本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(a)一般式(1)〜(3)から選ばれる構造単位を少なくとも1つ有する樹脂と、(b)熱架橋剤を含有する。(a)成分の樹脂としては、一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド、一般式(2)で表される構造単位を有するポリアゾール、一般式(3)で表される構造単位を有するポリアミドなどが挙げられる。(a)成分の樹脂が下記一般式(1)〜(3)から選ばれる構造単位を少なくとも1つ有することにより、優れた絶縁性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、側鎖に炭素数4〜51の嵩高い置換基を有するため、樹脂の有機溶媒への可溶性を向上でき、さらに熱処理時に樹脂同士の過度の配向を抑制して、収縮応力による反りを低減する効果を奏する。さらに、極性の小さい基を側鎖に有するために吸水率を低減する効果がある。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、このような樹脂と、(b)熱架橋剤を含有することから、熱処理時に熱架橋反応を引き起こし、絶縁性および薬品耐性に優れた硬化膜を得ることができる。
上記式中、R1およびR3は4〜14価の有機基、R2、R4、R5およびR6は2〜12価の有機基を示す。Xは独立に炭素数3〜50の有機基を示す。ZおよびAは、それぞれ独立にNH、O、S、CO、POまたはSi(CH3)2を示す。m、nおよびpは1〜10000の範囲を示す。αおよびβはそれぞれ0〜10の整数を示す。ただし、α+βは1〜10の整数である。
本発明に用いられる樹脂は、上記一般式(1)〜(3)から選ばれる構造単位を少なくとも1つ有することが必要である。一般式(1)〜(3)で表される構造単位のみからなるものであっても良いし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であっても良い。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、熱処理によって得られる硬化物の耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。さらに、一般式(1)〜(3)から選ばれる構造単位を10モル%以上有することが好ましく、さらに好ましくは20モル%以上である。本発明の効果をより明確にするためには、該構造単位を50モル%以上有することが好ましく、さらに好ましくは70モル%以上である。
このような樹脂は、例えば次の方法で合成することができる。X−CH2−O−基を有するジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらの誘導体もしくは酸二無水物、およびジアミン、トリアミン、テトラアミン、さらにこれらをヒドロキシル、カルボキシル、チオール、PO、シリル置換したアミノ化合物またはこれらの誘導体を、−30℃〜300℃の範囲で反応させることで、(a)成分の樹脂を合成することができる。例えば、ポリイミドは、テトラカルボン酸とジアミンを反応させることによって得ることができる。ポリアゾールとしては、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾールなどがある。ポリベンゾオキサゾールは、対応するビスアミノフェノールとジカルボン酸を、ポリベンゾチアゾールはビスアミノチオフェノールとジカルボン酸を、ポリベンズイミダゾールはテトラアミンとジカルボン酸を反応させることにより得ることができる。ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸あるいはこれらの誘導体を反応させることにより得ることができる。樹脂の合成の際に、イミダゾール化合物やトリエチルアミン、ピリジン、キノリンなどのアミン化合物や、トリフェニルフォスフィンなどのリン化合物、p−トルエンスルホン酸などの酸を加えて反応を促進することもできる。これらの反応促進剤は、一般に、得られる樹脂の重量に対して0.1〜100重量%用いられる。また、反応溶媒にポリリン酸、HMPAなどのリン系の溶媒を用いて、溶媒で反応を活性化させることもできる。
また、別の方法として、X−CH2−O−基を有さないジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらの誘導体もしくは酸二無水物、およびジアミン、トリアミン、テトラアミン、さらにこれらをヒドロキシル、カルボキシル、チオール、PO、シリル置換したアミノ化合物またはこれらの誘導体を、上記と同様に反応させて得られた樹脂に、下記一般式(5)で表される化合物を付加させることで、(a)成分の樹脂を合成することができる。この付加反応を行う時も反応触媒として、上記のアミン化合物、リン化合物、酸等を用いることができる。
上記式中、R8は水素原子または炭素数1〜20の有機基、Xは炭素数3〜50の有機基を示す。
一般式(1)〜(3)中、Xは独立に炭素数3〜50の有機基を示す。炭素数3以上とすることで、立体障害により樹脂同士の配向を抑制し、収縮応力を緩和する効果を得ることができる。炭素数50以下とすることで、樹脂自体の剛直性を保持し、絶縁性、耐熱性を維持することができる。さらに好ましくは、炭素数7〜45である。Xの好ましい例を下記に示す。
上記式中、各化合物は1〜10個の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数1〜10のエステル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子で置換されていても良い。
さらに、Xは単核または多核の芳香環を有することが好ましい。単核または多核の芳香環を有することで、樹脂の剛直性を維持したまま、効果的に樹脂同士の配向を抑制し、収縮応力を緩和することができる。
一般式(5)で表される化合物としては、例えば下に示すような構造の化合物を挙げることができる。
上記式中、R9は水素原子または炭素数1〜10の有機基、R10は独立に炭素数1〜10の有機基、ヒドロキシル基、チオール基、塩素原子、フッ素原子またはニトロ基を示す。rは0〜4の整数を示す。
一般式(1)〜(3)中、αおよびβはそれぞれ0〜10の整数を示し、α+βは1〜10の整数である。α+βを1〜10とすることで、熱処理時のポリイミド同士の相互作用を適当な範囲に調整し、収縮応力を抑制しつつ、絶縁性、薬品耐性を維持することができる。
一般式(1)〜(3)中、R1およびR3は4〜14価の有機基、R2およびR4〜R6は2〜12価の有機基を示すが、R1とR2、R3とR4、R5とR6のうち少なくとも一方は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピリデン基、イソプロピリデン基、エーテル基、チオエーテル基、メチレン基、SO2基およびエチレンオキサイド基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有することが好ましく、下記式(6)で表される基を有することがより好ましい。特にR1およびR2、R3およびR4、もしくはR5およびR6の両方がこれらの基を含有することが好ましい。これらの基を有することによって、人体に対して安全性が高いとされているプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテートより選ばれる溶剤に23℃で30重量%以上溶解する樹脂を得ることができる。
上記式中、Dは、ヘキサフルオロプロピリデン基、イソプロピリデン基、メチレン基、エーテル基、チオエーテル基またはSO2基を示す。
