしながら、上記のNaFeO2からなる電極活物質を正極活物質として用いたナトリウムイオン二次電池は、充放電を繰り返した際の放電容量のサイクル効率の観点で十分とは言えず、NaFeO2はナトリウムイオン二次電池用電極活物質として十分に使用可能であるとは言い難い。
そこで本発明の目的は、充放電を繰り返した際の放電容量のサイクル効率をより高めた非水電解質二次電池を与えることのできる電極活物質を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。すなわち、本発明は、下記の<1>〜<12>の発明に係るものである。
<1> 結晶構造がカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有するナトリウムイオン二次電池用電極活物質。
<2> 前記ナトリウム複合酸化物が、以下の式(I)で表される前記<1>記載の電極活物質。
NaxFe(2-y)y4 (I)
(式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
<3> 前記Mが、第4、5、6および14族元素から選ばれる1種以上の金属元素である前記<2>記載の電極活物質。
<4> 前記Mが、Ti、Sn、MoおよびNbから選ばれる1種以上の金属元素である前記<2>または<3>記載の電極活物質。
<5> 前記Mが、TiとMoとからなる前記<2>から<4>のいずれかに記載の電極活物質。
<6> Na化合物、Fe化合物およびM(但し、MはNaとFeと除く1種以上の金属元素である。)を含む化合物からなる混合物を酸化性雰囲気下、650℃以上1300℃以下で焼成する、以下の式(I)で表される複合酸化物からなる電極活物質の製造方法。
NaxFe(2-y)y4 (I)
(式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
<7> 前記Mが、Ti、Sn、Mo、およびNbから選ばれる1種以上の金属元素である前記<6>記載の電極活物質の製造方法。
<8> 前記Mが、TiとMoとからなる前記<7>記載の電極活物質の製造方法。
<9> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の電極活物質、導電材およびバインダーを含んでなるナトリウムイオン二次電池用電極。
<10> 前記<9>記載の電極を用いてなるナトリウムイオン二次電池。
<11> セパレータを更に有する前記<10>記載のナトリウムイオン二次電池。
<12> セパレータが、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層多孔質フィルムからなるセパレータである前記<11>記載のナトリウムイオン二次電池。
本発明の電極活物質を用いれば、充放電を繰り返す際の放電容量のサイクル効率がより高く、二次電池としての特性が優れた非水電解質二次電池を製造することができる。そして本発明の製造方法によれば、本発明の電極活物質を製造することができ、本発明は、工業的に極めて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の電極活物質は、結晶構造がカルシウムフェライト(CaFe24)型結晶構造であるナトリウム複合酸化物(以下、単に「ナトリウム複合酸化物」と呼ぶこともある。)を有する。
このナトリウム複合酸化物は、ナトリウムイオン二次電池用正極活物質、または負極活物質として用いることができる。すなわち、正極活物質として使用する場合では、ナトリウム複合酸化物からNaイオンが脱ドープすることで充電が行われ、逆にナトリウム複合酸化物にNaイオンがドープされることで放電が行われる。一方で、負極活物質として使用する場合では、ナトリウム複合酸化物にNaイオンがドープされることで充電が行われ、逆にナトリウム複合酸化物からNaイオンが脱ドープすることで放電が行われる。
なお、ナトリウム複合酸化物が、正極活物質、または負極活物質としてのいずれとして機能するかは、このナトリウム複合酸化物と共にナトリウムイオン二次電池として組み合わせる電極活物質によって決まる。すなわち、組み合わせとなる電極活物質が、本発明に係るナトリウム複合酸化物より低い電位でナトリウムイオンのドープ・脱ドープを行うことができる場合には、本発明に係るナトリウム複合酸化物は正極活物質として機能し、反対に組み合わせとなる電極活物質が、本発明に係るナトリウム複合酸化物より高い電位でナトリウムイオンのドープ・脱ドープを行うことができる場合には、本発明に係るナトリウム複合酸化物は負極活物質として機能する。本発明の電極活物質は正極活物質として好適に使用されるが、負極活物質としての使用も可能である。
上記の結晶構造がカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物として、以下の式(I)で表されるナトリウム複合酸化物が好適である。
NaxFe(2-y)y4 (I)
(式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
ここで、金属元素M(以下、単に「M」ということもある。)は、NaとFeとを除く1種以上の金属元素であり、好ましくは第4、5、6および14族から選ばれる1種以上の金属元素である。これらのうち、4価以上の価数をとり得る金属元素を使用すると放電容量が高くなる傾向があり、特にTi,Sn,Mo,Nbからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、充放電を繰り返した時の性能が特に向上するMoとTiとからなることが特に好ましい。また、資源的な観点から、Mは、埋蔵量が豊富なTiを含むことが好ましい。
なお、式(I)において、xの値は0を超え2未満の範囲で選ぶことができる。ここで、本発明の電極活物質を正極活物質として使用する場合には、xの値は0を超え1以下の範囲であり、特に、ナトリウムを含まない負極を使用するときには、xの値は1に近ければ近いほどよい。逆に負極活物質として使用する場合には、xの値は1以上2未満の範囲である。
