(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである:
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、積層光学フィルムの全体的な偏光特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
(2)「面内位相差Re」は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Reは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)「厚み方向の位相差Rth」は、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rthは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)本明細書に記載される用語や記号に付される添え字の「1」は第1の光学補償層を表し、添え字の「2」は第2の光学補償層を表す。
(5)「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を有する直線偏光を、当該直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を有する直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光に(または、左円偏光を右円偏光に)変換したりする機能を有するものをいう。λ/2板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)の面内の位相差値が約1/2である。
(6)「λ/4板」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)の面内の位相差値が約1/4である。
(7)「コレステリック配向固化層」とは、当該層の構成分子がらせん構造をとり、そのらせん軸が面方向にほぼ垂直に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。したがって、「コレステリック配向固化層」は、液晶化合物がコレステリック液晶相を呈している場合のみならず、非液晶化合物がコレステリック液晶相のような擬似的構造を有する場合を包含する。例えば、「コレステリック配向固化層」は、液晶材料が液晶相を示す状態でカイラル剤によってねじりを付与してコレステリック構造(らせん構造)に配向させ、その状態で重合処理または架橋処理を施すことにより、当該液晶材料の配向(コレステリック構造)を固定することにより形成され得る。
(8)「選択反射の波長域が350nm以下」とは、選択反射の波長域の中心波長λが350nm以下であることを意味する。例えば、コレステリック配向固化層が液晶モノマーを用いて形成されている場合には、選択反射の波長域の中心波長λは、下記式で表される:
λ=n×P
ここで、nは、液晶モノマーの平均屈折率を示し、Pはコレステリック配向固化層のらせんピッチ(nm)を示す。上記平均屈折率nは、(no+ne)/2で表され、通常、1.45〜1.65の範囲である。noは、液晶モノマーの常光屈折率を示し、neは液晶モノマーの異常光屈折率を示す。
(9)「カイラル剤」とは、液晶材料(例えば、ネマティック液晶)をコレステリック構造となるように配向する機能を有する化合物をいう。
(10)「ねじり力」とは、カイラル剤が液晶材料にねじれを与えてコレステリック構造(らせん構造)に配向させる能力のことを意味する。一般的には、ねじり力は、下記式で表される:
ねじり力=1/(P×W)
Pは、上記の通り、Pはコレステリック配向固化層のらせんピッチ(nm)を示す。Wは、カイラル剤重量比を示す。カイラル剤重量比Wは、W=[X/(X+Y)]×100で表される。ここで、Xはカイラル剤の重量であり、Yは液晶材料の重量である。
[A.積層光学フィルム]
[A−1.積層光学フィルムの全体構成]
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。図1に示すように、この積層光学フィルム10は、偏光子11と第1の光学補償層12と第2の光学補償層13と第3の光学補償層14とをこの順に有する。
偏光子11と第1の光学補償層12は、好ましくは、任意の適切な粘着剤層または接着剤層(図示せず)を介して積層されている。実用的には、偏光子11の光学補償層が形成されない側には、任意の適切な保護層(図示せず)が積層されている。さらに、必要に応じて、偏光子11と第1の光学補償層12との間に保護層が設けられる。第1の光学補償層12と第2の光学補償層13は、好ましくは、任意の適切な粘着剤層または接着剤層(図示せず)を介して積層されている。第2の光学補償層13と第3の光学補償層14は、好ましくは、任意の適切な粘着剤層または接着剤層(図示せず)を介して積層されている。
本発明における積層光学フィルムの全体厚みは、実用性を考慮すると、100〜500μmであることが好ましく、より好ましくは150〜450μmであり、さらに好ましくは150〜400μmである。
[A−2.第1の光学補償層]
第1の光学補償層は、nx>nz>nyの屈折率分布を有する。そして、第1の光学補償層は、斜め方向から見たときに、偏光板の幾何学的な軸ずれを補正するように作用する。
第1の光学補償層のRe1は50〜300nmであり、好ましくは100〜300nmであり、より好ましくは150〜300nmであり、さらに好ましくは200nm〜300nmであり、特に好ましくは250nm〜300nmであり、最も好ましくは260〜280nmである。
第1の光学補償層のRth1は、好ましくは35〜190nmであり、さらに好ましくは90〜190nmであり、特に好ましくは100〜165nmであり、最も好ましくは120〜155nmである。
第1の光学補償層の、Rth1/Re1は、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値と面内位相差値との比をいう(Nz係数ともいう)。Rth1/Re1が1より小さいとき、第1の光学補償層はnx>nz>nyの関係を有する。
第1の光学補償層のNz係数は、好ましくは0.2〜0.8であり、より好ましくは0.2〜0.7であり、さらに好ましくは0.2〜0.6であり、特に好ましくは0.4〜0.6であり、最も好ましくは0.45〜0.55である。上記第1の光学補償層のNz係数を0.5とすることにより、角度によらず位相差値がほぼ一定の特性を達成することができ、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
第1の光学補償層の波長分散特性は、好ましくは0.90〜1.40であり、さらに好ましくは0.95〜1.30であり、特に好ましくは0.95〜1.15である。波長分散特性は、上記の範囲で小さいほど、可視光の広い領域で位相差値が一定になる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高め、斜め方向のカラーシフト量を低減することができる。なお、一般的に、光学補償層の波長分散特性とは、位相差値の波長依存性をいう。波長分散特性は、23℃における波長480nm及び590nmの光で測定した面内位相差値の比:Re〔480〕/Re〔590〕で表すことができる。ただし、Re〔480〕およびRe〔590〕は、それぞれ、23℃における波長480nmおよび590nmの光で測定した面内位相差値である。
第1の光学補償層の全体厚みは、好ましくは70〜300μm、さらに好ましくは70〜250μm、最も好ましくは70〜200μmである。第1の光学補償層がこのような範囲の厚みを有することにより、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
第1の光学補償層は、その遅相軸が隣接する偏光子の吸収軸と実質的に平行又は直交となるように配置される。
「実質的に平行」とは、第1の光学素子の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度が0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、さらに好ましくは0°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、偏光板の偏光度が低下し、液晶表示装置に用いた際に、コントラストが低下する傾向がある。
「実質的に直交」とは、第1の光学補償層の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度が90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、さらに好ましくは90°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、偏光板の偏光度が低下し、液晶表示装置に用いた際に、コントラストが低下する傾向がある。
