以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車載エンジンの排気管に設けられたNOxセンサを用い、そのNOxセンサの出力に基づいて排気中のNOx濃度を検出するNOx濃度検出システムについて説明する。なお、車載エンジンは例えばディーゼルエンジンであり、同エンジンの排気管に設けられる排気浄化装置としてのNOx浄化触媒(NOx吸蔵還元型触媒やアンモニア選択還元触媒等)について、NOxセンサの出力に基づいて異常診断等が実施されるようになっている。例えば、NOx浄化触媒の下流側にNOxセンサが設けられ、同NOxセンサの出力から算出されるNOx濃度(NOx浄化率)が所定の異常判定値を上回る場合に、NOx浄化触媒が異常である旨診断される。
まずは、NOxセンサを構成するセンサ素子10について図1を用いて説明する。センサ素子10はいわゆる積層型構造を有するものであり、その内部構造を図1に示している。図の左右方向がセンサ素子10の長手方向に相当する。図の右側が素子基端側(排気管取り付け部位側)であり、図の左側が素子先端側である。センサ素子10は、ポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる、いわゆる3セル構造を有するものであり、それら各セルが積層配置されて構成されている。なお、モニタセルは、ポンプセル同様、ガス中の酸素排出の機能を具備するため、補助ポンプセル又は第2ポンプセルと称される場合もある。
センサ素子10において、ジルコニア等の酸素イオン導電性材料からなる固体電解質体11,12はシート状をなし、アルミナ等の絶縁材料からなるスペーサ13を介して図の上下に所定間隔を隔てて積層されている。このうち、図の上側の固体電解質体11には排気導入口11aが形成されており、この排気導入口11aを介して当該センサ素子周囲の排気が第1チャンバ14内に導入される。第1チャンバ14は、絞り部15を介して第2チャンバ16に連通している。固体電解質体11の図の上面には、排気を所定の拡散抵抗で出し入れするための多孔質拡散層17が設けられるとともに、大気通路18を区画形成するための絶縁層19が設けられている。
また、固体電解質体12の図の下面にはアルミナ等よりなる絶縁層21が設けられ、この絶縁層21により大気通路22が形成されている。絶縁層21には、センサ全体を加熱するためのヒータ(発熱体)23が埋設されている。この場合、ヒータ23により、ポンプセル31、モニタセル34及びセンサセル35が加熱され、これら各セル31,34,35の活性化が促進される。ヒータ23は、図示しないバッテリ電源等からの給電により熱エネルギを発生する。
図の下側の固体電解質体12には、第1チャンバ14に対面するようにしてポンプセル31が設けられており、ポンプセル31は、第1チャンバ14内に導入された排気中の酸素を出し入れして同チャンバ14内の残留酸素濃度を所定濃度に調整する。ポンプセル31は、固体電解質体12を挟んで設けられる上下一対の電極32,33を有し、そのうち特に第1チャンバ14側の電極32はNOx不活性電極(NOxを分解し難い電極)となっている。ポンプセル31は、電極32,33間に電圧が印加された状態で、第1チャンバ14内に存在する酸素を分解して電極33より大気通路22側に排出する。
また、図の上側の固体電解質体11には、第2チャンバ16に対面するようにしてモニタセル34及びセンサセル35が設けられている。モニタセル34は、上述したポンプセル31により余剰酸素が排出された後に、第2チャンバ16内の残留酸素濃度に応じて起電力、又は電圧印加に伴い電流出力を発生する。センサセル35は、第2チャンバ16内のガスからNOx濃度を検出する。
モニタセル34及びセンサセル35は、互いに近接した位置に並べて配置されており、第2チャンバ16側に電極36,37を有するとともに、大気通路18側に共通電極38を有する構成となっている。すなわち、モニタセル34は、固体電解質体11とそれを挟んで対向配置された電極36及び共通電極38とにより構成され、センサセル35は、同じく固体電解質体11とそれを挟んで対向配置された電極37及び共通電極38とにより構成されている。モニタセル34の電極36(第2チャンバ16側の電極)はNOxに不活性なAu−Pt等の貴金属からなるのに対し、センサセル35の電極37(第2チャンバ16側の電極)はNOxに活性な白金Pt、ロジウムRh等の貴金属からなる。なお、便宜上図面ではモニタセル34及びセンサセル35を排気の流れ方向に対して前後に並べて示すが、実際には、これら各セル34,35は排気の流れ方向に対して同等位置になるよう配置されるようになっている。
ここで、ポンプセル31と、モニタセル34及びセンサセル35とは、センサ素子10の長手方向に並べて設けられており、センサ素子10の先端側にポンプセル31が設けられ、同基端側(排気管取り付け側)にモニタセル34及びセンサセル35が設けられている。
上記構成のセンサ素子10では、排気は多孔質拡散層17及び排気導入口11aを通って第1チャンバ14に導入される。そして、この排気がポンプセル31近傍を通過する際、ポンプセル電極32,33間にポンプセル印加電圧Vpが印加されることで分解反応が起こり、第1チャンバ14内の酸素濃度に応じてポンプセル31を介して酸素が出し入れされる。なおこのとき、第1チャンバ14側の電極32がNOx不活性電極であるため、ポンプセル31では排気中のNOxは分解されず、酸素のみが分解されて電極33から大気通路22に排出される。こうしたポンプセル31の働きにより、第1チャンバ14内が所定の低酸素濃度の状態に保持される。
ポンプセル31近傍を通過したガス(酸素濃度調整後のガス)は第2チャンバ16に流れ込み、モニタセル34では、ガス中の残留酸素濃度に応じた出力が発生する。モニタセル34の出力は、モニタセル電極36,38間に所定のモニタセル印加電圧Vmが印加されることでモニタセル電流Imとして検出される。また、センサセル電極37,38間に所定のセンサセル印加電圧Vsが印加されることでガス中のNOxが還元分解され、その際発生する酸素が電極38から大気通路18に排出される。このとき、センサセル35に流れた電流(センサセル電流Is)により、排気中のNOx濃度が検出される。
