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JP2007119586A - 液体組成物の製造方法、画像形成方法及び装置 - Google Patents

液体組成物の製造方法、画像形成方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子が分散状態で含有された液体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】顔料と、非プロトン性溶剤に可溶で、前記顔料の貧溶媒に難溶である高分子化合物とからなる高分子顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法であって、前記顔料と前記高分子化合物をアルカリ存在下で非プロトン性溶剤に溶解させた溶液を調整する工程と、前記溶液と前記顔料の貧溶媒を混合して、顔料と高分子化合物からなる高分子顔料微粒子を分散した状態で析出する工程を有する液体組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用インク組成物として有用な顔料微粒子を分散状態で含有する液体組成物の製造方法、及び液体組成物を使用した画像形成方法ならびに画像形成装置に関するものである。
近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術やインクジェット技術といわれるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めつつある。
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱して蒸発発泡し、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成する方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
これらの方法には、これまで水溶性の染料インクが適用されてきたが、にじみやフェザリング、耐候性などに関し問題点を有していた。これらを改善する目的として、近年では顔料インクの利用が検討されており(特許文献1参照)、実際にインク組成物中に顔料微粒子を含有したインクジェット用インクも普及しはじめている。
しかしながら、顔料インクは長期保存安定性やインクジェットヘッドからの吐出安定性において、染料インクと比較して劣る場合が多い。また、顔料粒子による光散乱や光反射が生じるため、一般に顔料インクにより形成された画像は染料インクによる画像と比較して発色性が低いという傾向がある。
顔料インクの発色性を改善する方法の一つとして、顔料粒子を微細化する試みがなされている。100ナノメートル以下に微細化された顔料(以下、顔料微粒子という)は、光散乱の影響が小さく、かつ比表面積が増大するため、染料なみの発色性が得られると期待されている。
顔料粒子の微細化は、サンドミルやロールミル、ボールミルといった分散機を用いて機械的に行うのが一般的であるが、これらの方法では顔料を一次粒子付近(100ナノメートル程度)まで微細化するのが限界である。さらなる微細化が要求される場合には、多大な時間とコストを必要とするばかりか、均一な品質のものを安定供給することが困難となる(特許文献2参照)。
一方、顔料を溶剤に溶解させた後に再析出させることで微細な顔料粒子を調整する方法が提案されている。
特許文献3では、顔料の溶解工程に濃硫酸を用いるアシッドベースティング法が提案されているが、100ナノメートル以下の顔料微粒子を得るには至っていない。
また、特許文献4ではアルカリ存在下の非プロトン性溶剤中に、有機顔料と分散剤を溶解させた後、酸で中和することで顔料微粒子を得ている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この方法で得られた顔料微粒子は、水を含む水系溶媒に対する分散性が、例えばインクジェット用の水性インクに適するほどには十分ではなかった。この方法では、顔料の溶解液に酸を滴下する中和析出法を用いていることから、顔料の析出速度および凝集速度が大きく、分散剤が顔料微粒子表面に均一に吸着されないために分散安定性が低下するものと推測される。
また、特許文献5ではアルカリ存在下の非プロトン溶剤中に、有機顔料と水溶性分散剤を溶解させた後、この溶液と水とを混合することで分散安定性に優れた顔料微粒子を調整することに成功している。この方法は特許文献4における中和析出よりもマイルドな条件で顔料の析出が生じるため、顔料微粒子が得られやすいという特徴がある。しかし、この方法では、水溶性分散剤が水に可溶であるため、顔料粒子への吸着速度がゆるやかで顔料微粒子間の凝集が生じやすい問題がある。この場合、顔料溶解液と水の混合が完全でない場合には、望むべき粒子径を有する顔料微粒子を均一に得られない可能性があった。
米国特許第5085698号明細書 特開平10−110111号公報 特開平9−221616号公報 特公平6−96679号公報 特開2004−43776号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子が分散状態で含有された液体組成物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記液体組成物を含有するインク組成物を使用したインクジェット記録用インク組成物、画像形成方法及び画像形成装置を提供するものである。
本発明者等は、再沈殿法における顔料の析出挙動、分散剤の顔料微粒子への吸着挙動、形成する顔料微粒子の水溶液中での分散安定性に影響を与える種々の要因について鋭意検討した結果、使用する溶媒の最適化に加え、溶媒に対する分散剤の溶解性を規定することで、分散安定性に優れた顔料微粒子を含有することを特徴とする液体組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の発明は、顔料と、非プロトン性溶剤に可溶で、前記顔料の貧溶媒に難溶である高分子化合物とからなる高分子顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法であって、前記顔料と前記高分子化合物をアルカリ存在下で非プロトン性溶剤に溶解させた溶液を調整する工程と、前記溶液と前記顔料の貧溶媒を混合して、顔料と高分子化合物からなる高分子顔料微粒子を分散した状態で析出する工程を有することを特徴とする液体組成物の製造方法に関するものである。