第1の光学補償層は、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料で形成され得る。代表例としては、高分子フィルムの延伸フィルムである。当該高分子フィルムを形成する樹脂としては、好ましくは、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂である。
上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを重合単位として重合される樹脂である。
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
上記高分子フィルムは、任意の適切な他の熱可塑性樹脂を含み得る。他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等の汎用プラスチック;ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
上記延伸フィルムの作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。代表的には、上記高分子フィルムの片面または両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸する方法が挙げられる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向に収縮力を付与するために用いられる。収縮性フィルムに用いられる材料としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。収縮均一性、耐熱性が優れる点から、ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
上記延伸方法としては、上記高分子フィルムの延伸方向への張力と、当該延伸方向とフィルム面内で直交する方向への収縮力とを付与し得る限り、任意の適切な延伸方法を採用し得る。延伸温度は、好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)以上である。得られる延伸フィルムの位相差値が均一になり易く、また、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。延伸温度は、より好ましくは上記高分子フィルムのTg+1℃〜Tg+30℃、さらに好ましくはTg+2℃〜Tg+20℃、特に好ましくはTg+3℃〜Tg+15℃、最も好ましくはTg+5℃〜Tg+10℃である。延伸温度をこのような範囲とすることにより、均一な加熱延伸を行い得る。さらに、延伸温度は、フィルム幅方向で一定であることが好ましい。位相差値のバラツキが小さい良好な光学均一性を有する延伸フィルムを作製し得るからである。
上記延伸時の延伸倍率は、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは1.05〜2.00倍、さらに好ましくは1.10〜1.50倍、特に好ましくは1.20〜1.40倍、最も好ましくは1.25〜1.30倍である。延伸倍率をこのような範囲とすることにより、フィルム幅の収縮が少なく、機械的強度に優れた延伸フィルムが得られ得る。
第1の光学補償層は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムの積層体であってもよく、位相差フィルムと他のフィルム(好ましくは、等方性フィルム)との積層体であってもよい。好ましくは、第1の光学補償層は、単独の位相差フィルムである。偏光子の収縮応力やバックライトの熱による位相差値のズレやムラを低減し、且つ、液晶パネルを薄くすることができるからである。第1の光学素子が積層体である場合には,接着剤層や粘着剤層等を含んでもよい。積層体が2枚以上の位相差フィルムおよび/または2枚以上の他のフィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムおよび/または他のフィルムは、同一であってもよく異なっていてもよい。
[A−3.第2の光学補償層]
第2の光学補償層は、半透過反射型の液晶表示装置、特にVAモード(垂直配向モード)において、円偏光モードとして使用するための、nx>ny=nzの屈折率分布を有する正のAプレートである。
第2の光学補償層は、nx>ny=nzの屈折率分布を有し、上記の屈折率分布を有することで液晶表示装置の輝度が向上する。
第2の光学補償層は、面内位相差Re2が短波長側ほど小さくなる波長分散特性を示す。
第2の光学補償層は、例えば、延伸フィルム層であり、液晶を含有し、かつ、フルオレン骨格を有するポリカーボネートを含むもの(例えば、特開2002−48919号公報に記載)、延伸フィルム層であり、かつ、セルロース系材料を含むもの(例えば、特開2003−315538号公報、特開2000−137116号公報に記載)、延伸フィルム層であり、かつ、異なる波長分散特性を有する芳香族ポリエステルポリマーを2種類以上含むもの(例えば、特開2002−14234号公報に記載)、延伸フィルム層であり、かつ、異なる波長分散特性を有するポリマーを形成するモノマー由来のモノマー単位を2種類以上有する共重合体を含むもの(WO00/26705号公報に記載)、異なる波長分散特性を有する延伸フィルム層を2種類以上積層した複合フィルム層(特開平2−120804号公報に記載)などが好ましく挙げられる。
第2の光学補償層の形成材料としては、例えば、単独重合体(ホモポリマー)でも良いし、共重合体(コポリマー)でも良いし、複数のポリマーのブレンド物でも良い。ブレンド物の場合、光学的に透明である必要があることから、相溶ブレンドや、各ポリマーの屈折率が略等しいことが好ましい。第2の光学補償層の形成材料としては、例えば、特開2004−309617号公報に記載のポリマーを好ましく用いることができる。
上記ブレンド物の具体的な組み合わせとしては、例えば、負の光学異方性を有するポリマーとして、ポリ(メチルメタクリレート)と、正の光学異方性を有するポリマーとして、ポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(エチレンオキサイド)、ビニリデンフロライド/トリフルオロエチレン共重合体などとの組み合わせ;負の光学異方性を有するポリマーとして、ポリスチレン、スチレン/ラウロイルマレイミド共重合体、スチレン/シクロヘキシルマレイミド共重合体、スチレン/フェニルマレイミド共重合体などと、正の光学異方性を有するポリマーとして、ポリ(フェニレンオキサイド)との組み合わせ;負の光学異方性を有するポリマーとして、スチレン/マレイン酸無水物共重合体と、正の光学異方性を有するポリマーとして、ポリカーボネートとの組み合わせ;負の光学異方性を有するポリマーとして、アクリロニトリル/スチレン共重合体と、正の光学異方性を有するポリマーとして、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体との組み合わせ;などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、負の光学異方性を有するポリマーとして、ポリスチレンと、正の光学異方性を有するポリマーとして、ポリ(フェニレンオキサイド)との組み合わせが好ましい。ポリ(フェニレンオキサイド)としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)などが挙げられる。
上記共重合体(コポリマー)としては、例えば、ブタジエン/スチレン共重合体、エチレン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、ポリカーボネート系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリエステルカーボネート系共重合体、ポリアリレート系共重合体などが挙げられる。特に、フルオレン骨格を有するセグメントは負の光学異方性となり得るため、フルオレン骨格を有するポリカーボネート、フルオレン骨格を有するポリカーボネート系共重合体、フルオレン骨格を有するポリエステル、フルオレン骨格を有するポリエステル系共重合体、フルオレン骨格を有するポリエステルカーボネート、フルオレン骨格を有するポリエステルカーボネート系共重合体、フルオレン骨格を有するポリアリレート、フルオレン骨格を有するポリアリレート系共重合体などが好ましい。