本発明に用いられる(a)樹脂は、さらに下記一般式(7)で表される構造単位を有することが好ましい。一般式(7)で表される構造単位を有することにより、上記の溶剤に対する溶解性が向上し、かつ硬化時の収縮を一層抑えることができる。
一般式(7)中、R11は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。R12は独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数1〜10のエステル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはハロゲン原子を表す。sは1〜10の整数を示し、好ましくは1〜2である。sを1以上とすることで硬化時の収縮を抑えることができ、10以下とすることで、絶縁性を向上させることができる。
一般式(7)で表される構造単位の含有量は樹脂中に2〜30重量%が好ましい。2重量%以上とすることで上記の効果を得ることができ、30重量%以下とすることで、樹脂骨格の剛直性を維持し、耐熱性、絶縁性を保つことができる。
一般式(7)で表される構造単位を有する樹脂を得るためには、具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを用いたり、またカルボン酸成分としてビス(3−カルボキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、α、ω−ビス(フタル酸)ポリジメチルシロキサンなどを用いたりすればよい。
さらに、本発明に用いられる(a)樹脂は、側鎖および/または末端にフェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有することが好ましい。このような基を有することにより、次のような利点がある。一つには、一般式(5)で表される化合物を樹脂に付加させる際の反応効率を向上させることができる。二つ目は、(b)熱架橋剤としてエポキシ化合物を用いた場合、熱硬化時にエポキシ化合物の開環、架橋反応を促進し、よりきめの細かい編み目構造を形成することができ、絶縁性、薬品耐性を向上させることができる。三つ目は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いた場合、このような基を有することによりアルカリ水溶液に対する溶解性を向上させ、アルカリ現像を可能とすることができる。アルカリ現像は環境負荷が小さいという点から、非常に好ましい。このような樹脂は、例えばポリイミド樹脂を例にとると、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を有するジアミン成分または酸二無水物成分を用いることにより得ることができる。または、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を有する末端封止剤で末端封止されていることも好ましい。末端封止剤としては、1級モノアミン、酸無水物、カルボン酸誘導体、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などが挙げられる。
末端封止剤の具体例を以下に示す。1級モノアミンとしては、具体的には、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、4−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−ヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−ヒドロキシナフタレン、1−カルボキシ−8−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−4−アミノナフタレン、1−カルボキシ−3−アミノナフタレン、1−カルボキシ−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−カルボキシナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−4−アミノナフタレン、2−カルボキシ−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−カルボキシナフタレン、2−アミノニコチン酸、4−アミノニコチン酸、5−アミノニコチン酸、6−アミノニコチン酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、3−アミノ−o−トルイック酸、アメライド、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、5−アミノ−8−メルカプトキノリン、4−アミノ−8−メルカプトキノリン、1−メルカプト−8−アミノナフタレン、1−メルカプト−7−アミノナフタレン、1−メルカプト−6−アミノナフタレン、1−メルカプト−5−アミノナフタレン、1−メルカプト−4−アミノナフタレン、1−メルカプト−3−アミノナフタレン、1−メルカプト−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−メルカプトナフタレン、2−メルカプト−7−アミノナフタレン、2−メルカプト−6−アミノナフタレン、2−メルカプト−5−アミノナフタレン、2−メルカプト−4−アミノナフタレン、2−メルカプト−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−メルカプトナフタレン、3−アミノ−4,6−ジメルカプトピリミジン、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が挙げられる。
これらのうち、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が好ましい。
特に5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
酸無水物、カルボン酸誘導体、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物、4−ヒドロキシフタル酸無水物、2−カルボキシフェノール、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、2−カルボキシチオフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−8−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−3−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−8−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−4−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−3−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−2−カルボキシナフタレン、2−カルボキシベンゼンスルホン酸、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸等のモノカルボン酸類及びこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、3−ヒドロキシフタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,2−ジカルボキシナフタレン、1,3−ジカルボキシナフタレン、1,4−ジカルボキシナフタレン、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、1,8−ジカルボキシナフタレン、2,3−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン、2,7−ジカルボキシナフタレン等のジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物等が挙げられる。
