JP2007098754A - 静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】静電エネルギーの損失を抑え、低電圧で安定して駆動できる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッドおよびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】弾性変形可能な可動電極部材(振動板22)と、この可動電極部材に絶縁膜26およびギャップgを介して対向配置された固定電極部材(個別電極31)と、可動電極部材と固定電極部材との間に静電気力を発生させる駆動手段(駆動制御回路4)とを有する静電アクチュエータにおいて、下記の式で表される、固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比を0.15以下とする。
Tm=Rm/(g+t/ε)
ここに、Tm:固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比
Rm:固定電極部材の表面粗さ
g:ギャップ量
t:絶縁膜の厚さ
ε:絶縁膜の誘電率
【選択図】図2
【解決手段】弾性変形可能な可動電極部材(振動板22)と、この可動電極部材に絶縁膜26およびギャップgを介して対向配置された固定電極部材(個別電極31)と、可動電極部材と固定電極部材との間に静電気力を発生させる駆動手段(駆動制御回路4)とを有する静電アクチュエータにおいて、下記の式で表される、固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比を0.15以下とする。
Tm=Rm/(g+t/ε)
ここに、Tm:固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比
Rm:固定電極部材の表面粗さ
g:ギャップ量
t:絶縁膜の厚さ
ε:絶縁膜の誘電率
【選択図】図2
Description
本発明は、対向電極間に発生する静電気力によって駆動する静電アクチュエータにおいて、静電エネルギーを効率的に利用するようにした静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法に関する。
従来のインクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドには、その駆動手段として静電気力を利用した、いわゆる静電駆動方式のアクチュエータ(以下、静電アクチュエータという)を備えたものが知られている。この静電アクチュエータは、例えば吐出室の底壁を形成する振動板と呼ばれる弾性変形可能な可動電極部材と、この可動電極部材に絶縁膜およびギャップを介して対向配置された個別電極と呼ばれる固定電極部材とを備え、これら対向配置された振動板(可動電極部材)と個別電極(固定電極部材)との間に駆動電圧を印加して静電気力を発生させることにより、振動板を静電吸引または静電反発により変位させ、この変位に伴う吐出室の容積変化による内圧変動によって吐出室内のインクの一部をインク滴として吐出室に連通するノズル孔より吐出させる駆動方式である。
このような静電アクチュエータにおいて、振動板が絶縁膜を挟んで繰り返し個別電極(固定電極部材)に接触すると、絶縁膜の表面には接触帯電が起こり、接触帯電が原因となって、振動板の静電吸引力や静電反発力が変動し、振動板の振動が不安定となるおそれがある。振動板の振動が不安定になると、適正なサイズのインク滴が吐出されず、また、不要なインクミストが発生する。この結果、印刷不良や、インクノズル面、プリンタケース等のインク汚れが発生してしまうといった問題がある。
そこで、かかる問題を解決するため、個別電極にITO(Indium Tin Oxide)膜を用い、さらにそのITO膜の表面に電極間のギャップよりも小さい凸部を複数持たせるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の静電アクチュエータによれば、このような凹凸をITO膜の表面に設けることにより、振動板が個別電極と接触した場合に接触面積が小さくなるため、接触帯電の量を減少させる効果があるというものである。
そこで、かかる問題を解決するため、個別電極にITO(Indium Tin Oxide)膜を用い、さらにそのITO膜の表面に電極間のギャップよりも小さい凸部を複数持たせるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の静電アクチュエータによれば、このような凹凸をITO膜の表面に設けることにより、振動板が個別電極と接触した場合に接触面積が小さくなるため、接触帯電の量を減少させる効果があるというものである。
しかし、ITO膜の表面に凹凸があると逆に静電エネルギーが減少してしまう。そのため、インクを良好に吐出させるためには入力エネルギーを大きくしなくてはならないという問題点がある。入力電圧を上げると、絶縁膜部にかかる電圧が上昇して、絶縁破壊が起きるおそれがある。また、電圧が上昇するとギャップ内の物質が重合反応を起こして、異物が生成され、ヘッドの駆動を妨げてしまうという問題点もある。
本発明は、上記のような問題点に鑑み、静電エネルギーの損失を抑え、低電圧で安定して駆動できる静電アクチュエータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかる静電アクチュエータを具備する液滴吐出ヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかる静電アクチュエータを具備する液滴吐出ヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る静電アクチュエータは、弾性変形可能な可動電極部材と、この可動電極部材に絶縁膜およびギャップを介して対向配置された固定電極部材と、前記可動電極部材と前記固定電極部材との間に静電気力を発生させる駆動手段とを有する静電アクチュエータにおいて、
