本発明の皮革様シート状物は、実質的に繊維素材からなるものであり、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が織物と絡合一体化しており、皮革様シート状物の一方の面が互いに絡合した面方向に連続した極細繊維からなり、もう一方の面が面方向に不連続な極細繊維が面を形成し、ドレープ係数が0.35〜0.5であり、かつ少なくともタテまたはヨコ方向の一方において伸長率が10〜35%である。
本発明の皮革様シート状物は、ドレープ係数が小さく、形に沿った綺麗なシルエットを表現できるという特徴があり、JIS L 1096(1999)8.19.7 G法(ドレープ係数)で規定されるドレープ係数が0.300〜0.500であることが好ましく、0.350〜0.450であることがより好ましく、0.350〜0.400であることがさらに好ましい。ドレープ係数が0.300未満であると、綺麗なシルエットが表現できるものの、反発感がなく柔軟すぎて頼りない織編物調の風合いとなり、人工皮革様の高級感のある風合いが損なわれてしまう。またドレープ係数が0.500を超えると、形に沿った綺麗なシルエットを表現することが困難となる。
また、本発明の皮革様シート状物は、ストレッチ性に優れることが特徴であり、少なくともタテまたはヨコ方向の一方の伸長率は、JIS L 1096(1999)8.14.1 A法で規定される伸長率が10.0〜35.0%であることが好ましく、15.0〜25.0%であることがより好ましく、タテおよびヨコ方向の伸長率が10.0〜35.0%であることはさらに好ましい。少なくともタテまたはヨコの方向の一方において伸長率が10%未満であると、ストレッチ性が不足し、着用した際に突っ張り感を感じるため好ましくなく、また、カーシートや家具の表皮材とした場合には、成型性が低下したり、成型する際の作業性が低下してしまう。一方、伸長率が35%を超えると、縫製時の軽い引っ張りでも形がずれやすくなってしまい、縫製性が低下することや、伸張回復率が低下する傾向にあるため好ましくない。
また、ドレープ係数と伸長率を達成するためには、極細繊維不織布と織物が絡合一体化していることが重要である。極細繊維不織布と織物が絡合することで、極細繊維不織布のみでは得られない形状に沿った綺麗なシルエットの形成とストレッチ性を得ることが可能となる。
例えば、絡合一体化させず、極細繊維不織布と織物を接着剤などによって貼り合わせたものでは、引っ張りや曲げる際に極細繊維不織布、織物、接着剤のいずれかの素材の内、応力が高い素材が突っ張り、変形し難いため、本発明のドレープ係数や伸長率を達成することはできない。
さらに、本発明の皮革様シート状物は、一方の面が互いに絡合した面方向に連続した極細繊維からなり、もう一方の面が面方向に不連続な極細繊維により形成されていることが重要である。ここでいう、面方向に連続したとは、皮革様シート状物を構成する織物が極細繊維によってほぼ完全に覆われ、織物が表面に露出していないことであり、面方向に不連続とは大部分は極細繊維によって織物が存在しているが、目視または、光学顕微鏡やSEMなどによって表面を観察したときに織物の露出している箇所が存在していることをいう。本発明の皮革様シート状物では、このような面方向に不連続した面があることで、折り曲げた際の繊維の突っ張りが軽減するため、ドレープ係数が小さく、良好なシルエットを形成する皮革様シート状物を得ることができる。そのため、両面が面方向に連続した極細繊維からなる皮革様シート状物では本発明の効果を得ることはできない。
また、本発明の皮革様シート状物において実質的に繊維素材からなるとは、ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーが繊維に対して5重量%未満であることをいい、好ましくはバインダーが繊維に対して3重量%未満、より好ましくはバインダーが繊維に対して1重量%未満であり、もっとも好ましいのはバインダーを含まないものである。高分子弾性体の含有量が少ないことにより、ゴム感がないソフトな風合いを達成することができ、さらに、高発色性、高耐光性、耐黄変性等種々の効果が達成できる。
本発明の皮革様シート状物は、ポリエーテルエステル系繊維やスパンデックスなどのポリウレタン系繊維などの高分子弾性体を全く含まないものが最も好ましいが、本発明の効果を逸脱しない範囲において高分子弾性体が含まれていても構わない。
本発明の皮革様シート状物において極細繊維不織布は平均短繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維から成る。平均単繊維繊度は、好ましくは0.005〜0.3デシテックス、より好ましくは0.01〜0.15デシテックスである。平均単繊維繊度が0.001デシテックス未満であると、皮革様シート状物の強度が低下してしまうことや、染色で濃色のものを得難いため好ましくない。また、平均単繊維繊度が0.5デシテックスを越えると、皮革様シート状物の風合いが堅くなり、また、繊維の絡合が不十分になって、皮革様シート状物の表面品位が低下したり、耐摩耗性が低下したりする等の問題も発生するため好ましくない。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、単繊維繊度が0.001デシテックス未満の繊維もしくは単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維が含まれていてもよい。単繊維繊度が0.001デシテックス未満の繊維および単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維の含有量は、数にして、短繊維不織布を構成する繊維の30%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、全く含まれないことがさらに好ましい。
本発明の皮革様シート状物において、上述の極細繊維の平均繊維長は20〜100mmの短繊維からなることが好ましく、より好ましくは25〜80mmであり、さらに好ましくは30〜60mmである。平均繊維長が100mmを超えると、表面品位が低下するため好ましくない。また、平均繊維長が20mm未満であると、皮革様シート状物の耐摩耗性が低下する。
なお、繊維長が100mmを超える繊維および繊維長が20mm未満の繊維の含有量は、全く含まれないことが最も好ましいが、繊維長が20mm未満の繊維および繊維長が100mmを超える繊維の含有量は、数にして、短繊維不織布を構成する繊維の10%未満かつ、JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に準じて測定される摩擦強さにおいて、極細繊維が形成している面をマーチンデール摩耗試験機のピリングポジション設定(THREE DRIVE ROLLERS=POSITION B)で20000回摩擦後、試験布の摩耗減量が8mg以下であれば含まれていても良い。
また、本発明の皮革様シート状物では、これらの極細繊維同士が互いに絡合しつつ、皮革様シート状物の表面および/または裏面を形成していることが、天然皮革のような表面感と耐摩耗性を向上とさせるために特に重要である。ここで、面を形成するとは、タテまたはヨコ方向の断面を観察した際に、層を形成していることが確認できることをいう。
従来の極細繊維からなる皮革様シートの大半は、極細繊維が集束した繊維束の状態で絡合した構造を有している。しかし、繊維束の状態で絡合した構造では、本発明のような十分な耐摩耗性が得られない。本発明においては、極細繊維同士が相互に絡合した構造を有していることが、耐摩耗性を向上させるために必要である。なお、本発明の効果が損なわれない範囲で繊維束の状態で絡合した構造が含まれていてもよい。
平均単繊維繊度が上述の範囲にある、いわゆる極細繊維に用いられるポリマーは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等適宜用途に応じて使用することができるが、染色性や強度の点で、ポリエステル、ポリアミドであることが好ましく、本発明の構成要素として使用する織物との染色性を考慮するとポリエステルであることがさらに好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体およびジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって、極細繊維発生型繊維として用いることが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。
本発明の皮革様シート状物では、中でも、最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用することができる。
ポリアミドとしては、たとえばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12等のポリマーを採用することができる。
また、本発明において、織物の露出を防ぎ、綺麗なシルエットを得るためには、本発明の皮革様シート状物の厚みとしては0.45〜1.5mmであることが好ましく、0.45〜1.0mmがより好ましく、0.5〜1.0mmであることがさらに好ましく、0.55〜0.8mmがよりさらに好ましい。
本発明の皮革様シート状物に用いられる織物を構成する繊維は、2種類以上のポリエステル系重合体がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維であることが好ましい。これら繊維を用いた織物は皮革様シート状物に優れたドレープ性と伸長率を発現させる効果を有する。織物は、かかる複合繊維を含むものであれば、通常の繊維が本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。例えば、前記複合繊維と通常の繊維を合糸して複合糸として使用することができる。
