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JP2006307778A - 過給機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 過給機の減速機において、入力軸から出力軸への許容伝達トルクを確保しながら、耐久性を向上すること。
【解決手段】 入力軸11により回転されるとともに、出力軸12に対して偏心して配置される外輪27と、出力軸12と外輪27との間で出力軸12の径方向に関する幅が該出力軸12の周方向に関して不同となる環状空間内に配置される複数の中間ローラ31〜33とを有して構成される増速機20を備え、少なくとも1個以上の中間ローラ33を出力軸12の周方向及び半径方向に移動できる可動ローラとしてなる過給機10において、外輪27の内周面上の周方向に設けた凸条部27Bを、各中間ローラ31〜33の外周面の幅方向の一部に接触させたもの。
【選択図】 図1

Description

本発明は、過給機(スーパーチャージャー)に関する。
過給機として、特許文献1に記載の如く、エンジンのクランク軸の回転により入力軸を回転させ、入力軸の回転を増速機により増速して出力軸に伝え、この出力軸に結合されたインペラの回転により吸入空気の過給を行なうものがある。
特開2003-201850
特許文献1に記載の過給機は、増速機として、入力軸により回転されるとともに、出力軸に対し偏心して配置される外輪と、出力軸の外周面である被駆動側円筒面と、外輪の内周面である駆動側円筒面との間の、出力軸の径方向に関する幅が該出力軸の周方向に関して不同となる環状空間内に配置され、それぞれの外周面をそれらの被駆動側円筒面と駆動側円筒面に摩擦接触する動力伝達用円筒面とした複数の中間ローラとを有して構成され、少なくとも1個以上の中間ローラを、出力軸の周方向及び半径方向に移動できる可動ローラとし、可動ローラをコイルスプリングにより上記環状空間の幅が狭くなる方向に押し、可動ローラの外周面を出力軸の外周面と外輪の内周面に押し付けている。
特許文献1に記載の過給機は、外輪の内周面と出力軸の外周面のそれぞれを各中間ローラの外周面の幅方向の概ね全面に接触させている。入力軸から出力軸への許容(すべりを生じない)伝達トルクは、伝達部材間(外輪と中間ローラ、又は中間ローラと出力軸)の押し力と摩擦係数に比例し、外輪と中間ローラの間の伝達トルクと、中間ローラと出力軸の間の伝達トルクのうちで小さい方に律則される。押し力は、外輪と中間ローラの間と、中間ローラと出力軸の間で、力の釣り合いから同じになる。面圧は、ヘルツの法則から、接触幅が同じであれば大曲率の方が高く、外輪と中間ローラの間よりも、中間ローラと出力軸の間でより高くなる。このため、面圧の低い外輪と中間ローラの間の伝達トルクの方が小さく、これによって律則される。従って、中間ローラと出力軸の間の面圧は徒に高く、それらの耐久性を阻害するだけの存在となり、効率を損なう。
本発明の課題は、過給機の減速機において、入力軸から出力軸への許容伝達トルクを確保しながら、耐久性を向上することにある。
請求項1の発明は、入力軸の回転を増速機により増速して出力軸に伝え、該出力軸にインペラを設けるに際し、前記増速機が、入力軸により回転されるとともに、出力軸に対し偏心して配置される外輪と、出力軸の外周面である被駆動側円筒面と、外輪の内周面である駆動側円筒面との間の、出力軸の径方向に関する幅が該出力軸の周方向に関して不同となる環状空間内に配置され、それぞれの外周面をそれらの被駆動側円筒面と駆動側円筒面に摩擦接触する動力伝達用円筒面とした複数の中間ローラとを有して構成され、少なくとも1個以上の中間ローラを、出力軸の周方向及び半径方向に移動できる可動ローラとしてなる過給機において、前記外輪の内周面上の周方向に設けた凸条部を、各中間ローラの外周面の幅方向の一部に接触させたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記外輪を全中間ローラの外周に緊着し、外輪の内周面を全中間ローラの外周面に弾発的に接触させたものである。
(請求項1)
(a)外輪の内周面上の周方向に設けた凸条部を、各中間ローラの外周面の幅方向の一部に接触させた。出力軸は各中間ローラの外周面の幅方向の概ね全面に接触する。入力軸から出力軸への許容(すべりを生じない)伝達トルクは、伝達部材間(外輪と中間ローラ、又は中間ローラと出力軸)の押し力と摩擦係数に比例し、外輪と中間ローラの間の伝達トルクと、中間ローラと出力軸の間の伝達トルクのうちで小さい方に律則される。押し力は、外輪と中間ローラの間と、中間ローラと出力軸の間で、力の釣り合いから同じになる。面圧については、小曲率の外輪に凸条部を設けて外輪と中間ローラの接触幅を小さくし、それらの間の面圧を、中間ローラと出力軸の間の面圧に近づけた。これにより、外輪と中間ローラの間と、中間ローラと出力軸の間でそれらの押し力と面圧の双方を互いに近づけ、結果として外輪と中間ローラの間の伝達トルクと中間ローラと出力軸の間の伝達トルクを概ね同等にした。これにより、中間ローラと出力軸の間の面圧を徒に高くすることなく、入力軸から出力軸への許容伝達トルクを確保し、かつ耐久性も向上できる。
(請求項2)
