JP2007305826A - シリコン系薄膜太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】光電変換層に比べて低い屈折率を有する層を、光電変換層の形成と別種の設備を用いることなく、光入射側から見て光電変換層の後方にごく薄く配置することにより、十分な光閉じ込め効果を発揮でき、かつそのような低い屈折率を有する層が配置されていても太陽電池内のキャリア再結合を小さく保つことができ、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、光電変換層よりも低い屈折率を有するシリコン系低屈折率層を、光電変換層の形成と別種の設備を用いることなく、光入射側から見て光電変換層の後方に形成することができるため、低コストで十分な光閉じ込め効果を発揮できる。さらにシリコン系低屈折率層の後方に薄い導電型シリコン系界面層を配置することで太陽電池の直列抵抗を小さく保つことができる。この結果、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明によれば、光電変換層よりも低い屈折率を有するシリコン系低屈折率層を、光電変換層の形成と別種の設備を用いることなく、光入射側から見て光電変換層の後方に形成することができるため、低コストで十分な光閉じ込め効果を発揮できる。さらにシリコン系低屈折率層の後方に薄い導電型シリコン系界面層を配置することで太陽電池の直列抵抗を小さく保つことができる。この結果、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供することができる。
【選択図】 なし
Description
本発明はシリコン系薄膜太陽電池に関し、特に、光入射側から見た光電変換層の後方に光電変換層よりも屈折率の小さい層を薄く配置することによって、光閉じ込め効果と太陽電池内でのキャリア再結合低減効果を同時に発揮する薄膜太陽電池に関するものである。
近年、光電変換装置の低コスト化、高効率化を両立するために使用原材料が少なくてすむ薄膜太陽電池が注目され、開発が精力的に行われている。現在、従来の非晶質薄膜太陽電池に加えて結晶質薄膜太陽電池も開発され、これらを積層したハイブリッド太陽電池と称される積層型薄膜太陽電池も実用化されている。
薄膜太陽電池は、一般に、基板上に順に積層された第1電極、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および第2電極を含んでいる。そして、1つの光電変換ユニットはp型層とn型層でサンドイッチされたi型層を含んでいる。
i型層は実質的に真性の半導体層であって光電変換ユニットの厚さの大部分を占め、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。このため、このi型層は通常i型光電変換層または単に光電変換層と呼ばれる。光電変換層は真性半導体層に限らず、ドープされた不純物によって吸収される光の損失が問題にならない範囲で微量にp型またはn型にドープされた層であってもよい。光電変換層は光吸収のためには厚い方が好ましいが、必要以上に厚くすればその製膜のためのコストと時間が増大することになる。
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜太陽電池の重要な特性の1つである開放電圧(Voc)の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換に直接寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与しない損失となる。したがって、p型とn型の導電型層は、十分な拡散電位を生じさせ得る範囲内であれば、できるだけ小さな厚さにとどめておくことが好ましい。p型やn型の導電型層としては、光電変換層と同一の材料を用いる場合もあるが、例えば、シリコンに対するシリコンカーバイドのように、光電変換層よりもバンドギャップの広い材料を用いることにより、導電型層と光電変換層の界面に新たな電界を形成し、光吸収に伴って発生したキャリアが界面で再結合するのを抑制する技術も広く用いられている。
ここで、上述のようなpin(nip)型の光電変換ユニットまたは薄膜太陽電池は、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かにかかわらず、その主要部を占める光電変換層が非晶質のものは非晶質ユニットまたは非晶質薄膜太陽電池と称され、光電変換層が結晶質のものは結晶質ユニットまたは結晶質薄膜太陽電池と称される。