下記の式で表される、前記固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比を0.15以下とするものである。
Tm=Rm/(g+t/ε)
ここに、Tm:固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比
Rm:固定電極部材の表面粗さ
g:ギャップ量
t:絶縁膜の厚さ
ε:絶縁膜の誘電率
下記の式で表される、前記固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比を0.15以下とするものである。
Tm=Rm/(g+t/ε)
ここに、Tm:固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比
Rm:固定電極部材の表面粗さ
g:ギャップ量
t:絶縁膜の厚さ
ε:絶縁膜の誘電率
本発明の静電アクチュエータは、上記の式から明らかなように、固定電極部材の表面粗さを小さくすることにより静電エネルギーの損失を抑えることができるため、低電圧で安定した駆動が可能となる。例えばギャップが100nmである場合に表面粗さが20nmである場合を考えると、ギャップの設計値を120nmにすることによりギャップが100nmと考えることができる。しかしながら表面粗さは制御できないため、ギャップが120nmになっている場合も有り得る。その場合は駆動電圧が大きくなる。振動板の幅が50μm、振動板の厚みが1.0μm、絶縁膜の厚みが0.1μmの場合は駆動電圧の差ΔVは2Vになる。表面粗さを抑えることにより、この駆動電圧の差を低電圧化することができる。
また、本発明の静電アクチュエータにおいては、前記固定電極部材が、IZOまたは非晶質のITOもしくは表面が研磨されたITOにより形成されているものである。
固定電極部材を、IZO(Indium Zinc Oxide)、または、非晶質のITOもしくは表面が研磨されたITOにより形成することにより、固定電極部材の表面粗さを小さくすることができるので、静電エネルギーの損失を抑えることができる。
固定電極部材を、IZO(Indium Zinc Oxide)、または、非晶質のITOもしくは表面が研磨されたITOにより形成することにより、固定電極部材の表面粗さを小さくすることができるので、静電エネルギーの損失を抑えることができる。
また、本発明の静電アクチュエータにおいては、前記絶縁膜の固定電極部材と対向する面に疎水膜が形成されているものである。
固定電極部材の表面粗さを極度に減少させると、可動電極部材が絶縁膜を介して接触を繰り返したとき、固定電極部材に接触したまま離れなくなる貼り付き現象が生じるおそれがある。そのような貼り付き現象を回避するためには絶縁膜の固定電極部材と対向する面に疎水膜を形成するとよい。
この場合、疎水膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)からなるものが好ましい。
固定電極部材の表面粗さを極度に減少させると、可動電極部材が絶縁膜を介して接触を繰り返したとき、固定電極部材に接触したまま離れなくなる貼り付き現象が生じるおそれがある。そのような貼り付き現象を回避するためには絶縁膜の固定電極部材と対向する面に疎水膜を形成するとよい。
この場合、疎水膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)からなるものが好ましい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記のいずれかの静電アクチュエータを有するものである。液滴吐出ヘッドに、本発明の静電アクチュエータを用いれば、上述のように静電エネルギーを効率よく利用することができるので、低電圧駆動で安定した吐出性能を発揮させることができる。また、ギャップ量のずれが少ないため吐出が安定した吐出性能を発揮できる。
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、基板に凹部をエッチングにより形成する工程と、前記凹部を含む前記基板の表面に電極材料を該凹部の深さ以上に厚く成膜する工程と、前記成膜された電極膜の表面を研磨する工程と、前記研磨された電極膜にレジストをパターニングしてエッチングすることにより固定電極部材を形成する工程と、前記固定電極部材を形成した電極基板に、絶縁膜およびギャップを介して可動電極部材を有するシリコン基板を接合する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
電極材料として、通常用いられる多結晶のITOを使用すると、例えばスパッタ等により基板表面に成膜した場合、その電極膜の表面には比較的大きい凹凸ができてしまう。この表面粗さを小さくするには、成膜時に、凹部の深さ以上に厚く形成し、その表面を研磨してからレジストをパターニングしてエッチングすれば、表面粗さの小さい固定電極部材を形成することができる。
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、基板に凹部をエッチングにより形成する工程と、前記凹部を含む前記基板の表面に電極材料を該凹部の深さよりも薄く成膜する工程と、前記成膜された電極膜にレジストをパターニングしてエッチングすることにより固定電極部材を形成する工程と、前記固定電極部材を形成した電極基板に、絶縁膜およびギャップを介して可動電極部材を有するシリコン基板を接合する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
この場合、電極材料として、例えば、非晶質のITOまたはIZOを用いるものである。これらの電極材料は、成膜時、上記多結晶のITOに比べて表面粗さが小さいので、上記のように凹部の深さ以上に厚く成膜する必要はなく、凹部の深さよりも薄く形成すればよい。これによって、所望のギャップを確保することができ、かつ研磨加工をしなくても表面粗さを小さくすることができる。
また、必要に応じて、パターニング後の固定電極部材の表面をさらに研磨してもよい。
また、必要に応じて、パターニング後の固定電極部材の表面をさらに研磨してもよい。
