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JP2009156939A - 防眩フィルム、防眩性偏光板および画像表示装置 - Google Patents

防眩フィルム、防眩性偏光板および画像表示装置 Download PDF

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JP2009156939A JP2007332413A JP2007332413A JP2009156939A JP 2009156939 A JP2009156939 A JP 2009156939A JP 2007332413 A JP2007332413 A JP 2007332413A JP 2007332413 A JP2007332413 A JP 2007332413A JP 2009156939 A JP2009156939 A JP 2009156939A
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勉 古谷
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Abstract

【課題】本発明の目的は、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、かつギラツキを発生せずに高いコントラストを発現し、機械的強度にも優れた防眩フィルムを提供することである。
【解決手段】本発明による防眩フィルムは、表面が平坦な樹脂基材フィルムの少なくとも一方の表面に、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層が積層された防眩フィルムであって、該樹脂基材フィルムの屈折率nfに対するハードコート層の屈折率nrの比nr/nfが0.96以下であり、該樹脂基材フィルムと該ハードコート層との界面において、該樹脂基材フィルム側から垂直に光を入射した時のハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)と、ハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)の比T(60)/T(0)が0.000001以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、優れた防眩性能を示しながら白ちゃけず、画像表示装置に適用したときにギラツキが発生することなく、高いコントラストを発現し、良好な視認性を与える防眩(アンチグレア)フィルム、ならびに当該防眩フィルムを用いた防眩性偏光板および画像表示装置に関するものである。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が写り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。従来、このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行なう携帯電話等においては、画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられている。このフィルム層には、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理技術や表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理技術が一般的に用いられている。特に、後者の微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させる技術は、比較的安価に製造することができるため、大型モニタやパーソナルコンピュータ等の用途に広く用いられている。
このような防眩処理技術が施された防眩フィルムは従来、たとえば、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸を基材シート上に形成する方法などにより製造されている。しかしながら、このようなフィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中のフィラーの分散状態や塗布状態等によって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩性能が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる白ちゃけが発生しやすいという問題があった。
また、画像表示装置が高精細化した場合には、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状が干渉し、結果として輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキ現象が発生しやすいという問題があった。ギラツキを解消するために、バインダ樹脂と分散フィラーとの間に屈折率差を設けて光を散乱させる試みもあるが、そのような防眩フィルムを画像表示装置に適用した場合には、散乱光によって黒表示の輝度が上がり、結果としてコントラストが低下して視認性を著しく低下させるという問題があった。また、このようなフィラーにより表面凹凸形状が形成された防眩フィルムでは、入射光を散乱させるための表面凹凸形状と、主に光の内部散乱を担う領域とを同時に形成することになるため、分散粒子の粒子径、濃度、屈折率、分散性をバランスさせて設計した上に、製造上、精密な制御が必要であるが、事実上このような設計および制御は困難であった。このような複雑な設計および制御を回避する試みとして、光の内部散乱機能を有する樹脂層の形成と表面凹凸形状の形成とを分離して行なうことが特許文献1に開示されているが、粒子を樹脂溶液に分散させて塗布する方法では、乾燥工程中などに予期せぬ凝集などが起こりやすいという問題があった。
一方、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。たとえば、特許文献2(請求項1〜6、段落0043〜0046)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させて、三次元10点平均粗さ、および、三次元粗さ基準面上における隣接する凸部同士の平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成することにより、透明樹脂フィルム上に、当該表面凹凸を有する電離放射線硬化性樹脂層の硬化物層が積層された防眩フィルムが開示されている。他方、このような防眩フィルムを得る異なったタイプのエンボス法として特許文献3に開示されるようなエンボス法なども挙げることができる。
特開2007−101912号公報 特開2002−189106号公報 特開2006−053371号公報
本発明は、かかる現状に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生せずに高いコントラストを発現し、また、機械的強度にも優れた防眩(アンチグレア)フィルムを提供し、さらには、その防眩フィルムを適用した防眩性偏光板および画像表示装置を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、表面が平坦な樹脂基材フィルムの表面上に、この樹脂基材フィルムとの屈折率比が0.96以下の表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層を形成し、散乱光強度が所定の値を示すようにすれば、結果として、ギラツキが十分に防止されるとともに、画像表示装置に適用したときにコントラストがほとんど低下しない防眩フィルムが得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに種々の検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明による防眩フィルムは、表面が平坦な樹脂基材フィルムの少なくとも一方の表面に、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層が積層された防眩フィルムであって、該樹脂基材フィルムの屈折率nfに対するハードコート層の屈折率nrの比nr/nfが0.96以下であり、該樹脂基材フィルムと該ハードコート層との界面において、該樹脂基材フィルム側から垂直に光を入射した時のハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)と、ハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)の比T(60)/T(0)が0.000001以下であることを特徴とする。