NOxセンサ回路40はセンサ制御の主体となるマイコン41と制御回路部(詳細は図2で後述する)とを有しており、このマイコン41や制御回路部により、ポンプセル31の電極32,33間に印加するポンプセル電圧Vp、モニタセル34の電極36,38間に印加するモニタセル電圧Vm、センサセル35の電極37,38間に印加するセンサセル電圧Vsがそれぞれ制御される。マイコン41には、ポンプセル電流Ip、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの各々の計測値が逐次入力され、マイコン41は、これらの計測値に基づいて排気中の酸素濃度やNOx濃度を算出する。
図2は、NOxセンサ回路40の概要を示すブロック図である。なお、NOxセンサ回路40には、図示する各回路部以外にヒータ駆動回路部も含まれるが、図2では図示を省略している。
図2において、NOxセンサ回路40には、ポンプセル31の電極32,33にそれぞれ接続される正側端子PS+及び負側端子PS−と、モニタセル34及びセンサセル35の共通電極38に接続される共通端子COM+と、モニタセル34及びセンサセル35の各電極36,37にそれぞれ接続される負側端子MS−,SS−とが設けられている。
ポンプセル31の正側端子PS+には、ポンプセル31に印加するためのポンプセル印加電圧を可変設定するポンプセル駆動回路部42が接続され、負側端子PS−には、ポンプセル電流Ipを検出するIp検出回路部43が接続されている。ポンプセル駆動回路部42では、Ip検出回路部43により検出されたポンプセル電流Ipに応じてポンプセル印加電圧が制御される。Ip検出回路部43により検出されたポンプセル電流Ipはマイコン41に逐次入力される。
また、センサセル35とモニタセル34との正側の共通端子COM+には、これら各セル34,35に共通の電圧を印加するセンサセル/モニタセル駆動回路部44が接続され、各セル35,34の負側端子SS−,MS−にはそれぞれ、センサセル電流Isを検出するIs検出回路部45、モニタセル電流Imを検出するIm検出回路部46が接続されている。Is検出回路部45とIm検出回路部46とにはマイコン41が接続されており、各検出回路部45,46でセンサセル電流Is、モニタセル電流Imに応じて計測された電流計測値VS1,VM1がマイコン41に逐次入力される。また、センサセル/モニタセル駆動回路部44、Is検出回路部45及びIm検出回路部46では、それぞれ各端子COM+,SS−,MS−における端子電圧が計測され、その端子電圧(Vcom,VS2,VM2)がマイコン41に逐次入力されるようになっている。詳細は後述する。
その他、センサセル/モニタセル駆動回路部44には、異常発生時等においてモニタセル34及びセンサセル35の保護を図るべくこれら各セルへの電圧印加を中止させるセンサセル/モニタセル保護回路部48が接続されている。
以下、NOxセンサ回路40を構成する各回路部の詳細を説明する。ただし、本実施形態では、ポンプセル31に関する回路構成は何ら既存のものと変わりないため、ポンプセル駆動回路部42とIp検出回路部43とについては説明を省略する。
図3は、センサセル/モニタセル駆動回路部44の回路構成図である。図3において、定電圧源(定電圧Vcc)には2つの抵抗からなる抵抗分圧回路51が接続され、その抵抗分圧回路51の分圧電圧VX1がオペアンプ52の+入力端子に入力される。オペアンプ52の出力端子にはスイッチ回路53と保護抵抗54とを介して共通端子COM+が接続されている。オペアンプ52の負帰還部には保護抵抗55が設けられている。共通端子COM+にはESD(静電気放電)対応用のコンデンサ56が接続されている。
また、共通端子COM+と同電圧となる図の点A1には、保護抵抗57を介して電圧フォロア58が接続されており、本駆動回路部44では、共通端子COM+の電圧が共通端子電圧Vcomとして出力される。
スイッチ回路53は、後述するセンサセル/モニタセル保護回路部48から入力される電圧印加停止信号SG1に基づいてON/OFF(開閉)される構成となっており、電圧印加停止信号SG1が反転回路59を介してスイッチ回路53に入力される。本構成では、SG1=ロウの場合(電圧印加許可の場合)にスイッチ回路53が閉鎖され、抵抗分圧回路51の分圧電圧VX1が共通端子COM+に印加される。また、SG1=ハイの場合(電圧印加停止の場合)にスイッチ回路53が開放され、共通端子COM+への分圧電圧VX1の印加が遮断される。
次に、Is検出回路部45の構成を図4を用いて説明する。図4において、センサセル35の負側端子SS−には、電流計測抵抗61と差動増幅回路62とが直列に接続されている。この場合特に、電流計測抵抗61は、差動増幅回路62を構成するオペアンプの出力側であって負帰還部の外(帰還系の外)に設けられている。差動増幅回路62の+入力端子には、定電圧Vccを2つの抵抗により分圧する抵抗分圧回路63が接続され、−入力端子には、帰還入力経路L1が接続されている。
また、電流計測抵抗61の両端(B1点、B2点)のうち、負側端子SS−側であるB1点(電流計測抵抗61のセンサ側端子)には保護抵抗64を介して電圧フォロア65が接続されており、電圧フォロア65の出力端子が差動増幅回路66の+入力端子に接続されている。また、差動増幅回路66の−入力端子にはB2点(電流計測抵抗61の反センサ側端子)が接続されている。したがって、電流計測抵抗61にセンサセル電流Isが流れると、そのセンサセル電流Isに応じて電流計測抵抗61の両端(B1点、B2点)で電位差が生じ、その電位差が差動増幅回路66にて所定の増幅率で増幅された後、センサセル電流計測値VS1として出力される。