また、上述のように、可動電極部材の貼り付きを防ぐために、前記絶縁膜の固定電極部材と対向する面に疎水膜を形成する疎水処理を行うことも好ましい。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記のいずれかの製造方法により液滴吐出ヘッドを製造するものである。
これによって、低電圧駆動で安定した吐出性能を有する液滴吐出ヘッドを提供することができる。
これによって、低電圧駆動で安定した吐出性能を有する液滴吐出ヘッドを提供することができる。
以下、本発明の静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型のインクジェットヘッドについて図1および図2を参照して説明する。なお、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するエッジ吐出型のインクジェットヘッドにも適用できるものである。
図1は、本実施形態に係るインクジェットヘッドの概略構成を分解して示す分解斜視図であり、一部を断面で表してある。図2は、組み立てられた状態の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
本実施形態のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)10は、図1および図2に示すように、複数のノズル孔11が所定のピッチで設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2の振動板22に対峙して個別電極31が配設された電極基板3とを貼り合わせることにより構成されている。
本実施形態における静電アクチュエータは、弾性変形可能な可動電極部材である上記振動板22と、この振動板22に絶縁膜26およびギャップgを介して対向配置された固定電極部材である上記個別電極31と、これら個別電極31と振動板22との間に駆動電圧を印加し静電気力を発生させる駆動制御回路(駆動手段)4とを備えた構成となっている。以下、このインクジェットヘッド10を構成する各基板の構成について説明する。
ノズル基板1は、例えば厚さ100μmのシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板とも称する)から作製されている。ノズル基板1には複数のノズル孔11が形成されており、各ノズル孔11には、図2に示すように、ノズル基板1の表面に対して垂直な筒状の噴射口部分11aと、噴射口部分11aと同軸上に設けられ噴射口部分11aよりも径(あるいは横断面積)の大きい導入口部分11bとが設けられている。このようにノズル孔11を2段の孔を持つ構造とすることにより、インク滴の吐出方向をノズル孔11の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、インク滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、またインク滴の飛び散りがなく、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。
また、ノズル基板1の図2において下面(キャビティ基板2との接合側の面)にはインク流路の一部を形成する細溝状のオリフィス13が設けられている。
また、ノズル基板1の図2において下面(キャビティ基板2との接合側の面)にはインク流路の一部を形成する細溝状のオリフィス13が設けられている。
キャビティ基板2は、例えば厚さ約140μmの(110)面方位のシリコン単結晶基板(この基板も以下、単にシリコン基板とも称する)から作製されている。シリコン基板に異方性ウェットエッチングを施し、インク流路の吐出室21およびリザーバ23を構成するための凹部24、25が形成される。凹部24は前記ノズル孔11に対応する位置に独立に複数形成される。したがって、図2に示すようにノズル基板1とキャビティ基板2を接合した際、各凹部24は吐出室21を構成し、それぞれノズル孔11に連通しており、またインク供給口である前記オリフィス13ともそれぞれ連通している。そして、吐出室21(凹部24)の底壁が前記振動板22となっている。なお、振動板22はシリコン基板に高濃度のボロンをドープしてなるボロンドープ層により構成することもできる。
他方の凹部25は、液状材料のインクを貯留するためのものであり、各吐出室21に共通のリザーバ(共通インク室)23を構成する。そして、リザーバ23(凹部25)はそれぞれオリフィス13を介して全ての吐出室21に連通している。また、リザーバ23の底部には後述する電極基板3を貫通する孔が設けられ、この孔のインク供給孔34を通じて図示しないインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
また、上述のように、キャビティ基板2に(110)面方位のシリコン単結晶基板を用いるのは、このシリコン基板に異方性ウエットエッチングを行うことにより、凹部や溝の側面をシリコン基板の上面または下面に対して垂直にエッチングすることができるためであり、これによりインクジェットヘッドの高密度化を図ることができるからである。
また、キャビティ基板2の全面もしくは少なくとも電極基板3と対向する面には熱酸化やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によりSiO2やTEOS(Tetraethylorthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)膜等からなる絶縁膜26が膜厚0.1μmで施されている。この絶縁膜26は、インクジェットヘッドを駆動させた時の絶縁破壊や短絡を防止する目的で設けられる。
キャビティ基板2の上面すなわちノズルプレート1と対向する面(吐出室21、リザーバ23の内面を含む)には、図示しないインク保護膜が同じくSiO2膜(TEOS膜を含む)により形成されている。このインク保護膜は、インクにより流路の腐食を防ぐために設けられている。