前記顔料の貧溶媒が水あるいはpH5以上の水溶液であることが好ましい。
前記高分子化合物が親水性部位と疎水性部位を有する共重合体であることが好ましい。
前記高分子化合物がブロック共重合体であることが好ましい。
本発明の第二の発明は、上記の液体組成物の製造方法により製造した液体組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物に関するものである。
本発明の第三の発明は、上記のインクジェット記録用インク組成物を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法に関するものである。
本発明の第四の発明は、上記のインクジェット記録用インク組成物を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置に関するものである。
本発明によれば、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子が水溶液中に分散状態で含有される液体組成物を提供することができる。また、本発明では上記液体組成物を含有するインク組成物を使用した画像形成方法、及び画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、顔料と、非プロトン性溶剤に可溶で、前記顔料の貧溶媒に難溶である高分子化合物とからなる高分子顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法であって、(1)前記顔料と前記高分子化合物をアルカリ存在下で非プロトン性溶剤に溶解させた溶液(以下A液と表現する)を調整する工程、(2)前記溶液と前記顔料の貧溶媒(以下B液と表現する)を混合する工程を有するものであり、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子を分散状態で析出した液体組成物を得るものである。
本発明において、高分子顔料微粒子が得られるメカニズムは以下のようなものである。A液とB液を混合すると、A液中で溶解状態にある顔料は急激に不溶化されて粒子核を形成し、さらにその核が凝集する過程において、高分子化合物が分散剤として機能することで高分子顔料微粒子が形成される。
(高分子化合物)
高分子化合物について説明する。形成する高分子顔料微粒子をサイズ均一性の高いナノのメートルサイズの高分子顔料微粒子にするためには、A液とB液の混合による急激な不溶化によって析出した顔料の粒子核の凝集を効率的に抑制することが必要である。言い換えれば、析出した顔料の粒子核を粒子核同士の凝集が大きく進行する前に高分子化合物で分散安定化する必要があり、これを達成するためには、顔料表面に対する吸着あるいは析出速度の大きい高分子化合物を分散剤として使用することが必要である。
以上のような要件を鑑みて、本発明で使用する高分子化合物は以下に示す物性を満たすものが使用可能であり、本発明の目的を達成することができる。すなわち本発明で使用する高分子化合物はB液に対して難溶性であり、A液を構成する非プロトン性溶剤に対して可溶性であるものが使用可能である。
まず、高分子化合物がB液に対して難溶性である理由について説明する。A液とB液の混合による急激な不溶化によって析出した顔料の粒子核を、粒子核同士の凝集が大きく進行する前に高分子化合物で分散安定化するためには、顔料表面への吸着速度が大きい高分子化合物を使用する必要がある。B液に対して難溶性である高分子化合物は、顔料表面に効率的に析出するため、顔料の粒子核を効果的に被覆することが可能となり、このような高分子化合物を使用することによって、ナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子を分散状態で製造することが可能となる。
一方、B液に対して可溶性である高分子化合物を適用する場合、A液とB液の混合溶液中における高分子化合物の顔料表面への吸着速度が、B液に対して難溶性の高分子化合物よりも小さいために、顔料の粒子核間で凝集が大きく進行してしまい、このような高分子化合物を使用した場合には、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子を製造することが困難である。
次に、高分子化合物がA液を構成する非プロトン溶剤に対して可溶性である理由について説明する。
A液とB液の混合による急激な不溶化によって析出した顔料の粒子核を、粒子核同士の凝集が大きく進行する前に高分子化合物で分散安定化するためには、高分子化合物を効率的に顔料表面に析出させる必要がある。ここで、A液を構成する非プロトン溶剤に対して難溶性である高分子化合物を分散剤として使用した場合、高分子化合物が単独で粒子を形成するため、顔料の粒子核に高分子化合物が効率的に拡散、吸着することができず、粗大な顔料粒子しか得ることができない。
高分子化合物と溶剤との溶解性を表す指標として溶解度パラメータ(SP値)がある。SP値は(ΔEV/V)1/2として定義される物性値(ただし、ΔEVはモル蒸発エネルギー、Vはモル体積)であり、化学組成から計算で求める他、蒸発熱からの計算、屈折率からの計算、表面張力からの計算等から求めることができる。
一般に、高分子化合物と溶剤との溶解性を考える場合、高分子化合物のSP値をδ1、溶剤のSP値をδ2とすると、δ1とδ2の差の絶対値(以下|δ1−δ2|と表現する)が1.8以下であるとき、高分子化合物はその溶剤に対して可溶である。さらに、|δ1−δ2|が0.5以下であるとき、高分子化合物はその溶剤に対して良好に溶解する。一方、|δ1−δ2|の差の絶対値が、1.8より大きいとき、高分子化合物はその溶剤に対して難溶性あるいは不溶である。
本発明に使用する高分子化合物もSP値を用いてその溶解特性を規定することができる。すなわち、本発明に使用する高分子化合物のSP値をδp、A液を構成する非プロトン性溶剤のSP値をδo、B液のSP値をδwとすると、|δp−δo|が1.8以下、かつ|δp−δw|が0.5より大きい場合に本発明の目的を達成することができる。さらに好ましくは、|δp−δo|が1.8以下、かつ|δp−δw|が1.8より大きい場合であり、|δp−δo|が0.5以下、かつ|δp−δw|が1.8より大きい場合にはより好ましい。
