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JP2009107857A - 分散性シリカナノ中空粒子及びシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法 - Google Patents

分散性シリカナノ中空粒子及びシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法 Download PDF

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JP2009107857A JP2007279089A JP2007279089A JP2009107857A JP 2009107857 A JP2009107857 A JP 2009107857A JP 2007279089 A JP2007279089 A JP 2007279089A JP 2007279089 A JP2007279089 A JP 2007279089A JP 2009107857 A JP2009107857 A JP 2009107857A
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Abstract

【課題】分散性シリカナノ中空粒子及びシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法において、シリカ殻からなるナノ中空粒子の凝集を防止して、溶媒や溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができること。
【解決手段】シリカナノ中空粒子1にn−ヘキサン及び表面修飾剤を加えて高速攪拌機で攪拌・分散して(S10)、湿式ジェットミルで強力に分散させて略0.5μm以下の微細凝集粒子とし(S11)、エバポレーターに掛けて濃縮し(S12)、オートクレーブでn−ヘキサンの超臨界状態として表面修飾を行い(S13)、再分散して高速攪拌機で攪拌・分散して(S14,S15)、この分散液に変性シリコーンオイルを添加して(S16)、超音波分散機で超音波分散させ(S17)、分級・濾過(S18)を行って、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の高濃度分散液5を得ることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、略30nmから略300nmまでの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子(以下、「シリカナノ中空粒子」ともいう。)に分散性を持たせた分散性シリカナノ中空粒子、及びシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法に関するものである。
近年、ナノテクノロジー研究の一環として、数百ナノメートル以下の粒子径を有する微粒子についての応用研究が盛んに行われている。その一例として、特許文献1に記載の高分散シリカナノ中空粒子及びそれを製造する方法の発明がある。このナノ中空粒子は、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子であって、細孔分布において2nm〜20nmの細孔が検出されないものであり、炭酸カルシウムを調整する第1工程、それにシリカをコーティングする第2工程、炭酸カルシウムを溶解させてナノ中空粒子とする第3工程によって製造される。
この特許文献1に係る高分散シリカナノ中空粒子は、中空で、かつ、シリカ殻が薄いため、断熱性及び透明性に優れ、特許文献2に示されるように、塗料・フィルム・合成繊維中に均一に分散させることによって、断熱塗料・断熱フィルム・断熱繊維を得ることができて幅広い技術分野に応用することができ、その他にも、多方面に亘る応用が期待されている。
特開2005−263550号公報 特開2007−070458号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の高分散シリカナノ中空粒子においては、略30nm〜略300nmの外径を有する微小粒子であるため、凝集を起こし易く、水・有機溶媒等の溶媒中においても、溶融樹脂等に混入する場合においても、直ちに凝集して数μm〜数十μmの大きさの巨大凝集粒子となってしまい、塗料・フィルム・合成繊維中に微細凝集粒子として均一に分散させることが実際上は困難であるため、断熱性・透明性といった優れた特性を充分に生かすことができないという問題点があった。
そこで、本発明は、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子、及びシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に容易に微細分散可能とした分散性シリカナノ中空粒子であって、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾することによって、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を微細分散させて粉体化させてなるものである。
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物等や、モノアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルを始めとする変性シリコーンオイル等を用いることができる。
更に、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。なお、本発明において数値に「略」が付されているものは、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
請求項2の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項1の構成において、前記溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、前記頻度分布(強度分布)による前記粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在するものである。
ここで、「動的光散乱法」とは、レーザ光の回折・散乱を応用した微小粒子の粒子径測定方法であって、非接触後方散乱法とも呼ばれる微小粒子の粒子径分布測定のための技術である。
請求項3の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項1または請求項2の構成において、前記表面修飾は、前記湿式ジェットミルで強力に分散させたシリカ殻からなるナノ中空粒子と前記有機溶媒と前記表面修飾剤の混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させるものである。
請求項4の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項3の構成において、オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とするものである。
請求項5の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項2乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であるものである。ここで、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上有する化合物を意味し、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)等の化合物を用いることができる。
請求項6の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項2の構成において、前記表面修飾剤は変性シリコーンオイルであって、前記表面修飾は前記湿式ジェットミルで前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を強力に分散させるとともに前記表面修飾剤を前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に反応付加させるものである。