キャビティ基板2の上面すなわちノズルプレート1と対向する面(吐出室21、リザーバ23の内面を含む)には、図示しないインク保護膜が同じくSiO2膜(TEOS膜を含む)により形成されている。このインク保護膜は、インクにより流路の腐食を防ぐために設けられている。
電極基板3は、例えば厚さ約1mmのガラス基板から作製される。中でも、キャビティ基板2のシリコン基板と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが適している。これは、電極基板3とキャビティ基板2を陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。なお、電極基板3にはキャビティ基板2と同じ材料のシリコン基板を用いてもよい。
電極基板3には、キャビティ基板2の各振動板22に対向する面の位置にそれぞれ凹部32が設けられている。凹部32は、エッチングにより深さ約0.2μmで形成されている。そして、各凹部32内には、研磨等により表面粗さが減少されたITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)あるいは非晶質のITOまたはIZO(Indium Zinc Oxide:酸化インジウム亜鉛)からなる個別電極31が、例えば0.1μmの厚さでスパッタにより形成されている。したがって、振動板22と個別電極31との間に形成されるギャップ(空隙)は、この凹部32の深さ、個別電極31および振動板22を覆う絶縁膜26の厚さにより決まることになる。このギャップはインクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響する。上記の例ではキャビティ基板2と電極基板3の接合後における振動板22下面の絶縁膜26と個別電極31との間のギャップgは0.1μmとなっている。
個別電極31は、リード部31aと、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部31bとを有する。端子部31bは、フレキシブル配線基板の接続を容易にするためにキャビティ基板2の末端部が開放された電極取り出し部35内に露出している。
上述したように、ノズル基板1、キャビティ基板2、および電極基板3は、図2に示すように貼り合わせることによりインクジェットヘッド10の本体部が作製される。すなわち、キャビティ基板2と電極基板3は一般に陽極接合により接合され、そのキャビティ基板2の上面(図2において上面)にノズル基板1が接着等により接合される。さらに、キャビティ基板2の後端部には前記ギャップの開放端部を封止するための封止用貫通孔28がエッチングにより形成されており、この封止用貫通孔28の内部に例えばTEOSやエポキシ接着剤等からなる封止部27が形成されている。これにより、湿気や塵埃等がギャップへ侵入するのを防止することができ、インクジェットヘッド10の信頼性を高く保持することができる。
そして最後に、図1、図2に簡略化して示すように、ICドライバ等の駆動制御回路4が各個別電極31の端子部31bとキャビティ基板2上に設けられた共通電極(図示せず)とに前記フレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続される。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
次に、以上のように構成されるインクジェットヘッド10の動作を説明する。
駆動制御回路4は、個別電極31に電荷の供給および停止を制御する発振回路である。この発振回路は例えば24kHzで発振し、個別電極31に例えば0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。発振回路が駆動し、個別電極31に電荷を供給して正に帯電させると、振動板22は負に帯電し、個別電極31と振動板22間に静電気力(クーロン力)が発生する。したがって、この静電気力により振動板22は個別電極31に引き寄せられて撓む(変位する)。これによって吐出室21の容積が増大する。そして、個別電極31への電荷の供給を止めると振動板22はその弾性力により元に戻り、その際、吐出室21の容積が急激に減少するため、そのときの圧力により吐出室21内のインクの一部がインク滴としてノズル孔11より吐出する。振動板22が次に同様に変位すると、インクがリザーバ23からオリフィス13を通じて吐出室21内に補給される。
駆動制御回路4は、個別電極31に電荷の供給および停止を制御する発振回路である。この発振回路は例えば24kHzで発振し、個別電極31に例えば0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。発振回路が駆動し、個別電極31に電荷を供給して正に帯電させると、振動板22は負に帯電し、個別電極31と振動板22間に静電気力(クーロン力)が発生する。したがって、この静電気力により振動板22は個別電極31に引き寄せられて撓む(変位する)。これによって吐出室21の容積が増大する。そして、個別電極31への電荷の供給を止めると振動板22はその弾性力により元に戻り、その際、吐出室21の容積が急激に減少するため、そのときの圧力により吐出室21内のインクの一部がインク滴としてノズル孔11より吐出する。振動板22が次に同様に変位すると、インクがリザーバ23からオリフィス13を通じて吐出室21内に補給される。
ここで、図3を参照して、この静電アクチュエータの振動板22と個別電極31間に働く静電エネルギーについて考える。図3は、個別電極31の表面粗さがある場合とない場合を模式的にあらわしたものである。したがって、静電アクチュエータを設計する際の設計上のギャップ量(個別電極31の表面粗さがない場合の表面から絶縁膜26までの距離)は、実際には表面粗さの分だけ小さくなっている。
いま、個別電極31の表面粗さをRm、ギャップ量をg、絶縁膜26の厚さをt、絶縁膜26の誘電率をεとすると、表面粗さがある場合とない場合の静電エネルギーの比Erは、次の式(1)で表される。
いま、個別電極31の表面粗さをRm、ギャップ量をg、絶縁膜26の厚さをt、絶縁膜26の誘電率をεとすると、表面粗さがある場合とない場合の静電エネルギーの比Erは、次の式(1)で表される。