ただし、SP値による溶解性の議論には限界があるため注意が必要である。例えば水のような極性の大きい溶剤を対象とする場合、SP値から高分子化合物の溶解性を予測することは適切でなく、実験による評価が必須となる。このような理由から、本発明においても、A液、B液に対する高分子化合物の可溶性、難溶性を以下に説明する溶解度試験によって評価している。
高分子化合物をA液あるいはB液に対して、それぞれ濃度が3質量%になるように混合して25℃、24時間振とうしてから24時間放置する。そして、その混合状態を均一な状態として存在する場合を可溶性、ゲルまたは粒状の外観や明らかな濁りを示す不完全溶解として存在する場合を難溶性として定義する。ただし本発明における難溶性とは、高分子化合物と溶媒の作用が認められない、いわゆる不溶状態を含有する表現である。目視により溶解性を判断することが困難である場合、高分子化合物を溶解あるいは分散させた溶液の透過率を測定することで溶解性の指標とすることができる。この場合、本発明では透過率99%以上である場合を可溶性、透過率99%未満である場合を難溶性として定義する。透過率は公知の方法により測定することが可能である。本発明では、U−2001型ダブルビーム分光光度計(日立製作所)を用いて、500nmにおける透過率を測定し、その値を評価基準とした。
本発明における高分子化合物は、親水性部位と疎水性部位から構成されており、親水性モノマー成分と疎水性モノマー成分を必要に応じて共重合させた共重合体を用いることが好ましい。疎水性モノマー成分のみの重合体である高分子化合物を用いる場合には、高分子顔料微粒子に良好な分散安定性を付与すること困難である。なお、親水性とは水に対する親和性が大きく水に溶解しやすい性質であり、疎水性とは水に対して親和性が小さく水に溶解しにくい性質である。
例えば、親水性モノマー成分とは、カルボン酸、カルボン酸塩、あるいは親水性オキシエチレンユニットを多く含む構造、さらにヒドロキシル基などを有する構造などの親水性ユニットを単位構造として含有するモノマー成分が挙げられる。具体的な例でいえば、アクリル酸やメタクリル酸、あるいはその無機塩や有機塩などのカルボン酸塩、またポリエチレングリコールマクロモノマー、またはビニルアルコールや2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどである。ただし、本発明の高分子化合物の親水性部位を構成する親水性モノマー成分はこれらに限定されない。
また、疎水性モノマー成分としては、例えばイソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などの疎水性ユニットを単位構造として含有するモノマー成分が挙げられる。具体的な例でいえば、スチレンやt−ブチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを繰り返し単位として有するブロックセグメントであるが、本発明の高分子化合物の疎水性部位を構成する疎水性モノマー成分はこれに限定されない。
共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態を有する共重合体でもよく、特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、高分子顔料微粒子に良好な分散安定性を付与しやすいため好ましい。
本発明における高分子化合物は、上記の親水性モノマー成分と疎水性モノマー成分を共重合させた共重合体からなり、非プロトン性溶剤に可溶で、顔料の貧溶媒に難溶である特性を有することが必要とされる。そのためには、高分子化合物の親水性モノマー成分と疎水性モノマー成分の種類、割合を適宜選択することにより、非プロトン性溶剤に可溶で、顔料の貧溶媒に難溶であるものを得ることが望ましい。
本発明における高分子化合物の重量平均分子量は、500以上1000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。1000000を超えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、逆に500未満である場合、分子量が小さく高分子化合物が分散剤としての機能を発揮しにくくなるため、高分子顔料微粒子に良好な分散安定性を付与することができない。重量平均分子量の測定方法は、光散乱法、X線小核散乱法、沈降平衡法、拡散法、超遠心法や各種クロマトグラフィーにより測定することができるが、本発明の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明における高分子化合物は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記高分子化合物の使用割合は特に限定されるものではないが、顔料1質量部に対して0.05質量部以上、非プロトン性溶剤100質量部に対して50質量部以下の範囲で用いるのが好ましい。高分子化合物が非プロトン性溶剤100質量部に対して50質量部より多い場合は高分子化合物を完全に溶解させるのが困難な場合があり、顔料1質量部に対して0.05質量部より少ない場合は、十分な分散効果を得ることができない場合がある。
(A液とB液の混合方法)
サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子を得るためには、A液とB液の混合を可能な限り速やかに行うことが好ましく、超音波振動子やフルゾーン攪拌羽、内部循環型攪拌装置、外部循環型攪拌装置、流量およびイオン濃度制御装置等の従来公知の攪拌、混合、分散、晶析に使用される装置をいずれをも混合様式として適用することができる。また、連続して流れる水の中に混合してもよい。顔料溶液の水中への投入法としては、従来公知の液体注入法をいずれも利用できるが、シリンジやニードル、チューブなどのノズルから噴射流として水中、もしくは水上から投入するのが好ましい。なお、短時間で投入するために複数のノズルから投入することも出来る。さらに、高分子顔料微粒子を安定して作製するために、A液と混合するB液に対してもアルカリや分散剤をはじめとする添加剤を加えておくことができる。