また、本発明の防眩フィルムにおいては、全ヘイズは5%以上50%以下であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムに用いる樹脂基材フィルムの厚みは20μm以上100μm以下であることが好ましく、上記ハードコート層は、その厚みが2μm以上20μm以下であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムに用いる樹脂基材フィルムはポリエチレンテレフタレート樹脂で構成されることが好ましい。
また、本発明の防眩フィルムにおいては、ハードコート層側から入射角30゜で光を入射したときの、反射角30゜の反射率R(30)が0.05%以上2%以下であり、反射角40゜の反射率R(40)が0.0001%以上0.005%以下であり、反射角50゜の反射率R(50)が0.00001%以上0.0005%以下であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムは、ハードコート層の微細な凹凸形状を有する表面上に、低反射膜をさらに有していてもよい。
また本発明により、上記いずれかに記載の防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる防眩性偏光板であって、該偏光フィルムは、防眩フィルムのハードコート層が積層されていない方の面側に配置される防眩性偏光板が提供される。
本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板は、液晶表示素子やプラズマディスプレイパネルなどの画像表示素子と組み合わせて、画像表示装置とすることができる。すなわち、本発明によれば、上記いずれかに記載の防眩フィルムまたは上記防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、防眩フィルムまたは防眩性偏光板が、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置が提供される。
本発明の防眩フィルムは、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、また、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生させずに高いコントラストを発現し得る。かかる本発明の防眩フィルムを偏光フィルム(偏光子)と組み合わせた防眩性偏光板も、同様の効果を発現する。そして、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を配置した画像表示装置は、防眩性能が高く、視認性に優れる上に、パネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来る。
<防眩フィルム>
本発明の防眩フィルムは、表面が平坦な樹脂基材フィルムの少なくとも一方の表面に、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層が積層された構成を有する。図1(a)および(b)は、本発明の防眩フィルムの好ましい例を示す断面模式図である。図1(a)に示される防眩フィルム103aは、表面が平坦な樹脂基材フィルム101aと、樹脂基材フィルム101a表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状105aを有する樹脂基材フィルム101aとは屈折率の異なるハードコート層102aとを備える。ハードコート層102aの表面の微細な凹凸形状105aはハードコート層102a中に分散されたフィラー104aによって形成されている。また、図1(b)に示される防眩フィルム103bは、表面が平坦な樹脂基材フィルム101bと、樹脂基材フィルム101b表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状105bを有する樹脂基材フィルム101bとは屈折率の異なるハードコート層102bとを備える。このハードコート層102bの表面の微細な凹凸形状105bはエンボス法などで形成されており、ハードコート層102b中にはフィラーは存在しない。ここで樹脂基材フィルムの屈折率nfに対するハードコート層の屈折率nrの比nr/nfは0.96以下であることを要する。さらにまた、上記樹脂基材フィルム側(ハードコート層が積層されていない側)から垂直に光を入射した時の、上記ハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)と、上記ハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)の比T(60)/T(0)が0.000001以下であることを要する。なお、図1(a)、(b)においては、ハードコート層が樹脂基材フィルムの一方の面上にのみ形成されているが、本発明においてはハードコート層がこのように一方の面上にのみ形成されている態様のみに限られず、樹脂基材フィルムの表裏両面にハードコート層が形成された態様をも含む。以下では、原則としてハードコート層が樹脂基材フィルムの一方の面に形成される態様を主として説明するものとする。
<屈折率比>
まず、ハードコート層の屈折率nrと樹脂基材フィルムの屈折率nfとの比nr/nfが0.96以下であるということについて説明する。画像表示装置、特に液晶表示装置において、黒表示時の斜め方向からの光漏れによってコントラストが低下し、視野角が狭くなり、視認性を損なう結果となる。そのような斜め方向からの光漏れは屈折率比nr/nfを0.96以下とすることによって効果的に抑えることが出来る。すなわち、図2に示したように斜め方向から漏れてきた光(すなわち入射光204)が、樹脂基材フィルム201からハードコート層202へ入射する際に、入射光204のフィルム法線方向207からの角度ψが以下の関係式(1)を満たす場合には、入射光204が樹脂基材フィルム201とハードコート層202の界面を透過せず、全反射する。なお、フィルム法線方向207とは、樹脂基材フィルム201の平坦な表面に対する垂直方向とする。
sinψ>nr/nf ・・・(1)
ここで図2ではsinψ=nr/nfの場合を示した。入射光204の入射角ψがsinψ=nr/nfの際には、ハードコート層202への透過光205の屈折角φは90°となる。よって、入射角ψがこれより大きい場合には、すなわち、関係式(1)を満たす場合には、入射光204は樹脂基材フィルムとハードコート層の界面を透過せず、全反射することが分かる(反射光206)。これより屈折率比nr/nfが0.96以下の場合にはフィルムの法線方向からの角度が約74°以上の光は全反射を起こして、画像表示装置視認側には漏れてこなくなり、コントラストが向上し、視野角が向上することとなる。したがって、屈折率比は0.96以下であることが好ましく、より好ましくは0.93以下である。また、屈折率比の下限に特に制限はないが、屈折率比が小さくなりすぎると、光の透過率が低下し、本発明の防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に画面が暗くなる傾向があるため、0.8以上であることが好ましい。
<散乱光強度>
次に、本発明の防眩フィルムは、当該防眩フィルムの樹脂基材フィルム側(樹脂基材フィルムとハードコート層との界面における樹脂基材フィルム側)から垂直に光を入射した時にハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)と、該ハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)の比T(60)/T(0)が0.000001以下の値を示すことを要する。以下、樹脂基材フィルム側から垂直に光を入射したときの、ハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)およびハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)について説明する。なお、基材フィルム側から垂直に光を入射する場合の「垂直」とは、樹脂基材フィルムの平坦な表面に対する垂直方向から光を入射することをいい、ハードコート層側の法線と重なる方向をいう。
図3は、防眩フィルムの樹脂基材フィルム側(樹脂基材フィルムとハードコート層との界面においてハードコート層が積層されていない方)から光を樹脂基材フィルムに対して垂直に入射し、ハードコート層側(表面に微細な凹凸形状を有する側)法線方向における散乱光強度T(0)、およびハードコート層側法線方向から60°の方向における散乱光強度T(60)を測定するときの、光の入射方向と透過散乱光強度測定方向とを模式的に示した斜視図である。図3において、防眩フィルム11の樹脂基材フィルム側(防眩フィルム11の下方側)から垂直に入射した光13(すなわちこの入射した光13の方向は防眩フィルムのハードコート層側の法線方向12に一致する)に対し、ハードコート層側の法線方向12に透過する透過散乱光14の強度を測定しT(0)とし、また、ハードコート層側の法線方向12から60°の方向に透過する透過散乱光15の強度を測定しT(60)とする。なお、透過散乱光15と、法線方向12と、樹脂基材フィルム側から入射した光13と、透過散乱光14とは、全て同一平面(図3における平面19)上となるように測定される。
