JP2008254154A - テーパ加工用インサートおよびインサート着脱式テーパ加工用工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】テーパ加工用工具をインサート着脱式とするのに際して、1つのインサート本体で使用可能な切刃の数は確保しつつ、テーパ加工用工具の工具本体先端部においては、この先端部における切刃のテーパ基準径が小さくてもその強度やインサート取付剛性の低下を防ぐ。
【解決手段】略長方形平板状をなして長手方向に延びる中心線C回りに表裏反転対称とされたインサート本体2の表裏一対の長方形面がすくい面3とされるとともに、インサート本体2の長手方向に延びる一対の側面が逃げ面4とされ、インサート本体2は、すくい面3が上記長手方向の一端側から他端側に向かうに従い漸次幅狭となるように先細り状に形成されていて、これら各一対のすくい面3と逃げ面4との交差稜線部のうち、それぞれ互い違いのすくい面3と逃げ面4とが交差する一対の交差稜線部に切刃5を形成する。
【選択図】図1
【解決手段】略長方形平板状をなして長手方向に延びる中心線C回りに表裏反転対称とされたインサート本体2の表裏一対の長方形面がすくい面3とされるとともに、インサート本体2の長手方向に延びる一対の側面が逃げ面4とされ、インサート本体2は、すくい面3が上記長手方向の一端側から他端側に向かうに従い漸次幅狭となるように先細り状に形成されていて、これら各一対のすくい面3と逃げ面4との交差稜線部のうち、それぞれ互い違いのすくい面3と逃げ面4とが交差する一対の交差稜線部に切刃5を形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、被削材にテーパ孔やテーパ溝等を形成するテーパ加工に用いられるテーパ加工用インサート、およびこのようなテーパ加工用インサートが着脱可能に取り付けられたテーパリーマやテーパエンドミル等のインサート着脱式テーパ加工用工具に関するものである。
このようなテーパ加工を行う工具のうち、被削材にテーパ孔を形成するテーパ孔用工具や、こうして形成されたテーパ孔や下孔を所定の精度のテーパ孔に仕上げるテーパリーマとしては、例えば特許文献1〜3に記載のようなものが提案されている。また、溝底に向けて溝幅が漸次小さくなるテーパ溝を被削材に形成するテーパエンドミルとしては、例えば特許文献4に記載のようなものが提案されている。
特開平08−257816号公報
特開平05−253742号公報
特開平09−272015号公報
特開平06−047615号公報
ところで、これら特許文献1〜4に記載のテーパ加工用工具はいずれも、軸線回りに回転されてテーパ加工を行う工具本体自体が超硬合金等の硬質材料により形成されて、この工具本体に切刃が直接に形成されたソリッド(むく)タイプの工具であり、切刃に摩耗等が生じたときには、ある程度までは再研磨して使用可能ではあるものの、最終的には上述のような硬質材料よりなる工具本体をそのまま廃棄しなければならない。そこで、このようなテーパ加工用工具においても、その切刃の部分だけを硬質材料よりなるインサートに形成して、かかるインサートを工具本体に着脱可能に取り付けたインサート着脱式のテーパ加工用工具とすることが望まれている。
ここで、このようなテーパリーマやテーパエンドミルに用い得る切刃長の長いインサートとしては、長方形平板状であってその長方形面をすくい面とし、この長方形面の長辺に切刃が形成されたものが考えられる。また、テーパ加工時の切削抵抗の低減を図るには、上記切刃に連なって逃げ面とされるインサート本体の側面がすくい面と鋭角に交差するようにされたポジティブタイプのインサートとされるのが望ましく、さらに1つのインサート本体で使用可能な切刃の数を増やすには、上記長方形面の一対の長辺の双方に切刃を形成するのが望ましく、結果的にかかるテーパ加工用インサートは、長方形平板状のインサート本体の一方の長方形面がすくい面とされて、その一対の長辺に切刃が形成され、さらにこれらの切刃に連なって逃げ面とされるインサート本体の一対の側面がともに上記一方の長方形面に鋭角に交差したものとなる。
また、このようなテーパ加工用インサートが着脱可能に取り付けられるインサート着脱式テーパ加工用工具では、このインサートの一の切刃が、工具本体の外周側に突出させるとともに該工具本体の後端側から先端側に向かうに従い漸次この工具本体の軸線に近づくように傾斜させられることになり、この一の切刃の上記軸線回りの回転軌跡がなす円錐のテーパ角が加工テーパ角とされて、被削材にテーパ孔やテーパ溝等のテーパ加工が施される。従って、かかるインサートを取り付けるために工具本体に形成されるインサート取付座も、その工具本体外周側を向いてインサート本体の上記一の切刃に連なる逃げ面とは反対側の逃げ面が当接させられる取付座壁面は、上記一の切刃と平行に工具本体の後端側から先端側に向かうに従い漸次上記軸線に近づくように傾斜して形成されることになる。