差動増幅回路66の出力であるセンサセル電流計測値VS1は、帰還入力経路L1を通じて差動増幅回路62の−入力端子に入力されるようになっている。これに関して詳しくは、「出力回路」としての差動増幅回路66の出力端子と、「印加電圧設定回路」としての差動増幅回路62の−入力端子とは帰還入力経路L1により接続されており、その帰還入力経路L1の途中に、当該経路L1を断続(開閉)するためのスイッチ回路67と、抵抗及びコンデンサよりなるノイズ除去用のLPF(ローパスフィルタ)68とが設けられている。通常時はスイッチ回路67が閉鎖されており、差動増幅回路66の出力であるセンサセル電流計測値VS1が差動増幅回路62に帰還入力される。なお、スイッチ回路67は、例えばトランジスタ等の半導体スイッチング素子により構成されている(後述する各スイッチ回路も同様)。
電圧フォロア65の出力電圧は、B1点の電圧(すなわち、センサセル35の負側端子SS−の電圧)と同じであり、その出力電圧がセンサセル端子電圧VS2として出力されるようになっている。
また、電圧フォロア65の出力端子と差動増幅回路62の+入力端子とは帰還入力経路L2により接続されており、その帰還入力経路L2の途中に、当該経路L2を断続(開閉)するためのスイッチ回路71が設けられている。通常時はスイッチ回路71が開放されており、閉鎖されることで電圧フォロア65の出力であるセンサセル端子電圧VS2が差動増幅回路62に帰還入力される。ここで、電圧フォロア65は入力インピーダンスが大きく、その出力側に素子電流が流れないことから、帰還入力経路L2を、素子電流が流れない経路とすることができる。そして、この経路にスイッチ回路71が設けられている。
帰還入力経路L1,L2にそれぞれ設けられるスイッチ回路67,71は、マイコン41から入力されるハイ/ロウ2値の回路切替信号SG2に基づいてON/OFF(開閉)される構成となっており、回路切替信号SG2はそのまま一方のスイッチ回路67に入力されるとともに、反転回路72を介して他方のスイッチ回路71に入力される。本実施形態では、SG2=ハイの場合に、スイッチ回路67が閉鎖、スイッチ回路71が開放となり、2つの帰還入力経路L1,L2のうち帰還入力経路L1のみが導通状態とされる。また、SG2=ロウの場合に、スイッチ回路67が開放、スイッチ回路71が閉鎖となり、2つの帰還入力経路L1,L2のうち帰還入力経路L2のみが導通状態とされる。要するに、スイッチ回路67,71は開閉時期が逆となる態様で開閉され、それにより帰還入力経路L1,L2のいずれか一方のみが導通状態とされる構成となっている。
通常時にNOx濃度を検出する場合、すなわち排気中のNOx濃度に応じて流れるセンサセル電流Isを計測する場合には、マイコン41から回路切替信号SG2としてハイ信号が出力され、差動増幅回路66の出力VS1が帰還入力経路L1を介して差動増幅回路62の−入力端子に入力される。そして、差動増幅回路66の出力VS1に応じて差動増幅回路62の出力が増減する。このとき、センサセル電流Isが大きいほど出力VS1が大きくなり、それに伴い差動増幅回路62の出力が減少する。
これに対し、電流計測抵抗61の両端電位差をゼロにし、同電流計測抵抗61に流れる電流が0nAとなる状態にする場合には、マイコン41から回路切替信号SG2としてロウ信号が出力され、電圧フォロア65の出力VS2が帰還入力経路L2を介して差動増幅回路62の+入力端子に入力される。このとき、差動増幅回路62によれば、電流計測抵抗61の反センサ側端子(B2点)の電圧が、同電流計測抵抗61のセンサ側端子(B1点)と同じで電圧に調整される。これにより、電流計測抵抗61の両端電位差がゼロになり、電流計測抵抗61に電流が流れない状態(電流=0nAの状態)となる。かかる場合、電流計測抵抗61に電流が流れない状態はNOx濃度=0ppmの状態に相当し、差動増幅回路66の出力VS1は本来チャンバ内の残留酸素濃度分の所定値になるが、仮にオフセット誤差が生じていれば、その誤差分だけ出力値にずれが生じる。したがって、その出力によりオフセット誤差を求めることができる。
また、マイコン41から回路切替信号SG2としてロウ信号が出力された場合には、電流計測抵抗61に電流が流れない状態となることから、センサセル35の負側端子SS−にはセンサセル起電力に応じた電圧が生じ、それがセンサセル端子電圧VS2として計測される。
電流計測抵抗61の両端(B1点、B2点)のうち、B1点にはバイアス電流抵抗75とESD対応用のコンデンサ76とが接続されている。つまり、これらバイアス電流抵抗75、ESD対応用のコンデンサ76は一端が電流計測抵抗61のセンサ側端子に接続され、他端が接地されている。バイアス電流抵抗75の抵抗値は、例えば1MΩ又はそれ以上である。
ここで、B1点(電流計測抵抗61のセンサ側端子)にバイアス電流抵抗75が接続されていることにより、断線や素子割れ等の異常が生じている状態下で上記のようにセンサセル起電力を計測する場合において、センサセル端子電圧VS2を固定電圧とすることができる。言い換えると、センサセル端子電圧VS2として起電力異常に対応する値を取得することが可能となる。つまり、断線や素子割れ等の異常発生状態ではセンサセル35で起電力が発生せず、センサセル端子電圧VS2(図のB1点電圧)が不定となるが、バイアス電流抵抗75を設けた上記構成によれば、センサ起電力が発生しない状態でも、センサセル端子電圧VS2を所定電圧(バイアス電流抵抗75の抵抗値に応じた電圧)に保持することができる。したがって、こうした起電力未発生の状態でもセンサセル端子電圧VS2が安定し、異常値としてのセンサ起電力を検出できる。
なお、本実施形態では、バイアス電流抵抗75の低電位側をグランドに接続しているが、これに限らず、固定電位となる他の基準電位部に接続する構成であってもよい。例えば、バイアス電流抵抗75の一端を電源回路に接続する構成や、グランド電圧〜電源電圧の範囲内の所定電圧を出力する回路部に接続する構成であってもよい。
上記のようにバイアス電流抵抗75を設けた場合、そのバイアス電流抵抗75を通じて電流が流れるため、その分、電流計測抵抗61に流れる電流が減じられることも考えられる。ゆえに、バイアス電流抵抗75に流れる電流をあらかじめ計測しておき、その計測電流分を電流補正する構成としてもよい。
