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JP2006298775A - 選択的Th2免疫反応抑制剤 - Google Patents

選択的Th2免疫反応抑制剤 Download PDF

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JP2006298775A JP2005118334A JP2005118334A JP2006298775A JP 2006298775 A JP2006298775 A JP 2006298775A JP 2005118334 A JP2005118334 A JP 2005118334A JP 2005118334 A JP2005118334 A JP 2005118334A JP 2006298775 A JP2006298775 A JP 2006298775A
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剛 岩崎
Jiro Fujimoto
治朗 藤元
Kenji Nakanishi
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Abstract

【課題】 新たなアレルギー疾患治療剤を提供する。
【解決手段】 HGFを有効成分とするTh2選択的免疫反応抑制剤に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、HGFの新規用途に関するものであり、HGFを有効成分とするタイプ2ヘルパーT細胞(以下、Th2と略す)の選択的免疫反応抑制剤に関する。さらに詳しくは、HGFがTh2側の免疫反応を選択的に抑制することにより、Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患、すなわち喘息、アレルギー性皮膚炎又はアレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患、あるいは全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患を、良好に、かつ少ない副作用で治療又は予防することのできる、新規なTh2選択的免疫反応抑制剤に関する。
HGFは分子量が約10万の蛋白質であり、最初考えられたような肝細胞に特有な増殖因子ではなく、いろいろな上皮細胞、血管内皮細胞、心筋細胞、軟骨細胞などを標的として働く増殖因子(サイトカイン)であることが分かって来た。また、HGFの投与により上皮細胞の再生が促進されることから、肝をはじめ腎や肺の障害時の治療薬として、また障害が強く起きる前の予防薬として臨床応用が期待されている。
これまでに報告されている、これらのHGFの用途は、いずれも増殖因子の機能を利用したものであり、細胞の賦活性化にも基づくものである。一方、HGFとアレルギーの関係に関しては全く報告がなく、報告されていることと言えば、現在のHGF遺伝子治療において、患者に対してHGF遺伝子製剤のアレルギー反応の有無をチェックし、アレルギー反応のない患者にHGF遺伝子製剤を継続投与するとの報告くらいでしかない。
また、アレルギーのメカニズムに対して、HGFがどのように関与しているか、全く報告されていない状況である。
特開2003−246751号公報 BLOOD, 104, 1542-1549(2004)
本発明の目的は、Th2選択的免疫反応抑制剤、アレルギー疾患治療剤としてのHGFの使用などを提供することにある。
本発明者は、ヒト肝細胞増殖因子 (HGF) 遺伝子を用いて骨格筋に投与を行うと、HGFの持続的生成が誘発されることを明らかにしてきた。そして、HGFの遺伝子投与を、骨髄移植 (BMT) モデルマウスに行えば、急性及び慢性GVHDが強力に抑制できることを見出してきた(特開2003-246751号公報)。
更に、本発明者は、HGFの新たな効果を確認するため、一代雑種 (F1) 慢性GVHDモデルマウスを用いて、HGFの治療的及び予防的効果を鋭意検討、評価した。この慢性GVHDの一代雑種 (F1) マウスモデルは、ポリクロナール B細胞活性化、自己抗体産生及びCTL反応減少などのTh2介在の免疫反応を示し、これはループス様自己免疫疾患に非常によく似ている。
HGFはin vivoで抗宿主CTLを誘導せず、DBA/2抗BDF1 MLRにおいてin vitroでTh1を誘導しなかった。しかし、HGFの投与により、慢性GVHD標的器官でのIL-4 mRNA発現、脾B細胞の増加及び慢性GVHDマウスにおける自己抗体産生が抑制された。従って、HGFはTh1誘発よりもTh2産生抑制によりループス様自己免疫疾患が抑制できた。
そこで、慢性GVHDマウスにおいて、HGFがTh2介在反応を抑制するメカニズムを解明するため、種々検討したところ、HGF投与の慢性GVHDマウス由来の宿主B細胞上のMHCクラスIIに発現低下を認めた。
更に、HGFをin vitroでDBA/2抗BDF1 MLRに添加すると、BDF1 B細胞のMHCクラスIIの発現増加が抑制されるが、一方でHGFはIL-4誘発のB細胞MHCクラスII発現を抑制しないことから、HGFは宿主B細胞上のMHCクラスII発現を直接抑制するのではないことが示された。
BMT (骨髄移植)後の宿主樹状細胞の発現持続は、重度の急性及び慢性GVHDの進行と相関している。このように、樹状細胞(DC)は、免疫系における反応及び耐性間のバランスを決定する上で重要な役割を果たしている。そこで、DBA/2 CD4+ T細胞及びBDF1 DCのDBA/2抗BDF1 MLRを用いて、HGFの添加効果を見たところ、DBA/2 Th2の産生が有意に抑制されるのが観察された。また、c-Met/HGFレセプターはDCに発現し、CD4+ T細胞に発現していないことが明らかになった。