(b)外輪を全中間ローラの外周に緊着し、外輪の内周面を全中間ローラの外周面に常に弾発的に接触させているから、可動ローラを含む全中間ローラが常に出力軸と外輪に押し付けられる。従って、入力軸から外輪に駆動力が伝達されたとき、可動ローラは出力軸と外輪の間でそれらの環状隙間が狭くなる方向に押圧されて移動する。これにより、出力軸の被駆動側円筒面と全中間ローラの動力伝達用円筒面の間の面圧、及び外輪の駆動側円筒面と全中間ローラの動力伝達用円筒面の間の面圧を大きくし、外輪に伝えられた駆動力を出力軸へ伝達する。高回転になって駆動力が大きくなるほど、可動ローラは環状隙間がより狭くなる方向に押圧されて移動し、上記面圧をより大きくし、駆動力をすべりなく伝達する。高回転から低回転に減速すると、可動ローラは環状隙間が広くなる方向に移動し、上記面圧を小さくし、駆動損失の発生を抑制すると共に出力軸、可動ローラ、外輪の疲労寿命を長くさせることができる。
図1は第1実施例の過給機を示す断面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図、図4は入力軸とドライブメンバと外輪の組付構造を示す斜視図、図5は入力軸とドライブメンバと外輪の組付構造を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、図6はドライブメンバを示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は端面図、図7はハウジングとキャリヤの組付構造を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図、図8は第2実施例の過給機を示す断面図、図9は第3実施例の過給機を示す断面図である。
(第1実施例)(図1〜図7)
図1の自動車用過給機10は、入力軸11の回転を増速機20により増速して出力軸12に伝えるものであり、入力軸11にはエンジン出力により駆動されるプーリ13が固定され、出力軸12にはインペラ14が設けられる。
過給機10は、センタプレート15にコンプレッサハウジング16をインロー嵌合して固定してある。コンプレッサハウジング16はインペラ14を収容し、吸込口16A、過給通路16B、スクロール16Cを備える。
増速機20は、くさび作用を利用した摩擦ローラ式増速機であり、フロントハウジング21とリヤハウジング22により外郭を構成し、センタプレート15にリヤハウジング22をインロー嵌合して固定するとともに、リヤハウジング22にフロントハウジング21をインロー嵌合しボルト(不図示)にて固定する。
増速機20は、フロントハウジング21に軸受23、24を介して入力軸11を貫通支持し、フロントハウジング21の軸受23、24に挟まれる位置に挿着したオイルシール25により入力軸11の周囲を封止し、入力軸11のフロントハウジング11から突出する端部にプーリ13をボルト(ナットでも可)17により固定する。増速機20は、リヤハウジング22に挿着したオイルシール26により出力軸12の周囲を封止し、出力軸12のリヤハウジング22から突出する端部にインペラ14をナット18により固定する。
増速機20は、入力軸11により回転される外輪27を有する。本実施例では、入力軸11と外輪27を概ね同軸配置し、入力軸11及び外輪27と出力軸12を偏心配置する。入力軸11と外輪27は、後述する如くに、ドライブメンバ28により連結される。
増速機20は、出力軸12の外周面である被駆動側円筒面12Aと、外輪27の内周面である駆動側円筒面27A(後述の凸条部27B)との間の環状空間内に3個の中間ローラ31、32、33を配置する。3個の中間ローラ31、32、33の外周面は、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aに摩擦接触する動力伝達用円筒面31A、32A、33Aとされる。
本実施例では、3個の中間ローラ31、32、33のうちの1つの中間ローラ31を、他の2つの中間ローラ32、33より大径とし、結果として、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aとの間に上述の環状空間を形成するに際し、該環状空間の、出力軸12の径方向に関する幅を該出力軸12の周方向に関して不同にする。そして、3個の中間ローラ31、32、33のうちの少なくとも1個以上の中間ローラ、本実施例では中間ローラ33を、上記環状空間内で、出力軸12の周方向及び半径方向に移動できる可動ローラとし、結果として、全中間ローラ31〜33を出力軸12と外輪27に押付け可能にすることにより、入力軸11及び外輪27の回転を中間ローラ31〜33を介することにより増速して出力軸12に伝達可能にする。
以下、過給機10の増速機20において、(A)中間ローラ31〜33を出力軸12と外輪27に押付ける構造、(B)外輪27の内周面構造、(C)入力軸11と外輪27の連結構造、(D)中間ローラ31〜33の支持構造、(E)オイル分配構造、(F)フロントハウジング21とリヤハウジング22の組立構造について説明する。
(A)中間ローラ31〜33を出力軸12と外輪27に押付ける構造(図1〜図3)
増速機20は、図1〜図3に示す如く、外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に対し弾性変形状態(弾性拡径状態)にて緊着し、外輪27の内周面(駆動側円筒面27A)を出力軸12の外周面(被駆動側円筒面12A)に弾発的緊張状態にて接触させる。