しかしながら、そのようなテーパ加工用インサートおよびインサート着脱式テーパ加工工具では、こうして上記取付座壁面が工具本体の先端側に向かうに従い軸線に近づくように傾斜しているため、例えばこの工具本体の先端部における切刃のテーパ基準径が小さい場合には、インサート取付座によって工具本体の先端部が大きく切り欠かれてその強度が損なわれ、これに伴いインサート取付剛性も低下して加工精度の劣化を招くおそれがある。また、こうして工具本体の先端側がインサート取付座によって大きく切り欠かれると、工具本体に形成可能なインサート取付座の数が制限され、すなわち工具本体に取付可能なインサートの数が制限されてしまうおそれもある。
さらに、例えばテーパリーマなどでは、工具本体の外周にガイドパッドを固定して、その軸線回りの回転軌跡が上記一の切刃の回転軌跡と平行に極僅かに後退するように配設し、このガイドパッドを加工されたテーパ孔の内周に摺接させることにより、工具本体を軸線に沿って直進するように案内して高精度のテーパ孔加工を行う場合があり、このような場合には、一の切刃の回転軌跡がガイドパッドの回転軌跡と所定のクリアランスで平行となるように、テーパ加工用インサートの切刃の位置を調整しなければならない。ところが、このインサートの切刃位置調整の際には、長方形平板状のテーパ加工用インサートを、その長手方向に交差する工具本体の径方向に移動させなければならないため、一の切刃がガイドパッドの回転軌跡に対して傾いてしまうおそれがあって、位置調整に多くの時間と労力とを要することになる。
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のようなテーパ加工用工具をインサート着脱式とするのに際して、1つのインサート本体で使用可能な切刃の数は確保しつつ、テーパ加工用工具の工具本体先端部においては、この先端部における切刃のテーパ基準径が小さくてもその強度やインサート取付剛性の低下を防ぐことができ、さらにはインサート着脱式のテーパリーマなどにおけるテーパ加工用インサートの切刃位置の調整を確実かつ容易に行うことが可能なテーパ加工用インサートおよびインサート着脱式テーパ加工用工具を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のテーパ加工用インサートは、略長方形平板状をなして長手方向に延びる中心線回りに表裏反転対称とされたインサート本体の表裏一対の長方形面がすくい面とされるとともに、上記インサート本体の長手方向に延びる一対の側面が逃げ面とされ、上記インサート本体は、上記すくい面が上記長手方向の一端側から他端側に向かうに従い漸次幅狭となるように先細り状に形成されていて、これら各一対のすくい面と逃げ面との交差稜線部のうち、それぞれ互い違いのすくい面と逃げ面とが交差する一対の交差稜線部に切刃が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のインサート着脱式テーパ加工用工具は、軸線回りに回転される工具本体の外周に形成されたインサート取付座に、上述のような本発明のテーパ加工用インサートが、上記長手方向の一端側を上記工具本体の先端側に向けるとともに、一の上記切刃を上記工具本体の外周側に突出させ、かつ該工具本体の後端側から先端側に向かうに従い漸次上記軸線に近づくように傾斜させて着脱可能に取り付けられており、この一の切刃の上記軸線回りの回転軌跡がなす円錐のテーパ角を加工テーパ角として被削材にテーパ加工を施すことを特徴とする。
従って、このように構成されたテーパ加工用インサートでは、まずインサート本体の互い違いのすくい面と逃げ面とが交差する一対の交差稜線部に切刃が形成されていて、このインサート本体が表裏反転対称とされているので、こうしてインサート本体の表裏一対のすくい面を反転させることにより、上記一対の交差稜線部に形成された切刃を順次使用することが可能となる。すなわち、1つのインサート本体で2回の切刃の使用が可能となって、超硬合金等の硬質材料により形成されるインサート本体を有効に利用してインサート寿命を延長することができ、経済的である。
