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JP2006314525A - 管状器官への挿入具 - Google Patents

管状器官への挿入具 Download PDF

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JP2006314525A JP2005139787A JP2005139787A JP2006314525A JP 2006314525 A JP2006314525 A JP 2006314525A JP 2005139787 A JP2005139787 A JP 2005139787A JP 2005139787 A JP2005139787 A JP 2005139787A JP 2006314525 A JP2006314525 A JP 2006314525A
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Kiyoshi Yamauchi
清 山内
Yuji Sudo
祐司 須藤
Takamitsu Takagi
隆光 高木
Minoru Nishida
稔 西田
Takashi Maejima
貴士 前嶋
Takeshi Ishikawa
毅 石川
Hiroaki Uchiyama
博昭 内山
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Tohoku University NUC
Tokin Corp
Kumamoto University NUC
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Tohoku University NUC
Kumamoto University NUC
Piolax Medical Devices Inc
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Abstract

【課題】
生体適合性に優れるとともに、ガイドワイヤやカテーテル等として使用する際に望ましい特性を備える、管状器官への挿入具を提供する。
【解決手段】
この管状器官への挿入具は、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、該コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えており、かつ、前記コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、血管等の管状器官に挿入されるカテーテルや、カテーテルを管状器官の目的箇所に導くために用いられるガイドワイヤ等の、管状器官への挿入具に関する。
近年、血管等の管状器官に中空のカテーテルを、ガイドワイヤの外周に沿って挿入して、造影剤、制癌剤等の薬液を投与したり、血管閉塞具を留置したりすることが行われている。
上記ガイドワイヤとしては、下記特許文献1に記載のように、分岐血管における血管選択を可能とするトルク伝達性、手元側での操作を先端部に伝達させる突出し性(プッシュアビリティ)や、挿入、抜き出し時に血管を損傷させないための先端部の柔軟性、X線照射により先端部を視認可能とするX線造影性などの特性が求められている。
上記ガイドワイヤは、一般には、芯線を樹脂膜等でコーティングした形状をなしているが、この際の芯線等のコア材としては、ステンレス線や、Ti−Ni合金線等が用いられる。ステンレス線は剛性が高く、プッシュアビリティ、トルク伝達性等に優れるが、塑性変形を受け易い。一方、Ti−Ni合金線は、マルテンサイト変態の逆変態に付随して顕著な形状記憶を示し(特許文献2参照)、逆変態後の母相での強変形によって誘起される応力誘起マルテンサイト変態に伴い、良好な超弾性を示すので(特許文献3参照)、近年広く実用化されている(特許文献4参照)。
上記カテーテルは、造影剤注入時や薬液注入時の耐圧性を高めるため、金属メッシュ等の編組を埋設した樹脂チューブや、ステンレス製チューブ等の比較的剛性が高いものが用いられている。また、その操作性(トルク伝達性、突出し性等)は、前述のガイドワイヤと同様であることが好ましく、Ti−Ni合金が広く用いられている(特許文献5参照)。
しかしながら、上述したTi−Ni合金製のガイドワイヤ及びカテーテルは、Niの成分が溶出して金属アレルギーを引き起こす可能性があるため、生体と直接接触させることはせず、樹脂コーティング等がなされるのが一般的である。また、樹脂コーティング等によらず、金属アレルギーの原因となるNiを含まないTi基合金が考案されている。下記特許文献6には、耐腐食性チタン合金としてβ型Ti合金にAgを1〜2wt%含むものが開示され、下記特許文献7には冷間加工用低強度・高延性Ti合金であって、6wt%≦Mo≦18wt%および0.5wt%≦Sn≦10wt%、残部をTiのものが開示され、下記特許文献8には、特許文献7同様のTi合金が開示され、下記特許文献9には、チタンに10〜15wt%のMoを含有させた形状記憶チタン合金が開示され、下記特許文献10には、Ti−Zr系合金からなる医療器具が開示されている。
