JP2008042053A - 半導体発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】特殊な工程を追加しないで、放熱性と、低しきい値電流とを実現することの可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】基板10の一面側に半導体積層構造11を備える。半導体積層構造11は、基板10側から、下部DBRミラー層12、下部スペーサ層13、活性層14、上部スペーサ層15、電流狭窄層16、上部DBRミラー層17、コンタクト層18をこの順に積層して構成され、半導体積層構造11には、柱状のメサ部19と柱状の放熱部20とがそれぞれ一体に形成されている。メサ部19は電流狭窄層16の未酸化領域(電流注入領域16B)を含む領域に対応して形成され、放熱部20は電流狭窄層16の酸化領域(電流狭窄領域16A)に対応して形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】基板10の一面側に半導体積層構造11を備える。半導体積層構造11は、基板10側から、下部DBRミラー層12、下部スペーサ層13、活性層14、上部スペーサ層15、電流狭窄層16、上部DBRミラー層17、コンタクト層18をこの順に積層して構成され、半導体積層構造11には、柱状のメサ部19と柱状の放熱部20とがそれぞれ一体に形成されている。メサ部19は電流狭窄層16の未酸化領域(電流注入領域16B)を含む領域に対応して形成され、放熱部20は電流狭窄層16の酸化領域(電流狭窄領域16A)に対応して形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、上面から光を射出する半導体発光素子に関する。
面発光型半導体レーザは、従来の端面射出型のものとは異なり、基板に対して直交する方向に光を射出するものであり、同じ基板上に2次元アレイ状に多数の素子を配列することが可能であることから、近年、デジタルコピー機やプリンタ機用の光源として注目されている。
従来、この種の面発光型半導体レーザは、例えば、図8、図9(A),(B)示したように、基板110上に半導体積層構造111を備えている。なお、図8は面発光型半導体レーザの上面構成を、図9(A)は図8のA−A矢視方向の断面構成を、図9(B)は図8のB−B矢視方向の断面構成をそれぞれ表すものである。
この半導体積層構造111は、下部多層膜反射鏡112、下部スペーサ層113、発光領域114Aを有する活性層114、上部スペーサ層115、電流狭窄層116、上部多層膜反射鏡117、コンタクト層118を基板110側からこの順に積層して構成したものである。ここで、電流狭窄層116には、活性層114への電流注入効率を高め、しきい値電流を下げるために、電流狭窄領域116Aが形成されており、この電流狭窄領域116Aの形成されていない領域が電流注入領域116Bとなっている。
また、この半導体積層構造111には、発光領域114Aの周囲を下部多層膜反射鏡112の一部まで選択的にエッチングすることにより、メサ部119が形成されており、さらに、メサ部119と同じ高さの橋桁部120および台座部121がメサ部119と一体に形成されている。メサ部119の上面以上の表面には絶縁膜122が形成されている。メサ部119の上面には中央部分に開口部123Aを有する上部電極123が形成されており、上部電極123は橋桁部120上の配線部124を介して台座部121上の電極パッド125と電気的に接続されている。また、基板110の裏面側には下部電極126が形成されている。
この面発光型半導体レーザ100では、電極パッド125および下部電極126を介して供給された電流は電流狭窄層116により狭窄されたのち活性層114に注入され、ここで発光し、これが一対の下部多層膜反射鏡112および上部多層膜反射鏡117で反射を繰り返しながらレーザ光として開口部123Aから射出される。
ところで、上記した面発光型半導体レーザ100の電流狭窄層116は、一般に、以下のようにして形成される。まず、図10、図11(A),(B)に示したように、基板110上に半導体積層構造111Dを形成したのち、下部多層膜反射鏡112の一部まで選択的にエッチングすることによりメサ部119を形成すると共に、メサ部119と繋がった橋桁部120および台座部121を形成する。次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、電流狭窄層116Dを選択的に酸化する。このとき、電流狭窄層116Dは、図10、図11(A),(B)の矢印で示したように、メサ部119、橋桁部120および台座部121のそれぞれの側面から酸化される。これにより、電流狭窄層116Dのうち側面から所定の深さまでの領域が酸化アルミニウムを含む酸化領域(絶縁領域)となり、その領域が電流狭窄領域116Aとして機能する。そして、それよりも奥の領域が未酸化領域となり、その領域が電流注入領域116Bとして機能する。このようにして、電流狭窄領域116Aおよび電流注入領域116Bからなる電流狭窄層116が形成される。
