JP2008063655A - 板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.10%以下、Si:2.5〜7.0%、Mn:0.01〜0.30%、Cu:0.01〜0.40%、S:0.001〜0.050%、酸可溶性Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブから一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するにあたり、熱間圧延工程における仕上圧延出側の板幅方向エッジからの距離で10〜30mmの間における鋼板温度を900〜1100℃とし、かつ、熱延板焼鈍を2段の熱処理サイクルで行い、その一次均熱の鋼板温度を1000〜1150℃とし、さらに、その二次均熱の鋼板温度を850〜950℃とするとともに二次均熱温度の保持時間を10〜300秒とする。
【選択図】図1
Description
特許文献3によれば、熱間圧延工程における最終パス処理温度すなわち仕上圧延出側温度を1000℃とすることで、S化合物およびSe化合物を均一微細に析出させ、これを析出核としてAlNを均一微細析出させる手法が開示されているが、板幅方向全域にわたり仕上圧延出側温度を厳密に制御することは工業的に困難でありコストも大きくなる。
その結果、熱間圧延工程における仕上圧延出側温度を適切な範囲に制御することでS化合物やSe化合物を均一微細に析出させるとともに、最終冷延前の熱延板焼鈍または中間焼鈍の熱処理サイクルを二段にしてその温度を適切に制御することでAlNを均一微細に析出させることにより、二次再結晶焼鈍時にインヒビター強度を板幅方向で均一にすることができ、その結果、磁束密度の高い方向性電磁鋼板が安定的に製造できることを見出した。
(1)質量%で、C:0.10%以下、Si:2.5〜7.0%、Mn:0.01〜0.30%、Cu:0.01〜0.40%、S:0.001〜0.050%、酸可溶性Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1280℃以上の温度で加熱し、熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍を施し、冷間圧延を施して最終製品厚の冷延鋼板とした後、脱炭焼鈍を施し、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍および純化焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、熱間圧延工程における仕上圧延出側の板幅方向エッジからの距離で10〜30mmの間における鋼板温度を900℃以上、1100℃以下とし、かつ、熱延板焼鈍を2段の熱処理サイクルで行い、その一次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を1000℃以上、1150℃以下とし、さらに、その二次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を850℃以上、950℃以下とするとともに二次均熱温度の保持時間を10秒以上、300秒以内とすることを特徴とする板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)前記スラブが、さらに、Seを、Sとの合計量で0.001〜0.050質量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)SとSeの質量比S/Seが0.3≦S/Se≦5.0であることを特徴とする(4)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(6)前記スラブが、さらに、Bi、Pb、Teのいずれか1種あるいは2種以上を合計して0.0005〜0.5質量%含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明者らは、この原因が板幅方向の析出物分散状態の不均一性、特にAlNの不均一性に起因するとの考えに基づき、AlN析出状態を均一にするために、熱間圧延工程における仕上圧延出側温度と、最終冷延前焼鈍(一回の冷間圧延を施す場合は熱延板焼鈍であり、二回以上の冷間圧延を施す場合は最終冷間圧延前の中間焼鈍である)の熱処理サイクルの条件との最適な組み合わせについて種々検討した。
また、こうして得られた熱延鋼板に、一回の冷間圧延を施す場合は引き続く熱延板焼鈍において、また、二回以上の冷間圧延を施す場合は最終冷間圧延前の中間焼鈍において、一次均熱の鋼板温度を1000℃以上、1150℃以下とし、二次均熱の鋼板温度を850℃以上、950℃以下とし、その保持時間を10秒以上、300秒以内とする二段サイクルの熱処理を施すことにより、板幅方向全域にわたってAlNの均一微細分散が実現できることを見出した。
本発明は、上記のような組み合わせについての知見に基づき、さらに検討した結果なされたものである。
まず、本発明で用いる鋼素材の成分の限定理由について説明する。
Siは、鋼の電気抵抗を高めて鉄損の一部を構成する渦電流損失を低減するのに極めて有効な元素であり、質量%で2.5%以上7.0%以下の範囲に制御しなければならない。2.5%未満では製品の渦電流損失を抑制できず、また7.0%を超えると加工性が劣化するのでいずれも好ましくない。
Sは、上述したMn及びCuとインヒビターを形成する重要な元素であり、質量%で0.001%以上0.050%以下の範囲に制御する必要がある。上記範囲を逸脱すると十分なインヒビター効果が得られない。
Nは、上述した酸可溶性AlとAlNを形成する重要な元素であり、質量%で0.002%以上0.015%以下の範囲に制御する必要がある。上記範囲を逸脱すると十分なインヒビター効果が得られない。
ここで、上記の比の上限を5以下としたのは、Se添加による析出物の微細化かつ多数化効果を得るためであり、下限を0.3以上としたのは、熱間圧延に先立つスラブ加熱において、Se化物の溶体化を十分に成すためである。一般にS化物よりもSe化物の方が溶体化し難く、一定量以上のSeを添加するとスラブ加熱でSe化物が溶け残り、熱間圧延における均一微細析出を阻害してしまう。
