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JP2009114716A - 免震構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐火被覆材に残留変形が発生し難い免震構造を提供する。
【解決手段】免震構造1は、建物の中間階を免震するように構成されている。免震構造1は、床スラブ2と、この床スラブ2の上に設けられたフーチング3と、このフーチング3の上面に設置されたすべり板4と、このすべり板4の上に設置されたすべり支承5と、すべり支承5の上に立設された四角柱6と、四角柱6に支持された上階の床スラブ7と、すべり支承5の周囲を囲う耐火ボード8と、すべり板4の上面を被覆するシート状の耐火被覆材9と、床スラブ2の上に立設された壁体10と、フーチング3と壁体10とによって形成される入隅部13に設けられた傾斜手段11と、を主に備えている。傾斜手段11の曲面11aは、壁体10に近づくほど、フーチング3の上面から離れるように形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐火被覆材を備える免震構造に関する。
建物の基礎や途中階に建物を免震するための免震装置を設けて地震に対する安全性を高めた免震構造の建物が普及している。免震装置には、ゴムと鋼板を積層した積層ゴム支承を用いたものや、すべり支承とすべり板とを組み合わせて構成したものなどがある。特に、建物の中間階に免震機構を設けた中間階免震においては、免震装置は建物の荷重を支持する構造部材であるから、火災の熱によって強度が低下することがないように、免震装置に防火対策を施して所定の耐火性能を確保することが建築基準法により義務付けられている。
防火対策を施した免震装置としては、例えば、次のようなものがある。
特許文献1には、積層ゴム支承の周囲を筒状の耐火ブランケットで取り囲み、上下端部を積層ゴム支承のベースプレートにねじ止めした免震装置が記載されている。
また、特許文献2には、免震装置の周囲を方形に囲むように上下の柱から耐火板を上下に対向させて突設し、上下の耐火板の間に耐火ガスケットを装着して免震スリットを形成した免震装置が記載されている。
実開平5−3520号公報(段落0012−0014、図1) 特許第3298849号公報(段落0020−0021、図1)
図5は、耐火被覆材を備える免震構造の一例を示した図である。
図5(a)に示すように、免震構造100は、建物の基礎101と、基礎101に免震装置105を介して設置された建物の躯体102と、躯体102に固定され、基礎101の上を摺動するシート状の耐火被覆材104と、基礎101の上に設けられた壁体103と、を備えている。
免震装置105は、基礎101に固定されたすべり板105aと、躯体102に固定され、すべり板105aの上を移動するすべり支承105bと、から構成されている。
すべり支承105bの周囲は、躯体102から垂設された耐火ボード106で囲われており、この耐火ボード106の下端には、シート状の耐火被覆材104が固定されている。耐火被覆材104は、耐火ボード106の外側に位置するすべり板105aを被覆しており、躯体102の移動に伴って基礎101の上を摺動するようになっている。
このような免震構造100では、図5(b)に示すように、地震などによって建物の基礎101と躯体102との間に相対変位が生じると、躯体102に固定された耐火被覆材104が、基礎101の上に設けられた壁体103に突き当たり、耐火被覆材104に圧縮変形(例えば蛇腹状の変形)が生じることがある。
図5(c)に示すように、揺れが収まって、基礎101と躯体102とが通常の位置関係に復帰したときに、耐火被覆材104に圧縮変形が残留していると、例えばすべり板105aの一部が露出してしまい、十分な防火性能を発揮できないという問題があった。また、従来の免震構造では、このような事態が生じないように、地震後に、耐火被覆材104の点検・復旧作業(メンテナンス作業)を行う必要があり、手間を要していた。
本発明は、かかる問題を解決するために創案されたものであり、耐火被覆材に残留変形が発生し難い免震構造を提供することを課題とする。