上記セルロース系材料は、任意の適切なセルロース系材料が選択され得る。セルロース系材料の具体例としては、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロースエステル;メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテル等が挙げられる。好ましくは、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロースエステルが用いられ、より好ましくは、セルロースアセテートが用いられる。また、セルロース系材料は、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を含み得る。
上記セルロース系材料の重量平均分子量Mwは、好ましくは3×103〜3×105の範囲内にあり、さらに好ましくは8×103〜1×105の範囲内にある。重量平均分子量Mwを上記範囲とすることにより、生産性に優れ、かつ、良好な機械的強度が得られ得る。
上記セルロース系材料は、目的に応じて適切な置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アセテート、ブチレート等のエステル基;アルキルエーテル基、アラアルキレンエーテル基等のエーテル基;アセチル基およびプロピオニル基等が挙げられる。
上記セルロース系材料としては、アセチル基およびプロピオニル基で置換されていることが好ましい。このセルロース系材料の置換度、「DSac(アセチル置換度)+DSpr(プロピオニル置換度)」(セルロースの繰り返し単位中に存在する3個の水酸基が、アセチル基またはプロピオニル基で平均してどれだけ置換されているかを示す)の下限は、好ましくは2以上、より好ましくは2.3以上、さらに好ましくは2.6以上である。「DSac+DSpr」の上限は、好ましくは3以下、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下である。セルロース系材料の置換度を上記範囲とすることにより、上記のような所望の屈折率分布を有する光学補償層が得られ得る。
上記DSpr(プロピオニル置換度)の下限は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上である。DSprの上限は、好ましくは3以下、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下である。DSprを上記範囲とすることにより、セルロース系材料の溶剤に対する溶解性が向上し、得られる第1の光学補償層の厚みの制御が容易となる。さらに、「DSac+DSpr」を上記の範囲とし、かつ、DSprを上記の範囲とすることにより、上記の光学特性を有し、かつ、逆分散の波長依存性を有する光学補償層が得られ得る。
上記DSac(アセチル置換度)およびDSpr(プロピオニル置換度)は、特開2003−315538号公報[0016]〜[0019]に記載の方法により求めることができる。
アセチル基およびプロピオニル基への置換方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを所定量の無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。アシル基を部分的に加水分解することにより、置換度「DSac+DSpr」を調整する。
第2の光学補償層は、λ/4板として機能し得る。第2の光学補償層の面内位相差Re2は、100〜180nmであり、好ましくは110〜160nmであり、より好ましくは120〜150nmである。
第2の光学補償層は、λ/4板として適切に機能し得るように、その厚みが設定され得る。その厚みは、所望の面内位相差Re2が得られるように設定され得る。具体的には、第2の光学補償層の厚みは、好ましくは42〜130μm、より好ましくは45〜125μm、さらに好ましくは48〜120μmである。
第2の光学補償層の面内位相差Re2は、上述した波長分散特性(逆波長分散特性)を示す樹脂フィルムの延伸倍率や延伸温度を変化させることにより制御され得る。
延伸倍率は、第2の光学補償層に所望される面内位相差Re2、第2の光学補償層に所望される厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸温度などに応じて、適宜変化し得る。具体的には、延伸倍率は、好ましくは1.1〜2.5倍、より好ましくは1.25〜2.45倍、さらに好ましくは1.4〜2.4倍である。このような延伸倍率で延伸を行うことによって、本発明の効果を十分に発揮し得る面内位相差Re2を有し、nx>ny=nzの屈折率分布を有する第2の光学補償層を得ることが可能となる。
延伸温度は、第2の光学補償層に所望される面内位相差Re2、第2の光学補償層に所望される厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率などに応じて、適宜変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは105〜240℃、さらに好ましくは110〜240℃である。このような延伸温度で延伸を行うことによって、本発明の効果を十分に発揮し得る面内位相差Re2を有し、nx>ny=nzの屈折率分布を有する第2の光学補償層を得ることが可能となる。
延伸方法は上記のような光学特性および厚みが得られる限りにおいて、任意の適切な方法が採用される。具体例としては、自由端延伸および固定端延伸が挙げられる。好ましくは自由端一軸延伸が用いられ、さらに好ましくは自由端縦一軸延伸が用いられる。このような延伸方法で延伸を行うことによって、本発明の効果を十分に発揮し得る面内位相差Re2を有し、nx>ny=nzの屈折率分布を有する第2の光学補償層を得ることが可能となる。
第2の光学補償層が上記セルロース系材料を含む延伸フィルム層の場合、好ましくは、延伸倍率は1.1倍〜2.5倍であり、延伸温度は110℃〜170℃であり、延伸方法は自由端縦一軸延伸である。
第2の光学補償層の形成方法は、特に限定されず、任意の適切な方法を採用できる。例えば、上記形成材料を溶媒に溶解した溶液を調製し、これを表面が平滑な基材フィルム上や金属製エンドレスベルト上にフィルム状に塗工し、その後に溶媒を蒸発除去して、第2の光学補償層を形成する方法が挙げられる。
上記塗工に用い得る溶媒は、特に限定されず、任意の適切な方法を採用できる。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;二硫化炭素;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のセルソルブ類;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類のみ用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
上記塗工の方法としては、特に限定されず、任意の適切な方法を採用できる。例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
上記基材フィルムの形成材料は、特に制限されず、任意の適切な方法を採用できる。例えば、透明性に優れるポリマーが好ましく挙げられ、また、延伸処理や収縮処理に適していることから、熱可塑性樹脂が好ましい。
上記基材フィルムの厚さは、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜500μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
[A−4.第3の光学補償層]
第3の光学補償層は、nx=ny>nzの関係を有し、いわゆるネガティブCプレートとして機能し得る。第3の光学補償層がこのような屈折率分布を有することにより、特に、VAモードの液晶セルの液晶層の複屈折性を良好に補償することができる。すなわち、第3の光学補償層は、VAモード(垂直配向モード)の液晶表示装置において、斜め方向から見た場合に、液晶分子の影響で等方性が崩れることにより視野角特性が悪化する原因を取り除くためのものである。その結果、視野角特性が顕著に向上した液晶表示装置が得られ得る。
本明細書において「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含するので、第3の光学補償層は面内位相差Re3を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Re3は0〜20nmであり、好ましくは0〜10nm、より好ましくは0〜5nmである。第3の光学補償層の厚み方向の位相差Rth3は30〜300nmであり、好ましくは60〜180nm、より好ましくは80〜150nm、さらに好ましくは100〜120nmである。
第3の光学補償層の厚みは、例えば、コレステリック配向固化層の場合、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1.0〜8μmであり、さらに好ましくは1.5〜5μmである。第3の光学補償層の厚みは、例えば、非液晶性材料を含む層の場合、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1.0〜8μmであり、さらに好ましくは1.5〜5μmである。第3の光学補償層の厚みは、例えば、高分子フィルムからなる場合、好ましくは20〜80μmであり、より好ましくは35〜75μmであり、さらに好ましくは40〜70μmである。