上記の条件を満たすように成分を調整された溶鋼は、転炉または電気炉等で溶製され、連続鋳造あるいは造塊・分塊圧延によりスラブとされる。スラブは公知の方法で加熱される。本発明では、MnS、MnSe、AlN等のインヒビター成分を充分に溶体化させるため1280℃以上の高温でスラブ加熱を行う。1280℃未満の加熱温度では前記インヒビターを完全に溶体化することができない。
本発明では、板幅方向のインヒビターを均一微細析出させるために、仕上圧延出側において、板幅方向のエッジからの距離で10〜30mmの間における鋼板温度が900℃〜1100℃の間となるよう制御する。
こうして得られた熱延板に、一回の冷間圧延を施す場合は引き続く熱延板焼鈍において、二回以上の冷間圧延を施す場合は最終冷間圧延前の中間焼鈍において、二段サイクルの熱処理を施し、γ→α変態を利用することにより板幅方向全域にわたってAlNの均一微細分散を実現する。
また、二次均熱温度の上限を950℃とするのは、一定量以上のα相率を確保するためであり、下限を850℃とするのは、できるだけ短時間で一定量以上のAlN析出量を確保するためである。
冷却速度の上限を150℃/sとするのは、150℃/s超よりも速く冷却すると、二次再結晶が不安定となり、製品歩留りを悪化させる危険性があるからであり、下限を10℃/sとするのは、10℃/s未満より遅く冷却すると固溶Cがセメンタイトとして析出を開始し、仕上焼鈍前の鋼板組織が著しく劣化するためである。
冷延鋼板は、続いて脱炭焼鈍を施される。脱炭焼鈍は通常行われるように、湿水素中での熱処理により鋼板中のCを製品板の磁気時効劣化がない領域まで下げ、同時に冷延した鋼板を一次再結晶させ二次再結晶の準備をする。この脱炭焼鈍に先立ちあるいはその前段で特許文献8や特許文献9に開示されるように80℃/sec以上の加熱速度で再結晶させることも鉄損を向上させるために好ましい。
なお、実施例に用いた条件はその確認のための一条件例であり、本発明は、この例に限定されるものではない。本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、本発明は種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、表2に示した温度で仕上圧延した。この熱延板コイルのエッジ部(エッジからの距離で10〜30mmの範囲)および板幅中央部からサンプル試料を切り出し、表2に示した温度で熱延板焼鈍を施し、冷延処理した。この後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。ここで得られた製品板の磁気特性B8(T)値(800A/mで磁化した際の鋼板の磁束密度)およびW17/50(W/kg)値(鋼板磁束密度を1.7Tまで50Hzで励磁した際の鉄損)を表2に示す。なお、磁気特性B8、W17/50値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。本発明例では、板幅方向エッジ部、中央部ともにB8:1.91(T)以上、W17/50:0.85(W/kg)以下となる範囲にある。
表3に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、表4に示したエッジ部温度で仕上圧延し、熱延板焼鈍を施し、冷延処理した。この後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。これを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁膜を塗布、焼付けした後、レーザー照射による磁区細分化処理を施した。ここで得られた鋼板の磁気特性B8(T)値およびW17/50(W/kg)値を表4に示す。なお、磁気特性B8、W17/50値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。本発明例では、B8:1.93(T)以上、W17/50:0.80(W/kg)以下の範囲にある。
表5に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、表6に示したエッジ部温度で仕上圧延し、熱延板焼鈍を施した後、一次冷延処理した。この後、表6に示した温度で中間焼鈍を施し、二次冷延処理して目的の板厚試料を得た後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。これを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁膜を塗布、焼付けした後、レーザー照射による磁区細分化処理を施した。ここで得られた鋼板の磁気特性B8(T)値およびW17/50(W/kg)値を表6に示す。なお、磁気特性B8、W17/50値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。本発明例では、B8:1.93(T)以上、W17/50:0.80(W/kg)以下の範囲にある。
表7に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、表8に示した温度で仕上圧延、熱延板焼鈍を施し、冷延処理した。この後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。これを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁膜を塗布、焼付けした後、レーザー照射による磁区細分化処理を施した。ここで得られた鋼板の磁気特性B8(T)値およびW17/50(W/kg)値を表8に示す。なお、磁気特性B8、W17/50値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。本発明のSeを含有する例では、B8:1.92(T)以上、W17/50:0.83(W/kg)以下の範囲にあり、特に◎の例では、B8:1.93(T)以上、W17/50:0.81(W/kg)以下のより好ましい範囲にある。