薄膜太陽電池の変換効率を向上させる方法として、2以上の光電変換ユニットを積層してタンデム型にする方法がある。この方法においては、薄膜太陽電池の光入射側に広いバンドギャップを有する光電変換層を含む前方ユニットを配置し、その後方に順に狭いバンドギャップを有する光電変換層を含む後方ユニットを配置することにより、入射光の広い波長範囲にわたって光電変換を可能にし、これによって太陽電池全体としての変換効率の向上が図られる。このようなタンデム型太陽電池の中でも、特に非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはハイブリッド薄膜太陽電池と称される。
例えば、i型非晶質シリコンが光電変換し得る光の波長は長波長側において800nm程度までであるが、i型結晶質シリコンはそれより長い約1100nm程度の波長までの光を光電変換することができる。ただし、光吸収係数の大きな非晶質シリコン光電変換層が十分に光吸収するためには0.3μm程度以下の厚さでも十分であるが、光吸収係数の小さな結晶質シリコン光電変換層は長波長の光をも十分に吸収するためには1.5〜3μm程度の厚さを有することが好ましい。すなわち、結晶質光電変換層は、通常は非晶質光電変換層に比べて5〜10倍程度の厚さを有することが望まれる。
非晶質シリコン単層の薄膜太陽電池においても、前述のハイブリッド薄膜太陽電池においても、光電変換層の厚さをできるだけ小さく保つことが生産性の向上すなわち低コスト化の点からは望ましい。このため、光入射側から見て光電変換層の後方に光電変換層よりも屈折率の小さな層を配置して特定波長の光を有効に反射させる、いわゆる光閉じ込め効果を利用した構造が一般的に用いられている。光入射側から見て光電変換層の後方に配置する、というのは、光電変換層に接してその裏面側に配置されていること、もしくは光電変換層の裏面に別の層を配置し、その層を挟んで裏面側に配置されていることを指す。
従来技術として、特許文献1には、光入射側から、透光性第1電極、非晶質シリコン半導体薄膜(以下単に半導体薄膜と呼ぶ)、厚さ1200Å未満の酸化亜鉛膜、不透光性第2電極(金属電極)が順に積層された太陽電池の構造を開示している。
従来技術として、特許文献2は、光電変換層/導電型シリコン系低屈折率層/導電型シリコン系界面層の構造を開示しており、本発明と同様の構造である。
公開特許公報特開平2−73672号
国際公開特許公報WO2005/011002号
特許文献1には、光入射側から、透光性第1電極、非晶質シリコン半導体薄膜(以下単に半導体薄膜と呼ぶ)、厚さ1200Å未満の酸化亜鉛膜、不透光性第2電極(金属電極)が順に積層された太陽電池の構造を開示している。酸化亜鉛膜は、半導体薄膜と金属電極との界面に珪化物が生じて吸収ロスが増えるのを防止する作用を有する。また、酸化亜鉛膜と半導体薄膜との間に屈折率差があるため、酸化亜鉛膜の厚さを1200Å未満、好ましくは300〜900Åに限定すれば半導体薄膜/酸化亜鉛膜界面での反射率を向上させる効果を有する。このため、太陽電池の短絡電流密度が向上し、変換効率が向上する。しかしながら、酸化亜鉛膜はスパッタ、スプレーなどの手法で形成されるため、プラズマCVD法等で一般的に形成される半導体薄膜とは別設備を用いる必要があり、設備コストがかかり、生産タクトも長くなるという問題が発生する。さらに、特に酸化亜鉛膜の形成にスパッタ法を用いる場合、下地半導体薄膜へのスパッタダメージによる性能低下を引き起こす可能性がある、という問題も発生する。
特許文献2は、光電変換層/導電型シリコン系低屈折率層/導電型シリコン系界面層の構造を開示しており、本発明と同様の構造である。しかしながら、特許文献2においては、シリコン系低屈折率層の厚さは光学的な見地から実質的に30nm以上に設計されている。更に、この厚さに加えて、シリコン系低屈折率層と裏面電極の間に生じる接触抵抗を低減させる役割を果たす、導電型シリコン系界面層の厚さをも加えると、導電型層のトータル厚さは実質的に40nm程度以上になる。このため、導電型層を通過する際の光の吸収ロスが無視できない場合もあった。
上述のような状況に鑑み、本発明は、光電変換層に比べて低い屈折率を有するシリコン系の層を、光電変換層の形成と別種の設備を用いることなく、光入射側から見て光電変換層の後方にごく薄く配置することにより、十分な光閉じ込め効果を発揮した上でその層内での光の吸収ロスを小さく保ち、かつそのような低い屈折率を有する層が配置されていても太陽電池内で発生したキャリアの再結合損失を小さく保つことができる、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供することを目的としている。
本発明者らは、特許文献2の知見を元に、太陽電池の裏面構造を更に鋭意検討した。その結果、当業者が容易に想到できない顕著な効果を有する下記の発明を完成するに至った。
本発明の第1は、