本発明の免震構造は、第1構造物と、前記第1構造物に免震装置を介して設置された第2構造物と、前記第2構造物に固定され、前記第1構造物の上面を摺動するシート状の耐火被覆材と、前記第1構造物の上面に設けられた第3構造物と、を備え、前記第1構造物と前記第3構造物とによって形成される入隅部に、第3構造物に近づくにつれて前記耐火被覆材を前記第1構造物から離れるように傾斜させる傾斜手段が設けられている、ことを特徴とする。
かかる構成によれば、前記第1構造物と前記第3構造物とによって形成される入隅部に、第3構造物に近づくにつれて前記耐火被覆材を前記第1構造物から離れるように傾斜させる傾斜手段が設けられているので、耐火被覆材が第3構造物に近づくと、傾斜手段によって耐火被覆材が第1構造物の上面から離れるように傾斜させられることとなる。つまり、耐火被覆材と第3構造物との角度差が小さくなる。そのため、耐火被覆材の端部が第3構造物に突き当たることがなくなり、耐火被覆材に圧縮力が作用しにくくなる。その結果、耐火被覆材に圧縮変形が生じにくくなる。
また、耐火被覆材が傾斜手段から離れると、傾斜手段に沿って傾斜した(持ち上げられた)耐火被覆材の端部は、自重によって徐々に降下して元に戻るので、メンテナンス作業が不要となる。
また、前記傾斜手段は、第3構造物に近づくにつれて第1構造物の上面に対する傾斜角度が増加する傾斜面を備えるのが好ましい。
このように構成すれば、耐火被覆材が第3構造物に近づくと、耐火被覆材の第3構造物側の端部が傾斜手段に沿って徐々に上方に傾斜(湾曲)させられることになる。そのため、耐火被覆材を無理なく湾曲させることができるので、耐火被覆材に圧縮力が作用することを一層確実に防止することができる。
また、本発明の免震構造は、前記耐火被覆材の上に錘を設置した構造とするのが好ましい。
かかる構成によれば、耐火被覆材の上に錘が設置されているので、第1構造物と第2構造物が通常の位置関係に戻ったときに、傾斜手段によって上方に傾斜させられた耐火被覆材が錘の重さによって下方に押し下げられることとなる。そのため、耐火被覆材が元に戻り易く、残留変形が生じにくい。
また、前記耐火被覆材は、圧縮変形に抵抗するための力骨を有するのが好ましい。
かかる構成によれば、耐火被覆材が圧縮変形に抵抗するための力骨を有しているので、耐火被覆材の剛性が向上し、耐火被覆材が第3構造物に当接したときに、圧縮変形が生じにくい。
本発明によれば、耐火被覆材に残留変形が発生し難い免震構造を提供することができる。
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、本発明に係る耐火被覆構造を備えた免震装置を例にとって説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る免震構造を示した側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る免震構造1は、建物の中間階を免震するように構成されている。免震構造1は、床スラブ2と、この床スラブ2の上に設けられたフーチング3と、このフーチング3の上面に設置されたすべり板4と、このすべり板4の上に設置されたすべり支承5と、すべり支承5の上に立設された四角柱6と、四角柱6に支持された上階の床スラブ7と、すべり支承5の周囲を囲う耐火ボード8と、すべり板4の上面を被覆するシート状の耐火被覆材9と、床スラブ2の上に立設された壁体10と、フーチング3と壁体10とによって形成される入隅部13に設けられた傾斜手段11と、を主に備えている。
なお、本実施形態においては、床スラブ2及びフーチング3が特許請求の範囲にいう「第1構造物」に相当し、四角柱6及び床スラブ7が特許請求の範囲にいう「第2構造物」に相当し、壁体10が特許請求の範囲にいう「第3構造物」に相当する。また、すべり板4及びすべり支承5が特許請求の範囲にいう「免震装置」に相当する。
床スラブ2は、すべり板4及びすべり支承5(以下、合わせて「免震装置12」という場合がある。)を設置する階の床面を構成する部材である。フーチング3は、すべり板4を固定するための基礎となる部材である。床スラブ2及びフーチング3は、例えば鉄筋コンクリートで構築されている。
すべり板4は、後記するすべり支承5に当接してすべり支承5を滑らせることで地震による建物応答加速度を低減する部材である。すべり板4は、例えば、平面視四角形状を呈するステンレス板で構成されている。すべり板4の上面は、すべり支承5が良好に滑動できるように、平滑に仕上げられている。また、すべり板4は、すべり支承5の移動範囲に対応した平面寸法に形成されている。本実施形態では、すべり板4は、すべり支承5の直径に、すべり支承5の最大変位量の2倍を加えた平面寸法に形成されている。すべり板4は、すべり支承5の下面とすべり板4の上面とが平行面となるように、フーチング3の上端に埋設された状態で水平に固定されている。
