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JP2008117785A - リチウム二次電池用負極およびその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極およびその製造方法 Download PDF

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JP2008117785A JP2007312760A JP2007312760A JP2008117785A JP 2008117785 A JP2008117785 A JP 2008117785A JP 2007312760 A JP2007312760 A JP 2007312760A JP 2007312760 A JP2007312760 A JP 2007312760A JP 2008117785 A JP2008117785 A JP 2008117785A
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Yasutaka Furuyui
康隆 古結
Masaya Ugaji
正弥 宇賀治
Keiichi Takahashi
慶一 高橋
Tatsuji Mino
辰治 美濃
Nobuaki Nagao
宣明 長尾
Satoshi Shibuya
聡 澁谷
Kazuyoshi Honda
和義 本田
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Abstract

【課題】充放電サイクル特性に優れた高容量なリチウム二次電池用負極を提供する。
【解決手段】シート状の集電体と、前記集電体に担持された活物質層とを具備し、前記活物質層は、複数の柱状粒子を含み、前記柱状粒子は、ケイ素元素を含み、前記柱状粒子が、前記集電体の法線方向に対して傾斜しており、前記活物質層の空隙率Pが、10%≦P≦70%である、リチウム二次電池用負極。
【選択図】図1

Description

本発明は、集電体と、集電体に担持された活物質層とを具備し、活物質層が、柱状に成長した粒子を含み、柱状粒子がケイ素を構成元素として含むリチウム二次電池用負極に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が増大している。上記のような用途に用いられる電池には、常温使用が求められると同時に、高いエネルギー密度と優れたサイクル特性が要望される。
この要求に対し、正極および負極のそれぞれにおいて、新たに高容量の活物質が開発されており、中でも非常に高い容量が得られるケイ素(Si)もしくは錫(Sn)の単体、酸化物または合金は、負極活物質として有望視されている。
ケイ素を負極活物質として用いる際に問題となるのは、負極の変形である。充放電時には、リチウム(Li)が挿入および脱離することで、負極活物質が大きく膨張および収縮し、負極が大きく歪み、うねりが生じる。そのため、負極とセパレータとの間に空間が生じ、充放電反応が不均一になり、サイクル特性が低下することが懸念される。
このような問題に対し、負極に活物質の膨張による応力を緩和するための空間を設けることで、歪み、うねりを抑制し、サイクル特性の劣化を抑える提案がなされている。例えば特許文献1は、集電体上に、ケイ素の柱状粒子を形成することを提案している。また、特許文献2は、集電体上に、リチウムと合金を形成する活物質を規則的に配列させるパターン成形を行うことを提案している。特許文献3は、柱状の結晶粒の長軸方向を、負極の主面に垂直な面に対して傾斜させることを提案している。
特開2003−303586号公報 特開2004−127561号公報 特開2005−196970号公報
特許文献1、2は、いずれもシート状の集電体の法線方向に直立した柱状構造に負極活物質を形成するものである。そのため、正極活物質の多くは、負極活物質と対向せず、負極集電体の露出部に対向する。よって、充電時に正極活物質から供給されるリチウムは、負極活物質に吸蔵されずに、負極集電体の露出部に析出しやすくなる。その結果、放電時には、リチウムが負極から効率良く放出されず、充放電効率は低下する。
また、放電時には、負極活物質に対向している正極活物質のみが反応しやすいため、実質的な放電容量が低下すると同時に、正極活物質の一部が過放電状態になる可能性もある。充放電サイクルの繰り返しにより、不均一反応が進むと、放電できなかった正極活物質は、過充電状態になりやすく、過放電状態の正極活物質も増加する。そのため、副反応の割合が増加し、放電容量が低下し、電池の劣化が進行する。特に、大きな電流値でハイレートの充放電を行うと、サイクル特性が著しく低下する。
本発明は、シート状の集電体と、集電体に担持された活物質層とを具備し、活物質層は、複数の柱状粒子を含み、柱状粒子は、ケイ素元素を含み、柱状粒子が、集電体の法線方向に対して傾斜している、リチウム二次電池用負極に関する。
本発明は、また、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、上記の負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解質とを含むリチウム二次電池に関する。
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θは、10°≦θ≦80°であることが望ましい。なお、柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θは、例えば少なくとも10個の柱状粒子についての測定値の平均値として求めることが望ましい。
ここで、集電体の法線方向とは、集電体の主要平坦面(単に表面とも言う)に対して垂直な方向であり、柱状粒子が集電体の法線方向と成す角とは、柱状粒子の成長方向が集電体の法線方向と成す角をいう。なお、集電体の主要平坦面は、目視によれば平坦であるが、微視的に見れば凹凸を有することが好ましい。柱状粒子の成長方向は、例えば柱状粒子を蒸着もしくはスパッタリング法により成長させる場合には、集電体の蒸着面が水平面に対してなす傾斜角度により決定される。その際、蒸着ソースもしくはターゲットは、例えば集電体に対して鉛直下方に設置される。
柱状粒子は、厳密な円柱状もしくは角柱状の粒子である必要はない。柱状粒子の形状は、特に限定されず、略柱状であればよい。異なる形状の柱状粒子が混在していてもよい。柱状粒子は、その長さ方向において直径(太さ)が変化してもよい。柱状粒子の一端(円柱の1つの底面に相当する端部)は、集電体の表面と結合している。集電体との接合部から離れるにしたがい、柱状粒子の直径が大きくなってもよい。
集電体の活物質層を担持する部分の面積Aと、活物質層の前記法線方向からの正投影面積Bとの差:A−Bは、面積Aの60%以下であることが望ましく、30%以下であることが更に望ましく、0%であることが特に望ましい。以下、100×{(A−B)/A}で求められる割合S(%)を集電体露出率と称する。集電体露出率Sは、活物質層を集電体の法線方向から観測した場合に、観測可能である集電体の露出面積の大きさを表す。集電体露出率Sが小さいほど、不均一な電極反応が抑制される点で好ましい。
活物質層の柱状粒子と平行な断面において、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離(すなわちピッチ)は、前記互いに隣接する柱状粒子の中心高さにおいて、例えば0.1μm以上200μm以下であることが望ましい。なお、中心高さとは、柱状粒子の高さの半分を言う。
ここで、柱状粒子と平行な断面とは、集電体の法線方向と平行で、かつ、柱状粒子の成長方向と平行に、集電体と活物質層とを同時に切断した断面をいう。また、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離は、得られた断面において、互いに隣接する柱状粒子の組を、例えば少なくとも10組選択し、それら粒子の中心高さにおける中心間距離を求め、その距離の平均値として求められる。断面の観察は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行う。なお、柱状粒子の中心高さにおける中心間距離は、前記断面と集電体の主要平坦面とに平行な方向に測定する。互いに隣接する柱状粒子の高さが異なる場合には、それらの平均高さの半分を中心高さとする。
活物質層の空隙率Pは、10%≦P≦70%であることが望ましい。
空隙率Pは、例えば水銀ポロシメータを用いて測定することができる。水銀ポロシメータを用いた測定においては、水銀が負極の空隙に侵入する。その際、空隙率P(%)は、100×{空隙に侵入した水銀の体積/(活物質層の真体積+空隙に侵入した水銀の体積)}として計算される。活物質層の真体積は、活物質層の重量と柱状粒子の比重から計算することができる。なお、空隙率Pの測定方法は、水銀ポロシメータを用いた測定方法に限られない。例えば、空隙率Pは、一定面積の活物質層の重量と厚みと活物質の密度から計算することもできる。
活物質層は、例えば、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、および、ケイ素と窒素とを含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらは単独で活物質層を構成してもよく、複数種が同時に活物質層を構成してもよい。複数種が同時に活物質層を構成する例として、ケイ素と酸素と窒素を含む化合物を含む活物質層や、ケイ素と酸素とを含み、ケイ素と酸素との比率が異なる複数の化合物の複合物を含む活物質層などが挙げられる。
ケイ素合金に含まれる、ケイ素以外の金属元素Mは、リチウムと合金を形成しない金属元素を含むことが望ましい。金属元素Mは、例えば、チタン、銅およびニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。金属元素Mは、1種が単独でケイ素合金に含まれていてもよく、複数種が同時にケイ素合金に含まれていてもよい。
ケイ素と酸素とを含む化合物は、一般式(1):SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有することが望ましい。また、ケイ素と窒素とを含む化合物は、一般式(2):SiNy(ただし、0<y<4/3)で表される組成を有することが望ましい。
集電体の表面(すなわち主要平坦面)の表面粗さ(十点平均高さ)Rzは、0.1〜100μmであることが望ましい。表面粗さRzは、日本工業規格のJIS B0601−1994に定められた方法で測定することができる。このような集電体としては、例えば電解銅箔、電解銅合金箔、さらに粗化処理を施した電解銅箔、粗化処理を施した圧延銅箔などを好ましく用いることができる。なお、粗化処理とは、銅箔を溶液に浸して化学的に部分エッチングして凹凸をつける処理や、銅箔に銅粒子を電着させて凹凸を付与する処理などを言う。
活物質層の厚みtは、0.1μm≦t≦100μmであることが好ましい。