ところで、台座部121は電極パッド125上にワイヤボンディングすることができる程度の大きさとなっており、通常、メサ部119よりも大きい。そのため、図9(B)に示したように、台座部121の内部に未酸化領域(電流注入領域116B)が残ってしまうので、電極パッド125および下部電極126を介して電流を供給すると、図9(B)の一点鎖線の矢印で示したように、本来、流れる必要のない台座部121の内部にまで電流が流れてしまい、活性層114への電流注入効率が低下し、しきい値電流が大きくなるという問題があった。
そこで、図12および図13(A),(B)、または特許文献1に記載されているように、メサ部119と橋桁部120との間に橋桁部127および放熱部128をメサ部119側から順に設けると共に、橋桁部127を上部多層膜反射鏡117までエッチングして空洞129を設けたり、または、図示しないが、空洞129を設ける代わりに、台座部121にイオン注入して台座部121内の未酸化領域(電流注入領域116B)に高抵抗化領域を形成することにより、台座部121内部の電流通路を遮断することが考えられる。ここで、上記放熱部128はメサ部119から発せられる熱を放散する機能を有するので、特許文献1では、しきい値電流を低くすることができるだけでなく、放熱性を良くすることもできる。なお、図12は特許文献1の面発光型半導体レーザの上面構成を、図13(A)は図12のA−A矢視方向の断面構成を、図13(B)は図12のB−B矢視方向の断面構成をそれぞれ表すものである。
しかしながら、特許文献1の方策では、台座部220内部の電流通路を遮断するために、空洞を設けたり、イオン注入するなど、特殊な工程を追加することが必要となるという問題があった。そして、このような問題は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの他の半導体発光素子においても同様に発生していた。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、特殊な工程を追加しないで、放熱性と、低しきい値電流とを実現することの可能な半導体発光素子を提供することにある。
本発明の半導体発光素子は、基板上に、第1導電体層、活性層および第2導電体層がこの順に配置されると共に、活性層の第1導電体層側および第2導電体層側の少なくとも一方に、未酸化領域および酸化領域を有する電流狭窄層が配置された半導体積層構造を備えたものである。半導体積層構造は、未酸化領域を含んで形成された柱状のメサ部と、酸化領域の一部を含んで形成されると共にメサ部と一体的に形成された柱状の放熱部とを有している。なお、第1多層膜反射鏡と活性層との間や、活性層と第2多層膜反射鏡との間に何らかの層が挿入されていてもよい。
本発明の半導体発光素子では、未酸化領域を含んで柱状のメサ部を形成すると共に、メサ部と一体的に柱状の放熱部を形成するようにしたので、活性層で生じた熱は基板だけでなく放熱部からも放散される。また、放熱部を酸化領域の一部を含んで形成するようにしたので、放熱部の内部では第1導電体層と第2導電体層とが電流狭窄層(酸化領域)によって互いに絶縁分離されており、メサ部に供給された電流が放熱部の内部を第2導電体層から第1導電体層に流れることはない。
ここで、上記メサ部や放熱部は通常のエッチングにより形成することが可能なものである。また、メサ部に未酸化領域を形成し、かつ放熱部に酸化領域だけを形成することは、メサ部および放熱部の形状および大きさを酸化速度および酸化時間などに応じて適切に調整することにより可能なものであり、このような調整は通常の酸化工程においても行われているものである。従って、メサ部および放熱部を形成する際に、特殊な工程を利用する必要はない。
本発明の半導体発光素子によれば、未酸化領域を含んで柱状のメサ部を形成し、かつ柱状の放熱部をメサ部と一体的に形成すると共に酸化領域の一部を含んで形成するようにしたので、特殊な工程を利用することなく、活性層で生じた熱を基板だけでなく放熱部からも放散させることができ、さらに、メサ部に供給された電流をメサ部の内部の未酸化領域に効率よく流すことができる。従って、特殊な工程を追加しないで、放熱性と、低しきい値電流とを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る面発光型半導体レーザ1の上面図を表すものである。図2(A)は図1のA−A矢視方向の断面構成を、図2(B)は図1のB−B矢視方向の断面構成をそれぞれ表すものである。