「光入射側から見て光電変換層の後方に導電型シリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置され、該導電型シリコン系低屈折率層および該導電型シリコン系界面層の厚さがそれぞれ0nmより大きく10nm以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
「光入射側から見て光電変換層の後方に導電型シリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置され、該導電型シリコン系低屈折率層および該導電型シリコン系界面層の厚さがそれぞれ0nmより大きく10nm以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記シリコン系低屈折率層の波長600nmにおける屈折率が2.5以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記シリコン系低屈折率層中に占める、シリコンを除く最多構成元素は酸素であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記シリコン系低屈折率層は、その層中に結晶質シリコン成分を含むことを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記導電型シリコン系界面層の厚さは5nm以上であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記のシリコン系薄膜太陽電池であって、少なくとも非晶質光電変換ユニットを1以上備え、かつ、結晶質光電変換ユニットを1以上備える、ハイブリッド薄膜太陽電池」、である。
本発明者らは、特許文献2の知見を元に、太陽電池の裏面構造を更に鋭意検討した結果、当業者が容易に想到できない顕著な効果を有する下記の発明を完成するに至った。
本発明の第1は、光入射側から見て光電変換層の後方に導電型シリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置され、該導電型シリコン系低屈折率層および該導電型シリコン系界面層の厚さがそれぞれ0nmより大きく10nm以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
本発明の第1の構成により、特許文献2当時の当業者の常識として特に期待をしていなかった、シリコン系低屈折率層の厚さが0nmより大きく10nm以下の範囲において、Vocと曲線因子(FF)が改善された。更に驚くべきことに、シリコン系低屈折率層の厚さが10nm以下では光閉じ込めによる短絡電流密度(Jsc)の改善は見込めないと当時は考えられていたが、本発明の構成により、Jscの改善も見られることがわかった。
シリコン系低屈折率層は光電変換層内に拡散電位を生じさせる役割を果たし、不純物によりn型にドープされた層である。本発明のシリコン系低屈折率層は、厚さが10nm以下に設定されるため、その表面で光を有効に光電変換層側に反射させ、かつその層中での光の吸収ロスをできる限り小さく保つことができる。
本発明は、また、前記シリコン系低屈折率層の波長600nmにおける屈折率が2.5以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
本発明では、シリコン系低屈折率層の厚さを10nm以下と薄くすることにより、導電型シリコン系界面層の屈折率を下げた場合に顕在化していく、層内の欠陥に起因したキャリアの再結合を低減することができる。従い、本発明の第2の構成のような、「前記シリコン系低屈折率層の波長600nmにおける屈折率が2.5以下」であっても、本発明の課題を解決できる。
本発明は、また、前記シリコン系低屈折率層中に占める、シリコンを除く最多構成元素は酸素であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
本発明は、また、前記シリコン系低屈折率層は、その層中に結晶質シリコン成分を含むことを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
本発明のシリコン系薄膜太陽電池は、導電型シリコン系界面層の層中に結晶質シリコン成分を含むことにより、導電型シリコン系界面層に接して配置された透明酸化物層との接触抵抗を小さく保つことができる。また、導電型シリコン系界面層のシリコンを除く最多構成元素を酸素とすることにより導電型シリコン系界面層の結晶化率を維持しつつ導電型シリコン系界面層の屈折率を低下させることが可能となり、導電型シリコン系界面層の屈折率を低下させても界面層の導電率を維持することができる。
本発明は、また、前記導電型シリコン系界面層の厚さは5nm以上であることを特徴とする、シリコン系薄膜太陽電池である。