本発明者は、以上の知見から、HGFがDCに作用し、そのTh2を産生する能力を抑制することにより、選択的にTh2免疫反応性を抑制すると言うHGFの新たな効果を確認することができた。
すなわち本発明は、
(1)肝細胞増殖因子(HGF)を有効成分とする、2型Tヘルパー細胞(Th2)の選択的免疫反応抑制剤。
(2)HGFを有効成分として含む、Th2選択的免疫反応抑制作用による、Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患の治療又は予防剤。
(3)Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患がアレルギー性疾患である、上記(2)記載の治療又は予防剤。
(4)アレルギー性疾患が喘息、アレルギー性皮膚炎又はアレルギー性鼻炎である、上記(3)記載の治療又は予防剤。
(5)Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患を治療するための他の薬剤との併用に供する、上記(2)〜(4)のいずれかに記載の治療又は予防剤。
(6)併用される他の薬剤が、Th1免疫反応を増強する薬剤またはステロイド剤である上記(5)記載の治療又は予防剤。
(7)HGFを有効成分とする、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)あるいは原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療剤。
(8)HGFを有効成分とする、樹状細胞(DC)のTh2産生抑制剤。
(9)HGFがHGF蛋白である、上記(1)〜(5)のいずれか記載の免疫反応抑制剤。
(10)HGFがHGF遺伝子である、上記(1)〜(5)のいずれか記載の免疫反応抑制剤。
本発明により、HGFを有効成分とするTh2選択的免疫反応抑制剤などが提供される。本発明のTh2選択的免疫反応抑制剤はアレルギー疾患治療剤として有用であり、更には、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)あるいは原発性胆汁性肝硬変(PBC)の患者に適用可能である。
本発明の「肝細胞増殖因子(HGF)」とは、HGF蛋白、あるいはHGF蛋白を発現し得るHGF遺伝子を意味するものである。
本発明の「HGF蛋白」とは、例えば、HGFをコードする遺伝子から遺伝子工学的手法により得られた組換えHGF(例えば Nature,342,440(1989)、特開平5−111383号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.163,967(1989)など参照)のことであり、あるいはHGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養上清等から分離、精製して得た天然HGFのことを意味する。本発明で使用されるHGF蛋白として、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で調製されたものを用いることができ、また既に市販されている製品(例えば、東洋紡Code No.HGF−101等)を使用してもよい。
本発明で使用される組換えHGF蛋白としては、通常の遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から目的とする組換えHGFを得ることができるが、上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、酵母又は動物細胞などを用いることができる。このようにして得られたHGF蛋白は、天然型HGFと実質的に同じ作用を有する限り、そのアミノ酸配列中の1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されていてもよく、また同様に糖鎖が置換、欠失及び/又は付加されていてもよい。
本発明のHGF蛋白製剤は、有効成分であるHGF蛋白に対し、必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、賦型剤あるいは可溶化剤等を添加しても良い。投与量としては、症状、年齢、性別等によって異なるが、成人患者当たり約0.05μg〜約500mgの範囲、好ましくは約5〜約200μgの範囲から投与量が選択され、これを非経口に投与することができる。非経口投与としては、静脈注射、動脈注射、腹腔内投与により、患部またはその周辺の筋肉部位に注入することができる。更には軟膏等の形で患部またはその周辺部位に経皮投与することができる。また1回の投与で効果が不十分であった場合は、該投与を複数回行うことも可能である。
本発明の「HGF遺伝子」とは、HGF蛋白が発現可能である遺伝子を意味する。例えば、具体的には、Nature,342,440(1989)、特許第2777678号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.,163,967(1989)などに記載のHGFのcDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが挙げられる。ここでHGF・cDNAの塩基配列は、前記文献に記載されている他、Genbank 等のデータベースにも登録されている。従ってこれらの配列情報に基づき適当なDNA部分をハイブリダイゼーションのプローブ又はPCRのプライマーとし、例えば肝臓や白血球由来のcDNAライブラリー等を用いることにより、HGFのcDNAをクローニングすることができる。これらのクローニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