また、前記サイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維をタテ糸またはヨコ糸のどちらか一方に使用し、他方には通常の繊維を使用するなどしてもよい。
ポリエステル系重合体とは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリマーである。また、2種以上のポリエステルとは、物理的および/または化学的性質を異にする2種以上のポリエステルを用いることを意味する。すなわち、2種以上のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合されたとは、物理的および/または化学的性質を異にする2種以上のポリエステルが、繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合されていることを意味する。これにより、物理的または化学的要因によって、複合繊維に捲縮を発現させることができる。捲縮発現が容易である点で、好ましくは熱収縮性の異なるポリエステルを2種以上使用することが好ましい。これにより、前記複合繊維に熱処理して収縮させることにより、容易に捲縮を発現させることができる。複合繊維に捲縮を発現させることにより、ドレープ性と伸長率に優れる皮革様シート状物が得られる。熱収縮性の異なるポリエステルとしては、例えば、ポリマーの重合度が異なるもの、異なるポリマーをブレンドしたもの、等が挙げられる。本発明においては、紡糸性が良好であり、反発感に優れる皮革様シート状物が得られる点で、極限粘度が0.35〜0.55の低粘度ポリエステルと極限粘度が0.65〜0.85の高粘度ポリエステルとが複合された複合繊維が好ましい。この場合、一般に高粘度ポリエステルの方が、低粘度ポリエステルよりも、熱収縮性が高くなる。ドレープ性と伸長率に優れる皮革様シート状物を得るために、低粘度ポリエステルと高粘度ポリエステルの極限粘度差は、0.20〜0.40の範囲が好ましい。なお、極限粘度[η]は、温度25℃においてオルソクロロフェノール溶液として測定した値を用いた。
また、2種以上のポリエステル系重合体の複合比率は、製糸性および捲縮を発現させた際の繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
複合形態としては、サイドバイサイド型および偏心芯鞘型のいずれでもよいが、ドレープ性とストレッチ性の他に反発感に優れる皮革様シート状物が得られる点でサイドバイサイド型が好ましい。
複合繊維の平均単繊維繊度は、特に限定されないが、伸長回復率が高く、柔軟な風合いの織物が得られる点で1〜15デシテックスが好ましい。
なお、本発明の皮革様シート状物において、皮革様シート状物のタテ方向またはヨコ方向の断面写真を観察した際に、織物のタテ糸またはヨコ糸が螺旋形状の中心部分に長さ方向の中空構造を形成していることが好ましい。織物に含まれる全ての繊維がこのような構造を取る必要はなく、一部にこのような中空構造が形成されるだけでも、引っ張った際に螺旋形状が伸び、皮革様シート状物の伸長率を向上させる効果がある。例えば、このような中空の螺旋形状は、潜在捲縮糸を収縮させ、収縮率の差によって捲縮を発現させることによって生じさせることができる。
また、該複合繊維に加撚することにより、本発明の後述する皮革様シート状物を製造する好ましい製造方法において、織物の単糸切れを抑制する効果がある。この時、ニードルパンチ法により一体化させる際の単糸切れ抑制や、さらには、皮革様シートの伸長率を向上できる点で、以下の式で表される撚係数Kは、7000〜20000であることが好ましく、9000〜18000であることがより好ましい。
撚係数K=T×D0.5
ここで、T:糸長さ1m当たりの撚数(回)
D:糸の繊度(デシテックス)
織物の組織は特に限定されるものではなく、織物であれば平織、綾織、朱子織等が挙げられる。これらのうち、糸の拘束点が多く、しっかりした織物が得られ、ニードルパンチによる損傷を抑制できるため、平織であることが好ましい。
また、織物の目付は、皮革様シート状物の目付に合わせ適宜調整することができる。織物の目付は、取り扱い性とドレープ係数と伸長率に優れる皮革様シート状物が得られる点で、40.0〜170.0g/m2であることが好ましく、50.0〜150.0g/m2であることがより好ましく、60.0〜120.0g/m2であることがさらに好ましい。
織物の重量比は、高級感のある風合いおよびドレープ係数と伸長率のバランスから、皮革様シート状物全体の20〜70%であることが好ましく、25〜60%であることがより好ましく、30〜50%であることがさらに好ましい。
また、本発明の皮革様シート状物のノード数は綺麗なシルエットが得られる点で6〜10であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、7〜10であることがさらに好ましい。また皮革様シート状物のノード数は、多いほどドレープ係数が小さくなるが、ノード数が多すぎると皮革様の風合いを得ることが難しくなるため、おおよそ10が上限となる。ノード数は、JIS L 1096(1999)8.19.7 G法(ドレープ係数)によって得た表裏の投影図中のヒダの数を数え、その平均値とする。
さらに、本発明の皮革様シート状物のタテ方向およびヨコ方向のJIS L 1096(1999)8.14.2 A法で規定される伸長回復率は85.0〜100%であることが好ましく、90.0〜100%であることがより好ましい。伸長回復率が85.0%未満であると、使用中の伸縮によってひずみが生じ、型崩れを起こすため好ましくない。
なお、本発明の皮革様シート状物において、極細繊維不織布の形成方向をタテ方向とし、極細繊維不織布の幅方向をヨコ方向とするものである。該極細繊維不織布の形成方向は、繊維の配向方向、ニードルパンチや高速流体処理等によるスジ跡や処理跡等の複数の要素から、一般に判断可能である。これらの複数の要素による判断が相反している、明確な配向がない、またはスジ跡などがない等の理由で、明確なタテ方向の推定や判断が不可能な場合には、引張強力が最大となる方向をタテ方向として、それと直交する方向をヨコ方向とするものである。
本発明の皮革様シート状物は、摩擦による立毛の脱落が少なく、耐久性に優れる点で、JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に準じて測定される耐摩耗試験において、極細繊維が形成している面をマーチンデール摩耗試験機のピリングポジション設定(THREE DRIVE ROLLERS=POSITION B)で20000回摩擦後、試験布の摩耗減量が8mg以下であることが好ましい。摩耗減量は、より好ましくは6mg以下、さらに好ましくは4mg以下である。一方、下限は特に限定されず、本発明の皮革様シートであればほとんど摩耗減量がないものを得ることができる。
本発明の皮革様シート状物の特徴とするドレープ係数と伸長率のものが得られ、織物の露出を抑えることができるため、皮革様シート状物の目付が130.0〜300.0g/m2であることが好ましく、140.0〜280.0g/m2であることがより好ましく、150.0〜260.0g/m2であることがさらに好ましい。本発明の皮革様シート状物において、天然皮革のような優れた表面外観を得るため、少なくとも皮革様シート状物の一方の表面が立毛されてあることが好ましい。立毛の状態としては、スエード調あるいはヌバック調の滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有することが好ましい。
また、ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーを繊維に対して5重量%未満で付着させることは、風合いを硬くせずに耐摩耗性を向上させることができるため好ましく、3重量%未満であることはより好ましく、1重量%未満であることはさらに好ましい。
さらに、皮革様シート状物は微粒子を含むことによって、ドライ感やきしみ感等の風合いを与える効果を得ることもできる。微粒子の材質は水に不溶であれば特に限定されるものではなく、例えばシリカやコロイダルシリカ、酸化チタン、アルミニウム、マイカ等の無機物質や、メラミン樹脂等の有機物質を例示することができる。
微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.001〜30μmであり、より好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。微粒子の平均粒子径は個々の材質やサイズに応じて適した測定方法、例えばBET法やレーザー法、動的散乱法、コールター法などを用いて測定することができる。本発明においては、特にBET法を用いて求めた体積(質量)平均粒子径が好ましい。これらの微粒子は、本発明の効果が発揮できる範囲で適宜使用量を調整することができる。微粒子の含有量は、皮革様シート状物の風合いが硬くならず、耐摩耗性向上効果が得られる点で、皮革様シート状物の0.01〜10重量%が好ましく、0.02〜5重量%がより好ましく、0.05〜1重量%がさらに好ましい。なお、微粒子の脱落を防ぎ、耐久性を向上させるために、少量の樹脂を併用することも好ましい。
また、柔軟な風合いとなめらかな表面タッチを得るために、本発明の皮革様シート状物は柔軟剤を含むことが好ましい。柔軟剤としては、織編物に一般的に使用されているものを繊維種に応じて適宜選択することが好ましい。例えば染色ノート第23版(発行所 株式会社色染社、2002年8月31日発行)において、風合い加工剤、柔軟仕上げ剤の名称で記されているものを適宜選択することができる。その中でも柔軟性の効果が優れる点でシリコーン系エマルジョンが好ましく、アミノ変成やエポキシ変成されたシリコーン系エマルジョンがより好ましい。これらの柔軟剤が含まれると耐摩耗性は低下する傾向があるため、この柔軟剤の量は、目標とする風合いと耐摩耗性のバランスを取りながら、適宜調整することが好ましい。従って、その量は特に限定されるものではないが、風合いと耐摩耗性がバランスし、べたつき感を抑えられる点で皮革様シート状物の0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
