以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、能動型防振装置に関する本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、パワーユニットの分担荷重と、防振すべき主たる振動が、何れも、エンジンマウント10の略軸方向(図1中、上下方向)に入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20によって構成されていると共に、第二の取付金具14は、外筒部材としてのダイヤフラムアウタ筒金具24と後述するブラケット部材としての筒状ブラケット142によって構成されている。また、本体ゴム弾性体16に対して本体ゴムインナ金具18と第一の環状固定部材としての本体ゴムアウタ筒金具22が加硫接着されて第一の一体加硫成形品26とされている一方、ダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、可撓性ゴム膜としてのダイヤフラム28に対して加硫接着されて第二の一体加硫成形品30とされており、これら第一及び第二の一体加硫成形品26,30が相互に組み合わされている。
ここにおいて、第一の一体加硫成形品26を構成する本体ゴムインナ金具18は、逆向きの略円錐台形状を有している。また、本体ゴムインナ金具18の上端面(大径側端面)には、嵌合凹部32が形成されていると共に、該嵌合凹部32の底面に開口するねじ穴34が設けられている。
更にまた、本体ゴムアウタ筒金具22は、略大径円筒形状を有する筒壁部36を備えており、この筒壁部36の軸方向下端部には径方向外方に向かって広がるフランジ状部38が一体形成されている一方、筒壁部36の軸方向上端部分は、軸方向上方に行くに従って次第に拡開するテーパ筒状部40とされている。これによって、本体ゴムアウタ筒金具22の外周側には、外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる第一の周溝42が形成されている。そして、本体ゴムアウタ筒金具22の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具18が略同一中心軸上で離隔配置されており、本体ゴムインナ金具18における逆テーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具22におけるテーパ筒状部40の内周面が相互に離隔して対向位置せしめられており、これら本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22との対向面間が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の円錐台形状を有しており、そのテーパ状外周面の一部に対して、軸方向に略直線的に延びるスロープ44が形成されている。また、その中央部分には、本体ゴムインナ金具18が同軸的に配されて加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面に対して本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ筒状部40が重ね合わせられて加硫接着されている。これによって、本体ゴム弾性体16が、上述の如き本体ゴムインナ金具18および本体ゴムアウタ筒金具22を備えた第一の一体加硫成形品26として形成されている。
また一方、第二の一体加硫成形品30を構成するダイヤフラムインナ金具20は、厚肉の円板形状を有している。また、ダイヤフラムインナ金具20の下面には、嵌合凸部46が形成されていると共に、該嵌合凸部46の形成部位を貫通して挿通孔48が形成されている。更にダイヤフラムインナ金具20には、上方に突出して取付板部50が一体形成されており、取付板部50の中央部分にはボルト挿通孔52が設けられている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具24は、薄肉大径の円筒形状を有しており、その軸方向上側の開口部には、径方向外方に向かって広がる取付用板部54が一体形成されている。なお、取付用板部54には、複数の挿通孔が形成されており、それらの挿通孔に対してそれぞれ固定ボルト56が植設されている。更にまた、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向下側の開口部には、径方向外方に向かって広がる円環板形状のフランジ状部58が一体形成されており、更に、フランジ状部58の外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する円環状のかしめ片60が一体形成されている。
そして、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上方に離隔して、ダイヤフラムインナ金具20が、略同一中心軸上に配設されており、それらダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、ダイヤフラム28によって連結されている。
ダイヤフラム28は、薄肉のゴム膜によって形成されており、容易に弾性変形が許容されるように大きな弛みを持った湾曲断面形状をもって周方向に延びる略円環形状を有している。そして、ダイヤフラム28の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具20の外周縁部に対して加硫接着されていると共に、ダイヤフラム28の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上側の開口部に加硫接着されている。これにより、ダイヤフラム28は、ダイヤフラムインナ金具20およびダイヤフラムアウタ筒金具24を備えた第二の一体加硫成形品30として形成されている。
而して、かかる第二の一体加硫成形品30が、前述の第一の一体加硫成形品26に対して上方から重ね合わせられて組み付けられており、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18に固着されていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24が本体ゴムアウタ筒金具22に固着されており、更にダイヤフラム28が、本体ゴム弾性体16の外方に離隔して、本体ゴム弾性体16の外周面を全体に亘って覆うようにして配設されている。