柱状粒子の直径は、特に限定されないが、充電時の膨張で柱状粒子が割れたり、銅箔から離脱したりすることを防止する観点から、活物質が不可逆容量に相当するリチウムを含む場合と含まない場合のどちらか一方において、直径100μm以下が好ましく、1〜50μmが特に好ましい。なお、柱状粒子の直径は、例えば任意の2〜10個の柱状粒子を選択し、それらの中心高さにおける直径(成長方向に垂直な径)を求め、それらの平均値として求めることができる。
なお、互いに隣接する複数の柱状粒子は、成長途中で合体する場合がある。ただし、個々の柱状粒子は、成長の始点が異なることから、集電体表面付近では分離しており、結晶の成長状態も異なる。よって、合体した個々の柱状粒子間には境界が観察できるため、個々の柱状粒子の直径を求めることは可能である。
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離(ピッチ)、活物質層の厚み、空隙率P、および、柱状粒子の直径を示すパラメータは、いずれも、負極活物質が不可逆容量に相当するリチウムを含む状態もしくはリチウムを全く含まない状態で測定することが望ましい。換言すれば、これらのパラメータは、可逆容量に相当するリチウムを含まない状態(可逆容量が0の状態)の負極を用いて測定することが望ましい。
特に、水銀ポロシメータにより空隙率を測定する場合には、活物質がリチウムを全く含まない状態で空隙率Pを測定することが望ましい。この場合、不可逆容量に相当するリチウムを含む場合と、リチウムを全く含まない場合との体積差を用いて、空隙率Pの値を補正すれば、負極活物質が不可逆容量に相当するリチウムを含む状態における空隙率P'も得ることができる。
本発明は、また、(a)表面粗さRzが2μm以上20μm以下のシート状の集電体を準備し、(b)集電体上に、集電体の法線方向と角φ(20≦φ≦85)を成す方向からケイ素を入射させて堆積(deposit)させ、ケイ素元素を含む活物質層を形成すること、を包含するリチウム二次電池用負極の製造方法に関する。
集電体上に入射させるケイ素は、例えば原子状、ラジカル状、クラスタ状、化合物状など、どのような状態でもよい。
集電体上にケイ素を入射させる工程は、例えば、蒸着法、スパッタリング法および化学気相反応法よりなる群から選ばれる少なくとも1種で行われる。
ケイ素と酸素とを含む化合物(例えば一般式(1):SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有する化合物)を含む活物質層を形成する場合、集電体上には、ケイ素とともに酸素を入射させる。
本発明の製造方法の一態様においては、集電体上にケイ素とともに酸素を入射させる工程は、酸素を含む減圧雰囲気中で、ケイ素を集電体上に入射させる工程である。ここで、酸素は、例えば分子状、原子状、ラジカル状、イオン状など、どのような状態でもよい。
ケイ素と金属元素Mとの合金を含む活物質層を形成する場合、集電体上には、ケイ素とともに金属元素Mを入射させる。例えば、ケイ素と金属元素Mとを所定の原子比で含む蒸着ソースもしくはターゲットを用いて、蒸着法もしくはスパッタリング法で活物質層を形成する。金属元素Mとしては、チタン、銅、ニッケルなどが好ましい。
本発明によれば、負極活物質層を構成する柱状粒子が集電体の法線方向に対して傾斜しているため、正極側から見て、負極集電体の露出部が著しく少なくなる。よって、正極活物質と負極活物質との対向面積が大きくなり、電極反応が均一になり、充放電効率が高まり、サイクル特性が向上する。
また、電池を構成する前に、負極に不可逆容量に相当するリチウムを補填する場合において、負極集電体の露出部が著しく少ないため、集電体上にリチウムが残存することが少なくなる。よって、材料のロスを低減できるとともに、電解液の副反応も抑えられ、長期的に良好な電池特性を維持することが可能となる。なお、不可逆容量に相当するリチウムの補填は、負極にリチウム金属を貼り付けたり、リチウム金属を蒸着したりすることにより行われる。
柱状粒子が集電体の法線方向に対して傾斜している場合、負極活物質と電解液との接触面積が増加するため、ハイレートの充放電にも有利である。
活物質層の空隙率Pが10%以上70%以下である場合、柱状粒子の膨張および収縮による応力を十分に緩和できると考えられ、粒状粒子と接触する電解質も豊富に確保できる。また、十分な負極のエネルギー密度を確保できる。
柱状粒子が非晶質である場合、充放電に伴う膨張および収縮により、柱状粒子に亀裂が生じたり割れたりすることを、防ぐことができる。したがって、充放電サイクルを繰り返す場合に、集電性の確保が容易となり、優れたサイクル特性が得られる。
以下、図面を参照しながら説明するが、本発明は、特許請求の範囲に記載された特徴を有する限り、以下の内容に限定されない。
図1は、本発明の電池の一例である積層型リチウム二次電池の概略断面図である。
電池10は、正極11と、負極12と、これらの間に介在するセパレータ13とからなる極板群を具備する。極板群とリチウムイオン伝導性を有する電解質は、外装ケース14の内部に収容されている。リチウムイオン伝導性を有する電解質は、セパレータ13に含浸されている。正極11は、正極集電体11aと、正極集電体11aに担持された正極活物質層11bからなり、負極12は、負極集電体12aと、負極集電体12aに担持された負極活物質層12bからなる。正極集電体11aおよび負極集電体12aには、それぞれ正極リード15および負極リード16の一端が接続されており、他端は外装ケース14の外部に導出されている。外装ケース14の開口部は、樹脂材料17により封止されている。
正極活物質層11bは、充電時にリチウムを放出し、放電時には、負極活物質層12bが放出したリチウムを吸蔵する。負極活物質層12bは、充電時に、正極活物質が放出したリチウムを吸蔵し、放電時には、リチウムを放出する。
図2は、本発明の負極の一例である負極の構造を概略的に示す縦断面図である。
負極集電体12aは、表面に凹凸を有する。負極活物質層12bは、複数の柱状粒子21からなり、柱状粒子21は、集電体12aの法線方向D1に対して斜めに成長している。集電体12aの法線方向D1は、柱状粒子21の成長方向D2と角θを成している。
角θは、電池の充放電により、徐々に小さくなる傾向がある。よって、角θの評価は、製造直後の負極、製造直後の未使用の電池に含まれる負極、もしくは、10回以下しか充放電が行われていない電池に含まれる負極を用いて行うことが好ましい。
柱状粒子21は、単結晶からなる粒子でもよく、複数の結晶子(結晶粒:crystallite)を含む多結晶粒子でもよく、結晶子サイズが100nm以下の微結晶からなる粒子でもよく、アモルファスでもよい。柱状粒子21は、結晶子サイズが100nm以下の微結晶を含んでもよい。柱状粒子が非晶質であること、もしくは、柱状粒子が結晶子サイズが100nmを超える結晶を含まないことは、X線回折(XRD)透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて確認することができる。例えば、活物質層のXRD測定で得られる回折パターンにおいて、シャープなピークが見られず、ブロードなハローパターンだけが観測される場合、柱状粒子は実質的に非晶質であると判断できる。
互いに隣接する複数の柱状粒子が、成長途中で合体する場合でも、個々の柱状粒子は成長の始点が異なる。よって、柱状粒子の個数は、成長の始点の個数と同じと考えればよい。
図1では、積層型電池の一例を示したが、本発明のリチウム二次電池用負極は、スパイラル型の極板群を有する円筒型電池や角型電池などにも当然適用できる。積層型電池の形態は、全ての正極活物質層が負極活物質層と対向し、かつ、全ての負極活物質層が正極活物質層と対向するように、両面もしくは片面に正極活物質層を有する正極と、両面もしくは片面に負極活物質層を有する負極とを3層以上に積層してもよい。各負極活物質層における柱状粒子の傾斜の方向は、同じであっても異なっていてもよい。更に、同じ負極内に傾斜方向の異なる柱状粒子が形成されていてもよい。両面に負極活物質層を有する負極の場合、両面の柱状粒子の傾斜方向は同じでもよく、異なってもよい。
柱状粒子21を、集電体12aの法線方向D1と角θを成すように傾斜させることにより、正極活物質層11aから見た負極集電体12aの露出部の割合が減少するか、もしくはゼロになるため、充放電効率は上昇し、負極集電体にリチウムが析出する可能性も低減する。すなわち、不均一な電極反応が抑制され、充放電サイクル特性も向上する。特に大電流によるハイレート充放電の場合に見られる急激なサイクル特性の低下は、顕著に抑制される。
柱状粒子21が集電体12aの法線方向D1と成す角θは、0<θであればよいが、本発明の効果を十分に得るためには、例えば10°≦θ≦80°を満たすことが好ましい。θが90°に近くなると、柱状粒子を集電体に担持することが次第に難しくなる。また、各柱状粒子が他の柱状粒子で遮蔽される部分が多くなりすぎると、ハイレート特性の劣化を抑制する効果が小さくなる場合がある。よって、10°≦θ≦80°であることがより望ましい。
次に、柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θを評価する方法の一例について、図3を参照しながら説明する。
まず、集電体の法線方向と平行で、かつ、柱状粒子の成長方向と平行に、活物質層を切断し、断面をSEM、TEMなどで観察する。あるいは、集電体の法線方向と平行に、かつ、後述の中心線が最長となるように、活物質層を切断し、断面(この断面は、集電体の法線方向と平行で、かつ、柱状粒子の成長方向と平行な断面と同義)を観察する。
柱状粒子304における集電体302の表面から最も遠い(図3における距離hが最も大きい)点Dを決定する。次に、集電体302の表面上における柱状粒子304の両端の点、E1およびE2を決定する。点E1から集電体302の表面に垂直に直線F1を引き、点E2から集電体302の表面に垂直に直線F2を引く。ここで、点E1と点Dとを結ぶ直線と直線F1とが成す角をθ1とし、点E2と点Dとを結ぶ直線と直線F2とが成す角をθ2とする。このとき、角θは、(θ1+θ2)/2で与えられる。
集電体302の表面における点E1と点E2との中点Eと、点Dとを結ぶ直線Cを柱状粒子304の成長方向とすることができる。このため、角θは、中点Eから集電体302の表面に垂直に直線Fを引き、中点Eと点Dとを結ぶ直線と直線Fとが成す角としてもよい。少なくとも10個の柱状粒子304に対する測定を行い、その平均値を角度θとすればよい。
柱状粒子の成長とともに角θが変化してもよい。すなわち、柱状粒子は図4に示すように湾曲していてもよい。湾曲の程度は、特に限定されない。例えば、柱状粒子404における集電体402から最も遠い点までの距離をhとし、柱状粒子404における中心線の平均半径をRとした場合、Rが、例えば、式0.5h≦R≦30hを満たすように湾曲していればよい。例えば、Rが式1h≦R≦10h、もしくは、Rが式2h≦R≦5hを満たすように湾曲していればよい。角θは、段階的に変化しても、連続的に変化してもよく、θが任意に増減してもよい。
ここで、柱状粒子404における中心線は、例えば、以下のように決定すればよい。