第3の光学補償層は、負の屈折率異方性を有し、層面の法線方向に光軸を有してもよい。
第3の光学補償層は、上記のような厚みおよび光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な層から形成され得る。好ましくは、コレステリック配向固化層、非液晶性材料を含む層、高分子フィルム層が挙げられる。
[A−4−1.第3の光学補償層がコレステリック配向固化層の場合]
上記コレステリック配向固化層は、選択反射の波長域が350nm以下であるコレステリック配向固化層が好ましい。選択反射の波長域の上限は、さらに好ましくは320nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。一方、選択反射の波長域の下限は、好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは150nm以上である。選択反射の波長域が350nmを超えると、選択反射の波長域が可視光領域に入るので、例えば、着色や色抜けという問題が生じる場合がある。選択反射の波長域が100nmより小さいと、使用すべきカイラル剤(後述)の量が多くなりすぎるので、光学補償層形成時の温度制御をきわめて精密に行う必要がある。その結果、液晶パネルの製造が困難になる場合がある。
上記コレステリック配向固化層におけるらせんピッチは、好ましくは0.01〜0.25μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.20μmであり、最も好ましくは0.05〜0.15μmである。らせんピッチが0.01μm以上であれば、例えば十分な配向性が得られる。らせんピッチが0.25μm以下であれば、例えば、可視光の短波長側における旋光性を十分に抑制できるので、光漏れ等を十分に回避できる。らせんピッチは、後述のカイラル剤の種類(ねじり力)および量を調整することにより制御され得る。らせんピッチを調整することにより、選択反射の波長域を所望の範囲に制御することができる。
上記第3の光学補償層がコレステリック配向固化層からなる場合、第3の光学補償層は、上記のような厚みおよび光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料から形成される。好ましくは、液晶組成物から形成され得る。当該組成物に含有される液晶材料としては、任意の適切な液晶材料が採用され得る。液晶相がネマチック相である液晶材料(ネマチック液晶)が好ましい。このような液晶材料としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶材料の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。また、液晶の配向状態は、ホモジニアス配向であることが好ましい。
上記液晶組成物における液晶材料の含有量は、好ましくは75〜95重量%であり、さらに好ましくは80〜90重量%である。液晶材料の含有量が75重量%未満である場合には、組成物が液晶状態を十分に呈さず、結果として、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。液晶材料の含有量が95重量%を超える場合には、カイラル剤の含有量が少なくなってしまい、ねじれが十分に付与されなくなるので、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。
上記液晶材料は、液晶モノマー(例えば、重合性モノマーおよび架橋性モノマー)であることが好ましい。これは、後述するように、液晶モノマーを重合または架橋させることによって、液晶モノマーの配向状態を固定できるためである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第3の光学補償層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第3の光学補償層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた光学補償層となる。
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。
上記液晶モノマーとしては、例えば、特開2003−287623号公報の段落0035〜0047に記載の液晶モノマーを好適に用いることができる。
好ましくは、上記第3の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成し得る液晶組成物は、カイラル剤を含む。第3の光学補償層を液晶性モノマーとカイラル剤とを含む組成物から形成することにより、nxとnzとの差を非常に大きく(nx>>nzと)することができる。その結果、第3の光学補償層を薄くすることができる。例えば、従来の二軸延伸によるネガティブCプレートが60μm以上の厚みを有するのに対し、本発明に用いられる第3の光学補償層は、コレステリック配向固化層の単一層であれば厚みを1〜2μm程度まで薄くできる。その結果、液晶パネルの薄型化に大きく貢献し得る。
液晶組成物中のカイラル剤の含有量は、好ましくは5〜23重量%であり、さらに好ましくは10〜20重量%である。含有量が5重量%未満である場合には、ねじれが十分に付与されなくなるので、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。その結果、得られる光学補償層の選択反射の波長域を所望の帯域(低波長側)に制御するのが困難となる場合がある。含有量が23重量%を超える場合には、液晶材料が液晶状態を呈する温度範囲が非常に狭くなるので、光学補償層形成時の温度制御をきわめて精密に行う必要がある。その結果、第3の光学補償層の製造が困難になる場合がある。なお、カイラル剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
上記カイラル剤としては、液晶材料を所望のコレステリック構造に配向し得る任意の適切な材料が採用され得る。例えば、このようなカイラル剤のねじり力は、好ましくは1×10−6nm−1・(wt%)−1以上であり、さらに好ましくは1×10−5nm−1・(wt%)−1〜1×10−2nm−1・(wt%)−1であり、最も好ましくは1×10−4nm−1・(wt%)−1〜1×10−3nm−1・(wt%)−1である。このようなねじり力を有するカイラル剤を用いることにより、コレステリック配向固化層のらせんピッチを所望の範囲に制御することができ、その結果、選択反射の波長域を所望の範囲に制御することができる。例えば、同じねじり力のカイラル剤を使用する場合、液晶組成物中のカイラル剤の含有量が多いほど、形成される光学補償層の選択反射の波長域は低波長側となる。また例えば、液晶組成物中のカイラル剤の含有量が同じであれば、カイラル剤のねじり力が大きいほど、形成される光学補償層の選択反射の波長域は低波長側となる。より具体的な例は以下の通りである:形成される光学補償層の選択反射の波長域を200〜220nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじり力が 5×10−4nm−1・(wt%)−1のカイラル剤を、液晶組成物中に11〜13重量%の割合で含有させればよい。形成される光学補償層の選択反射の波長域を290〜310nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじり力が 5×10−4nm−1・(wt%)−1のカイラル剤を、液晶組成物中に7〜9重量%の割合で含有させればよい。
上記カイラル剤としては、例えば、特開2003−287623号公報の段落0048〜0056に記載のカイラル剤を好適に用いることができる。
なお、上記液晶材料と上記カイラル剤の組み合わせとしては、目的に応じて任意の適切な組み合わせが採用され得る。
好ましくは、上記第3の光学補償層を形成し得る液晶組成物は、重合開始剤および架橋剤(硬化剤)の少なくとも一方をさらに含む。重合開始剤および/または架橋剤(硬化剤)を用いることにより、液晶材料が液晶状態で形成したコレステリック構造(コレステリック配向)を固定化することができる。このような重合開始剤または架橋剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な物質が採用され得る。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。架橋剤(硬化剤)としては、例えば、紫外線硬化剤、光硬化剤、熱硬化剤が挙げられる。より具体的には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。液晶組成物中の重合開始剤または架橋剤の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜8重量%であり、最も好ましくは1〜5重量%である。含有量が0.1重量%未満である場合には、コレステリック構造の固定化が不十分となる場合がある。含有量が10重量%を超えると、上記液晶材料が液晶状態を示す温度範囲が狭くなるので、コレステリック構造を形成する際の温度制御が困難となる場合がある。