また、A液とB液を混合する際に温度は特に指定はないが、−50℃〜100℃の範囲、さらには−20℃〜50℃の範囲に調節するのが好ましい。混合する際の溶液の温度は析出する有機顔料のサイズに大きく影響するため、ナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子を得るためには溶液の温度を−50℃から100℃の範囲にするのが好ましい。また、この際に溶液の流動性を確保するために混合する水に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の公知の凝固点降下剤を加えておくことができる。
(濃縮・精製方法)
A液とB液を混合することにより得られた高分子顔料微粒子は、そのままで使用することが可能であるが、必要に応じて濃縮・精製することによって種々の用途に用いることができる。濃縮・精製の方法としては、遠心分離装置、エバポレーター、限外濾過装置等の従来公知の濃縮・精製に使用される装置をいずれも使用することが可能である。
(顔料)
本発明で使用する顔料は、高分子化合物と共にアルカリ存在下の非プロトン性有機溶媒に溶解するもので、本発明の目的を達成できるものであればいかなる物でも使用可能である。さらに好ましくはこの条件下で反応性を示さない安定な有機顔料がよい。具体的には、印刷インキおよび塗料等に用いられている有機顔料を用いることができる。
例えば、アゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリジン系、アンサンスロン系、チオインジゴ系、ナフトール系、ベンゾイミダゾロン系、ピランスロン系、フタロシアニン系、フラバンスロン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、インダンスロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系、ペリノン系およびペリレン系の顔料、建染染料系顔料、金属錯体顔料、塩基性染料系顔料、蛍光顔料、昼光蛍光顔料がある。
例としては、C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同42、同55、同62、同73、同74、同81、同83、同93、同95、同97、同108、同109、同110、同128、同130、同151、同155、同158、同139、同147、同154、同168、同173、同180、同184、同191、同199、C.I.Pigment Red 2、同4、同5、同22、同23、同31、同48、同53、同57、同88、同112、同122、同144、同146、同150、同166、同171、同175、同176、同177、同181、同183、同184、同185、同202、同206、同207、同208、同209、同213、同214、同220、同254、同255、同264、同272、
C.I.Pigment Blue 16、同25、同26、同56、同57、同60、同61、同66、
C.I.Pigment Violet 19、同23、同29、同37、同38、同42、同43、同44、
C.I.Pigment Orange 16、同34、同35、同36、同61、同64、同66、同71、同73、
C.I.Pigment Brown 23、同38がある。
また、これらの有機顔料は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
(非プロトン性溶剤)
本発明で使用する非プロトン性溶剤としては、アルカリ存在下で有機顔料および高分子化合物を溶解させるもので、本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能である。また、水に対する溶解度が5質量%以上であるものが好ましく用いられ、さらには水に対して自由に混合するものが好ましい。水に対する溶解度が5質量%より小さい溶剤を用いて顔料を可溶化した場合は、水と混合する際に顔料含有粒子が析出しにくく、粗大な粒子になり易い点で不利である。また、得られる高分子顔料微粒子の分散安定性に対して悪影響を及ぼす傾向があるという点でも不利である。
具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶剤として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン又はアセトニトリル、テトラヒドロフランが好ましい。また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
上記非プロトン性溶剤の使用割合は特に限定されないが、顔料のより良好な溶解状態と、所望とする微粒子径の形成の容易性、更に水性分散体の色濃度をより良好なものとするために、顔料1質量部に対して2〜500質量部、さらには5〜100質量部の範囲で用いるのが好ましい。
(アルカリ)
本発明に用いられるアルカリとしては、非プロトン性溶剤中で顔料を溶解させるもので、本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能である。特に、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド及び有機強塩基が、顔料の可溶化能力の高さから好ましい。
具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、カリウム−tert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−7−ノネン、グアニジンなどを使用することが出来る。また、これらのアルカリは、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
上記アルカリの使用割合は特に限定されるものではないが、顔料1質量部に対して0.01〜1000質量部の範囲で用いるのが好ましい。アルカリが顔料1質量部に対して0.01質量部より少ない場合は、非プロトン性溶剤で高分子化合物と共に顔料を完全に溶解させることが難しくなる傾向があるという点で不利な場合があり、1000質量部より多い場合は、アルカリが非プロトン性溶剤に溶解しにくくなり、顔料の溶解性の増大も期待できなくなる点で不利な場合がある。