さらに、本発明のHGF遺伝子は前述のものに限定されず、発現されるタンパク質がHGFと実質的に同じ作用を有する遺伝子である限り、本発明のHGF遺伝子として使用できる。すなわち、1)前記cDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、2)前記cDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、などのうち、HGFとしての作用を有するタンパクをコードするものであれば、本発明のHGF遺伝子の範疇に含まれる。ここで前記1)及び2)のDNAは、例えば部位特異的突然変異誘発法、PCR法、又は通常のハイブリダイゼーション法などにより容易に得ることができ、具体的には前記Molecular Cloning等の基本書を参考にして行うことができる。
HGF遺伝子の患者への導入方法としては、遺伝子を直接体内の細胞に導入するin vivo法、およびヒトからある種の細胞(例えば骨髄細胞など)を取り出し体外で遺伝子を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、実験医学増刊、12(15)(1994))。
in vivo法としては、組換えウイルスベクターを用いる方法及びその他の方法(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、実験医学増刊、12(15)(1994))のいずれの方法も適用することができる。
例えば、HGF遺伝子は、遺伝子そのものやcDNAあるいは適当なベクターに組み込んだものが使用できる。ベクターとしては、公知の発現ベクターを使用することができる。例えば、組換えアデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターを用いた方法が代表的なものである。より具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルスまたはRNAウイルスに本発明のDNAを導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることによって、細胞内に遺伝子を導入することが可能である。
前記ウイルスベクターの内、アデノウイルスの感染効率が他のウイルスベクターを用いた場合よりもはるかに高いことが知られており、この観点からは、アデノウイルスベクター系を用いることが好ましい。
その他の方法としては、リポソーム法、リポフェクチン法等が挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。
ex vivo法としては、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
ex vivo法としては、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
患者への投与方法は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、一般的には注射剤等とされ、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)-リポソーム等)の形態にした場合は、目的に応じた各種のリポソーム製剤とすることができる。
製剤中の遺伝子の含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができるが、通常は0.0001-100mg、好ましくは0.001-10mgである。 本発明で使用されるHVJリボゾーム製剤は、例えば、Molecular Medicine,30,1440-1448(1993)、実験医学,12,1822-1826(1994)、蛋白質・核酸・酵素,42,1806-1813(1997)等に記載の方法であり、好ましくは、Circulation,92(Suppl.II),479-482(1995)に記載の方法を用いることが挙げられる。なおHVJとしてはZ株(ATCCより入手可能)が好ましいが、基本的には他のHVJ株(例えば ATCC VR-907や ATCC VR-105など)も用いることができる。
本発明の「Th2選択的免疫反応抑制剤」とは、Th2側の免疫反応を抑制する作用を有するが、Th1側の免疫反応に対してはあまり影響することのない治療剤を意味する。
Th2免疫反応に関して、次のことが知られている。即ち、Th2は、以下に述べるようにIL-4やIL-5といったアレルギー反応に関与するサイトカインを産生することから、アレルギー反応の制御細胞として重要視されている。すなわち、Th2型サイトカインの代表であるIL-4は、B細胞に対してIgE抗体の産生を誘導する。また好酸球が血管内皮細胞に接着し、組織浸潤する際に機能する重要な分子であるVCAM-1の遺伝子発現も誘導する(ファルマシア(1993)29:1123-1128)。最近では該IL-4は、Th2自身の分化増殖因子としても注目されている。またIL-4と同じくTh2型サイトカインであるIL-5は、好酸球の分化増殖、遊走あるいは活性化を誘導することから、アレルギー性炎症反応の惹起因子であると考えられている。
以上のようなTh2型サイトカインの特性から、該Th2は、IgE抗体や肥満細胞が関与するアレルギーの「即時型反応」、及び好酸球が関与するアレルギーの「遅発型反応」という二つのアレルギー反応のいずれをも制御する中心的な細胞であると認識されている。従ってアレルギー性疾患は、Th2側の免疫応答の異常亢進に起因した疾患であると考えられている。このような考えは、アレルギー性疾患の病変部である気道や皮膚において、IL-4やIL-5等のTh2型サイトカインの産生、あるいはTh2の存在が確かめられていることにも裏付けられている。