次に本発明の皮革様シート状物の製造方法の一例を述べる。
本発明の皮革様シート状物の製造方法は、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することのできる1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて、ニードルパンチ法により短繊維ウェブ(a)を作製した後、以下の(1)〜(4)の工程を行う。
(1)短繊維ウェブ(a)の少なくとも片面に織物(b)を重ね、ニードルパンチ法により絡合一体化させた繊維構造体を作製する工程。
(2)ニードルパンチ法により絡合一体化させた繊維構造体から極細繊維を発生させ、短繊維ウェブ(a)を極細繊維不織布とする工程。
(3)(1)〜(2)の工程によって得た片面のみが面方向に連続して絡合した極細繊維不織布からなる繊維構造体を流体圧力10MPa以上で高速流体処理を行う工程。
(4)高速流体処理を行った後に、タテ方向およびヨコ方向に5〜30%収縮させる収縮工程。
最初に本発明の皮革様シート状物における、極細繊維不織布と織物が絡合一体化した繊維構造体を得るための製造方法を述べるがこれに限定されるものではない。
本発明の皮革様シート状物の極細繊維不織布を構成する平均単繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの範囲にある極細繊維の製造方法は特に限定されず、例えば極細繊維を直接紡糸する方法、通常繊度の繊維であって極細繊維を発生することができる繊維(極細繊維発生型繊維)を紡糸し、次いで極細繊維を発生させる方法がある。そして極細繊維発生型繊維を用いる方法としては、例えば海島型繊維を紡糸してから海成分を除去する方法、分割型繊維を紡糸してから分割して極細化する方法などの手段を例示することができる。これらの中で、本発明においては極細繊維を容易に安定して得ることができ、さらに後述する本発明の好ましい製造方法によって、本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点で、海島型繊維または分割型繊維によって製造することが好ましく、さらには皮革様シート状物とした場合、同種の染料で染色できる同種ポリマーからなる極細繊維を容易に得ることができる点で、海島型繊維によって製造することがより好ましい。
ここでいう海島型繊維とは、2成分以上の成分を任意の段階で複合、混合して海島状態とした繊維をいい、この繊維を得る方法としては、特に限定されず、例えば(i)2成分以上のポリマーをチップ状態でブレンドして紡糸する方法、(ii)予め2成分以上のポリマーを混練してチップ化した後、紡糸する方法、(iii)溶融状態の2成分以上のポリマーを紡糸機のパック内で静止混練器などを用い混合する方法、(iv)特公昭44−18369号公報、特開昭54−116417号公報などの口金を用いて製造する方法、などが挙げられる。本発明においてはいずれの方法でも良好に製造することができるが、ポリマーの選択が容易である点で上記(iv)の方法が好ましく採用される。
かかる(iv)の方法において、海島型繊維および海成分を除去して得られる島繊維の断面形状は特に限定されず、例えば丸、多角、Y、H、X、W、C、π型などが挙げられる。また用いるポリマー種の数も特に限定されるものではないが、紡糸安定性を考慮すると2〜3成分であることが好ましく、特に海1成分、島1成分の2成分で構成されることが好ましい。また、このときの成分比は、紡糸安定性とコストの点で島繊維の海島型繊維に対する重量比で0.3〜0.99であることが好ましく、0.4〜0.97がより好ましく、0.5〜0.8がさらに好ましい。
海島型繊維で極細繊維を得る場合、その島成分が目的とする極細繊維になる。島成分に用いるポリマーは特に限定されず、繊維化が可能なものを適宜選択して使用することができるが、本発明で好ましく用いられるのは上述した、ポリエステルやポリアミドを使用することが好ましい。また、海成分として用いるポリマーは、島成分と相溶しないものであれば特に限定されるものではないが、島成分のポリマーよりも使用する溶剤や薬剤に対し溶解性、分解性の高い化学的性質を有するものであることが好ましい。島成分を構成するポリマーの選択にもよるが、例えばポリエチレンやポリスチレンなどのポリオレフィン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどの炭素数4以下のα−オレイン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル,i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類などの共重合成分がポリビニルアルコール中にポリビニルアルコール構成単位の1〜20モル%存在している水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールもしくはその共重合体、特開昭61−29120号公報、特開昭63−165516号公報、特開昭63−159520号公報、特開平1−272820号公報などに記載されている熱水可溶性ポリエステルなどの熱水可溶性ポリマー、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸などを共重合したポリエステル、ポリ乳酸などを用いることができる。
紡糸安定性の点ではポリスチレンが好ましいが、有機溶剤を使用せずに水またはアルカリなどの水溶液で容易に除去でき、環境負荷が少ない点で熱水可溶性ポリマーやスルホン基を有する共重合ポリエステル、ポリ乳酸、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールであることはさらに好ましい。かかる共重合比率としては、処理速度、安定性の点から5モル%以上、重合や紡糸、延伸のしやすさから20モル%以下であることが好ましい。本発明において好ましい組み合わせとしては、島成分にポリエチレンテルフタレート、海成分にポリスチレンまたはスルホン基を有する共重合ポリエステルを用いることである。これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子などの無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤など、種々目的に応じて添加することもできる。
このようにして紡出したポリマーは、延伸、結晶化することができ、例えば未延伸糸を引き取った後、湿熱または乾熱、あるいはその両者によって1〜3段延伸することができる。なお、分割型繊維を用いる場合は、主に口金内で2成分以上を複合し、上述の海島型繊維の製造方法に準じて行うことができる。
このようにして得られた極細繊維を発生可能な1〜8デシテックスの複合繊維を常法により捲縮付与、カットを行い短繊維とする。次いで、カードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いた乾式法や、抄紙法などの湿式法によって短繊維ウェブ(a)を得られるが、本発明では低目付から高目付けまで幅広い目付の短繊維ウェブを得られることから乾式法が好ましい。
次に、極細繊維不織布と絡合一体化させる織物(b)の製造方法について述べる。本発明の特徴である伸長率、伸長回復率を得るには、どのような織物と絡合一体化しても本発明の効果が得られる訳ではなく、例えば織物単独でリラックス処理を行った場合、少なくともタテまたはヨコ方向の一方において、10〜35%の伸長率を有し、タテ方向およびヨコ方向の伸長回復率は85〜100%である織物を用いることが好ましい。織物の伸長率と伸長回復率が高いほど、皮革様シート状物の伸長率と伸長回復率は高いものを得ることができる。このような範囲の伸長率と伸長回復率を有する織物(b)を得るには、例えば、織物を構成する繊維として、2種類以上のポリエステル系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維、あるいは2種類以上のポリエステル系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘型複合繊維であり潜在捲縮糸を用いることが好ましい。このような複合繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特公昭63−42021号公報、特開平4−308271号公報、特開平11−43835号公報等に記載された公知の方法を適用することができる。また、ニードルパンチにより織物と不織布を絡合一体化させる場合には、織物の繊維の単糸切れを抑制し、皮革様シートの風合い硬化を防止する観点から、繊維を強固に糊付けする方法、カバーファクターを極限まで低下させる方法、繊維の撚り係数を特定の範囲にする方法等を採用することが好ましい。これらの方法のうち、特に繊維の撚り係数を特定の範囲に設定する方法は、工程安定性および得られる皮革様シート状物のストレッチ性が良好になる点で好ましく採用される。この時、繊維の撚係数は7000〜20000であることが好ましく、9000〜18000であることはさらに好ましい。なお、撚りの付与方法は公知の方法を採用することができる。
このような繊維を用い、必要とする組織に応じてそれに適した織機を使用することによって、本発明の皮革様シート状物の製造方法に用いる織物(b)を得る。織物(b)の製織方法は特に限定されるものではなく、必要とする組織に応じてそれに適した織機を使用することができる。織機としては、例えばエアージェット織機やウォータージェット織機、フライシャトル織機などが挙げられる。この際、織密度を下げすぎると、織物の伸長回復率が減少し、織密度を上げすぎるとニードルパンチで繊維が損傷しやすいため、タテ糸とヨコ糸間には適度のスペースがあることが好ましい。このスペースは使用するニードル種によって変わってくるため、適宜変更することが好ましい。