そして、さらにこのインサート本体は、その長手方向の一端側から他端側に向かうに従い上記すくい面が漸次幅狭となるように先細り状に形成されており、上記構成のインサート着脱式テーパ加工用工具ではこの一端側が工具本体の先端側に向けられてインサート本体が取り付けられるので、インサート取付座の工具本体外周側を向く取付座壁面の軸線に対する傾斜を、工具本体外周側に突出させられる上記一の切刃の傾斜よりも緩やかにすることができる。従って、これにより、工具本体の先端部がインサート取付座によって大きく切り欠かれるのを防ぐことができ、この先端部における切刃のテーパ基準径が小さい場合でも、この工具本体先端部における強度やインサートの取付剛性が損なわれるのを防いで加工精度を向上させることができるとともに、より多くのインサートを工具本体に取付可能とすることができる。
また、上記インサート着脱式テーパ加工用工具では、工具本体外周側に突出させられた上記一の切刃の上記軸線回りの回転軌跡がなす円錐のテーパ角が加工テーパ角とされて、被削材にテーパ加工が施されることになり、すなわちテーパリーマの場合にはこの加工テーパ角に合わせた角度で孔底側に向かうに従い漸次縮径するテーパ孔が、またテーパエンドミルの場合には該加工テーパ角に合わせた角度で溝底側に向かうに従い漸次幅狭となるテーパ溝が、被削材に形成されることになる。
そこで、特に上記テーパ加工用インサートにおいては、上記インサート本体が上記長手方向の一端側から他端側に向けて先細りとなるテーパ角を、このインサート着脱式テーパ加工用工具の加工テーパ角の1/2とすることにより、インサート着脱式テーパ加工用工具にあっては、その上記インサート取付座に、上記工具本体の外周側を向いて上記インサート本体の上記一の切刃に連なる逃げ面とは反対側の逃げ面が当接させられる取付座壁面を、上記軸線に平行に延びるように形成することができるので、工具本体の先端部が切り欠かれる部分をより小さくすることができるとともに、例えば工具本体に複数のテーパ加工用インサートを取り付けるためにインサート取付座を複数形成するような場合でも、これらのインサート取付座が干渉するようなことを確実に防ぐことができる。
一方、このようなテーパ加工用インサートを取り付けたインサート着脱式テーパ加工用工具では、上述のようにインサート本体の一の切刃に連なる逃げ面とは反対側の逃げ面をインサート取付座の工具本体外周側を向く取付座壁面に当接させた状態で、この取付座壁面に沿ってインサート本体を工具本体の軸線方向に移動させれば、上記一の切刃は、平行に移動してその上記加工テーパ角を維持したまま軸線回りの回転軌跡が軸線方向に進退することになる。
従って、当該インサート着脱式テーパ加工用工具がテーパリーマなどであって、この工具本体の外周にガイドパッドが固定されている場合には、該工具本体に、上記インサート本体を上記軸線方向に移動させることにより上記一の切刃の位置を調整する切刃位置調整機構を備えておけば、インサート本体を上述のように取付座壁面に沿ってこの切刃位置調整機構により軸線方向に移動させるだけで、この一の切刃に傾きを生じて上記加工テーパ角に誤差を生じたりすることなく、そのガイドパッドの回転軌跡に対するクリアランスを確実かつ容易に調整することが可能となる。
以上説明したように、本発明のテーパ加工用インサートおよびインサート着脱式テーパ加工用工具によれば、テーパリーマやテーパエンドミル等のテーパ加工用工具をインサート着脱式としても、1つのインサート本体で2回の切刃の使用を可能として硬質材料の有効利用を図ることができる一方、たとえテーパ加工用工具の工具本体先端部における切刃のテーパ基準径が小さくても、その強度やインサート取付剛性の低下を防いで加工精度の向上を促すとともに、工具本体に取付可能なインサート数が制限を受けたりするのも避けることができる。さらに、インサート着脱式のテーパリーマなどにおいて切刃とガイドパッドとのクリアランスを調整するときにも、加工テーパ角を維持したまま確実かつ容易な調整を図ることができる。
図1および図2は本発明のテーパ加工用インサートの第1の実施形態を示すものであり、図3ないし図6はこの第1の実施形態のテーパ加工用インサート1を取り付けた本発明のインサート着脱式テーパ加工用工具の第1の実施形態を示すものである。本実施形態のテーパ加工用インサート1において、そのインサート本体2は、超硬合金等の硬質材料により形成されて、その長手方向に延びる中心線C回りに表裏反転対称な略長方形平板状をなしており、ただしこの長手方向(中心線C方向)の一端側(図1において右側)から他端側(図1において左側)に向けて表裏一対の長方形面が漸次幅狭となる先細り形状とされている。ここで、このインサート本体2が上記長手方向の一端側から他端側に向けて先細りとなるテーパ角は、後述するインサート着脱式テーパ加工用工具による加工テーパ角θの1/2とされている。