請求項7の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項6の構成において、前記変性シリコーンオイルは親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルであるものである。ここで、「親水性有機基」としては、ポリエーテル基、エトキシ基、カルボキシル基、等がある。
請求項8の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、請求項6の構成において、前記変性シリコーンオイルは親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルであるものである。ここで、「親油性有機基」としては、モノアミン基、アミノ基、アルキル基、等がある。
請求項9の発明に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法は、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に略均一に分散させた分散液の製造方法であって、前記溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、前記頻度分布(強度分布)による前記粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在し、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させる工程と、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する工程と、表面修飾された前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を前記溶媒に混合して再び微細分散させる工程と、前記溶媒に変性シリコーンオイルを添加する工程と、超音波分散機によって超音波分散させる工程とを具備するものである。
ここで、「溶媒」としては、水及び有機溶媒の双方を含むものとし、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を含むものとする。また、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。更に、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができる。
更に、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。なお、本発明において数値に「略」が付されているものは、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
請求項10の発明に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法は、請求項9の構成において、前記表面修飾する工程は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子と前記有機溶媒と前記表面修飾剤との混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程であるものである。
請求項11の発明に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法は、請求項10の構成において、前記表面修飾する工程において、オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とするものである。
請求項1の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子は、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に容易に分散可能とした分散性シリカナノ中空粒子であって、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾することによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子を微細分散させて粉体化させてなる。
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物等や、モノアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルを始めとする変性シリコーンオイル等を用いることができる。更に、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を、有機溶媒等の溶媒に分散させようとしても、通常の攪拌機や分散機では数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子に凝集したシリカ殻からなるナノ中空粒子を、数百nmオーダーの微細凝集粒子に分散させるのは困難である。そこで、まず有機溶媒と表面修飾剤を加えて、湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行って、シリカ殻からなるナノ中空粒子の大部分を微細分散させる。
そして、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する。このように表面修飾することによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子の分散性が向上して、一旦微細分散したシリカ殻からなるナノ中空粒子は、容易には再凝集することがなくなり、ほぼ全てのシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細分散して、数百nmの外径を有する微細凝集粒子となる。この状態で溶媒を乾燥する等して除去することによって、粉体状の分散性シリカナノ中空粒子が得られる。
こうして得られた分散性シリカナノ中空粒子は、微細凝集粒子の周囲が表面修飾剤によって表面修飾されているため、水や有機溶媒等の溶媒(水性塗料や溶剤系塗料の溶媒を含む)に分散させる場合にも、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく微細凝集粒子に分散させることができ、また溶融樹脂等に混入する場合にも、巨大凝集粒子に凝集することなく、微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができる。
また、シリカ殻からなるナノ中空粒子は、略150m2 /gという極めて大きい比表面積を有しているため、塗料や溶融樹脂等に混入しようとしても僅かな重量%しか混入することができなかった。この大きな比表面積の値は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に微細な分子レベルの凹凸が存在しているためと推測される。しかし、表面修飾することによって、表面修飾剤で微細な分子レベルの凹凸が埋められるものと推測され、比表面積が減少することが分かっている。その結果、微細凝集粒子に分散させた状態で混入するにも関わらず、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子を混入する場合よりも、より多くの量のシリカナノ中空粒子を混入することができる。
また、同じ程度の量を混入した場合には、凝集した巨大凝集粒子を混入した場合には、シリカナノ中空粒子の透明性が生かされないため透明にならずに白く濁ってしまうが、分散性シリカナノ中空粒子を混入した場合には、シリカナノ中空粒子の透明性が生かされて、透明性に優れたシリカナノ中空粒子分散溶媒、シリカナノ中空粒子分散塗料、シリカナノ中空粒子分散樹脂、等を得ることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項2の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、頻度分布(強度分布)による粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在する。
ここで、「動的光散乱法」とは、レーザ光の回折・散乱を応用した微小粒子の粒子径測定方法であって、非接触後方散乱法とも呼ばれる微小粒子の粒子径分布測定のための技術である。
略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子は、平均粒子径が略70nmであるが、かかる微小粒子であるがために、溶媒等に分散させた場合には直ちに凝集して数μm〜数十μmの大きさの巨大凝集粒子となってしまい、数百nmの微細凝集粒子に分散させることができなかった。