次に、このようにして得られた織物(b)と短繊維ウェブ(a)を重ねてニードルパンチ処理を行い、絡合一体化させる((1)の工程)。
その際、織物(b)の目付が40g/m2未満では、皮革様シート状物のドレープ係数、ノード数、伸長率、伸張回復率を達成できず、目付170g/m2を超えるとドレープ係数が大きく、ノード数が少なくなるため、織物(b)の目付は40〜170g/m2の範囲のものを用いることが好ましい。本発明において、最終的に得られる皮革様シート状物の厚みを0.45mm〜1.0mmとするには、皮革様シート状物の目付が130〜300g/m2となるように、短繊維ウェブ(a)と織物(b)の目付を適宜組み合わせることが好ましい。
短繊維ウェブ(a)と織物(b)の重ね方としては、短繊維ウェブ(a)の少なくとも片面に織物(b)を重ねればよく、具体的には、(A)短繊維ウェブ(a)/織物(b)とする方法、(B)(A)をニードルパンチしたものを2枚用いて、織物(b)/短繊維ウェブ(a)/短繊維ウェブ(a)/織物(b)とする方法、(C)織物(b)/短繊維ウェブ(a)/織物(b)とする方法があり、重ねた短繊維ウェブ(a)と織物(b)にニードルパンチを行うことで、短繊維ウェブ(a)を構成する短繊維同士を絡合させると共に、短繊維を織物(b)の厚み方向に貫通させ、短繊維ウエブ(a)と織物(b)が絡合一体化した繊維構造体を得ると共に、一方の面が面方向に不連続な極細繊維が面を形成している状態とすることができる。(A)の方法で重ねた場合には、短繊維ウェブ(a)の面からのみニードルパンチすることで短繊維ウェブ(a)面に織物(b)を構成する複合繊維の露出を抑制することができるため好ましい。
また、絡合一体化する織物(b)は、絡合一体化する際には、ソフサーなどによる精錬加工や、液流染色機などによるリラックス処理での収縮により捲縮を発現させず、複合繊維が潜在捲縮糸の状態で用いることが好ましい。収縮処理を行うとタテ糸とヨコ糸間のスペース減少し、ニードルによって織物(b)の複合繊維の単糸が切れる可能性が高くなる。単糸切れが発生すると、織物(b)の強力が減少し、得られる皮革様シート状物の伸長回復率も減少するため好ましくない。さらに、収縮によって捲縮が発現して織物(b)が工程張力で伸びやすくなり、工程通過性が低下するだけでなく、工程張力により織物(b)伸びた分だけ伸長率が低下してしまうため好ましくない。
少なくとも、織物(b)の複合繊維の捲縮発現は、短繊維ウェブ(a)と織物(b)をニードルパンチにより絡合一体化させた後に行うことが好ましく、これによりドレープ係数、ノード数、伸長率、伸長回復率を向上させることができる。
本発明の皮革様シート状物を得るためのニードルパンチ条件としては特に限定される訳ではなく、用いる短繊維ウェブ(a)と織物(b)の目付に応じて適宜変更することができるが、針伸度としては少なくとも、ニードルのバーブ部が織物(b)の表側から裏側まで貫通するような針深度で行うことが好ましい。これにより、織物(b)の裏側を短繊維で覆うことにより織物の露出をなくすことができ、皮革様シート状物とした際に、互いに絡合した極細繊維によって表裏面を形成させることができる。
短繊維ウェブ(a)と織物(b)を十分に絡合一体化させるためのニードルパンチ数は、ワンバーブのニードルを用いる場合、800〜4000本/cm2であることが好ましく、1000〜3500本/cm2であることがさらに好ましく、1200〜3000本/cm2であることがさらに好ましい。この工程で織物(b)に短繊維を貫通させて十分に絡合一体化しておくことで、皮革様シート状物にした際、曲げや伸長による織物の動きに対する極細繊維の追随性が向上するため、ドレープ係数、ノード数、伸長率を向上することができる。
なお、用いるニードルのバーブ数がワンバーブよりも多い場合は、絡合効率が上がるため、ニードルパンチ数を少なくすることができる。その場合は、適宜ニードルパンチ数を変更することができる。
このようにして得られた、繊維構造体の見掛け密度は、好ましくは0.12〜0.4g/cm3、より好ましくは0.15〜0.35g/cm3である。繊維構造体の見掛け密度が0.12g/cm3未満であると、短繊維ウェブ(a)自体の絡合および、織物(b)との一体化が不十分となり、上述のように剥離が生じたり、ドレープ係数、ノード数が減少する傾向があり好ましくない。また、上限は特に規定されないが、0.4g/cm3を越えると、織物(b)の単繊維の損傷や切断などが生じる傾向があるため好ましくない。
また、ニードルパンチを行うためには、短繊維ウェブ(a)を構成する複合繊維の平均単繊維繊度が1〜8デシテックスであることが好ましく、2〜7デシテックスがより好ましく、3〜6デシテックスがさらに好ましい。単繊維繊度が1デシテックス未満である場合や8デシテックスを越える場合は、複合繊維がニードルのバーブにかかりにくくなり、短繊維ウェブ(a)自体の絡合および、織物(b)と一体化しにくくなる傾向があるため好ましくない。
次に、得られた繊維構造体を乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、高密度化することが好ましい。これにより、皮革様シート状物にした際、緻密な立毛を得ることができ表面品位を向上させることができる。また、この収縮処理によって潜在捲縮糸である織物(b)の複合繊維に捲縮を発現させることができる。
次いで、短繊維ウェブ(a)の複合繊維の極細化処理を行い極細繊維不織布とする((2)の工程)。極細化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば機械的方法、化学的方法が挙げられる。機械的方法とは、物理的な刺激を付与することによって極細化する方法であり、例えば上記のニードルパンチ法や高速流体処理などの衝撃を与える方法の他に、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行う方法などが挙げられる。高速流体処理を極細化処理と兼ねることは可能であるが、少なくとも極細化処理が大部分終了した後にも高速流体処理を行うことが、より極細繊維同士の絡合を進める上で好ましく、極細化処理を行った後に高速流体処理を行うことがさらに好ましい。
極細化処理と高速流体処理を同時に行う方法としては、例えば剥離分割型複合繊維を用いて、ウォータージェットパンチによって分割と絡合を行う方法、水可溶性の海成分からなる海島型繊維を用い、ウォータージェットパンチによって除去と絡合を行う方法、アルカリ分解速度の異なる2成分以上の海島型繊維を用い、アルカリ処理液を通して易溶解成分を分解処理した後に、ウォータージェットパンチによって最終除去および絡合処理を行う方法などが挙げられる。このような方法により、短繊維ウェブ(a)を極細繊維化することができる。
化学的方法としては、例えば、海島型繊維を構成する少なくとも1成分に対し、熱水や薬剤によって膨潤、分解、溶解などの変化を与える方法などが挙げられる。本発明においては、均一に極細繊維化できるという点で科学的方法が好ましい。海成分にポリスチレンを用いる場合には、トリクロロエチレンを用いることにより、極細化処理を行うことが可能である。なお、繊維構造体に樹脂を含浸した後、極細化処理することは、極細化処理時の伸び抑制と表面の毛羽立ちを抑制することができるため好ましい。
極細化処理の際に用いられる樹脂としては、以降の工程で行う高速流体処理で脱落させることが容易な、水溶性のものが好ましく、例えばポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を例示することができる。
また、有機溶剤を用いることなく、水またはアルカリ水溶液により極細繊維化することは、環境に対する影響が少ない点でより好ましい。ここでいうアルカリ溶液とは、PHが7〜14を示す水溶液のことであり、使用する薬剤は特に限定されるものではない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムや水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
水や該薬剤からなる水溶液で極細繊維化する手段は特に限定されるものではないが、例えば、島成分として、ポリエチレンテレフタレートやナイロン6などのポリマーを用い、海成分として、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂など熱水で溶解可能なポリマー、または、ポリ乳酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を有する共重合ポリエステルなど、島成分に対しアルカリ水溶液による加水分解速度が速いポリマーを用いる方法が挙げられる。水やアルカリ水溶液による処理方法としては、特に限定されるものではなく、該溶液をパッドしたのちにスチームにより加熱する方法やオープンソーパーやバイブロウォッシャーなどの熱浴中を走行させる方法、液流染色で処理する方法などを挙げることができ、それぞれ単独でも複数の方法を組み合わせて処理しても良い。また、必要により、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミンや減量促進剤や繊維構造体への水やアルカリ水溶液の浸透性を向上させるため、界面活性剤などの浸透剤を併用することもできる。本発明では、短繊維ウェブと織物が一体化した構造であるため、PVAによる補強ができない水溶液による極細繊維化においても伸びを抑制することができる。