以上のことより、即時型及び遅発型の両方のアレルギー反応にかかるアレルギー性疾患全般を治療あるいは予防する為には、Th2免疫応答を抑制することが重要であると考えられる。言い換えればTh2免疫応答を抑制することのできる薬剤が開発されれば、アレルギー性疾患の有効な治療薬あるいは予防薬になるものと考えられる。
ちなみにアレルギー性疾患のうち、特に重症の喘息やアトピー性皮膚炎等においては、遅発型のアレルギー反応が重要な役割を果たしていると考えられている。しかるに現在使用されている抗アレルギー薬は、主に即時型のアレルギー反応のみを抑制するものであり、その臨床効果は十分なものではなく、結局、これら重症の喘息やアトピー性皮膚炎に対しては、ステロイド剤のみが有効であるとして、現在該ステロイド剤が頻繁に使用されている状況にある。しかし該ステロイドは長期投与により種々の副作用(ステロイド皮膚症、誘発感染症、副腎皮質機能不全等)の生じることが問題となっており、このような観点からも、前述の如き遅発型、即時型両方のアレルギー反応にかかるアレルギー性疾患全般を治療又は予防するような、Th2免疫応答を抑制する薬剤の開発が望まれているのである。
本発明のTh2選択的免疫反応抑制剤は、前述の如き遅発型、即時型両方のアレルギー反応にかかるアレルギー性疾患に有効であり、例えば喘息、アレルギー性皮膚炎又はアレルギー性鼻炎に有効であり、更には全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)あるいは原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療にも有効に用いることができる。
しかも、本発明のTh2選択的免疫反応抑制剤は、Th1に対して作用することがなく、Th2の免疫反応を選択的に抑制することから、従来のTh2免疫反応抑制剤と比べて、副作用の面から非常に望ましい薬剤であると考えられる。例えば免疫抑制剤であるシクロスポリンやFK506は、Th2の活性化を強く抑制することが知られている。しかし、これらシクロスポリンやFK506は、Th2の活性化を抑制するのと同様に、あるいはそれよりもさらに強く、Th1の活性化をも抑制するという非特異的な免疫抑制作用を有している。そして、このために、Th1免疫反応抑制に起因する日和見感染が、重篤な副作用として問題となっている。従って、本発明のTh2選択的免疫反応抑制剤は、これを回避できる優れた薬剤である。
本発明で併用使用される「他の薬剤」として、既知の抗アレルギー剤、ステロイド剤等を挙げることができる。抗アレルギー剤としては、例えば、トシル酸スプラタスト等のTh2サイトカイン阻害剤やシクロスポリン、FK506(タクロリムス)、あるいは例えばオマリズマブ等の抗IgE抗体を挙げることができる。ステロイド剤としては、例えばベタメサゾン、プレドニゾロン等を挙げることができる。
ステロイド剤を併用することは、次のことからである、即ち、現在、重症の喘息やアトピー性皮膚炎に対しては、ステロイド剤が最も有効であるとして頻繁に使用されている。しかし、該ステロイド剤は長期投与によりステロイド皮膚症、誘発感染症、副腎皮質機能不全、また使用中止後のリバウンドなどの種々の副作用の生じることが問題となっている。従って、本発明のTh2選択的免疫応答抑制剤を該ステロイド剤と併用することにより、ステロイドの使用量を従来より減らすことが可能となり、ステロイド剤の種々の副作用を軽減できることになる。
抗アレルギー剤としては、喘息の長期管理薬として使用されるものが多いが、上記ステロイド剤と同様に、種々の副作用があり、シクロスポリン、FK506(タクロリムス)等に見られるように、Th2の免疫反応を押えるだけでなく、Th1の免疫反応も強力に抑制してウイルス、バクテリア等に対する感染防御が弱くなることが問題となっている。従って、本発明のTh2選択的免疫応答抑制剤を該抗アレルギー剤と併用することにより、抗アレルギー剤の使用量を従来より減らすことが可能となり、日和見感染症等の免疫力低下に伴う種々の副作用を軽減できることになる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実験に使用された材料及び方法を以下に述べる。
(1)実験動物:
8-12週齢、雌のB6 (H-2b)、DBA/2 (H-2d) 及びBDF1 (H-2bxd) マウスを静岡実験動物研究所 (日本、静岡) から購入した。全てのマウスを兵庫医科大学の無菌施設に収容した。動物実験は、兵庫医科大学の動物保護規定に明記されるように、国立衛生研究所のガイドラインに従って実施した。
(2)動物モデルの作成(GVHDの誘発):
DBA/2マウスの脾細胞 (9×107) 又はB6マウスの脾細胞 (5×107) を、既述のように非照射BDF1マウスに対して尾部静脈内注入した (7-9)。コントロール群のマウスには、正常BDF1マウスの脾細胞を注入した (9×107)。
(3)発現ベクター及びセンダイウイルスを融合したリポソーム (HVJリポソーム) の調製:
ヒト HGF cDNA (2.2 kb) を、SRαプロモーターの制御下、pUC-SRαプラスミド内のEcoRI及び NotI 部位に挿入した。プラスミドDNA 及び高移動度群-1蛋白 (HMG-1) を含むHVJリポソームを既述のように構築した。つまり、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン及びコレステロールを1:4.8:2 (w/w/w)の割合で混合し、この混合液1 mgを、ウシ胸腺から精製した6〜12 μgの高移動度群-1非ヒストン性染色体蛋白を組み込んだ20〜40 μgのプラスミドDNAに添加した。この混合物を超音波で分解し、リポソームを形成して、紫外線照射HVJと混合した。余分な遊離ウイルスを蔗糖密度勾配遠心法によりHVJリポソームから除去した。