なお、すべり板4は、表面仕上げを施したステンレス板に限定されるものではなく、例えば、すべり支承5の滑動が一層良好になるように、すべり板4の上面にフッ素コーティングを施したステンレス板を用いてもよい。また、ステンレス板以外の板材を用いてもよい。また、すべり板4は、平面視四角形状に限定されるものではなく、五角形や六角形などの多角形形状や円形状に構成してもよい。また、すべり板4の平面寸法は、万が一の場合を考慮して、すべり支承5の直径にすべり支承5の最大変位量の2倍以上を加えた平面寸法とするのがより好ましい。
すべり支承5は、すべり板4の上を滑ることで地震による建物応答加速度を低減する部材である。すべり支承5は、円柱形状を呈する剛すべり支承で構成されている。また、すべり支承5の下端部には、滑動を良好にするために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のすべり材がコーティングされている。すべり支承5は、四角柱6の下端部に固定されている。
なお、すべり支承5は、剛すべり支承に限定されるものではなく、例えば、剛すべり支承に免震ゴムを積層した弾性すべり支承を用いてもよい。また、すべり材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に限定されるものではなく、ポリアミド、超高分子量ポリエチレン等を用いてもよい。また、すべり支承5は、円柱形状に限定されるものではなく、角柱形状など、どのような断面形状に構成してもよい。
四角柱6は、上階の床スラブ7を支持する断面視四角形状の柱であり、すべり支承5の上に立設されている。つまり、四角柱6は、床スラブ2及びフーチング3に対して縁切りされている。床スラブ7は、免震装置12を設置する階の天井面及び上階の床面を構成する部材である。床スラブ7は四角柱6の上端に固定されている。これにより、四角柱6及び床スラブ7は、床スラブ2及びフーチング3に対して水平方向に相対移動可能に構成されている。
耐火ボード8は、すべり支承5の周囲を囲って断熱するための部材である。各耐火ボード8は、例えば軽量気泡コンクリートパネルで構成されており、内包する気泡の断熱効果によって火災の熱が内側に伝わり難くなっている。本実施形態では、4枚の耐火ボード8が、四角柱6の各側面に沿ってそれぞれ配置されている。各耐火ボード8の上部は、四角柱6の各側面に重ねられているとともに、各耐火ボード8の下部は、四角柱6の下端部から突出してすべり支承5の周囲を囲っている。各耐火ボード8の下端部は、フーチング3に固定されたすべり板4から離間している。四角柱6に対する耐火ボード8の取り付け方は特に限定されるものではなく、例えばブラケットなどを介して固定するのが好ましい。
耐火被覆材9は、すべり板4の上面のうち耐火ボード8の外側に位置する部分を被覆して断熱するためのシート状の部材である。耐火被覆材9は、例えばセラミック繊維やアルミナ繊維などで織った毛布状(ブランケット状)の部材であり、耐火性、断熱性、可撓性に優れている。耐火被覆材9の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、厚さ50mm程度、密度130kg/m程度のシート状のセラミックブランケットをシリカクロスで包装したもので構成すれば、所望の断熱性能と変形性能を備えるので好ましい。耐火被覆材9のすべり支承5側の端部は、耐火ボード8の下端に固定されており、すべり板4と耐火ボード8の下端との隙間を閉塞している。耐火被覆材9のすべり支承5と反対側の端部は、少なくともすべり板4の端部と同じ位置まで延びている。
耐火被覆材9の上には、後記する傾斜手段11によって上方に湾曲した耐火被覆材9を押し下げるための錘91が載置されている。本実施形態では、錘91は、例えば、耐火被覆材9と同じシート状のセラミックブランケットで構成されている。錘91のすべり支承5と反対側の端部は、耐火被覆材9のすべり支承5と反対側の端部よりも突出している。特に、耐火被覆材9と同じ材料で錘91を構成した場合は、錘91の突出長さを、耐火被覆材9の厚さ寸法の3倍程度にするのが好ましい。