このとき、可動ローラ33は、リヤハウジング22及び後述するキャリヤ50に設けた案内溝34の範囲内で、出力軸12の周方向及び半径方向に移動できる。
増速機20の製造段階では、例えば旋盤のワーク把持用押圧爪等を利用し、全中間ローラ31〜33と同数の3個の押圧爪により外輪27の周方向3位置を押圧し、外輪27を概ね三角形状に弾性変形させる。これにより、外輪27の内周のうち、押圧爪に対応する部分に縮径部を形成するとともに、相隣る縮径部に挟まれる部分に拡径部を形成し、該拡径部に各中間ローラ31〜33のそれぞれを挿入し、その後、押圧爪による押圧を解除することにより、外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に緊着できる。
従って、過給機10は以下の如く動作し得ることになる(図2、図3)。
(1)プーリ13にエンジンからの駆動力が入力すると、この駆動力が入力軸11から外輪27へ伝達される。このとき、外輪27と出力軸12は前述の如くに偏心していて前述の環状空間の出力軸12の径方向に関する幅が出力軸12の周方向に関して不同になっているため、エンジンの増速により大動力を伝えられた外輪27がaの方向へ回転すると、可動ローラ33が外輪27と出力軸12との間の環状空間の上記幅が狭くなる方向であって、可動ローラ33に及ぼすくさび作用を強くするbの方向に移動し、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aと中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間に大押付力cを発生する。この大押付力cにより出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aと中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間に大摩擦力を発生し、外輪27に伝えられた大駆動力が出力軸12へ伝達され、出力軸12がdの方向へ高速回転する。この出力軸12の高速回転により、出力軸12に固定されたインペラ14が高速回転し、コンプレッサハウジング16の吸込口16Aから吸込んだ大量の空気が過給通路16B、スクロール16Cを経てエンジンに過給される。
(2)エンジンの減速により、入力軸11から外輪27に伝えられる駆動力が低下した場合、可動ローラ33は外輪27と出力軸12との間の環状空間の前記幅が広がる方向であって、可動ローラ33に及ぼすくさび作用を弱くするbと反対方向に変位し、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aと中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間に生ずる押付力cを小にし、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと外輪27の駆動側円筒面27Aと中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間に生ずる摩擦力を小にし、出力軸12をdの方向にて低速回転し、必要量の空気がエンジンに過給される。
尚、エンジンからの駆動力が過小になったとき、可動ローラ33はbの反対方向で案内溝34の他端溝面(ストッパ面)に衝合し、押付力cの下限を規制し、入力軸11から出力軸12への動力伝達を維持する。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に緊着し、外輪27の内周面を全中間ローラ31〜33の外周面に常に弾発的に接触させているから、可動ローラ33を含む全中間ローラ31〜33が常に出力軸12と外輪27に押付けられる。従って、入力軸11から外輪27に駆動力が伝達されたとき、可動ローラ33は出力軸12と外輪27の間でそれらの環状隙間が狭くなる方向に押圧されて移動する。これにより、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと全中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間の面圧、及び外輪27の駆動側円筒面27Aと全中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間の面圧を大きくし、外輪27に伝えられた駆動力を出力軸12へ伝達する。高回転になって駆動力が大きくなるほど、可動ローラ33は環状隙間がより狭くなる方向に押圧されて移動し、上記面圧をより大きくし、駆動力をすべりなく伝達する。高回転から低回転に減速すると、可動ローラ33は環状隙間が広くなる方向に移動し、上記面圧を小さくし、駆動損失の発生を抑制すると共に出力軸、可動ローラ、外輪の疲労寿命を長くさせることができる。
(b)可動ローラ33を案内溝34の範囲内で移動可能にした。従って、案内溝34において、前記環状隙間が広くなる側の溝端部を可動ローラ33の移動ストッパとし、高回転から低回転に減速したときにも、可動ローラ33の移動端を規制し、出力軸12の被駆動側円筒面12Aと全中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間の最低面圧、及び外輪27の駆動側円筒面27Aと全中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの間の最低面圧を維持し、駆動力を伝達可能にする。