本実施の形態の面発光型半導体レーザ1は、基板10の一面側に半導体積層構造11を備えたものである。この半導体積層構造11は、基板10側から、下部DBRミラー層12(多層膜反射鏡)、下部スペーサ層13、活性層14、上部スペーサ層15、電流狭窄層16、上部DBRミラー層17(多層膜反射鏡)、コンタクト層18をこの順に積層して構成されている。この半導体積層構造11には、柱状のメサ部19と柱状の放熱部20とがそれぞれ一体に形成されている。
基板10は、例えばn型GaAs基板であり、このGaAs基板は、例えば一般的な(100)面基板であることが好ましいが、(n11)面基板(nは整数)などの特殊な基板であってもよい。
下部DBRミラー層12は、低屈折率層および高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成されたものである。低屈折率層は例えば光学厚さがλ/4(λは発振波長)のn型Alx1Ga1-x1Asからなり、高屈折率層は例えば光学厚さがλ/4のn型Alx2Ga1-x2Asからなる。なお、n型不純物としては、例えばケイ素(Si)またはセレン(Se)などが挙げられる。
下部スペーサ層13は、例えばAlx3Ga1-x3As(0<x3<1)からなる。活性層14は、例えばGaAs系材料からなる。この活性層14では、後述の電流注入領域16Bと対向する領域が発光領域14Aとなる。上部スペーサ層15は、例えばAlx4Ga1-x4As(0<x4<1)からなる。これら下部スペーサ層13、活性層14および上部スペーサ層15は、不純物が含まれていないことが望ましいが、p型またはn型不純物が含まれていてもよい。p型不純物としては、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などが挙げられる。
電流狭窄層16はメサ部19および放熱部20の側面から所定の深さまでの領域に電流狭窄領域16Aを有し、それ以外の領域が電流注入領域16Bとなっている。この電流注入領域16Bは、メサ部19の内部にだけ形成されており、放熱部20の内部には、電流狭窄領域16Aだけが形成されており、電流注入領域16Bは存在していない。従って、放熱部20の内部において、下部DBRミラー層12と上部DBRミラー層17とは互いに絶縁分離されており、上部DBRミラー層17から下部DBRミラー層12へ電流を流すことの可能な通路は存在しない。
ここで、電流注入領域16Bは、例えばp型Alx5Ga1-x5As(0<x5≦1)からなる。電流狭窄領域16Aは、Al2 O3 (酸化アルミニウム)を含んで構成され、後述するように、Alx5Ga1-x5Asからなる電流狭窄層16Dをメサ部19の側面から酸化することにより得られたものである。従って、電流狭窄層16は電流を狭窄する機能を有している。
上部DBRミラー層17は、低屈折率層および高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成されたものである。低屈折率層は例えば光学厚さがλ/4のp型Alx6Ga1-x6As(0<x6<1)からなり、高屈折率層は例えば光学厚さがλ/4の p型Alx7Ga1-x7As(0<x7<1)からなる。コンタクト層18は、例えばp型GaAsにより構成されている。
メサ部19は、電流狭窄層16の電流注入領域16Bを含んで形成されたものであり、例えば直径30μm程度の円筒形状となっている。この直径は、後述の酸化工程においてメサ部19の内部に所定の大きさの未酸化領域(電流注入領域16B)が残るようにするために、酸化工程における酸化速度および酸化時間などに応じて適切に調整されている。
放熱部20は、橋桁部21および壁部22からなり、メサ部19の周囲、すなわち電流狭窄層16の電流狭窄領域16Aの一部を含んで設けられている。ここで、橋桁部21および壁部22の形状および大きさは、メサ部19の直径とは逆に、酸化工程において橋桁部21および壁部22の内部に未酸化領域(電流注入領域16B)が残らないようにするために、酸化工程における酸化速度および酸化時間などに応じて適切に調整されている。例えば、橋桁部21および壁部22の形状および大きさを、メサ部19の内部の酸化進行距離の2倍よりも狭い幅となるようにすることが好ましい。
橋桁部21は、例えば、メサ部19の周囲に断続的に設けられた4つの橋桁子21Aからなり、これら4つの橋桁子21Aはメサ部1の側面から放射状に延在している。これら橋桁子21Aは、メサ部19の内部の活性層14とつながっており、発光領域14Aから生じた熱を引き抜いて壁部22に伝播する機能を有している。