また、スプリット処理を行う場合には、PVA樹脂を含浸することで繊維構造体の硬度を上げ、工程通過性を向上させることができる。スプリット処理は、極細繊維化する前または後のどちらでも行うことができるが、繊維構造体が薄い場合は極細繊維化の前にスプリット処理することが好ましい。
極細化処理により、上述した(A)の重ね方をした繊維構造体の場合、織物(b)の一方の面は、極細繊維が面方向に連続して存在し、3次元的に絡合している面となり、もう一方の面では、織物(b)に対して極細繊維が垂直に貫通した、面方向には不連続した面が形成される。本発明では、高速流体処理を行う前に、このような構造の繊維構造体とすることが重要である。織物(b)の一方の面が上述した極細繊維が垂直に貫通し、面方向に不連続した面であることで、折り曲げた際の繊維の突っ張りが軽減するため、ドレープ係数が小さく、良好なシルエットを形成する皮革様シート状物を得ることができる。すなわち、短繊維ウェブ(a)と織物(b)を短繊維ウェブ(a)/織物(b)/短繊維ウェブ(a)のように重ねた繊維構造体は、織物(b)の両面が面方向に連続した極細繊維の面となるため、ドレープ係数が大きくなり、本発明の効果を得ることはできない。
なお、従来の皮革様シート状物では極細化処理の前または後にポリウレタンなどの高分子弾性体の含浸を行うが、極細繊維や織物が高分子弾性体で固められるとドレープ係数が高く、ノード数が下がり、本発明の特徴とする皮革様シート状物が得られず、また、本発明の目的とする廃棄時の環境負荷の低減が達成できなくなるため好ましくない。
これにより得られる極細繊維を発生させた繊維構造体のままでは耐摩耗性が低く、実用に適さない。そのため、次に高速流体処理を行う((3)の工程)。高速流体処理を行うことで極細繊維同士が互いに高度に絡合するため、ポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸せずとも皮革様シート状物として高い耐摩耗性を得ることができるのである。
ここで、上述した(B)や(C)の重ね方をした繊維構造体の場合は、高速流体処理を行う前に、上下の織物(b)の間にある極細繊維の層を厚み方向に垂直に2枚にスプリット処理を行うことで、(A)と同様な繊維構造体を得ることができる。スプリット処理の方法としては特に限定されるものではなく、スライス機などを用いて行うことができる。また、必要であれば、厚み方向に垂直に2枚以上にスプリット処理を行うことができる。
高速流体処理としては、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチ処理を行うことが好ましい。この時、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流は、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから流体圧力1〜60MPaで噴出させることで得られる。かかる処理は、効率的な絡合性と良好な表面品位を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.06〜0.12mm、間隔は1mm以下がより好ましい。これらのノズルスペックは、複数回処理する場合、すべて同じ条件にする必要はなく、例えば大孔径と小孔径のノズルを併用することも可能であるが、少なくとも1回は上記構成のノズルを使用することが好ましい。ノズル孔径は小さい方が好ましいが、0.06mm未満となるとノズル詰まりが発生しやすくなるため、水を高度に濾過する必要性からコストが高くなる問題があり好ましくない。
また、厚さ方向に均一な絡合を達成する目的、および/または不織布表面の平滑性を向上させる目的で、好ましくは多数回繰り返して高速流体処理する。その際、極細化処理でPVA樹脂を使用した場合は、PVA樹脂が水流によって脱落しないと極細繊維が互いに絡合せず、耐摩耗性の向上効果が得られないため、PVA樹脂のべたつきが感じられなくなってから、複数回繰り返して高速流体処理を行う必要がある。水流圧力は処理する不織布の目付によって適宜選択し、高目付のもの程高圧力とすることが好ましい。さらに、極細繊維同士を高度に絡合させ、目的の引張強力や引裂強力、耐摩耗性などの物性を得るため、10MPa以上の圧力で処理することが重要であり、15MPa以上であることが好ましい。また上限は特に限定されないが、圧力が上昇する程コストが高くなり、また、低目付不織布の場合は不織布が不均一になりやすく、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは40MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。こうすることによって、例えば極細繊維発生型繊維から得た極細繊維の場合、極細繊維が集束した極細繊維束が絡合しているものが一般的であるが、極細繊維束による絡合がほとんど観察されない程度にまで極細繊維同士が絡合した繊維構造体を得ることができる。なお、ウォータージェットパンチ処理を行う前に、水浸漬処理を行ってもよい。さらに表面の品位を向上させるために、ノズルヘッドと不織布を相対的に移動させる方法や、絡合後の繊維構造体をノズルの間に金網などを挿入して散水処理するなどの方法を行うこともできる。
本発明の皮革様シート状物の製造方法では、高速流体処理を行う際のノズルヘッドと繊維構造体との相対速度(いわゆる加工速度)は特に限定されるものではなく、繊維構造体の目付や水圧などの条件により適宜変更することができるが、生産性を考えると加工速度は通常4m/分以上であることが好ましく、6m/分以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の皮革様シート状の物製造方法では、皮革様シート状物のドレープ係数を小さく、ノード数および伸長率を向上させるため、高速流体処理後に極細繊維不織布と一体化している織物(b)を収縮させることが重要である((4)の工程)。
収縮方法としては特に限定されるものではなく、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させることができる。織物(b)を収縮させるタイミングとしては、高速流体処理後、後述する立毛後、染色中、染色後などの任意の工程で収縮、また、複数の工程において多段階で収縮させてもよいが、工程省略化の点で染色と同時に収縮させることが好ましい。また、染色時に皺が発生する場合には、染色前に皺が入らない程度の温度で収縮させた後、染色によってさらに収縮させることが好ましい。
該収縮処理において、繊維構造体のタテ方向およびヨコ方向に長さ収縮率で5〜30%収縮させることにより、織物(b)を構成する複合繊維に捲縮が発現し、曲げた際の抵抗が少なくなるためドレープ係数が小さくなり、また伸長率が向上するために好ましく、8〜15%収縮させることはより好ましい。また、収縮率が5%未満であると十分な伸長率が得られず、収縮率が30%を超えると収縮の際に皺が発生したり、伸長回復率が低下する傾向があり、型崩れしやすくなるため好ましくない。
また、スエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物とするため、サンドペーパーやブラシなどによる立毛処理を行うことが好ましい。かかる立毛処理は後述する染色の前または後に行うことができるが、染色後に行うとサンドペーパーやブラシに着色した繊維が付着するため、染色前に行うことが好ましい。
次いで、立毛させた繊維構造体を染色することによりスエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物を得ることができる。染色方法は特に限定されるものではなく、用いる染色機としても、液流染色機、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機等いずれでもよいが、得られる皮革様シートの風合いが優れる点で液流染色機を用いて染色することが好ましい。染色の条件は特に限定されないが、液流染色機を用い、100〜140℃で1〜60分間行うことが好ましい。処理時間は、10〜60分間がより好ましい。
また、皮革様シート状物の耐摩耗性をさらに向上させるため、ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーをを付与することができる。該バインダーは、前記の立毛処理前または立毛処理後のいずれの段階で付与しても良いが、表面の平滑さが得られる点で立毛処理後に付与することが好ましく、立毛処理後にバインダーを付与した状態でさらにサンドペーパーやブラシで立毛処理を行うことがより好ましい。ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーを付与する手段としては、パッド法、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法等、適宜選択することができる。
また、皮革様シート状物に微粒子や柔軟剤を付与する手段も前記バインダーと同様の手段で行うことができる。なお、微粒子や柔軟剤は、好ましくは染色後に付与する。染色前に付与すると、染色時の脱落により効果が減少する場合や、染色ムラが発生する場合があるため好ましくない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)撚り係数K
糸の撚り係数Kを、下式により求めた。
撚係数K=T×D0.5
ここで、T:糸長さ1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(デシテックス)
ここで、糸長さ1m当たりの撚数Tとは、電動検撚機にて90×10−3cN/dtexの荷重下で解撚し、完全に解撚したときの解撚数を解撚した後の糸長で割った値である。
(2)目付、厚さ、見掛け密度
目付は、JIS L 1096 8.4.2(1999)に記載された方法で測定した。また、厚みをダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)により測定し、目付の値を厚みの値で割って見掛け密度を求めた。