そこで、本発明者らは、上述の如く、表面修飾等することによって微細凝集粒子に分散させることに成功したが、溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、頻度分布(強度分布)による粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
このような微細でかつシャープな粒子径分布は、従来のシリカ殻からなるナノ中空粒子においては全く得られなかったものであり、画期的な技術であると言える。しかも、上述したように、このような微細な粒子径分布を有しながら比表面積が小さくなるため、基材により多くの量を混入することができ、断熱性・透明性を始めとするシリカ殻からなるナノ中空粒子の特性を充分に発揮させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項3の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、表面修飾は、湿式ジェットミルで強力に分散させたシリカ殻からなるナノ中空粒子と有機溶媒と表面修飾剤の混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態として、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させる。
有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに凝集粒子の間に自由に入り込んで、微細凝集粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加する。このため、湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行っても、微細凝集粒子にまで分散せず、巨大凝集粒子として残存しているシリカナノ中空粒子の各表面をも、表面修飾することができる。したがって、湿式ジェットミルの運転条件を緩くすることもできるし、ほぼ全てのシリカナノ中空粒子を微細分散させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項4の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、オートクレーブを用いて混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とする。
有機溶媒を超臨界状態として、有機溶媒を表面修飾剤とともに、凝集したシリカナノ中空粒子の凝集粒子の間に自由に入り込ませるためには、有機溶媒と表面修飾剤の混合物に高温高圧を加える必要があるが、オートクレーブを用いることによって、安全かつ自在に高温高圧を加えることができ、シリカナノ中空粒子の微細凝集粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項5の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、表面修飾剤がイソシアネート系化合物である。ここで、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上有する化合物を意味し、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)等の化合物を用いることができる。
本発明者らは、有機溶媒の超臨界状態として表面修飾する際の表面修飾剤として最も適切な表面修飾剤の種類について、鋭意実験研究を重ねた結果、イソシアネート系化合物を用いた場合に、最も良好な分散状態が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項6の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、表面修飾剤は変性シリコーンオイルであって、表面修飾は湿式ジェットミルでシリカ殻からなるナノ中空粒子を強力に分散させるとともに表面修飾剤をシリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に反応付加させる。
このように表面修飾剤として変性シリコーンオイルを用いることによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させることによって、シリカナノ中空粒子が微細分散するとともにその表面に変性シリコーンオイルが反応付加して、より容易に表面修飾することができる。そして、表面修飾されたシリカナノ中空粒子は、容易には再凝集しないため、ほぼ全てのシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細分散して、数百nmの外径を有する微細凝集粒子となる。この状態で有機溶媒を乾燥して除去することによって、粉体状の分散性シリカナノ中空粒子が得られる。
こうして得られた分散性シリカナノ中空粒子は、微細凝集粒子の周囲が表面修飾剤によって表面修飾されているため、水や有機溶媒等の溶媒(水性塗料や溶剤系塗料の溶媒を含む)に分散させる場合にも、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく微細凝集粒子に分散させることができ、また溶融樹脂等に混入する場合にも、凝集することなく微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができる。
また、シリカ殻からなるナノ中空粒子は、略150m2 /gという極めて大きい比表面積を有しているため、塗料や溶融樹脂等に混入しようとしても僅かな重量%しか混入することができなかった。この大きな比表面積の値は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に微細な分子レベルの凹凸が存在しているためと推測される。しかし、表面修飾することによって、表面修飾剤で微細な分子レベルの凹凸が埋められるものと推測され、比表面積が減少することが分かっている。その結果、微細凝集粒子に分散させた状態で混入するにも関わらず、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子を混入する場合よりも、より多くの量のシリカナノ中空粒子を混入することができる。
更に、同じ程度の量を混入した場合には、凝集した巨大凝集粒子を混入した場合には、シリカナノ中空粒子の透明性が生かされないため、透明にならずに白く濁ってしまうが、分散性シリカナノ中空粒子を混入した場合には、シリカナノ中空粒子の透明性が生かされて、透明性に優れたシリカナノ中空粒子分散溶媒、シリカナノ中空粒子分散塗料、シリカナノ中空粒子分散樹脂、等を得ることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項7の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、変性シリコーンオイルは親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルである。ここで、「親水性有機基」としては、ポリエーテル基、エトキシ基、カルボキシル基、等がある。
このように親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルで表面修飾することによって、分散性シリカナノ中空粒子は水や水性塗料に分散させる場合に、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や水性塗料に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項8の発明に係る分散性シリカナノ中空粒子においては、変性シリコーンオイルは親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルである。ここで、「親油性有機基」としては、モノアミン基、アミノ基、アルキル基、等がある。
このように親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルで表面修飾することによって、分散性シリカナノ中空粒子は有機溶媒や溶剤系塗料に分散させる場合に、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、また溶融樹脂等に混入する場合にも凝集することなく微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、有機溶媒や溶剤系塗料、溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる分散性シリカナノ中空粒子となる。