式(1)の分子の(g+t/ε)は、みなしギャップと呼ばれる量に相当する。ここで、表面粗さとみなしギャップ量との比をTmとすると、Tmは式(2)で表せる。
このとき、静電エネルギー比Erは、Tmを変数として考えると、図4のようになる。図4からわかるように、Tmが大きくなると、静電エネルギーは表面粗さがない場合に比べて小さくなる。したがって、表面粗さがない場合の静電エネルギーを85%以上確保するためには、Tm≦0.15とする必要がある。
このように、本実施形態の静電アクチュエータは、個別電極31の表面粗さを減少させることにより、表面粗さとみなしギャップ量との比Tmを0.15以下としたので、静電エネルギーの損失が抑制され、その結果、低電圧で安定した駆動が可能となる。すなわち、振動板22と個別電極31間に印加される電圧の上昇を抑えることができるため、絶縁膜26が絶縁破壊を起こすことがなく、またギャップ内の物質が重合反応を起こして異物を生成することもないため、インクジェットヘッドの吐出性能を長期間安定して保つことが可能となる。
次に、本発明の静電アクチュエータの他の実施形態を図5に示す。同図は、ある1つの静電アクチュエータ部の幅方向の拡大断面図で、図2のA−A矢視断面に対応するものである。
前述の実施形態では、ITO膜等からなる個別電極31の表面を研磨加工することにより表面粗さを小さくしたものであるが、そうすると逆に、振動板22が絶縁膜26を介して個別電極31に貼り付いて離れなくなってしまう場合がある。このような振動板22の貼り付きが生じると、インクジェットヘッド10が動作不能となるため、本実施形態では振動板22の貼り付きを防止する手段を講じたものである。すなわち、絶縁膜26の個別電極31と対向する面にそれぞれ疎水膜29を例えば気相処理により形成する。疎水膜29は、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)により形成されている。このように絶縁膜26の個別電極に対向する面に疎水膜29を形成することにより振動板22の貼り付きを防止することができる。また、疎水膜29を形成するHMDSは、PFDA(パーフルオロデカン酸)に比べて耐久性が高く、また構成分子が小さいので、狭いギャップ内でも疎水膜を形成することができる。
前述の実施形態では、ITO膜等からなる個別電極31の表面を研磨加工することにより表面粗さを小さくしたものであるが、そうすると逆に、振動板22が絶縁膜26を介して個別電極31に貼り付いて離れなくなってしまう場合がある。このような振動板22の貼り付きが生じると、インクジェットヘッド10が動作不能となるため、本実施形態では振動板22の貼り付きを防止する手段を講じたものである。すなわち、絶縁膜26の個別電極31と対向する面にそれぞれ疎水膜29を例えば気相処理により形成する。疎水膜29は、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)により形成されている。このように絶縁膜26の個別電極に対向する面に疎水膜29を形成することにより振動板22の貼り付きを防止することができる。また、疎水膜29を形成するHMDSは、PFDA(パーフルオロデカン酸)に比べて耐久性が高く、また構成分子が小さいので、狭いギャップ内でも疎水膜を形成することができる。
なお、疎水膜29の厚さは絶縁膜26や個別電極31の厚さに比べて非常に薄いので、前記静電エネルギー比Erの式(1)および表面粗さとみなしギャップ量の比Tmの式(2)においては、疎水膜29の厚さを無視してよい。
次に、本発明の静電アクチュエータにおける電極基板の製造方法の一例を図6を参照して説明する。なお、図6の左側の図は静電アクチュエータの長手方向の断面を示し、右側の図は静電アクチュエータの幅方向の断面を示す。また、以下の説明における基板の厚さやエッチング深さ等はあくまでも一例であり、本発明を限定するものではない。
図6(A)は、ガラス基板300に凹部32を加工する工程である。ここでは、電極基板3の基板材料として硼珪酸系のガラス基板を用い、所定の厚さ、例えば1mmの厚さに加工されたガラス基板300を用意する。基板材料はシリコン基板を用いることもできる。そして、このガラス基板300の表面に、例えばスパッタによりクロム(Cr)からなるエッチングマスク(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィーによってエッチングマスクの表面に所定形状のレジスト(図示せず)をパターニングしてエッチングを行い、エッチングマスクに凹部32に対応する形状の開口部を形成する。
ついで、例えばフッ酸水溶液でガラス基板300をエッチングすることにより、例えば深さ0.2μmの凹部32を形成する。その後、レジストを有機剥離液等で剥離後、ガラス基板300をクロムエッチング液に浸しエッチングマスクを除去する。
ついで、例えばフッ酸水溶液でガラス基板300をエッチングすることにより、例えば深さ0.2μmの凹部32を形成する。その後、レジストを有機剥離液等で剥離後、ガラス基板300をクロムエッチング液に浸しエッチングマスクを除去する。
図6(B)は、電極材料を成膜する工程である。電極材料には多結晶のITOを用いている。このITOを例えばスパッタにより、凹部32を含むガラス基板300の表面全面に電極膜としてITO膜301を成膜する。ITO膜301の厚さは例えば0.3μm以上で、凹部32の深さ以上厚く形成する。
図6(C)は、ITO膜301の研磨工程である。この工程では、ITO膜301の表面を、例えばドライポリッシュ、またはバックグラインダー等により研磨加工するものである。この研磨加工によってITO膜301の表面粗さを減少することができる。また、ITO膜301の厚さがガラス基板300の表面に薄く残る程度に研磨する。
図6(D)は、研磨後のITO膜301をパターニングする工程である。研磨後のITO膜301に対して、フォトリソグラフィーによってレジスト(図示せず)をパターニングしてエッチングすることにより、個別電極31の部分に対応するITOパターンを形成する。