そして、このようにして測定される散乱光強度の比T(60)/T(0)は0.000001以下であることを要する。比T(60)/T(0)が0.000001を超える場合には、この防眩フィルムを画像表示装置に適用したときに、散乱光によって黒表示時の輝度が上昇し、コントラストを低下させるため好ましくない。本発明の防眩フィルムは画像表示装置の斜めからの光漏れを上記の屈折率比nr/nfを0.96以下とすることによって抑制し、広角散乱を散乱光強度の比T(60)/T(0)を0.000001以下とすることによって抑制する。よって、本発明の防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に、これらの相乗効果により高コントラストの表示が得られることになる。
なお、上記比T(60)/T(0)は、より好ましくは0.0000005以下であり、さらに好ましくは0.0000003以下である。
防眩フィルムの散乱光強度の比T(60)/T(0)を測定するにあたっては、0.000001以下の散乱光強度の比T(60)/T(0)を精度良く測定することが必要である。そこで、ダイナミックレンジの広い検出器の使用が有効である。このような検出器としては、たとえば、市販の光パワーメーターなどを用いることができ、この光パワーメーターの検出器の前にアパーチャーを設け、防眩フィルムを見込む角度が2°になるようにした変角光度計を用いて測定を行なうことができる。入射光には380〜780nmの可視光線を用いることができ、測定用光源としては、ハロゲンランプ等の光源から出た光をコリメートしたものを用いてもよいし、レーザーなどの単色光源で平行度の高いものを用いてもよい。また、フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、ハードコート層の微細な凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから測定に供することが好ましい。
上記に鑑み、本発明において規定する散乱光強度の比T(60)/T(0)は、次のようにして測定される。防眩フィルムを、そのハードコート層の微細な凹凸面が表面となるようガラス基板に貼合し、そのガラス面側でフィルム法線の方向から、He−Neレーザーからの平行光を照射し、防眩フィルムのハードコート層の微細な凹凸面側でフィルム法線方向から所定の角度の透過散乱光強度を測定する。透過散乱光強度の測定には、T(0)およびT(60)のいずれについても横河電機(株)製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および「3292 オプティカルパワーメーター」を用いる。
図4は、散乱光強度の比T(60)/T(0)と、コントラストとの関係を示す図である。図4から明らかなように散乱光強度の比T(60)/T(0)が0.000001を超えると、コントラストが10%以上低下し、視認性を損なう傾向にあることがわかる。なお、コントラストは次の手順で測定した。まず、市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC−42GX1W」)から背面側および表示面側の偏光板を剥離し、それらのオリジナル偏光板の代わりに、背面側および表示面側とも、住友化学(株)製の偏光板「スミカラン SRDB31E」を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合し、さらに表示面側の偏光板の上には、種々の散乱光強度の比T(60)/T(0)を示す防眩フィルムをその微細な凹凸形状が表面となるように粘着剤を介して貼合した。次に、こうして得られた液晶テレビを暗室内で起動し、(株)トプコン製の輝度計「BM5A」型を用いて、黒表示状態および白表示状態における輝度を測定し、コントラストを算出した。ここでコントラストは、黒表示状態の輝度に対する白表示状態の輝度の比で表される。図4の縦軸であるコントラストを示す数値はこの比を表わしており、数値が大きくなるほど高コントラストであることを示す。
<全ヘイズ>
また、本発明の防眩フィルムにおいては、防眩フィルムの全ヘイズは5%以上50%以下であることが好ましい。防眩フィルムの全ヘイズが5%未満の場合には、防眩性が不十分であったり、画像表示装置に配置した際にギラツキが発生する傾向にある。また、全ヘイズが50%を超える場合には、白ちゃけが発生したり、画像表示装置に配置した際にコントラストが低下して視認性が低下する傾向にある。
本発明の防眩フィルムにおいて、全ヘイズは次のようにして測定される。すなわち、まず、表面が平坦な樹脂基材フィルムの一方の表面に、微細な凹凸形状が表面となるようにハードコート層を形成し、樹脂基材フィルム側(ハードコート層を形成しない側)が接合面となるように、該防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合する。そして、この貼合物を用いることによりJIS K 7136に準拠して全ヘイズを測定することができる。
このような防眩フィルムの全ヘイズは、より好ましくはその上限が40%、さらに好ましくは30%、その下限が10%、さらに好ましくは15%である。
<反射率>
また、本発明の防眩フィルムは、ハードコート層側から入射角30゜で光を入射したときに、反射角30゜の反射率R(30)が0.05%以上2%以下であり、反射角40゜の反射率R(40)が0.0001%以上0.005%以下であり、そして反射角50゜の反射率R(50)が0.00001%以上0.0005%以下であることが好ましい。反射率R(30)、反射率R(40)および反射率R(50)を上記範囲内とすることにより、優れた防眩性能を示しつつ、白ちゃけがより効果的に抑制された防眩フィルムが提供される。
ここで、ハードコート層側から入射角30°で光を入射したときの上記各角度毎の反射率について説明する。図5は、反射率を求めるときの防眩フィルムに対するハードコート層側からの光の入射方向と反射方向とを模式的に示した斜視図である。図5を参照して、防眩フィルム501のハードコート層側で法線502から30°の角度で入射した光505に対し、反射角30°の方向、すなわち、正反射方向506への反射光の反射率(つまり正反射率)をR(30)とする。また、任意の反射角θで反射した光507のうち、θ=40°の反射光の反射率、θ=50°の反射光の反射率をそれぞれ、R(40)、R(50)とする。なお、反射率を測定するときの反射光の方向(正反射方向506および反射角θで反射した光507の反射方向)は、入射した光505の方向と法線502とを含む平面509内とする。
正反射率R(30)が2%を超えると、十分な防眩機能が得られず、視認性が低下する傾向にある。一方、正反射率R(30)があまり小さすぎても、白ちゃけが発生する傾向を示すことから、0.05%以上であるのが好ましい。正反射率R(30)は、1.5%以下、とりわけ0.7%以下であるのがより好ましく、0.1%以上、とりわけ0.3%以上とすることがより好ましい。また、R(40)が0.005%を超えるか、またはR(50)が0.0005%を超えると、防眩フィルムに白ちゃけが発生してしまい、視認性が低下する傾向にある。すなわち、たとえば、表示装置の最前面に防眩フィルムを設置した状態で表示面に黒を表示した場合でも、周囲からの光を拾って表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生してしまう傾向にある。そのため、R(40)およびR(50)はあまり大きくならないようにするのが好ましい。一方、これらの角度における反射率があまり小さすぎても、十分な防眩性を示さなくなることから、R(40)は一般に0.0001%以上であるのが好ましく、R(50)は一般に0.00001%以上であるのが好ましい。R(40)は、より好ましくは0.0005%以上0.002%以下であり、R(50)は、より好ましくは0.00005%以上0.0001%以下である。
図6は、本発明の防眩フィルム(図5における防眩フィルム501)のハードコート層側で法線502から30゜の角度で入射した光505に対する反射角θで反射した光507の、反射角θと反射率(反射率は対数目盛)との関係をプロットしたグラフの一例である。このような反射角と反射率の関係を表すグラフ、またはそれから読み取られる反射角毎の反射率を、反射プロファイルと呼ぶことがある。このグラフに示す如く、正反射率R(30)は30゜で入射した光505に対する反射率のピークであり、正反射方向から角度がずれるほど反射率は低下する傾向にある。図6に示す反射プロファイルの例では、正反射率R(30)が約0.55%、R(40)が約0.0003%、そしてR(50)が約0.00004%となっている。