図4において点E1から点E2までの柱状粒子404の輪郭に沿う曲線(図4における点Eを通らない曲線)の中点を点E'とする。次に、点E'から点E1まで柱状粒子の輪郭に沿う曲線、および、点E'から点E2までの柱状粒子の輪郭に沿う曲線上において、それぞれ点E'から等距離にある点を求め、それらの中点を決定する。このときの中点の軌跡を中心線とすることができる。
中心線の平均半径Rは、例えば、以下のように決定すればよい。
点E'において、中心線と垂直に交わる直線を引き、その直線が集電体402の表面と交わる点E''を求める。点E''と点E'との距離(E''−E')と、点E''と点Eとの距離(E―E'')との平均を、平均半径Rとすればよい。
なお、集電体302の表面の凹凸が大きい場合、柱状粒子304と集電体302の法線方向D1とのなす角度θは以下のようにして求められる。まず、日本工業規格(JIS B 0601−1994)にある平均線を集電体の表面とする。次に柱状粒子304の輪郭に沿う曲線に対して、上記の手順により中心線を求める。そして柱状粒子304の中心高さで、中心線に対して垂直な線を引き、柱状粒子の輪郭に沿う曲線との交点を求める。最後に、得られた交点において、柱状粒子の輪郭に沿う曲線の接線をそれぞれ求める。これらの接線を、集電体302の方向へ延長し、平均線と交わる点をそれぞれE1とE2とする。これ以降の手順は上記と同じである。
図5は、本発明のリチウム二次電池用負極の上面の拡大模式図である。図5では、集電体の活物質層を担持する部分の面積Aは、斜線領域と白抜き領域との合計面積に対応する。一方、集電体の法線方向からの活物質層の正投影面積Bは、斜線領域の面積に対応する。実際に面積AおよびBを求める場合は、負極の上面をSEMなどの顕微鏡で拡大して観察する。その際、視野全体の面積が面積Aに対応し、視野全体のうち活物質で遮蔽されている部分の面積が面積Bに対応する。面積Bは画像処理などで求めることができる。
100×{(A−B)/A}で求められる集電体露出率Sは、60%以下であることが望ましく、30%以下であることが更に望ましく、0%であることが最も望ましい。活物質層の集電体の法線方向からの正投影面積が大きいほど、正極活物質層と対向する負極活物質が多くなり、正極に対して露出する負極集電体の面積は小さくなる。なお、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離wが大きくなると、活物質層の正投影面積は小さくなるが、柱状粒子が集電体の法線方向に平行に直立する場合に比べれば、正投影面積は相対的に大きくなるため、充放電効率も相対的に高くなる。
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離wは、それらの柱状粒子の中心高さにおいて、例えば0.1μm以上200μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることが更に好ましい。柱状粒子の直径dにもよるが、中心間距離wが0.1μm以上であれば、柱状粒子の膨張を緩和する効果が得られ、サイクル特性の低下を抑制できると考えられる。また、中心間距離wが200μm以下であれば、ある程度のエネルギー密度を確保できるとともに、正極活物質に対する負極集電体の露出部も制限できる。
電解質と活物質との接触面積を多く確保するとともに、活物質の膨張による応力を緩和する観点から、活物質層は、所定の空隙率を有することが望まれる。活物質層の空隙率Pは、例えば、水銀ポロシメータを用いる方法、一定面積の活物質層の重量と厚みと活物質の密度から計算する方法などで測定することができる。
空隙率の測定に用いる負極試料には、一様(均一)に活物質層を担持している集電体部分だけを切り出した試料を用いる。その際、両面に活物質層を担持した集電体部分を試料に用いてもよく、片面に活物質層を担持した集電体部分を試料に用いてもよい。
例えば、試料における一定面積Sの活物質層の厚みをT、重量をW、活物質の密度をDとすると、空隙率Pは、P(%)=100〔{ST−(W/D)}/ST〕より求められる。
また、水銀ポロシメータを用いた測定では、試料の空隙に侵入した水銀の体積をVH、活物質層の真体積をVTとすると、空隙率Pは、P(%)=100{VH/(VT+VH)}より求められる。なお、試料の集電体部分が表面に凹凸を有する場合には、集電体部分の凹凸に侵入した水銀の体積もVHに含めて空隙率を計算する。
負極の空隙率Pは、活物質がリチウムを全く含まない場合においては、10%≦P≦70%であることが望ましく、30%≦P≦60%もしくは30%≦P≦55%であることが更に望ましい。空隙率Pが10%以上であれば、柱状粒子の膨張および収縮による応力を緩和するのに十分と考えられ、粒状粒子と接触する電解質も豊富に確保できる。なお、空隙率Pが70%を超えると、電池の用途によっては問題なく負極として用いることができるが、負極のエネルギー密度は小さくなる。
なお、活物質が不可逆容量分のリチウムを含む場合においては、負極の空隙率P'は、5%≦P'≦60%であることが望ましく、20%≦P'≦55%、20%≦P'≦50%もしくは30≦P'≦50%であることが更に望ましい。
活物質層の厚みtは、柱状粒子の直径にもよるが、活物質が不可逆容量に相当するリチウムを含む場合と含まない場合のどちらか一方において、例えば0.1μm≦t≦100μmであることが好ましく、1μm≦t≦50μmであることが特に好ましい。活物質層の厚みtが0.1μm以上であれば、ある程度のエネルギー密度を確保でき、リチウム二次電池の高容量特性を十分に活かすことができる。また、活物質層の厚みtが100μm以下であれば、各柱状粒子が他の柱状粒子で遮蔽される割合を低く抑えることができるとともに、柱状粒子からの集電抵抗も低く抑制できるため、ハイレートでの充放電に有利である。
ここで、活物質層の厚みtは、集電体の法線方向における柱状粒子の高さの平均値として求められる。活物質層の厚みtは、集電体と活物質層とを同時に、集電体の表面に対して垂直に切断した任意の断面において、例えば少なくとも10個の柱状粒子を選択し、集電体の法線方向におけるそれらの高さの平均値として求めればよい。断面の観察は、例えばSEMで行う。あるいは、活物質層の厚みは、負極の断面において観測される、集電体の表面および活物質層の表面に相当する平均線を用いて求めることができる。すなわち、活物質層の厚みは、集電体の表面を示す平均線から活物質層の表面を示す平均線までの距離である。
ここで、「平均線」は、表面粗さRaを定義するJIS規格でも用いられている用語であり、粗さ曲線の平均値から求めた直線を意味する。具体的には、負極を樹脂埋めし、集電体の表面に対して垂直な断面が得られるように、樹脂埋めされた負極を研磨する。研磨された断面をSEMで観察し、集電体の表面および活物質層の表面を示す平均線を求める。
ただし、簡易的には、一般的な厚み測定装置を用いて、集電体の厚みを計測し、活物質層を形成した後の集電体(負極)の厚みを計測し、これらの差を求めれば、活物質層の厚みを算出することができる。この場合の算出結果は、平均線を用いて厳密に測定した厚みとほぼ一致することが、実験上明らかとなっている。
なお、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離w、活物質層の厚みt、空隙率P、および、柱状粒子の直径dを示すパラメータは、いずれも、負極活物質が不可逆容量に相当するリチウムを含む状態で測定するか、もしくは不可逆容量に相当するリチウムを含まない状態で測定することが望ましい。換言すれば、これらのパラメータは、可逆容量に相当するリチウムを含まない状態(可逆容量が0の状態)の負極を用いて測定することが望ましい。この状態は、完成した電池内における負極活物質層の体積が最小の状態に相当する。充電により、リチウムが柱状粒子に吸蔵されると、柱状粒子は膨張し、負極活物質層の体積は増加する。
不可逆容量に相当するリチウムを含む場合と含まない場合のどちらか一方でパラメータの値が求まれば、その値を補正することにより、他方の場合の値も得ることができる。例えば水銀ポロシメータを用いて、リチウムを全く含まない場合の活物質層の空隙率Pを測定する場合には、不可逆容量に相当するリチウムを含む場合の活物質層の体積と、リチウムを全く含まない場合の活物質層の体積との体積差ΔVを用いて、空隙率Pの値を補正する。この場合、不可逆容量に相当するリチウムを含む場合の空隙率P'は、P'=P−ΔVとなる。
負極集電体の構成材料は、特に限定されないが、一般に、銅、銅合金などが用いられる。シート状の負極集電体は、電解法により作製することが好ましい。負極集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば1〜50μmが一般的である。
負極集電体は、活物質層を担持する表面に、凹凸を有することが望ましい。具体的には、集電体の表面粗さRzは、0.1〜100μmであることが望ましく、1μm以上30μm以下がより望ましく、2μm以上20μm以下が特に望ましい。
表面粗さRzが小さくなると、互いに隣接する柱状粒子間に間隔を設けることが困難になる場合がある。表面粗さRzが大きくなるにつれて、集電体の平均厚みも厚くなるが、Rzが100μm以下であれば、リチウム二次電池の高容量特性を十分に活かすことができる。
負極集電体の活物質層を担持する表面は、単位面積あたり、10万〜1000万個/cm2の凸部を有することが望ましい。単位面積あたりの凸部の数が多いほど、単位面積あたりに担持させる柱状粒子の数を多くするのに有利であるが、負極の空隙率Pが小さくなる傾向がある。単位面積あたりの凸部の数が少ないほど、単位面積あたりに担持させる柱状粒子の数を少なくするのに有利である。よって、所望の負極の空隙率Pに応じて、集電体の単位面積あたりの凸部の数を制御することが望ましい。
柱状粒子は、ケイ素元素を含んでおり、例えば、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、および、ケイ素と窒素とを含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらは単独で活物質層を構成してもよく、複数種が同時に活物質層を構成してもよい。なお、ケイ素と窒素とを含む化合物は、更に酸素を含んでもよい。複数種が同時に活物質層を構成する例として、ケイ素と酸素と窒素を含む化合物を含む活物質層や、ケイ素と酸素とを含み、ケイ素と酸素との比率が異なる複数の化合物の複合物を含む活物質層などが挙げられる。
ケイ素合金に含まれる、ケイ素以外の金属元素Mは、リチウムと合金を形成しない金属元素であることが望ましい。金属元素Mは、化学安定な電子伝導体であればよいが、例えば、チタン(Ti)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。金属元素Mは、1種が単独でケイ素合金に含まれていてもよく、複数種が同時にケイ素合金に含まれていてもよい。ケイ素合金におけるケイ素と金属元素Mのモル比は、下記範囲が好ましい。
金属元素MがTiの場合、0<Ti/Si<2が好ましく、0.1≦Ti/Si≦1.0が特に好ましい。
金属元素MがCuの場合、0<Cu/Si<4が好ましく、0.1≦Cu/Si≦2.0が特に好ましい。