本実施形態では、このインサート本体2の上記表裏一対の長方形面がすくい面3とされるとともに、これらの長方形面に交差してインサート本体2の長手方向に延びる一対の側面が逃げ面4とされ、これらすくい面3と逃げ面4との交差稜線部に切刃5が形成されている。ただし、本実施形態では、図2に示すように上記長手方向から見てインサート本体2が平行四辺形状をなしていて、逃げ面4は中心線C回り方向に一方の側(図2において時計回り方向側)のすくい面3とは鋭角に交差する一方、他方の側(図2において反時計回り方向側)のすくい面3とは鈍角に交差しており、このうちすくい面3と逃げ面4とが鋭角に交差する交差稜線部に切刃5が形成されている。
すなわち、本実施形態のテーパ加工用インサート1は逃げ面4に逃げ角が付されたポジティブタイプのインサートとされ、表裏一対のすくい面3と一対の逃げ面4との交差稜線部のうち、それぞれ互い違い側のすくい面3と逃げ面4とが交差する一対の交差稜線部に直線状の切刃5が形成されている。なお、インサート本体2の長手方向一端側を向く端面6は、その中央部6Aが中心線Cに垂直な平坦面とされるとともに、両逃げ面4側は該逃げ面4側に向かうに従い僅かに他端側に向かう傾斜面6Bとされ、また長手方向他端側を向く端面7は全体が中心線Cに垂直な平坦面とされている。
このようなテーパ加工用インサート1が取り付けられるインサート着脱式テーパ加工用工具は、本実施形態ではテーパリーマであって、その工具本体11は鋼材等から形成されて軸線Oを中心とした概略多段円柱状をなし、この工具本体11の後端側(図3において右側)部分は当該工具本体11を工作機械の主軸に装着するためのテーパタイプのシャンク部12とされるとともに、先端側(図3において左側)部分はシャンク部12から一段拡径した後、先端側に向かうに従い漸次縮径する外形円錐台状の刃部13とされている。
そして、本実施形態のテーパ加工用工具は、こうしてシャンク部12が工作機械の主軸に装着されて、軸線O回りに図中に符号Tで示す工具回転方向に回転させられつつ該軸線O方向に送り出され、被削材に形成された下孔の内周を、刃部13に取り付けられた上記テーパ加工用インサート1により、孔底側に向かうに従い内径が所定の加工テーパ角θで漸次縮径するテーパ孔に仕上げてゆく。なお、刃部13がなす円錐台が先端側に向けて縮径して先細りとなるテーパ角は、この加工テーパ角θと等しくされている。
この刃部13の外周には、軸線Oに直交する断面が工具本体11の内周側に凹曲する円弧状をなす内壁面14Aを有するチップポケット14が、本実施形態では1条、刃部13の先端から軸線Oに平行に該刃部13の後端部の手前にまで形成されており、従ってこのチップポケット14の刃部13外周面からの深さは、後端側に向けて漸次深くなる。一方、このチップポケット14の工具回転方向T側を向く壁面には、軸線Oに直交する断面がL字状をなす凹部14Bが、やはり刃部13の先端から軸線Oに平行に該刃部13の後端部の手前にまで形成されており、本実施形態ではこの凹部14Bにサポータ15がサポータ取付ネジ15Aによって取り付けられていて、上記テーパ加工用インサート1はこのサポータ15に形成されたインサート取付座16に着脱可能に取り付けられている。
サポータ15は鋼材等から形成されて、凹部14Bの工具回転方向Tを向く底面や工具外周側を向く壁面および先端側を向く壁面に密着させられて取り付けられており、この取付状態において工具外周側を向く側面は、刃部13の外周面がなす円錐面よりも僅かに後退した位置に、軸線Oに対して傾斜して延びるようにされている。このサポータ15に形成されたインサート取付座16は、上記取付状態において軸線Oに直交する断面がやはり略L字状をなす凹部であり、同取付状態において工具回転方向Tを向く底面16Aと、工具外周側を向く壁面16B、および工具先端側を向く壁面16Cとを有している。
このうち、底面16Aと壁面16Bとは上記取付状態において軸線Oに平行に延びるように形成されるとともに、壁面16Bは底面16Aに対しては、インサート本体2の切刃5が形成される交差稜線部において交差するすくい面3と逃げ面4との交差角に等しい鋭角で交差する方向に形成されている。ただし、この底面16Aとの交差稜線部と、壁面16Cと交差する後端部とには、インサート本体2の切刃5や角部との干渉を避けるための凹状の逃げ部が形成されている。また、工具本体11の先端側を向く壁面16Cは、底面16Aに垂直とされるとともに、その壁面16B側は、インサート本体2の上記端面6のうち傾斜面6Bが該傾斜面6Bと交差する逃げ面4との交差角と等しい角度で壁面16Bに対して傾斜する傾斜面とされるとともに、これよりも工具外周側は一段後退して軸線Oに垂直に延びるように形成されている。