防眩フィルムの反射率を測定するにあたっては、散乱光強度と同様に0.001%以下の反射率を精度良く測定することが必要である。そこで、ダイナミックレンジの広い検出器の使用が有効である。このような検出器としては、たとえば、市販の光パワーメーターなどを用いることができ、この光パワーメーターの検出器の前にアパーチャーを設け、防眩フィルムを見込む角度が2°になるようにした変角光度計を用いて測定を行なうことができる。入射光としては、380〜780nmの可視光線を用いることができ、測定用光源としては、ハロゲンランプ等の光源から出た光をコリメートしたものを用いてもよいし、レーザーなどの単色光源で平行度の高いものを用いてもよい。裏面が平滑で透明な防眩フィルムの場合は、防眩フィルム裏面からの反射が測定値に影響を及ぼすことがあるため、たとえば、黒色のアクリル樹脂板に防眩フィルムの平滑面を粘着剤または水やグリセリン等の液体を用いて光学密着させることにより、防眩フィルム最表面の反射率のみが測定できるようにするのが好ましい。
上記に鑑み、本発明において規定する反射率R(30)、R(40)およびR(50)は、次のようにして測定される。防眩フィルムのハードコート層表面(微細な凹凸形状を有した表面)に、フィルム法線(法線502)に対して30゜傾斜した方向から、He−Neレーザーからの平行光を照射し、フィルム法線と光入射方向とを含む平面内(すなわち法線502と入射した光505とを含む平面509内)における反射率の角度を変化させて測定を行なう。反射率の測定には、いずれも横河電機(株)製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および「3292 オプティカルパワーメーター」を用いることができる。
<樹脂基材フィルム>
本発明の樹脂基材フィルムを構成する樹脂は、実質的に光学的に透明な樹脂を用いる。そのような樹脂の例として、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。このような樹脂の中でも、透明性、耐候性、機械的強度に優れ、屈折率も高いポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましく、換言すれば、本発明の樹脂基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂で構成されることが好ましい。
このような本発明の樹脂基材フィルムは、その厚みが20μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上50μm以下である。その厚みが20μm未満では、ハンドリングしにくい傾向にあり、100μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。
本発明の防眩フィルムにおいて樹脂基材フィルムとして用いるポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸もしくは二軸延伸されていることが好ましい(このように一軸延伸もしくは二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを以下単に「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」とも記す)。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れたフィルムであり、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムを樹脂基材フィルムとして用いた防眩フィルムは、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。また、ハードコート層を構成する樹脂の屈折率が一般的に1.5〜1.55程度であることが多いため、屈折率が高いポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることによって、屈折率比nr/nfが0.96以下であるという本発明の要件を満たすことが出来る。
ここで、本発明において、ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート樹脂とは、ポリエチレンテレフタレートからなり、このポリエチレンテレフタレートは、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニール、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が用いられていてもよい。すなわち、本発明においては、このような他の共重合成分を含む場合であっても、ポリエチレンテレフタレートと記すものとする。
ポリエチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸および/または他のジオール)を直接反応させるいわゆる直接重合法、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステルおよび/または他のジオール)とをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。また、ポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、たとえば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤などを挙げることができる。ただし、防眩フィルムの基材フィルムとして透明性が必要とされるため、添加剤の添加量は最小限にとどめておくことが好ましい。
上記のような製造法で製造される原料樹脂をフィルム状に成形し、一軸延伸処理もしくは二軸延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを作製することができる。延伸処理を行なうことにより、機械的強度の高いポリエチレンテレフタレートフィルムを得ることができる。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、例えば一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムでは、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで縦延伸後、熱固定処理を施し、次いで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。この場合、延伸温度は80〜130℃、好ましくは90〜120℃であり、延伸倍率は2.5〜6倍、好ましくは3〜5.5倍である。延伸倍率が低いと、ポリエチレンテレフタレートフィルムが十分な透明性を示さない傾向にある。
また、配向主軸の歪みを低減するために、延伸後熱固定処理を行なう前に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを弛緩処理することが望ましい。弛緩処理時の温度は90〜200℃、好ましくは120〜180℃である。弛緩量は、延伸条件によって異なり、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの、150℃における熱収縮率が2%以下になるように弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
熱固定処理温度は180〜250℃とすることができ、好ましくは200〜245℃である。熱固定処理においては、まず定長で熱固定処理を行なった後、配向主軸の歪みが低減され、耐熱性等の強度を向上させるために、さらに幅方向の弛緩処理を行なうことが好ましい。この場合の弛緩量は、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの、150℃における熱収縮率が1〜10%となるように調整されることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。本発明において用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸の歪みの最大値は、10度以下、好ましくは8度以下、さらに好ましくは5度以下である。配向主軸の最大値が10度より大きいと、液晶表示画面に貼合したときに色付不良が大きくなる傾向にある。なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの「配向主軸の歪みの最大値」は、たとえば、大塚電子株式会社製の位相差フィルム検査装置RETSシステムにより測定することができる。