また、本発明者らは、加工性が良く、生体適合性に優れた合金として、下記特許文献11、12に示すものを提案している。下記特許文献11には、Ti-Mo基合金バネが開示され、下記特許文献12には、Ti−Sc系形状記憶合金が開示されている。
特公平3−015914号公報 米国特許第3174851号明細書 特開昭58−161753号公報 特開昭61-106173号公報 特開昭63−223138号公報 特開昭53−123323号公報 特開平1−129941号公報 特開平4−214830号公報 特開昭59−56554号公報 特開2001−3126号公報 特開2004−183014号公報 特開2004−204245号公報
医療用のガイドワイヤに用いられる芯線等のコア部材としては、手元側の基端部では、トルク伝達性、プッシュアビリティ等を確保するために、適度な剛性があることが望ましい。一方、ガイドワイヤの先端部においては、硬すぎず柔らかすぎず適度な柔軟性を有し、かつ、塑性変形せずに元の形状に戻る形状復元性を、兼ね備えるバネ特性(弾性)があることが望ましいとされている。
また、カテーテルにおいても同様な特性が求められている。例えば、上述したように、金属線材からなるメッシュ状の編組を埋設した樹脂チューブにおいては、編組がチューブ全体に亘って埋設されたのでは先端部の柔軟性に問題が生じるので、先端側において編組の一部をほぐしてコイル状に巻回したり、または別体のコイル部材等を先端部に埋設したりしている。
上記特許文献6には、耐腐食性が向上したβ型のTi合金が開示され、上記特許文献7には高加工性、低強度の合金が開示され、上記特許文献8には、加工性の向上した合金が開示され、更に、上記特許文献9には、Alの添加によりα相を安定化させた、形状記憶特性を有する合金が開示され、それぞれの目的に応じた特性が付与されたNiを含まないTi基合金が開示されている。
しかしながら、上記特許文献6〜9のいずれも、医療用途に用いられることを前提したものではなく、ガイドワイヤ等に要求される上述した剛性やバネ特性等の特性を満足させることはできない。また、上記特許文献10は、ガイドワイヤ等に用いられるものであるが、高強度で加工性に優れるものを提供することを主目的としており、この場合も、ガイドワイヤ等に要求される上記特性を満足させることはできない。
更に、上記特許文献11には、良好な加工性及びバネ性を備えるTi−Mo基合金ばね材が開示されているが、バネ性を部材のどの範囲に付与するかについて何ら記載されておらず、ガイドワイヤ等に要求される上記特性を得ることは難しい。また、上記特許文献12においても、Niを含まず生体適合性が良いTi−Sc系形状記憶合金が開示されているだけであり、この場合もガイドワイヤ等に要求される特性を得ることは難しい。
したがって、本発明の目的は、生体適合性に優れるとともに、ガイドワイヤやカテーテル等として使用する際に望ましい特性を備える、管状器官への挿入具を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1は、管状器官への挿入具であって、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、該コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具を提供するものである。
上記第1の発明によれば、人体に悪影響を及ぼすNiが含まれていないので、より安全性の高いガイドワイヤやカテーテル等の管状器官への挿入具が得られる。また、コアの基部は上述のような引張り強度を備えており、周知のNi−Ti合金に比べて高い剛性が得られるので、管状器官への挿入時に必要な突出し性(プッシュアビリティ)や、分岐部での管状器官選択時に必要なトルク伝達性、更には、ねじれ・折れ曲がり等を防止する耐キンク性、などの各特性を向上させることができる。
本発明の第2は、管状器官への挿入具であって、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、該コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具を提供するものである。
上記第2の発明によれば、人体に悪影響を及ぼすNiが含まれていないので、より安全性の高いガイドワイヤやカテーテル等の管状器官への挿入具が得られる。また、コアの先端部は上述のようなバネ特性を有し、少なくともステンレスよりは柔軟となり、適度な柔軟性を確保できるので、挿入する際や引き抜く際に、管状器官の損傷を防止すると共に、塑性変形することなく確実に元の形状に復元させることができる。
本発明の第3は、管状器官への挿入具であって、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、該コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えており、かつ、前記コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具を提供するものである。