(添加物)
アルカリを非プロトン性溶剤に完全に溶解させるために、若干の水や低級アルコールなどのアルカリに対して高い溶解度をもつ溶剤を、非プロトン性溶剤に添加することが出来る。これらがアルカリ可溶補助剤として働き、非プロトン性溶剤に対するアルカリの溶解性が増し、顔料の溶解が容易になる。しかし添加率が全溶媒量に対して50質量%以上になると顔料の溶解性が低下する点で不利となるため、通常0.5〜30質量%程度の添加率が最も効果的である。
これは非プロトン性溶剤のみではアルカリの溶解性が相対的に低いためであり、具体的には水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。顔料を溶解させる際は、使用するアルカリの量を最低限に抑えて、速やかに顔料を溶解させるために、アルカリは水や低級アルコールなどの溶液として、顔料が懸濁している非プロトン性溶剤に顔料が溶解するまで添加していくのがよい。また、この際、顔料は溶液になっているため異物の除去等を容易に行うこが出来る。これらのアルカリ可溶補助剤の選択においては、分散剤との相溶性確保が重要である。
顔料を非プロトン性溶剤に溶解させる際、顔料と高分子化合物に加えて、非プロトン性溶剤には結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、樹脂添加物などの少なくも1種を必要に応じて添加することができる。結晶成長防止剤としては、当該技術分野においてよく知られているフタロシアニン誘導体やキナクリドン誘導体が挙げられ、例えばフタロシアニンのフタルイミドメチル誘導体、フタロシアニンのスルホン酸誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、キナクリドンのフタルイミドメチル誘導体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、金属酸化物、アミノベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シンナメート系紫外線吸収剤、ニッケルキレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸系紫外線吸収剤およびビタミン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオアルカン酸エステル化合物、有機リン化合物、芳香族アミン等が挙げられる。
樹脂添加物としては、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メラミン樹脂あるいはこれらの変性物等の合成樹脂などが挙げられる。これらの結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、樹脂添加物はいずれも1種類単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
(貧溶媒)
本発明に用いられる貧溶媒は顔料の貧溶媒である。また、貧溶媒は使用する非プロトン性溶剤と相溶性のあるもので、本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能であるが、特に水、あるいはpH5以上、好ましくはpH6.5以上の水溶液であることが好ましい。B液として水あるいはpH5以上の水溶液を用いることで、A液とB液を混合した際にマイルドな条件で顔料を析出させることができる。B液としてpH4未満の酸を用いる場合には、A液とB液を混合した際に顔料が急激に析出するため、高分子化合物が分散剤として顔料表面に効率的に吸着することができず、粗大な顔料粒子を形成しやすい。
使用する水あるいは水溶液には添加物を含有させることができる。添加物は水あるいは水溶液と相溶性であるもので本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能である。例えば、前記したアルカリやpH緩衝剤をはじめとする公知のpH調整剤や塩等がある。また、非プロトン性溶剤と水あるいは水溶液の相溶性を高めることを目的として、例えばアルコール等の有機溶媒を含有させることが可能である。この場合、含有させる有機溶媒はアルコールに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能である。
(高分子顔料微粒子)
本発明における高分子顔料微粒子は、顔料と、非プロトン性溶剤に可溶で、前記顔料の貧溶媒に難溶である高分子化合物とから構成される。具体的には、高分子顔料微粒子は[0041]から[0043]に掲げる特徴を有する顔料と、[0021]から[0036]に掲げる特徴を有する高分子化合物から構成される。
液体組成物中において、高分子顔料微粒子は良好な分散状態を保つことを特徴とする。
また、高分子顔料微粒子の粒子径は、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーであり、具体的には平均粒子径が1〜100nm、好ましくは20〜80nmである。平均粒子径が1nm未満である場合には耐候性が著しく低下する恐れがあり、100nmをこえる場合には粒子性の影響が大きくあらわれるため、透明性が損なわれる恐れがある。
(インク組成物)
本発明の液体組成物をインク組成物として使用する場合、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。
本発明により製造された液体組成物中に含有される高分子顔料微粒子は、高分子顔料微粒子を構成する高分子化合物により分散安定化されているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等、疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。
カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
さらに、本発明のインク組成物には、必要に応じて水性溶剤を添加することができる。特にインクジェット用インクに用いる場合、水性溶剤は、インクのノズル部分での乾燥、インクの固化を防止するために用いられ、単独または混合して用いることができる。