(3)繊度の測定
不織布の断面を光学顕微鏡にて観察した。繊維断面を100個ランダムに選んで断面積を測定し、100個の繊維断面積の数平均を求めた。求められた繊維断面積の平均値と繊維の比重から、繊度を計算により求めた。なお、繊維の比重はJIS L 1015 8.14.2(1999)に基づいて測定した。
(4)繊維長の測定
不織布の任意の3箇所から、それぞれ繊維を100本抜き出して繊維長を測定した。測定した300本分の繊維長の数平均を求めた。
(5)ドレープ係数、ノード数
皮革様シートのドレープ性は、JIS L 1096(1999)8.19.7 G法(ドレープ係数)に準じ、ドレープテスター(型式:YD−100、(株)大栄科学精器製作所製)を用いて測定した。JISに規定された「試料台を3回上下に振動させ」るという条件に替え、「試料台を2分間回転させ」る条件に変更して測定した。この条件は、前記測定器の標準使用条件である。またドレープ係数の試験によって得た投影図から数えたヒダの数を、ノード数とした。なお、測定は表裏3回ずつ行い、その平均値をこれらの値とした。
(6)伸長率
JIS L 1096(1999)8.14.1 A法(定速伸長法)において、シート状物の伸長率を測定した(つかみ間隔は20cmである)。
また、JIS L 1096(1999)8.14.2 A法(繰り返し定速伸長法)により、シート状物の伸長回復率を求めた(繰り返し定速伸長法)(つかみ間隔は20cmである)。なお、表には、得られた値から小数点以下を四捨五入して表示した。
(7)マーチンデール摩耗試験
皮革様シートから、直径3.8cmの試験片を採取し、重量を測定した。JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に従って、極細繊維が形成している面をマーチンデール摩耗試験機のピリングポジション設定(THREE DRIVE ROLLERS=POSITION B)にて耐摩耗性試験を実施した。20000回摩擦したところで試験機を止め、試験前に対する試験後の試験片の重量減を評価した。
(8)シルエット性評価
皮革様シート状物でジャケットを作成し、10人に7時間/日で1週間着用してもらった。着用期間中は普段のどおり生活をしてもらい、着用前後でシルエットが崩れず綺麗に出ているか、10人が官能評価により3段階で評価し、最も悪い評価を評価値とした。
良:A、やや不良:B、不良:C。
(9)着用感
皮革様シート状物でジャケットを作成し、10人に7時間/日で1週間着用してもらった。着用期間中は普段のどおり生活をしてもらい、着用時の快適性を官能評価により4段階で評価し、最も悪いも評価を評価値とした。
着用感 良:A、普通:B、やや不良:C、不良:D。
参考例1
極限粘度が0.40のポリエチレンテレフタレート100%からなる低粘度成分と、極限粘度が0.75のポリエチレンテレフタレートからなる高粘度成分とを重量複合比50:50でサイドバイサイドに貼りあわせて紡糸および延伸し、56デシテックス12フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで800T/m(撚係数5987)の撚りをかけ、65℃でスチームセットを行った。この糸をタテ糸、ヨコ糸に用い、織組織を平織とし、織密度が93×64本/2.54cm、44g/m2の織物(1)を作製した。
参考例2
参考例1の複合繊維の撚数を1500T/m(撚係数11225)とした以外、同様の条件で織物を作製し、51g/m2の織物(2)を製造した。
参考例3
参考例1の複合繊維を用いて、S撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った。同様に、Z撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った糸を作製した。タテ糸に、S撚りの糸とZ撚りの糸を交互に配し、ヨコ糸にS撚りの糸を用い織組織を平織とし、93×64本/2.54cmの織密度で織物を作製し、57g/m2の織物(3)を製造した。
参考例4
スチームセット温度を95℃とした以外は参考例3と同様に織物を作製し、63g/m2の織物(4)を製造した。
参考例5
参考例3の撚数を3000T/m(撚係数22450)とした以外、同様の条件で織物を作製し、60g/m2の織物(5)を製造した。
参考例6
極限粘度が0.66のポリエチレンテレフタレート成分を紡糸および延伸し、56デシテックス48フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った。同様に、Z撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った糸を作製した。タテ糸に、S撚りの糸とZ撚りの糸を交互に配し、ヨコ糸にS撚りの糸を用い織組織を平織とし、93×64本/2.54cmの織密度で織物を作製し、60g/m2の織物(6)を製造した。
参考例7
実施例3の糸を用いて、44ゲージ、77g/m2のダブル丸編を作成し、編物(1)得た。
実施例1
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる平均単繊維繊度3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が157g/m2の短繊維ウェブを作製した。得られたウェブを参考例2で作製した織物(2)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、短繊維ウェブの面と織物(2)の面から交互にニードルパンチし、1600本/cm2の打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が211g/m2、厚み1.36mm、繊維見掛け密度0.155g/cm3の繊維構造体を得た。次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%の(PVA)1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向5.5%、ヨコ方向に14.1%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。次いで、この繊維構造体を30℃のトリクレンでポリスチレンが完全に除去されるまで処理することにより、複合短繊維から平均単繊維繊度0.046デシテックスの極細繊維を発現させた。これにより、織物(2)の一方の面は、極細繊維が面方向に連続して存在し、3次元的に絡合している面となり、もう一方の面では、織物(2)に対して極細繊維が垂直に貫通した、面方向には不連続した面が形成した繊維構造体が得られた。
この繊維構造体の極細繊維が面方向に連続し、3次元的に絡合している面から、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、織物(2)に対して極細繊維が垂直に貫通した、面方向には不連続した面から17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、織物(2)の両面の極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
次いで、得られた繊維構造体の表面を、サンドペーパーにて立毛処理をした。さらに、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した。なお、染色により、タテ方向に16.6%、ヨコ方向に15.8%収縮していた。
得られたシートを、柔軟剤(ノニオン系柔軟剤“エルソフト N−500コンク”一方社株式会社製)と微粒子(コロイダルシリカ“アルダックSP−65” 一方社株式会社製)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカの含有量が0.1%となるようにマングルで絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.049デシテックスの極細繊維が織物(2)の両面に層を形成し、極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であった。また、極細繊維の平均繊維長を測定したところ46.7mmであった。
この皮革様シートのドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.433、ノード数が7個とドレープ性に優れ、伸長率はタテ16.9%、ヨコ33.2%、伸張回復率はタテ93.0%、ヨコ88.5%とストレッチ性にも非常に優れたものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は0.9mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
実施例2
使用する織物を参考例3で作製した織物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして皮革様シートを得た。なお、この皮革様シートの作製の際、PVA水溶液での収縮処理で、タテ方向に5.0%、ヨコ方向に12.1%収縮し、染色ではタテ方向に12.7%、ヨコ方向に13.4%収縮した。
この皮革様シート状物は、表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.421、ノード数が7個、伸長率はタテ12.6%、ヨコ24.2%、伸張回復率はタテ94.5%、ヨコ92.9%であり、実施例1にはストレッチ性が若干劣るものの、ドレープ性、ストレッチ性に優れたものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も0.7mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用性感に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