上記第3の発明によれば、人体に悪影響を及ぼすNiが含まれていないので、より安全性を高くすることができると共に、コアの基部及び先端部は、上述のような引張り強度及びバネ特性を備えているので、基部にて適度な剛性を確保して、突出し性、トルク伝達性、耐キンク性等を向上させ、かつ、先端部にて適度なバネ特性を確保して、管状器官の損傷を防止し、確実な形状復元性を具備でき、管状器官内の治療に好適な管状器官への挿入具が得られる。
本発明の第4は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第5は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Moが4〜10at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第6は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第7は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Nbが15〜30at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第8は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Taが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第9は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Hfが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
本発明の第10は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記コアには、Zrが30〜45at%、Scが1〜10at%含まれている管状器官への挿入具を提供するものである。
上記第4〜10の発明によれば、上記各成分を、上記のごとく示す割合にて、コアのTi基合金に含有させることにより、適度な剛性及びバネ特性を兼ね備える管状器官への挿入具が得られるようになる。
本発明の管状器官への挿入具によれば、人体に悪影響を及ぼすNiが含まれていないので、より安全性の高いガイドワイヤやカテーテル等の管状器官への挿入具が得られる。また、本発明の第1の管状器官への挿入具によれば、基部の一部を適度な剛性として、突出し性、トルク伝達性、耐キンク性などを向上させることができ、本発明の第2の管状器官への挿入具によれば、先端部を適度なバネ特性として、柔軟性及び形状復元性を確保することができ、更に、本発明の第3の管状器官への挿入具によれば、基部にて適度な剛性を確保し、先端部にて適度なバネ特性を確保して、管状器官内の治療に好適な管状器官への挿入具が得られる。
本発明の管状器官への挿入具(以下、挿入具という)は、例えば、図1(a)に示すガイドワイヤに用いられたり、図1(b)に示すカテーテルに用いられたりするものである。
図1(a)に示すガイドワイヤ10は、芯線11と、この芯線10の外周を被覆する樹脂層12とで構成される。本発明の挿入具は、このようなガイドワイヤ10として適用可能であるが、この場合、ガイドワイヤ10の芯線11が、本発明の挿入具におけるコアに相当する部分となる。
一方、図1(b)に示すカテーテル20は、全体が樹脂チューブ21からなり、その基部に金属線材を交互に交差させてメッシュ状に形成した、いわゆる編組形状をなした補強体22が埋設された構造をなしている。本発明の挿入具は、このような形状をなしたカテーテルにも適用可能である。この場合、本発明の挿入具におけるコアは、補強体22を構成する金属線材として用いられることとなる。なお、カテーテルに適用する場合には図示はしないが、チューブ状の金属製カテーテル自体に用いたり、樹脂チューブからなるカテーテルの一部に埋設される筒体に用いたり、カテーテルの軸方向に沿って埋設される補強線材として用いたり、カテーテルの軸方向に沿って配置してカテーテルの先端部を屈曲操作可能な線材として用いたり、様々な態様に利用可能である。
また、図6に示すような、芯線11と、芯線11の先端側外周に装着されたコイルとからなるガイドワイヤ10aに適用してもよい。なお、このガイドワイヤ10aのコイル15は、先端側のピッチ間隔が広く巻回されており柔軟性を確保している。
上記のガイドワイヤやカテーテルとして利用可能な本発明の挿入具は、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有している。