これらのうち、ポリマーへの導入の容易さなどから、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物等の酸無水物や、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸等のモノカルボン酸類が好ましく利用される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
末端封止剤として、1級モノアミンの含有量は、全ジアミン成分に対して、0.1〜60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50モル%である。酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物成分の含有量は、全ジアミン成分に対して、0.1〜60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜55モル%である。
本発明に用いられる(a)樹脂の重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で4,000〜80,000であることが好ましく、特に好ましくは、5,000〜50,000である。重量平均分子量を4,000以上とすることで、組成粘度を大きくして厚膜塗布を可能とし、重量平均分子量を80,000以下とすることで、溶剤への溶解性を向上することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに(b)熱架橋剤を含有する。(b)熱架橋剤を含有することにより、熱処理により架橋反応を引き起こし、硬化後の絶縁性、薬品耐性を良好にすることができる。
(b)熱架橋剤としては、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物が好ましい。エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物を用いることで、80℃〜220℃の超低温熱処理においても硬化が進行し、硬化後の硬化膜の絶縁性、薬品耐性を良好にすることができる。
エポキシ化合物としては、エポキシ基を2つ有するものとしてエポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(以上、商品名、共栄社化学(株)製)、デナコールEX−212L、デナコールEX−214L、デナコールEX−216L、デナコールEX−850L(以上、商品名、ナガセケムテックス(株)製)、GAN,GOT(以上、商品名、日本化薬(株)製)、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート1007、YX8100−BH30、E1256、E4250、E4275(以上、商品名、ジャパンエポキシ(株)製)、エピクロンEXA−9583、HP4032(以上、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、3つ有するものとして、テピックS、テピックG、テピックP(以上、商品名、日産化学工業(株)製)、デナコールEX−321L(商品名、ナガセケムテックス(株)製)、NC3000(商品名、日本化薬(株)製)、4つ以上有するものとして、EPPN502H、NC3000(以上、商品名、日本化薬(株)製)、エピクロンN695、HP7200(以上、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。これらのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記エポキシ化合物にエポキシ基を1つ有するエポライトM−1230、エポライトEHDG−L(以上、商品名、共栄社化学(株)製)、PP−101(商品名、東都化成(株)製)、NKオリゴEA−1010/ECA(商品名、新中村化学)等を配合して架橋度を調整することもできる。
オキセタン化合物としては、エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、商品名、宇部興産株式会社製)、オキセタン化フェノールノボラックなどが挙げられる。これらのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物はエポキシ基またはオキセタン基を2つ以上有するものが好ましい。エポキシ基またはオキセタン基を2つ以上有することにより、熱硬化後の樹脂中に架橋構造を導入し、さらに耐溶剤性を向上できる。
エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物は、エポキシ当量またはオキセタン当量が100〜500であることが好ましい。100以上とすることで、熱処理後の硬化膜の靱性を向上することができ、500以下とすることで熱処理後に密度の高い編み目構造を導入できるため、熱処理後の硬化膜を高絶縁性にすることができる。
このような(b)熱架橋剤の含有量としては、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜250重量部であり、さらに好ましくは5〜150重量部の範囲である。250重量部以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物を硬化膜にしたときの耐熱性を向上でき、1重量部以上とすることで、架橋による分子量増大効果が得られ、硬化膜の耐熱性を向上できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに硬化促進剤を用いることができる。エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と硬化促進剤を組み合わせることで、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物の硬化を促進し、150℃以下の熱処理でも耐溶剤性を向上させることができる。硬化促進剤としては、各種イミダゾール、イミダゾールシラン、イミダゾリン、酸無水物、トリフェニルフォスフィンなどのリン化合物などが挙げられる。各種イミダゾールとしては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。イミダゾールシランとしては、IS−1000、IS−1000D、IM−1000、SP−1000,IA−100A、IA−100P、IA−100F(商品名、日鉱マテリアルズ(株)製)、その他に1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エンなどが挙げられる。酸無水物としては、メチルヘキラハイドロ無水フタル酸、メチルテトラハイドロ無水フタル酸、アデカハードナーEH−3326、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A(商品名、旭電化工業(株)製)、エピクロンB−570、エピクロンB−650(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)など、リン化合物としてトリフェニルフォスフィン、4級フォスフォニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤の含有量は、(b)熱架橋剤100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲が好ましい。0.01重量部以上とすることで熱架橋剤の硬化を効果的に促進し、10重量部以下とすることで、硬化物の絶縁性、耐熱性を向上することができる。