このような延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みdPETは、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、30μm以上50μm以下とすることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みdPETが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みdPETが100μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値RPETは、1000nm以上であることが好ましく、より好ましくは3000nm以上である。面内位相差値RPETが1000nm未満であると、正面からの色つきが目立つ傾向にある。なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値RPETは、下記式(2)で表される。
PET=(na−nb)×dPET ・・・(2)
ここで、naは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内遅相軸方向の屈折率、nbは面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率である。
なお、樹脂基材フィルムの表面は、防眩フィルムとしたときの斜めからの光漏れを防ぐために、平坦であることを要する。樹脂基材フィルムの表面を平坦にするために、例えば、溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面またはベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトにおいて、ロール表面またはベルト表面は、フィルム表面への平滑性付与のために、その表面が鏡面となっているものが好ましい。
本発明において、表面が平坦な樹脂基材フィルムという場合の「平坦」とは、樹脂基材フィルムの表面形状に起因するヘイズ(表面ヘイズ)が略0%であり、その表面の断面曲線において、算術平均高さPaが0.01μm以下、好ましくは0.005μm以下であり、最大断面高さPtが0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下であることをいう。
また、樹脂基材フィルムにおける、一方の面もしくは両面には各種の易接着処理が施されていても良い。易接着処理は特に限定されるものではなく、従来公知の処理、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、溶剤処理などがあげられる。
<ハードコート層>
本発明の防眩フィルムに形成される、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層は、上記樹脂基材フィルム表面上に積層されるものであり、従来公知の方法で形成することが出来る。このようなハードコート層は、主として防眩層としての作用を奏するものであり、防眩フィルムとして前述した全ヘイズを有することが好ましく、このような防眩フィルムの全ヘイズは(ハードコート層の)表面ヘイズと(防眩フィルムの)内部ヘイズとからなるものである。そして、ハードコート層の表面ヘイズは、防眩フィルムの表面ヘイズとなるため0.5%以上15%以下であることが好ましい。表面ヘイズが15%を超える場合は白ちゃけが発生するため好ましくない。より効果的に白ちゃけを抑えるためには表面ヘイズは5%以下であることが好ましい。ただし、0.5%未満となる場合には十分な防眩性を示さないことから好ましくない。また、防眩フィルムの内部ヘイズは4.5%以上35%以下であることが好ましい。防眩フィルムの内部ヘイズが4.5%未満となる場合には、画像表示装置に配置した際にギラツキが発生する傾向にあり、35%を超える場合には画像表示装置に配置した際にコントラストが低下する傾向にある。内部ヘイズのより好ましい範囲は、9.5%以上25%以下である。
ここで、防眩フィルムの表面ヘイズおよび内部ヘイズは、次のようにして測定される。すなわち、まず、ハードコート層を樹脂基材フィルム上に形成した後、ハードコート層が形成されていない側が接合面となるように、防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。このようにして測定されるヘイズは防眩フィルムの全ヘイズに相当する。次に、ハードコート層の微細な凹凸形状の表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンを用いて貼合し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、この微細な凹凸形状に起因する表面ヘイズがこの表面凹凸上に貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、防眩フィルムの「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、防眩フィルムの「表面ヘイズ」は以下の式(3)に基づいて求めることが出来る。
表面ヘイズ=全ヘイズ−内部ヘイズ ・・・(3)
本発明の防眩フィルムの樹脂基材フィルムとして延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合には、防眩フィルムの全ヘイズ(H%)と透過鮮明度(Tc%)とは以下の関係式(4)を満たすことが好ましい。関係式(4)を満たさない場合には該防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの位相差に起因する色ムラが観察されるようになる。本発明の防眩フィルムは、色ムラの抑制という観点からは、上記透過鮮明度の下限については特に制限されないが、画像表示装置の視認性の観点から30%以上であることが好ましい。なお、防眩フィルムの透過鮮明度を本発明の関係式(4)を満たすように低下させるためには、たとえば、ハードコート層の表面の微細な凹凸形状の周期を大きくすればよいことが知られている。
Tc≦8H ・・・(4)
ここで、本発明の防眩フィルムの透過鮮明度(Tc%)は次のようにして測定される。すなわち、樹脂基材フィルムである延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層を形成し、このハードコート層が形成されていない方の面が接合面となるように、該積層フィルム(すなわち防眩フィルム)とガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7105に規定される方法で測定する。この規格では、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されている。本発明で規定する防眩フィルムにおいては、これら4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって透過鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の透過鮮明度の最大値は400%である。
上記した光学特性を満たす場合を含め、本発明の表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層の作製方法としては、特に制限されることはなく、従来公知の方法を用いることが出来る。たとえば、フィラーを分散させた樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸を形成する方法や上記特許文献3に開示されるエンボス法などを挙げることができる。なお、特に上記の光学特性を満たすハードコート層を作製する場合は、これらのいずれの方法においても表面の微細な凹凸形状の周期を大きくするように調製することにより、上記関係式(4)の関係を達成することができる。ここで、微細な凹凸形状の周期を大きくするとは、たとえば、微細な凹凸形状の断面曲線における平均長さPSmを大きくすることを意味する。その際の平均長さPSmは好ましくは20μm以上100μm以下である。
ここで、フィラーを分散させた樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布することによってハードコート層を形成する場合の、フィラーとしては、透光性である限り特に制限されず、従来公知の粒子を用いることが出来る。例えば、無機微粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものなどを代表的なものとして挙げることができる。また、有機微粒子としては、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などの樹脂粒子を代表的なものとして挙げることができる。
