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JP2007107122A - ポリ乳酸繊維 - Google Patents

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spinning
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Takenori Domon
武徳 土門
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Unitika Fibers Ltd
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Abstract

【課題】生分解性を有しているのはもちろんのこと、十分な耐屈曲摩耗性を有し、紡糸、延伸、後加工工程での工程通過性も良好であり、優れた強伸度等の繊維特性を有しているおり、このため、衣料用途のみならず、産業資材用途にも好適に用いることが可能となるポリ乳酸繊維を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸を主成分とし、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末を繊維質量に対して0.01〜15質量%含有していることを特徴とするポリ乳酸繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸を主成分とする繊維であって、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末を含有することにより耐屈曲摩耗性に優れ、衣料用途、産業資材用途に好適なポリ乳酸繊維に関するものである。
脂肪族ポリエステルからなるポリ乳酸は、植物から抽出した澱粉を発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れ、使用後には微生物が多数存在する環境下や海水、淡水の存在する環境下に放置すると完全に分解消失する性質を持つた画期的なポリマーである。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルム、シート等の開発が急ピッチで行われている。
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途、カーテン、カーペット等のインテリア用途、車両内装用途、産業資材用途、土木資材用途への応用も期待されている。
しかしながら、ポリ乳酸繊維は、表面摩擦係数が高いことにより耐屈曲摩耗性に劣るという欠点があり、紡糸、延伸及び後加工時にはプレートやガイド類との摩擦によって単糸毛羽や糸切れ等が起こりやすく、工程通過性に劣り、得られる製品品位も低下するといった問題があった。
このため、産業資材用途、土木資材用途、衣料用途、インテリア用途、車両内装材用途への用途展開がなかなか進んでいなかった。
そこで、添加剤や滑剤を添加して、耐屈曲摩耗性や工程通過性を向上させた繊維についてはいくつか提案されている。例えば特許文献1には、ポリ乳酸繊維に脂肪酸ビスアミド及び/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5.0質量%含有したポリ乳酸を溶融紡糸し、脂肪酸エステル、多加アルコールエステル、エーテルエステル、シリコーン、鉱物油から選ばれる平滑剤を少なくとも1種類含有する紡糸油剤を付与した繊維が提案されている。
しかしながら、特許文献1記載の繊維では、摩擦抵抗を十分に低下させることができないばかりでなく、紡糸時におけるローラ延伸の過程で多量の毛羽が発生し、紡糸、延伸時の操業性が著しく不良となるという問題があり、工程通過性、製品品位を十分に向上させることは困難であった。
また、特許文献2には、ポリエステルに滑性を付与する方法として、粒径が50μm以下のフッ素樹脂を添加する方法が提案されている。この方法により得られる繊維は、滑性はある程度改善されるものの、径の小さいフィラメントとした場合、耐屈曲摩耗性が十分でないといった問題点があった。
さらに、耐屈曲摩耗性を高める方法として、金属粒子を添加する方法(特許文献3)、ポリエステルとナイロンとの芯鞘型複合繊維とする方法(特許文献4)等が提案されている。これらの方法により得られる繊維は、耐屈曲摩耗性はある程度改善されるものの、ローラ表面等の接触部分が摩耗し、長時間の安定した操業が困難となるという問題点があった。
特開平2004−091968 特開昭54−124055号 特開平3−76813 特開平2−145894号
本発明は上記のような問題点を解決し、耐屈曲摩耗性に優れ、紡糸、延伸、後加工工程での工程通過性も良好であり、優れた強伸度等の繊維特性を有するポリ乳酸繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は上記課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリ乳酸を主成分とし、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)樹脂粉末を繊維質量に対して0.01〜15質量%含有していることを特徴とするポリ乳酸繊維を要旨とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明でいうポリ乳酸とは、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体とすることが好ましい。
そして、ポリ乳酸は、上記のようにL−乳酸とD−乳酸が単独で用いられているもの、もしくは併用されているものである。なお、ポリ乳酸のホモポリマーであるL−乳酸やD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーとなると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維が得られ難くくなるという問題が生じたり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性等に劣ったものとなるため好ましくない。
そこで、本発明においては、中でも、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが、82/18以上のものが好ましく、中でも90/10以上、さらには95/15以上とすることが好ましい。
本発明の繊維は、上記のようなポリ乳酸を主成分とするものであるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分をブレンド又は共重合していてもよい。共重合する場合は、ポリ乳酸を80モル%以上とすることが好ましい。80モル%未満であると、共重合ポリ乳酸の結晶性が低くなり、融点も低くなりやすい。
また、強度等の特性を良好にするために、ポリ乳酸の数平均分子量は高いほど好ましく、5万以上とすることが好ましく、中でも10万以上、さらには20万以上とすることが好ましい。数平均分子量が5万よりも低い場合には繊維の強度が低下するため好ましくない。一方、数平均分子量が30万を超えると、ポリ乳酸特有の分解性能を損なうこととなりやすい。