Im検出回路部46は、Is検出回路部45と同様の回路構成を有しており、説明が重複するため図示及び詳細な説明を省略する。すなわち、Im検出回路部46としても図4の回路がそのまま用いられる。なお、図2に示すように、Im検出回路部46に対しては、マイコン41からモニタセル用の回路切替信号SG3が出力され、この回路切替信号SG3により、通常時における残留酸素濃度検出の状態と、電流計測抵抗の両端電位差をゼロとする状態(電流=0nAとする状態)とが切り替えられるようになっている(上述した回路切替信号SG2と同様)。また、Im検出回路部46では、図4のセンサセル電流計測値VS1に代えてモニタセル電流計測値VM1が出力されるとともに、センサセル端子電圧VS2に代えてモニタセル端子電圧VM2が出力されるようになっている。電流計測抵抗の両端電位差をゼロとする状態では、モニタセル端子電圧VM2によりモニタセル起電力が計測される。
図2に示すマイコン41では、Is検出回路部45から出力されるセンサセル電流計測値VS1とIm検出回路部46から出力されるモニタセル電流計測値VM1とが入力され、それら各入力値に基づいて(Is−Im)値が算出される。そして、その(Is−Im)値に基づいて排気中のNOx濃度が算出される。
次に、センサセル/モニタセル保護回路部48の構成を図5を用いて説明する。このセンサセル/モニタセル保護回路部48では、例えば、センサセル35及びモニタセル34の正負両側における回路部分(正側の共通端子COM+、負側端子SS−,MS−に接続された回路部分)の電源ショート異常やグランドショート異常が検出される。本実施形態では、センサセル/モニタセル保護回路部48が「電圧印加停止手段」に相当する。
図5において、本保護回路部48には、センサセル/モニタセル駆動回路部44から出力される共通端子電圧Vcomと、Is検出回路部45から出力されるセンサセル端子電圧VS2と、Im検出回路部46から出力されるモニタセル端子電圧VM2とが各々入力される。その他、同保護回路部48には、マイコン41から異常判定信号SG4が入力される。異常判定信号SG4については後で詳述するが、略述すると、異常判定信号SG4は、正常時にSG4=ハイ、異常発生時にSG4=ロウとされる2値信号である。そして、センサセル/モニタセル保護回路部48は、これらの各入力信号に基づいて電圧印加停止信号SG1を生成し、同信号SG1をセンサセル/モニタセル駆動回路部44に対して出力する。その詳細を以下に説明する。
センサセル/モニタセル保護回路部48は、5つの比較回路81〜85を有している。各比較回路81〜85の動作は以下のとおりである。
第1比較回路81は、共通端子電圧Vcom(正常時4.4V)と基準電圧Vref1(例えば4.6V)とを大小比較する。この場合、正常時にはVcom<Vref1であって第1比較回路81の出力がロウであるが、異常時にVcom>Vref1になると第1比較回路81の出力がハイになる。例えば、共通端子COM+に接続される部位で電源ショートが生じた場合、第1比較回路81の出力がハイになる。
第2比較回路82は、センサセル端子電圧VS2(正常時4.0V)と基準電圧Vref2(例えば3.8V)とを大小比較する。この場合、正常時にはVS2>Vref2であって第2比較回路82の出力がロウであるが、異常時にVS2<Vref2になると第2比較回路82の出力がハイになる。例えば、センサセル35の負側端子SS−に接続される部位でグランドショートが生じた場合、第2比較回路82の出力がハイになる。
第3比較回路83は、モニタセル端子電圧VM2(正常時4.0V)と基準電圧Vref3(例えば3.8V)とを大小比較する。この場合、正常時にはVM2>Vref3であって第3比較回路83の出力がロウであるが、異常時にVM2<Vref3になると第3比較回路83の出力がハイになる。例えば、モニタセル34の負側端子MS−に接続される部位でグランドショートが生じた場合、第3比較回路83の出力がハイになる。
第4比較回路84は、共通端子電圧Vcomとセンサセル端子電圧VS2とを大小比較する。この場合、正常時にはVcom>VS2であって第4比較回路84の出力がロウであるが、異常時にVcom<VS2になると第4比較回路84の出力がハイになる。例えば、共通端子COM+に接続される部位でグランドショートが生じた場合、又はセンサセル35の負側端子SS−に接続される部位で電源ショートが生じた場合、第4比較回路84の出力がハイになる。
第5比較回路85は、共通端子電圧Vcomとモニタセル端子電圧VM2とを大小比較する。この場合、正常時にはVcom>VM2であって第5比較回路85の出力がロウであるが、異常時にVcom<VM2になると第5比較回路85の出力がハイになる。例えば、共通端子COM+に接続される部位でグランドショートが生じた場合、又はモニタセル34の負側端子MS−に接続される部位で電源ショートが生じた場合、第5比較回路85の出力がハイになる。
なお図示は略するが、基準電圧Vref1〜Vref3は、いずれも定電圧Vccを2つの抵抗により分圧する抵抗分圧回路により生成されるものである。
そして、5つの比較回路81〜85の各出力と、マイコン41からの異常判定信号SG4とがOR回路86に入力される。この場合、OR回路86の複数の入力のうち何れかがハイであれば、電圧印加停止信号SG1としてハイ信号が出力される。SG1=ハイであれば、前述のとおりセンサセル/モニタセル駆動回路部44においてスイッチ回路53が開放され、共通端子COM+への電圧印加が遮断される(図3参照)。つまり、センサセル35及びモニタセル34について電源ショートやグランドショートといった異常が発生している場合、あるいはマイコン41からハイレベルの異常判定信号SG4が出力されている場合には、センサセル35及びモニタセル34への電圧印加が停止されてこれら各セルの保護が図られる。より具体的には、センサセル35及びモニタセル34への過電流が防止されることで、センサ素子の破損等を抑制できる。