そして、このコアの基部の一部は、2%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えている。より具体的には、コアの基部の一部は、インストロン型引張り試験機等によって、引張荷重を付与した場合であって、引張荷重付与前に対して1.5%の伸び歪みを生じさせたときに、800MPa以上の引張り強度を備えるものである。
なお、コアの基部とは、図1(a)のガイドワイヤ10においては、操作時に手元側となる部分であり(符号13参照)、図1(b)のカテーテル20においても同様に、手元側の部分(符号23参照)を示すものである。具体的にはコアの基端から全長の80%以内の範囲を意味するものとする。また、コアの基部の一部とは、基部13、23の範囲の一部分であってもよいし、基部13、23全体であってもよいということを意味している。
また、コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバックが、2%以上となるバネ特性を備えている。より具体的には、コアの先端部は、インストロン型引張り試験機等によって、引張荷重を付与した場合であって、引張荷重付与前に対して4%の伸び歪みを生じさせたときに、少なくとも2%以上が、引張荷重付与前の形状に復元するようなバネ特性を備えている。なお、コアの先端部とは、上記基部13、23に対し、軸方向の反対側の部分を示す(符号14、24参照)。具体的にはコアの先端から全長の50%以内の範囲を意味するものとする。
コアは、基部の一部又は先端部が、上記引張り強度又はバネ特性を備えていれば、よいが、双方を兼ね備えるものであってもよい。すなわち、コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えており、かつ、前記コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えていてもよい。
そして、前述したように、Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含む、Ti基合金であって、そのコアの基部の一部又は先端部が、上記引張り強度又はバネ特性を備える本発明の挿入具を得るためには、以下に示す金属元素を、所定量含有するTi合金が採用される。
すなわち、本発明に用いられるTi基合金は、650℃を超える温度での溶体化処理によってTi合金のβ相を安定化させることが可能で、かつ、650℃以下の温度での時効処理によって生じるω相やα相によって、その機械強度を任意とすることが可能であり、具体的には、Ti基合金の中でも加工性が優れたβ型もしくはnearβ型のTi基合金が採用される。
ところで、Ti合金は、α相、β相、α+β相、ω相等の相が存在する。β相は体心立方格子(bcc)であるので、稠密六方格子(hcp)であるα相よりも変形性が良好、すなわち、バネ特性がよいことが知られ、ω相はβ相からα相へ変態する際に生じるもので、このω相が存在すると著しく硬化することが知られている。
Ti基合金におけるコアの組成の第1態様としては、コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%含まれていることが好ましい。
同第2態様としては、コアには、Moが4〜10at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
同第3態様としては、コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
同第4態様としては、コアには、Nbが15〜30at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
同第5態様としては、コアには、Taが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
同第6態様としては、コアには、Hfが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
同第7態様としては、コアには、Zrが30〜45at%、Scが1〜10at%含まれていることが好ましい。
コアの組成が、上述のように限定されている理由は、次の通りである。
上記金属元素の内、Mo、Sc、Nb、Ta、Hf、Zr、Scは、Ti合金のβ相の安定化を図るものである。そして、上記第1〜3のコアの態様において、Ti合金に対するMoの含有量が4〜10%であるのは、4at%未満だとβ相の安定化が十分に図れず、10at%を超えると十分なバネ特性が得られず好ましくないためである。
同様に、上記第4〜7のコアの態様において、Nb、Ta、Hf、ZrのTi合金に対する含有量の上限及び下限を定めたのは、各金属元素が下限未満だとβ相の安定化が十分に図れず、上限を超えると十分なバネ特性が得られず好ましくないためである。
ScもMoと同様に、Ti合金のβ相の安定化を図るものであるが、Mo、Nb等の他のβ相安定化元素と共存することにより、顕著なバネ特性が得られることが知られている。上記第2〜7のコアの態様において、Mo、Nb等と共にScを含有させたのは、その顕著なバネ特性を得るためであるが、Ti合金に対するScの含有量が1〜10at%としたのは、1at%未満だとScの顕著なバネ特性が得られず、10%を超えるとScの含有量が多すぎてコスト面で問題が生じ好ましくないためである(一般に、Scは極めて高価である)。