このように形成されたインサート取付座16に、上記テーパ加工用インサート1は、そのインサート本体2の一方のすくい面3を工具回転方向Tに向けるとともに、他方のすくい面3を底面16Aに密着させ、またこの一方のすくい面3に切刃5を介して交差する一方の逃げ面4を工具本体1の外周側に向けるとともに、他方の逃げ面4を壁面16Bに当接させ、さらに上記一端側の端面6を工具本体11の後端側に向けて、その上記他方の逃げ面16B側の傾斜面6Bを壁面16Cの上記傾斜面に当接させるとともに、他端側の端面7を工具本体11の先端側に向けて着座させられる。
また、チップポケット14の上記壁面14Aには、軸線O方向に間隔をあけて複数の図6に示すような断面円形の取付孔14Cが刃部13の外周面から内周側に向けて形成されており、これらの取付孔14Cには、テーパ加工用インサート1の上記一方のすくい面3に当接する凸部を有したクランプ駒17が挿入されている。そして、このクランプ駒17が、該クランプ駒17と工具本体11とに螺着させられる雄ネジ部が両端に形成されたクランプネジ17Aをねじ込むことによって工具本体11の内周側に押し付けられることにより、当該テーパ加工用インサート1のインサート本体2は工具本体11にクランプされて着脱可能に取り付けられる。
こうして工具本体11に取り付けられた状態で、テーパ加工用インサート1の上記一方のすくい面3と一方の逃げ面4との交差稜線部に形成された切刃5は、刃部13の外周面よりも僅かに工具本体11の外周側に突出し、またその長手方向他端側の端面7も刃部13の先端面から僅かに突出させられている。そして、この切刃5とは反対側のインサート本体2の他方の逃げ面4が当接するインサート取付座16の工具外周側を向く壁面16Bが軸線Oに平行に延設され、かつこのインサート本体2が先細りとなるテーパ角が上記加工テーパ角θの1/2であることから、この工具外周側に突出した切刃5は工具本体11の後端側から先端側に向かうに従い漸次上記軸線Oに近づくように傾斜させられて、その軸線O回りの回転軌跡がなす円錐面のテーパ角は、この加工テーパ角θと等しくなるように設定される。
さらに、刃部13の外周面には、本実施形態ではチップポケット14から軸線O回りに90°ずつ等間隔に、この外周面に開口する断面「コ」字状の複数の凹溝13Aが、刃部13の先端面から後端側に向けて、該外周面がなす円錐台の母線に沿って延びるように一定の溝深さで形成されている。そして、これらの凹溝13Aには、インサート本体2と同じ超硬合金等の硬質材料よりなるガイドパッド18がそれぞれ嵌め入れられた上で、ろう付け等により接合されて固定されている。こうして固定されたガイドパッド18は、その工具本体11の外周側を向く面が刃部13の外周面から突出し、その軸線O回りの回転軌跡が、切刃5の上記回転軌跡がなす円錐面より極僅かに後退して該軸線Oを中心とした加工テーパ角θと等しいテーパ角で先端側に向かうに従い縮径する円錐面状をなすようにされている。
このように構成された第1の実施形態のテーパ加工用インサート1およびインサート着脱式テーパ加工用工具では、まずテーパ加工用インサート1のインサート本体2において、互い違いのすくい面3と逃げ面4とが交差する一対の交差稜線部に切刃5が形成されており、このインサート本体2が中心線C回りに表裏反転対称とされているので、こうして表裏反転させてインサート本体2を取り付け直すことにより、これら一対の切刃5を順次使用することができる。従って、1つのインサート本体2で2回の切刃5の使用が可能となって、超硬合金等の硬質材料にからなるインサート本体2を有効利用することができ、その寿命の延長を図って経済的なテーパ加工用インサート1を提供することができる。
そして、さらにこのインサート本体2は、その長手方向一端側から他端側に向けて先細りとなるように形成されており、このようなテーパ加工用インサート1が上記他端側を工具本体11の先端側に向けて取り付けられているので、インサート着脱式テーパ加工用工具の工具本体11外周側に突出する切刃(一の切刃)5が工具本体11先端側に向かうに従い軸線Oに近づくように傾斜させられていても、この切刃5とは反対側に位置する切刃5や該切刃5に連なる逃げ面(上記他方の逃げ面)4の軸線Oに対する傾斜は緩やかにすることができる。