金属元素MがNiの場合、0<Ni/Si<2が好ましく、0.1≦Ni/Si≦1.0が特に好ましい。
ケイ素と酸素とを含む化合物は、一般式(1):SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有することが望ましい。ここで、酸素元素の含有量を示すx値は、0.01≦x≦1、0.1≦x≦0.9、0.2≦x≦0.8、もしくは0.2≦x≦0.7であることが更に好ましい。空隙率PおよびP'の最適範囲は、x値の範囲に依存する。x値が小さくなると、空隙率PおよびP'の最適範囲は大きくなる傾向がある。x=0の場合と0<xの場合とでは、空隙率PおよびP'の最適範囲は大きく異なると考えられる。
ケイ素と窒素とを含む化合物は、一般式(2):SiNy(ただし、0<y<4/3)で表される組成を有することが望ましい。ここで、窒素元素の含有量を示すy値は、0.01≦x≦1であることが更に好ましい。
本発明は、負極の構成に特徴を有することから、リチウム二次電池においては、負極以外の構成要素は特に限定されない。例えば、正極活物質層には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)などのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができるが、これに限定されない。また、正極活物質層は、正極活物質のみで構成してもよいし、正極活物質と結着剤と導電剤を含む合剤で構成してもよい。また、正極活物質層を負極活物質層と同様に、柱状粒子で構成してもよい。なお、正極集電体には、Al、Al合金、Ni、Tiなどを用いることができる。
リチウムイオン伝導性の電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質や非水電解液が用いられる。非水電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解したものが好ましく用いられる。非水電解液の組成は特に限定されない。
セパレータや外装ケースも特に限定されず、様々な形態のリチウム二次電池に用いられている材料を特に限定なく用いることができる。
次に、本発明の非水電解質二次電池用負極の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、(a)表面粗さRzが2μm以上20μm以下の集電体を準備し、(b)集電体上に、集電体の法線方向と角φ(20≦φ≦85)を成す方向からケイ素を入射させて堆積させ、ケイ素元素を含む活物質層を形成する、ことを含む。
なお、平面上に粒子を入射することによって、柱状粒子を含む薄膜を平面上に形成する場合、タンジェントルールが成立する。すなわち、式:2tanθ=tanφで示される関係が成立する。ここで、θは平面に垂直な面と柱状粒子の成長方向とが成す角度であり、φは平面に垂直な面と粒子の入射方向とが成す角度である。
適切な空隙率を確保する観点から、角度φが小さい場合ほど、集電体の表面粗さRzを大きくすることが望ましく、角度φが大きい場合には、Rzは小さくてもよい。
例えば、シート状の集電体上に、集電体の法線方向と角φを成す方向から、少なくともケイ素を入射させる。これにより、集電体の法線方向に対して傾斜する方向に、ケイ素元素を含む複数の柱状粒子を成長させることができる。集電体上にケイ素を入射させる方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、化学気相反応法(CVD)などが挙げられる。スパッタリング法では、活物質の原料であるターゲットを、グロー放電などを用いて気化させて、集電体上に堆積させる。蒸着法では、ターゲットの代わりに、蒸着ソースなどを用いる。集電体とターゲットや蒸着ソースとの間にマスクなどを配置することにより、柱状粒子を成長させる集電体の領域を画定することができる。
これらの方法における具体的な条件は、活物質の種類や柱状粒子の状態により相違する。例えば、柱状粒子の結晶性により条件は相違する。柱状粒子を非晶質にするためには、集電体の支持体(図6の固定台に相当)の温度上昇を抑制する必要がある。例えば集電体の支持体を水冷などで冷却することが有効である。活物質がケイ素のみ、ケイ素と微量の酸素(10モル%以下)を含む化合物、または、ケイ素と微量の金属(1モル%以下)との合金を含む場合、柱状粒子は結晶化しやすい傾向がある。従って、ケイ素以外の元素の比率を高めることで、非晶質化を促進することが可能である。
必要に応じて、柱状粒子の成長を促進するために、集電体を加熱したり、集電体に堆積させる原子をイオン化もしくはプラズマ化したりしてもよい。集電体の好適温度は、活物質の組成に依存する。活物質がケイ素のみである場合、集電体の温度は500℃以下が好まし。活物質がケイ素以外の元素を含む場合、集電体の温度は600℃以下が好ましい。集電体の温度が600℃を超えると、集電体が破損する場合がある。
柱状粒子としてケイ素と酸素とを含む化合物を成長させる場合、集電体上には、ケイ素とともに酸素を堆積させる必要がある。この場合、例えば、酸素を含む減圧雰囲気中で、ケイ素を集電体上に配置すればよい。減圧雰囲気の圧力は、例えば1×10-3〜2×10-2Paが好適である。酸素の分圧は、活物質の酸素含有量に応じて制御する必要があるが、例えば1×10-3〜5×10-2Paの範囲である。ただし、装置や条件によって最適値は異なる。
長尺のシート状の集電体を、巻出しロールから巻き出し、マスクを介してターゲットもしくは蒸着ソース上を通過させ、巻き取りロールで巻き取ることにより、連続的に活物質層を形成することが好ましい。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、実施例1、3では、空隙率を厳密に測定する必要があるため、有効数字2桁で空隙率を求めた。それ以外の実施例および比較例では、有効数字1桁で空隙率を求めた。
図1に示すような積層型のリチウム二次電池を作製した。
(i)正極の作製
正極活物質である平均粒径約10μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末10gと、導電剤であるアセチレンブラック0.3gと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン粉末0.8gと、適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを充分に混合して、正極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体11aの片面に塗布し、乾燥後、圧延して、正極活物質層11bを形成した。その後、所定形状に正極11を切り出した。得られた正極において、アルミニウム箔の片面に担持された正極活物質層は、厚み50μmで、30mm×30mmのサイズであった。正極活物質層を有さない集電体の裏面には正極リード15を接続した。
(ii)負極の作製
図6に示すような、電子ビーム(EB)加熱手段(図示せず)を具備する蒸着装置30((株)アルバック製)を用いて、負極12を作製した。蒸着装置30は、酸素ガスをチャンバー31内に導入するためのガス管(図示せず)と、ノズル32を具備する。ノズル32は、真空チャンバー31内に導入された配管33に接続した。配管33は、マスフローコントローラを経由して、酸素ボンベと接続した。ノズル32からは、純度99.7%の酸素ガス(日本酸素(株)製)を、流量80sccmで放出した。ノズル32の上方には、負極集電体12aを固定する固定台34を設置した。固定台34の鉛直下方には、負極集電体12aの表面に柱状に堆積させるターゲット35を設置した。ターゲット35には、純度99.9999%のケイ素単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。
固定台34には、厚み35μmで、40mm×40mmのサイズに裁断された、表面粗さRzが10μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)を固定した。固定台34は水平面と60°の角αを成すように傾斜させた。簡単な幾何学的関係より、αは集電体の法線方向と粒子の入射方向とのなす角度とφ同じである。従って、固定台34と水平面とが成す角αと、柱状粒子の成長方向θとの間には、概ねtanα=2tanθの関係がある。
ケイ素単体のターゲット35に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを500mAに設定した。ケイ素単体の蒸気は、酸素雰囲気を通過してから、固定台34に設置された銅箔上に堆積し、ケイ素と酸素とを含む化合物からなる負極活物質層12bを形成した。蒸着時間は20分に設定した。こうして得られた負極を負極1Aとする。
得られた負極活物質層12bに含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.5であった。
次に、活物質層を構成する柱状粒子が銅箔の法線方向と成す角θを調べるために、負極1Aの断面を電子顕微鏡で観察した。観察写真を図7に示す。図7より、活物質が柱状粒子を形成しており、柱状粒子が法線方向と成す角θは45°であることが確認できた。
また、負極1Aを銅箔の法線方向から観察し、集電体露出率Sを求めたところ、銅箔の露出部は全く観測されず、集電体露出率Sは0%であった。なお、集電体露出率Sの測定は、負極1Aの表面における銅箔の法線方向からのSEM観察とEPMA(電子プローブマイクロアナリシス:元素マップ分析)とを併用して行った。観察した領域は、1辺が50μm以上の正方形の領域であり、その領域内でS値を算出した。
また、活物質層の厚みtは11μmであり、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離は、柱状粒子の中心高さにおいて7μmであった。また、柱状粒子の中心高さにおける直径は5μmであった。
次に、水銀ポロシメータ((株)島津製作所製のオートポアIII9410)を用いて、負極1Aの空隙率Pを以下の要領で求めた。まず、3cm×3cmのサイズの銅箔(表面粗さRz=10μm、厚み35μm)の片面に、上記と同様の条件で、一様にSiO0.5の柱状粒子を形成し、負極1Aの試料を作製した。得られた試料の重量から、銅箔の重量を差し引いて、活物質層の重量を求め、その重量とSiO0.5の密度から、活物質層の真体積(VT)を求めた。次に、水銀ポロシメータにより、試料の空隙に水銀を侵入させて、侵入した水銀の体積(VH)を求めた。活物質層の真体積(VT)と、試料の空隙に侵入した水銀の体積(VH)から、空隙率Pを求めたところ、30%であった。この値を、予め求めておいた不可逆容量に相当するリチウムを含む場合と、リチウムを全く含まない場合との体積差ΔVを用いて補正したところ、空隙率P'は22%であった。