図6(E)は、ITO膜からなる個別電極31をさらに研磨材により研磨する工程である。この工程では、コロイダルシリカと呼ばれる研磨材303を用いてメカノケミカル反応によってパターニング後のITO膜(個別電極31)の表面を研磨する。これによって個別電極31の表面粗さをさらに減少させることができる。しかし、この工程は既に前記(C)の工程で研磨加工が行われているため必要に応じて行われるものであり、省略してもよい。
以上により、表面粗さを減少した個別電極31が形成された電極基板3を作製することができる(図6(F))。
ここで、上記の本実施形態の電極基板3の製造方法と、図9に示す従来の電極基板3の製造方法との相違点を説明する。
従来法にあっては、電極材料に通常用いられている多結晶のITOを使用している。多結晶のITOは、図9(B)に示すようにスパッタにより、所定の厚さ(例えば、0.1μm)で成膜すると、その表面に凹凸ができてしまう。したがって、図9(C)のようにパターニング後においてもITO膜(個別電極31)の表面粗さは比較的大きいものとなる。
一方、本実施形態では、同じ多結晶のITOであっても、上述のように多結晶のITO膜を凹部32の深さ以上に厚く形成し(図6(B))、そのITO膜の表面を研磨してから(図6(C))、パターニングしているため、パターニング後においてもITO膜(個別電極31)の表面粗さは小さいものとなっている。
従来法にあっては、電極材料に通常用いられている多結晶のITOを使用している。多結晶のITOは、図9(B)に示すようにスパッタにより、所定の厚さ(例えば、0.1μm)で成膜すると、その表面に凹凸ができてしまう。したがって、図9(C)のようにパターニング後においてもITO膜(個別電極31)の表面粗さは比較的大きいものとなる。
一方、本実施形態では、同じ多結晶のITOであっても、上述のように多結晶のITO膜を凹部32の深さ以上に厚く形成し(図6(B))、そのITO膜の表面を研磨してから(図6(C))、パターニングしているため、パターニング後においてもITO膜(個別電極31)の表面粗さは小さいものとなっている。
したがって、本実施形態の電極基板3の製造方法によれば、ITO膜からなる個別電極31の表面粗さを減少させることができるので、この電極基板3を静電アクチュエータとして用いた場合、その静電エネルギーを効率よく利用することができ、低電圧で安定した駆動が可能となる。
また、多結晶のITOの代わりに、非晶質のITO、またはIZO(Indium Zinc Oxide)を電極材料に用いると、これらの材料は多結晶のITOに比べて成膜後の表面粗さが小さくなる性質がある。したがって、これらの材料を用いれば、従来と同様の工程(図9参照)で電極基板3を製造することができ、上述した図6(B)、(C)、(E)の工程は省略することができる。なお、図6(E)の研磨工程は実施してもよい。
次に、図7および図8を参照して、本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法の一例を概略説明する。
まず、図7(A)に示すように、ボロンドープ層201を有する(110)面方位のシリコン基板の両面を研磨し、厚さを例えば525μmとしたシリコン基板200を用意する。
次に、このシリコン基板200のボロンドープ層201の下面全体に絶縁膜26となるTEOS膜202を例えばプラズマCVDにより0.1μmの厚さで形成する(図7(B))。TEOS膜202の成膜は、例えば、温度360℃、高周波出力250W、圧力66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3/min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件で行う。なお、絶縁膜26はSiO2でもよい。
次に、このシリコン基板200のボロンドープ層201の下面全体に絶縁膜26となるTEOS膜202を例えばプラズマCVDにより0.1μmの厚さで形成する(図7(B))。TEOS膜202の成膜は、例えば、温度360℃、高周波出力250W、圧力66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3/min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件で行う。なお、絶縁膜26はSiO2でもよい。
次に、図7(C)に示すように、図6(F)のように作製された電極基板3とシリコン基板200とをTEOS膜202を介して陽極接合する。なお、電極基板3には接合前にインク供給孔34となる穴304を貫通しないようにドリル等で加工しておく。穴304を貫通させてしまうと、後の製造工程においてギャップg(図2参照)の内部にエッチング液が入り込み、振動板22の動作不良等が起こるからである。また、TEOS膜202には封止用貫通孔28となる部分および電極取り出し部35となる部分にレジストパターニングしてエッチングによりその部分のTEOS膜202を除去しておく。
陽極接合は、電極基板3とシリコン基板200を360℃に加熱し、電極基板3に負極、シリコン基板200に陽極を接続して800Vの電圧を印加して接合する。
陽極接合は、電極基板3とシリコン基板200を360℃に加熱し、電極基板3に負極、シリコン基板200に陽極を接続して800Vの電圧を印加して接合する。
次に、陽極接合されたシリコン基板200を、例えば機械研削または水酸化カリウム水溶液によるエッチングにより厚さが140μmになるまで薄くする(図7(D))。そして、機械研削後にシリコン基板200の表面にできた加工変質層をウェットエッチング等で除去する。
次に、この接合済みシリコン基板200の表面全体にエッチングマスクとなるTEOS膜(図示せず)をプラズマCVDにより、例えば厚さ1.5μmで形成する。そして、このTEOS膜に、吐出室21となる凹部24、リザーバ23となる凹部25、封止用貫通孔28となる凹部203および電極取出し部35となる凹部204(図7(E)参照)を形成するためのレジストをパターニングし、例えば緩衝フッ酸溶液によってこれらの凹部にそれぞれ対応する部分のTEOS膜をエッチング除去する。