ここで分散性、光の透過率、およびコスト等の関係から、上記したフィラーの中でシリカ系微粒子(多孔質シリカ、凝集シリカ、球状シリカ等)もしくは樹脂粒子を用いることが好ましい。ハードコート層を形成するフィラーとしてシリカ系微粒子を用いる際には、重量平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、透光性樹脂100重量部に対して1重量部以上10重量部以下の範囲内でハードコート層に含有されることが好ましい。重量平均粒子径が1μm未満である場合には、十分な防眩性を示さなくなる傾向があり、5μm以上である場合には表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。また、シリカ系微粒子の添加量が1重量部以下である場合には、十分な防眩性を示さなくなったり、表面凹凸が疎となり質感が低下する傾向があり、10重量部を超える場合には、表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。また、ハードコート層の厚みは必要な表面ヘイズが得られるように適宜調整し得るものであるが、一般的には重量平均粒子径に対して85%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上である。ハードコート層の膜厚が粒子の重量平均粒子径の85%を下回る場合には表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。一方、この場合のハードコート層の厚みの上限は、表面ヘイズの観点からは特に制限されないが、厚すぎると割れやすくなったり、防眩層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向があるため、20μm以下であることが好ましい。このようにして調製される本発明のハードコート層の厚みは、より一般的には2μm以上20μm以下とすることが好ましく、より好ましくは4μm以上12μm以下である。
ハードコート層を形成するフィラー(透光性微粒子)として樹脂粒子を用いる際には、重量平均粒子径が2μm以上10μm以下であり、透光性樹脂100重量部に対して1重量部以上40重量部以下の範囲内でハードコート層に含有されることが好ましい。重量平均粒子径が2μm未満である場合には、十分な防眩性を示さなくなる傾向があり、10μmを超える場合には表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。また、樹脂粒子の添加量が1重量部未満である場合には、十分な防眩性を示さなくなったり、表面凹凸が疎となり質感が低下する傾向があり、40重量部を超える場合には、全ヘイズ(表面ヘイズと内部ヘイズの合計)が大きくなり、結果として、画像表示装置に適用したときに、画面が暗くなり、視認性が損なわれる傾向にある。また、ハードコート層の厚みは必要な表面ヘイズが得られるように適宜調整し得るものであるが、一般的には上記と同様に重量平均粒子径に対して85%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上である。ハードコート層の膜厚が粒子の重量平均粒子径の85%未満となる場合には表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。一方、この場合のハードコート層の厚みの上限は、表面ヘイズの観点からは特に制限されないが、厚すぎると割れやすくなったり、防眩層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向があるため、20μm以下であることが好ましい。
上記のようなフィラーを分散させる樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性、硬度などの観点から紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができる。たとえば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートの単独または2種以上と、「イルガキュアー 907」、「イルガキュアー 184」(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、「ルシリン TPO」(BASF社製)等の光重合開始剤との混合物を、紫外線硬化性樹脂とすることができる。たとえば紫外線硬化性樹脂を用いた場合においては、紫外線硬化性樹脂にフィラーを分散した後、該樹脂組成物を樹脂基材フィルムに塗布し、紫外線を照射することにより、樹脂(ハードコート樹脂ともいう)中にフィラーが分散された、ハードコート層を形成することができる。
また、エンボス法により微細な凹凸形状を有するハードコート層を形成する場合(通常フィラーを含まない樹脂のみでハードコート層が形成される)には、上記特許文献3等に開示されているように、微細な凹凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を透明樹脂フィルムに転写すればよい。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行なうことが好ましく、エンボスとしては、紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が好ましい。
UVエンボス法では、樹脂基材フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層を形成し、その紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線硬化性樹脂層に転写される。具体的には、樹脂基材フィルム上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、樹脂基材フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成された樹脂基材フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂に転写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
UVエンボス法を用いてハードコート層を形成する場合においても、内部ヘイズ付与のため樹脂(ハードコート樹脂)中にフィラーを分散させても良い。内部ヘイズを付与するためには、このような樹脂と屈折率の異なる樹脂粒子を用いることが好ましく、上記した樹脂粒子の中から選択して用いればよい。その際の樹脂粒子においても、重量平均粒子径が2μm以上10μm以下であり、透光性樹脂100重量部に対して1重量部以上40重量部以下の範囲内でハードコート層に含有されることが好ましい。重量平均粒子径が2μm未満である場合には、透過光の広角散乱が増加して、防眩フィルムが全体的に白っぽくなりコントラストが低下する傾向があり、10μmを超える場合には必要な内部散乱が得られない傾向がある。また、樹脂粒子の添加量が1重量部未満である場合には、十分な内部散乱が得られない傾向があり、40重量部を超える場合には、全ヘイズ(表面ヘイズと内部ヘイズの合計)が大きくなり、結果として、画像表示装置に適用したときに、画面が暗くなり、視認性が損なわれる傾向にある。
このようなハードコート層の厚みは特に制限されないが、上記の通り2μm以上20μm以下であることが好ましい。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、傷付きやすくなる傾向にあり、また、20μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。
なお、本発明のハードコート層の表面に付与される微細な凹凸形状とは、その凹凸形状の断面曲線において、算術平均高さPaが0.05μm以上0.3μm以下であり、最大断面高さPtが0.2μm以上2μm以下であることが好ましい。算術平均高さPaが0.05μm未満となる場合には、防眩フィルムとして十分な防眩性を示さなくなるため好ましくない。また、算術平均高さPaが0.3μmを超える場合には、防眩フィルムの表面ヘイズが大きくなり、画像表示装置に適用したときに白ちゃけが発生し、視認性が損なわれる傾向にある。最大断面高さPtが0.2μm未満の場合も、同様に防眩フィルムを作製した際に十分な防眩性を示さなくなるため好ましくない。また、最大断面高さPtが2μmを超える場合には、防眩フィルムの表面ヘイズが大きくなり、画像表示装置に適用したときに白ちゃけが発生し、視認性が損なわれる傾向にある。なお本発明におけるハードコート層の厚みとは、この微細な凹凸形状の凸部のうち最も高くなる部分を測定する場合を意味する。