請求項9の発明に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法は、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に略均一に分散させた分散液の製造方法であって、溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、頻度分布(強度分布)による粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在し、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させる工程と、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する工程と、表面修飾されたシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に混合して再び微細分散させる工程と、溶媒に変性シリコーンオイルを添加する工程と、超音波分散機によって超音波分散させる工程とを具備する。
ここで、「溶媒」としては、水及び有機溶媒の双方を含むものとし、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を含むものとする。また、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。
更に、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができる。また、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
本発明に係る分散液の製造方法においては、まず有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行って、シリカ殻からなるナノ中空粒子の大部分を微細分散させる。この状態で、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する。このように表面修飾することによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子の分散性が向上し、一旦微細分散したシリカ殻からなるナノ中空粒子は、容易には再凝集することがなくなる。
そこで、表面修飾したシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に混合して、再度分散を行って、シリカ殻からなるナノ中空粒子の大部分を微細分散させる。そして、本発明者らは、鋭意実験研究の結果、溶媒にシリコーンオイルを添加して超音波分散させることによって、ほぼ全てのシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細分散して、溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、頻度分布(強度分布)による粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在する微細凝集粒子となることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができるシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法となる。
請求項10の発明に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法においては、表面修飾する工程は、シリカ殻からなるナノ中空粒子と有機溶媒と表面修飾剤との混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態として、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させる工程である。
有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに凝集粒子の中に自由に入り込んで、微細凝集粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加する。このため、湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行っても、微細凝集粒子にまで分散せず、巨大凝集粒子として残存しているシリカナノ中空粒子の各表面をも、表面修飾することができる。したがって、湿式ジェットミルの運転条件を緩くすることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができるシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法となる。
請求項11の発明に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法においては、表面修飾する工程において、オートクレーブを用いて混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とする。
有機溶媒を超臨界状態として、有機溶媒を表面修飾剤とともに、凝集したシリカナノ中空粒子の凝集粒子の間に自由に入り込ませるためには、有機溶媒と表面修飾剤の混合物に高温高圧を加える必要があるが、オートクレーブを用いることによって、安全かつ自在に高温高圧を加えることができ、シリカナノ中空粒子の微細凝集粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができるシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態2以降において、実施の形態1の部分と同一の記号及び同一の符号は、実施の形態1と同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法に用いられるシリカナノ中空粒子の製造工程を示す模式図である。図2は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法を示すフローチャートである。図3は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例1を示す模式図である。
図4は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例2を示す模式図である。図5は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例3を示す模式図である。図6は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例4を示す模式図である。
最初に、本発明に係るシリカナノ中空粒子の製造方法の概略について、図1を参照して説明する。
図1に示されるように、最初にコア粒子となる炭酸カルシウム微粒子2を結晶成長させる。ここで生成させる炭酸カルシウムの結晶2はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体状形態」に成長させることができる。ここで、「立方体状形態」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。この炭酸カルシウム2の外径が20nm〜200nmとなるように結晶成長させた後に、ゾル−ゲル法によりシリコンアルコキシドを用いて、炭酸カルシウム微粒子2にシリカ3をコーティングする。
続いて、これを水に分散させて酸を添加して内部の炭酸カルシウム2を溶解させて流出させることによって、立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子4が形成される。最後に、800℃で焼成し溶解した炭酸カルシウム2が流出した孔を塞ぐことによって、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子1が製造される。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の中空部分1bの内径は、コア粒子の炭酸カルシウム微粒子2の外径20nm〜200nmであり、緻密なシリカ殻1aの厚さは1nm〜5nm、厚くても5nm〜20nm前後であるため、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の外径は略30nm〜略300nmとなる。