また、(b)熱架橋剤が、下記一般式(4)で表される熱架橋性基を含有することも好ましい。このような熱架橋性基を有することで、熱処理後の硬化膜の絶縁性、薬品耐性を向上することができる。
上記式中、R7は水素原子または炭素数1〜20の有機基を示す。qは2〜10の整数である。
例えば、一般式(4)で表される熱架橋性基を2つ有するものとしてDM−BI25X−F、46DMOC、46DMOIPP、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PC、DML−PCHP、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、DML−OC、ジメチロール−Bis−C、ジメチロール−BisOC−P、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MB25、DML−MTrisPC、DML−Bis25X−34XL、DML−Bis25X−PCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、ニカラックMX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾールなど、3つ有するものとしてTriML−P、TriML−35XL、TriML−TrisCR−HAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)など、4つ有するものとしてTM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、ニカラックMX−280、ニカラックMX−270(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)など、6つ有するものとしてHML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、ニカラックMW−390、ニカラックMW−100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)などが挙げられる。
これらのうち、特に好ましくは、一般式(4)で表される熱架橋性基を2つ有するものとして46DMOC、46DMOEP、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PC、DML−PCHP、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、ニカラックMX−290、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾールなど、3つ有するものとしてTriML−P、TriML−35XLなど、4つ有するものとしてTM−BIP−A、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、ニカラックMX−280、ニカラックMX−270など、6つ有するものとしてHML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAPなどが挙げられる。また、さらに好ましくは、ニカラックMX−280、ニカラックMX−270、ニカラックMW−390、ニカラックMW−100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)などが挙げられる。
また、一部に熱架橋基を1つ有するものとして4M−26X、6M−24X、ML−236TMP、4−メチロール3M6C、ML−MC、ML−TBC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)などを配合して架橋度を調整することもできる。
下記に本発明の熱硬化性樹脂組成物に特に好ましく用いられる代表的な熱架橋剤の構造を示す。
また、上記、本発明の樹脂組成物に架橋性化合物と光酸発生剤または光塩基発生剤を添加することで、露光した部分の溶解性が低下し、ネガ型の感光性樹脂組成物を得ることもできる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(c)重合性化合物および(d)光重合開始剤を含有することが好ましい。(c)および(d)を含有することにより、光照射により選択的に重合が進行し、本発明の熱硬化性樹脂組成物に感光性を付与することができる。
(c)重合性化合物としては例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合官能基および/またはプロパルギル等の不飽和三重結合官能基を有する化合物が挙げられ、これらの中でも共役型のビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物が重合性の面で好ましい。またその官能基が含有される数としては安定性の点から1〜4であることが好ましく、それぞれは同一の基でなくとも構わない。また、ここで言う重合性化合物は、分子量30〜800のものが好ましい。分子量が30〜800の範囲であれば、(a)成分の樹脂との相溶性がよく、熱硬化性樹脂組成物の安定性がよい。
(c)重合性化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、 2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
これらのうち、特に好ましくは、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、 2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
(c)重合性化合物の含有量は、(a)樹脂100重量部に対して、5〜200重量部とすることが好ましく、相溶性の点から5〜150重量部とすることがより好ましい。(c)成分の含有量を5重量部以上とすることで、現像時の露光部の溶出を防ぎ、現像後の残膜率の高い熱硬化性樹脂組成物を得ることができ、また、200重量部以下とすることで、膜形成時の膜の白化を抑制することができる。
(d)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4,−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3,4,4,−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類や3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン等のベンジリデン類、7−ジエチルアミノ−3−テノニルクマリン、4,6−ジメチル−3−エチルアミノクマリン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、7−ジエチルアミノ3−(1−メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン類、2−t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン等のアントラキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−(p−クロロフェニル)グリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシン等のグリシン類、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル等のオキシム類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン類などが挙げられる。
