JP2009082033A - 完全ヒト型抗体生産法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒトに投与した場合に免疫反応を極めて起こし難いヒト型糖鎖を有する完全ヒト型抗体を、トランスジェニック鳥類により高濃度に生産する方法を提供する。
【解決手段】完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の卵白中及び卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収する、完全ヒト型抗体を生産する方法。トランスジェニック鳥類卵中に完全ヒト型抗体を大量に生産させ、それを回収精製することで、より治療効果の高い完全ヒト型抗体の大量提供を可能とした。
【選択図】なし
【解決手段】完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の卵白中及び卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収する、完全ヒト型抗体を生産する方法。トランスジェニック鳥類卵中に完全ヒト型抗体を大量に生産させ、それを回収精製することで、より治療効果の高い完全ヒト型抗体の大量提供を可能とした。
【選択図】なし
Description
本発明は、トランスジェニック鳥類による完全ヒト型抗体の高濃度生産法に関する。
近年、組換えタンパク質生産技術が開発され多くの高機能性タンパク質製剤が次々と上市され、医薬品、食品業界で注目されている。ところが、生理活性の高いタンパク質医薬品は糖鎖修飾に代表される高度な翻訳後修飾が必要とされ、生産コストの高い発現システムおよび生産方法が用いられているのが現状である。わが国の国民所得に対する医療費負担の割合は年々増加しており、個人はもとより国内経済に大きな負担をかけており、安価な医薬品供給が望まれている。
現在上市または開発されている組換えタンパク質医薬品は微生物または培養細胞を用いた生産が一般的であるが、微生物には高度な翻訳後修飾が不可能であり、医薬品あるいは医薬品原料として限られたターゲットしか生産することはできない。また、培養細胞での生産ではある程度の翻訳後修飾が付与される代償として、高い栄養価の培地、高価な血清、増殖因子が要求される。また、培養槽やプラントにかかる生産設備費にも莫大なコストがかかってしまい、これらの手法で生産された医薬品の価格高騰に歯止めがかかっていない。
一方、ごく最近にはトランスジェニック動物によるタンパク質生産方法が報告された。ウシやヤギ、ヒツジといった哺乳動物の乳に目的タンパク質を蓄積させる、いわゆる動物工場である。目的タンパク質にもよるが、抗体が乳汁中に10mg/ml発現したという報告もある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法にもBSEの問題や利用可能な哺乳類は個体が大きく生産、飼育、管理が大変であること、性成熟の期間がヤギやヒツジで8ヶ月、ウシでは15ヶ月と長いこと等の問題がある。
このような現状を考え、我々は鳥類をタンパク質生産システムとすることに着目した。鳥類の卵には全成分の三分の一近くをタンパク質が占め、非常に高いタンパク質生産、蓄積能を有している。トランスジェニック作製技術により、鳥類に目的タンパク質を生産させ、その卵中に蓄積すればその生産量は驚くべきものであり、現在の製造施設飽和状態による生産量の頭打ちを打破することができる。また、トランスジェニック動物は厳密に管理された施設内でしか飼育できないが、鳥類は個体が小さいため広大な飼育スペースが必要ではなく飼育にかかるコストが安価である。さらに鳥類には性成熟する期間が5ヶ月と短い、人工授精法が確立しており大規模の遺伝子組換え群を急速に育成可能である、一般に卵の中は自然に無菌であるなどの利点が挙げられる。
糖鎖の付加を高活性に必要とする糖タンパク質を医薬品とする場合、その糖鎖構造が重要である。現在多くの糖タンパク質が生産されている培養細胞は、付加結合する糖鎖は多くの種類が混在し、培養方法や培養条件、スケールアップによってその存在率と活性が変動してしまう(例えば、非特許文献2)。これでは安定活性には不十分である。また、培養細胞の糖鎖構造は必ずしもヒトの糖鎖構造と同じではない。これは免疫反応を起こす原因となりうる。これら糖鎖構造が違うことで患者への投与量が増えることは患者に大きな負担を強いることになる。
鳥類の卵中で産生されるタンパク質に付加される糖鎖はヒト型に大変近い(例えば、非特許文献3)。シアル酸はN−アセチルノイラミン酸(NANA)とN−グリコリルノイラミン酸(NGNA)で構成されており、培養細胞はその混成型である一方、ヒトはNANAのみを付加する。ニワトリもヒト同様にNANAのみを付加する。また、その卵の生産性が安定であることは、これまでの食卵及びワクチン産生の実績から実証されている。
トランスジェニック鳥類で産生させるタンパク質は例えば、ヒトインターフェロンやヒト由来エリスロポエチンの報告がある(例えば、特許文献1および2)。また抗体を産生させる報告もある(例えば、非特許文献3、4および5)。例えば、非特許文献3ではマウス―ヒトモノクロナル抗体を最大3.4mg/egg発現している。非特許文献4では、scFv−Fc(一本鎖抗体)を200μg/ml、非特許文献5ではscFv−Fcを5.6mg/ml発現している。抗体医薬は、開発候補品の選択、評価の早さ、ターゲットへの高選択性と副作用リスクの最小化、治療までの時間短縮、効果の持続、DDSなどへの幅広い利用などの利点がある。1980年代後半から抗体工学技術が急速に発展し、キメラ抗体やヒト化抗体など遺伝子組換え型の抗体医薬品の上市が相次いでいる。しかし、これらは副作用を完全に除去できないという問題を抱えている。また、scFvは完全抗体に比べ分子量が小さいことから組織への浸透効率がよいことが報告されているが、完全抗体は生体内での安定性・結合親和力の増加、エフェクター機能の付加などのメリットがあり、抗体を生体内で長期間作用させたり、膜上に標的分子を発現している細胞を除去したい場合には完全抗体が有利である。これらを解決するためには、抗体全配列がヒト由来である完全ヒト型抗体の生産が望まれるが、トランスジェニック鳥類での生産にはまだいたっていない。