<低反射膜>
本発明の防眩フィルムは、その最表面、すなわちハードコート層の微細な凹凸形状の表面上に低反射膜を有していてもよい。低反射膜がない状態でも、十分な防眩機能を発揮するが、最表面に低反射膜を設けることにより、防眩性をさらに向上させることができる。低反射膜は、ハードコート層の上に、それよりも屈折率の低い低屈折率材料の層を設けることにより形成できる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、氷晶石(3NaF・AlF3またはNa3AlF6)等の無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料;フッ素系またはシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
このような低反射膜の厚みは、0.01μm以上0.2μm以下、より好ましくは0.08μm以上0.12μm以下である。
<防眩性偏光板>
本発明の防眩フィルムは、防眩性能が高く、視認性に優れる上に、パネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来るため、画像表示装置に装着したときに視認性および機械的強度に優れたものとなる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光板に適用することができる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された形のものが多いが、その一方の保護フィルムを本発明の防眩フィルムで構成する。すなわち、本発明の防眩性偏光板は、防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなるものであって、該偏光フィルムは、該防眩フィルムの上記ハードコート層が積層されていない方の面側に配置されるものである。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、別の保護フィルムまたは光学フィルムが積層されていてもよいし、また液晶セルに貼合するための粘着剤層が形成されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の防眩フィルムをそのハードコート層が形成されている面と反対側の面側で貼合して、防眩性偏光板とすることもできる。さらに、少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板において、当該保護フィルムとして上記樹脂基材フィルムを偏光フィルムに貼合した後、樹脂基材フィルム上に上記ハードコート層を形成することにより、防眩性偏光板とすることもできる。
このように本発明の防眩性偏光板は、防眩フィルムのハードコート層が積層されていない方の面側に偏光フィルムが配置されている限り、偏光フィルムと防眩性フィルムとが直接接するようにして貼り合わされている態様が含まれるとともに、偏光フィルムと防眩フィルムとが他のフィルムを介して貼り合わされているような態様をも含む。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板と、画像表示素子とを備えるものである。ここで、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行なう液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を適用することができる。本発明の画像表示装置においては、防眩フィルムまたは防眩性偏光板は、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子よりも視認側に配置される。この際、防眩フィルムの凹凸面、すなわちハードコート層側が外側(視認側)となるように配置される。防眩フィルムは、画像表示素子の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを画像表示手段とする場合は、たとえば先述のように、偏光フィルムを介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。このように、本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、防眩フィルムの有する表面の凹凸により入射光を散乱して映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与える。
また、本発明の防眩フィルムを画像表示装置に適用した場合には、従来の防眩フィルムを用いた場合よりもパネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来る。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラも観察されない。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。また、以下の例における防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
(1)防眩フィルムの光学特性の測定
(1−1)ヘイズ
防眩フィルムの全ヘイズは、防眩フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いてハードコート層形成面とは反対側の面でガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合された防眩フィルムについて、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて測定した。また、内部ヘイズはハードコート層の微細な凹凸形状の表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠して測定した。表面ヘイズは、上記式(3)に基づいて算出した。
(1−2)散乱光強度の比T(60)/T(0)
防眩フィルムを、その微細な凹凸形状面が表面となるようガラス基板に貼合し、そのガラス面側で防眩フィルムに対して垂直に、He−Neレーザーからの平行光を照射し、防眩フィルムの微細な凹凸形状面側でフィルム法線方向の透過散乱光強度(T(0))および該法線方向から60°の透過散乱光強度(T(60))を測定した。透過散乱光強度の測定には、いずれも横河電機(株)製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および「3292 オプティカルパワーメーター」を用いた。
(1−3)透過鮮明度
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いてハードコート層の微細な凹凸形状面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
(1−4)反射プロファイル
防眩フィルムのハードコート層の微細な凹凸形状面に、フィルム法線に対して30゜傾斜した方向から、He−Neレーザーからの平行光を照射し、フィルム法線と照射方向(入射した光の方向)とを含む平面内における反射率の角度変化の測定を行なった。反射率の測定には、いずれも横河電機(株)製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および「3292 オプティカルパワーメーター」を用いた。
(2)防眩フィルムの防眩性能の評価
(2−1)映り込みおよび白ちゃけの評価
防眩フィルムの裏面(ハードコート層の微細な凹凸形状面とは反対側の面)からの反射を防止するために、ハードコート層の微細な凹凸形状面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内でハードコート層の微細な凹凸形状面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無および白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込みおよび白ちゃけは、それぞれ1〜3の3段階で次の基準により評価した(評価は観察者3名の平均値とした)。
(a)映り込み; 1:映り込みが観察されない。2:映り込みが少し観察される。3:映り込みが明瞭に観察される。
(b)白ちゃけ; 1:白ちゃけが観察されない。2:白ちゃけが少し観察される。3:白ちゃけが明瞭に観察される。
<実施例1>
(A)防眩フィルムの作製