上記液晶組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤としては、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。より具体的には、上記老化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類やアルコール類が挙げられる。上記界面活性剤は、例えば、光学補償層の表面を平滑にするために添加され、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系の界面活性剤が使用でき、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
上記第3の光学補償層(コレステリック配向固化層)の形成方法としては、所望のコレステリック配向固化層が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。第3の光学補償層(コレステリック配向固化層)の代表的な形成方法は、上記液晶組成物を基材上に展開して展開層(塗膜)を形成する工程と;当該液晶組成物中の液晶材料がコレステリック配向となるように、当該展開層に加熱処理を施す工程と;当該展開層に重合処理および架橋処理の少なくとも1つを施して、当該液晶材料の配向を固定する工程と、基材上に形成されたコレステリック配向固化層を転写する工程とを含む。以下、当該形成方法の具体的な手順を説明する。
まず、液晶材料、カイラル剤、重合開始剤または架橋剤、ならびに、必要に応じて各種添加剤を溶媒に溶解または分散し、液晶塗工液(液晶組成物)を調製する。液晶材料、カイラル剤、重合開始剤、架橋剤および添加剤は、上記で説明したとおりである。液晶塗工液に用いられる溶媒は、特に制限されない。具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒、あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶媒は、1種類のみで用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
上記液晶塗工液の粘度は、上記液晶材料の含有量や温度に応じて変化し得る。例えば、ほぼ室温(20〜30℃)において液晶塗工液中の液晶材料の濃度が5〜70重量%である場合、当該塗工液の粘度は、好ましくは0.2〜20mPa・sであり、さらに好ましくは0.5〜15mPa・sであり、最も好ましくは1〜10mPa・sである。より具体的には、液晶塗工液における液晶材料の濃度が30重量%である場合、当該塗工液の粘度は、好ましくは2〜5mPa・sであり、さらに好ましくは3〜4mPa・sである。塗工液の粘度が0.2mPa・s以上であれば、塗工液を走行することによる液流れの発生を非常に良好に防止することができる。また、塗工液の粘度が20mPa・s以下であれば、厚みムラがなく、非常に優れた表面平滑性を有する光学補償層が得られる。さらに、塗工性にも優れる。
次に、上記液晶塗工液を、基材上に塗工して展開層を形成する。展開層を形成する方法としては、任意の適切な方法(代表的には、塗工液を流動展開させる方法)が採用され得る。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法が挙げられる。中でも、塗工効率の観点からスピンコート法、エクストルージョンコート法が好ましい。
上記液晶塗工液の塗工量は、塗工液の濃度や目的とする層の厚み等に応じて適宜設定され得る。例えば、塗工液の液晶材料濃度が20重量%である場合、塗工量は、基材の面積(100cm2)あたり好ましくは0.03〜0.17mlであり、さらに好ましくは0.05〜0.15mlであり、最も好ましくは0.08〜0.12mlである。
上記基材としては、上記液晶材料を配向させることができる任意の適切な基材が採用され得る。代表的には、各種プラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、アルミ、銅、鉄等の金属製基材、セラミック製基材、ガラス製基材等の表面に、上記のようなプラスチックフィルムやシートを配置したものも使用できる。また、上記基材あるいは上記プラスチックフィルムまたはシートの表面にSiO2斜方蒸着膜を形成したものも使用できる。基材の厚みは、好ましくは5〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μmであり、最も好ましくは15〜150μmである。このような厚みであれば、基材として十分な強度を有するので、例えば製造時に破断する等の問題の発生を防止できる。
次に、上記展開層に加熱処理を施すことによって、上記液晶材料が液晶相を示す状態で配向させる。上記展開層には、上記液晶材料と共にカイラル剤が含まれているので、上記液晶材料が、液晶相を示す状態でねじりを付与されて配向する。その結果、展開層(を構成する液晶材料)がコレステリック構造(らせん構造)を示す。
上記加熱処理の温度条件は、上記液晶材料の種類(具体的には、液晶材料が液晶性を示す温度)に応じて適宜設定され得る。より具体的には、加熱温度は、好ましくは40〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃であり、最も好ましくは60〜90℃である。加熱温度が40℃以上であれば、通常、液晶材料を十分に配向させることができる。加熱温度が120℃以下であれば、例えば耐熱性を考慮した場合に基材の選択の幅が広がるので、液晶材料に応じた最適な基材を選択することができる。また、加熱時間は、好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは1分以上であり、特に好ましくは2分以上であり、最も好ましくは4分以上である。処理時間が30秒未満である場合には、液晶材料が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、加熱時間は、好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは8分以下であり、最も好ましくは7分以下である。処理時間が10分を超えると、添加剤が昇華するおそれがある。
次に、上記液晶材料がコレステリック構造を示した状態で、展開層に重合処理または架橋処理を施すことにより、当該液晶材料の配向(コレステリック構造)を固定する。より具体的には、重合処理を行うことにより、上記液晶材料(重合性モノマー)および/またはカイラル剤(重合性カイラル剤)が重合し、重合性モノマーおよび/または重合性カイラル剤がポリマー分子の繰り返し単位として固定される。また、架橋処理を行うことにより、上記液晶材料(架橋性モノマー)および/またはカイラル剤が3次元の網目構造を形成し、当該架橋性モノマーおよび/またはカイラル剤が架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶材料の配向状態が固定される。なお、液晶材料が重合または架橋して形成されるポリマーまたは3次元網目構造は「非液晶性」であり、したがって、形成された第3の光学補償層においては、例えば、液晶分子に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。したがって、温度による配向変化が生じない。その結果、形成された第3の光学補償層は、温度に影響を受けることがない高性能の光学補償層として使用できる。さらに、当該第3の光学補償層は、選択反射の波長域が100nm〜320nmの範囲に最適化されているので、光もれ等を顕著に抑制できる。
上記重合処理または架橋処理の具体的手順は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類によって適宜選択され得る。例えば、光重合開始剤または光架橋剤を使用する場合には光照射を行えばよく、紫外線重合開始剤または紫外線架橋剤を使用する場合には紫外線照射を行えばよく、熱による重合開始剤または架橋剤を使用する場合には加熱を行えばよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、合計の照射量等は、液晶材料の種類、基材の種類、第3の光学補償層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。同様に、加熱温度、加熱時間等も目的に応じて適宜設定され得る。