実施例3
短繊維ウェブと参考例3で作製した織物(3)を重ねてニードルパンチ処理する際に、短繊維ウェブの面からのみ、1800本/cm2の打ち込み密度でニードルパンチ処理した以外は、実施例2と同様にして皮革様シートを得た。
この皮革様シートの作製の際、PVA水溶液での収縮処理で、タテ方向に5.5%、ヨコ方向に12.4%収縮し、染色ではタテ方向に13.8%、ヨコ方向に14.0%収縮した。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.409、ノード数が7個、伸長率はタテ13.7%、ヨコ26.5%、伸張回復率はタテ94.4%、ヨコ91.8%であり、実施例1にはストレッチ性が若干劣るものの、ドレープ性とストレッチ性に優れており、織物(3)を貫通した極細繊維の面の表面品位は実施例1や実施例2で得られた皮革様シート状物よりも優れたものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も1.2mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
比較例1
使用する織物を参考例1で作製した織物(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして作製したところ、短繊維不織布と織物をニードルパンチで絡合一体化した際、織物の損傷が激しく、皮革様シート状物を得ることができなかった。
比較例2
使用する織物を参考例5で作製した織物(5)を用いた以外は、実施例1と同様にして皮革様シートを得た。この皮革様シートは、作製の際、PVA水溶液での収縮処理で、タテ方向に2.0%、ヨコ方向に9.4%収縮し、染色ではタテ方向に7.8%、ヨコ方向に10.2%収縮していた。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.519、ノード数が5個、伸長率はタテ7.4%、ヨコ12.6%、伸張回復率はタテ92.5%、ヨコ92.3%であり、ドレープ性に劣るものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は0.6mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用感の評価を行ったところ、シルエット性がやや不良という評価だった。評価結果を表1に示した。
比較例3
使用する織物を参考例6で得られる織物(6)を用いた以外は、実施例1と同様にして皮革様シートを得た。この皮革様シートは、作製の際、PVA水溶液での収縮処理で、タテ方向に2.7%、ヨコ方向に8.2%収縮し、染色ではタテ方向に6.4%、ヨコ方向に8.1%収縮していた。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.530、ノード数が5個、伸長率はタテ6.1%、ヨコ8.7%、伸張回復率はタテ87.6%、ヨコ90.4%であった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は0.8mgと良好な結果であったが、実施例1〜3と比較すると、ドレープ性と伸長回復率に劣るものであった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用感の評価を行ったところ、シルエット性と着用性がやや不良という評価だった。評価結果を表1に示した。
比較例4
使用する織物を参考例7で得られた編物(1)に変えた以外は、実施例3と同様にして皮革様シートを得た。この皮革様シートは、作製の際、PVA水溶液での収縮処理で、タテ方向に3.5%、ヨコ方向に11.9%収縮し、染色ではタテ方向に13.8%、ヨコ方向に14.3%収縮していた。
この皮革様シート状物のドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.294、ノード数が7個、伸長率はタテ13.6%、ヨコ25.1%、伸張回復率はタテ83.9%、ヨコ79.3%であった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は3.2mgと良好な結果であったが、実施例1〜3と比較すると、ドレープ性には優れるものの伸長回復率が大きく劣るものであった。また、皮革様シート状物の表裏面は極細繊維によって形成されているものの、表面にはニードルパンチの際に単糸切れした織物の複合繊維が極細繊維面に突き出し、ざらざらしたタッチで表面品位が劣るものであった。また、風合いが柔軟で人工皮革よりも織編物に近いものであり、人工皮革のような高級感のあるものではなかった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、型崩れが起こり、着用感が不良という評価だった。評価結果を表1に示した。
比較例5
ウォータージェットパンチを行わない以外は実施例3と同様にして作製したところ、染色により極細繊維が脱落し、皮革様シート状物を得ることができなかった。
実施例4
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる平均単繊維繊度3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が157g/m2のウェブを作製した。得られたウェブを参考例4で作製した織物(4)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、1000本/cm2の打ち込み密度で短繊維ウェブの面からのみニードルパンチ処理し、繊維見掛け密度0.146g/cm3の繊維構造体を得た。この繊維構造体を短繊維ウェブを重ねた面どうしを内側に重ねて、両面から交互に、1000本/cm2の打ち込み密度でさらにニードルパンチ処理し、目付が403g/m2、厚み2.70mm、繊維見掛け密度0.149g/cm3の繊維構造体を得た。
次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%の(PVA)1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向2.9%、ヨコ方向に10.1%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。次いで、この繊維構造体を30℃のトリクレンでポリスチレンが完全に除去されるまで処理することにより、複合短繊維から平均単繊維繊度0.046デシテックスの極細繊維を発現させた。次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、織物(3)の間の極細繊維の層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。以降のウォータージェットパンチ処理、立毛処理、染色、柔軟剤と微粒子付与は実施例1と同様に行い、皮革様シート状物を得た。
なお、この皮革様シートは、染色でタテ方向に11.7%、ヨコ方向に9.4%収縮した。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.387、ノード数が7個、伸長率はタテ11.4%、ヨコ18.8%、伸張回復率はタテ92.5%、ヨコ91.0%であり、実施例1〜3よりもストレッチ性が若干劣るものの、ドレープ性に優れるものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も1.1mgと良好な結果であった。
なお、この皮革様シート状物における極細繊維の平均繊度は0.050、平均繊維長は26.4mmであった。
この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
実施例5
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる平均単繊維繊度3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が320g/m2の短繊維ウェブを作製した。得られたウェブの両面に参考例4で作製した織物(4)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、1800本/cm2の打ち込み密度で両面を交互にニードルパンチ処理し、目付が437g/m2、厚み2.68mm、繊維見掛け密度0.163g/cm3の繊維構造体を得た。
次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向3.6%、ヨコ方向に13.9%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。次いで、この繊維構造体を30℃のトリクレンでポリスチレンが完全に除去されるまで処理することにより、複合短繊維から平均単繊維繊度0.046デシテックスの極細繊維を発現させた。次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、織物(4)の間の極細繊維の層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。以降のウォータージェットパンチ処理、染色、柔軟剤と微粒子付与は実施例1と同様に行い、皮革様シート状物を得た。