また、耐火被覆材9の中には、圧縮変形に抵抗するための力骨92が設置されている。力骨92は、耐火被覆材9の剛性を向上させ得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、適度な剛性を持った金属性のシート状の部材や、有機繊維あるいは無機繊維製の不織布などで構成されている。金属シートや有機・無機繊維不織布などの剛性は、例えばその厚みを増減させることで調整することができる。
なお、力骨92の設置箇所は、耐火被覆材9の中に限られるものではなく、耐火被覆材9の剛性を向上することができれば、例えば耐火被覆材9の表面などであってもかまわない。
なお、本実施形態では、錘91及び力骨92は、耐火ボード8の周囲に設けられた耐火被覆材9のうち、壁体10側に配置された耐火被覆材9にのみ設置されている。
壁体10は、免震装置12を設置する空間と他の空間とを仕切る隔壁である。壁体10は、フーチング3の一端側(図1の右側)の端部に沿って垂直に立設されている。壁体10の上端と上階の床スラブ7との間には隙間が形成されている。壁体10の上端には耐火材10aが取り付けられており、床スラブ7との隙間を閉塞している。つまり、壁体10は、地震時に床スラブ2と一体に動き、床スラブ7に対して相対移動するように構成されている。また、壁体10は、床スラブ7に対して相対移動したときに、耐火被覆材9と接触する可能性のある位置に設けられている。
傾斜手段11は、壁体10に近づく耐火被覆材9を上方に湾曲させるための部材である。傾斜手段11は、フーチング3と壁体10とで形成される入隅部13に、その連続方向(図1に直交する方向)に亘って形成されている。傾斜手段11は、中心角が90度となる円弧状の曲面(傾斜面)11aを有している。傾斜手段11は、例えば入隅部13に沿ってコンクリートを打設し、その表面を円弧状に成形することで構築されている。
円弧状の曲面11aの下端側の縁部は、水平に形成されたフーチング3の上面に滑らかに連続している。また、円弧状の曲面11aの上端側の縁部は、垂直に形成された壁体10の側面に滑らかに連続している。つまり、円弧状の曲面11aは、壁体10に近づくほど、フーチング3の上面に対する傾斜角度が増加するように形成されている。耐火被覆材9は、この曲面11aに沿って上方に湾曲するようになっている。
なお、耐火被覆材9と同一の材料で錘91を構成した場合は、傾斜手段11の曲面11aの半径を、耐火被覆材9の厚さ寸法と錘91の厚さ寸法との合計の2倍以上とすると、耐火被覆材9に残留変形が生じ難くなるので好ましい。
つづいて、本実施形態に係る免震構造の動作について図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る免震構造の動作を説明するための一部拡大側面図であり、(a)は通常時、(b)は地震時、(c)は復帰時の状態をそれぞれ示している。
地震発生前の通常時において、図2(a)に示すように、すべり支承5は、すべり板4の略中央に位置している。このとき、耐火被覆材9は、耐火ボード8の外側に位置するすべり板4の上を適切に覆っている。また、耐火被覆材9の壁体10側の端部は、壁体10及び傾斜手段11から離間している。
そして、地震が発生して建物に水平力が入力すると、すべり板4とすべり支承5の間に相対変位が生じ、すべり支承5に四角柱6及び耐火ボード8を介して固定された耐火被覆材9が、フーチング3の上面を摺動しながら、床スラブ2に固定された壁体10及び傾斜手段11に近づくように移動する。
耐火被覆材9が壁体10に近づくように移動すると、耐火被覆材9は、図2(b)に示すように、傾斜手段11の曲面11aに乗り上げることとなる。このとき、曲面11aのフーチング3側の端縁は、フーチング3の上面に滑らかに連続しているので、耐火被覆材9の端部に衝突することがなく、耐火被覆材9に圧縮力が作用しにくい。また、耐火被覆材9の中には、圧縮変形に抵抗するための力骨92が設置されているので、圧縮変形が生じにくい。
そして、傾斜手段11の曲面11aに乗り上げた耐火被覆材9は、図2(b)に示すように、曲面11aの形状に沿って湾曲することとなる。曲面11aは壁体10に近づくほどフーチング3の上面に対する傾斜角度が大きくなっているので、耐火被覆材9の傾斜角度も壁体10に近づくほど大きくなる。そのため、耐火被覆材9が壁体10に接触する位置まで変位したときには、フーチング3の上面に対する耐火被覆材9の傾斜角度と、フーチング3の上面に対する壁体10の側面の傾斜角度(本実施形態では90度)との差は小さくなる。そのため、耐火被覆材9の端部は、壁体10に沿うように接触することとなり、耐火被覆材9に圧縮力が作用しにくい。その結果、耐火被覆材9に圧縮変形が生じることを防止することができる。