次に、マイコン41により実行されるセンサ出力補正値の算出処理と、センサ起電力による異常検出処理とについて説明する。センサ出力補正値の算出処理は、NOx濃度検出の途中においてIs検出回路部45やIm検出回路部46における電流計測抵抗の両端電位差を一時的にゼロとし、その状態での回路出力により出力補正値(特に本実施形態ではオフセット補正値)を算出するものである。また、異常検出処理は、上記のとおり電流計測抵抗の両端電位差を一時的にゼロとすることで得られたセンサセル35又はモニタセル34の起電力値に基づいて、断線や素子割れ、素子活性不良等の異常の有無を検出するものである。
まずは、センサ出力補正値の算出処理について図6のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図6に示す処理は、マイコン41により所定の時間周期で繰り返し実行される。ここでは、Is検出回路部45の出力値(VS1)におけるオフセット補正値を算出する手順を説明する。
図6において、ステップS11では、今現在、オフセット補正値の算出タイミングであるか否かを判定する。本実施形態ではオフセット補正値の算出周期を10秒としており、10秒が経過する度にステップS11が肯定される。オフセット補正値の算出周期は、例えば回路の温度変化が生じる速さに応じて設定されるのが望ましい。オフセット補正値の算出タイミングであれば、ステップS12に進み、センサセル35が所定の活性温度(例えば750℃)まで昇温されているか否かを判定する。具体的には、エンジン始動時からの経過時間やヒータ投入電力、又はセンサセル35におけるインピーダンス検出値などに基づいて、センサセル35の昇温状態が判定される。
センサセル35が所定の活性温度まで昇温されていればステップS13に進み、Is検出回路部45に対して出力される回路切替信号SG2をハイからロウに切り替える。これにより、Is検出回路部45において差動増幅回路62への帰還入力経路L1,L2の導通切替(ここではL1→L2への切替)が行われ、それに伴い、電流計測抵抗61に流れる電流が意図的に0nAにされる。続くステップS14では、回路切替信号SG2のハイ→ロウの切替後における出力安定化を待つための待機処理を実行する。
そして、待機処理により所定時間待機した後、ステップS15では、差動増幅回路66の出力VS1を読み込み、そのVS1値によりオフセット補正値Foffを算出する。本実施形態では、その時のVS1値を電流換算してオフセット補正値Foffとし、そのオフセット補正値Foffをバックアップ用デバイス(例えば、EEPROMやバックアップRAM)に記憶する。言い加えると、オフセット補正値Foffは、学習値としてバックアップ用デバイスに記憶されるとともに適宜更新されるものとなっている。
その後、ステップS16では、回路切替信号SG2をロウからハイに切り替える。これにより、差動増幅回路62への帰還入力経路がL1に戻され、それに伴いIs検出回路部45が通常のNOx濃度検出状態に戻される。続くステップS17では、回路切替信号SG2のロウ→ハイの切替後における出力安定化を待つための待機処理を実行する。そして、待機処理により所定時間待機した後、通常のNOx濃度検出が再開される(ステップS18)。
上記のように算出されたオフセット補正値Foffは、NOx濃度検出時において、逐次計測されたセンサセル電流Is(VS1の電流換算値)の補正に適宜用いられる。すなわち、NOx濃度検出時に計測されたセンサセル電流Isからオフセット補正値Foffが減算されて補正後センサセル電流が算出され(補正後センサセル電流=Is−Foff)、その補正後センサセル電流に基づいてNOx濃度が算出される。
実際には、Is検出回路部45だけでなくIm検出回路部46についても同様にオフセット補正値の算出が行われ、それら2つの検出回路部45,46におけるオフセット補正値を両方用いてNOx濃度の算出が行われる。この場合、センサセル電流Is(計測値)からセンサセル用のオフセット補正値が減算されて補正後センサセル電流が算出されるとともに、モニタセル電流Im(計測値)からモニタセル用のオフセット補正値が減算されて補正後モニタセル電流が算出され、それら補正後センサセル電流と補正後モニタセル電流との差(=補正後センサセル電流−補正後モニタセル電流)に基づいてNOx濃度が算出される。
ここで、図7に示すように、NOxセンサ回路40では、センサセル電流Is、モニタセルIm、(Is−Im)についてそれぞれオフセット誤差が生じる。図中、「センサ出力」はセンサ素子10にて実際に生じた電流値であり、「回路検出値」は、実際のセンサ出力に対してNOxセンサ回路40(Is検出回路部45、Im検出回路部46)で計測された計測値である。
かかる場合において、センサ出力に対するオフセット誤差をオフセット補正値として求め、このオフセット補正値を用いてセンサセル電流Is、モニタセル電流Imをそれぞれ補正することにより、回路検出値のオフセット誤差に起因するNOx濃度の算出精度低下を抑制できる。
図8は、センサセル起電力に基づく異常検出処理を示すフローチャートである。本処理は、マイコン41により所定の時間周期で繰り返し実行される。
図8において、ステップS21では、今現在、異常検出タイミングであるか否かを判定する。本実施形態では異常検出周期を0.5秒としており、0.5秒が経過する度にステップS21が肯定される。異常検出タイミングであれば、ステップS22に進み、センサセル35が所定の活性温度(例えば750℃)まで昇温されているか否かを判定する(上記ステップS12と同様)。また、ステップS23では、エンジン始動後においてセンサ素子10のチャンバ14,16内の酸素が十分に排出され、残留酸素濃度が所定の低酸素レベルになっているか否かを判定する。例えば、エンジン始動時からの経過時間などに基づいて、残留酸素の排出状況が判定される。
そして、ステップS22,S23が共に肯定されるとステップS24に進み、Is検出回路部45に対して出力される回路切替信号SG2をハイからロウに切り替える。これにより、Is検出回路部45において差動増幅回路62への帰還入力経路L1,L2の導通切替(ここではL1→L2への切替)が行われ、それに伴い、電流計測抵抗61に流れる電流が意図的に0nAにされる。続くステップS25では、回路切替信号SG2のハイ→ロウの切替後における出力安定化を待つための待機処理を実行する。