次に、この立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いた本実施の形態1に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。本実施の形態1においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いることとする。
まず、ステップS10において、図1で説明した製造工程によって製造された立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1が、有機溶媒としてのn−ヘキサン、及び表面修飾剤を添加されて、高速攪拌機で攪拌・分散される。本実施の形態1においては、「高速攪拌機」として、プライミクス(株)製のT.K.フィルミックスを用いている。ここでは、略5μmの粒子径まで、凝集した巨大凝集粒子が分散される。次に、湿式ジェットミルによって、強力に分散させて、略0.5μm以下の粒子径の微細凝集粒子とする(ステップS11)。ここで、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
続いて、分散液をエバポレーターに掛けて、溶媒としてのn−ヘキサンを蒸発させて、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の濃度を1重量%から4重量%まで濃縮する(ステップS12)。そして、オートクレーブで加圧・加熱してn−ヘキサンの超臨界状態として、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面修飾を行う(ステップS13)。なお、具体的な表面修飾剤の種類については、後で詳細に説明する。
表面修飾が完了すると、表面修飾されたシリカ殻からなるナノ中空粒子1は粉体化するため、溶媒に再分散させて(ステップS14)、再び高速攪拌機で攪拌・分散させる(ステップS15)。そして、この分散液に、変性シリコーンオイルを添加して(ステップS16)、超音波分散機で超音波分散させる(ステップS17)。そして、分級・濾過(25μmの網目を有する網による)(ステップS18)を行うことによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の高濃度分散液5を得ることができる。
以上の工程にしたがうことによって、従来、10重量%までしか分散させることができなかったシリカ殻からなるナノ中空粒子1を、20重量%以上分散させたシリカ殻からなるナノ中空粒子1の高濃度分散液5を得ることができる。この理由は、以下の通りである。
すなわち、シリカ殻からなるナノ中空粒子1は、略150m2 /gという極めて大きい比表面積を有しているため、塗料や溶融樹脂等に混入しようとしても僅かな重量%しか混入することができなかった。この大きな比表面積の値は、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に微細な分子レベルの凹凸が存在しているためと推測される。しかし、表面修飾することによって、表面修飾剤で微細な分子レベルの凹凸が埋められて比表面積が減少する結果、微細凝集粒子に分散させた状態で混入するにも関わらず、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子を混入する場合よりも、より多くの量のシリカナノ中空粒子1を混入することができる。
次に、図2のステップS13における表面修飾の具体的な実施例について、図3乃至図6を参照して説明する。
図3に示される本実施の形態1の実施例1においては、表面修飾剤としてイソシアネート系化合物であるトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)6を用いている。なお、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図3においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS6を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、TEIS6のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とTEIS6が反応することによって、図3に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がTEIS6で覆われて、本実施の形態1の実施例1に係る表面修飾粒子7が形成される。これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子7となる。
また、図4に示される本実施の形態1の実施例2においては、表面修飾剤としてエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン11を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図4においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン11を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン11のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン11が反応することによって、図4に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン11で覆われて、本実施の形態1の実施例2に係る表面修飾粒子12が形成される。これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子12となる。なお、この表面修飾粒子12は、親水性表面修飾粒子である。
また、図5に示されるように、本実施の形態1の実施例3においては、表面修飾剤として、メチルトリエトキシシラン15を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図5においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリエトキシシラン15を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、メチルトリエトキシシラン15のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とメチルトリエトキシシラン15が反応することによって、図5に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がメチルトリエトキシシラン15で覆われて、本実施の形態1の実施例3に係る表面修飾粒子16が形成される。これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子16となる。なお、この表面修飾粒子16は、親油性表面修飾粒子である。
更に、図6に示されるように、本実施の形態1の実施例4においては、表面修飾剤として、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン17を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図6においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
これに対して、表面修飾剤としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシラン17を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン17のメトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とアクリロキシプロピルトリメトキシシラン17が反応することによって、図6に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がアクリロキシプロピルトリメトキシシラン17で覆われて、本実施の形態1の実施例4に係る表面修飾粒子18が形成される。
これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アクリロキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子18となる。また、アクリロキシ基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態1の実施例4に係る表面修飾粒子18を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子18として、種々の用途に応用することができる。
以上説明したように、本実施の形態1に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法によって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の高濃度分散液5を得ることができる。この高濃度分散液5においては、シリカ殻からなるナノ中空粒子1を20重量%以上安定して混入させることができるため、塗料に混合したり、直接目的物に塗布したりすることによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の断熱性・透明性等の特長を最大限に生かすことができる。
このようにして、本実施の形態1に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液及びその製造方法においては、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子及びその製造方法並びに応用分野について、図7乃至図19を参照して説明する。
図7は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法を示すフローチャートである。図8は本発明の実施の形態2の変形例に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法を示すフローチャートである。図9は本発明の実施の形態2の実施例1に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図10は本発明の実施の形態2の実施例2に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図11は本発明の実施の形態2の実施例3に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図12は本発明の実施の形態2の実施例4に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図13は本発明の実施の形態2の実施例5に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図14は本発明の実施の形態2の実施例6に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図15は本発明の実施の形態2の実施例7に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図16は本発明の実施の形態2の実施例8に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図17は従来例に係るシリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。図18(a)は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子を自動車の合わせガラスに応用した一例を示す斜視図、(b)は拡大断面図である。図19(a)は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子を高層ビルの合わせガラスに応用した一例を示す斜視図、(b)は拡大断面図である。
本実施の形態2においても、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いることとする。本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法においては、図7に示されるように、まず、図1で説明した製造工程によって製造された立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1が、所定の配合量で有機溶媒としてのエタノールと、表面修飾剤としての変性シリコーンオイルに配合されて(ステップS30)、高速攪拌機で攪拌・分散される(ステップS31)。
本実施の形態2においても、「高速攪拌機」としては、プライミクス(株)製のT.K.フィルミックスを用いている。ここでは、略5μmの粒子径まで、凝集した巨大凝集粒子が分散される。次に、この分散液が篩で濾過された(ステップS32)後に、湿式ジェットミルによって強力に分散させられて、略0.5μm(500nm)以下の粒子径の微細凝集粒子となる(ステップS33)。ここで、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
続いて、分散液をエバポレーターに掛けて溶媒を蒸発させて、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の濃度を2.5重量%から10重量%まで濃縮する(ステップS34)。後は、振動乾燥機で水分率を3%以下とし(ステップS35)、更に粉体乾燥機で125℃において60分間加熱して乾燥する(ステップS36)。以上の工程によって、本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20が得られる。
ここで、ステップS30の配合段階において、変性シリコーンオイルとして、ポリエーテル基、エトキシ基、カルボキシル基等の親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルを用いることによって、親水性の分散性シリカナノ中空粒子20となる。したがって、水や水性塗料に分散させる場合に、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子1の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
これに対して、変性シリコーンオイルとして、モノアミン基、アミノ基、アルキル基、等の親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルを用いることによって、親油性の分散性シリカナノ中空粒子20となる。したがって、有機溶媒や溶剤系塗料に分散させる場合に、通常の攪拌装置によって攪拌するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、また溶融樹脂等に混入する場合にも凝集することなく微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子1の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
次に、本実施の形態2の変形例に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法について、図8を参照して説明する。図8に示されるように、まず、図1で説明した製造工程によって製造された立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1が、所定の配合量で有機溶媒としてのn−ヘキサンと、表面修飾剤としてのトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)6に配合されて(ステップS40)、高速攪拌機で攪拌・分散される(ステップS41)。本実施の形態2の変形例においても、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いることとする。
ここでは、略5μmの粒子径まで、凝集した巨大凝集粒子が分散される。次に、この分散液が篩で濾過された(ステップS42)後に、湿式ジェットミルによって、強力に分散させられて、略0.5μm以下の粒子径の微細凝集粒子となる(ステップS43)。続いて、分散液をエバポレーターに掛けて、溶媒を蒸発させて、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の濃度を2.5重量%から10重量%まで濃縮する(ステップS44)。