水性溶剤は、[0061]から[0066]記載の他の分散安定剤がそのまま当てはまる。その含有量としては、インクの場合、インクの全重量の0.1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%の範囲である。
その他の添加剤としては、例えばインクとしての用途の場合、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤、インク内での黴の発生を防止する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
本発明のインク組成物を調製するには、本発明の液体組成物と上記構成成分を混合し、均一に溶解又は分散することにより調製することができる。また、調整したインク組成物中に過剰量のポリマー化合物や添加剤が含有される場合には、遠心分離や透析など公知の方法によって、それらを適宜除去し、インク組成物を再調整することができる。
(画像形成方法および画像形成装置)
本発明のインク組成物は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法および装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。また、液体組成物を用いる場合、インクジェット法等では微細パターンを形成したり、薬物の投与を行ったりするための液体付与方法に使用することができる。
本発明の画像形成方法は、本発明の組成物により優れた画像形成を行う方法である。本発明の画像形成方法は、好ましくは、インク吐出部から上記のインク組成物を吐出して被記録媒体上に付与することで記録を行う画像形成方法である。画像形成はインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット法を用いる方法が好ましく用いられる。
さらに、本発明は、多価カチオンによる刺激と併用することで、被記録媒体上でのにじみやフェザリングを抑制させることも可能である。本発明のブロックポリマー化合物は、前述のように多環芳香族からなる有機酸を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする。多環芳香族からなる有機酸は、その強い疎水性のために、多価カチオンと相互作用を起こし易く、多価カチオンを介して凝集を引き起こし易い。このため、被記録媒体上に多価カチオンが存在した場合、前記インク組成物は素早く凝集を引き起こし、被記録媒体上でのにじみやフェザリングが改善されたインク組成物、および液体付与方法、液体付与装置をも提供することも可能である。多価カチオンとしては、好ましくは、金属カチオンとして、Ca、Cu、Mg、Ni、Zn、Fe、Co等の2価カチオン、Al、Nd、Y、Fe、La等の3価カチオンが挙げられ、非金属カチオンとしてジアンモニウムカチオン、トリアンモニウムカチオン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記多価カチオンの被記録媒体への付与方法としては、予め多価カチオンを塗布した被記録媒体を用いても良く、またはインクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面に渡って多価カチオンを打ち込む方法を用いても良い。
また、該刺激を付与する方法については、様々な方法が適用できる。好ましい一形態として、該刺激を多価カチオンとした場合の刺激の付与方法について説明する。例えば、特開昭64−63185号公報に記載されているように、インクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面に渡って、多価カチオンを打ち込むこともできる。また、予め被記録媒体に多価カチオンを施しておくことも好ましい。
本発明のインクジェット用インク組成物を用いるインクジェットプリンタとしては、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行うバブルジェット(登録商標)方式等、様々なインクジェット記録装置に適用できる。
以下このインクジェット記録装置について図1を参照して概略を説明する。但し、図1はあくまでも構成の一例であり、本発明を限定するものではない。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
図1は、ヘッドを移動させて被記録媒体に記録をする場合を示した。図1において、記録装置の全体動作を制御するCPU50には、ヘッド70をXY方向に駆動するためのX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58がXモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を介して接続されている。CPUの指示に従い、Xモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を経て、このX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58が駆動され、ヘッド70の被記録媒体に対する位置が決定される。
図1に示されるように、ヘッド70には、X方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58に加え、ヘッド駆動回路60が接続されており、CPU50がヘッド駆動回路60を制御し、ヘッド70の駆動、即ちインクジェット用インクの吐出等を行う。さらに、CPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダ62およびYエンコーダ64が接続されており、ヘッド70の位置情報が入力される。また、プログラムメモリ66内に制御プログラムも入力される。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダ62およびYエンコーダ64の位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、被記録媒体上の所望の位置にヘッドを配置してインクジェット用インクを吐出する。このようにして被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、複数のインクジェット用インクを装填可能な画像記録装置の場合、各インクジェット用インクに対して上記のような操作を所定回数行うことにより、被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