地震が治まり、すべり板4とすべり支承5が通常時の位置関係に復帰すると、耐火被覆材9は、図2(c)に示すように、傾斜手段11から離れ、すべり板4の上に戻る。このとき、傾斜手段11によって上方に湾曲させられた耐火被覆材9は、耐火被覆材9の自重、及び、その上に設置された錘91の自重によって、下方に押し下げられることとなる。そのため、耐火被覆材9によってすべり板4が適切に被覆される。その結果、耐火被覆材9のメンテナンス作業が不要となる。
つづいて、第2実施形態に係る免震構造1’について、図3を参照して説明する。説明において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3は、第2実施形態に係る免震構造を示した側面図であり、(a)は通常時、(b)は地震時の状態を示している。
免震装置12を設置した建物においては、図3(a)に示すエレベータシャフト20や図示しない階段室のように、縦方向に連続した空間を構成する壁体21についても、床スラブ2に対して縁切りすることがある。第2実施形態では、エレベータシャフト20の壁体21に本発明に係る免震構造を適用した場合について説明する。
第2実施形態に係る免震構造1’は、図3(a)に示すように、床スラブ2と、この床スラブ2の上方に免震装置12を介して設置された上階に床スラブ7と、この床スラブ7に上端が固定された壁体21と、壁体21の下端に固定されて床スラブ2と摺動する耐火被覆材9と、床スラブ2の上に立設されたピット23と、床スラブ2とピット23で形成された入隅部24に設けられた傾斜手段11と、を主に備えている。
第2実施形態においては、床スラブ2が特許請求の範囲にいう「第1構造物」に相当し、床スラブ7及び壁体21が「第2構造物」に相当し、ピット23が「第3構造物」に相当する。ちなみに、免震装置12の周辺の構造は、前記した第1実施形態と同様なので、詳細な説明を省略する。
壁体21は、エレベータシャフト20の周壁を構成する部材である。壁体21は、床スラブ7及び四角柱6を介して免震装置12のすべり支承5側に連結固定されている。つまり、壁体21は、フーチング3を介してすべり板4側に固定された床スラブ2に対して、相対移動するようになっている。壁体21の下端部には、耐火被覆材9が設置されており、床スラブ2と壁体21との隙間を閉塞している。耐火被覆材9は、壁体21が床スラブ2に対して相対移動した際に、エレベータシャフト20とフロア空間とが連通しないように、床スラブ2の上面に沿ってエレベータシャフト20と反対側に延出している。なお、エレベータシャフト20の内部にはエレベータ22が配置されている。
ピット23は、床スラブ2の上に設けられた部材である。ピット23は、床スラブ2に対して壁体21が相対移動した際に耐火被覆材9が接触する位置に設けられている。
ピット23と床スラブ2とによって形成される入隅部には、傾斜手段11が設けられている。
傾斜手段11は、ピット23に近づく耐火被覆材9を上方に湾曲させるための部材である。傾斜手段11は、中心角が90度となる円弧状の曲面11aを有している。
円弧状の曲面11aの下端側の縁部は、水平に形成された床スラブ2の上面に滑らかに連続している。また、円弧状の曲面11aの上端側の縁部は、垂直に形成されたピット23の側面に滑らかに連続している。つまり、円弧状の曲面11aは、ピット23に近づくほど、床スラブ2の上面に対する傾斜角度が増加するように形成されている。耐火被覆材9は、この曲面11aに沿って上方に湾曲するようになっている。
つづいて、第2実施形態に係る免震構造1’の動作について説明する。
地震が発生して建物に水平力が入力すると、図3(b)に示すように、壁体21は、床スラブ2に対して相対移動する。このとき、壁体21の下端に固定された耐火被覆材9も、床スラブ2に対して相対移動する。壁体21及び耐火被覆材9がピット23に対して近づく方向に移動したとき、耐火被覆材9は、傾斜手段11の曲面11aに乗り上げることとなる。このとき、曲面11aの床スラブ2側の端縁は、床スラブ2の上面に滑らかに連続しているので、耐火被覆材9の端部に衝突することがなく、耐火被覆材9に圧縮力が作用しにくい。また、耐火被覆材9の中には、圧縮変形に抵抗するための力骨92が設置されているので、圧縮変形が生じにくい。