また、確認のために、3cm×3cmのサイズの銅箔(表面粗さRz=10μm、厚み35μm)の片面に、上記と同様の条件で、一様にSiO0.5の柱状粒子を形成した負極1Aの試料を作製した。得られた試料の重量から、銅箔の重量を差し引いて、活物質層の重量Wを求めた。W値と不可逆容量のリチウムを吸蔵していないSiO0.5の密度Dから活物質層の体積(W/D)を求めた。また、薄膜の厚みT(11μm)と、面積S(3cm×3cm=9cm2)とから活物質層の体積(ST)を求めた。これらの値から空隙率Pを求めたところ、P(%)=100〔{ST−(W/D)}/ST〕=30%であった。
次に、アルバック社製の抵抗加熱蒸着装置を用いて、負極1Aにリチウム金属を蒸着した。蒸着装置内のタンタル製ボートに所定量のリチウム金属を装填し、負極1Aをボートに対向させて固定した。ボートに流す電流値を50A設定して、10分間蒸着を行った。この操作でリチウム金属を蒸着することによって、SiO0.5からなる負極活物質に、通常は初回充放電時に蓄えられる不可逆容量相当のリチウムを、あらかじめ補填した。その後、負極1Aを31mm×31mmのサイズに裁断した。負極活物質層を有さない集電体の裏面には負極リード16を接続した。
以下、負極1Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
(iii)試験電池の作製
旭化成(株)製の厚み20μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ13を介して、正極活物質層11bと負極活物質層12bとを対向させ、薄い極板群を構成した。この極板群を、電解質とともに、アルミニウムラミネートシートからなる外装ケース14に挿入した。電解質には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を用いた。
非水電解液を正極活物質層11b、負極活物質層12bおよびセパレータ13にそれぞれ含浸させた後、正極リード15と負極リード16とを外部に導出させた状態で、内部を真空減圧しながら外装ケース14の端部を溶着させて、試験電池を完成させた。得られた試験電池を電池1Aと称する。
《比較例1》
以下の要領で負極を作製した。
厚み35μmで、表面粗さRzが10μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)に、日立化成工業(株)製のドライフィルムレジストをラミネートした。直径30μmのドットパターンが10μm間隔で最密に配置されたフォトマスクを用いて、銅箔上のドライレジストフィルムを露光し、NaHCO3水溶液で現像した。その後、銅箔を、水洗し、乾燥後、図6に示されるような蒸着装置を用いて蒸着を行った。
直径30μmのホールが10μm間隔で配置されたレジストを有する銅箔を、固定台34に固定し、固定台と水平面が成す角αを0°にして、銅箔を水平に設置した。ケイ素単体のターゲット35に照射される電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを500mAに設定した。ケイ素単体の蒸気は、酸素雰囲気を通過して、固定台34に設置された銅箔に堆積し、ケイ素と酸素とを含む化合物からなる活物質層を形成した。蒸着時間は30分に設定した。その後、活物質層を担持した銅箔を水酸化ナトリウム水溶液に浸し、レジストとレジスト上に付着した化合物の薄膜を除去した。こうして得られた負極を負極1Bとする。
得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.5であった。
次に、負極1Bの断面を電子顕微鏡で観察したところ、活物質が柱状粒子を形成しており、柱状粒子が銅箔の法線方向と成す角θは0°(すなわち銅箔表面に対して垂直)であった。
なお、負極1Bを銅箔の法線方向から観察したところ、銅箔の露出部が観測され、集電体露出率Sは49%であった。更に、水銀ポロシメータを用いて、負極1Bの空隙率Pを求めたところ、49%であった。また、重量および体積より測定した空隙率P(100〔{ST−(W/D)}/ST〕)は49%であり、水銀ポロシメータによる値と同じであった。
活物質層の厚みtは16.5μm、互いに隣接する柱状粒子の中心間距離は、柱状粒子の中心高さにおいて40μm、柱状粒子の中心高さにおける直径は30μmであった。
次に、アルバック社製の抵抗加熱蒸着装置を用いて、実施例1と同様にして、負極1Bにリチウム金属を蒸着した。この操作で、SiO0.5からなる負極活物質に、初回充放電時に蓄えられる不可逆容量のリチウムを補填した。
以下、負極1Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:0°
活物質層の厚みt:16.5μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:40μm
柱状粒子の直径:30μm
集電体露出率S:49%
空隙率P:49%
こうして得られた負極を用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池1Bを作製した。
[評価方法]
(i)注液時間
試験電池の作製において、非水電解液を外装ケース内に注入した後、真空引きするのに要する時間を測定した。ここでは、ケース内圧が10Torrになり、極板群中に残存する空気(ガス)が完全に出なくなるまでの時間を計測した。この時間を注液時間とした。結果を表1に示す。
(ii)放電特性
電池1Aおよび1Bを、それぞれ20℃の恒温室に収納し、定電流定電圧方式で充電を行った。その際、電池電圧が4.2Vになるまで1Cレート(1Cとは1時間で全電池容量を使い切ることができる電流値)の定電流で充電し、4.2Vに達した後は電流値が0.05Cになるまで定電圧で充電した。充電後、20分間休止した後、1Cレートのハイレートの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで放電を行った。ハイレートでの放電後、更に0.2Cの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで再放電を行った。再放電後、20分間休止した。
上記の充放電を100サイクル繰り返した。
サイクル初期において、充電容量に対する、全放電容量(ハイレート放電と再放電との合計)の割合を、充放電効率として、百分率値で求めた。また、サイクル初期において、全放電容量に対する、ハイレート放電での放電容量の割合を、ハイレート比率として、百分率値で求めた。更に、サイクル初期の全放電容量に対する、100サイクル目の全放電容量の割合を、容量維持率として、百分率値で求めた。結果を表1に示す。
表1より、電池1Bに比べて、電池1Aは、注液時間が短いことがわかる。電池1Aにおいて非水電解液の浸透性が高まったのは、負極活物質の柱状粒子が銅箔の法線方向に対して45°傾斜しているためと考えられる。なお、柱状粒子を傾斜させ、細長く成長させることで、粒子間に存在する空気の移動方向に配向が生じ、活物質層から空気が抜けやすくなるものと考えられる。
また、電池1Bと比べて、電池1Aは、充放電効率が高く、ハイレート比率が高く、容量維持率も大幅に改善している。サイクル初期の充放電効率やハイレート比率が高くなったのは、負極活物質の柱状粒子が傾斜しているため、負極活物質と正極活物質との対向部分が増加したことが寄与している。また、負極活物質に蒸着したリチウム金属が負極活物質に効率よく吸収され、負極活物質の不可逆容量が完全に補填されたことも寄与していると考えられる。また、負極活物質と正極活物質との対向部分が増加すると、充放電反応が均一化し、リチウム析出反応や、正極の局所的な過充電や過放電が抑制される。よって、容量維持率の向上にも有利になると考えられる。
負極活物質の形成において、柱状粒子が集電体と成す角θを変化させたこと以外、実施例1と同様にして、下記負極2A〜2Fを作製した。ここでは、電解銅箔の表面粗さRzを変化させるとともに、図6の蒸着装置の固定台34が水平面と成す角αを変化させ、蒸着条件を調整した。また、負極2A〜2Fを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池2A〜2Fを作製した。
〈i〉負極2A(比較例)
集電体には、表面粗さRzが30μmの電解銅箔を用い、固定台34と水平面の成す角αを10°に設定し、蒸着時間を14分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極を作製した。
以下、負極2Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:5°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:30μm
集電体露出率S:55%
空隙率P:30%
〈ii〉負極2B
集電体には、表面粗さRzが20μmの電解銅箔を用い、固定台34と水平面の成す角αを20°に設定し、蒸着時間を14分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極を作製した。
以下、負極2Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:10°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:20μm
集電体露出率S:10%
空隙率P:30%
〈iii〉負極2C
集電体には、表面粗さRzが15μmの電解銅箔を用い、固定台34と水平面の成す角αを50°に設定し、蒸着時間を16分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極を作製した。
以下、負極2Cの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:30°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:15μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈iv〉負極2D
集電体には、表面粗さRzが5μmの電解銅箔を用い、固定台34と水平面の成す角αを74°に設定し、蒸着時間を28分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極を作製した。
以下、負極2Dの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:60°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:5μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈v〉負極2E
集電体には、表面粗さRzが2μmの電解銅箔を用い、固定台34と水平面の成す角αを85°に設定し、蒸着時間を81分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極を作製した。
以下、負極2Eの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:80°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:2μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