(4)遺伝子導入:
BDF1マウス臀筋に8 μgのヒトHGF発現ベクターを含むHVJリポソーム(HGF-HVJリポソーム)又は擬似ベクター(GVHDコントロール群)のいずれかを注入した。GVHD導入第1日から2週間隔で12週間、遺伝子導入を繰り返した。
(5)病理組織:
組織を10%緩衝ホルマリンに固定し、パラフィン包理で処理した。標本をヘマトキシリン・エオシン染色し、光顕検査を行った。
(6)フローサイトメトリー:
細胞混濁液を1%ウシ胎児血清 (FCS) 及び0.1%アジ化ナトリウム含有PBSで調製した。細胞を10分間4℃で、抗Fcレセプター・モノクローナル抗体(2.4G2) と反応させ、その後フルオレセインイソチオシアネート (FITC) 標識モノクローナル抗体及びフィコエリトリン (PE) 標識モノクローナル抗体と30分間反応させた。染色された細胞を2回洗浄し、再度懸濁し、FACScan (べクトン・ディッキンソン社 (Becton Dickinson)、米国、カリフォルニア州、マウンテンビュー)を用いて分析した。
抗Fcレセプター (2.4G2) モノクローナル抗体、FITC標識抗マウスH-2Kb (クローンAF6-88.5) モノクローナル抗体、抗B220 (クローンRA3-6B2) モノクローナル抗体及び、PE標識抗マウスH-2Kd (クローンSF1-1.1)モノクローナル抗体、抗I-Abモノクローナル抗体(クローンAF6-120.1) を全て、ファーミンジェン社 (PharMingen) (カリフォルニア州、サンディエゴ)から購入した。
マルチカラー・フローサイトメトリーにて一部変更を加えて、既述のように解析した。正常F1脾細胞を抗MHC抗体で染色し、陰性コントロール群と比較した結果、単峰性陽性像を得た。F1特異的MHCマーカーに対し、明らかな陰性を示す亜母集団としてGVHDマウスのドナー細胞を同定した。
(7)インターロイキン(IL)-4及びインターフェロン(IFN)-γに対するELISA:
抗マウスIL-4及びIFN-γモノクローナル抗体を用いたELISA (ジェンザイム社 (Genzyme)、マサチューセッツ州、ケンブリッジ) により、培養上清液のマウスIL-4及びIFN-γ値をメーカーのプロトコルに従って測定した。
(8)尿蛋白測定:
蛋白尿を尿検査用ディップスティックで半定量的に評価した (Albustix; Bayer Diagnostics, バイエル薬品、英国、ページングストーク)。
(9)血清IgG1及び抗ss-DNA抗体の測定:
各マウスから血清を採取し、血清IgG1値及び抗ssDNA抗体をELISAで測定した。すなわち、プレートコーティング及び2次抗体として各々、精製したラット抗マウスIgG1モノクローナル抗体 (A85-3、ファーミンジェン社)及びHRP標識ラット抗マウスIgG1 (ザイメッド社(Zymed)、カリフォルニア州、サンフランシスコ) を用い、標準蛋白としてマウスIgG1 (S1-68.1; ファーミンジェン社)を用いた。既述のように、抗ssDNA IgGの血清値をELISAで測定した (18)。すなわち、マイクロタイタープレートを、熱変性したウシ胸腺DNA (シグマ社 (Sigma)、ミズーリ州、セントルイス)でコーティングし、2%BSA-PBS中でブロックした後、1/50の希釈から開始し、2倍まで連続希釈した実験用マウス血清を加えた。その後、プレートをHRP標識抗マウスIgG (ザイメッド社) で反応させ、405 nmで光学密度(OD)を測定した。
(10)リンパ球混合培養反応 (MLR) 及びin vitroサイトカイン産生:
免疫磁気ビーズ (Miltenyi Biotec社、カリフォルニア州) を用いてCD4+ T細胞及びCD11c+ DCを脾細胞より精製した。CD4+及びCD11c+の純度は各々、90%超及び95%超であった。DBA/2 (H-2d) マウスから得たCD4+ T細胞 (4×106/ml/ウェル)を24ウェル平底プレート (ファルコンラブウェア社 (Falcon Labware)、ニュージャージー州、リンカーンパーク) でBDF1 (H-2b×d) マウスから得た照射 (20 Gy) CD11c+ DC (1×106/ml/ウェル)と共に培養した。72時間後、生存細胞 (1×105/200 μl/ウェル) を5 μg/ml抗CD3モノクローナル抗体でコーティングした96ウェル平底プレート(ファルコンラブウェア社、ニュージャージー州、リンカーンパーク)で刺激した。48時間後、培養上清液中の IL-4およびIFN-γ濃度をELISAで測定した。
(11)51Cr遊離法:
GVHD誘発後、第2週の慢性GVHDマウスから得た脾細胞を用いて、抗宿主CTL活性を試験した。脾細胞 (5×106/ml/ウェル)を照射 (20 Gy) BDF1脾細胞 (3×106/ml/ウェル)で5日間、刺激した。エフェクター細胞を回収し、4時間51Cr 遊離法によるEL-4 (H-2b) 細胞の溶解に基づき、CTL活性を評価した。又、急性GVHDマウスから得た脾細胞を用い、P815 (H-2b) 細胞溶解に基づいて、抗宿主 CTL活性を検査した。エフェクター細胞をエフェクター対ターゲット比を4段階で検査し、溶解率を [(標本cpm−自然cpm) / (最大cpm−自然cpm)]×100%の式で算出した。各投与群につき、所定のエフェクター対ターゲット比で結果を平均溶解率±SDとして算出した。
(12)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT-PCR):