米国特許出願公開第2004/0019922号明細書
米国特許出願公開第2004/0019923号明細書
Trends Biotechnol.1999 Sep;17(9):367−74
Current Opinion in Biotechnoly2002,13:625−629
NATURE BIOTECHNOLOGY 2005 Sep;23(9):1159―1169
PNAS 2007 Feb;104(6):1771―1776
JOURNAL OF VIROLOGY 2005 Sep;19(17):10864―10874
上記の現状に鑑み、本発明では、ヒトに投与した場合に免疫反応を極めて起こし難いヒト型糖鎖を有する完全ヒト型抗体をトランスジェニック鳥類により高濃度に生産する方法を示すことを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、トランスジェニック鳥類で完全ヒト型抗体を高発現生産させる方法を見出した。また、より血中安定性が高いシアル酸付加完全ヒト型抗体を生産させる方法も見出した。
即ち、本発明が提供するのは、以下のとおりである。
(1)完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の血中、卵白中、卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする、完全ヒト型抗体を生産する方法。
(2)卵黄中から完全ヒト型抗体を回収、精製する(1)記載の方法。
(3)卵白中に完全ヒト型抗体を40μg/ml以上含む(1)に記載の方法。
(4)卵黄中に完全ヒト型抗体を1μg/ml以上含む(1)に記載の方法。
(5)卵中に完全ヒト型抗体を1mg/egg以上含む(1)に記載の方法。
(6)鳥類が家禽類である、(1)に記載の方法。
(7)鳥類がニワトリである(6)に記載の方法。
(8)(1)〜(7)に記載の方法で産生された完全ヒト型抗体。
(9)卵黄中にシアル酸を1つ以上含む完全ヒト型抗体を7%以上含む鶏卵。
(10)前記完全ヒト抗体が抗TNF抗体である(6)記載の鶏卵。
(1)完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の血中、卵白中、卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする、完全ヒト型抗体を生産する方法。
(2)卵黄中から完全ヒト型抗体を回収、精製する(1)記載の方法。
(3)卵白中に完全ヒト型抗体を40μg/ml以上含む(1)に記載の方法。
(4)卵黄中に完全ヒト型抗体を1μg/ml以上含む(1)に記載の方法。
(5)卵中に完全ヒト型抗体を1mg/egg以上含む(1)に記載の方法。
(6)鳥類が家禽類である、(1)に記載の方法。
(7)鳥類がニワトリである(6)に記載の方法。
(8)(1)〜(7)に記載の方法で産生された完全ヒト型抗体。
(9)卵黄中にシアル酸を1つ以上含む完全ヒト型抗体を7%以上含む鶏卵。
(10)前記完全ヒト抗体が抗TNF抗体である(6)記載の鶏卵。
本発明により、医療用抗体で好適な完全ヒト型抗体をトランスジェニック鳥類で高濃度に生産させる方法が可能となる。つまり、本発明により高い治療効果が望める抗体医薬品の生産量が向上し、需要に見合った供給量の提供が可能となる。
本発明は、完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の血中、卵白中、卵黄中から完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする、完全ヒト型抗体を生産する方法を提供する。
完全ヒト型抗体とは、元々ヒトの体内に存在する抗体である。全配列がヒト由来であるため副作用がなく高い治療効果が望める抗体として期待されていた。しかし、実際には完全ヒト型抗体を採取することは、ヒトに抗原を免疫しなければならない等の倫理的問題や、大量生産方法がなかったために、マウス由来配列を含むマウス―ヒトキメラ抗体やヒト化抗体が治療用として使用されてきた。しかし、マウス由来配列を含む抗体は、望ましくない免疫応答(「ヒト抗マウス抗体」(HAMA)反応)の誘出等により、その使用が極端に制限される。近年、ヒトゲノム解読の完了や大きな技術革新を受け、完全ヒト型抗体を獲得することができつつある。獲得した抗体は培養細胞により生産されているが、抗体に付加する糖鎖構造が完全にヒト型ではないため、免疫応答を引き起こすことが容易に予想される。一方、本発明で産生できる抗体はヒト型にきわめて近い糖鎖を付加することができるため、抗体に対する免疫応答を劇的に軽減することが可能であり、より高い治療効果を望むことができる。該抗体は、完全長であってもよいし、又は抗原結合部位のみを含んでいてもよい。
遺伝子導入法について特に限定されることはないが、本発明はウイルスベクターによる遺伝子導入法に特徴つけられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクターのモロニー・ミューリン・ロイケミア・ウイルス(MoMLV)、エビアン・ロイコシス・ウイルス(ALV)等に由来するベクターがあげられる。なかでもMoMLVに由来するものが好ましいが、これに限定されるものではない。