ここで、可動ローラ33の移動端を案内溝34の溝端部によるストッパ部で規制し、上述の最低面圧を維持する理由は、増速機20の内部に循環させるトラクションオイルの特性上、トラクションオイルが付与される接触面間の面圧がある面圧以上(実際は1GPa)でないと、設定したトラクション係数が得られないため、常にその面圧以上であるように最低面圧を維持する必要があるからである。
(c)過給機10、特に増速機20の組立過程で、全中間ローラ31〜33と同数の押圧爪により外輪27の外周の周方向複数位置を押圧し、外輪27の内周のうち、押圧爪に対応する部分に縮径部を形成するとともに、相隣る縮径部に挟まれる部分に拡径部を形成し、該拡径部に各中間ローラ31〜33を挿入することにより、簡易に、外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に緊着できる。
(B)外輪27の内周面構造(図1、図8、図9)
増速機20は、図1に示す如く、外輪27の内周面上に2条の凸条部27B、27Bを設けている。凸条部27Bは外輪27の内周の周方向に環状をなす如くに連続する。
増速機20は、外輪27の2条の凸条部27B、27Bの各頂面を前述の駆動側円筒面27Aとし、これらの凸条部27Bを各中間ローラ31〜33の外周面(動力伝達用円筒面31A〜33A)の幅方向の一部に接触させる。このとき、増速機20は、出力軸12の外周面(被駆動側円筒面12A)を各中間ローラ31〜33の外周面(動力伝達用円筒面31A〜33A)の幅方向の概ね全面に接触させている。
尚、増速機20は、外輪27の内周面上に設ける凸条部27Bを、図8、図9に示す如く、単一(1条)台形状の凸条部27Bにて構成するものでも良いし、3条以上の凸条部27Bにて構成するものでも良い。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
外輪27の内周面上の周方向に設けた凸条部27Bを、各中間ローラ31〜33の外周面の幅方向の一部に接触させた。出力軸12は各中間ローラ31〜33の外周面の幅方向の概ね全面に接触する。入力軸11から出力軸12への許容(すべりを生じない)伝達トルクは、伝達部材間(外輪27と中間ローラ31〜33、又は中間ローラ31〜33と出力軸12)の押し力と摩擦係数に比例し、外輪27と中間ローラ31〜33の間の伝達トルクと、中間ローラ31〜33と出力軸12の間の伝達トルクのうちで小さい方に律則される。押し力は、外輪27と中間ローラ31〜33の間と、中間ローラ31〜33と出力軸12の間で、力の釣り合いから同じになる。面圧については、小曲率の外輪27に凸条部27Bを設けて外輪27と中間ローラ31〜33の接触幅を小さくし、それらの間の面圧を、中間ローラ31〜33と出力軸12の間の面圧に近づけた。これにより、外輪27と中間ローラ31〜33の間と、中間ローラ31〜33と出力軸12の間でそれらの押し力と面圧の双方を互いに近づけ、結果として外輪27と中間ローラ31〜33の間の伝達トルクと中間ローラ31〜33と出力軸12の間の伝達トルクを概ね同等にした。これにより、中間ローラ31〜33と出力軸12の間の面圧を徒に高くすることなく、入力軸11から出力軸12への許容伝達トルクを確保し、かつ耐久性も向上できる。
(C)入力軸11と外輪27の連結構造(図1、図4〜図6)
増速機20は、図1、図4、図5に示す如く、入力軸11と外輪27をドライブメンバ28により連結する。増速機20は、入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸方向(入力軸11の中心軸に直交する方向)に摺動可能に連結し、かつドライブメンバ28を外輪27に対し、上記x軸方向に直交するy軸方向(入力軸11の中心軸に直交する方向)に摺動可能に連結する。
具体的には、入力軸11とドライブメンバ28をx軸方向に延在するピン29によりピン結合し(ピン29の中間部を入力軸11に設けたピン孔に圧入し、ピン29の両端部をドライブメンバ28に設けたピン孔に隙間嵌めする)、結果として入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸方向に摺動可能に連結する。また、ドライブメンバ28を入力軸11のy軸方向に沿う直径上に延在し、ドライブメンバ28の両端部28Aを外輪27の直径上の2位置のそれぞれに凹設した係合溝27Cに嵌合し、結果としてドライブメンバ28を外輪27に対してy軸方向に摺動可能に連結する。
増速機20にあっては、ドライブメンバ28の両端部28Aのそれぞれが、外輪27の係合溝27Cへの嵌合前の自由状態(図6)で、係合溝27Cの溝幅A(図5)よりも広幅B(図6)とされ、かつy軸方向に沿って刻設されて該端部28Aの外面に開口するスリット28Bを備える。
また、増速機20にあっては、ドライブメンバ28の両端部28Aのそれぞれがスリット28Bを挟んで分割される2つの分割部28C、28Dのうち、入力軸11の回転トルク伝達方向で外輪27の係合溝27Cの溝壁面に接する側の駆動側分割部28Cを、その反対側の被駆動側分割部28Dよりも広幅にする。
更に、増速機20は、入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸まわりに揺動可能に連結し、かつドライブメンバ28を外輪27に対してy軸まわりに揺動可能に連結する。