ところで、例えば、電流狭窄層16DをAlAs、またはGaを微量に含むAlGaAsにより構成した場合に、図3(A)に示したように、仮に、メサ部119の側面に何も構造物を設けずに電流狭窄層16Dを酸化すると、図3(B)に示したように、電流狭窄層16Dの外縁が酸化されて電流狭窄領域16Aとなり、その内部は酸化されずに電流注入領域16Bとなる。このとき、電流注入領域16Bは[011]方向および[01−1]方向に、対角線を有する四辺形(例えば菱形)状となり、面内異方性を有している。このように電流注入領域16Bが[011]方向および[01−1]方向に対角線を有する四辺形となるのは、AlAs、またはGaを微量に含むAlGaAsの酸化速度が、[011]方向および[01−1]方向と、これらの方向と45°の角度をなす[001]方向および[010]方向とで異なるからである。つまり、菱形の対角線方向が酸化されにくい結晶方位に相当し、菱形の対角線と45°の角度をなす方向が酸化され易い結晶方位に相当する。
そこで、本実施の形態では、電流注入領域16Bが所定の形状となるように、メサ部119の側面に橋桁子21Aを設けるようにした。例えば、電流狭窄層16DをAlAs、またはGaを微量に含むAlGaAsにより構成した場合に、電流注入領域16Bを円形状にしたいときには、図3(C)に示したように、メサ部19の側面のうち酸化され易い結晶方位([001]および[010])に橋桁子21Aを設けるようにした。これにより、[001]方向および[010]方向の酸化速度が橋桁子21Aによって遅くなり、[001]方向および[010]方向の酸化速度と、[011]方向および[01−1]方向の酸化速度とを互いに等しくすることができる。その結果、図3(D)に示したように、電流注入領域16Bは円形状となり、面内等方性を有するようになる。
なお、電流狭窄層16DをAlAs、またはGaを微量に含むAlGaAsにより構成した場合に、電流注入領域16Bを菱形状にしたいときには、上記の場合とは逆に、酸化されにくい結晶方位([011]方向および[01−1]方向)に橋桁子21Aを設ければよい。
また、電流狭窄層16DをGaを多く含むAlGaAsなど、結晶方位に酸化速度の依存性がない材料により構成した場合に、電流注入領域16Bを円形状にしたいときには、例えば、橋桁子21Aを多数設けると共に、各橋桁子21Aをメサ部19の側面に等間隔に設けることが好ましい。その逆に、電流注入領域16Bを菱形状にしたいときには、例えば、4つの橋桁子21Aをメサ部19の側面に互いに等間隔に設ければよい。
壁部22は、メサ部19の周囲に連続的に設けられており、環状となっている。この壁部22は、メサ部19の側面から放射状に延在する各橋桁子21Aと繋がっており、これにより、橋桁部21を介してメサ部19とも繋がっている。これにより、壁部22とメサ部19の側面との間に凹部23が形成されるので、例えば後述の埋込部24によって壁部22に応力が発生したとしてもその応力による歪がメサ部19に伝達されることはほとんどない。また、壁部22はメサ部19側およびその反対側共に側面を有しており、その表面積が大きいことから、橋桁部21から伝播されてきた熱を壁部22から放散する機能を有している。
本実施の形態の面発光型半導体レーザ1にはまた、壁部22のメサ部19とは反対側の領域に埋込部24が設けられており、これにより、面発光型半導体レーザ1の光射出側の表面が平坦化されている。メサ部19の側面および壁部22のメサ部19の側面を含む凹部23の内壁、放熱部20の上面、および埋込部24の上面には絶縁膜25が設けられている。メサ部19の上面には、その中央部分に開口部26Aを有する環状の上部電極26が形成されている。この上部電極26は放熱部20上の配線部27を介して埋込部24上の電極パッド28と電気的に接続されている。また、基板10の裏面側には下部電極29が形成されている。
ここで、埋込部24は、上部電極26と、電極パッド28との間を電気的に接続する配線部27がメサ部19の側面によって段切れを起こさないようにするためのものであり、例えば、ポリイミドなどの硬化性樹脂からなる。絶縁膜25は、例えば、SiO2 などの酸化物や、SiNなどの窒化物などにより構成されている。上部電極26、配線部27および電極パッド28は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものであり、メサ部19上部のコンタクト層18と電気的に接続されている。下部電極29は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とを基板10の側から順に積層した構造を有しており、基板10と電気的に接続されている。
このような構成の面発光型半導体レーザ1は、例えば次のようにして製造することができる。
図4および図5(A),(B)は、その製造方法を工程順に表すものである。なお、図4は製造過程の素子の上面構成を、図5(A)は図4のA−A矢視方向の断面構成を、図5(B)は図4のB−B矢視方向の断面構成をそれぞれ表すものである。