安全性を考慮し、遺伝子導入ベクターとして用いられるウイルスは、通常ウイルス粒子の複製に必要な3種の遺伝子gag、pol、envのうちのいづれか又はすべてを欠くことにより、自己複製能を欠失したウイルスが用いられる。鳥類細胞にこのウイルスベクターを効率的に感染させるため、外皮タンパク質を人工的にVSV−G(水泡性口内炎ウイルス由来)シュドタイプとしたウイルスベクターが好ましいが、これに限定されるものではない。
安全性を考慮し、遺伝子導入ベクターとして用いられるウイルスは、通常ウイルス粒子の複製に必要な3種の遺伝子gag、pol、envのうちのいづれか又はすべてを欠くことにより、自己複製能を欠失したウイルスが用いられる。鳥類細胞にこのウイルスベクターを効率的に感染させるため、外皮タンパク質を人工的にVSV−G(水泡性口内炎ウイルス由来)シュドタイプとしたウイルスベクターが好ましいが、これに限定されるものではない。
パッケージング細胞又はヘルパーウイルス等を利用することにより調製されたシュドタイプのウイルスベクターは、通常のマイクロインジェクション法(Bosselman,R.Aら(1989)Science 243,533)により、初期胚、血管内、心臓内へ導入される。遺伝子導入法としては、この他にもリポフェクションやエレクトロポレーション法等が考えられる。
本発明の生産法はトランスジェニック鳥類の血中、卵白中、卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする。トランスジェニック鳥類作製法としては特に限定されるものではないが、鳥類受精卵を孵卵し、放卵直後の胚盤葉期を除くそれ以降の初期胚へ複製能欠損型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させる作製法が挙げられる。また、鳥類受精卵を孵卵し、孵卵開始から24時間以降の初期胚へ複製能欠損型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させる作製法も挙げられる。
より好ましくは、上記初期胚に形成される心臓ないしは血管内へ、複製能欠損型レトロウイルスベクターをマイクロインジェクションする方法である。
より好ましくは、上記初期胚に形成される心臓ないしは血管内へ、複製能欠損型レトロウイルスベクターをマイクロインジェクションする方法である。
本発明で生産される完全ヒト型抗体は、鳥類の血中、卵白中、卵黄中から完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする。また完全ヒト型抗体を高濃度で卵黄中に生産しうることを特徴とし、卵黄から血中安定性が高く、免疫原性の低い抗体の産生及びそれに続く精製を可能とする。従来はほとんど発現できなかった卵黄中に発現可能であることは卵白中での発現では付加されない糖鎖であるヒト型糖鎖(NANA型シアル酸糖鎖)を付加できることが特徴であり、ヒトに投与した場合の副作用の免疫反応を低減できることに大きく貢献する。
卵白中抗体含量は好ましくは40μg/ml以上であり、より好ましくは100μg/ml以上であり、更に好ましくは300μg/ml以上である。卵黄中抗体含量は好ましくは1μg/ml以上であり、より好ましくは10μg/ml以上、更に好ましくは50μg/ml以上である。また卵あたりの卵白体積を30ml、卵黄体積を10mlとすると、卵一個あたりの抗体含量は1mg/egg以上が望ましい。産生した完全ヒト型抗体の回収および精製方法としては特に限定されないが、プロテインAまたはプロテインGによるアフェニティー精製が可能である。この手法により産生した完全ヒト型抗体をされに精製または調製し抗体医薬また抗体医薬品原料として用いることが可能であるが、その利用方法は限定されない。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。遺伝子操作について特に記述のないものに関しては代表的な方法に従った(J,Samnrook,E.F.Fritsch,t.Maniatis;Molecular Cloning,A Laboratry Manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Laboratory)。細胞培養について特に記述のないものに関しては代表的な方法に従った。商品名を記載している場合は特に記述のない限り添付の説明書の指示に従った。
(実施例1)
抗TNF完全ヒト型抗体発現プラスミドpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)の構築
抗ヒトCD2抗体pMSCV/GΔALIH(CD2)はJORNAL OF BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING Vol.98,No.4,298−303.2004に開示されている。
抗ヒトTNFα抗体の配列(Adalimumab;HUMIRAO)を公開配列情報に基づいて全塩基配列を化学合成した。これを、pMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(HUMIRA)とした。
抗TNF完全ヒト型抗体発現プラスミドpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)の構築
抗ヒトCD2抗体pMSCV/GΔALIH(CD2)はJORNAL OF BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING Vol.98,No.4,298−303.2004に開示されている。
抗ヒトTNFα抗体の配列(Adalimumab;HUMIRAO)を公開配列情報に基づいて全塩基配列を化学合成した。これを、pMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(HUMIRA)とした。
(実施例2)
pMSCV/GΔALIH(HUMIRA)とpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調整