特に本実施形態では、このインサート本体2が先細りになるテーパ角が、当該インサート着脱式テーパ加工用工具による加工テーパ角θの1/2とされていて、このインサート本体2が着座させられるインサート取付座16の上記壁面16Bや、該インサート取付座16が形成されたサポータ15を取り付けるための凹部14Bを、軸線Oに平行に延びるように形成することができる。従って、このようなインサート取付座16や凹部14Bを形成するために工具本体11の刃部13の特に先端部が大きく切り欠かれるのを防ぐことができるので、上記構成のテーパ加工用インサート1およびインサート着脱式テーパ加工用工具によれば、かかる部分で工具本体11の強度が損なわれて損傷を生じ易くなったり、あるいはインサート本体2の取付剛性が損なわれて加工精度が劣化したりするような事態を防止することができる。
また、本実施形態では凹部14Bやインサート取付座16が1つであって、このインサート取付座16に取り付けられるテーパ加工用インサート1も1つであり、すなわちテーパ加工に使用される切刃5が1刃のインサート着脱式テーパ加工用工具とされているが、こうして刃部3の先端部が切り欠かれる部分が小さくて済むため、例えば一対のチップポケット14や凹部14Bを軸線Oに関して対称に形成してそれぞれにサポータ15およびテーパ加工用インサート1を取り付けることにより、複数の切刃5を刃部13に備えることも可能となる。勿論、この場合にこれら複数の切刃5は、その軸線O回りの回転軌跡が互いに共通した軸線Oを中心とする一の円錐面上に位置させられる。
一方、この本実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具はテーパリーマであって、その刃部3の外周面にガイドパッド18が固定されており、リーマ加工時にはこれらのガイドパッド18の外周面が切刃5によって加工されたテーパ孔の内周面に摺接することで工具本体11の特に刃部13が軸線Oに沿って真っ直ぐに案内されるようになされている。ただし、このようにガイドパッド18によって工具本体11を案内する場合には、このガイドパッド18の外周面が軸線O回りの回転軌跡においてなす円錐面と、工具本体11の外周側に突出させられた切刃5の回転軌跡がなす円錐面とのクリアランスが重要となり、このクリアランスが大きすぎるとガイドパッド18による案内性が得られない一方、クリアランスが小さすぎると工具本体11の送りに伴いガイドパッド18が切刃5によって切削されていない下孔の内周面に摺接して却って案内性を損なうことにもなる。
しかるに、これに対して上記構成のテーパ加工用インサート1では、インサート本体2が先細り形状とされていて、工具本体11の外周側に突出させられる切刃5と、この切刃5とは反対側の切刃5に連なってインサート取付座16の上記壁面16Bに当接させられる逃げ面4とが、工具本体11の先端側に向けられるインサート本体2の他端側に向けて加工テーパ角θの1/2のテーパ角で接近するようにされているので、こうして逃げ面4を壁面16Bに当接させたままインサート本体2を軸線O方向に進退させることにより、加工テーパ角θを維持したまま外周側に突出した切刃5の回転軌跡の軸線O方向の位置を調整して、ガイドパッド18の外周面の回転軌跡がなす円錐面とのクリアランスを制御することができる。
従って、上記第1の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具においては、例えばインサート取付座16の工具先端側を向く上記壁面16Cと、この壁面16Cに当接させられるインサート本体2の長手方向一端側を向く端面6の上記傾斜面6Bとの間にスペーサを介装したりしてインサート本体2の軸線O方向の位置を調整することにより、上記加工テーパ角θに誤差を生じたりすることなく、切刃5とガイドパッド18との回転軌跡のクリアランスを適正な大きさに容易に設定することが可能となる。
ただし、このようなスペーサによる切刃5の位置の調整は、スペーサの厚さごとの不連続なものとなるため、上記クリアランスを極微妙に調整することは困難である。そこで、このようなクリアランスの微調整を可能とするには、図7ないし図9に示す本発明の第2の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具や、図10および図11に示す本発明の第3の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具のように、その工具本体11に、テーパ加工用インサートのインサート本体2を上記軸線O方向に移動させることにより上記一の切刃5の位置を調整する切刃位置調整機構21を備えるのが望ましい。