このようにして基材上に形成されたコレステリック配向固化層は、第2の光学補償層の表面に接着剤層を介して転写されて第3の光学補償層となる。転写は、基材を第3の光学補償層から剥離する工程をさらに含む。接着剤層の厚みは、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
第3の光学補償層の形成方法の上記のような代表例は、液晶材料として液晶モノマー(例えば、重合性モノマーまたは架橋性モノマー)を使用しているが、本発明においては第3の光学補償層の形成方法はこのような方法に限定されず、液晶ポリマーを使用する方法であってもよい。ただし、上記のような液晶モノマーを用いる方法が好ましい。液晶モノマーを使用することにより、より優れた光学補償機能を有し、かつ、より薄い光学補償層が形成され得る。具体的には、液晶モノマーを使用すれば、選択反射の波長域をより一層制御し易い。さらに、塗工液の粘度等の設定が容易であるので、薄い第2の光学補償層の形成が一層容易になり、かつ、取り扱い性にも非常に優れる。加えて、得られる光学補償層の表面平坦性がさらに優れたものとなる。
[A−4−2.第3の光学補償層が非液晶性材料を含む層の場合]
上記第3の光学補償層が非液晶性材料を含む層の場合、第3の光学補償層は、上記のような厚みおよび光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。例えば、このような材料としては、非液晶性材料が挙げられる。特に好ましくは、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料は、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成し得る。その結果、配向基板のみならず未配向基板も使用され得る。さらに、未配向基板を用いる場合であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
上記非液晶性材料としては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
上記非液晶性材料としては、例えば、特開2004−46065号公報の段落0018〜0072に記載のポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどを好適に用いることができる。
次に、第3の光学補償層(非液晶性材料を含む層)の製造方法について説明する。第3の光学補償層(非液晶性材料を含む層)の製造方法としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。
第3の光学補償層(非液晶性材料を含む層)は、好ましくは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、およびポリエステルイミドからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーの溶液を、上記基材上に塗工し塗膜を形成し、乾燥して、基材上に該ポリマー層を形成することで、nx=ny>nzの関係を有する第3の光学補償層が得られる。
上記塗工溶液(基材に塗工するポリマー溶液)の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。非液晶性材料に対して高い溶解性を示し、かつ、基材を侵食しないからである。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
上記塗工溶液における上記非液晶性ポリマーの濃度は、上記のような光学補償層が得られ、かつ塗工可能であれば、任意の適切な濃度が採用され得る。例えば、当該溶液は、溶媒100重量部に対して、非液晶性ポリマーを好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部含む。このような濃度範囲の溶液は、塗工容易な粘度を有する。
上記塗工溶液は、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤をさらに含有し得る。
上記塗工溶液は、必要に応じて、異なる他の樹脂をさらに含有し得る。このような他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂を併用することにより、目的に応じて適切な機械的強度や耐久性を有する光学補償層を形成することが可能となる。
上記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等が挙げられる。上記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
上記塗工溶液に添加される上記異なる樹脂の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、このような樹脂は、上記非液晶性ポリマーに対して、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の割合で添加され得る。
上記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用され得る。
塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)などの乾燥により、上記溶液中の溶媒を蒸発除去させ光学補償層を形成する。
[A−4−3.第3の光学補償層が高分子フィルム層の場合]
第3の光学補償層を形成する材料のさらに別の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等で形成された高分子フィルムが挙げられる。このような第3の光学補償層としては、市販のフィルムをそのまま用い得る。さらに、市販のフィルムに延伸処理および/または収縮処理などの2次的加工を施したものを用い得る。市販のフィルムとしては、例えば、富士写真フイルム(株)製 フジタックシリーズ(商品名;ZRF80S,TD80UF,TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製 商品名「KC8UX2M」等が挙げられる。ノルボルネン系樹脂を構成するノルボルネン系モノマーついては前述したとおりである。上記光学特性を満足し得るための延伸方法としては、例えば、二軸延伸(縦横等倍率延伸)が挙げられる。
第3の光学補償層として、上記高分子フィルム層と前述したコレステリック配向固化層とを有する積層体を用いても良い。
上記高分子フィルム層と前述したコレステリック配向固化層との積層方法は、任意の適切な方法を採用し得る。具体的には、高分子フィルム層にコレステリック配向固化層を転写する方法、予め基材に形成されたコレステリック配向固化層と高分子フィルム層とを接着剤層を介して貼り合わる方法等が挙げられる。当該接着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜10μm、さらに好ましくは1μm〜5μmである。
[A−5.接着剤層または粘着剤層]
上記第1の光学補償層は、その少なくとも一方の面に接着剤層又は粘着剤層を設け、第2の光学補償層に接着させられ得る。
上記接着剤又は粘着剤の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
上記接着剤層又は粘着剤層を形成する接着剤又は粘着剤としては、任意の適切な接着剤または粘着剤が採用され得る。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるという点で、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
上記第2の光学補償層は、接着剤層又は粘着剤層によって、第3の光学補償層に接着させられ得る。