また、Snは、Ti合金のα相の安定化を図る金属元素であり、上記ω相の生成を抑制する性質が知られている。上記第1、第3のコアの態様において、Ti合金に対するSnの含有量を3〜10at%としたのは、3at%未満だとα相の安定化やω相の生成を適度に抑えて所望の剛性にすることができず、10at%を超えるとα相が極めて多くなりバネ特性が低下するので好ましくないためである。
更に、上述した第1〜7の態様の各コアには、不可避不純物の他、各態様を構成するβ相安定化元素(例えば、第1態様ではMo)の他のβ相安定化元素(第1態様では、Nb、Hf、Zr、Ta等)や、Ag、Al等のα相安定化元素等を、各コイルの態様の特性を損なわない程度に、微量に含有していてもよい。
以上の組成からなるコアは、次のような工程を経ることにより、基部の一部は、1.5%の伸び歪み時に800MPa以上の引張り強度を有し、先端部は4%の伸び歪み後のスプリングバッグが2%以上となるバネ特性を有するようになる。
すなわち、上記組成よりなるTi基合金を、熱間鍛造、熱間圧延、冷間加工などの公知の方法によって所定線径の線状のコア、或いは、所定の大きさの板材、筒材等に加工する。その後、コアを所定温度、所定時間で保持し、その後炉冷して、均質なβ相にするための熱処理が施される。この際の処理温度としては650℃を超える温度、好ましくは700〜1100℃であり、0.5〜10分保持することにより、β相への均質化処理(以下、β化処理という)が施される。このβ化処理を施すことにより、コアは常温においても、十分なバネ特性を示すようになる。なお、β化処理は、コアの全体に施してもよいが、先端部(図1(a)、(b)参照)にのみ施してもよい。
β化処理を施したコアは、その後、基部の一部又は基部全体を650℃以下の温度、好ましくは300〜600℃の温度でもって、1〜20分保持することにより時効処理が施される。この時効処理により、Ti基合金からω相やα相が生成され、基部において所望の引張り強度を備える剛性の高いコアが得られる。
こうして、β化処理を施した後、時効処理を施すことにより、先端部のバネ特性が良好で、基部の剛性も高い、ガイドワイヤ等に最適な挿入具が得られる。
また、上記の処理は、時効処理を先に行って、β化処理を後に行ってもよく、その順序は特に限定されない。
以上のような処理を施すことにより得られたコアを、図1(a)に示すように、樹脂膜等を被覆して本発明の挿入具が形成される。そして、本発明の挿入具によれば、人体に悪影響を及ぼすNiが含まれていないので、より安全性の高いガイドワイヤやカテーテル等の管状器官への挿入具が得られる。また、コアの基部は上述のような引張り強度を備えており、周知のNi−Ti合金に比べて高い剛性が得られるので、管状器官への挿入時に必要な突出し性(プッシュアビリティ)や、分岐部での管状器官選択時に必要なトルク伝達性、更には、ねじれ・折れ曲がり等を防止する耐キンク性、などの各特性を向上させることができる。
更に、コアの先端部は上述のようなバネ特性を有し、少なくともステンレスよりは柔軟となり、適度な柔軟性を確保できるので、挿入する際や引き抜く際に、管状器官の損傷を防止すると共に、塑性変形することなく確実に元の形状に復元させることができる。
また、上記工程により形成された本発明の挿入具は、コァの基部及び先端部を、上述のような引張り強度及びバネ特性としたので、基部にて適度な剛性を確保すると共に、先端部にて適度なバネ特性を確保して、管状器官内の治療に好適な挿入具が得られる。
なお、上記実施形態では、コアの基部の一部及び先端部の双方に熱処理を施しているが、どちらか一方のみを施してもよい。
(1)Ti基合金の作製
下記の表1〜3に示すようにβ型或いはnearβ型となり得る合金組成(試料No.1〜55)からなるインゴットを、アルゴンアーク溶解にて溶融し、これに熱間加工、冷間加工を施して、φ1.0mmの線材を作製した。
Figure 2006314525
Figure 2006314525


Figure 2006314525
(2)加工性評価
上記試料1〜55のうち、表1、2に示す試料1〜34について、上記冷間加工時における加工性の是非を評価した。その結果を、上記表1、2に併せて示した。この場合、○は問題なく加工性が出来た場合で、△はやや加工速度を遅くしなければならなかったが、加工自体に問題はなかった場合で、×は加工中に割れや破断があった場合を示す。なお、表3中の合金については記載しないが、加工性に課題を残す2、3の合金は見られたが、いずれも次に説明するバネ特性評価に用いることは可能な試料は作製できた。
(3)バネ特性評価
上記試料1〜55のぞれぞれについて、1000℃で0.5分保持し、その後炉冷して、β相への均質化処理を施した。そして、各試料をインストロン型引張り試験機にセットして、各試料に引張り荷重を付与して伸び歪みを生じさせた後、引張り荷重を除去するというサイクルを繰り返して、各試料がどの程度、元の形状に復帰するかを確認した。