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されている紫外線硬化性樹脂組成物を用意した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート 40部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
次に、この紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、重量平均粒子径が2.7μmの多孔質シリカ粒子「サイリシア」(商品名、富士シリシア化学(株)製)を3重量部添加し、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を2重量部添加して塗布液を調製した。また、この紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(すなわちハードコート層の屈折率nr)は1.53であった。
この塗布液を、樹脂基材フィルムである両面が平坦な一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm、屈折率nf:1.66、表面ヘイズ:0%、算術平均高さPa:0.0053μm、最大断面高さPt:0.056μm)上に、乾燥後の塗布厚みが3μmとなるように塗布し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの紫外線硬化性樹脂組成物層側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層(硬化樹脂)を、表面が平坦な樹脂基材フィルム(一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム;表1では一軸延伸PETと記す)の一方の表面に積層した防眩フィルムを得た。このようにして得られた防眩フィルムのハードコート層の厚みを実測したところ、2.7μmであった。なお本発明におけるハードコート層の厚みとは、微細な凹凸形状の凸部のうち最も高くなる部分を測定するものとする。また、ハードコート層の表面の微細凹凸形状の算術平均高さPaと最大断面高さPtを表1に示す。また、この防眩フィルムにおいて、樹脂基材フィルムの屈折率nfに対するハードコート層の屈折率nrの比nr/nfは、0.92である。
その他の光学特性評価結果については表2に記載した。なお、表2に示される実施例1の防眩フィルムの透過鮮明度の内訳は、次のとおりである。
透過鮮明度
0.125mm光学くし: 54.5%
0.5mm光学くし : 62.3%
1.0mm光学くし : 82.8%
2.0mm光学くし : 94.5%
合計 294.1%
<実施例2および実施例3>
塗布液に分散させるフィラー(多孔質シリカ粒子、表1中では単に「シリカ」と表記)の重量部および厚みを表1のように変更した以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製し、光学特性を評価した。屈折率比nr/nfおよび光学特性評価結果については表2に記載した。
<比較例1>
塗布液に分散させるフィラー(多孔質シリカ粒子、表1中では単に「シリカ」と表記)の重量部および厚みを表1のように変更し、樹脂基材フィルムにトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、屈折率nf:1.49、表面ヘイズ:0%、算術平均高さPa:0.0047μm、最大断面高さPt:0.029μm;表1ではTACと記す)を用いた以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製し、光学特性を評価した。屈折率比nr/nfおよび光学特性評価結果については表2に記載した。
Figure 2009156939
Figure 2009156939
本発明の防眩フィルムは優れた防眩性能を示しながら機械的強度も高く、コントラスト低下、視野角の低下の原因となる広角側の散乱も抑えられているものであった。よって、画像表示装置に配置した際に良好な視認性を与えるものとなる。一方、屈折率比nr/nfが1を上回る比較例1では広角側の散乱が本発明の要件を超えており、コントラストが低下する傾向にあった。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の防眩フィルムを、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイに対し、その防眩フィルムが画像表示素子よりも視認側となるように配置することで、白ちゃけを発生させることなく、映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。また、機械的強度も高いためにパネルの反りなども効果的に抑えることが出来る。
本発明の防眩フィルムの好ましい例を示す断面模式図であって、(a)はハードコート層がフィラーを含み、(b)はハードコート層がフィラーを含まない場合を示す。 樹脂基材フィルムとハードコート層の界面での全反射を示す模式図である。 防眩フィルムの樹脂基材フィルムに対して垂直に光を入射してハードコート層側法線方向および法線方向から60°で観測される散乱光強度を測定するときの、光の入射方向と透過散乱光強度測定方向とを模式的に示す斜視図である。 散乱光強度の比T(60)/T(0)と、コントラストとの関係を示す図である。 反射率を求めるときのハードコート層側からの光の入射方向と反射方向とを模式的に示す斜視図である。 本発明の防眩フィルムの法線から30°の角度で入射した光に対する反射光の反射角と反射率(反射率は対数目盛)との関係をプロットしたグラフの一例である。
符号の説明
11,103a,103b,203,501 防眩フィルム、12 法線方向、13,505 入射した光、14,15 透過散乱光、19,509 平面、101a,102b,201 樹脂基材フィルム、102a,102b,202 ハードコート層、104a フィラー、105a,105b 微細な凹凸形状、204 入射光、205 透過光、206 反射光、207 フィルム法線方向、502 法線、506 正反射方向、507 反射した光。

Claims (8)

  1. 表面が平坦な樹脂基材フィルムの少なくとも一方の表面に、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層が積層された防眩フィルムであって、
    前記樹脂基材フィルムの屈折率nfに対する前記ハードコート層の屈折率nrの比nr/nfが0.96以下であり、
    前記樹脂基材フィルムと前記ハードコート層との界面において、前記基材樹脂フィルム側から垂直に光を入射した時の前記ハードコート層側法線方向における散乱光強度T(0)と、前記ハードコート層側で法線からの角度が60°である散乱光強度T(60)の比T(60)/T(0)が0.000001以下であることを特徴とする防眩フィルム。
  2. 前記防眩フィルムの全ヘイズが5%以上50%以下である請求項1に記載の防眩フィルム。
  3. 前記樹脂基材フィルムは、その厚みが20μm以上100μm以下であり、前記ハードコート層は、その厚みが2μm以上20μm以下である請求項1または2に記載の防眩フィルム。
  4. 前記樹脂基材フィルムがポリエチレンテレフタレート樹脂で構成される請求項1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
  5. 前記ハードコート層側から入射角30゜で光を入射したときに、
    反射角30゜の反射率R(30)が0.05%以上2%以下であり、
    反射角40゜の反射率R(40)が0.0001%以上0.005%以下であり、
    反射角50゜の反射率R(50)が0.00001%以上0.0005%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルム。
  6. 前記ハードコート層の微細な凹凸形状を有する表面上に、低反射膜をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の防眩フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる防眩性偏光板であって、
    前記偏光フィルムは、前記防眩フィルムの前記ハードコート層が積層されていない方の面側に配置される防眩性偏光板。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の防眩フィルムまたは請求項7に記載の防眩性偏光板と、画像表示素子とを備える画像表示装置であって、
    前記防眩フィルムまたは前記防眩性偏光板は、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。
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