その後、接合済みシリコン基板200を35重量%の水酸化カリウム水溶液で、各凹部24、25、203、204の底部の厚さが10μmになるまでウェットエッチングする。なお、このときリザーバ23となる凹部25の部分は、TEOS膜をハーフエッチングすることによりエッチングを遅らせている。
さらに、この接合済みシリコン基板200を3重量%の水酸化カリウム水溶液でウェットエッチングを行い、各凹部24、25、203、204において、ボロンドープ層201によるエッチングストップが十分効くまでエッチングを続ける(図7(E))。ここでエッチングストップとは、エッチングされるシリコン基板200の表面から気泡が発生しなくなった状態をいうものとし、実際には気泡が発生しなくなるまでエッチングを行う。
上記のように、2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を使用してエッチングを行うことにより、吐出室21の底壁により形成される振動板22の面荒れを0.05μm以下に抑えることができ、インクジェットヘッド10の吐出性能を安定化することができる。
さらに、この接合済みシリコン基板200を3重量%の水酸化カリウム水溶液でウェットエッチングを行い、各凹部24、25、203、204において、ボロンドープ層201によるエッチングストップが十分効くまでエッチングを続ける(図7(E))。ここでエッチングストップとは、エッチングされるシリコン基板200の表面から気泡が発生しなくなった状態をいうものとし、実際には気泡が発生しなくなるまでエッチングを行う。
上記のように、2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を使用してエッチングを行うことにより、吐出室21の底壁により形成される振動板22の面荒れを0.05μm以下に抑えることができ、インクジェットヘッド10の吐出性能を安定化することができる。
接合済みシリコン基板200のエッチングが終了した後に、そのシリコン基板200をフッ酸水溶液でエッチングしてシリコン基板200に形成されたTEOS膜を除去する。 その後、シリコン基板200に機械加工またはレーザ加工を行って、インク供給孔34となる穴304をリザーバ23となる凹部25まで貫通させる(図8(F))。
次に、吐出室21となる凹部24等が形成されたシリコン基板200の上面に、例えばプラズマCVDによってTEOSからなるインク保護膜(図示せず)を、厚さ0.1μmで形成する。このときのインク保護膜の成膜条件は、例えば、温度360℃、高周波出力250W、圧力66.7Pa(0.5Torr)、TEOS流量100cm3/分(100sccm)、酸素流量1000cm3/分(1000sccm)である。
次に、吐出室21となる凹部24等が形成されたシリコン基板200の上面に、例えばプラズマCVDによってTEOSからなるインク保護膜(図示せず)を、厚さ0.1μmで形成する。このときのインク保護膜の成膜条件は、例えば、温度360℃、高周波出力250W、圧力66.7Pa(0.5Torr)、TEOS流量100cm3/分(100sccm)、酸素流量1000cm3/分(1000sccm)である。
次に、RIE(Reactive Ion Etching)ドライエッチングによってシリコン基板200の封止用貫通孔28となる凹部203の部分を加工して封止用貫通孔28を貫通させ、同時に電極取出し部35となる凹部204の部分のシリコン基板200除去して電極取出し部35を形成する(図8(G))。このRIEドライエッチングは、例えば出力200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4流量30cm3/分(30sccm)の条件で、シリコンマスクを用いて60分行う。この条件では、封止用貫通孔28となる凹部203の部分及び電極取出し部35となる凹部204の部分のシリコン基板200をきれいに除去することができ、ITOからなる個別電極31にダメージを与えることなくエッチングすることができる。なおエッチングガスとして、CF4以外のCF系ガスを用いることもできる。このRIEドライエッチングの工程では、絶縁膜26の開口部がギャップgに連通する部分よりも狭くなるように封止用貫通孔28を貫通させることが好ましい。
さらに、ギャップgの空間に水等の液体が浸入しないように、例えば封止用貫通孔28からプラズマCVDを行ってTEOSからなる封止部27を形成してギャップgの空間を封止する(図8(H))。なお、封止部27を、例えばTEOSと酸化アルミニウムの積層構造にしてもよい。これにより、酸化アルミニウムが水分透過防止層となり、水分の浸入を効果的に防止することができる。
以上により、予め作製された電極基板3にシリコン基板200を接合してから、図1、図2に示したようなキャビティ基板2を作製することができる。したがって、キャビティ基板2を薄肉化しても電極基板3が支持基板として補強の役割を果たすので、キャビティ基板2の割れや欠け等の損傷を回避することができ、ハンドリング性が向上する。
そして、別途作製されたノズル基板1を、エポキシ系接着剤でキャビティ基板2に接合する(図8(I))。
最後に、ダイシングにより個々のヘッド毎に分離すれば、図2に示したインクジェットヘッド10が完成する。
最後に、ダイシングにより個々のヘッド毎に分離すれば、図2に示したインクジェットヘッド10が完成する。
また、図4のように絶縁膜26にHMDSからなる疎水膜29を形成する場合には、封止部27を形成する工程(図8(H))よりも前の段階で気相処理或いは液相処理を行う。
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッドの製造方法によれば、前述のように事前に作製された電極基板3にシリコン基板200を接合し、そのシリコン基板200を薄板化してからエッチングにより吐出室21、リザーバ23等の凹部を有するキャビティ基板2を作製するものであるので、電極基板3にダメージを与えることなくキャビティ基板2の薄板化が可能である。したがって、静電エネルギーを効率よく利用して低電圧駆動による安定した吐出性能を持つインクジェットヘッドが得られる。