導電型シリコン系界面層は、シリコンを主成分とする導電型層である。導電型シリコン系界面層はその層における光吸収損失をできるだけ小さく保つために、厚さが10nm以下に設定される。また、薄いシリコン系低屈折率層だけでは不十分な可能性のある、光電変換層内の拡散電位の発生を補うため、その厚さは5nm以上であることが好ましい。
本発明の第5の構成であることによって、すなわち、導電型シリコン系界面層の厚さが5nm以上であることによって、薄いシリコン系低屈折率層だけでは不十分な可能性のある、光電変換層内の拡散電位の発生を補うことができる。
特に、図1に示すようにシリコン系低屈折率層としてシリコンオキサイドを用い、その層中酸素量を増やして屈折率を2.5以下にまで下げた場合、シリコン系低屈折率層と裏面電極層の接触抵抗を下げるのは困難であるが、このような問題も導電型シリコン系界面層を挿入することにより解決することができる。
本発明によれば、光電変換層よりも低い屈折率を有するシリコン系低屈折率層を、光電変換層の形成と別種の設備を用いることなく、光入射側から見て光電変換層の後方に形成することができるため、低コストで十分な光閉じ込め効果を発揮できる。さらにシリコン系低屈折率層の後方に薄い導電型シリコン系界面層を配置することで太陽電池の直列抵抗を小さく保つことができる。この結果、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供することができる。
本発明は、また、「前記のシリコン系薄膜太陽電池であって、少なくとも非晶質光電変換ユニットを1以上備え、かつ、結晶質光電変換ユニットを1以上備える、ハイブリッド薄膜太陽電池」、である。
以下に、本発明の実施の形態としてのシリコン系薄膜太陽電池を、図2を参照しつつ説明する。
透光性基板1の上に透明電極層2が形成されている。透光性基板1としては、ガラス、透明樹脂等から成る板状部材やシート状部材が用いられる。透明電極層2はSnO2、ZnO等の導電性金属酸化物から成ることが好ましく、CVD、スパッタ、蒸着等の方法を用いて形成されることが好ましい。透明電極層2はその表面に微細な凹凸を有することにより、入射光の散乱を増大させる効果を有することが望ましい。透明電極層2の上には非晶質光電変換ユニット3が形成される。非晶質光電変換ユニット3は非晶質p型シリコンカーバイド層3p、ノンドープ非晶質i型シリコン光電変換層3i、n型シリコン系界面層3nから成り立っている。非晶質光電変換ユニット3の上に結晶質光電変換ユニット4が形成されている。非晶質光電変換ユニット3、および結晶質光電変換ユニット4(以下、この両方のユニットをまとめて単に光電変換ユニットと称する)の形成には高周波プラズマCVD法が適している。光電変換ユニットの形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力30〜1500Pa、高周波パワー密度0.01〜0.5W/cm2が好ましく用いられる。光電変換ユニット形成に使用する原料ガスとしては、SiH4、Si2H6等のシリコン含有ガスまたは、それらのガスとH2を混合したものが用いられる。光電変換ユニットにおけるp型またはn型層を形成するためのドーパントガスとしては、B2H6またはPH3等が好ましく用いられる。
結晶質光電変換ユニット4は結晶質p型シリコン層4p、結晶質i型シリコン光電変換層4i、n型シリコン系低屈折率層4on、およびn型シリコン系界面層4nから成り立っている。n型シリコン系低屈折率層4onとしてはシリコンオキサイドが代表的に用いられ、その場合使用する原料ガスとしては、SiH4、H2、CO2、PH3の混合ガスが適している。シリコン系低屈折率層4onの厚さは10nm以下に設定される。シリコン系低屈折率層4onには結晶質シリコン成分が含まれていなくてもよいが、含まれているほうがより好ましい。シリコン系低屈折率層4onの波長600nmにおける屈折率として2.5以下が好ましく用いられ、さらに好ましくは600nmにおける屈折率を2.2以下とすることが望ましい。シリコン系低屈折率層4onとしてシリコンオキサイドを用いた場合、層の導電率は1×10-3S/cm〜1×10-6S/cmの範囲となる膜が用いられる。シリコン系低屈折率層4onは膜厚方向に屈折率が一定でもよく、途中で屈折率が変化していてもよい。さらに、屈折率が周期的に増減するようになっていてもよい。なお、図2では光入射側から見て結晶質i型シリコン光電変換層4iの後方に、結晶質i型シリコン光電変換層4iに接してn型シリコン系低屈折率層4onが配置される構造を示しているが、結晶質i型シリコン光電変換層4iとn型シリコン系低屈折率層4onの間にn型シリコン層等の別の層が挟まれて配置されていてもよい。また、シリコン系低屈折率層4onとしては、シリコンオキサイドの代わりに、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド等、シリコンに窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上の元素が含まれる層であってもよい。