これらのうち、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル等のオキシム類が好ましく、特に好ましくは、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタルである。
上記光重合開始剤の含有量は、(a)樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜60重量部が好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに着色剤を用いることができる。着色剤は、有機電界発光素子の絶縁層においては、発光エリアからの迷光を防止する作用があり、回路基板用のソルダーレジストにおいては、基板上の回路配線を隠す目隠しの作用がある。
本発明で用いる着色剤は、染料、熱発色性染料、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。また、前記(a)成分を溶解する有機溶剤に可溶でかつ樹脂と相溶するものが好ましい。これら着色剤のうち、染料としては例えば油溶性染料、分散染料、反応性染料、酸性染料もしくは直接染料等が挙げられる。染料の骨格構造としては、アントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、メチン系、オキサジン系さらにはこれら各染料の含金属錯塩系を用いることができ、その中でもフタロシアニン系、および含金属錯塩系のものが耐熱性、耐光性に優れより好ましい。具体的には、Sumilan、Lanyl染料(住友化学工業(株)製)、Orasol、Oracet、Filamid、Irgasperse染料(チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、Zapon、Neozapon、Neptune、Acidol染料(BASF(株)製)、Kayaset、Kayakalan染料(日本化薬(株)製)、Valifast colors染料(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、 Sandoplast、Polysynthren, Lanasyn染料(クラリアントジャパン(株)製)、Aizen Spilon染料(保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの染料は単独でもしくは混合して用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、フィラーを含有することができる。これは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を回路基板用のソルダーレジストとして用いる場合、スクリーン印刷において、塗布、乾燥する行程において、チクソ性を発現し、所定のサイズを保持するために効果がある。また、熱硬化の収縮を抑制するという効果も期待できる。
本発明に用いられるフィラーとしては、例えば、絶縁性フィラーの例としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、窒化アルミ、酸化チタン、シリカ−酸化チタン複合粒子等が、導電性フィラーの例としては金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、カーボン等が挙げられる。用途によりこれらを複数混合してもよいが、信頼性、コストの点で絶縁性フィラーの場合は、シリカ、酸化チタン、シリカ−酸化チタン複合粒子が、導電性フィラーの場合銀が好ましい。その含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは2〜1000重量部であり、さらに好ましくは5〜500重量部の範囲である。2重量部以上とすることで耐湿性を向上することができ、1000重量部以下とすることで製品粘度の過度の上昇を防ぎ、良好な作業性を得ることができる。また、フィラーは、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。平均粒径を10μm以下とすることで、流動性を維持し、塗布を容易にすることができる。また、異なる平均粒径のフィラーを2種類以上混合して用いることも、チクソ性付与、応力緩和の観点から好ましい。
さらに、必要に応じて上記、熱硬化性樹脂組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル類を混合しても良い。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有することもできる。
また、シリコンウェハなどの下地基板との接着性を高めるために、シランカップリング剤、チタンキレート剤などを該熱硬化性樹脂組成物に対して0.5〜10重量%添加したり、下地基板をこのような薬液で前処理したりすることもできる。
熱硬化性組成物に添加する場合、例えば、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤を熱硬化性樹脂組成物中のポリイミドに対して0.5〜10重量%添加する。
基板を処理する場合、上記で述べたカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20重量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後50〜300℃の温度をかけることで、基板と上記カップリング剤との反応を進行させる。
しかしながら、該熱硬化性樹脂組成物にアルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する効果のある化合物として、オニウム塩、ジアリル化合物又はテトラアルキルアンモニウム塩等を含有することは好ましくない。これらを含有した場合、その後の熱処理でその化合物分解が起こり、酸または塩基が発生し、これが原因で得られる硬化膜の耐熱性が低下する、機械特性が低下する、接着性が低下する等の問題が生じる可能性がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、組成物の粘度を調整したり、塗布性を向上する目的で、有機溶剤を含有することが好ましい。本発明で利用される有機溶剤としては具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、その他、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらのうち、(a)成分を溶解しかつ、大気圧下沸点が110℃〜190℃であるものが特に好ましい。沸点を110℃以上にすることで、組成物塗布時に溶剤が揮発して塗布性が低下することを防ぎ、190℃以下とすることで、低温での熱処理時の残留溶媒を低減し、硬化膜の絶縁性、耐熱性を向上することができる。また、(a)成分を溶解する溶剤を用いることによって、下地基盤に均一性の良い塗膜を形成することができる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