上記の実施形態では、静電アクチュエータおよびインクジェットヘッドならびにそれらの製造方法について述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の思想の範囲内で種々変更することができる。例えば、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、インクジェットプリンタのほか、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
また、振動板(可動電極部材)は、両端支持梁もしくは略長方形の全周が固定された薄板の形式のものとして説明したが、カンチレバー形式のものでもよい。また、振動板の形状は特に限定されない。例えば円形でもよく、円形の振動板を持つ静電アクチュエータは、例えばマイクロポンプのダイヤフラム部に利用することができる。
また、振動板(可動電極部材)は、両端支持梁もしくは略長方形の全周が固定された薄板の形式のものとして説明したが、カンチレバー形式のものでもよい。また、振動板の形状は特に限定されない。例えば円形でもよく、円形の振動板を持つ静電アクチュエータは、例えばマイクロポンプのダイヤフラム部に利用することができる。
1 ノズル基板、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 駆動制御回路、10 インクジェットヘッド、11 ノズル孔、13 オリフィス、21 吐出室、22 振動板(可動電極部材)、23 リザーバ、26 絶縁膜、27 封止部、28 封止用貫通孔、29 疎水膜、31 個別電極(固定電極部材)、32 凹部、34 インク供給孔、35 電極取り出し部、200 シリコン基板、201 ボロンドープ層、202 TEOS膜、300 ガラス基板、301 ITO膜、303 研磨材。
Claims (12)
- 弾性変形可能な可動電極部材と、この可動電極部材に絶縁膜およびギャップを介して対向配置された固定電極部材と、前記可動電極部材と前記固定電極部材との間に静電気力を発生させる駆動手段とを有する静電アクチュエータにおいて、
下記の式で表される、前記固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比を0.15以下とすることを特徴とする静電アクチュエータ。
Tm=Rm/(g+t/ε)
ここに、Tm:固定電極部材の表面粗さとみなしギャップ量の比
Rm:固定電極部材の表面粗さ
g:ギャップ量
t:絶縁膜の厚さ
ε:絶縁膜の誘電率 - 前記固定電極部材が、IZOまたは非晶質のITOもしくは表面が研磨されたITOにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
- 前記絶縁膜の固定電極部材に対向する面に疎水膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の静電アクチュエータ。
- 前記疎水膜は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)からなることを特徴とする請求項3記載の静電アクチュエータ。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の静電アクチュエータを有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 基板に凹部をエッチングにより形成する工程と、
前記凹部を含む前記基板の表面に電極材料を該凹部の深さ以上に厚く成膜する工程と、
前記成膜された電極膜の表面を研磨する工程と、
前記研磨された電極膜にレジストをパターニングしてエッチングすることにより固定電極部材を形成する工程と、
前記固定電極部材を形成した電極基板に、絶縁膜およびギャップを介して可動電極部材を有するシリコン基板を接合する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。 - 前記電極材料が、多結晶のITOであることを特徴とする請求項6記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 基板に凹部をエッチングにより形成する工程と、
前記凹部を含む前記基板の表面に電極材料を該凹部の深さよりも薄く成膜する工程と、
前記成膜された電極膜にレジストをパターニングしてエッチングすることにより固定電極部材を形成する工程と、
前記固定電極部材を形成した電極基板に、絶縁膜およびギャップを介して可動電極部材を有するシリコン基板を接合する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。 - 前記電極材料が、非晶質のITOまたはIZOであることを特徴とする請求項8記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 前記固定電極部材の表面を研磨する工程を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 前記絶縁膜の固定電極部材に対向する面に疎水膜を形成する疎水処理を行う工程を有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 請求項6乃至11のいずれかに記載の製造方法により液滴吐出ヘッドを製造することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
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JP2009248440A (ja) * | 2008-04-07 | 2009-10-29 | Ricoh Co Ltd | 静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 |
-
2005
- 2005-10-04 JP JP2005290917A patent/JP2007098754A/ja not_active Withdrawn
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