具体的には、入力軸11をドライブメンバ28に設けた連結孔28Eに遊挿し、入力軸11とドライブメンバ28をこの遊挿部で前述のピン29によりピン結合することにて、入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸まわりに揺動可能に連結する。また、ドライブメンバ28のスリット28Bを備えて拡縮できる端部28Aを外輪27の係合溝27Cに嵌合することにて、ドライブメンバ28を外輪27に対してy軸まわりに揺動可能に連結する。尚、ドライブメンバ28の端部28Aの両側面であって、外輪27の係合溝27Cの両側の溝壁面に接する両側面を凸面状に形成しておけば、ドライブメンバ28を外輪27に対してy軸まわりでよりスムースに揺動できる。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸方向に摺動可能に連結し、かつドライブメンバ28を外輪27に対し、上記x軸方向に直交するy軸方向に摺動可能に連結した。従って、入力軸11とドライブメンバ28と外輪27の3部品化により、それら部品の加工を容易にする。このとき、入力軸11と外輪27は、ドライブメンバ28を介して直交する2方向(x方向とy方向)で互いに隙間なく摺動し、入力軸11と外輪27の中心軸の位置ずれを吸収できるし、入力軸11の増減速の切替わりに際し、異音(衝突音)を生じない。
(b)入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸まわりに揺動可能に連結し、かつドライブメンバ28を外輪27に対してy軸まわりに揺動可能に連結した。従って、入力軸11と外輪27の中心軸の角度のずれも吸収できる。
(c)入力軸11とドライブメンバ28をx軸方向に延在するピン29によりピン結合し、該ドライブメンバ28を入力軸11のy軸方向に沿う直径上に延在し、該ドライブメンバ28の両端部28Aを外輪27の直径上の2位置のそれぞれに凹設した係合溝27Cに嵌合した。従って、前述(a)の如くに、入力軸11と外輪27は、ドライブメンバ28を介して直交する2方向(x方向とy方向)で互いに隙間なく摺動できる。
(d)入力軸11をドライブメンバ28に設けた連結孔28Eに遊挿し、入力軸11とドライブメンバ28をこの遊挿部でピン結合した。従って、前述(b)の如くに、入力軸11をドライブメンバ28に対してx軸まわりに揺動可能に連結できる。
(e)ドライブメンバ28の両端部28Aのそれぞれが、外輪27の係合溝27Cへの嵌合前の自由状態で、該係合溝27Cの溝幅よりも広幅とされ、かつy軸方向に沿って刻設されて該端部の外面に開口するスリット28Bを備えた。従って、ドライブメンバ28と外輪27の連結部の加工精度を下げても、外輪27の係合溝27Cに組付けられるドライブメンバ28の端部の幅をスリット28Bの拡縮により調整し、ドライブメンバ28の端部を外輪27の係合溝27Cに全く隙間なく、前述(a)の如くに摺動可能に嵌合でき、コスト低減できる。
(f)ドライブメンバ28の両端部28Aのそれぞれが、スリット28Bを挟んで分割される2つの分割部28C、28Dのうち、入力軸11の回転トルク伝達方向で外輪27の係合溝27Cの溝壁面に接する側の駆動側分割部28Cを、その反対側の被駆動側分割部28Dよりも広幅した。従って、ドライブメンバ28にスリット28Bを設けても、入力軸11の回転トルクをドライブメンバ28によって確実に外輪27に伝達できる。
(g)増速機20が外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に緊着し、外輪27の内周面を全中間ローラ31〜33の外周面に弾発的に接触させながら該外輪27を回転することにより、外輪27の中心軸がその回転とともに入力軸11の中心軸に対してずれることになるものの、この中心軸のずれは、前述(a)により確実に吸収される。
(D)中間ローラ31〜33の支持構造(図1〜図3、図7)
増速機20は、リヤハウジング22にキャリヤ50を組付け、各中間ローラ31〜33の一端支軸に装填した軸受41A、42A、43Aをリヤハウジング22に設けた軸受孔41、42、43に支持するとともに、他端支軸に装填した軸受51A、52A、53Aをキャリヤ50に設けた軸受孔51、52、53に支持する。
リヤハウジング22とキャリヤ50の加工工程で、キャリヤ50はリヤハウジング22に対し位置決め手段(本実施例ではリヤハウジング22の座ぐり部44及びノックピン45)を介して固定する状態で、キャリ50の軸受孔51〜53のそれぞれと、これらに対応するリヤハウジング22の軸受孔41〜43のそれぞれを、単一工具により一度に、同軸加工し、かつ少なくとも一方の軸受孔51〜53を貫通孔とする。
リヤハウジング22に対するキャリヤ50の上述した固定構造は、キャリヤ50の3本の脚部54の外周部(内周部でも可)を、リヤハウジング22の座ぐり部44にインロー結合し、各脚部54のそれぞれをボルト55によりリヤハウジング22に締結するとともに、リヤハウジング22とキャリヤ50を1本(2本以上でも可)のノックピン45によりピン結合することにてなされる。
尚、可動ローラ33の両端支軸に装填した軸受41A、53Aを支持する軸受孔43、53は、軸受43A、53Aより大径の丸孔(長孔でも可)とされ、前述の案内溝34を形成する。