ISOGEN (ニッポンジーン、日本、富山)をメーカーの説明書に従って用い、RNAを抽出し、2.5 μMのランダムヘキサマー (アプライドバイオシステム社 (Applied Biosystems Inc., 米国、カリフォルニア州、フォスターシティ)でcDNAを調製した。全量の25 μLに対し、リアルタイムの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT-PCR) を95℃で15秒間、60℃で1分間を40〜50サイクル実施し、IFN-γ及びIL-4 mRNA値を定量した。各実験群を3標本測定し、βアクチン発現に従って発現を標準化させ、相対発現レベルを決定した。使用したプライマーのシークエンスは、IFN-γのセンスTGGCTGTTTCTGGCTGTTACTG及び アンチセンスAATCAGCAGCGACTCCTTTTCC、IL-4 のセンスCCAGCTAGTTGTCATCCTGCTCTTCTTTCTCG及びアンチセンスCAGTGATGAGGACTTGGACTCATTCATGGTGC、βアクチンのセンス TGTGATGGTGGGAATGGGTCAG及びアンチセンス TTTGATGTCACGCACGATTTCCである。
(13)統計解析:
両側スチューデントt検定により、各群平均値を比較した。p < 0.05を統計的有意とみなした。
HGF投与によるIL-4 mRNAの発現低下効果
DBA/2脾細胞をBDF1マウスに注入すると、慢性GVHDの標的器官におけるIL-4 mRNA値の上昇にみられるように Th2が活性化された。慢性GVHDは抗IL-4モノクローナル抗体注入により抑制されるが、これはこの疾患においてIL-4が重要な役目を果たしていることを示すものである。そこで、慢性GVHDマウスの標的器官におけるIL-4及びIFN-γ mRNA発現レベルに対するHGF投与の効果について検討した。
IL-4及びIFN-γ mRNAの発現はGVHD誘発の2週間後、非投与慢性GVHDマウスの腎、肝および脾において増加した。HGF投与により、上記器官におけるIL-4 mRNAの発現は著明に抑制されたが、その一方で投与及び非投与慢性GVHDマウス間にIFN-γ mRNA発現レベルの有意な変化は見られなかった(図4)。
この結果は、HGFにより、Th2細胞の免疫反応が抑制されたことを示している。更に、この結果は、HGFが慢性GVHDマウスのループス腎炎、自己免疫性唾液腺炎及び胆管炎を減少させたことを示しており(図1、図2)、HGFがSLE (全身性エリテマトーデス)、SS (シェーグレン症候群) 及びPBC (原発性胆汁性肝硬変) 治療に有効であることを示すものである。
HGF投与による、宿主B細胞におけるMHCクラスIIの発現低下効果
慢性GVHDでは、宿主MHCクラスII抗原の認識により、持続的なドナーCD4+ T細胞活性化が必要とされる。これにより、主にTh2型サイトカインの分泌が生じ、自己抗体産生細胞へと分化する自己反応性B細胞が刺激される。HGFは、宿主B細胞上におけるMHCクラスII抗原の発現を減少させる。その結果ドナーCD4+ T細胞活性を抑制し、慢性GVHDマウスにおけるTh2型反応を減少させる可能性がある。そこで我々は、慢性GVHDモデルマウスにおけるHGFの宿主B細胞MHCクラスII発現に対する効果を検討した。非投与慢性GVHDマウスでは、宿主B細胞上に高値のMHCクラスII抗原の発現が認められたが、HGF投与慢性GVHDマウスの宿主B細胞の発現レベルは低下した(図5A)。このB細胞MHCクラスII発現低下がHGFの直接の作用によるものかどうかを知るために、我々はin vitroでB細胞のIL-4誘導MHCクラスII発現に対するHGFの効果を検討した。BDF1 B細胞をIL-4存在下、HGF添加又は非添加で培養し、培養の2日後にMHCクラスII発現を検討した。HGF添加は、B細胞MHCクラスII発現に影響を与えなかった(図5B)。
慢性GVHDマウスでは、ドナーDBA/2 CD4+ T細胞が宿主抗原提示細胞のMHC抗原に反応してTh2に分化し、宿主B細胞のMHCクラスII発現を誘発することが考えられる。そこで我々は、培養したDBA/2抗BDF1 MLR細胞がBDF1 B細胞上にMHCクラスII発現を誘発するかどうかを検討した。DBA/2 CD4+ T細胞をHGF存在下又は非存在下、20Gy照射BDF1 DCで3日間培養し、その後生存細胞をBDF1 B細胞と培養して、MHCクラスII発現を評価した。HGF非存在下、生存MLR細胞存在下でBDF1 B細胞のMHCクラスII発現は有意に増加したが、HGF存在下の発現レベル増加は認められなかった(図5B)。
この結果は、慢性GVHDマウスにおいて、HGF投与によりドナーDBA/2 T細胞のTh2への分化が抑制され、宿主BDF1 B細胞のMHCクラスIIの発現促進作用が抑制されることを示している。
HGF投与(in vitro)によるDBA/2 CD4+ T細胞からのTh2産生抑制効果
慢性GVHDマウスでは、ドナーDBA/2 CD4+ T細胞が宿主BDF1抗原提示細胞に反応し、Th2細胞に分化するところから、DBA/2抗BDF1 MLR (リンパ球混合培養試験) を実施し、HGFのTh1及びTh2産生に対する効果を検討した。DBA/2マウス由来のCD4+ T細胞をHGF存在下又は非存在下、BDF1マウス由来の20 Gy照射CD11c+ DCと培養した。培養の3日後、生存細胞を抗CD3モノクローナル抗体との培養により48時間刺激し、培養上澄液中のIL-4及びIFN-γ値をELISAで定量した。IL-4及びIFN-γ両者の産生がHGFにより抑制されたが、HGFの抑制効果はIFN-γ産生よりもIL-4産生に対して高かった(図6)。
この結果は、HGFがBDF1 DC (樹状細胞) 刺激によるDBA/2 CD4+ T細胞のTh2産生を抑制したことを示している。
HGF投与による、慢性GVHDマウスの脾B細胞数及び血清IgG1及び抗DNA抗体濃度の低下効果