なお、伸び歪みは、各試料のそれぞれについて、1%、2%、3%、4%、6%付与して試験した。図2には、その一例として、Ti−6Mo−4Sn合金(試料3)の繰り返しひずみ付加による応力−ひずみ線図が示されている。図中、H1が2%、H2が4%、H3が6%の伸び歪み時をそれぞれ示している。
そして、4%の伸び歪み負荷後のスプリングバック(図2中、Sで示す)が2%以上であれば、本発明におけるバネ特性が良好であると判断した。なお、図2の場合、約3.3%のスプリンバックSが認められる。上記表1〜3には、各試料1〜55のバネ特性が併せて示されている。表中、○は4%伸び歪み負荷後のスプリングバッグSが2%以上の場合で、×は該スプリングバックSが2%よりも低い場合である。
(4)試料の選定
上記(2)、(3)の加工性評価及びバネ特性評価の結果より、本発明の挿入具に最適なものを選定した。表1においては、試料1〜13(実施例)であり、表2においては、試料21〜31であり、表3においては、試料35〜46である。それ以外の試料は、比較例とした。そして、実施例における各金属元素の組成から、本発明の合金組成が特定された。
(5)時効特性評価
表1、表2、表3の実施例に示す組成の試料を、1000℃で1分保持してβ化処理を施した後、200〜700℃で各5分保持して、時効処理を施した後、インストロン型引張り試験機でもって、2%の伸び歪みを生じさせたときの、引張り強度を測定した。
同様に、表1、表2、表3の実施例に示す組成の試料を、強加工を施した後、200℃〜700℃で各5分保持して、時効処理を施した後、インストロン型引張り試験機でもって、2%の伸び歪みを生じさせたときの、引張り強度を測定した。
下記表4にβ化処理後、時効処理を施した場合、下記表5に強加工後、時効処理した場合の結果をそれぞれ示す。
Figure 2006314525
Figure 2006314525
表4、5中、○は1.5%伸び歪み時に、800Ma以上の引張り強度が測定された場合で、×は2%伸び歪み時に、800Ma未満の引張り強度が測定された場合である。
表4に示すように、β化処理を施した場合には、合金の組成の相違により、適度な時効処理温度の幅が変化することが理解できる。一方、表5に示すように、強加工を施した場合には、合金の組成に左右されず、広い温度範囲(200〜600℃)で、時効処理が可能であることが理解できる。なお、表3に示す試料については、その結果は示していないが、いずれも400℃の時効処理で所要の強度は得ることが出来た。
(6)時効条件の選定
材料の硬度と引張り強度等の強度とは、相関関係にあることはよく知られていることである。具体的には、硬度が高いと、それに比例して引っ張り強度が高くなることが知られている。
そこで、各合金について時効条件(温度・時間)の及ぼす硬度への影響について調べた。その一例として、Ti−5Mo−5Sn(試料4)を用いて、350〜600℃の時効処理温度でもって、保持時間を0、30、60、180、300、400秒と変化させて、その際の硬度(ビッカース硬さ:HV)を測定した。その結果を図3に示す。図中、T1は350℃、T2は400℃、T3は500℃、T4は600℃の処理温度をそれぞれ示している。これにより、600℃において時効処理を施す場合には、60秒保持できれば硬度の上昇が可能であることがわかる。
また、Ti−6Mo−7Sc(試料9)を用いて、200〜600℃の時効処理温度でもって、保持時間を0、30、60、180、300秒と変化させて、その際の硬度(ビッカース硬さ:HV)を測定した。その結果を図4に示す。図中、t1は200℃、t2は250℃、t3は300℃、t4は350℃、t5は400℃、t6は500℃、t7は600℃の処理温度をそれぞれ示している。なお、t8は時効処理を施していないものを示す。これにより、少なくとも180秒程度保持すれば、処理温度によって一定の硬度を示すことが分かり、目的、用度に応じて幅広い時効処理温度が選択できること理解できる。
なお、Ti−Nb−Sc系、Ti−Ta−Sc系、Ti−Hf−Sc系、及び、Ti−Zr−Sc系については図示しないが、例えば、Ti−26Nb−6Sc合金(試料30)、Ti−25Ta−6Sc合金(試料37)、Ti−25Hf−6Sc合金(試料41)、Ti−40Zr−6Sc合金(試料45)は、500℃以下では時効の影響を受け難く、長時間を要することがわかった。
(7)ガイドワイヤの作製及びその評価
Ti−6Mo−4Sn合金(試料3)を用いて、ガイドワイヤを作製した。
すなわち、強加工を施してφ1mmとしたコアを、550℃で5分間保持し、時効処理を施した後、その先端部の約150mm(先端の端面からの距離))を約800℃で、30秒加熱してβ化処理を施し、その後、加熱して先端部200mmをスエ−ジング(被加工物を工具間で圧縮成形する加工法)により、約10%減面率加工を行った(φ1.0→φ0.95mm)。次に、先端部をテーパ加工後、その全周をウレタンでコーティングして、図1に示すガイドワイヤ10とほぼ同様のガイドワイヤを作製した。