なお、これら第2、第3の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。また、図12ないし図14に示すのは、これら第2、第3の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具に取り付けられる本発明の第2の実施形態の第2の実施形態のテーパ加工用インサート31であり、やはり第1の実施形態のテーパ加工用インサート1と共通する部分には同一の符号を配してある。すなわち、この第2の実施形態のテーパ加工用インサート31では、切刃5に沿ってすくい面3にブレーカ溝32が形成されるとともに、インサート本体2の上記長手方向一端側を端面6の全体が中心線Cに垂直な平坦面とされている点で第1の実施形態と異なっている。
このような第2の実施形態のテーパ加工用インサート31が取り付けられる第2、第3の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具では、工具本体11にサポータ15が取り付けられておらず、従ってチップポケット14に凹部14Bが形成されてもおらず、このチップポケット14の工具回転方向T側を向く壁面に第1の実施形態と同様のインサート取付座16が直接形成されて、上記第2の実施形態のテーパ加工用インサート31が取り付けられている。また、このインサート取付座16も、その工具先端側を向く壁面16Cにはインサート本体2の上記端面6は当接されておらず、これに代えて上記切刃位置調整機構21が設けられている。なお、これら第2、第3の実施形態のシャンク部12はストレートタイプとされ、またガイドパッド18は周方向に不等間隔に固定されている。さらに、図7および図10ではクランプ駒17は図示が略されている。
この切刃位置調整機構21は、図9および図11に示すようにインサート取付座16の上記壁面16Cに形成された調整ネジ孔21Aに螺着させられた調整ネジ21Bを備えたものであって、調整ネジ孔21Aは、工具本体11の外周側に突出した上記一の切刃5とは反対の切刃5に連なるインサート本体2の逃げ面4がインサート取付座16の壁面16Bに当接した状態で、このインサート本体2の中心線Cに略沿うように、上記壁面16Cから刃部13のシャンク部12に対して一段拡径する後端面に貫通するように形成されている。ここで、第2の実施形態は上記壁面16Bが第1の実施形態と同様に工具本体11の軸線Oに平行に延びるように形成されているのに対し、第3の実施形態ではこの壁面16Bが軸線O方向先端側に向かうに従い漸次該軸線Oに近づくように傾斜させられており、従ってインサート本体2のテーパ角が同じなら、上記加工テーパ角θが第1、第2の実施形態の加工テーパ角θより大きくなるようにされている。なお、これら第2、第3の実施形態では、壁面16Cはこの調整ネジ孔21Aの中心線に垂直な平面状とされている。
また、調整ネジ21Bは頭部を有さない外周全長に雄ネジ部が形成されたものであって、刃部13の後端面側に望むその後端面にはレンチ等の作業用工具に係合する図示されない係合孔が形成されている。このような調整ネジ21Bは、調整ネジ孔21Aにねじ込まれてインサート取付座16の上記壁面16Cから突出し、上述のように逃げ面4を壁面16Bに当接させたインサート本体2の端面6略中央部にその先端部が当接させられ、さらに上記係合孔に作業用工具が係合させられてねじ込まれることにより、クランプ駒10によってクランプされたインサート本体2を、逃げ面4が壁面16Bに当接した状態のまま工具本体11の軸線O方向先端側に押し出して移動させ、外周側に突出した上記切刃5の位置を調整する。
従って、このように構成された切刃位置調整機構21を有する第2、第3の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具では、この調整ネジ21Bの回転によりインサート本体2を連続的に軸線O方向に移動させることができ、しかもその回転に対する移動量も調整ネジ孔21Aおよび調整ネジ21Bのネジピッチに合わせて、より小さく設定することができる。このため、第1の実施形態のようにスペーサを介装するだけでは困難となるガイドパッド18と切刃5とのクリアランスの微妙な調整を、精度良く、しかも効率的に行うことができる。また、特に上記壁面16Bが上述のように傾斜させられた第3の実施形態では、これに合わせて調整ネジ孔21Aも軸線Oに対して大きく傾斜させられるので、調整ネジ21Bの回転量に対するインサート本体2の軸線O方向への移動量を小さくすることができ、一層微妙なクリアランスの調整を可能とすることができる。
なお、これら第1ないし第3の実施形態のインサート着脱式テーパ加工用工具は、いずれもテーパリーマに本発明を適用したものであるが、テーパエンドミルに本発明を適用することも可能である。この場合において、上記切刃位置調整機構21は、例えば工具本体11に複数のテーパ加工用インサート1,31を取り付けたときに互いN工具外周側に突出する切刃5の回転軌跡を一致させるための、いわゆる振れ調整に利用することが可能となる。