また、式(I)において、yの値は0を超え2以下の範囲で選ぶことができ、Feが含まれない場合(y=2)もある。
本発明の電極活物質は、Na化合物、鉄化合物および上述の金属元素Mを含む化合物を出発原料として、次のようにして製造することができる。すなわち、以下の(1)、(2)および(3)の工程をこの順で含むことにより製造することができる。
(1)上記出発原料を混合して混合物を得る工程。
(2)該混合物を酸化性雰囲気中で焼成して焼成物を得る工程。
(3)該焼成物を粉砕する工程。
工程(1)において、ナトリウム原料としては、ナトリウム化合物の少なくとも1種を用いる。ナトリウム化合物としては、ナトリウムを含有するものであれば特に制限されず、例えば、Na2O、Na22等の酸化物、Na2CO3、NaNO3、NaHCO3等の塩類、NaOHなどの水酸化物が挙げられる。これらの中でも、特にNa2CO3が好ましい。
工程(1)において、鉄原料としては、鉄化合物の少なくとも1種を用いる。鉄化合物としては、鉄を含有するものであれば特に制限されず、例えば、Fe34、Fe23、FeO等の酸化物、FeCl2、FeCl3、Fe(NO32、Fe(NO33、FeSO4、Fe(SO43等の塩類、FeS、FeS2、Fe23等の硫化物、Fe(OH)2、Fe(OH)3、FeOOH等の水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、特にFe34が好ましい。
工程(1)において混合方法としては、工業的に通常用いられる乾式混合により行えばよい。乾式混合装置としては、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラムミキサー、乾式ボールミルを挙げることができる。また、混合は、湿式混合によって行うこともできる。
工程(2)において、焼成温度は、650℃以上1300℃以下の温度が好ましく、焼成時間としては、通常、2〜30時間である。この焼成温度範囲内でも、900℃以上1200℃以下で焼成することがより好ましい。焼成温度が650℃未満であると結晶が製造し難く、1300℃を超えると使用する原料化合物や構成金属元素が融解する場合がある。焼成の際には、混合物を入れた焼成容器が破損しない範囲で、上記焼成温度まで到達させればよい。焼成温度における保持時間は、0〜48時間程度である。また、焼成の雰囲気としては、酸化性雰囲気が望ましい。酸化性雰囲気としては、酸素濃度が10体積%(好適には20体積%)以上の雰囲気が挙げられ、空気雰囲気であってもよい。
工程(3)は、必要に応じて行えばよい。工程(3)において粉砕方法としては、工業的に通常用いられる粉砕により行えばよい。粉砕装置としては、振動ミル、ジェットミル、乾式ボールミル等の粉砕機を挙げることができる。また、必要に応じて風力分級等の分級操作を行ってもよい。このときには、電極活物質を構成する一次粒子は破損しない方が好ましい。また、得られた電極活物質を構成する粒子について、B、Al、Mg、Ga、In、Si、Ge、Sn、Nb、Ta、W、Moおよび遷移金属元素から選ばれる1種以上の元素を含有する化合物を被着させるなどの表面処理を施してもよい。上記元素の中でも、B、Al、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれる1種以上が好ましく、操作性の観点からAlがより好ましい。化合物としては、例えば上記元素の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩またはこれらの混合物が好ましい。以上の中でもより好ましくはアルミナである。
上記本発明の電極活物質を用いて、例えば、次のようにして電極を得ることができる。
電極は、本発明の電極活物質、導電材およびバインダーを含む電極合剤を電極集電体に担持させて製造することができる。前記導電材としては天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらの導電材はそれぞれ単独で用いてもよいし、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合するなど、2種以上を混合して用いてもよい。
前記バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
前記電極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどを用いることができる。電極集電体に電極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、または有機溶媒などを用いてペースト化し、電極集電体上に塗工し、乾燥後プレスするなどして固着する方法が挙げられる。ペースト化する場合、電極活物質、導電材、バインダー、有機溶媒からなるスラリーを作製する。
有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メチルエチルケトン等のケトン系、酢酸メチル等のエステル系、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。電極合剤を電極集電体へ塗工する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
本発明の電極活物質を有するナトリウムイオン二次電池として、以下では本発明の電極活物質を用いた電極を正極として使用した例について説明する。
すなわち、本発明のナトリウムイオン二次電池は、上述の電極からなる正極、セパレータおよび負極を積層および巻回することにより得られる電極群を、電池缶などの容器内に収納し、電解質を含有する有機溶媒からなる電解液を含浸させて製造することができる。