特に好ましいものとして、具体的には、大気圧下沸点が110℃〜190℃のアルコール系溶剤のうち、特に、人体に対して安全とされるプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテートが挙げられる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含有される有機溶剤は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは、20〜800重量部、特に好ましくは、30〜500重量部である。
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する方法について説明する。
熱硬化性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としてはポリイミド類、シリコンウェハ、セラミックス類、ガラス基板、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷塗布などの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が1〜150μmになるように塗布される。
次に熱硬化性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥する工程を含んでもよい。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50〜150℃の範囲で1分〜数時間行うことが好ましい。
感光性樹脂として用いる場合、この後にパターン加工を行うことができる。この塗布膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物のパタ−ンを形成するには、露光後、現像液を用いて未露光部を除去する。現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを単独あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、トルエン、キシレン、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、酢酸エチルなどの有機溶剤と組み合わせて使用したり、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液を使用することができる。特に、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを含有してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしても良い。
また、現像前にベーク処理をする工程を取り入れても差し支えない。この温度としては50〜180℃の範囲が好ましく、特に60〜150℃の範囲がより好ましい。時間は特に制限はないが、その後の現像性の観点からは10秒〜数時間が好ましい。
次に、硬化処理を行い、硬化膜にする。硬化処理は、80〜280℃の温度で2分〜5時間加熱することが好ましい。この加熱処理は、温度を選び段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら実施してもよいが、本発明の熱硬化性樹脂組成物は低温でも容易に熱硬化するため、段階的、連続的昇温工程を省略することもできる。一例としては、130℃、160℃、180℃で各30分ずつ熱処理する、あるいは室温より280℃まで1時間かけて直線的に昇温する、あるいは120℃で90分熱処理するなどの方法が挙げられる。これらの熱処理のうち、下地基盤がプラスチックの場合や熱酸化されやすいものを含む場合などは、80〜160℃で処理することが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物により形成した硬化膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁膜などの用途に用いられる。
また本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて表示装置に形成される絶縁層は、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置に関するものであり、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機電界発光素子を用いた表示装置(有機電界発光装置)などが該当する。
以下実施例および技術をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の熱硬化性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
<熱硬化性樹脂膜の作製>
基板は、(A)厚み38μmのカプトンフィルムにメッキ法にて厚さ10μmの銅配線を配置した基板、および(B)6インチシリコンウェハを用意した。各基板上に、熱硬化性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスクリーン印刷機MEC−2400(三谷電子工業(株)社製)にて塗布した。
<膜厚の測定方法>
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、屈折率1.628で膜厚を測定した。
<露光>
露光機(キャノン(株)社製全波長アライナー PLA−501F)に、パターンの切られたマスクをセットし、露光量700〜1500mJ/cm2(i線換算)で全波長露光を行った。
<現像>
東京エレクトロン(株)製Mark−7の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間噴霧した。この後、0回転で30秒間静置し、再び10秒間噴霧、30秒間静置を繰り返した後400回転で水にてリンス処理し、3000回転で10秒振り切り乾燥した。
<硬化(熱処理)>
イナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、各実施例、比較例に記載された温度、時間で熱処理を行った。
<反り量>
反り量測定には、(A)厚み38μmのカプトンフィルムにメッキ法にて厚さ10μmの銅配線をライン/スペース=10μm/10μmで配置した基板を用いた。上記で作製した熱硬化性樹脂膜を各実施例に記載の条件で熱処理した後、平坦な机上に静置し、机上から最も高い点の高さを測定した。
<薬品耐性>
薬品耐性試験には、(B)シリコンウェハ上サンプルを用いた。上記で作製した熱硬化性樹脂膜を各実施例に記載の条件で熱処理した後、50℃のN−メチルピロリドン(NMP)中に室温で60分間浸し、溶剤処理後膜厚/溶剤処理前膜厚を算出した。
<絶縁信頼性(HAST)試験>
絶縁信頼性試験は、ライン幅10μm、スペース20μmの櫛状サンプルを用いた。櫛状サンプル上に厚み10μmになるように熱硬化性樹脂組成物を塗布し、各実施例に記載の条件で熱処理した後、85℃、85%RH、50Vの条件で100時間処理し、絶縁抵抗値を測定した。絶縁信頼性の良否の判断は、100時間試験後の絶縁抵抗値が1.0×109Ω以上を良、1.0×109Ω未満を否とした。
<パターン加工性評価>
パターン加工性評価は、(B)シリコンウェハ上サンプルを用いた。上記で作製した熱硬化性樹脂膜に、ライン幅50μm、スペース50μmのパターンの切られたマスクを介して1500mJ/cm2(i線換算)で全波長露光を行い、その後現像を行った。パターン形成ができたものを良、パターン形成ができなかったものを否とした。