n型シリコン系低屈折率層4on上にn型シリコン系界面層4nが形成される。n型シリコン系界面層4nには主として結晶質シリコンが用いられる。n型シリコン系界面層4nは、n型シリコン系低屈折率層4onと透明酸化物層5の接触抵抗を改善する目的で用いられ、この層における光吸収ロスを最小限にとどめるためにできるだけ小さな厚さを有することが望ましい。具体的には10nm以下の厚さが用いられる。一方で、n型シリコン系界面層4nは光電変換層内に拡散電位を生じさせるのを補う役割も果たすので、5nm以上の厚さであることが好ましい。さらに、n型シリコン系界面層4nには1〜102S/cm程度の導電率を有するものが用いられ得る。n型シリコン系界面層4nには酸素、炭素、窒素のいずれか一つ以上の元素が、透明酸化物層5との接触抵抗を増大させない程度に含まれていてもよい。
n型シリコン系界面層4nの上には透明酸化物層5と裏面反射電極層6が形成される。透明酸化物5にはZnO、ITO等の金属酸化物が用いられ、裏面反射電極層6にはAg、Alまたはそれらの合金が好ましく用いられる。透明酸化物層5および裏面反射電極層6の形成においては、スパッタ、蒸着等の方法が好ましく用いられる。なお、図2にはハイブリッド薄膜太陽電池の構造を記載しているが、光電変換ユニット4は必ずしも2つである必要はなく、非晶質または結晶質のシングル構造、3層以上の積層型太陽電池構造であってもよい。さらに、図2は透光性基板上に光電変換層、シリコン系低屈折率層、n型シリコン系界面層が順に配置された構造を示しているが、金属等の導電性基板上または絶縁基板上に、n型シリコン系界面層、シリコン系低屈折率層、光電変換層が順に堆積された、いわゆる逆タイプの構造であってもよい。
n型シリコン系界面層4nの上には透明酸化物層5と裏面反射電極層6が形成される。透明酸化物5にはZnO、ITO等の金属酸化物が用いられ、裏面反射電極層6にはAg、Alまたはそれらの合金が好ましく用いられる。透明酸化物層5および裏面反射電極層6の形成においては、スパッタ、蒸着等の方法が好ましく用いられる。なお、図2にはハイブリッド薄膜太陽電池の構造を記載しているが、光電変換ユニット4は必ずしも2つである必要はなく、非晶質または結晶質のシングル構造、3層以上の積層型太陽電池構造であってもよい。さらに、図2は透光性基板上に光電変換層、シリコン系低屈折率層、n型シリコン系界面層が順に配置された構造を示しているが、金属等の導電性基板上または絶縁基板上に、n型シリコン系界面層、シリコン系低屈折率層、光電変換層が順に堆積された、いわゆる逆タイプの構造であってもよい。
本発明者らは、特許文献2の知見を元に、太陽電池の裏面構造を更に鋭意検討した結果、当業者が容易に想到できない顕著な効果を有する下記の発明を完成するに至った。
本発明の第1は、「光入射側から見て光電変換層の後方に導電型シリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置され、該導電型シリコン系低屈折率層および該導電型シリコン系界面層の厚さがそれぞれ0nmより大きく10nm以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明の構成により、特許文献2当時の当業者の常識として特に期待をしていなかった、シリコン系低屈折率層の厚さが10nm以下の範囲において、Vocと曲線因子(FF)が改善された。更に驚くべきことに、シリコン系低屈折率層の厚さが10nm以下では光閉じ込めによる短絡電流密度(Jsc)の改善は見込めないと当時は考えられていたが、本発明の構成により、Jscの改善も見られることがわかった。
これは、以下の理由によると推定しているが、今後の検討が待たれている。シリコン系低屈折率層は光電変換層よりもバンドギャップの広い層であり、かつ光電変換層との界面において格子不整合等による欠陥が少ないので、界面でのキャリア再結合を低減するいわゆるパッシべーション層の役割を果たす。しかしながら、シリコン系低屈折率層自体にはシリコン以外の元素が大量に含まれている。このため、シリコン系低屈折率層が僅かでも厚すぎれば、例えばシリコンのみの導電型層と比較して、その層内でのキャリア再結合が大幅に促進され、せっかく得られた界面でのキャリア再結合低減の効果を打ち消してしまい、VocとFFが向上しない。さらに、シリコン系低屈折率層が厚すぎれば、その層を光が通過する際に吸収ロスが増え、Jscが低下してしまう。
本発明によるシリコン系薄膜太陽電池は、光入射側から見て光電変換層の後方に厚さがそれぞれ10nm以下のシリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置されたことを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