第2の光学補償層と第3の光学補償層との間に設けられ得る接着剤層又は粘着剤層は、目的に応じて任意の適切な接着剤層又は粘着剤層が選択される。好ましくは任意の適切な接着剤が用いられる。接着剤層を用いることで、第2の光学補償層に液晶等のコーティング層(例えば、液晶モノマーを有機溶剤に溶解させたもの)を直接塗工する必要がないので、有機溶剤による第2の光学補償層の浸食を防ぐことができ、第2の光学補償層の白濁化を回避することができる。さらに、例えば画像表示装置に本発明における積層光学フィルムを組み込む際、各層の光学軸の関係がずれることを防止したり、各層同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、層間の界面反射を少なくし、画像表示装置に用いた際にコントラストを高くすることができる。上記接着剤層を形成する接着剤としては、代表的には、硬化型接着剤が挙げられる。硬化型接着剤の代表例としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、熱硬化型接着剤が挙げられる。熱硬化型接着剤の具体例としては、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂およびポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂系接着剤が挙げられる。湿気硬化型接着剤の具体例としては、イソシアネート樹脂系の湿気硬化型接着剤が挙げられる。湿気硬化型接着剤(特に、イソシアネート樹脂系の湿気硬化型接着剤)が好ましい。湿気硬化型接着剤は、空気中の水分や被着体表面の吸着水、水酸基やカルボキシル基等の活性水素基等と反応して硬化するので、接着剤を塗工後、放置することによって自然に硬化させることができ、操作性に優れる。さらに、硬化のために高温加熱する必要がないので、第2の光学補償層が積層(接着)時に高温加熱されない。その結果、加熱収縮の心配がないので、第3の光学補償層が薄い場合であっても、積層時の割れ等が防止され得る。加えて、硬化型接着剤は、硬化後に加熱されてもほとんど伸縮しない。したがって、第3の光学補償層が薄い場合であって、かつ、得られる液晶パネルを高温条件下で使用する場合であっても、第3の光学補償層の割れ等が防止され得る。なお、上記イソシアネート樹脂系接着剤とは、ポリイソシアネート樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂接着剤の総称である。
上記硬化型接着剤は、例えば、市販の接着剤を使用してもよく、上記の各種硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散し、硬化型樹脂接着剤溶液(または分散液)として調製してもよい。溶液(または分散液)を調製する場合、当該溶液における硬化型樹脂の含有割合は、固形分重量が好ましくは10〜80重量%であり、さらに好ましくは20〜65重量%であり、とりわけ好ましくは25〜65重量%であり、最も好ましくは30〜50重量%である。用いられる溶媒としては、硬化型樹脂の種類に応じて任意の適切な溶媒が採用され得る。具体例としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
上記接着剤の塗工量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、塗工量は、第2の光学補償層の面積(cm2)あたり好ましくは0.3〜3mlであり、さらに好ましくは0.5〜2mlであり、最も好ましくは1〜2mlである。
塗工後、必要に応じて、接着剤に含まれる溶媒は、自然乾燥や加熱乾燥によって揮発させられる。このようにして得られる接着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜15μm、最も好ましくは1μm〜10μmである。
上記接着剤層の押し込み硬度(Microhardness)は、好ましくは0.1〜0.5GPaであり、さらに好ましくは0.2〜0.5GPaであり、最も好ましくは0.3〜0.4GPaである。なお、押し込み硬度は、ビッカース硬度との相関性が公知であるので、ビッカース硬度にも換算できる。押し込み硬度は、例えば、日本電気株式会社(NEC)製の薄膜硬度計(例えば、商品名MH4000、商品名MHA−400)を用いて、押し込み深さと押し込み荷重とから算出することができる。
上記接着剤層の形成方法は、目的に応じて適宜選択される。例えば、上記接着剤の硬化温度は用いる接着剤などに応じて適宜設定される。好ましくは30〜90℃であり、さらに好ましくは40〜60℃である。これらの温度範囲で硬化を行うことで、接着剤層内に発泡が生じることを防ぐことができる。さらに、急激な硬化を防ぎ得る。また、硬化時間は、用いる接着剤や上記硬化温度等に応じて適宜設定される。好ましくは5時間以上であり、さらに好ましくは10時間程度である。これらの条件で接着剤層を形成することで、取り扱いが容易な接着剤層を得ることができる。
[A−6.偏光子]
偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
[A−7.保護層]
保護層は、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムからなる。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いても良い。
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
上記保護層は、透明で、色付きが無いことが好ましい。保護層の厚み方向の位相差Rthは、代表的には−90nm〜+90nmであり、好ましくは−80nm〜+80nm、さらに好ましくは−70nm〜+70nmである。
上記保護層の厚みは、上記の好ましい厚み方向の位相差Rthが得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。上記保護層の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは1〜500μm、特に好ましくは5〜150μmである。
上記保護層の偏光子と反対側には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。
上記保護層の中でも、該保護層が偏光子と光学補償層との間に設けられる場合は、該保護層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは0nm以上20nm以下であり、さらに好ましくは0nm以上10nm以下、特に好ましくは0nm以上6nm以下、最も好ましくは0nm以上3nm以下である。該保護層の面内位相差Reは、好ましくは0nm以上10nm以下、さらに好ましくは0nm以上6nm以下、特に好ましくは0nm以上3nm以下である。該保護層の厚みは、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは35〜95μmである。
偏光子と光学補償層との間に設けられる上記保護層としては、代表的には、セルロース系フィルムが用いられる。上述のように、一般的に保護フィルムとして用いられているセルロース系フィルムは、例えば、トリアセチルセルロースフィルムの場合、厚さ40μmにおいて厚み方向の位相差Rthは40nm程度である。そこで、厚み方向の位相差Rthの大きいセルロース系フィルムについて、厚み方向の位相差Rthを小さくするための適当な処理を施すことにより、上記光学特性を満たす保護層を得ることができる。
厚み方向の位相差Rthを小さくするための上記処理としては、任意の適切な処理方法を採用できる。例えば、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗布したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材を、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を、一般的なセルロース系フィルムに塗布し、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、塗布フィルムを剥離する方法などが挙げられる。
上記セルロース系フィルムを構成する材料としては、好ましくは、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等の脂肪酸置換セルロース系ポリマーが挙げられる。一般的に用いられているトリアセチルセルロースでは、酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7、より好ましくはプロピオン酸置換度を0.1〜1に制御することによって、厚み方向の位相差(Rth)を小さく制御することができる。
上記脂肪酸置換セルロース系ポリマーに、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、厚み方向の位相差Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸置換セルロース系ポリマー100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
上述したような厚み方向位相差Rthを小さく制御するための技術は、適宜組み合わせて用いてもよい。
[A−8.その他の構成要素]
本発明における積層光学フィルムは、さらに他の光学層を備えていてもよい。このような他の光学層としては、目的や画像表示装置の種類に応じて任意の適切な光学層が採用され得る。具体例としては、液晶フィルム、光散乱フィルム、回折フィルム、さらに別の光学補償層(位相差フィルム)等が挙げられる。