ここでは、GaAsからなる基板10上の化合物半導体層を、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属化学気相成長)法により形成する。この際、化合物半導体層の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMIn)、アルシン (AsH3)を用い、ドナー不純物の原料としては、例えば、H2 Seを用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば、ジメチルジンク(DMZ)を用いる。
まず、基板10上に、下部DBRミラー層12,下部スペーサ層13,活性層14,上部スペーサ層15,電流狭窄層16D(Dは未酸化であることを意味する。),上部DBRミラー層17およびコンタクト層18をこの順に積層したのち、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)法により、コンタクト層18から下部DBRミラー層12の一部まで選択的にエッチングする。これにより、円筒状のメサ部19と、メサ部19の側面から放射状に延在する橋桁部21と、橋桁部21を介してメサ部19に繋がると共に、メサ部19の周囲を凹部23を介して連続的に囲む壁部22とがそれぞれ形成される(図4および図5(A),(B))。続いて、コンタクト層18を選択的にエッチングする。これにより、メサ部19の上面にだけコンタクト層18を残す。
次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、電流狭窄層16Dを選択的に酸化する。このとき、電流狭窄層16Dは、図4および図5(A),(B)の矢印で示したように、メサ部19および放熱部20のそれぞれの側面から酸化される。これにより、電流狭窄層16Dのうち側面から所定の深さまでの領域が酸化アルミニウムを含む酸化領域(絶縁領域)となり、その領域が電流狭窄領域16Aとして機能する。そして、それよりも奥の領域が未酸化領域となり、その領域が電流注入領域16Bとして機能する。このようにして、電流狭窄領域16Aおよび電流注入領域16Bからなる電流狭窄層16が形成される。
次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition) 法により、表面全体に渡って絶縁材料を堆積させたのち、エッチングにより、堆積させた絶縁材料のうちメサ部19の上面に対応する部分を選択的に除去して、コンタクト層18を露出させる。これにより、絶縁膜25が形成される。
次に、例えば真空蒸着法により、表面全体に渡って金属材料を積層させたのち、例えば選択エッチングにより、メサ部19の上面(コンタクト層18の露出している部分)に、開口部26Aを有する環状の上部電極26を形成すると共に、放熱部20上に配線部27を、埋込部24上に電極パッド28をそれぞれ形成する。さらに、基板10の裏面にも、下部電極29を形成する。最後に、ダイシングにより基板10を小さく分割してチップ状にする。このようにして面発光型半導体レーザ1が製造される。
ところで、上記したように、メサ部19や放熱部20は通常のエッチングにより形成することが可能なものである。また、電流狭窄層16はメサ部19および放熱部20の形状および大きさを酸化速度および酸化時間などに応じて適切に調整することにより形成することが可能なものであり、このような調整は通常の酸化工程においても行われているものである。従って、メサ部19や放熱部20を形成する際に、特殊な工程を利用する必要はない。
この面発光型半導体レーザ1では、電極パッド28および下部電極29を介して供給された電流は電流狭窄層16により狭窄されたのち活性層14に注入され、ここで発光し、これが一対の下部DBRミラー層12および上部DBRミラー層17で反射を繰り返しながらレーザ光として開口部26Aから射出される。
このとき、橋桁部21は発光領域14Aで生じた熱を壁部22に放散させるための通路として機能する。従って、活性層14の発光領域14Aで生じた熱を、基板10だけでなく、橋桁部21を介して壁部22からも放散させることが可能である。放熱部20の内部の電流狭窄層16には未酸化領域(電流注入領域16B)は存在せず、酸化領域(電流狭窄領域16A)しかない。そのため、放熱部20の内部では上部DBRミラー層17と下部DBRミラー層12とが電流狭窄層16(電流狭窄領域16A)によって互いに絶縁分離されており、メサ部19に供給された電流が放熱部20の内部を上部DBRミラー層17から下部DBRミラー層12に流れることはない。