そして、傾斜手段11の曲面11aに乗り上げた耐火被覆材9は、図3(b)に示すように、曲面11aの形状に沿って湾曲することとなる。曲面11aはピット23に近づくほど床スラブ2の上面に対する傾斜角度が大きくなっているので、耐火被覆材9の傾斜角度もピット23に近づくほど大きくなる。そのため、耐火被覆材9がピット23に接触する位置まで変位したときには、床スラブ2の上面に対する耐火被覆材9の傾斜角度と、床スラブ2の上面に対するピット23の側面の傾斜角度(本実施形態では90度)との差は小さくなる。そのため、耐火被覆材9の端部は、ピット23に沿うように接触することとなり、耐火被覆材9に圧縮力が作用しにくい。その結果、耐火被覆材9に圧縮変形が生じることを防止することができる。
以上、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施形態では、傾斜手段11の曲面11aを円弧状に形成したが、これに限定されるものではなく、ソレノイド曲面や、多角形平面、あるいは単一の平面に形成してもよい。一例を挙げれば、図4(a)に示すように、壁体10に近づくに連れて22.5度ずつ傾きの増加する3つの傾斜面15a、15b、15cを有する傾斜手段15を入隅部13に形成してもよい。なお、第1構造物の上面と傾斜面との角度差、及び、第3構造物の側面と傾斜面との角度差は、45度以下にするのが好ましい。
また、本実施形態では、錘91として耐火被覆材9と同じシート状のセラミックブランケットを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、図4(b)に示すように、平鋼93,93を、耐火被覆材9の壁体10側の端部付近に設置してもよい。
また、本実施形態では、耐火ボード8として軽量気泡コンクリートパネルを用いたが、所定の耐火断熱性能を備える板状部材であれば、どのようなものを用いてもよいことは言うまでもない。また、本実施形態では、免震装置12としてすべり板4とすべり支承5ろからなるすべり免震支承を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、いわゆる積層ゴム免震支承や転がり免震支承のように、第1構造体と第2構造体が水平方向に相対移動する他の免震装置であってもよい。
本実施形態に係る免震構造を示した側面図である。 本実施形態に係る免震構造の動作を説明するための一部拡大側面図であり、(a)は通常時、(b)は地震時、(c)は復帰時の状態をそれぞれ示している。 第2実施形態に係る免震構造を示した側面図であり、(a)は通常時、(b)は地震時の状態を示している。 (a)は傾斜手段の変形例を示す側面図であり、(b)は錘の変形例を示す側面図である。 耐火被覆材を備える免震構造の一例を示した図である。
符号の説明
1 免震構造
2 床スラブ
3 フーチング
4 すべり板
5 すべり支承
6 四角柱
7 床スラブ
8 耐火ボード
9 耐火被覆材
10 壁体
11 傾斜手段
12 免震装置
13 入隅部
91 錘
92 力骨

Claims (4)

  1. 第1構造物と、
    前記第1構造物に免震装置を介して設置された第2構造物と、
    前記第2構造物に固定され、前記第1構造物の上面を摺動するシート状の耐火被覆材と、
    前記第1構造物の上面に設けられた第3構造物と、を備え、
    前記第1構造物と前記第3構造物とによって形成される入隅部に、第3構造物に近づくにつれて前記耐火被覆材を前記第1構造物から離れるように傾斜させる傾斜手段が設けられていることを特徴とする免震構造。
  2. 前記傾斜手段は、第3構造物に近づくにつれて第1構造物の上面に対する傾斜角度が増加する傾斜面を備えることを特徴とする請求項1に記載の免震構造。
  3. 前記耐火被覆材の上に錘を設置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震構造。
  4. 前記耐火被覆材は、圧縮変形に抵抗するための力骨を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の免震構造。
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