そして、オートクレーブで加圧・加熱してn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンの超臨界状態として、表面修飾剤としてのTEIS6によって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面修飾を行う(ステップS45)。なお、表面修飾剤の種類としては、TEIS6以外にも、上記実施の形態1と同様に、図4乃至図6に示されるような、親水性表面修飾剤、親油性表面修飾剤、UV反応性表面修飾剤、等を用いることができる。
これによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1がTEIS6によって表面修飾されるとともに粉体化して、本実施の形態2の変形例に係る分散性シリカナノ中空粒子21が得られる。
このようにして得られた本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20,21の分散性について、従来のシリカナノ中空粒子と比較して、粒子径分布を測定することによって評価した。粒子径分布の測定方法としては、レーザ回折・散乱法のうち動的光散乱法によって行い、粒子径分布の測定機器としては英国マルバーン社製のZetasizer3000HSを使用した。その結果を、図9乃至図17に示す。
ここで、図9乃至図13に示される本実施の形態2の実施例1乃至実施例5に係る分散性シリカナノ中空粒子20は、上述した図7のフローチャートにおけるステップS30の配合段階において、変性シリコーンオイルとして親水性有機基であるポリエーテル基が導入された変性シリコーンオイルを用いて製造された、親水性の分散性シリカナノ中空粒子である。各実施例の間の相違点は、粒子径分布を測定する際の溶媒の違いであり、実施例1は溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を用いて、分散性シリカナノ中空粒子の濃度(シリカ濃度)2.5重量%で測定したものであり、実施例2乃至実施例5は溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて、シリカ濃度2.5重量%で測定したものである。
一方、図14乃至図16に示される本実施の形態2の実施例6乃至実施例8に係る分散性シリカナノ中空粒子20は、変性シリコーンオイルとして親油性有機基であるモノアミン基が導入された変性シリコーンオイルを用いて製造された、親油性の分散性シリカナノ中空粒子である。各実施例の間の相違点は粒子径分布を測定する際の分散性シリカナノ中空粒子の濃度(シリカ濃度)の違いであり、いずれも溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて、実施例6はシリカ濃度2.3重量%で測定したものであり、実施例7はシリカ濃度2.5重量%で測定したもの、実施例8はシリカ濃度2.4重量%で測定したものである。
図9乃至図16に示されるように、本実施の形態2の実施例1乃至実施例8に係る分散性シリカナノ中空粒子20は、いずれもその強度分布の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、頻度分布(強度分布)による粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在している。中でも、図10乃至図13に示される本実施の形態2の実施例2乃至実施例5と、図14に示される実施例6の粒子径分布は極めてシャープであり、狭い粒子径の範囲内に全ての分散性シリカナノ中空粒子20が分布しており、粒子径が微細でかつ大きさが揃っていることが分かる。
これに対して、図17に示されるように、従来のシリカナノ中空粒子1の粒子径分布は、300nm〜700nmの範囲に分布が広がっており、粒子径分布のピークも約500nmと大きくなっている。これによって、本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20は、表面修飾を始めとする処理を行ったことによって分散性が著しく向上し、全ての粒子が略500nm以下の微細凝集粒子に分散していることが明らかになった。
このようにして、本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20,21及びその製造方法においては、シリカナノ中空粒子1の凝集を防止して、水や有機溶媒等の溶媒や有機塗料・無機塗料等の塗料や溶融樹脂等に微細凝集粒子として容易に分散させることができ、かつ、固形分としてより多くの量を混入することができる。
このような優れた分散性を有する本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20,21の応用分野について、図18及び図19を参照して説明する。
図18に示されるように、自動車30用の窓ガラス、特にフロントガラス31においては、異物等が衝突して割れた場合にガラス破片の飛散を防止するために、強化ガラスとしての合わせガラスを使用することが義務付けられている。図18(b)の拡大断面図に示されるように、この合わせガラス31は、2枚のガラス32A,32Bの間に接着剤としてのポリビニルブチラール(PVB)33を挟んで貼り合わせたもので、割れた場合にガラス破片の飛散を防止するだけでなく、耐貫通性に優れているため、事故の場合に乗員がフロントガラス31を突き破って飛び出すのを防ぐことができる。
しかしながら、自動車30においては、特に夏季における太陽光線による車内温度の上昇という問題があり、従来のフロントガラスでは、熱線である赤外線の透過率は低いものの、太陽光線によって暖められたフロントガラスの外表面から内部に熱貫流が生じて、自動車30内部の温度を上昇させていた。
そこで、図18(b)の拡大断面図に示されるように、このポリビニルブチラール(PVB)33に本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20を多量に混入した中間層34を、フロントガラス(合わせガラス)31内に設けることによって、シリカナノ中空粒子1の断熱性が発揮されて、フロントガラス31の外表面から内部への熱貫流が遮断され、自動車30の内部の温度上昇を顕著に低減する効果が期待できる。
また、図19(a)に示されるように、高層ビル35において大通りに面した壁面の大部分をガラス張りとすることも行われているが、かかる窓ガラス36としても強化ガラスとしての合わせガラスが用いられている。このような高層ビル35用の窓ガラス36としても、図19(b)に示されるように、ポリビニルブチラール(PVB)33に本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20を多量に混入した中間層34を、窓ガラス(合わせガラス)36内に設けることによって、シリカナノ中空粒子1の断熱性が発揮されて、窓ガラス36の外表面から内部への熱貫流が遮断され、高層ビル35の室内の温度上昇を顕著に低減する効果が期待できる。
本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子20,21の応用分野としては、その他にも、分散性シリカナノ中空粒子20,21を塗料中に分散してなる断熱塗料(特に、シリカナノ中空粒子1の透明性を生かした透明断熱塗膜を形成するための透明断熱塗料)や、透明合成樹脂フィルムの片面に金属を蒸着して他方の面に上記断熱塗料を均一に塗布してなる断熱フィルムや、合成樹脂中に分散性シリカナノ中空粒子20,21を混入してこれをフィルムに加工してなる断熱フィルムや、合成繊維原料中に分散性シリカナノ中空粒子20,21を混入してこれを紡糸してなる断熱繊維、等を挙げることができる。
上記各実施の形態においては、シリカ殻からなるナノ中空粒子として、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いた場合について説明したが、略30nm〜略300nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子であれば、その他の特性を有するものを使用しても良い。
また、上記各実施の形態においては、有機溶媒としてエタノール、n−ヘキサンを用いた場合についてのみ説明したが、これに限られるものではなく、他の有機溶媒、例えばメタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。
本発明を実施するに際しては、分散性シリカナノ中空粒子のその他の部分の構成、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、またシリカ殻からなるナノ中空粒子の分散液の製造方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