シリコン系低屈折率層は光電変換層内に拡散電位を生じさせる役割を果たし、不純物によりn型にドープされた層である。シリコン系低屈折率層は、その表面で光を有効に光電変換層側に反射させ、かつその層中での光の吸収ロスをできる限り小さく保つため、厚さは10nm以下に設定される。
本発明は、また、「前記シリコン系低屈折率層の波長600nmにおける屈折率が2.5以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
また、波長600nmにおける屈折率が2.5以下であることが好ましい。また、シリコン系低屈折率層の厚さを10nm以下と薄くすることにより、導電型シリコン系界面層の屈折率を下げた場合に顕在化していく、層内の欠陥に起因したキャリアの再結合を低減することができる。シリコン系低屈折率層は、シリコンオキサイドを代表とする、シリコンと酸素等の元素から成る合金層であり、薄くても光電変換層内に十分な拡散電位を生じさせるため、その層の導電率が1×10-3S/cm以下であり、かつ1×10-6S/cm以上の範囲にあることが好ましく、また、光電変換層と同種の製法、すなわち高周波プラズマCVD等の方法で形成されることが好ましい。シリコン系低屈折率層は、上記の導電率を得ると共に、それに接して形成される導電型シリコン系界面層との界面抵抗を小さくするため、その層中に結晶質シリコン成分を含むことが好ましい。
導電型シリコン系界面層は、シリコンを主成分とする導電型層である。導電型シリコン系界面層はその層における光吸収損失をできるだけ小さく保つために、厚さが10nm以下に設定される。また、薄いシリコン系低屈折率層だけでは不十分な可能性のある、光電変換層内の拡散電位の発生を補うため、その厚さは5nm以上であることが好ましい。さらに、導電型シリコン系界面層に接して配置された透明酸化物層との接触抵抗を小さく保つために、導電型シリコン系界面層はその層中に結晶質シリコン成分を含むことが好ましい。
特に、図1に示すようにシリコン系低屈折率層としてシリコンオキサイドを用い、その層中酸素量を増やして屈折率を2.5以下にまで下げた場合、シリコン系低屈折率層と裏面電極層の接触抵抗を下げるのは困難であるが、このような問題も導電型シリコン系界面層を挿入することにより解決される。
本発明は、また、前記シリコン系低屈折率層中に占める、シリコンを除く最多構成元素は酸素であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池である。
本発明は、また、前記シリコン系低屈折率層は、その層中に結晶質シリコン成分を含むことを特徴とする、シリコン系薄膜太陽電池である。
本発明は、また、「前記導電型シリコン系界面層の厚さは5nm以上であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池」、である。
本発明は、また、「前記のシリコン系薄膜太陽電池であって、少なくとも非晶質光電変換ユニットを1以上備え、かつ、結晶質光電変換ユニットを1以上備える、ハイブリッド薄膜太陽電池」、である。
以下に、本発明によるシリコン系薄膜太陽電池として実施例1、2および3を、図3を参照しつつ、比較例1および2と比較しながら説明する。
(実施例1)
図3は、各実施例及び各比較例にて作製したハイブリッド薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
図3は、各実施例及び各比較例にて作製したハイブリッド薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
まず、0.7mm厚の青板ガラスから成る透光性基板1の一主面上に、SnO2からなる表面に微細な凹凸構造を有する透明電極層2を熱CVD法により形成した。
次に、非晶質光電変換ユニット3を形成するために、透明電極層2が形成された透光性基板1を高周波プラズマCVD装置内に導入し、所定の温度に加熱した後、厚さ15nmの非晶質p型シリコンカーバイド層3p、厚さ330nmのノンドープ非晶質i型シリコン光電変換層3i、及び厚さ30nmのn型シリコン層3nを順次積層した。