前記電極群の形状としては、例えば、該電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状を挙げることができる。また、電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
前記負極としては、ナトリウムイオンをドープ・脱ドープ可能な負極材料を含む負極合剤を電極集電体に担持したもの、あるいはナトリウム金属またはナトリウム合金などを用いることができ、前記負極材料としては、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素材料で、ナトリウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材料が挙げられ、正極に使用される本発明の電極活物質よりも低い電位でナトリウムイオンのドープ・脱ドープを行うことができる酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物を用いることもできる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
負極における前記電極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどを挙げることができ、薄膜に加工しやすいという点で、Cuが好ましい。該電極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、上記の正極の場合と同様であり、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し電極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法等が挙げられる。
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができ、また、これらの材質を2種以上用いた単層または積層セパレータとしてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましく、5〜200μm程度が好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。ナトリウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池においては、通常、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする)ことが重要である。したがって、セパレータには、通常の使用温度を越えた場合に、できるだけ低温でシャットダウンする(セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合には、多孔質フィルムの微細孔が閉塞する)こと、およびシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが求められる。セパレータとして、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層多孔質フィルムからなるセパレータを用いることにより、熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
以下、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層多孔質フィルムからなるセパレータについて説明する。ここで、このセパレータの厚みは、通常40μm以下、好ましくは20μm以下である。また、耐熱多孔層の厚みをA(μm)、多孔質フィルムの厚みをB(μm)としたときには、A/Bの値が、0.1以上1以下であることが好ましい。また更に、このセパレータは、イオン透過性の観点から、ガーレー法による透気度において、透気度が50〜300秒/100ccであることが好ましく、50〜200秒/100ccであることがさらに好ましい。このセパレータの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。
積層多孔質フィルムにおいて、耐熱多孔層は、耐熱樹脂を含有する。イオン透過性をより高めるために、耐熱多孔層の厚みは、1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下、特に1μm以上4μm以下という薄い耐熱多孔層であることが好ましい。また、耐熱多孔層は微細孔を有し、その孔のサイズ(直径)は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。さらに、耐熱多孔層は、後述のフィラーを含有することもできる。
耐熱多孔層に含有される耐熱樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドを挙げることができ、耐熱性をより高める観点で、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドが好ましく、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドがより好ましい。さらにより好ましくは、耐熱樹脂は、芳香族ポリアミド(パラ配向芳香族ポリアミド、メタ配向芳香族ポリアミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の含窒素芳香族重合体であり、とりわけ好ましくは芳香族ポリアミドであり、製造面で特に好ましくはパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある。)である。また、耐熱樹脂としては、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状オレフィン系重合体を挙げることもできる。これらの耐熱樹脂を用いることにより、耐熱性を高めること、すなわち熱破膜温度を高めることができる。