合成例(1) ポリイミド(I)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAHFとする)25.46g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(以下、SiDAとする)4.97g(0.02モル)、末端封止剤として、3−アミノフェノール(以下、3−Aphとする)2.18g(0.02モル)をNMP80gに溶解させた。ここにビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以下、ODPAとする)31.02g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、180℃で5時間攪拌した。その後、4M26X(商品名、本州化学(株)製)6.36gを添加し、さらに180℃で1時間撹拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が27000であった。
合成例(2) ポリイミド(II)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF18.13g(0.05モル)、SiDA7.46g(0.03モル)、末端封止剤として、3−Aph4.37g(0.04モル)をNMP150gに溶解させた。ここに2,2−ビス(4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(以下、BSAAとする)5.20g(0.01モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エチレン二無水物(以下、TMEG−100とする)36.93g(0.09モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、180℃で5時間攪拌した。ここに、6M24X(商品名、本州化学(株)製)7.21gを添加し、さらに180℃で1時間撹拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が14000であった。
合成例(3) ポリイミド(III)の合成
合成例(2)において、6M24Xの添加量を7.21gから3.60gに変更して、合成を行った。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が13000であった。
合成例(4) ポリイミド(IV)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(以下、HFBAPPとする)34.74g(0.067モル)、SiDA4.97g(0.02モル)、末端封止剤として、アニリン1.88g(0.02モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.02g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させた。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、180℃で5時間攪拌した。ここに、6M24X(商品名、本州化学(株)製)8.60gを添加し、さらに180℃で1時間撹拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が29000であった。
合成例(5) ジアミンIの合成
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン40.3g(0.12モル、セントラル硝子(株)製)を酢酸200mL(関東化学(株)製)と硫酸20g(濃度96%以上、関東化学(株)製)に加え、70℃に加熱した。ここに硝酸(比重1.38、関東化学(株)製)20mLを5分かけて滴下した。70℃で2時間攪拌を続けた後、室温に冷却したところで、水3000mLに投入した。投入後、テトラフルオロエチレン製のフィルターでろ過を行い、沈殿物を集めた。さらに水で十分に洗浄し、洗浄液のpHが4以上になったところで、50℃の真空乾燥機で48時間乾燥した。
乾燥後の上記固体42.6g(0.1モル)をジメチルホルムアミド300mL(和光純薬(株)製)に溶解させた。ここにt−ブトキシカリウム24.6g(0.22モル、東京化成(株)製)を加えた。その後、ヨウ化銅2g(関東化学(株)製)と2−ヨードブタン44.2g(0.24モル、東京化成(株)製)を加えて、窒素気流下、150℃で4時間攪拌した。その後、溶液温度が室温に戻ったところでろ過を行い、ろ液を水500mLに投入した。析出した沈殿を集め、さらに水で洗浄した。その後、50℃の真空乾燥機で48時間乾燥した。
乾燥後の固体43.0g(0.08モル)を2−メトキシメタノール300mL(和光純薬(株)製)、テトラヒドロフラン300mL(和光純薬(株)製)に溶解し、5%パラジウム−炭素(和光純薬(株)製)1.5gを加えた。この溶液の温度を70℃にし、飽水ヒドラジン25g(0.5モル、関東化学(株)製)を2−メトキシメタノール30mLに希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で2時間攪拌を続けた。溶液の温度が室温に戻ったところで、酢酸1gを加え、1時間攪拌を続けた。その後、ろ過を行い、ろ液をロータリーエバポレーターで約半分に濃縮した。この液を水3000mLに投入した。その後、沈殿をろ過で集め、室温で乾燥させ、エタノールで再結晶し、50℃の真空乾燥機で48時間乾燥し、下記ジアミン(I)を得た。
合成例(6) ポリイミド(V)の合成
乾燥窒素気流下、合成例5で得られたジアミン(I)31.07g(0.065モル)、SiDA4.97g(0.02モル)、末端封止剤として、3−Aph3.27g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.02g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、180℃で5時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で72時間乾燥した。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が24000であった。
合成例(7) ポリイミド(VI)の合成
合成例(1)において、4M26Xを添加しない他は、合成例(1)を繰り返した。得られたポリマー固体の赤外吸収スペクトルを測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が23000であった。
合成例(8) ポリベンゾオキサゾール(I)の合成
BAHF36.6g(0.1モル)をポリリン酸(和光純薬(株)製)100gに溶解させた。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸25gを加え、180℃で6時間攪拌しながら加熱した。この後、溶液の温度を70℃にして、ヒドロキシ安息香酸(0.02モル、和光純薬(株)製)を加え、その後、液温を180℃にして2時間攪拌した。その後溶液を70℃に冷却し、4MOM(本州化学工業(株)製)5gを添加した。その後150℃で4時間攪拌した後、室温にまで低下し、水10Lに投入して目的のポリベンゾオキサゾールの沈殿を得た。このポリマーの沈殿をろ過で集め、さらに水で洗浄した。その後、80℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール(I)の粉体を得た。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が22000であった。
合成例(9) ポリベンゾオキサゾール(II)の合成
合成例(8)で4MOMを加えない以外は合成例(8)と同様にして、ポリベンゾオキサゾール(II)を得た。ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が20000であった。