そして、待機処理により所定時間待機した後、ステップS26では、共通端子電圧Vcomとセンサセル端子電圧VS2とを読み込み、そのVom値とVS2値とによりセンサセル35の起電力値を検出する。具体的には、共通端子電圧Vcom(センサセル正側端子の起電力計測値)からセンサセル端子電圧VS2(センサセル負側端子の起電力計測値)を減算することで、センサセル35の起電力値を算出する。またこのとき、センサセル35の起電力値をバックアップ用デバイス(例えば、EEPROMやバックアップRAM)に記憶する。
その後、ステップS27では、上記ステップS26で検出した起電力値があらかじめ定めた正常範囲に入っているか否かを判定する。具体的には、センサ素子10のチャンバ内は基本的に弱リーン状態にあり、センサセル35の起電力は0.2V程度の電圧値となる。ゆえに、0.2V±0.1Vの範囲(0.1〜0.3Vの範囲)を正常範囲としている。ただし、通常時のセンサセル印加電圧が0.4V(=4.4V−4.0V)であることを考慮し、正常範囲を0.1〜0.4Vとしてもよい。
起電力値が正常範囲に入っていれば、ステップS28に進み、断線や素子割れ等の異常が発生していないとして正常判定を実施する。また、起電力値が正常範囲に入っていなければ、ステップS29に進み、起電力異常が連続して所定回数発生しているか否かを判定する。そして、起電力異常が連続して所定回数発生していれば、ステップS30に進み、断線や素子割れ等の異常が発生しているとして異常判定を実施する。
断線や素子割れ等の異常が発生している旨判定された場合には、ステップS31でセンサセル/モニタセル保護回路部48に対して異常判定信号SG4としてハイ信号を出力する。
その後、ステップS32では、回路切替信号SG2をロウからハイに切り替える。これにより、差動増幅回路62への帰還入力経路がL1に戻され、それに伴いIs検出回路部45が通常のNOx濃度検出状態に戻される。続くステップS33では、回路切替信号SG2のロウ→ハイの切替後における出力安定化を待つための待機処理を実行する。そして、待機処理により所定時間待機した後、通常のNOx濃度検出が再開される(ステップS34)。
図示は省略するが、モニタセル34についても同様にモニタセル起電力に基づく異常検出処理が実施される。その手順は図8の手順に準ずる。簡単に説明すると、Im検出回路部46において電流計測抵抗の両端電位差がゼロとなる状態とし、その状態下でモニタセル端子電圧VM2によりモニタセル起電力を検出する。そして、そのモニタセル起電力が正常範囲(0.1〜0.3Vの範囲、又は0.1〜0.4Vの範囲)に入っているか否かにより異常判定を実施する。これにより、モニタセル34について断線や素子割れ等の異常が検出される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
Is検出回路部45(又はIm検出回路部46)において、素子電流(センサセル電流、モニタセル電流)が流れない経路上にスイッチ回路71を設け、スイッチ回路71を閉じた状態でセンサセル35の起電力を検出し、その起電力に基づいて異常判定を実施する構成としたため、素子割れや活性不良、断線等の異常が発生している場合にその異常の発生を好適に検出できる。
この場合特に、素子電流が流れない経路上にスイッチ回路71が設けられているため(逆に言えば、素子電流が流れる経路上にはスイッチ回路が設けられていないため)、そのスイッチ回路71によるリーク電流、具体的にはトランジスタ等の半導体スイッチング素子によるリーク電流が原因で素子電流計測値に誤差が生じるといった不都合を回避できる。つまり、スイッチ回路71でリーク電流が生じたとしても素子電流計測としては何ら影響はない(仮に影響が生じたとしてもそれは極めて微小である)。本実施形態のように微弱なNOx検出電流を計測する場合には、スイッチ回路の存在が原因で電流計測値に誤差が生じると、NOx濃度検出への影響が大きなものとなるが、こうした不都合を回避できる。
スイッチ回路71を閉じた状態でセンサセル35の正負両方の端子電圧(共通端子電圧Vcomとセンサセル端子電圧VS2)を計測し、それら各電圧の差によりセンサセル35の起電力を検出する構成とした(モニタセル34も同様)。これにより、正確に起電力を検出できる。ただし、センサセル端子電圧VS2のみで起電力を検出することも可能である。
Is検出回路部45(又はIm検出回路部46)において、2つの帰還入力経路L1,L2にそれぞれスイッチ回路67,71を設け、通常のNOx濃度検出か、起電力検出時かに応じてスイッチ回路67,71を開閉して、導通状態となる帰還入力経路を適宜切り替える構成とした。これにより、差動増幅回路62への帰還入力経路を適宜切り替えることで、NOx濃度検出を一時的に中断して起電力検出を実施することができる。
電流計測抵抗61のセンサ側端子をバイアス電流抵抗75を介してグランド(基準電位部)に接続する構成としたため、センサ起電力が発生しない状態でも、バイアス電流抵抗75によって電流計測抵抗61のセンサ側端子電圧を所定電圧に保持できる。したがって、こうした起電力未発生の状態でも回路出力が安定し、異常値としてのセンサ起電力を検出できる。
センサセル/モニタセル保護回路部48において、センサセル35及びモニタセル34の各端子電圧である共通端子電圧Vcom、センサセル端子電圧VS2及びモニタセル端子電圧VM2に基づいて異常判定を実施する構成とした(実際には、各端子電圧に基づいて異常判定信号SG4を出力する構成とした)。これにより、センサ起電力に基づいて素子割れや活性不良、断線等の異常が検出できることに加え、各端子電圧に基づいてセンサセル35及びモニタセル34の各電極側の電源ショートやグランドショートの異常も検出できることとなる。
断線等の異常が発生している旨判定された場合に異常判定信号SG4をハイ信号とし、センサセル/モニタセル駆動回路部44においてセンサセル35及びモニタセル34への電圧印加を停止する構成とした。これにより、異常発生時に各セルへの電圧印加を継続することによるセンサ素子への悪影響を抑制でき、ひいてはセンサ素子の保護を図ることができる。