HGF投与の慢性GVHDマウスでは、非投与慢性GVHDマウスよりも宿主B細胞数が35%低かった (図3A)。さらにHGF投与群では、血清IgG1及び抗ssDNA抗体濃度が著しく低下した (図3B及びC)。過去の複数の報告では、IL-12又はIL-18投与により慢性GVHDマウスの宿主B細胞を消失させるドナーの抗宿主CTLが誘発されることが示唆された。そこで、HGF投与により慢性GVHDマウスモデルにドナー抗宿主CTLが誘発されるかどうかについて検討した。ドナー抗宿主CTLを検査するため、GVHD誘発の14日後に回収した脾細胞を20 Gy照射BDF1脾細胞で5日間刺激し、51Cr標識EL-4 (H-2b) 又はP815 (H-2d) をターゲット細胞として用い、培養細胞の細胞傷害活性を分析した。非投与及びHGF投与慢性GVHDマウスの両者から得た脾細胞は、宿主型EL-4細胞に対して特異的なCTL活性を全く示さなかったが(図3D)、急性GVHDマウスから得た脾細胞は、宿主型P815細胞に対してCTL活性を示した。
この結果により、HGFはドナー抗宿主CTLを誘発せず、HGF投与の慢性GVHDマウスにおいて活性化宿主B細胞が減少したことの証明になることが明らかとなった。
以上の今までの実施例より、次のことが明らかになった。
(1)本発明で使用した慢性GVHDの一代雑種 (F1) マウスモデルは、ポリクロナール B細胞活性化、自己抗体産生及びCTL反応減少などのTh2介在の免疫反応を示し、これはループス様自己免疫疾患に非常によく似ている。Rusらによれば、Th2型サイトカイン分泌及びB細胞活性化は、急性及び慢性GVHDの早期の現象であると報告される。慢性GVHDへの移行は、CD8+ 抗宿主CTLが活性化した宿主B細胞を抹殺できなかったためと思われる。
慢性GVHDマウスに、Th1誘導サイトカインを投与した場合、例えばIL-12を初期に投与すると(慢性GVHD 誘発後、第0〜4日)、宿主抗体を産生するB細胞を消失させる抗宿主CTLが誘導され、それにより慢性GVHDが急性GVHDへと移行した。しかし、投与スケジュールに関係なく (慢性GVHD誘発後、第0〜5日又は第8〜13日に投与) 、IL-18投与は抗宿主CTLを産生したが急性GVHDは誘発されなかった。
Th1誘導サイトカイン投与とは対照的に、HGF投与ではin vivoで抗宿主CTLを誘導しなかった。Th1誘導サイトカインは、DBA/2抗BDF1 MLRにおいてDBA/2誘導Th1産生を誘発したが、HGF投与ではin vitroでTh1を誘導しなかった。しかし、HGF投与により、慢性GVHD標的器官でのIL-4 mRNA発現、脾B細胞の増加及び慢性GVHDマウスにおける自己抗体産生が抑制された。従って、HGFはTh1誘発よりもTh2産生抑制によりループス様自己免疫疾患を抑制すると思われる。
(2)慢性GVHDマウスにおいて、HGFがTh2介在反応を抑制するメカニズムは、HGFが宿主B細胞のMHCクラスII発現を抑制し、ドナーCD4+ T細胞に対する抗原提示低下を促すという考えが挙げられる。実際、本発明者は、HGF投与慢性GVHDマウス由来の宿主B細胞上のMHCクラスII発現低下を認めた。しかし、HGFをin vitroでDBA/2抗BDF1 MLRに添加すると、MLR生存細胞のBDF1 B細胞のMHCクラスII発現増加能力が抑制されるが、一方でHGFはIL-4誘発のB細胞MHCクラスII発現を抑制しないことから、HGFは宿主B細胞上のMHCクラスII発現を直接抑制するのではないことが示された。
(3)樹状細胞(DC)は、免疫系における反応及び耐性間のバランスを決定する上で重要な役割を果たし、BMT (骨髄移植) 後の宿主DCの発現持続は、重度の急性及び慢性GVHDの進行と相関している。DC成熟を増進する表皮基底層のCD40L過剰発現などの慢性的なDC活性化は、自己免疫性につながる。未熟なミエロイドDCは、T細胞のアレルギーを引き起こすシグナルを発する。修飾されたミエロイドDCは調節DCとして作用し、急性GVHDを予防する。
DBA/2 CD4+ T細胞及びBDF1 DCのDBA/2抗BDF1 MLRでは、HGF添加によりDBA/2 Th2の誘導が有意に抑制されるのが観察された。又、c-Met/HGFレセプターはDCにより発現し、CD4+ T細胞によって発現するのではないことが明らかになり、このことから、HGFはDCに作用し、そのTh2産生を抑制することが示された。
本発明により、HGFを有効成分とするTh2選択的免疫反応抑制剤などが提供される。本発明のTh2選択的免疫反応抑制剤はアレルギー疾患治療剤として例えば、喘息、アレルギー性皮膚炎等に有用であり、更には、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)あるいは原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療剤としても有用である。
ループス性腎炎の進行に対するHGFの治療効果を表す。Aでは、腎炎症候の進展に対するHGFの保護作用を尿蛋白の排出レベルの変化で示す。白丸はHGFを投与したGVHDを表し、黒丸は未投与のGVHDを表す。データは、同時に未投与のGVHDと比較して、平均±SE(n=10). *p<0.05、**p<0.01であった。Bでは、HGF投与、未投与のマウスから得られた腎臓組織の病理組織を表す。3週目に、腎臓の血管周囲に単核細胞の浸潤が見られる。また、糸球体腫脹、増殖した糸球体小葉、メサンギウムが過剰になった細胞質さらには細胞膜の肥厚によって糸球体腎炎になっていることがGVHD導入後の12週目に観察される。HGF投与により、顕著に病理学的な変化を阻害した。試料拡大率×200。