合成例(10) ポリイミド(VII)の合成
ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)エタン15.5g(0.05モル、日本化薬工業(株)製、MDEA)をNMP50gに溶解した。ここに4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物22.2g(0.05モル、ダイキン工業(株)製、6FDA)をNMP30gともに加えた。この溶液を窒素気流下、40℃で2時間、その後、トルエン30mLを加えて180℃で4時間水を除去しながら反応させた。この溶液が室温にまで低下したら、水4Lに投入して褐色沈殿を得た。この沈殿をろ過で集めた。さら水3Lで洗浄を行い、その後80℃の真空乾燥機で72時間乾燥した。このポリマーの重量平均分子量は45000であった。
実施例、比較例に用いた化合物の構造を以下に示す。
実施例1
ポリイミド(I)10gに、エポキシ化合物のNC6000(商品名、日本化薬(株)製)5g、エピコート828(商品名、ジャパンエポキシ(株)製)5g、着色剤のVG3101(商品名、三井化学(株)製)2g、接着改良剤のビニルトリメトキシシラン1g、硬化促進剤の2E4MZ(商品名、四国化成(株)製)0.1g、3−メトキシ−3−メチルブタノール20gを添加し、溶解させてワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、150℃で60分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
実施例2
ポリイミド(II)10gに、エポキシ化合物のNC6000 2g、エピコート828 8g、接着改良剤のビニルトリメトキシシラン1g、IS−1000(商品名、日鉱マテリアルズ(株)製)0.5g、着色剤のVB2620(商品名、オリエント化学工業(株)製)0.2g、3−メトキシブチルアセテート10gを添加し、溶解させてワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、120℃で90分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
実施例3
ポリイミドとしてポリイミド(III)を用いた他は実施例2と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
実施例4
ポリイミド(IV)に、オキセタン化合物のOXBP(商品名、宇部興産(株)製)7.5g、硬化促進剤のSI−110L(商品名、三進化学工業(株)製)0.4g、乳酸エチル15gを添加し、溶解させてワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、180℃で90分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
実施例5
ポリイミドとしてポリイミド(V)を用いた他は実施例2と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
比較例1
ポリイミドとしてポリイミド(VI)を用いた他は実施例2と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
比較例2
エポキシ化合物のNC6000、エピコート828を添加しない他は、実施例2と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。
実施例6
ポリイミド(I)10gに光重合開始剤の4,5−ジフェニル−2−(2−メチルフェニル)ビイミダゾール0.5g、熱架橋剤のニカラックMX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)0.2g、HMOM−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)1.5g、重合性化合物のPDBE−250(商品名、(株)日本油脂製)4.0gを乳酸エチル12gに溶解させて、ネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、220℃で90分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。また、シリコンウェハ上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、アルカリ現像を行い、パターン加工性を評価した。
実施例7
ポリイミド(II)10gに光重合開始剤のCGI−242(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1g、熱架橋剤のニカラックMW−100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、重合性化合物の2EG(商品名、共栄社化学(株))4.0gを乳酸エチル12gに溶解させて、ネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、200℃で60分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性について評価を行った。また、シリコンウェハ上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、アルカリ現像を行い、パターン加工性を評価した。
実施例8
ポリイミドとしてポリイミド(IV)を用いた他は実施例7と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性、パターン加工性を評価した。
比較例3
ポリイミドとしてポリイミド(VI)を用いた他は実施例7と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性、パターン加工性を評価した。
比較例4
熱架橋剤のニカラックMW−100LMを添加しない他は実施例7と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性、パターン加工性を評価した。
実施例9
合成例8で合成したポリベンゾオキサゾール(I)10g、熱架橋剤のHMOM2g、ナフトキノンジアジド化合物2gをガンマブチロラクトン10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10g、乳酸エチル10gに溶解させてワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように熱硬化性樹脂膜を作製し、200℃で60分熱処理し、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性を評価した。
比較例5
合成例8で合成したポリベンゾオキサゾール(I)にかえて合成例9で合成したポリベンゾオキサゾール(II)10gを用いた他は実施例9と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性を評価した。
比較例6
熱架橋剤のHMOMを添加しない他は実施例9と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性を評価した。
比較例7
ポリイミド(V)にかえて合成例10で合成したポリイミド(VII)を用いた以外は実施例5と同様にして、反り量、絶縁信頼性、薬品耐性を評価した。
実施例1〜5、9および比較例1〜2、5〜7の評価結果を表1に、実施例6〜8および比較例3〜4の評価結果を表2に示す。