以後、特に記述のない限り、培地は10%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)と50units/mlのペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium,DMEM)を用いた(ギブコ社製)。培養は37℃、CO25%で行った。レトロウイルスベクターに用いるプラスミドDNAはEndo Free Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社製)を用いた。
実施例1で構築したプラスミドpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)よりレトロウイルスベクターを調整するため、gag、pol遺伝子を持つパッケージング細胞GP293を、コラーゲンコートされた直径100mmの培養ディッシュに細胞数5×106個/ディッシュ(70%コンフルエント)になるように播種した(翌日90%コンフルエントとなるようにする)。次の日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキン(シグマ社製)を加えて、さらに一時間培養した。56μlのLipofectamine.2000溶液(インビトロジェン社製)を1.4mlのOpti−MEMI培地(ギブコ社製)に懸濁し、室温で5分間置いた。12μgのpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)と12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁した。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分置いた。これを培養ディッシュに全量加え、6時間培養した。6時間後、培地を取り除き9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solution(ギブコ社製)を加えさらに24時間培養した。
培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック社製)に通し、遠心管に集めた。超遠心機CS100GXL(日立工機社製)を用い、28,000rpm(50,000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNF緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.8)、130mM NaCl、1mM EDTA)を加え、4℃で一晩静置し、よく懸濁して小型高速遠心機で12,000rpmで一分間遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルター(アドバンテック社製)に通してウイルス液とした。
pMSCV/GΔALIH(HUMIRA)とpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調整
以後、特に記述のない限り、培地は10%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)と50units/mlのペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium,DMEM)を用いた(ギブコ社製)。培養は37℃、CO25%で行った。レトロウイルスベクターに用いるプラスミドDNAはEndo Free Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社製)を用いた。
実施例1で構築したプラスミドpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)よりレトロウイルスベクターを調整するため、gag、pol遺伝子を持つパッケージング細胞GP293を、コラーゲンコートされた直径100mmの培養ディッシュに細胞数5×106個/ディッシュ(70%コンフルエント)になるように播種した(翌日90%コンフルエントとなるようにする)。次の日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキン(シグマ社製)を加えて、さらに一時間培養した。56μlのLipofectamine.2000溶液(インビトロジェン社製)を1.4mlのOpti−MEMI培地(ギブコ社製)に懸濁し、室温で5分間置いた。12μgのpMSCV/GΔALIH(HUMIRA)と12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁した。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分置いた。これを培養ディッシュに全量加え、6時間培養した。6時間後、培地を取り除き9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solution(ギブコ社製)を加えさらに24時間培養した。
培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック社製)に通し、遠心管に集めた。超遠心機CS100GXL(日立工機社製)を用い、28,000rpm(50,000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNF緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.8)、130mM NaCl、1mM EDTA)を加え、4℃で一晩静置し、よく懸濁して小型高速遠心機で12,000rpmで一分間遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルター(アドバンテック社製)に通してウイルス液とした。