なお、本発明においては前述したポリ乳酸重合体に、必要に応じて例えば熱安定剤、結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、微粉体、難燃剤等の各種添加剤や結節強度を高める脂肪酸アミド類、例えばメタキシリレンビスステアリルアミド、メタキシリレンビスオレイルアミド、キシレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
本発明のポリ乳酸繊維は、PTFE樹脂粉末を繊維重量に対して0.01〜15質量%含有しており、繊維中のPTFE樹脂粉末の含有量は、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましく0.5〜5.0質量%である。
繊維中のPTFE樹脂粉末の含有量が0.1質量%未満であると、耐屈曲摩耗性向上効果が不十分となる。一方、15質量%を超えると、フィラメント内部にミクロボイドが多数形成されるため、強度をはじめとする繊維の特性値が劣るだけでなく、巻き取り時に糸切れが多発し、操業が不安定となり、好ましくない。
PTFEとしては、その効果を損なわない範囲であれば、PTFEに他の成分をブレンドしたり、共重合したものであってもよく、さらには、PTFEとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体のような変性された共重合体であってもよい。
本発明で繊維に含有させるPTFE樹脂粉末の粒径としては、最大粒径2μm以下で平均粒子径100〜500nmのものが好ましく、中でも最大粒径1μm以下で平均粒子径200〜400nmのものが好ましい。最大粒径が2μmを超えると紡糸時にフィルター詰まりが生じたり、糸切れが多発する等の問題が発生するため好ましくない。
また、上記のような粒径のPTFE樹脂粉末とするには、例えば、PTFEを冷凍粉砕等によって物理的に微粉化した樹脂粉末、もしくはPTFEを電子線照射で低分子量化し、微粉化した樹脂粉末等が挙げられる。
PTFE樹脂粉末は重合から紡糸工程までの任意の段階でポリ乳酸に添加、混合することが可能であり、予めポリ乳酸中にPTFE樹脂粉末を高濃度に含有するマスターチップを製造しておき、これを紡糸時にポリ乳酸に添加、混合してもよい。
本発明のポリ乳酸繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであってもよく、マルチフィラメントの場合、単糸繊度1〜200dtex、総繊度30〜2200dtexとすることが好ましい。モノフィラメントの場合は、150〜5000dtexとすることが好ましい。
また、断面形状は特に丸断面に限定するものではなく、四角や三角等の多角形状のものや中空部を有するものでもよい。
次に、本発明のポリ乳酸繊維の製造方法について一例を用いて説明する。まず、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合を製造するには、L−乳酸及び/またはD−乳酸を原料として、一旦環状二量体であるラクチドを生成させ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法もしくは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法により製造する。
そして、予めポリ乳酸中にPTFE樹脂粉末を高濃度に含有するマスターチップを製造しておき、これを紡糸時にポリ乳酸に添加、混合して溶融紡糸を行う。次に、紡糸口金より紡出された糸条に紡糸油剤を付与し、一旦捲き取ることなく、熱延伸を施し、巻き取ることにより本発明のポリ乳酸繊維(マルチフィラメント)を得る。
本発明のポリ乳酸繊維は、生分解性を有しているのはもちろんのこと、十分な耐屈曲摩耗性を有し、紡糸、延伸、後加工工程での工程通過性も良好であり、優れた強伸度等の繊維特性を有しているので、衣料用途のみならず、産業資材用途にも好適に用いることができる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例における特性値の測定法等は次のとおりである。
(1)引張強度[cN/dtex]
島津製作所社製オートグラフ AG−1型を用い、試料長25cm、引張速度30cm/min、初荷重を繊度の1/20として測定した。
(2)耐屈曲摩耗性
得られた繊維に100g/dtexの荷重をかけ、SIANOR1600のサンドペーパーを巻きつけた直径20mmの丸断面金属棒に、90度の角度で接触させ、トラバース速度6.7mm/min、ストローク速度35回/minの速度条件で往復摩擦させ、フィラメントが破断に至るまでの回数を測定し、以下の4段階で評価した。
A:3000回以上、B:2000〜2999回、C:1000〜1999、D:999回以下
実施例1
重合温度230℃とし、数平均分子量88200、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂〔L−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/Dが98.5/1.5〕を得、常法により乾燥した。このポリ乳酸に、最大粒径1μm、平均粒子径が300nmのPTFE樹脂粉末を繊維重量に対して2.0質量%となるように添加してエクストルーダー型溶融紡糸機に供給した。紡糸孔の直径0.35mm、孔数96の紡糸口金を用い、紡糸温度220℃で溶融紡糸を行った。次に、紡出した糸条に紡糸油剤を付与し、一旦捲き取ることなく、145℃に加熱した熱ローラで延伸倍率が6.52倍になるように熱延伸を施し、総繊度1100dtexのポリ乳酸繊維(マルチフィラメント)を得た。
実施例2〜6、比較例1〜4
繊維中のPTFE樹脂粉末の含有量が表1に示す値となるように、PTFE樹脂粉末の添加量を変更し、延伸時の加熱ローラ温度(延伸温度)、延伸倍率を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様に行い、ポリ乳酸繊維を得た。
実施例1〜6、比較例1〜4で得られたポリ乳酸繊維の引張強度、耐屈曲摩耗性を測定した結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6のポリ乳酸繊維は、紡糸、延伸工程とも工程通過性がよく、引張強度、耐屈曲摩耗性ともに優れたものであった。
一方、比較例1、2のポリ乳酸繊維は、PTFE樹脂粉末を含有していなかったため、耐屈曲摩耗性に劣るものであった。比較例3のポリ乳酸繊維は、PTFE樹脂粉末の含有量が多すぎたため、フィラメント内部にミクロボイドが多数生じ、引張強度の低いものとなった。比較例4では、PTFE樹脂粉末の含有量が多すぎたため、紡糸、延伸工程での工程通過性に劣り、巻き取り時に糸切れが多発し、繊維を得ることができなかった。

Claims (1)

  1. ポリ乳酸を主成分とし、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末を繊維質量に対して0.01〜15質量%含有していることを特徴とするポリ乳酸繊維。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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