電池2A〜2Eについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様に測定した。結果を表2に示す。
電池2Aは、充放電効率、ハイレート比率および容量維持率のすべてにおいて、他の電池より相対的に劣る結果となった。電池2Aの充放電効率が相対的に低かったのは、負極の集電体露出率Sが大きいためであり、負極に蒸着したリチウム金属が銅箔に析出し、負極活物質の不可逆容量が完全に補填されなかったためと考えられる。また、ハイレート比率が相対的に低下したのは、負極活物質層と正極活物質層との対向部分が減少したためと考えられる。更に、容量維持率が相対的に低下したのは、リチウム析出反応や、正極の局所的な過充電や過放電が起こったためと考えられる。
一方、電池2B〜2Eは、いずれも96%以上の充放電効率を有し、ハイレート比率も高く、サイクル維持率も85%以上であり、全ての特性において良好な結果が得られた。以上の結果から、柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θの適性範囲は10°≦θ≦80°であることが明らかとなった。
負極活物質の形成において、銅箔の表面粗さRzを変化させたこと以外、実施例1と同様にして、下記負極3A〜3Eを作製した。また、負極3A〜3Eを用い、正極活物質層の厚みを変化させたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3A〜3Eを作製した。
〈i〉負極3A(比較例)
集電体に、表面粗さRzが0.3μmの圧延銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Aを作製した。負極3Aを用いるとともに、正極活物質層の厚みを71μmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3Aを作製した。
以下、負極3Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:5.1μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:0.3μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:1%
〈ii〉負極3B
集電体に、表面粗さRzが2μmの電解銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Bを作製した。負極3Bを用いるとともに、正極活物質層の厚みを65μmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3Bを作製した。
以下、負極3Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:5.3μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:2μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:10%
〈iii〉負極3C
集電体に、表面粗さRzが15μmの電解銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Cを作製した。負極3Cを用いるとともに、正極活物質層の厚みを36μmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3Cを作製した。
以下、負極3Cの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:8μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:15μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:50%
〈iv〉負極3D
集電体に、表面粗さRzが20μmの電解銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Dを作製した。負極3Dを用いるとともに、正極活物質層の厚みを22μmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3Dを作製した。
以下、負極3Dの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:8μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:20μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:70%
〈v〉負極3E
集電体に、表面粗さRzが30μmの電解銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Eを作製した。負極3Eを用いるとともに、正極活物質層の厚みを20μmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、試験電池3Eを作製した。
以下、負極3Eの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:9μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:30μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:72%
電池3A〜3Eについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様にして測定した。結果を表3に示す。
電池3Aは、ハイレート比率が相対的に劣る結果となった。これは、柱状粒子の中心間距離が狭く、非水電解液と活物質との接触が抑制されたためと考えられる。また、活物質の膨張によって、柱状粒子の割れや剥がれが生じ、集電性が低下したと考えられる。
一方、電池3B〜3Dは、いずれも全ての特性において良好な結果が得られた。電池3Eは、充放電効率および容量維持率が、いずれも相対的に劣る結果となった。これは、柱状粒子の中心間距離が広く、負極の空隙率が高いため、リチウム金属の蒸着により不可逆容量を補填する際に、リチウム金属が銅箔上に析出したためと考えられる。銅箔上に析出したリチウム金属は、電池を構成するまでに酸化されるなどして変性するため、補填容量に寄与しないと考えられる。また、容量維持率が低下したのは、リチウム析出反応や、正極の局所的な過充電や過放電が起こったためと考えられる。
なお、ハイレート特性とサイクル特性は、空隙率が高いほど良い値となる傾向がある。ただし、空隙率が高いほど、負極活物質の量が減少する。よって、正極と負極との容量バランスの観点から、正極の厚みを薄くする必要があり、結果として電池容量が減少する。電池容量よりも出力を優先する電池設計においては、空隙率が高く、例えば70%を超えてもよい場合がある。しかし、ハイレート特性と、サイクル特性と、電池容量とのバランスを考慮すると、空隙率は30%以上60%以下が特に望ましく、50%以下が更に望ましい。
〈i〉負極4A
蒸着時間を11秒に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極4Aを作製した。
以下、負極4Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:0.1μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
正極は、RFマグネトロンスパッタ装置を用いて、以下の要領で作製した。
正極集電体には、厚み20μmのステンレス鋼箔(SUS304)を用いた。ターゲットには、直径4インチ、厚み5mmのLiCoO2を用いた。真空チャンバー内に、アルゴンガスを100sccmの流量で導入すると、チャンバー内の圧力は20mTorrを示した。高周波電源の出力を100Wに設定して、10分間のスパッタリングを行った。その後、LiCoO2薄膜が形成されたステンレス鋼箔を取り出し、焼成炉を用いて、空気中で、500℃で、5時間焼成し、厚み0.12μmの正極活物質層を形成した。形成された正極活物質層を、誘導結合高周波プラズマ分光分析法(ICP分光分析法)および酸素分析法で分析した結果、正極活物質に含まれるLiとCoと酸素とのモル比率は1:1:2であった。こうして得られた正極を正極4Aとする。
負極4Aを用いるとともに、正極4Aを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池4Aを作製した。
〈ii〉負極4B
蒸着時間を145分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極4Bを作製した。
以下、負極4Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:80μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
正極活物質の厚みを98μmに変更したこと以外、実施例1の正極と同様にして、正極4Bを作製した。
負極4Bを用いるとともに、正極4Bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池4Bを作製した。
〈iii〉負極4C
蒸着時間を182分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極4Cを作製した。
以下、負極4Cの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:100μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
正極活物質の厚みを123μmに変更したこと以外、実施例1の正極と同様にして、正極4Cを作製した。
負極4Cを用いるとともに、正極4Cを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池4Cを作製した。
〈iv〉負極4D
蒸着時間を218分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極4Dを作製した。
以下、負極4Dの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.5
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:120μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
正極活物質の厚みを147μmに変更したこと以外、実施例1の正極と同様にして、正極4Dを作製した。
負極4Dを用いるとともに、正極4Dを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池4Dを作製した。