さらに、結晶質光電変換ユニット4を形成するために、プラズマCVD装置を用いて、厚さ15nmのp型結晶質シリコン層4p、厚さ1.4μmの結晶質i型シリコン光電変換層4i、n型シリコン系低屈折率層4onを5nm、及び厚さ7.5nmのn型結晶質シリコン系界面層4nを順次積層した。その際のn型シリコン系低屈折率層4onの製膜条件は、基板製膜面−電極間距離8〜15mm、圧力5〜10Torr、高周波パワー密度0.1W/cm2、SiH4/CO2/PH3/H2流量比を各々1/5/0.042/380とした。また、本構造で用いたn型シリコン系低屈折率層と同一の製膜条件でガラス上に360nm堆積したn型シリコン系低屈折率層の分光エリプソメトリにより測定した屈折率は、波長600nmにおいて2.1であり、導電率は1.3×10-4S/cmであった。さらにガラス上のn型シリコン系低屈折率層をラマン散乱分光法で測定した際の520cm-1付近の結晶Siのピーク強度と480cm-1付近のアモルファスシリコンのピーク強度との比率を計算すると4.8であった。一方、n型シリコン系界面層4nの製膜条件は、基板製膜面−電極間距離10〜15mm、圧力350〜1300Pa、高周波パワー密度0.11W/cm2、SiH4/PH3/H2流量を各々20/0.5/2500sccmとした。また、これと同一の製膜条件でガラス上に360nm堆積したn型シリコン系界面層の導電率は100S/cmであった。
その後、厚さ30nmのZnOから成る透明酸化物層5と厚さ200nmのAgから成る裏面反射電極層6をDCスパッタ法によって形成した。
さらに、透明電極層2を残して非晶質光電変換ユニット3、結晶質光電変換ユニット4、透明酸化物層5、及び裏面反射電極層6を島状に分離するために、YAG第2高調波パルスレーザーを透光性基板1に照射することにより複数の裏面電極層分離溝5aを形成した。図示はしていないが、裏面電極層分離溝5aと垂直に交差する複数の裏面電極分離溝をも形成することにより、島状の分離領域を形成した。さらに、1本の裏面電極層分離溝5aに隣接して島状の分離領域の外側にさらに裏面電極層分離溝を形成し、その内部に半田を浸透させて透明電極層2とのコンタクト領域6を形成することにより、ハイブリッド薄膜太陽電池を作製した。このハイブリッド薄膜太陽電池は有効面積が1cm2であり、実施例1では1枚の基板上に上記の太陽電池を合計25個作製した。
実施例1で作製したハイブリッド薄膜太陽電池に、スペクトル分布AM1.5、エネルギー密度100mW/cm2の擬似太陽光を、測定雰囲気及び太陽電池の温度が25±1℃の下で照射し、透明電極層2にコンタクト領域6を通じて接触させた正極プローブ7と裏面電極5に接触させた負極プローブ8の間の電圧及び電流を測定することで、薄膜太陽電池の出力特性を測定した。表1に実施例1で作製した25個のハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
実施例2においては、実施例1とほぼ同様の工程を実施したが、n型シリコン系低屈折率層4onの膜厚のみを10nmに変化させた点が、実施例1とは異なっていた。表1に実施例2で作製した25個のハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
(比較例1)
比較例1においては、以下の点のみが実施例1と異なっていた。n型シリコン系低屈折率層4onとn型結晶質シリコン系界面層4nを順次積層する代わりに、厚さ20nmのn型結晶質シリコン層と厚さ90nmのZnO透明酸化物層5を順次積層した。ZnO層の製膜はDCスパッタ法により行なった。また、これと同一の製膜条件でガラス上に250nm堆積したZnO層を分光エリプソメトリにより測定した屈折率は、波長600nmにおいて1.9であった。表1に比較例1で作製した25個のハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
比較例1においては、以下の点のみが実施例1と異なっていた。n型シリコン系低屈折率層4onとn型結晶質シリコン系界面層4nを順次積層する代わりに、厚さ20nmのn型結晶質シリコン層と厚さ90nmのZnO透明酸化物層5を順次積層した。ZnO層の製膜はDCスパッタ法により行なった。また、これと同一の製膜条件でガラス上に250nm堆積したZnO層を分光エリプソメトリにより測定した屈折率は、波長600nmにおいて1.9であった。表1に比較例1で作製した25個のハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
(比較例2)
比較例2においては、実施例1とほぼ同様の工程を実施したが、n型シリコン系低屈折率層4onの膜厚のみを60nmに変化させた点が、実施例1とは異なっていた。表1に比較例2で作製した25個の集積化ハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
比較例2においては、実施例1とほぼ同様の工程を実施したが、n型シリコン系低屈折率層4onの膜厚のみを60nmに変化させた点が、実施例1とは異なっていた。表1に比較例2で作製した25個の集積化ハイブリッド薄膜太陽電池の平均性能を示す。