また、インクジェット用インクを吐出した後、必要に応じて、ヘッド70を、ヘッドに付着した余剰のインクを除去するための除去手段(図示せず)の配置された位置に移動し、ヘッド70をワイピング等して清浄化することも可能である。清浄化の具体的方法は、従来の方法をそのまま使用することができる。
描画が終了したら、図示しない被記録媒体の搬送機構により、描画済みの被記録媒体を新たな被記録媒体に置き換える。
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正または変形することが可能である。例えば、上記説明ではヘッド70をXY軸方向に移動させる例を示したが、ヘッド70は、X軸方向(またはY軸方向)のみに移動するようにし、被記録媒体をY軸方向(またはX軸方向)に移動させ、これらを連動させながら描画を行うものであってもよい。
本発明は、インクジェット用インクの吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、上記熱エネルギーによりインクジェット用インクを吐出させるヘッドが優れた効果をもたらす。かかる方式によれば描画の高精細化が達成できる。本発明のインクジェット用インク組成物を使用することにより、更に優れた描画を行うことができる。
上記の熱エネルギーを発生する手段を備えた装置の代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。特に、オンデマンド型の場合には、液体が保持され、流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加する。これによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長および収縮により吐出用開口を介して液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成も含む。例えば、その構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書に記載されている構成も本発明に含まれるものである。複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によればインクジェット用インクの吐出を確実に効率よく行うことができる。
さらに、本発明の画像形成装置で被記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのようなヘッドとしては、複数のヘッドの組み合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドとしての構成のいずれでもよい。
加えて、シリアルタイプのものでも、装置本体に固定されたヘッド、または、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
さらに、本発明の装置は、液滴除去手段を更に有していてもよい。このような手段を付与した場合、更に優れた吐出効果を実現できる。
また、本発明の装置の構成として、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定化できるので好ましい。これらを具体的に挙げれば、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子、または、これらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、インクの吐出とは別の、吐出を行うための予備吐出手段などが挙げられる。
本発明に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
本発明の装置では、インクジェット用インクの吐出ヘッドの各吐出口から吐出されるインクの量が、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
合成例1
<高分子化合物の合成>
4−メチルベンゼンオキシエチルビニルエーテル(TolOVE)、メトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE)、4−{(ビニルオキシ)エトキシ}安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt)からなる共重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルベンゼンオキシエチルビニルエーテル(TolOVE)、酢酸エチル、1−イソブトキシエチルアセテート、及びトルエンを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を加え重合を開始した。この際、分子量を時分割にしたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、TolOVEの重合完了を確認した。
次いで、反応系内にメトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE)を添加し、重合の完了を確認した後、4−{(ビニルオキシ)エトキシ}安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt)を添加して重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによってVEEtPhCOOEtの重合が完了していることを確認し、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレータで濃縮・乾固し、真空乾燥させたものより目的物である高分子化合物を単離した。高分子化合物の同定はNMRおよびGPCを用いて行った。