図1は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法に用いられるシリカナノ中空粒子の製造工程を示す模式図である。 図2は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法を示すフローチャートである。 図3は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例1を示す模式図である。 図4は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例2を示す模式図である。 図5は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例3を示す模式図である。 図6は本発明の実施の形態1に係るシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法における表面修飾方法の実施例4を示す模式図である。 図7は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法を示すフローチャートである。 図8は本発明の実施の形態2の変形例に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法を示すフローチャートである。 図9は本発明の実施の形態2の実施例1に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図10は本発明の実施の形態2の実施例2に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図11は本発明の実施の形態2の実施例3に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図12は本発明の実施の形態2の実施例4に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図13は本発明の実施の形態2の実施例5に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図14は本発明の実施の形態2の実施例6に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図15は本発明の実施の形態2の実施例7に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図16は本発明の実施の形態2の実施例8に係る分散性シリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図17は従来例に係るシリカナノ中空粒子の粒子径分布を示すグラフである。 図18(a)は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子を自動車の合わせガラスに応用した一例を示す斜視図、(b)は拡大断面図である。 図19(a)は本発明の実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子を高層ビルの合わせガラスに応用した一例を示す斜視図、(b)は拡大断面図である。
符号の説明
1 シリカ殻からなるナノ中空粒子
2 コア粒子(炭酸カルシウム)
3 シリカコーティング
5 シリカ殻からなるナノ中空粒子の高濃度分散液
6,11,15,17 表面修飾剤
7,12,16,18 表面修飾粒子
20,21 分散性シリカナノ中空粒子
31,36 合わせガラス

Claims (11)

  1. 略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に容易に微細分散可能とした分散性シリカナノ中空粒子であって、
    前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾することによって、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を微細分散させて粉体化させてなることを特徴とする分散性シリカナノ中空粒子。
  2. 前記溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、前記頻度分布(強度分布)による前記粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在することを特徴とする請求項1に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  3. 前記表面修飾は、前記湿式ジェットミルで強力に分散させたシリカ殻からなるナノ中空粒子と前記有機溶媒と前記表面修飾剤の混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  4. オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とすることを特徴とする請求項3に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  5. 前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  6. 前記表面修飾剤は変性シリコーンオイルであって、前記表面修飾は前記湿式ジェットミルで前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を強力に分散させるとともに前記表面修飾剤を前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に反応付加させることを特徴とする請求項2に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  7. 前記変性シリコーンオイルは親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項6に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  8. 前記変性シリコーンオイルは親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項6に記載の分散性シリカナノ中空粒子。
  9. 略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を溶媒に略均一に分散させた分散液の製造方法であって、
    前記溶媒に分散させて動的光散乱法によって粒子径分布を測定した場合に、その頻度分布(強度分布)の全てが110nm〜550nmの範囲内に入り、前記頻度分布(強度分布)による前記粒子径分布のピークが200nm〜350nmの範囲内に存在し、
    前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させる工程と、
    前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する工程と、
    表面修飾された前記シリカ殻からなるナノ中空粒子を前記溶媒に混合して再び微細分散させる工程と、
    前記溶媒に変性シリコーンオイルを添加する工程と、
    超音波分散機によって超音波分散させる工程と
    を具備することを特徴とするシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法。
  10. 前記表面修飾する工程は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子と前記有機溶媒と前記表面修飾剤との混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程であることを特徴とする請求項9に記載のシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法。
  11. 前記表面修飾する工程において、オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とすることを特徴とする請求項10に記載のシリカナノ中空粒子の分散液の製造方法。
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