表9に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、仕上圧延出側温度が1000〜1050℃となるように仕上圧延を施した後、一次均熱温度を1100℃かつ二次均熱温度を900℃、二次均熱温度の保持時間を150秒として、二次均熱温度から室温(25℃)への鋼板冷却速度を変更しながら熱延板焼鈍を施し、冷延処理した。この後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。これを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁膜を塗布、焼付けした後、レーザー照射による磁区細分化処理を施した。ここで得られた鋼板の磁気特性B8(T)値を図1に示す。なお、磁気特性B8値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。平均鋼板冷却速度が10℃/sec以上、150℃/sec以下の範囲では、B8:1.91(T)以上を示す。
表10に示す成分を含み、残部は不可避的不純物とFeよりなる鋼スラブを、真空溶解により調製し、1350℃で加熱後40mmまで粗圧延し、表11に示した温度で仕上圧延、熱延板焼鈍を施し、冷延処理した。この後、湿水素中で850℃で150秒の脱炭焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。これを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁膜を塗布、焼付けした後、レーザー照射による磁区細分化処理を施した。ここで得られた鋼板の磁気特性B8(T)値およびW17/50 (W/kg)値を表11に示す。なお、磁気特性B8、W17/50値は、単板試験法で測定した10試料の平均値を示した。本発明のBi、Pb、Teのいずれかを含有する例は、B8:1.93(T)以上、W17/50:0.80(W/kg)以下の範囲である。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.10%以下、Si:2.5〜7.0%、Mn:0.01〜0.30%、Cu:0.01〜0.40%、S:0.001〜0.050%、酸可溶性Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1280℃以上の温度で加熱し、熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍を施し、冷間圧延を施して最終製品厚の冷延鋼板とした後、脱炭焼鈍を施し、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍および純化焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、熱間圧延工程における仕上圧延出側の板幅方向エッジからの距離で10〜30mmの間における鋼板温度を900℃以上、1100℃以下とし、かつ、熱延板焼鈍を2段の熱処理サイクルで行い、その一次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を1000℃以上、1150℃以下とし、さらに、その二次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を850℃以上、950℃以下とするとともに二次均熱温度の保持時間を10秒以上、300秒以内とすることを特徴とする板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.10%以下、Si:2.5〜7.0%、Mn:0.01〜0.30%、Cu:0.01〜0.40%、S:0.001〜0.050%、酸可溶性Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1280℃以上の温度で加熱し、熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍を施し、中間焼鈍を挟んで二回以上の冷間圧延を施して最終製品厚の冷延鋼板とした後、脱炭焼鈍を施し、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍および純化焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、熱間圧延工程における仕上圧延出側の板幅方向エッジからの距離で10〜30mmの間における鋼板温度を900℃以上、1100℃以下とし、かつ、最終冷間圧延前の中間焼鈍を2段の熱処理サイクルで行い、その一次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を1000℃以上1150℃以下とし、さらに、その二次均熱の板幅方向中心の鋼板温度を850℃以上、950℃以下とするとともに二次均熱温度の保持時間を10秒以上、500秒以内とすることを特徴とする板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記熱延板焼鈍あるいは最終冷間圧延前の中間焼鈍の二次均熱温度から室温までの板幅方向中心の平均鋼板冷却速度が10℃/sec以上、150℃/sec以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記スラブが、さらに、Seを、Sとの合計量で0.001〜0.050質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
- SとSeの質量比S/Seが0.3≦S/Se≦5.0であることを特徴とする請求項4に記載の板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記スラブが、さらに、Bi、Pb、Teのいずれか1種あるいは2種以上を合計して0.0005〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の板幅方向にわたり安定して磁気特性が得られる方向性電磁鋼板の製造方法。
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