以上のことから、本実施の形態の面発光型半導体レーザ1では、未酸化領域(電流注入領域16B)を含んで柱状のメサ部19を形成し、かつ柱状の放熱部20をメサ部19と一体的に形成すると共に酸化領域(電流狭窄領域16A)の一部を含んで形成するようにしたので、特殊な工程を利用することなく、活性層14で生じた熱を基板10だけでなく放熱部20からも放散させることができ、さらに、メサ部19に供給された電流をメサ部19の内部の未酸化領域(電流注入領域16B)に効率よく流すことができる。従って、特殊な工程を追加しないで、放熱性と、低しきい値電流とを実現することができる。
また、本実施の形態では、壁部22のメサ部19とは反対側の領域に埋込部24を設けるようにしたので、上部電極26と、電極パッド28との間を電気的に接続する配線部27がメサ部19の側面によって段切れを起こす虞がない。これにより、配線部27を形成する際に、めっき工程を用いる必要がなくなり、めっき工程をなくすることができる。また、配線部27を上部電極26および電極パッド28と同様の方法により一体的に形成することも可能となる。
また、本実施の形態では、壁部22をメサ部19の周囲に連続的に設けると共に、壁部22とメサ部19の側面との間に凹部23を形成するようにしたので、埋込部24によって壁部22に応力が発生したとしてもその応力による歪がメサ部19に伝達されることはほとんどない。これにより、壁部22のメサ部19とは反対側の領域に埋込部24を設けた場合であっても、面発光型半導体レーザ1の信頼性を損なう虞はない。
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、上記実施の形態では、埋込部24を設けていたが、図6に示したように、埋込部24をなくしてもよい。
また、上記実施の形態では、メサ部19を1つだけ設けた場合について説明したが、例えば、図7に示したように、複数のメサ部19をアレイ状に配置すると共に、各メサ部19の周辺の放熱部20を碁盤の目状に組み合わせて構成してもよい。
また、上記実施の形態では、AlGaAs系の化合物半導体レーザを例にして本発明を説明したが、他の化合物半導体レーザ、例えばGaInP系、AlGaInP系、InGaAs系、GaInP系、InP系、GaN系、GaInN系、GaInNAs系などのなど化合物半導体レーザにも適用可能である。また、本発明は面発光型半導体レーザにだけ適用されるものではなく、発光ダイオードなどの他の半導体発光素子においても同様に適用可能である。
1…面発光型半導体レーザ、10…基板、11…半導体積層構造、12…下部DBRミラー層、13…下部スペーサ層、14…活性層、14A…発光領域、15…上部スペーサ層、16,16D…電流狭窄層、16A…電流狭窄領域、16B…電流注入領域、17…上部DBRミラー層、18…コンタクト層、19…メサ部、20…放熱部、21…橋桁部、21A…橋桁子、22…壁部、23…凹部、24…埋込部、25…絶縁膜、26…上部電極、26A…開口部、27…配線部、28…電極パッド、29…下部電極。
Claims (6)
- 基板上に、第1導電体層、活性層および第2導電体層がこの順に配置されると共に、前記活性層の前記第1導電体層側および前記第2導電体層側の少なくとも一方に、未酸化領域および酸化領域を有する電流狭窄層が配置された半導体積層構造を備え、
前記半導体積層構造は、
前記未酸化領域を含んで形成された柱状のメサ部と、
前記酸化領域の一部を含んで形成されると共に前記メサ部と一体的に形成された柱状の放熱部と
を有する
ことを特徴とする半導体発光素子。 - 前記放熱部は、前記メサ部を側面側から囲む環状の壁部と、前記メサ部と前記壁部とを互いにつなぐ1または2以上の橋桁部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。 - 前記橋桁部は、前記未酸化領域における酸化され易い結晶方位に延在している
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。 - 前記放熱部の前記メサ部とは反対側の側面を覆う埋込層を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。 - 前記埋込層は硬化性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。 - 前記メサ部および前記放熱部の上に形成されると共に前記第2導電体層と電気的に接続された上部電極と、
前記放熱部の前記メサ部とは反対側の領域に形成されると共に前記上部電極と電気的に接続された電極パッドと
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
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