なお、この皮革様シートは、染色でタテ方向に10.8%、ヨコ方向に9.8%収縮した。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.374、ノード数が7個、伸長率はタテ12.5%、ヨコ19.0%、伸張回復率はタテ92.0%、ヨコ91.3%であり、実施例1〜3よりもストレッチ性が若干劣るものの、ドレープ性に優れるものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も0.7mgと良好な結果であった。
なお、この皮革様シート状物における極細繊維の平均繊度は0.050、平均繊維長は27.8mmであった。
この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
比較例6
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる平均単繊維繊度3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が157g/m2と62g/m2の短繊維ウェブを作製した。得られた2種類のウェブを参考例2で作製した織物(2)の両面に重ね、交互にニードルパンチし、1600本/cm2の打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が294g/m2、厚み1.84mm、繊維見掛け密度0.160g/cm3の繊維構造体を得た。次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%の(PVA)1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向5.0%、ヨコ方向に13.7%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。
次いで、この繊維構造体を30℃のトリクレンでポリスチレンが完全に除去されるまで処理することにより、複合短繊維から平均単繊維繊度0.046デシテックスの極細繊維を発現させた。これにより、織物(2)の両面とも、織物(2)に対して極細繊維が垂直に貫通し、極細繊維が面方向に連続して存在する面が形成した繊維構造体が得られた。
以降のウォータージェットパンチ処理、染色、柔軟剤と微粒子付与は実施例1と同様に行い、皮革様シート状物を得た。
なお、この皮革様シートは、染色でタテ方向に15.7%、ヨコ方向に14.6%収縮した。
この皮革様シート状物は表裏面が極細繊維によって形成されており、ドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.531、ノード数が7個、伸長率はタテ16.0%、ヨコ24.1%、伸張回復率はタテ92.0%、ヨコ92.1%であり、ストレッチ性に優れるものの、ドレープ性に劣るものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も1.0mgと良好な結果であった。
なお、この皮革様シート状物における極細繊維の平均繊度は0.049、平均繊維長は44.6mmであった。
この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性がやや不良という結果であった。評価結果を表1に示した。
実施例6
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる平均単繊維繊度3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が140g/m2の短繊維ウェブを作製した。得られたウェブを参考例2で作製した織物(2)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、短繊維ウェブの面と織物(2)の面から交互にニードルパンチし、1800本/cm2の打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が225g/m2、厚み1.41mm、繊維見掛け密度0.160g/cm3の繊維構造体を得た。次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%の(PVA)1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向5.0%、ヨコ方向に13.8%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。次いで、この繊維構造体を30℃のトリクレンでポリスチレンが完全に除去されるまで処理することにより、複合短繊維から平均単繊維繊度0.046デシテックスの極細繊維を発現させた。これにより、実施例1と同様の繊維構造体が得られた。
この繊維構造体の極細繊維が面方向に連続し、3次元的に絡合している面から、0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。次いで、織物(2)に対して極細繊維が垂直に貫通した、面方向には不連続した面から17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、織物(2)の両面の極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
次いで、得られた繊維構造体の表面を、サンドペーパーにて立毛処理をした。立毛処理を行った繊維構造体を水系ウレタン樹脂(“エバファノール AP12”日華化学株式会社製)とマイグレーション防止剤(“ネオステッカー N”日華化学株式会社製)を含む水溶液に浸漬し、マングルで液を絞った後、130℃で2分間乾燥を行った。乾燥後、重量を測定した結果、水系ウレタン樹脂付与前に比べ4%重量が増加していた。水系ウレタン樹脂付与後に該繊維構造体の表面を、さらにサンドペーパーにて立毛処理をした。
得られた維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した。なお、染色により、タテ方向に14.2%、ヨコ方向に15.0%収縮していた。
次いで、柔軟剤(“ノニオン系柔軟剤“エルソフト N−500コンク”一方社株式会社製)と帯電防止剤(“ナイスポール FL” 日華化学株式会社)を含む水溶液に浸積し、マングルで絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、実施例1と同様に平均繊度が0.049デシテックスの極細繊維が織物(2)の両面に層を形成し、極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であった。
該皮革様シートのドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.470、ノード数が7個とドレープ性に優れ、伸長率はタテ15.1%、ヨコ32.5%、伸張回復率はタテ93.2%、ヨコ89.0%とストレッチ性にも非常に優れたものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は4.1mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。
実施例7
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてポリエチレンテレフタレート70部からなる平均単繊維繊度3.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が300g/m2の短繊維ウェブを作製した。該短繊維ウェブを用いて、ニードルパンチの打ち込み密度を2400本/cm2にした以外は実施例5と同様の方法で目付が482g/m2、厚み2.8mm、繊維見掛け密度0.172g/cm3の繊維構造体を得た。
次に83℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、次いで95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に2分間浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸させると同時に収縮処理を行い、タテ方向4.9%、ヨコ方向に10.6%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、織物(4)の間の極細繊維の層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。その後、スプリット処理した繊維構造体に水酸化ナトリウム溶液とに浸漬し、マングルで絞った後、スチーム処理することで極細繊維を発現させ、水洗と乾燥を行った。
これにより、織物(4)の一方の面は、極細繊維が面方向に連続して存在し、3次元的に絡合している面となり、もう一方の面では、織物(4)に対して極細繊維が垂直に貫通した、面方向には極細繊維が不連続した面が形成した繊維構造体が得られた。
以降の処理は、実施例6と同様に行った。染色の際には、タテ方向に8.1%、ヨコ方向に6.6%収縮していた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.041デシテックスの極細繊維が織物(4)の両面に層を形成し、極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であった。
該皮革様シートのドレープ係数とノード数、伸長率と伸張回復率を測定したところ、ドレープ係数が0.492、ノード数が6個とドレープ性に優れ、伸長率はタテ11.6%、ヨコ15.0%、伸張回復率はタテ91.9%、ヨコ92.7%とストレッチ性にも非常に優れたものであった。また、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は6.2mgと良好な結果であった。この皮革様シート状物でジャケットを作成し、シルエット性と着用性の評価を行ったところ、シルエット性、着用感共に良好な結果が得られた。評価結果を表1に示した。