熱破膜温度は、耐熱樹脂の種類に依存するが、通常、熱破膜温度は160℃以上である。耐熱樹脂として、上記含窒素芳香族重合体を用いることにより、熱破膜温度を最大400℃程度にまで高めることができる。また、ポリ−4−メチルペンテン−1を用いる場合には最大250℃程度、環状オレフィン系重合体を用いる場合には最大300℃程度にまで、熱破膜温度をそれぞれ高めることができる。
上記パラアラミドは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。パラアラミドとしては、パラ配向型またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミド、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が例示される。
上記芳香族ポリイミドとしては、芳香族の二酸無水物とジアミンの縮重合で製造される全芳香族ポリイミドが好ましい。二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。ジアミンとしては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3,3’−メチレンジアニリン、3,3’−ジアミノベンソフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5’−ナフタレンジアミンなどが挙げられる。また、溶媒に可溶なポリイミドが好適に使用できる。このようなポリイミドとしては、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物のポリイミドが挙げられる。
上記芳香族ポリアミドイミドとしては、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるもの、芳香族二酸無水物および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるものが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としてはイソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。また芳香族二酸無水物の具体例としては、無水トリメリット酸などが挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、オルソトリランジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
耐熱多孔層に含有されていてもよいフィラーは、有機粉末、無機粉末またはこれらの混合物のいずれから選ばれるものであってよい。フィラーを構成する粒子は、その平均粒子径が、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。フィラーの形状としては、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等が挙げられ、いずれの粒子も用いることができるが、均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。
フィラーとしての有機粉末としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレート等の有機物からなる粉末が挙げられる。有機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの有機粉末の中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
フィラーとしての無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉末が挙げられ、具体的に例示すると、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、または炭酸カルシウム等からなる粉末が挙げられる。無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機粉末の中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であることがより好ましく、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であり、かつその一部または全部が略球状のアルミナ粒子であることがさらにより好ましい。
耐熱多孔層におけるフィラーの含有量は、フィラーの材質の比重にもよるが、例えば、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子である場合には、耐熱多孔層の総重量を100としたとき、フィラーの重量は、通常20重量部以上95重量部以下、好ましくは30重量部以上90重量部以下である。これらの範囲は、フィラーの材質の比重に依存して適宜設定できる。
積層多孔質フィルムにおいて、多孔質フィルムは、熱可塑性樹脂を含有する。この多孔質フィルムの厚みは、通常、3〜30μmであり、さらに好ましくは3〜20μmである。多孔質フィルムは、上記多孔質フィルムと同様に、微細孔を有し、その孔のサイズは通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。多孔質フィルムの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。ナトリウムイオン二次電池において、通常の使用温度を越えた場合には、多孔質フィルムは、それを構成する熱可塑性樹脂の軟化により、微細孔を閉塞する役割を果たす。