そもそも微弱電流が流れることを想定しているNOxセンサ回路40では、各種の異常(特に端子部での電源ショート、グランドショート)が発生するとセンサ素子に過大な電流が流れてしまい、センサ素子の破壊や出力特性の変化が発生するなど悪影響が及ぶ。この点、上記のように異常発生時に各セルへの電圧印加を停止することにより、センサ素子の保護を図ることができる。
異常検出処理(図8)において、センサセル35(又はモニタセル34)が温度活性の状態にあること、エンジン始動後においてセンサ素子10のチャンバ14,16内の酸素が十分に排出されていることを条件としてセンサ起電力を検出する構成としたため、センサ起電力を適正に検出することができる。すなわち、センサ素子10が未活性であること(素子温度が低いこと)に起因する起電力の検出不良や、チャンバ内の余剰酸素が多すぎることに起因する起電力の検出不良を抑制できる。これにより、異常検出の精度を高めることができる。
同じく異常検出処理(図8)において、スイッチ回路67,71の開閉切替時に出力安定を待つための待機時間を設けたため、センサ起電力を安定した状態で検出することができ、異常検出の精度を高めることができる。なお、待機処理では、所定時間だけ待機することに代えて、センサ起電力の時間当たりの変化量(変化率)が所定以下となるまで待機するようにしてもよい。
また、Is検出回路部45(又はIm検出回路部46)において、スイッチ回路71を閉じた状態で差動増幅回路66の出力VS1(又はVM1)によりオフセット補正値Foffを算出する構成とした。本構成では、NOxセンサ回路40においてオフセット誤差が生じている場合において、そのオフセット誤差に相当するオフセット補正値Foffを好適に求めることができる。また、素子電流が流れない経路上にスイッチ回路71が設けられているため、前述のとおりスイッチ回路71によるリーク電流が原因で素子電流計測値に誤差が生じるといった不都合を回避できる。
上記のようにオフセット補正値Foffを好適に算出でき、かつスイッチ回路のリーク電流を原因とする悪影響を排除できることから、ひいてはNOx濃度の検出精度を向上させることができる。また、NOxセンサ回路40において温度特性や経時変化を原因として出力誤差が生じ、さらに同出力誤差の変化が生じる場合にも、その出力特性を好適に解消しつつ適正にNOx濃度を検出できる。
スイッチ回路71を閉じることで電流計測抵抗61の両端電位差をゼロとし、その電位差ゼロの状態で差動増幅回路66の出力VS1(又はVM1)からオフセット補正値Foffを算出する構成とした。これにより、NOx濃度=0ppmでの計測状態における出力VS1(又はVM1)によりオフセット補正値Foffを好適に算出することができる。
また、差動増幅回路62の負帰還部の外に電流計測抵抗61を設けたため、同差動増幅回路62の出力(電流計測抵抗61の反センサ側端子電圧)を制御することが可能となり、電流計測抵抗61の両端電位差を可変に調整することができる。したがって、電流計測抵抗61の両端電位差をゼロにすることが可能となる。
センサセル35及びモニタセル34の正側電極に共通の駆動回路部44を接続するとともに、それら各セル35,34の負側電極にIs検出回路部45及びIm検出回路部46をそれぞれ接続した構成において、Is検出回路部45及びIm検出回路部46にそれぞれスイッチ回路71を設け、各検出回路部45,46にて取得した電流計測値VS1,VM1により各検出回路部45,46のオフセット補正値をそれぞれ算出する構成とした。これにより、各検出回路部45,46の特性ばらつき(回路誤差)がセルごとに算出できる。したがって、各セル34,35の共通の駆動回路部であるセンサセル/モニタセル駆動回路部44にスイッチ回路を設けた場合と比較して、算出されるオフセット補正値の精度を高めることができる。
センサ出力補正値の算出処理(図6)において、センサセル35(又はモニタセル34)が温度活性の状態にあることを条件としてオフセット補正値Foffを算出する構成としたため、回路出力が安定した状態でオフセット補正値Foffを精度良く求めることができる。
同じくセンサ出力補正値の算出処理(図6)において、スイッチ回路67,71の開閉切替時に出力安定を待つための待機時間を設けたため、回路出力が安定した状態でセンサセル電流計測値VS1を取得することができ、都度のNOx濃度値やオフセット補正値Foffを精度良く求めることができる。なお、待機処理では、所定時間だけ待機することに代えて、VS1の時間当たりの変化量(変化率)が所定以下となるまで待機するようにしてもよい。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、Is検出回路部45において「印加電圧設定回路」を差動増幅回路62により構成したが(図4参照)、これを変更し、「印加電圧設定回路」を非反転増幅回路により構成することも可能である。図9に示す回路構成について図4との相違点を中心に説明する。共通の構成については同一の符号を付している。なお、図9では、印加電圧設定回路として非反転増幅回路を採用することに伴い、その電圧入力に関する構成を変更している。
図9では、印加電圧設定回路として非反転増幅回路101が設けられている。非反転増幅回路101の−入力端子は電流計測抵抗61のセンサ側端子(B1点)に接続されており、B1点の電圧は非反転増幅回路101の+入力端子の電圧に保持される。非反転増幅回路101の+入力端子には、スイッチ回路102を介して抵抗分圧回路63の分圧点が接続されるとともに、スイッチ回路71を介して電圧フォロア65の出力端子が接続されている。
スイッチ回路102,71は、マイコン41から入力される回路切替信号SG2に基づいてON/OFF(開閉)される構成となっており、回路切替信号SG2がそのまま一方のスイッチ回路102に入力されるとともに、反転回路103を介して他方のスイッチ回路71に入力される。本実施形態では、SG2=ハイの場合に、スイッチ回路102が閉鎖、スイッチ回路71が開放となり、抵抗分圧回路63の分圧電圧VX3が非反転増幅回路101の+入力端子に入力される。また、SG2=ロウの場合に、スイッチ回路102が開放、スイッチ回路71が閉鎖となり、電圧フォロア65の出力が非反転増幅回路101の+入力端子に入力される。要するに、スイッチ回路102,71は開閉時期が逆となる態様で開閉し、それにより非反転増幅回路101の入力電圧が変更される構成となっている。