(実施例3)
ウイルス力価の測定
ウイルス液の力価はNIH3T3細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション CRL−1658)にウイルス液を添加したとき、感染した細胞の数によって定義した。6ウェル培養プレートの各ウェル(底面積約9.4cm2)に存在する5×104のNIH3T3細胞に102から106倍の希釈率で希釈したウイルス溶液を1ml加え、マーカーであるGFP(Green Fluorescent Proteins)遺伝子を発現している細胞の割合を調べることでウイルス液の力価を測定した。106倍希釈で4コロニー現れた場合、ウイルス力価は4×106cfu/mlとなる。
具体的には力価測定開始の前日にNIH3T3細胞を6ウェル培養プレートに5×104個/ウェルとなるように播種し培養した。翌日、細胞の培地を9μg/mlのポリブレン含有培地900μl/ウェルで交換し、ウイルス液を培地で10−1〜10−5に希釈し、それぞれ100μlをウェルに添加して感染させた(ポリブレン終濃度8μl/ml)。4〜6時間培養後、1mlの培地をさらに加えた。次の日、培地を交換し、以後3〜4日おきに培地交換した。感染から約1週間後GFPを発現しているコロニー数を測定し、力価を求めた。
ウイルス力価の測定
ウイルス液の力価はNIH3T3細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション CRL−1658)にウイルス液を添加したとき、感染した細胞の数によって定義した。6ウェル培養プレートの各ウェル(底面積約9.4cm2)に存在する5×104のNIH3T3細胞に102から106倍の希釈率で希釈したウイルス溶液を1ml加え、マーカーであるGFP(Green Fluorescent Proteins)遺伝子を発現している細胞の割合を調べることでウイルス液の力価を測定した。106倍希釈で4コロニー現れた場合、ウイルス力価は4×106cfu/mlとなる。
具体的には力価測定開始の前日にNIH3T3細胞を6ウェル培養プレートに5×104個/ウェルとなるように播種し培養した。翌日、細胞の培地を9μg/mlのポリブレン含有培地900μl/ウェルで交換し、ウイルス液を培地で10−1〜10−5に希釈し、それぞれ100μlをウェルに添加して感染させた(ポリブレン終濃度8μl/ml)。4〜6時間培養後、1mlの培地をさらに加えた。次の日、培地を交換し、以後3〜4日おきに培地交換した。感染から約1週間後GFPを発現しているコロニー数を測定し、力価を求めた。
(実施例4)
抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞の選択
ウイルス感染の前日に24ウェル培養プレートにGP293細胞を1.5×104個/ウェルとなるように播種し培養した。ウイルス感染の当日10μg/mlのポリブレン含有培地1ml/ウェルで交換した。これに実施例2で作製したウイルス液を感染させた。以後、細胞を限界希釈法によりクローン化する。具体的には、次の日、細胞を10個/mlになるように希釈した。希釈した細胞を96ウェル培養プレートに100μlづつ播種し(ウェルに1個の細胞が入るようにする)、細胞増殖速度が早く、GP293細胞と形態の近い細胞を選択し、抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞クローンを得た。
抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞の選択
ウイルス感染の前日に24ウェル培養プレートにGP293細胞を1.5×104個/ウェルとなるように播種し培養した。ウイルス感染の当日10μg/mlのポリブレン含有培地1ml/ウェルで交換した。これに実施例2で作製したウイルス液を感染させた。以後、細胞を限界希釈法によりクローン化する。具体的には、次の日、細胞を10個/mlになるように希釈した。希釈した細胞を96ウェル培養プレートに100μlづつ播種し(ウェルに1個の細胞が入るようにする)、細胞増殖速度が早く、GP293細胞と形態の近い細胞を選択し、抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞クローンを得た。
(実施例5)
抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞とpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調製
直径100mmのコラーゲンコートされた培養デュッシュに抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞を5×106個(70%コンフルエント)になるように播種した(翌日90%コンフルエントとなるようにする)。翌日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキンを加えて、更に1時間培養した。56μlのLipofectamine.2000溶液を1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁し、室温で5分間置いた。12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁した。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分置いた。これを培養ディッシュに全量加え、6時間培養した。6時間後、培地を取り除き9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solutionを加えさらに24時間培養した。