1,31 テーパ加工用インサート
2 インサート本体
3 すくい面
4 逃げ面
5 切刃
11 工具本体
13 刃部
15 サポータ
16 インサート取付座
16B 工具本体11の外周側を向くインサート取付座16の壁面
18 ガイドパッド
21 切刃位置調整機構
21B 調整ネジ
C インサート本体2の中心線
O 工具本体11の軸線
T 工具本体11の回転方向
θ 加工テーパ角
2 インサート本体
3 すくい面
4 逃げ面
5 切刃
11 工具本体
13 刃部
15 サポータ
16 インサート取付座
16B 工具本体11の外周側を向くインサート取付座16の壁面
18 ガイドパッド
21 切刃位置調整機構
21B 調整ネジ
C インサート本体2の中心線
O 工具本体11の軸線
T 工具本体11の回転方向
θ 加工テーパ角
Claims (5)
- 略長方形平板状をなして長手方向に延びる中心線回りに表裏反転対称とされたインサート本体の表裏一対の長方形面がすくい面とされるとともに、上記インサート本体の長手方向に延びる一対の側面が逃げ面とされ、上記インサート本体は、上記すくい面が上記長手方向の一端側から他端側に向かうに従い漸次幅狭となるように先細り状に形成されていて、これら各一対のすくい面と逃げ面との交差稜線部のうち、それぞれ互い違いのすくい面と逃げ面とが交差する一対の交差稜線部に切刃が形成されていることを特徴とするテーパ加工用インサート。
- 上記インサート本体が上記長手方向の一端側から他端側に向けて先細りとなるテーパ角が、インサート着脱式テーパ加工用工具の加工テーパ角の1/2とされていることを特徴とする請求項1に記載のテーパ加工用インサート。
- 軸線回りに回転される工具本体の外周に形成されたインサート取付座に、請求項1または請求項2に記載のテーパ加工用インサートが、上記長手方向の一端側を上記工具本体の先端側に向けるとともに、一の上記切刃を上記工具本体の外周側に突出させ、かつ該工具本体の後端側から先端側に向かうに従い漸次上記軸線に近づくように傾斜させて着脱可能に取り付けられており、この一の切刃の上記軸線回りの回転軌跡がなす円錐のテーパ角を加工テーパ角として被削材にテーパ加工を施すことを特徴とするインサート着脱式テーパ加工用工具。
- 上記インサート取付座には、上記工具本体の外周側を向いて上記インサート本体の上記一の切刃に連なる逃げ面とは反対側の逃げ面が当接させられる取付座壁面が、上記軸線に平行に延びるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインサート着脱式テーパ加工用工具。
- 上記工具本体には、上記インサート本体を上記軸線方向に移動させることにより上記一の切刃の位置を調整する切刃位置調整機構が備えられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインサート着脱式テーパ加工用工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007101940A JP2008254154A (ja) | 2007-04-09 | 2007-04-09 | テーパ加工用インサートおよびインサート着脱式テーパ加工用工具 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008254154A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102728894A (zh) * | 2011-04-04 | 2012-10-17 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 控制表面粗糙度的切削工具 |
CN117773207A (zh) * | 2024-02-27 | 2024-03-29 | 常州市卓玛工具有限公司 | 一种数控机床用硬质合金整体阶梯式锥度立铣刀盘 |
Citations (3)
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-
2007
- 2007-04-09 JP JP2007101940A patent/JP2008254154A/ja active Pending
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