慢性GVHDマウスの肝臓と唾液腺における単核細胞浸潤に対するHGFの阻害効果を表す。慢性GVHDマウスは図1に記載のように処置され、GVHD導入後12週目に肝臓と唾液腺の組織病理を評価する。HGF投与により、慢性GVHDマウスの肝臓と唾液腺における単核細胞の浸潤は抑制された。試料拡大率×200。
慢性GVHDマウスでの宿主B細胞の活性化とドナー抗宿主CTL活性に対するHGFの効果を表す。図1に記載のように慢性GVHDマウスが処置された。Aでは、GVHD導入後2週目に、脾臓が摘出され、H-2Kb+B220+細胞をフロー・サイトメトリーで測定した。データは、一群4匹の平均±SDを表す。Bでは、GVHD導入後2週目に、血清IgG1濃度をELISAで測定した。データは、一群4匹の平均±SDを表す。Cでは、GVHD導入後2週目に、血清抗DNA Ab抗体濃度をELISAで測定した。データは、一群4匹の平均±SDを表す。Dでは、GVHD導入後2週目に、脾臓細胞を照射BDF1脾細胞で5日間刺激する。51Cr標識EL-4 (H-2b)ターゲット細胞に対するCTL活性を測定することにより、細胞毒性を評価する。急性GVHDマウスの脾臓を用いてP815 (H-2d)ターゲット細胞に対するCTL活性がポジテイブコントロールとして用いられた。データは、一群4匹の平均±SDを表す。
慢性GVHDマウスのサイトカイン遺伝子発現に対するHGFの効果を表す。図1に記載のように慢性GVHDマウスが処置された。GVHD導入後2週目に、脾臓、肝臓、腎臓が摘出され、IFN-γおよびIL-4mRNA発現がPT-PCR分析で測定された。データは、一群4匹の平均±SDを表す。HGF未投与のGVHDマウスと比較し、*p<0.05であった。
B細胞MHCクラスII発現に対するHGFの効果を表す。Aでは、図1に記載のように慢性GVHDマウスが処置された。GVHD導入後2週目に、脾臓が摘出され、B220+細胞のMHCクラスII(I-Ab)抗原の発現に関する平均蛍光強度が測定された。データは、一群4匹の平均±SDを表す。Bでは、ヒト組換HGF(10ng/ml)の存在下、あるいは非存在下で48時間、BDF1マウス由来のB220+細胞(2×106/ml)をマウス組換IL-4(10ng/ml)と共に培養した。B220+細胞におけるMHCクラスII(I-Ab)抗原の発現に関する平均蛍光強度が測定された。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。*P<0.05であった。Cでは、ヒト組換HGF(10ng/ml)の存在下、あるいは非存在下で、DBA/2(H-2d)マウス由来のCD4+T細胞(4×106/ml/well)をBDF1(H-2b×d)マウス由来の20Gy照射のCD11c+DC細胞(1×106/ml/well)と共に培養した。72時間後、生存している細胞(1×106/ml)をBDF1マウス由来のB220+細胞(2×106/ml)と共に48時間培養した。B220+細胞におけるMHCクラスII(I-Ab)抗原の発現に関する平均蛍光強度が測定された。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
DBA/2CD4+T細胞におけるTh2産生に関するHGFのインビトロ効果を表す。DBA/2(H-2d)マウス由来のCD4+ T細胞(4×106/ml/well)をHGF(10ng/ml)存在下又は非存在下、BDF1(H-2b×d)マウス由来の20Gy照射のCD11c+DC細胞(1×106/ml/well)と共に培養した。コントロールとして、DBA/2(H-2d)マウス由来のCD4+ T細胞(4×106/ml/well)をCD11c+DC細胞の刺激なしに培養した。72時間後、生存している細胞(1×105/200μ/well)を採取し、CD3モノクローナル抗体(5μg/ml)で48時間刺激した。培養上澄液中のIL-4(A)及びIFN-γ(B)の濃度をELISAで測定した。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。*p<0.05、**p<0.01であった。

Claims (10)

  1. 肝細胞増殖因子(HGF)を有効成分とする、2型Tヘルパー細胞(Th2)の選択的免疫反応抑制剤。
  2. HGFを有効成分として含む、Th2選択的免疫反応抑制作用による、Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患の治療又は予防剤。
  3. Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患がアレルギー性疾患である、請求項2記載の治療又は予防剤。
  4. アレルギー性疾患が喘息、アレルギー性皮膚炎又はアレルギー性鼻炎である、請求項3記載の治療又は予防剤。
  5. Th2免疫応答の異常亢進に起因する疾患を治療するための他の薬剤との併用に供する、請求項2〜4のいずれかに記載の治療又は予防剤。
  6. 併用される他の薬剤が、Th1免疫反応を増強する薬剤またはステロイド剤である請求項5記載の治療又は予防剤。
  7. HGFを有効成分とする、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)あるいは原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療剤。
  8. HGFを有効成分とする、樹状細胞(DC)のTh2産生抑制剤。
  9. HGFがHGF蛋白である、請求項1〜5のいずれか記載の免疫反応抑制剤。
  10. HGFがHGF遺伝子である、請求項1〜5のいずれか記載の免疫反応抑制剤。


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