培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルターに通し、遠心管に集めた。超遠心機を用い、28,000rpm(50,000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNF緩衝液を加え、4℃で一晩静置し、よく懸濁して小型高速遠心機で12,000rpmで一分間遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルター(アドバンテック社製)に通してウイルス液とした。このようにすれば、108cuf/ml以上の力価を持つウイルス液が得られる。
抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞とpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調製
直径100mmのコラーゲンコートされた培養デュッシュに抗TNF完全ヒト型抗体発現安定パッケージング細胞を5×106個(70%コンフルエント)になるように播種した(翌日90%コンフルエントとなるようにする)。翌日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキンを加えて、更に1時間培養した。56μlのLipofectamine.2000溶液を1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁し、室温で5分間置いた。12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁した。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分置いた。これを培養ディッシュに全量加え、6時間培養した。6時間後、培地を取り除き9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solutionを加えさらに24時間培養した。
培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルターに通し、遠心管に集めた。超遠心機を用い、28,000rpm(50,000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNF緩衝液を加え、4℃で一晩静置し、よく懸濁して小型高速遠心機で12,000rpmで一分間遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルター(アドバンテック社製)に通してウイルス液とした。このようにすれば、108cuf/ml以上の力価を持つウイルス液が得られる。
(実施例6)
ニワトリ胚へのレトロウイルスベクターのマイクロインジェクションと人工孵化による抗
TNF完全ヒト型抗体産生トランスジェニックニワトリ作製
マイクロインジェクションと人工孵化は無菌条件化で行う。ニワトリ受精卵(城山種鶏場)の外側を消毒液(昭和フラン機社製)およびエタノールで除菌する。孵卵機P−008(B)型を38℃、湿度50〜60℃環境になるようにセットし、電源を入れた時刻を孵卵開始時刻(0時間)とし、以後15分毎に90°転卵しながら孵卵を行った。
孵卵開始から約55時間経過後、孵卵機の転卵を30分ごとに30°転卵に変更する。孵卵機から卵を取り出し、その鋭端部を直径3.5cmの円形にダイヤモンド刃(刃先径20mm、シャフト径2.35mm)をつけたミニルーター(プロクソン社製)で切り取った。ニワトリ二黄卵(城山種鶏場)の鋭端部を直径4.5cmに切り取り、中身を捨てた卵殻に受精卵の中身を移し、注射器の内筒で胚を上方へ移動させた。実体顕微鏡システムSZX12(オリンパス社製)下でフェムトチップII(エッペンドルフ社製)にウイルス液を注入し、フェムトジェット(エッペンドルフ社製)を用い、ウイルス溶液約2μlをマイクロインジェクションした。
卵白を糊として約8×8cm2に切ったサランラップ(旭化成社製)でこの穴を塞ぎ、孵卵機に戻し孵卵を続けた。孵卵開始から20日目にサランラップに20Gの注射針で20個程度穴を開け、孵卵機に60cc/minで酸素を供給し孵卵を行った。雛がハシ打ちを始めたら、卵殻を割って孵卵させた。この人工孵化による孵化率は7〜30%だった。
ニワトリ胚へのレトロウイルスベクターのマイクロインジェクションと人工孵化による抗
TNF完全ヒト型抗体産生トランスジェニックニワトリ作製
マイクロインジェクションと人工孵化は無菌条件化で行う。ニワトリ受精卵(城山種鶏場)の外側を消毒液(昭和フラン機社製)およびエタノールで除菌する。孵卵機P−008(B)型を38℃、湿度50〜60℃環境になるようにセットし、電源を入れた時刻を孵卵開始時刻(0時間)とし、以後15分毎に90°転卵しながら孵卵を行った。
孵卵開始から約55時間経過後、孵卵機の転卵を30分ごとに30°転卵に変更する。孵卵機から卵を取り出し、その鋭端部を直径3.5cmの円形にダイヤモンド刃(刃先径20mm、シャフト径2.35mm)をつけたミニルーター(プロクソン社製)で切り取った。ニワトリ二黄卵(城山種鶏場)の鋭端部を直径4.5cmに切り取り、中身を捨てた卵殻に受精卵の中身を移し、注射器の内筒で胚を上方へ移動させた。実体顕微鏡システムSZX12(オリンパス社製)下でフェムトチップII(エッペンドルフ社製)にウイルス液を注入し、フェムトジェット(エッペンドルフ社製)を用い、ウイルス溶液約2μlをマイクロインジェクションした。
卵白を糊として約8×8cm2に切ったサランラップ(旭化成社製)でこの穴を塞ぎ、孵卵機に戻し孵卵を続けた。孵卵開始から20日目にサランラップに20Gの注射針で20個程度穴を開け、孵卵機に60cc/minで酸素を供給し孵卵を行った。雛がハシ打ちを始めたら、卵殻を割って孵卵させた。この人工孵化による孵化率は7〜30%だった。