多孔質フィルムに含有される熱可塑性樹脂としては、80〜180℃で軟化するものを挙げることができ、ナトリウムイオン二次電池における電解液に溶解しないものを選択すればよい。具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタンを挙げることができ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。より低温で軟化してシャットダウンさせるためには、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレンを挙げることができ、超高分子量ポリエチレンを挙げることもできる。多孔質フィルムの突刺し強度をより高めるためには、熱可塑性樹脂は、少なくとも超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。また、多孔質フィルムの製造面において、熱可塑性樹脂は、低分子量(重量平均分子量1万以下)のポリオレフィンからなるワックスを含有することが好ましい場合もある。
前記電解液において、電解質としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl4などが挙げられ、これらは単独でも、これらの2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3およびNaN(SO2CF32からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
前記電解液において、有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、あるいは上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものを用いることができるが、通常はこれらのうちの2種以上を混合して用いる。
また、前記電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも1種以上を含む高分子化合物などの高分子電解質を用いることができる。また、高分子に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またNa2S−SiS2、Na2S−GeS2などの硫化物電解質、NaTi2(PO43、NaFe2(PO43、Na2(SO43、Fe2(SO42(PO4)、Fe2(MoO43等のNASCON型電解質を用いると、安全性をより高めることができることがある。また、本発明のナトリウムイオン二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
このようにして、本発明の電極活物質を用いて製造されたナトリウムイオン二次電池は、繰り返し充放電を行う際の放電のサイクル特性に優れる非水電解質二次電池となる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。
1.粉末X線回折測定
電極活物質に対する粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(株式会社リガク製RINT2500TTR)を使用し、以下の条件で行った。
X線 :CuKα
電圧−電流 :40kV−140mA
測定角度範囲 :2θ=10〜90°
ステップ :0.02°
スキャンスピード:4°/min
2.ナトリウムイオン二次電池用正極活物質の充放電性能評価
本発明の電極活物質を含む正極を備えた試験電池を作製し、定電流充放電試験を行い、放電容量のサイクル効率(以下、単に「サイクル効率」ということもある。)を評価した。なお、サイクル効率は、1サイクル目の放電容量に対するnサイクル目(nは1〜10の整数)の放電容量のサイクル効率を次の式により算出した。
サイクル効率(%)=nサイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量 × 100
以下に、試験電池のセル構成および充放電条件を示す。
(セル構成) 2極式
正極:本発明の電極活物質を含む電極
負極:金属ナトリウム
電解質:1M NaClO4/PC
(充放電条件)
電圧範囲:1.5−4.0V
充電レート:0.1Cレート(10時間で完全充電する速度)
放電レート:0.1Cレート(10時間で完全放電する速度)
サイクル回数:10回
以下、具体的な充放電試験用の試験電池の作製方法について説明する。
実施例として後述する電極活物質と導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)とバインダーのPVdF(株式会社クレハ製、PolyVinylidene DiFluoride)を、電極活物質:アセチレンブラック:バインダー=85:10:5(重量比)の組成となるように秤量し、バインダーをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解した後、これに電極活物質とアセチレンブラックを加えてスラリー化したものを集電体である厚さ40μmのアルミ箔上にドクターブレードで塗工し、これを乾燥機で乾燥することにより電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径1.45cmに打ち抜いての円形の正極を得た。
コインセル(宝泉株式会社製)の下蓋に、アルミ箔面を下に向けて正極を置き、電解液として1MのNaClO4/PC、ポリプロピレン多孔質フィルムをセパレータとし、また金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を負極とし、それらを組み合わせて試験電池を作製した。なお、試験電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
実施例1
(1)NaFeTiO4の合成
Na2CO3、Fe34およびTiO2をモル比でNa:Fe:Ti=1:1:1となるようにして秤量した後、瑪瑙乳鉢で混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下で1000℃、6時間保持して焼成した後、瑪瑙乳鉢で粉砕することにより、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質1を得た。