リヤハウジング22は出力軸12の中間部が挿通し、かつオイルシール26が挿着される孔22Aを中心部に備える。キャリヤ50は入力軸11の端部が挿通する孔50Aと、出力軸12の端部が挿通する孔50Bを中心部(後述する被覆部57)に互いに偏心させて備える。
従って、リヤハウジング22とキャリヤ50への出力軸12、中間ローラ31〜33の組付工程で、リヤハウジング22の孔22Aに出力軸12の中間部を挿通し、各中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aを出力軸12の被駆動側円筒面12Aに接触させる状態で、各中間ローラ31〜33の一端支軸に装填した軸受41A〜43Aをリヤハウジング22の軸受孔41〜43に嵌合する。次いで、リヤハウジング22に固定されるキャリヤ50の孔50Bを出力軸12の端部に挿通するとともに、各中間ローラ31〜33の他端支軸に装填した軸受51A〜53Aにキャリヤ50の軸受孔51〜53を嵌合し、リヤハウジング22とキャリヤ50を前述した位置決め手段(座ぐり部44、ノックピン45)の介在下でボルト55により固定する。そして、キャリヤ50の嵌通孔からなる軸受孔51〜53に支持される中間ローラ31〜33のスラスト方向位置が、軸受孔51〜53の内周に設けた環状溝に係着される止め輪56と軸受51A〜53Aの内輪との衝合により、制止される。
尚、出力軸12と中間ローラ31〜33をリヤハウジング22とキャリヤ50に組付けたとき、出力軸12が被駆動側円筒面12Aの両側に設けている鍔部12B、12Bが、各中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの両端面を挟着し、出力軸12のスラスト方向位置を規制する。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)キャリヤ50はリヤハウジング22に対し位置決め手段(座ぐり部44及びノックピン45)を介して固定され、キャリヤ50の軸受孔51、52、53とリヤハウジング22の軸受孔41、42、43は同軸加工され、かつ一方の軸受孔51〜53を貫通孔とした。従って、キャリヤ50とリヤハウジング22を一体結合した状態でそれらの軸受孔41〜43、及び51〜53を単一工具により同軸加工できるし、位置決め手段(座ぐり部44及びノックピン45)の存在により、加工時の一体結合状態を、キャリヤ50とリヤハウジング22のそれら軸受孔41〜43、51〜53に中間ローラ31〜33を組付けた後にも再現できる。従って、組立後の増速機20において、キャリヤ50とリヤハウジング22のそれぞれに設けた軸受孔41〜43、51〜53の同軸度が良く、各中間ローラ31〜33と外輪27又は出力軸12との平行度を簡易に確保するとともに、各中間ローラ31〜33相互間の平行度も簡易に確保し、増速機20の機械効率、寿命の向上を図ることができる。
(b)キャリヤ50の脚部54をリヤハウジング22の座ぐり部44にインロー結合することにより、キャリヤ50とリヤハウジング22をくり返し同軸組付けでき、キャリヤ50とリヤハウジング22をノックピン45によりピン結合することにより、キャリヤ50とリヤハウジング22をそれらの中心軸まわりでくり返し同一角度位置に組付けできる。従って、キャリヤ50とリヤハウジング22にそれらの軸受孔41〜43、51〜53を同軸加工した加工時の一体結合構造を、キャリヤ50とリヤハウジング22のそれら軸受孔41〜43、51〜53に中間ローラ31〜33を組付けた後にも確実に再現できる。
(c)貫通孔からなる軸受孔51〜53に支持される中間ローラのスラスト方向位置を、該貫通孔の内周に係着した止め輪56により制止するようにしたから、キャリヤ50とリヤハウジング22に対する中間ローラ31〜33の組付性を向上できる。
(E)オイル分配構造(図1)
増速機20は、トラクションオイルを内部に循環させるためのオイルポンプ60を内蔵する。オイルポンプ60は、フロントハウジング21の入力軸11まわりで、入力軸11に固定したロータの外周に複数枚のベーンを設け、このベーンをベースプレートとサイドプレートとカムリングにより囲んだベーンポンプ等にて構成され、本実施例では入力軸11により駆動される(オイルポンプ60は出力軸12により駆動されても良い)。
オイルポンプ60が吐出するトラクションオイルは、入力軸11まわりの軸受24、オイルシール25を潤滑・冷却し、入力軸11の直径方向〜軸方向に穿設されてキャリヤ50の孔50Aに挿通されたその軸端面に開口する油路61から、キャリヤ50の孔50Bに挿通される出力軸12の軸端面からその軸方向に穿設される油路62に流れ、更に、油路62に交差して出力軸12の直径方向に穿設される分配路63から、出力軸12の回転に伴なう遠心力によりその外周側へ飛散流出する。出力軸12の被駆動側円筒面12Aに開口する分配路63から流出するオイルは出力軸12の被駆動側円筒面12A、中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aを潤滑・冷却し、被駆動側円筒面12Aの両側寄りの分配路63から流出するオイルは出力軸12の両側鍔部12Bと中間ローラ31〜33の動力伝達用円筒面31A〜33Aの両端面とのスラスト接触部を潤滑・冷却する。油路62の閉塞端側に交差する分配路63から流出するオイルは、出力軸12まわりのオイルシール26を潤滑・冷却する。出力軸12の外周に流出したオイルは、更に、出力軸12と外輪27の間の環状空間を流れ、中間ローラ31〜33の軸受41A〜43A、軸受51A〜53A、外輪27の駆動側円筒面27Aを潤滑・冷却し、オイルポンプ60に戻る。