単離した高分子化合物はTolOVEの繰り返し構造からなるセグメントと、MOEOVEの繰り返し構造からなるセグメント、VEEtPhCOOEtの繰り返し構造からなるセグメントから構成されるブロック共重合体である。
以下、TolOVEの繰り返し構造からなるセグメントをAセグメント、MOEOVEの繰り返し構造からなるセグメントをBセグメント、VEEtPhCOOEtの繰り返し構造からなるセグメントをCセグメントと表現する。
本実施例では、反応系におけるTolOVE、MOEOVE、およびVEEtPhCOOEtの仕込み量を変化させて重合組成の異なる4つのブロック共重合体を合成した。表1に合成したブロック共重合体の同定結果、および溶解性試験の結果を示した。
Figure 2007119586
(注)DMSOは、ジメチルスルホキシドを示す。
実施例1
表1に記載のブロックポリマー1の40質量部をジメチルスルホキシド100質量部に溶解させ、これにC.I.Pigment Yellow 128のアゾ顔料10質量部を容器内で2時間攪拌し懸濁させた。次に水酸化カリウム水溶液を少量ずつ滴下して、アゾ顔料を溶解させた。
この顔料溶解液を超音波処理しながら、スターラーを用いて攪拌している蒸留水中にシリンジを用いて速やかに投入してアゾ顔料を析出させた。DLS−7000(大塚電子社製)を用いて高分子顔料微粒子の平均粒子径を測定したところ23.3nmであることが確認された。サイズ均一性の指標である、(重量平均粒子径)/(数平均粒子径)は1.10であった。
実施例2
有機顔料をC.I.Pigment Yellow 128からC.I.Pigment Red 122に変更する以外は実施例1と同様にして、C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料を析出させた。DLS−7000(大塚電子社製)を用いて高分子顔料微粒子の平均粒子径を測定したところ26.2nmであることが確認された。サイズ均一性の指標である、(重量平均粒子径)/(数平均粒子径)は1.52であった。
比較例1
高分子化合物をブロックポリマー1からブロックポリマー2に変更する以外は実施例1と同様にして、C.I.Pigment Yellow 128のアゾ顔料を析出させた。DLS−7000(大塚電子社製)を用いて高分子顔料微粒子の平均粒子径を測定したところ104.4nmであることが確認された。
比較例2
高分子化合物をブロックポリマー1からブロックポリマー3に変更し、貧溶媒を水から0.1規定のNaOH水溶液を用いて調整したpH12の水溶液に変更する以外は実施例1と同様にして、C.I.Pigment Yellow 128のアゾ顔料を析出させた。析出したアゾ顔料は目視で明らかに確認できる凝集塊を形成した。
比較例3
高分子化合物をブロックポリマー1からブロックポリマー4に変更する以外は実施例1と同様にして、C.I.Pigment Yellow 128のアゾ顔料を析出させた。析出したアゾ顔料は目視で明らかに確認できる凝集塊を形成した。
<インク組成物の調整>
実施例1で作製したアゾ高分子顔料微粒子を含有する液体組成物から透析膜(SPECTRUM Laboratories 社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))を用いてジメチルスルホキシドを除去し、さらにエバポレータを用いて顔料分10質量%の濃縮液を得た。このアゾ高分子顔料微粒子を含有する濃縮液50質量部、ジエチレングリコール7.5質量部、グリセリン5質量部、トリメチロールプロパン5質量部、アセチレノールEH0.2質量部、イオン交換水32.3質量部を混合してインク組成物を調整した。
<印字評価>
調整したインク組成物をインクジェットプリンタBJF800(商品名、キヤノン株式会社製)に搭載し、普通紙に対してベタ画像のインクジェット記録を行った。記録物を目視により評価したところ、鮮明な色相を有するものであることを確認した。
本発明の方法により製造されたに液体組成物は、サイズ均一性の高いナノメートルオーダーの高分子顔料微粒子が水溶液中に分散状態で含有される液体組成物からなり、該液体組成物を含有するインク組成物はインクジェット記録方法に利用することができる。
インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
符号の説明
20 インクジェット装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

Claims (7)

  1. 顔料と、非プロトン性溶剤に可溶で、前記顔料の貧溶媒に難溶である高分子化合物とからなる高分子顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法であって、前記顔料と前記高分子化合物をアルカリ存在下で非プロトン性溶剤に溶解させた溶液を調整する工程と、前記溶液と前記顔料の貧溶媒を混合して、顔料と高分子化合物からなる高分子顔料微粒子を分散した状態で析出する工程を有することを特徴とする液体組成物の製造方法。
  2. 前記顔料の貧溶媒が水あるいはpH5以上の水溶液であることを特徴とする請求項1記載の液体組成物の製造方法。
  3. 前記高分子化合物が親水性部位と疎水性部位を有する共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体組成物の製造方法。
  4. 前記高分子化合物がブロック共重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の液体組成物の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の液体組成物の製造方法により製造した液体組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
  6. 請求項5記載のインクジェット記録用インク組成物を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
  7. 請求項5記載のインクジェット記録用インク組成物を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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