(2)粉末X線回折分析
上述の測定条件で電極活物質1に対する粉末X線回折分析を行った結果、電極活物質1はカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有していた(図1)。
(3)ナトリウムイオン二次電池用電極活物質の充放電性能評価
電極活物質1を用いて試験電池を作製し、上述の条件で定電流充放電試験を実施した。
1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量のサイクル効率は43%であった(図2)。
実施例2
(1)NaFeTi0.9Mo0.14の合成
Na2CO3、Fe34、TiO2およびMoO3をモル比でNa:Fe:Ti:Mo=1:1:0.9:0.1となるようにして秤量した後、瑪瑙乳鉢で混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下で1000℃、6時間保持して焼成した後、瑪瑙乳鉢で粉砕することにより、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質2を得た。
(2)粉末X線回折分析
上述の測定条件で電極活物質2を用いて粉末X線回折分析を行った結果、電極活物質2はカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有していた(図3)。
(3)ナトリウムイオン二次電池用電極活物質の充放電性能評価
電極活物質2を用いて試験電池を作製し、上述の条件で定電流充放電試験を実施した。
1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量のサイクル効率は93%であった(図4)。
実施例3
(1)NaFeSnO4の合成
Na2CO3、Fe34、SnO2をモル比でNa:Fe:Sn=1:1:1となるようにして秤量した後、瑪瑙乳鉢で混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下で1000℃、6時間保持して焼成した後、瑪瑙乳鉢で粉砕することにより、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質3を得た。
(2)粉末X線回折分析
上述の測定条件で電極活物質3を用いて粉末X線回折分析を行った結果、電極活物質3はカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有していた(図5)。
(3)ナトリウムイオン二次電池用電極活物質の充放電性能評価
電極活物質3を用いて試験電池を作製し、上述の条件で定電流充放電試験を実施した。
1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量のサイクル効率は74%であった(図6)。
実施例4
(1)NaFeSnO4の合成
空気雰囲気下で1100℃で6時間保持して焼成した以外は、実施例3と同様にして、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質4を得た。
(2)粉末X線回折分析
上述の測定条件で電極活物質4を用いて粉末X線回折分析を行った結果、電極活物質4はカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有していた(図7)。
(3)ナトリウムイオン二次電池用電極活物質の充放電性能評価
電極活物質4を用いて試験電池を作製し、上述の条件で定電流充放電試験を実施した。
1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量のサイクル効率は72%であった(図8)。
比較例
(1)NaFeO2の合成
Na2CO3、Fe34をモル比でNa:Fe=1:1となるようにして秤量した後、瑪瑙乳鉢で混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下750℃、6時間保持して焼成した後、瑪瑙乳鉢で粉砕することにより、ナトリウムイオン二次電池用電極活物質5を得た。
(2)粉末X線回折分析
上述の測定条件で電極活物質5を用いて粉末X線回折分析を行った結果、電極活物質5はNaFeO2型結晶構造を有していた(図9)。
(3)ナトリウムイオン二次電池用電極活物質の充放電性能評価
電極活物質5を用いて、試験電池を作製し、上述の条件で定電流充放電試験を実施した。1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量のサイクル効率は37%であり低かった(図10)。また、5サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の割合も低かった。
製造例1(積層多孔質フィルムの製造)
(1)塗工液の製造
NMP4200gに塩化カルシウム272.7gを溶解した後、パラフェニレンジアミン132.9gを添加して完全に溶解させた。得られた溶液に、テレフタル酸ジクロライド243.3gを徐々に添加して重合し、パラアラミドを得て、さらにNMPで希釈して、濃度2.0重量%のパラアラミド溶液(A)を得た。得られたパラアラミド溶液100gに、アルミナ粉末(a)2g(日本アエロジル社製、アルミナC,平均粒子径0.02μm)とアルミナ粉末(b)2g(住友化学株式会社製スミコランダム、AA03、平均粒子径0.3μm)とをフィラーとして計4g添加して混合し、ナノマイザーで3回処理し、さらに1000メッシュの金網で濾過、減圧下で脱泡して、スラリー状塗工液(B)を製造した。パラアラミドおよびアルミナ粉末の合計重量に対するアルミナ粉末(フィラー)の重量は、67重量%となる。
(2)積層多孔質フィルムの製造および評価