電池4A〜4Dについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様にして測定した。結果を表4に示す。
上記の結果から、活物質層の厚みが厚くなるほど、容量維持率が低下する傾向があることがわかる。また、電池4Dでは、ハイレート比率が相対的に劣る結果が得られた。これは、負極活物質層の柱状粒子が長くなり、銅箔と活物質との接触面積が相対的に小さくなり、抵抗が増加したためと考えられる。抵抗が増加すると、充放電反応が不均一となり、サイクル特性は劣化すると考えられる。
電池4Aの結果から、活物質層の厚みが0.1μmでも、充放電効率、ハイレート比率および容量維持率には問題ないことがわかる。ただし、単位面積当たりの容量が少なくなるため、実用上の用途が制限されると考えられる。以上の結果より、活物質層の厚みの好適範囲は0.1μm〜100μmであることがわかる。
負極活物質の形成において、蒸着条件を調整して、ケイ素と酸素との比率を変化させたこと以外、実施例1と同様にして、下記負極5A〜5Fを作製した。また、負極5A〜5Fを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池5A〜5Fを作製した。
〈i〉負極5A
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を0に設定し、蒸着時間を7分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Aを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、酸素含有率は1%以下であった。
以下、負極5Aの物性をまとめる。
活物質の組成:Si(単体)
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:6μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈ii〉負極5B
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を16sccmに設定し、蒸着時間を8分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Bを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.1であった。
以下、負極5Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.1
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:7μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈iii〉負極5C
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を32sccmに設定し、蒸着時間を9分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Cを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.2であった。
以下、負極5Cの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.2
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:8μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈iv〉負極5D
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を48sccmに設定し、蒸着時間を10分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Dを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.3であった。
以下、負極5Dの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.3
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:9μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈v〉負極5E
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を64sccmに設定し、蒸着時間を11分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Eを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.4であった。
以下、負極5Eの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.4
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:10μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈vi〉負極5F
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を160sccmに設定し、蒸着時間を37分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Fを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO1.0であった。
以下、負極5Fの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO1.0
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:17μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈vii〉負極5G(比較例)
負極活物質の形成において、ターゲット35に(株)高純度化学研究所製の塊状二酸化ケイ素を用い、酸素の流量を20sccmに設定し、エミッションを500mAに設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Gを作製した。また、負極5Gを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池5Gを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO2であっ
た。
以下、負極5Gの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO2
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:11μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈viii〉負極5H
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を96sccmに設定し、蒸着時間を24分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Hを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.6であった。
以下、負極5Hの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.6
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:13μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈ix〉負極5I
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を112sccmに設定し、蒸着時間を25分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Iを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.7であった。
以下、負極5Iの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.7
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:14μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
〈x〉負極5J
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を128sccmに設定し、蒸着時間を29分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Jを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.8であった。
以下、負極5Jの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.8
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:16μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
〈xi〉負極5K
負極活物質を形成するときに、酸素の流量を144sccmに設定し、蒸着時間を33分に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極5Kを作製した。得られた活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.9であった。
以下、負極5Kの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.9
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:18μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
電池5A〜5Kについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様にして測定した。結果を表5に示す。