増速機20は、入力軸11と出力軸12を偏心配置させているが、入力軸11の油路61と出力軸12の油路62の接続部を、リヤハウジング22に支持してあるキャリヤ50において、入力軸11の軸端と出力軸12の軸端が互いに偏心状態で挿通される孔50A、50Bを備えた中心被覆部57により覆う。入力軸11の油路61から流出するオイルは、被覆部57により外方遮断されて漏れを減らし出力軸12の油路62にガイドされる。
増速機20は、入力軸11の軸端外周と被覆部57の孔50A内周との隙間にオイルを侵入させて油膜ダンパを形成することができる。入力軸11の軸端外周に設けた異径段差面と、被覆部57の孔50A内周に設けた異径段差面とを突き合せてラビリンス効果を発現させ、被覆部57の外方遮断効果を強化することができる。
増速機20は、出力軸12の軸端外周と被覆部57の孔50B内周との隙間にもオイルを侵入させて油膜ダンパを形成することができる。出力軸12の軸端外周に設けた異径段差面と、被覆部57の孔50B内周に設けた異径段差面とを突き合せてラビリンス効果を発現させ、被覆部57の外方遮断効果を強化することができる。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)トラクションオイルの循環経路となる、入力軸11の油路61と出力軸12の油路62の接続部を被覆部57により覆った。従って、互いに偏心している入力軸11〜出力軸12に渡るオイル循環経路を簡易に構成できる。
(b)被覆部57が入力軸11と出力軸12との間に油膜ダンパを形成したから、油膜のダンピング効果により入力軸11及び出力軸12の振動を減衰できる。
(F)フロントハウジング21とリヤハウジング22の組立構造
増速機20は、フロントハウジング21に入力軸11を組付けたフロント組立体20Aと、リヤハウジング22に中間ローラ31〜33と出力軸12と外輪27を組付けたリヤ組立体20Bとを用意し、フロントハウジング21とリヤハウジング22を嵌合して固定する過程で、フロント組立体20Aの側の入力軸11と、リヤ組立体20Bの側の外輪27を、それらの回転方向で隙間なく係合させる。
即ち、増速機20は以下の手順で組立てられる。
(1)フロント組立体20Aをサブ組する。フロントハウジング21に軸受23、24、オイルシール25を介して入力軸11を支持し、入力軸11の突出端部にプーリ13を固定し、フロントハウジング21内の入力軸11まわりにオイルポンプ60を内蔵し、フロントハウジング21内の入力軸11の軸端にドライブメンバ28をピン結合する。
(2)リヤ組立体20Bをサブ組する。キャリア50の孔50Bに出力軸12の端部を挿通し、各中間ローラ31〜33の一端支軸を軸受51A〜53Aを介してキャリア50の軸受孔51〜53に挿通する。前述の旋盤の押圧爪の利用等により、全中間ローラ31〜33の外周に外輪27を弾発的緊張状態にて緊着する。リヤハウジング22にキャリア50を固定するとともに、リヤハウジング22の孔22Aにオイルシール26を介して出力軸12を挿入する。
更に、リヤハウジング22から突出する出力軸12の端部にインペラ14を固定し、センタプレート15及びコンプレッサハウジング16をリヤハウジング22にインロー結合して固定する。
(3)フロントハウジング21とリヤハウジング22をインロー結合して嵌合する相対組付移動過程で、フロント組立体20Aの側のドライブメンバ28の両端部28Aを、その相対組付移動方向で、リヤ組立体20Bの側の外輪27の直径上の2位置のそれぞれに凹設してある係合溝27Cに嵌合する。
外輪27の係合溝27Cへのドライブメンバ28の両端部28Aの嵌合に際し、係合溝27Cの相対する溝壁面の開口部には面取りC1が施され(図4)、両端部28Aの両側先端角部には面取りC2が施され(図6)、それらの嵌合を互いにガイドし合って嵌合のスムースを図っている。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)フロントハウジング21とリヤハウジング22を嵌合する過程で、フロント組立体20Aの側の入力軸11と、リヤ組立体20Bの側の外輪27を、それらの回転方向で単に隙間なく係合させるものであり、組立性は良い。このとき、入力軸11と外輪27はそれらの回転方向で隙間なく係合され、入力軸11の増減速の切替わりに際して異音(衝突音)を生じない。
(b)入力軸11に連結したドライブメンバ28の両端部28Aを、外輪27の直径上の2位置のそれぞれに凹設した係合溝27Cに嵌合することにより、入力軸11と外輪27を、それらの回転方向で簡易に、隙間なく係合できる。
(c)外輪27を全中間ローラ31〜33の外周に緊着するに際し、それらの外輪27と全中間ローラ31〜33を出力軸12とともに予めリヤ組立体20Bとしてリヤハウジング22に組付け済であり、その緊着構造がフロント組立体20Aとリヤ組立体20Bの組立性を困難にすることがない。
(第2実施例)(図8)