本発明における積層光学フィルムは、少なくとも一方に最外層として粘着剤層または接着剤層をさらに有し得る。このように最外層として粘着剤層または接着剤層を有することにより、例えば、他の部材(例えば、液晶セル)との積層が容易になり、偏光板が他の部材から剥離するのを防止できる。上記粘着剤層の材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。粘着剤の具体例としては、上記に記載のものが挙げられる。接着剤の具体例としては、上記に記載のものが挙げられる。好ましくは、吸湿性や耐熱性に優れる材料が用いられる。吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下、液晶セルの反り等を防止できるからである。
実用的には、上記粘着剤層または接着剤層の表面は、偏光板が実際に使用されるまでの間、任意の適切なセパレータによってカバーされ、汚染が防止され得る。セパレータは、例えば、任意の適切なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成され得る。
本発明における積層光学フィルムにおける各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤による処理等によって、紫外線吸収能を付与したものであってもよい。
[B.積層光学フィルムの製造方法]
本発明における積層光学フィルムの製造方法は、本発明の効果が損なわれない範囲において任意の適切な方法が採用され得る。以下に、本発明における積層光学フィルムの製造方法の、具体的手順の一例について説明する。なお、製造方法はこの方法に限定されるものではない。
偏光子の積層は、本発明における製造方法において、任意の適切な時点で行われ得る。例えば、偏光子を予め保護層に積層しておいてもよく、第1の光学補償層に保護層および偏光子を積層した後に第2の光学補償層を貼り合わせてもよく、第1の光学補償層に第2の光学補償層を貼り合わせた後に保護層および偏光子を積層してもよく、第1の光学補償層と第2の光学補償層と第3の光学補償層とを貼り合わせた後に保護層および偏光子を積層してもよい。
保護層と偏光子との積層方法としては、任意の適切な積層方法(例えば、接着)が採用され得る。接着は、任意の適切な接着剤または粘着剤を用いて行われ得る。接着剤または粘着剤の種類は、被着体(すなわち、保護層および偏光子)の種類に応じて適宜選択され得る。上記接着剤または粘着剤の厚みは、好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは30〜180nmであり、最も好ましくは50〜150nmである。
偏光子と保護層を積層したもの(以下、偏光板という)を用いる場合を例として、以下に説明する。
第2の光学補償層の一方の面に、接着剤(例えば、イソシアネート樹脂系接着剤)を塗工する。塗工方法は、任意の適切な方法(代表的には、塗工液を流動展開させる方法)が採用され得る。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法が挙げられる。中でも、塗工効率の観点からスピンコート法、エクストルージョンコート法が好ましい。
基材上に形成された第3の光学補償層を、第2の光学補償層の表面に上記接着剤層を介して転写する。転写は、基材を第3の光学補償層から剥離する工程をさらに含む。また、上記接着剤の硬化を行う。硬化温度は用いる接着剤などに応じて適宜設定される。好ましくは30〜90℃であり、さらに好ましくは40〜60℃である。これらの温度範囲で硬化を行うことで、接着剤層内に発泡が生じることを防ぐことができる。さらに、急激な硬化を防ぎ得る。また、硬化時間は、用いる接着剤や上記硬化温度等に応じて適宜設定される。好ましくは5時間以上であり、さらに好ましくは10時間程度である。得られる接着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜15μm、最も好ましくは1μm〜10μmである。
次に、上記のようにして得られた第2の光学補償層と第3の光学補償層との積層体に、第1の光学補償層を、粘着剤層や接着剤層を介して積層する。このときに用い得る粘着剤層や接着剤層は、前述したものが例示できる。
次に、上記のようにして得られた第1の光学補償層と第2の光学補償層と第3の光学補償層との積層体に、偏光板を、粘着剤層や接着剤層を介して積層する。このときに用い得る粘着剤層や接着剤層は、前述したものが例示できる。
偏光板および第1の光学補償層の光軸がなす角度が所望の範囲となるように方向を合わせて積層することが好ましい。好ましくは、第1の光学補償層の遅相軸が、偏光板の偏光子の吸収軸に対して、実質的に平行又は直交となるように積層される。
偏光板および第2の光学補償層の光軸がなす角度が所望の範囲となるように方向を合わせて積層することが好ましい。好ましくは、第2の光学補償層の遅相軸が、偏光板の偏光子の吸収軸に対して反時計回りに、好ましくは40°〜50°、より好ましくは42°〜48°、さらに好ましくは44°〜46°となるように積層される。
以上のようにして、本発明における積層光学フィルムが得られる。
[C.積層光学フィルムの用途]
本発明における積層光学フィルムは、各種画像表示装置(例えば、液晶表示装置、自発光型表示装置)に好適に使用され得る。適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)が挙げられる。本発明における積層光学フィルムを液晶表示装置に用いる場合には、例えば、黒表示における光漏れ防止および視野角補償に有用である。本発明における積層光学フィルムは、VAモードの液晶表示装置に好適に用いられ、反射型および半透過型のVAモードの液晶表示装置に特に好適に用いられる。また、本発明における積層光学フィルムをELディスプレイに用いる場合には、例えば、電極反射防止に有用である。
[D.画像表示装置]
本発明における画像表示装置の一例として、液晶表示装置について説明する。ここでは、液晶表示装置に用いられる液晶パネルについて説明する。液晶表示装置のその他の構成については、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。本発明においては、VAモードの液晶表示装置が好ましく、反射型および半透過型のVAモードの液晶表示装置が特に好ましい。図2は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。ここでは、反射型の液晶表示装置用液晶パネルを説明する。液晶パネル100は、液晶セル20と、液晶セル20の上側に配置された位相差板30と、位相差板30の上側に配置された偏光板10とを備える。位相差板30としては、目的および液晶セルの配向モードに応じて任意の適切な位相差板が採用され得る。目的および液晶セルの配向モードによっては、位相差板30は省略され得る。上記偏光板10は、上記で説明した本発明における積層光学フィルムである。液晶セル20は、一対のガラス基材21、21’と、該基材間に配された表示媒体としての液晶層22とを有する。下基材21’の液晶層22側には、反射電極23が設けられている。上基材21には、カラーフィルター(図示せず)が設けられている。基材21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー24によって制御されている。
例えば、反射型VAモードの場合には、このような液晶表示装置(液晶パネル)100は、電圧無印加時には、液晶分子は基材21、21’面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基材間に負の誘電率異方性を有するネマティック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で、偏光板10を通過した直線偏光の光を上基材21の面から液晶層22に入射させると、入射光は垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、反射電極23で反射されて再び液晶層22を通過し、上基材21から出射される。出射光の偏光状態は入射時と変わらないので、当該出射光は偏光板10を透過し、明状態の表示が得られる。電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基材面に平行に配向する。この状態の液晶層22に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において、反射電極23で反射し上基材から出射された光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、偏光板10で吸収されて暗状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により明状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光板10からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。