電池5Gは、充放電試験において、全く容量が得られず、全ての試験を行うことが不可能であった。電池5A〜5Fの結果から、負極活物質に含まれる酸素比率が高いほど、容量維持率が向上することが明らかとなった。これは、負極活物質に含まれる酸素比率が低いと、充電時の活物質の膨張率が大きくなるためと考えられる。一方、負極活物質に含まれる酸素比率が高いと、充電時の活物質の膨張率が低いため、膨張しても柱状粒子間に十分な間隔が確保され、ストレスが緩和され、集電性が確保されるものと考えられる。
負極活物質に含まれる酸素比率が少ない場合には、空隙率Pが大きくなる条件で活物質を成長させることにより、活物質の膨張によるストレスを受けにくい、優れた負極を得ることができると考えられる。
負極活物質として、ケイ素合金を用いて、下記負極6A〜6Bを作製し、負極6A〜6Bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池6A〜6Bを作製した。なお、ケイ素合金に含ませるケイ素以外の金属元素Mには、リチウムと合金を形成しないTiまたはCuを用いた。
〈i〉負極6A
負極活物質の形成において、ターゲット35に(株)高純度化学研究所製のSi粉末とTiSi2粉末との混合物(Si:TiSi2=3:1(モル比))を用い、酸素の流量を0sccmに設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極6Aを作製した。得られた活物質層を蛍光X線分光法により定量した結果、合金の組成はSiTi0.2であった。
以下、負極6Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiTi0.2
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:9μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈ii〉負極6B
負極活物質の形成において、ターゲット35に(株)高純度化学研究所製のSi粉末とCu粉末との混合物(Si:Cu=5:1(モル比))を用い、酸素の流量を0sccmに設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極6Bを作製した。得られた活物質層を蛍光X線分光法により定量した結果、合金の組成はSiCu0.2であった。
以下、負極6Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiCu0.2
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:9μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
電池6A〜6Bについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様にして測定した。結果を表6に示す。
負極活物質として、ケイ素と窒素とを含む化合物を用いて、下記負極7A〜7Bを作製し、負極7A〜7Bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、試験電池7A〜7Bを作製した。
〈i〉負極7A
負極活物質の形成において、ターゲット35に(株)高純度化学研究所製のケイ素単結晶を用い、酸素の代わりに窒素をチャンバー内に導入し、ターゲット35に照射される電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを300mAに設定し、蒸着時間を40分間に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極7Aを作製した。
なお、窒素ガスには、純度99.7%の窒素ガス(日本酸素(株)製)を用い、窒素の流量は20sccmに設定した。また、ノズル32付近には、EB照射装置を設置して、加速電圧−4kV、エミッション20mAに設定して、窒素ガスをプラズマ化した。
得られた活物質層を蛍光X線分光法により定量した結果、ケイ素と窒素とを含む化合物の組成はSiN0.2であった。
以下、負極7Aの物性をまとめる。
活物質の組成:SiN0.2
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:9μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
〈ii〉負極7B
負極活物質の形成において、ターゲット35に(株)高純度化学研究所製のケイ素単結晶を用い、酸素とともに窒素をチャンバー内に導入し、ターゲット35に照射される電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを300mAに設定し、蒸着時間を40分間に設定したこと以外、実施例1と同様にして、負極7Aを作製した。
なお、酸素ガスには、純度99.7%の酸素ガス(日本酸素(株)製)を用い、窒素ガスには、純度99.7%の窒素ガス(日本酸素(株)製)を用いた。酸素の流量は10sccm、窒素の流量も10sccmに設定した。また、ノズル32付近には、EB照射装置を設置して、加速電圧−4kV、エミッション20mAに設定して、窒素ガスをプラズマ化した。
得られた活物質層を蛍光X線分光法により定量した結果、ケイ素と窒素とを含む化合物の組成はSiO0.10.1であった。
以下、負極7Bの物性をまとめる。
活物質の組成:SiO0.10.1
柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θ:45°
活物質層の厚みt:9μm
互いに隣接する柱状粒子の中心間距離:7μm
柱状粒子の直径:5μm
表面粗さRz:10μm
集電体露出率S:0%
空隙率P:30%
電池7A〜7Bについて、充放電効率、ハイレート比率、および、容量維持率を、上記と同様にして測定した。結果を表6に示す。
電池6Aの結果から、ケイ素とチタンとを含む合金を活物質に用いても、本発明の効果が得られることが判明した。また、電池6Bの結果から、ケイ素と銅とを含む合金を活物質に用いても本発明の効果が得られることが判明した。
電池7Aの結果から、ケイ素と窒素とを含む化合物を活物質に用いても、本発明の効果が得られることが判明した。また、電池7Bの結果から、ケイ素と窒素と酸素とを含む化合物を活物質に用いても、本発明の効果が得られることが判明した。
本発明は、様々な形態のリチウム二次電池に適用することができるが、特に、高容量と良好なサイクル特性が要求されるリチウム二次電池において有用である。本発明を適用可能なリチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などの何れの形状でもよい。正極、負極およびセパレータからなる極板群の形態は、捲回型でも積層型でもよい。電池の大きさは、小型携帯機器などに用いる小型でも電気自動車等に用いる大型でもよい。本発明のリチウム二次電池は、例えば携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、用途は特に限定されない。
積層型リチウム二次電池の一例の縦断面図である。 本発明のリチウム二次電池用負極の構造を示す概略断面図である。 柱状粒子が集電体の法線方向と成す角θを評価する方法の説明図である。 湾曲した柱状粒子の構造を示す概略断面図である。 本発明のリチウム二次電池用負極の上面の拡大模式図である。 本発明のリチウム二次電池用負極の製造装置の一例の概略図である。 本発明のリチウム二次電池用負極の柱状粒子に平行な断面のSEM写真である。

Claims (13)

  1. シート状の集電体と、前記集電体に担持された活物質層とを具備し、
    前記活物質層は、複数の柱状粒子を含み、
    前記柱状粒子は、ケイ素元素を含み、
    前記柱状粒子が、前記集電体の法線方向に対して傾斜しており、
    前記活物質層の空隙率Pが、10%≦P≦70%である、リチウム二次電池用負極。
  2. 前記柱状粒子が前記集電体の法線方向と成す角θが、10°≦θ≦80°である、請求項1記載のリチウム二次電池用負極。
  3. 前記集電体の前記活物質層を担持する部分の面積Aと、前記活物質層の前記法線方向からの正投影面積Bとの差:A−Bが、面積Aの60%以下である、請求項1記載のリチウム二次電池用負極。
  4. 前記活物質層が、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、および、ケイ素と窒素とを含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載のリチウム二次電池用負極。
  5. 前記ケイ素合金が、ケイ素と金属元素Mとの合金であり、金属元素Mは、リチウムと合金を形成しない、請求項4記載のリチウム二次電池用負極。
  6. 前記金属元素Mは、チタン、銅およびニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項5記載のリチウム二次電池用負極。
  7. 前記ケイ素と酸素とを含む化合物は、一般式(1):SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有する、請求項4記載のリチウム二次電池用負極。
  8. リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
    請求項1〜7のいずれかに記載の負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
    リチウムイオン伝導性を有する電解質と、
    を含むリチウム二次電池。
  9. (a)表面粗さRzが2μm以上20μm以下のシート状の集電体を準備し、
    (b)前記集電体上に、前記集電体の法線方向と角φ(20°≦φ≦85°)を成す方向からケイ素を入射させて堆積させ、ケイ素元素を含む活物質層を形成する、ことを包含するリチウム二次電池用負極の製造方法。
  10. 前記集電体上にケイ素を入射させる工程が、蒸着法、スパッタリング法および化学気相反応法よりなる群から選ばれる少なくとも1種で行われる、請求項9記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
  11. 前記集電体上に、前記ケイ素とともに酸素を入射させることにより、ケイ素と酸素とを含む化合物を含む活物質層を形成する、請求項10記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
  12. 前記ケイ素と酸素とを含む化合物は、一般式(1):SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有する、請求項11記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
  13. 前記集電体上にケイ素とともに酸素を入射させる工程が、酸素元素を含む減圧雰囲気中で、ケイ素を前記集電体上に入射させる工程である、請求項11記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。


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