実施例1と比較例1の比較から、実施例1においては比較例1よりも短絡電流が2.5%以上改善されていることがわかる。これは、実施例1においては、結晶質i型シリコン光電変換層4iの後方に到達した光の大半が結晶質i型シリコン光電変換層4iとn型シリコン系低屈折率層4onの界面で結晶質i型シリコン光電変換層4i側に反射され、光吸収ロスの大きいn型結晶質シリコン系界面層4nを光が通過する割合が小さいのに対して、比較例1においては結晶質i型シリコン光電変換層4iの後方にn型結晶質シリコン層とZnO層が順次積層されており、光吸収ロスの大きいn型結晶質シリコン層を光が通過する割合が大きいためである。さらに実施例1においては比較例1よりも開放電圧が1%程度改善されていることがわかる。これは、実施例1においては比較例1のプロセス中で生じるようなZnO層のスパッタ時の下地結晶質シリコン層へのダメージを防止できるためである。
次に、実施例1と実施例2の比較から実施例2においては短絡電流が増加していることが分かる。これは、n型シリコン系低屈折率層の厚さが厚くなったためにn型シリコン系低屈折率層による光閉じ込めの効果が増加しているためである。しかし、ここで開放電圧に着目すると実施例2においては実施例1と同等の開放電圧が得られており、薄いn型シリコン系低屈折率層による開放電圧向上の効果が維持されていることが分かる。
さらに実施例1および2と比較例2の比較から、比較例2においては短絡電流は実施例1および2と同等の値が得られているのにも関わらず開放電圧が1%程度劣っていることがわかる。これは、比較例2においてはn型シリコン系低屈折率層4onが60nmと厚くなったことでn型シリコン系低屈折率層におけるキャリアの再結合の確率が上がったため、開放電圧が低下したと考えられる。
さらに実施例1および2と比較例2の比較から、比較例2においては短絡電流は実施例1および2と同等の値が得られているのにも関わらず開放電圧が1%程度劣っていることがわかる。これは、比較例2においてはn型シリコン系低屈折率層4onが60nmと厚くなったことでn型シリコン系低屈折率層におけるキャリアの再結合の確率が上がったため、開放電圧が低下したと考えられる。
以上のことから、本発明によれば、光電変換層よりも低い屈折率を有するシリコン系低屈折率層を、光電変換層の後方に薄く形成することで十分な光閉じ込め効果を発揮することができ、さらにシリコン系低屈折率層内で発生するキャリアの再結合を低減することができる。この結果、高効率かつ低コストでシリコン系薄膜太陽電池を提供することができる。
1 透光性基板
2 透明導電膜
3 非晶質シリコン光電変換ユニット
3p 非晶質p型シリコンカーバイド層
3i 非晶質i型シリコン光電変換層
3n n型結晶質シリコン層
4 結晶質シリコン光電変換ユニット
4p p型結晶質シリコン層
4i 結晶質i型シリコン光電変換層
4on n型シリコン系低屈折率層
4n n型結晶質シリコン系界面層
5a 裏面電極層分離溝
5 透明酸化物層
6 裏面反射電極層
7 正極プローブ
8 負極プローブ
2 透明導電膜
3 非晶質シリコン光電変換ユニット
3p 非晶質p型シリコンカーバイド層
3i 非晶質i型シリコン光電変換層
3n n型結晶質シリコン層
4 結晶質シリコン光電変換ユニット
4p p型結晶質シリコン層
4i 結晶質i型シリコン光電変換層
4on n型シリコン系低屈折率層
4n n型結晶質シリコン系界面層
5a 裏面電極層分離溝
5 透明酸化物層
6 裏面反射電極層
7 正極プローブ
8 負極プローブ
Claims (6)
- 光入射側から見て光電変換層の後方に導電型シリコン系低屈折率層、導電型シリコン系界面層が順に配置され、該導電型シリコン系低屈折率層および該導電型シリコン系界面層の厚さがそれぞれ0nmより大きく10nm以下であることを特徴とするシリコン系薄膜太陽電池。
- 前記シリコン系低屈折率層の波長600nmにおける屈折率が2.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコン系薄膜太陽電池。
- 前記シリコン系低屈折率層中に占める、シリコンを除く最多構成元素は酸素であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコン系薄膜太陽電池。
- 前記シリコン系低屈折率層は、その層中に結晶質シリコン成分を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコン系薄膜太陽電池。
- 前記導電型シリコン系界面層の厚さは5nm以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコン系薄膜太陽電池。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコン系薄膜太陽電池であって、少なくとも非晶質光電変換ユニットを1以上備え、かつ、結晶質光電変換ユニットを1以上備える、ハイブリッド薄膜太陽電池。
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