(実施例7)
抗RSVヒト化抗体産生トランスジェニックニワトリおよび抗TNFマウス―ヒトキメラ抗体産生トランスジェニックニワトリの作製
抗RSVヒト化抗体の配列(Palivizunab;SYNASISO)を公開されているアミノ酸配列を基に全塩基配列を化学合成した。これをpMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(抗RSV)とした。
抗TNFマウス―ヒトキメラ抗体の配列(infliximab;REMINADEO)を公開されている配列を基に全塩基配列を化学合成した。これをpMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(抗TNFマウス―ヒトキメラ)とした。
これらを実施例2〜6に記載の方法でトランスジェニックニワトリを作製した。
抗RSVヒト化抗体産生トランスジェニックニワトリおよび抗TNFマウス―ヒトキメラ抗体産生トランスジェニックニワトリの作製
抗RSVヒト化抗体の配列(Palivizunab;SYNASISO)を公開されているアミノ酸配列を基に全塩基配列を化学合成した。これをpMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(抗RSV)とした。
抗TNFマウス―ヒトキメラ抗体の配列(infliximab;REMINADEO)を公開されている配列を基に全塩基配列を化学合成した。これをpMSCV/GΔALIH(CD2)のCD2配列に置き換えて、pMSCV/GΔALIH(抗TNFマウス―ヒトキメラ)とした。
これらを実施例2〜6に記載の方法でトランスジェニックニワトリを作製した。
(実施例8)
トランスジェニックニワトリの血中、卵中の発現量測定サンプルの作製
誕生した雛を飼育して成長させた、飼料として幼雛SXセーフティーおよびネオセーフティー17(豊橋飼料社製)を用いた。幼雛および成鶏からの採血は翼下静脈より行った。採血した血液はエッペンドルフチューブに入れ、室温で30分以上放置した後、小型高速遠心機で4℃、3,000rpmで5分間遠心分離し、血清と血餅を完全に分離し、上清を血清とした。卵からの抽出の際には、卵白および卵黄を分離した。卵黄からの抽出の際は、卵黄中央にシリンジを刺し、卵白が入らないように抜き取った。卵白は、超音波や物理的手法により全体を一様になるように調製した。調製したサンプルはアッセイ時まで−80℃で凍結保存した。融解は37℃で迅速に行い、凍結融解を繰り返すことは避けることが好ましい。
トランスジェニックニワトリの血中、卵中の発現量測定サンプルの作製
誕生した雛を飼育して成長させた、飼料として幼雛SXセーフティーおよびネオセーフティー17(豊橋飼料社製)を用いた。幼雛および成鶏からの採血は翼下静脈より行った。採血した血液はエッペンドルフチューブに入れ、室温で30分以上放置した後、小型高速遠心機で4℃、3,000rpmで5分間遠心分離し、血清と血餅を完全に分離し、上清を血清とした。卵からの抽出の際には、卵白および卵黄を分離した。卵黄からの抽出の際は、卵黄中央にシリンジを刺し、卵白が入らないように抜き取った。卵白は、超音波や物理的手法により全体を一様になるように調製した。調製したサンプルはアッセイ時まで−80℃で凍結保存した。融解は37℃で迅速に行い、凍結融解を繰り返すことは避けることが好ましい。
(実施例9)
ELISAによる免疫グロブリン分子濃度の定量
実施例8で回収した上清中、卵白中および卵黄中の免疫グロブリン分子の発現量を測定するために、enzyme―linked immunosorbent assay (ELISA)法を行った。抗体生産量は測定で用いた標準品より算出した。
測定方法は代表的な方法に従った(Immunochemistry、8、871−874(1971))。
ELISAによる免疫グロブリン分子濃度の定量
実施例8で回収した上清中、卵白中および卵黄中の免疫グロブリン分子の発現量を測定するために、enzyme―linked immunosorbent assay (ELISA)法を行った。抗体生産量は測定で用いた標準品より算出した。
測定方法は代表的な方法に従った(Immunochemistry、8、871−874(1971))。
ウサギ抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Organon Teknika, Durham, NC, USA)を一次抗体として、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヒトIgG抗体(Organon Teknika, Durham, NC, USA)を二次抗体として用いた。検出基質としてo‐phenylenediamineを用いて発色させ、吸光度をプレートリーダーで測定した。定量時のスタンダードとしてhuman IgG1(Athens Research and Technology, Athens, GA, USA)を用いた。
これらから、抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリ(個体番号5−3)の血中発現量は最大で33μg/ml、卵白発現量は704.4μg/ml(21.1mg/egg)、卵黄発現量は196.4μg/ml(1.9mg/egg)であった。
結果を図1に示す。
これらから、抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリ(個体番号5−3)の血中発現量は最大で33μg/ml、卵白発現量は704.4μg/ml(21.1mg/egg)、卵黄発現量は196.4μg/ml(1.9mg/egg)であった。
結果を図1に示す。
抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリと同手法により作製した抗RSVヒト化抗体発現トランスジェニックニワトリ卵白発現量は40μg/ml(1.2mg/egg)、抗TNFマウス―ヒトキメラ抗体発現トランスジェニックニワトリ卵白発現量は10μg/ml(0.3mg/egg)であった。これに比べ、TNF完全ヒト型抗体は20mg/eggを超えており非常に高い発現量であった。結果を図2に示す。
また、抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリの卵黄中発現量比は、抗RSVヒト化抗体発現トランスジェニックニワトリの卵黄中発現量比に比べ高いことがわかる。具体的には抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリ5−3の卵白中発現量平均は551.4μg/ml(75.8%)、卵黄中発現量平均は176.4μg/ml(24.2%)である。これに比べて、抗RSVヒト化抗体発現トランスジェニックニワトリの卵白中発現量は40μg/ml(97.5%)、卵黄中発現量平均は1μg/ml(2.5%)である。ここから抗TNF完全ヒト型抗体発現トランスジェニックニワトリは卵黄中発現量比が高いことがわかる。この結果を図3に示す。
(実施例10)
ニワトリ卵白中及び卵黄中発現抗体の糖鎖分析
実施例8で回収した卵白及び卵黄中抗体の糖鎖分析を行った。標準品はPA−Sugar chain 001(バイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 021(モノシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 023(ジシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 024(トリシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 012(アガラクトバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 013(アガラクトトリアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 014(アガラクトテトラアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 015(アガラクトペンタアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Glucose Oligomer(タカラバイオ)、を用いた。
ヒドラジン分解後、N−アセチル化し、2−アミノピリジンで蛍光標識した。調製したピリジンアミノ化糖鎖をイオン交換(DEAE)カラム及び逆相(ODS)カラムで分析し、糖鎖マップを作成した。
ニワトリ卵白中及び卵黄中発現抗体の糖鎖分析
実施例8で回収した卵白及び卵黄中抗体の糖鎖分析を行った。標準品はPA−Sugar chain 001(バイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 021(モノシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 023(ジシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 024(トリシアロバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 012(アガラクトバイアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 013(アガラクトトリアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 014(アガラクトテトラアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Sugar chain 015(アガラクトペンタアンテナ)(タカラバイオ)、PA−Glucose Oligomer(タカラバイオ)、を用いた。
ヒドラジン分解後、N−アセチル化し、2−アミノピリジンで蛍光標識した。調製したピリジンアミノ化糖鎖をイオン交換(DEAE)カラム及び逆相(ODS)カラムで分析し、糖鎖マップを作成した。
この結果、卵白中発現抗体に比べ卵黄中発現抗体に付加されるシアル酸の含量が多いことがわかった(7%)。つまり、卵黄中ではシアル酸含量が高く、NANAのみの糖鎖付加が起こることから、本研究では血中で分解されにくく血中半減期が長い、免疫応答が起こりにくいより高効果な完全ヒト型抗体を産生することができた。結果を図4に示す。
Claims (10)
- 完全ヒト型抗体をコードする遺伝子を鳥類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を導入した鳥類の卵白中及び卵黄中から前記完全ヒト型抗体を回収することを特徴とする、完全ヒト型抗体を生産する方法。
- 卵黄中から完全ヒト型抗体を回収、精製する請求項1記載の方法。
- 卵白中に完全ヒト型抗体を40μg/ml以上含む請求項1に記載の方法。
- 卵黄中に完全ヒト型抗体を1μg/ml以上含む請求項1に記載の方法。
- 卵中に完全ヒト型抗体を1mg/egg以上含む請求項1に記載の方法。
- 鳥類が家禽類である、請求項1に記載の方法。
- 鳥類がニワトリである請求項6に記載の方法。
- 請求項1〜7に記載の方法で産生された完全ヒト型抗体。
- 卵黄中にシアル酸を1つ以上含む完全ヒト型抗体を7%以上含む鶏卵。
- 前記完全ヒト抗体が抗TNF抗体である請求項6記載の鶏卵。
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