そして、作製したガイドワイヤをインストロン型引張り試験によって、4%の伸び歪みが生じるまで引張り荷重を付与した後、引張り荷重を除去した。その際の、基部と先端部における応力―ひずみ曲線を図5に示した(基部はA1、先端部はA2で示す)。なお、比較のため、Ti−Ni超弾性材の応力―ひずみ線図も併せて記載した(図中、Bで示す)。
この図5によれば、作製したガイドワイヤは、基部にて2%伸び歪み時にほぼ1000MPaの引張り強度を示し、4%の伸び歪み時には、1800MPaもの高い引張り強度を発揮することが分かる。一方、ガイドワイヤの先端部における、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグは、3.3%以上となり、優れたバネ特性を備えることが理解できる。
図中のTi−Ni合金と比較すると、本発明の挿入具の利用形態であるガイドワイヤは、基部にて極めて高い剛性を有し、先端部においても十分なバネ特性を発揮することが分かり、突出し性、トルク伝達性、耐キンク性、柔軟性、形状復元性等の特性が必要とされる、管状器官内の治療用の挿入具として極めて好適であるものと言える。
なお、カテーテルとしては、製作は、前述と同じ合金チューブ(φ1mm、肉厚0.1mm)を前記同様の処理を行ったが、性能はガイドワイヤに近似の特性を得た。
本発明は、血管等の管状器官に挿入されるカテーテルや、カテーテルを管状器官の目的箇所に導くために用いられるガイドワイヤ等の管状器官への挿入具として利用することができる。
本発明の管状器官への挿入具の使用形態を示しており、(a)はガイドワイヤに適用した場合の説明図、(b)はガテーテルに利用した場合の説明図である。 Ti−5Mo−4Snat%合金の引張り強度と、伸び歪みとの関係を示す図表である。 Ti−5Mo−5Snat%合金の硬度と時効時間との関係を示す図表である。 Ti−6Mo−7Scat%合金の硬度と時効時間との関係を示す図表である。 本発明の管状器官への挿入具の一例であるガイドワイヤにおける、引張り強度と、伸び歪みとの関係を示す図表である。 同管状器官への挿入具を、他の形状のガイドワイヤに適用した場合の説明図である。
符号の説明
10、10a ガイドワイヤ
11 芯線
12 樹脂層
13 基部
14 先端部
15 コイル
20 カテーテル
21 樹脂チューブ
22 補強体
23 基部
24 先端部

Claims (10)

  1. 管状器官への挿入具であって、
    Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、
    該コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具。
  2. 管状器官への挿入具であって、
    Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、
    該コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具。
  3. 管状器官への挿入具であって、
    Mo、Sn、Sc、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれた少なくとも2種を含み、残部がTi及び不可避不純物からなり、かつ、少なくともNiを含まないTi基合金からなるコアを有しており、
    該コアの基部の一部は、1.5%の伸び歪みを負荷したときに、800MPa以上の引張り強度を備えており、かつ、前記コアの先端部は、4%の伸び歪みを負荷後のスプリングバッグが、2%以上となるバネ特性を備えていることを特徴とする管状器官への挿入具。
  4. 前記コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  5. 前記コアには、Moが4〜10at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  6. 前記コアには、Moが4〜10at%、Snが3〜10at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  7. 前記コアには、Nbが15〜30at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  8. 前記コアには、Taが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  9. 前記コアには、Hfが20〜30at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
  10. 前記コアには、Zrが30〜45at%、Scが1〜10at%含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載の管状器官への挿入具。
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