シャットダウン可能な多孔質フィルムとしては、ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚12μm、透気度140秒/100cc、平均孔径0.1μm、空孔率50%)を用いた。厚み100μmのPETフィルムの上に上記ポリエチレン製多孔質フィルムを固定し、テスター産業株式会社製バーコーターにより、該多孔質フィルムの上にスラリー状塗工液(B)を塗工した。PETフィルム上の塗工された該多孔質フィルムを一体にしたまま、貧溶媒である水中に浸漬させ、パラアラミド多孔層(耐熱多孔層)を析出させた後、溶媒を乾燥させて、耐熱多孔層とポリエチレン製多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルム1を得た。積層多孔質フィルム1の厚みは16μmであり、パラアラミド多孔層(耐熱多孔層)の厚みは4μmであった。積層多孔質フィルム1の透気度は180秒/100cc、空孔率は50%であった。積層多孔質フィルム1における耐熱層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察をしたところ、0.03μm〜0.06μm程度の比較的小さな微細孔と0.1μm〜1μm程度の比較的大きな微細孔とを有することがわかった。尚、積層多孔質フィルムの評価は以下の方法で行った。
積層多孔質フィルムの評価
(A)厚み測定
積層多孔質フィルムの厚み、ポリエチレン製多孔質フィルムの厚みは、JIS規格(K7130−1992)に従い、測定した。また、耐熱層の厚みとしては、積層多孔質フィルムの厚みからポリエチレン製多孔質フィルムの厚みを差し引いた値を用いた。
(B)ガーレー法による透気度の測定
積層多孔質フィルムの透気度は、JIS P8117に基づいて、株式会社安田精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレー式デンソメータで測定した。
(C)空孔率
得られた積層多孔質フィルムのサンプルを一辺の長さ10cmの正方形に切り取り、重量W(g)と厚みD(cm)を測定した。サンプル中のそれぞれの層の重量(Wi)を求め、Wiとそれぞれの層の材質の真比重(g/cm3)とから、それぞれの層の体積を求めて、次式より空孔率(体積%)を求めた。
空孔率(体積%)=100×{1−(W1/真比重1+W2/真比重2+・・+Wn/真比重n)/(10×10×D)}
上記実施例のそれぞれにおいて、セパレータとして、製造例1により得られた積層多孔質フィルムを用いれば、熱破膜温度をより高めることのできるナトリウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明の電極活物質を含んでなる電極を用いてなるナトリウムイオン二次電池は、充放電を繰り返した際のサイクル効率に優れることから、ポータブル電子機器などの小型用途だけでなく、ハイブリッド自動車、電力貯蔵用などの中型・大型用途など様々な用途で使用できる。さらに資源として豊富なナトリウムが電極活物質に含有されており、より安価な非水電解質二次電池を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
実施例1における粉末X線回折分析を示す図である。 実施例1における充放電性能評価を示す図である。 実施例2における粉末X線回折分析を示す図である。 実施例2における充放電性能評価を示す図である。 実施例3における粉末X線回折分析を示す図である。 実施例3における充放電性能評価を示す図である。 実施例4における粉末X線回折分析を示す図である。 実施例4における充放電性能評価を示す図である。 比較例1における粉末X線回折分析を示す図である。 比較例1における充放電性能評価を示す図である。

Claims (12)

  1. 結晶構造がカルシウムフェライト型結晶構造であるナトリウム複合酸化物を有することを特徴とするナトリウムイオン二次電池用電極活物質。
  2. 前記ナトリウム複合酸化物が、以下の式(I)で表される請求項1記載の電極活物質。
    NaxFe(2-y)y4 (I)
    (式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
  3. 前記Mが、第4、5、6および14族元素から選ばれる1種以上の金属元素である請求項2記載の電極活物質。
  4. 前記Mが、Ti、Sn、MoおよびNbから選ばれる1種以上の金属元素である請求項2または3記載の電極活物質。
  5. 前記Mが、TiとMoとからなる請求項2から4のいずれかに記載の電極活物質。
  6. Na化合物、Fe化合物およびM(但し、MはNaとFeと除く1種以上の金属元素である。)を含む化合物からなる混合物を酸化性雰囲気下、650℃以上1300℃以下で焼成することを特徴とする、以下の式(I)で表される複合酸化物からなる電極活物質の製造方法。
    NaxFe(2-y)y4 (I)
    (式中、Mは、NaとFeとを除く1種以上の金属元素を表し、xは0を超え2未満の範囲であり、yは0を超え2以下の範囲である。)
  7. 前記Mが、Ti、Sn、Mo、およびNbから選ばれる1種以上の金属元素である請求項6記載の電極活物質の製造方法。
  8. 前記Mが、TiとMoとからなる請求項7記載の電極活物質の製造方法。
  9. 請求項1から5のいずれかに記載の電極活物質、導電材およびバインダーを含んでなることを特徴とするナトリウムイオン二次電池用電極。
  10. 請求項9記載の電極を用いてなることを特徴とするナトリウムイオン二次電池。
  11. セパレータを更に有する請求項10記載のナトリウムイオン二次電池。
  12. セパレータが、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層多孔質フィルムからなるセパレータである請求項11記載のナトリウムイオン二次電池。
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