本構成において、通常時にNOx濃度を検出する場合には、回路切替信号SG2がハイ信号とされ、センサセル35の負側端子SS−に電圧VX3が印加される。これにより、排気中のNOx濃度に応じたセンサセル電流Isが計測される。これに対し、オフセット補正値を算出する場合には、回路切替信号SG2がロウ信号とされ、電圧フォロア65の出力VS2が帰還入力経路L2を介して非反転増幅回路101の+入力端子に入力される。これにより、電流計測抵抗61の両端電位差がゼロになり、電流計測抵抗61に電流が流れない状態となる(電流=0nA)。したがって、その時のセンサ出力VS1によりオフセット補正値を算出できる。また、センサセル端子電圧VS2によりセンサ起電力の検出も可能となる。
・上記実施形態では、断線等の各種異常が発生している場合に、センサセル/モニタセル駆動回路部44による電圧印加を停止することでセンサ保護を図る構成としたが、これを他に変更してもよい。具体的には、センサセル/モニタセル駆動回路部44において、保護抵抗54を、あらかじめ定めた上限電流(例えばエージング電流)で制限するべく大きな抵抗値(数100kΩ〜1MΩ程度)のものとしたり、オペアンプ52の電流出力を制限しておいたりする。これにより、例えば、センサセル35の負側端子で電源ショートやグランドショート等の異常が発生しても、同セルに流れる最大電流が制限され、センサ素子の保護を図ることができる。この場合、セル印加電圧が、センサ特性を整えるための電気エージング電圧以下に抑えられる構成であるとよい。
・上記実施形態では、Is検出回路部45において帰還入力経路L2に素子電流を流さない構成として、電流計測抵抗61のセンサ側端子と差動増幅回路62とを電気的に接続する電気経路に電圧フォロア65を設ける構成としたが、この電圧フォロア65に代えて非反転増幅回路を設ける構成としてもよい。つまりこの場合、非反転増幅回路と差動増幅回路62との間の経路(帰還入力経路L2)にスイッチ回路71が設けられることとなる。
・上記実施形態では、図2で説明したようにセンサセル電流計測値VS1とモニタセル電流計測値VM1とをマイコン41に入力し、同マイコン41にて(Is−Im)値を算出する構成としたが、これを以下のように変更することも可能である。すなわち、例えば差動増幅回路により構成される[Is−Im]算出回路部を設け、その[Is−Im]算出回路部に、Is検出回路部45から出力されるセンサセル電流計測値VS1とIm検出回路部46から出力されるモニタセル電流計測値VM1とを各々入力させる。そして、同算出回路部において(Is−Im)値を算出し、その(Is−Im)値をマイコン41に出力する。
・異常検出処理において、センサ起電力に基づいて異常検出するための異常判定値(図8のステップS27の正常範囲)を、チャンバ14,16内の残留酸素濃度に応じて可変に設定する構成としてもよい。具体的には、ポンプセル電流Ipにより残留酸素濃度を検出し、その残留酸素濃度が多いほど異常判定値を小さくする。また、検出ガスがリッチガスである場合(残留酸素濃度=0の場合)には、異常判定値を大きくする。これにより、チャンバ内の残留酸素濃度が増減変化しても、高精度な異常判定を実現できる。なお、ポンプセル電流Ipそのものに基づいて異常判定値を設定することも可能である。
・センサセル電流又はモニタセル電流が規定値よりも低いことを条件として、センサ起電力に基づく異常判定を実行するようにしてもよい。すなわち、断線異常を検出する場合において、センサセル電流又はモニタセル電流が計測されれば、断線異常が生じていないと判断できる。また、センサセル電流又はモニタセル電流が計測されなければ、断線異常が生じていること以外に、活性不良が生じていること、元々電流値が0であること等が考えられる。したがって、センサセル電流又はモニタセル電流が規定値よりも低い場合に異常判定を実行することで、断線異常の特定が可能となる。
・上記実施形態では、センサ素子として、ポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる、いわゆる3セル構造を有するものを適用したが、これを変更しても良い。例えば、センサ素子として、ポンプセル及びセンサセルからなる、いわゆる2セル構造を有するものを適用する。なお、モニタセル(第3セル)を用いる場合に、そのモニタセルが起電力を出力する起電力セルであってもよい。
・検出対象の特定成分がNOx以外であってもよい。例えば、排気中のHCやCOを検出対象とするガスセンサであってもよい。この場合、ポンプセルにて排気中の余剰酸素を排出し、センサセルにて余剰酸素排出後のガスからHCやCOを分解してHC濃度やCO濃度を検出する。
・エンジンの吸気通路に設けられるガスセンサや、ディーゼルエンジン以外にガソリンエンジンなど、他の形式のエンジンに用いられるガスセンサを対象とするセンサ制御装置としても具体化できる。そのガスセンサは、排気以外のガスを検出対象としたり、自動車以外の用途で用いられるものであってもよい。
10…センサ素子、11…固体電解質体、14…第1チャンバ(ガス室)、16…第2チャンバ(ガス室)、23…ヒータ、31…ポンプセル(第1セル)、32,33…電極、34…モニタセル(第3セル)、35…センサセル(第2セル)、36〜38…電極、40…NOxセンサ回路、41…マイコン(起電力検出手段、異常判定手段)、44…センサセル/モニタセル駆動回路部、45…Is検出回路部、46…Im検出回路部、48…センサセル/モニタセル保護回路部(電圧印加停止手段)、61…電流計測抵抗、62…差動増幅回路(印加電圧設定回路)、65…電圧フォロア、66…差動増幅回路(出力回路)、71…スイッチ回路(スイッチ手段)、75…バイアス電流抵抗、101…非反転増幅回路(印加電圧設定回路)、102…スイッチ回路、L1…帰還入力経路(第1帰還経路)、L2…帰還入力経路(第2帰還経路)。