第2実施例が第1実施例と実質的に異なる点は、図8に示す如く、キャリヤ50を本体部71と、スラスト受部72に2分し、本体部71の中心部に入力軸11の端部が挿通する孔71Aを設け、スラスト受部72に出力軸12の端部が挿通する孔72Aを設け、本体部71とスラスト受部72を止ねじ73により締結したことにある。孔71Aと孔72Aは、本体部71の貫通孔71Bにより連通する。
キャリヤ50は、本体部71とスラスト受部72により前述の被覆部57を構成し、入力軸11の油路61と出力軸12の油路62の接続部を覆う。
キャリヤ50は、出力軸12の端部に設けたフランジ部74を、本体部71の側面と、スラスト受部72の孔72Aに設けた異径段差面からなるスラスト受面72Bとで挟み、結果として出力軸12をスラスト支持する。このとき、出力軸12は前述の鍔部12Bを備えない。
尚、出力軸12は、油路62に交差する一部の分配路63を、スラスト受部72の孔面に臨ませ、出力軸12の軸端外周とスラスト受部72の孔内周との隙間にオイルを侵入させて油膜ダンパを形成する。
また、リヤハウジング22は、オイルシール26が挿着される孔22Aに併置される軸支部75を一体に備え、軸支部75に出力軸12の中間部が挿通する孔75Aを設ける。出力軸12は、油路62に交差する一部の分配路63を、軸支部75の孔面に臨ませ、出力軸12の中間部外周と軸支部75の孔内周との隙間にオイルを侵入させて油膜ダンパを形成する。75Bはオイルシール26の側からのオイル戻り油路である。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)トラクションオイルの循環経路となる、入力軸11の油路61と出力軸12の油路62の接続部を被覆部57により覆った。従って、互いに偏心している入力軸11〜出力軸12に渡るオイル循環経路を簡易に構成できる。
(b)出力軸12のフランジ部74を被覆部57のスラスト受面72Bによりスラスト支持したから、出力軸12をスラスト方向で容易に位置決めし、出力軸12のスラスト方向で生ずる振動を抑制できる。
(c)被覆部57と軸支部75のそれぞれが出力軸12との間に油膜ダンパを形成したから、油膜のダンピング効果により出力軸12の振動を減衰できる。
(第3実施例)(図9)
第3実施例が第1実施例と実質的に異なる点は、図9に示す如く、出力軸12上の中間ローラ31〜33との接触部を介して、インペラ14と反対側にフライホイール80を固着したことにある。
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)出力軸12上で、インペラ14と同回転数にて回転するフライホイール80により、出力軸12の振動を抑制できる。
(b)出力軸12にインペラ14とフライホイール80を取付けたことにより、出力軸12にインペラ14を取付けたフルアッセンブリ状態でのバランス取りを、フライホイール80の周方向又は軸方向のいずれかを削る等により容易にできる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
図1は第1実施例の過給機を示す断面図である。 図2は図1のII−II線に沿う断面図である。 図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。 図4は入力軸とドライブメンバと外輪の組付構造を示す斜視図である。 図5は入力軸とドライブメンバと外輪の組付構造を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。 図6はドライブメンバを示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は端面図である。 図7はハウジングとキャリヤの組付構造を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図である。 図8は第2実施例の過給機を示す断面図である。 図9は第3実施例の過給機を示す断面図である。
符号の説明
10 過給機
11 入力軸
12 出力軸
12A 被駆動側円筒面
14 インペラ
20 増速機
27 外輪
27A 駆動側円筒面
27B 凸条部
31〜33 中間ローラ
31A〜33A 動力伝達用円筒面

Claims (2)

  1. 入力軸の回転を増速機により増速して出力軸に伝え、該出力軸にインペラを設けるに際し、
    前記増速機が、
    入力軸により回転されるとともに、出力軸に対し偏心して配置される外輪と、
    出力軸の外周面である被駆動側円筒面と、外輪の内周面である駆動側円筒面との間の、出力軸の径方向に関する幅が該出力軸の周方向に関して不同となる環状空間内に配置され、それぞれの外周面をそれらの被駆動側円筒面と駆動側円筒面に摩擦接触する動力伝達用円筒面とした複数の中間ローラとを有して構成され、
    少なくとも1個以上の中間ローラを、出力軸の周方向及び半径方向に移動できる可動ローラとしてなる過給機において、
    前記外輪の内周面上の周方向に設けた凸条部を、各中間ローラの外周面の幅方向の一部に接触させたことを特徴とする過給機。
  2. 前記外輪を全中間ローラの外周に緊着し、外輪の内周面を全中間ローラの外周面に弾発的に接触させた請求項1に記載の過給機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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