すなわち、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18の上面に直接に重ね合わされて、ダイヤフラムインナ金具20の嵌合凸部46が本体ゴムインナ金具18の嵌合凹部32に嵌め込まれることによって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が同一中心軸上に位置合わせされている。また、特に本実施形態では、嵌合凸部46と嵌合凹部32の各外周面に切欠状に形成された係合外周面62と係合内周面64の係合作用によって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が周方向でも相互に位置決めされており、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔48と本体ゴムインナ金具18のねじ穴34が位置合わせされている。
そして、図1に示されているように、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20を重ね合わせた状態下で、連結ボルト66が、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔48を通じて本体ゴムインナ金具18のねじ穴34に螺着されている。而して、これら本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20が連結ボルト66で連結固定されることにより、第一の取付金具12が構成されている。
一方、ダイヤフラムアウタ筒金具24は本体ゴムアウタ筒金具22に対して軸方向上方から外挿されている。また、本体ゴムアウタ筒金具22は、その下端部において、フランジ状部38の外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のフランジ状部58に対して軸方向に重ね合わされていると共に、その上端部において、テーパ筒状部40の開口端縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面に対して径方向で重ね合わされている。
そして、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部38の外周縁部に対して、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ片60がかしめ固定されることによって、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24が相互に固定されて組み付けられており、本体ゴム弾性体16の大径側端部が本体ゴムアウタ筒金具22を介して第二の取付金具14に固着されている。
さらに、本体ゴムアウタ筒金具22の下側開口部には、蓋部材68が組み付けられている。蓋部材68は、略円環板形状の支持ゴム弾性体70に対して、その外周部分に第二の環状固定部材としての環状保持金具72が加硫接着されていると共に、その中央部分に加振部材としての加振板74が加硫接着されており、それら加振板74と環状保持金具72が支持ゴム弾性体70で弾性的に連結されている。
環状保持金具72は、略円環板形状とされた取付板部76の外周縁部に下方に突出する円環状の圧入部78が一体形成されている一方、取付板部76の内周縁部には、周方向に一周弱の所定長さで延びる溝状部80が一体的に形成されている。溝状部80は外周側壁部82と底壁部84と内周側壁部86を含んで構成されている。外周側壁部82は、取付板部76の内周縁部から下方に延び出すように形成されており、略筒状とされている。また、底壁部84は、外周側壁部82の下端縁部から径方向内周側に向かって略軸直角方向に広がる略円環板形状とされている。更に、底壁部84の内周側端部には、軸方向上方に向かって突出する略円筒形状の内周側壁部86が一体的に形成されている。これにより、溝状部80において、軸方向上方に向かって開口せしめられて、周方向に一周弱の所定の長さで延びる第二の周溝88が形成されている。なお、本実施形態における環状保持金具72は、略円環板形状の金属板をプレス成形すること等により、溝状部80や圧入部78が有利に形成され得る。
一方、加振板74は、円板形状を有しており、その外周縁部には上方に向かって突出する環状連結部90が一体形成されている。また、加振板74の中央部分には、下方に向かって延びる連結ロッドとしての駆動軸92が一体形成されている。なお、加振板74は、環状連結部90や駆動軸92を含んで、金属や合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。
そして、環状保持金具72の径方向内方に離隔して略同一中心軸上に加振板74が配設されており、これら環状保持金具72と加振板74の径方向対向面間に広がるようにして支持ゴム弾性体70が配設されている。また、かかる支持ゴム弾性体70は、その内外周縁部が加振板74の環状連結部90と環状保持金具72の溝状部80の対向面に対してそれぞれ加硫接着されており、加振板74と環状保持金具72の間が支持ゴム弾性体70で流体密に閉塞されている。なお、支持ゴム弾性体70と一体的に形成されたシールゴムにより第二の周溝88が略全面に亘って被覆されている。
また一方、加振板74を構成する駆動軸92は、蓋部材68の軸方向下方(図1中、下)に配設されたアクチュエータとしての電磁式加振器94に接続されている。この電磁式加振器94は、略カップ形状のハウジング96内に、コイル98が収容状態で固定的に組み付けられていると共に、コイル98の周りには、それぞれ環状の強磁性体からなる上下ヨーク100,102が固定的に組み付けられて磁路が形成されている。また、磁路を形成する上側ヨーク100の内周面には、ガイドスリーブ104が弾性的に位置決めされて装着されている。そして、アーマチャとしての強磁性体からなる滑動子106が、ガイドスリーブ104内を滑動可能に組み付けられている。
略有底円筒形状を呈するハウジング96は、その底部に上下ヨーク100, 102を固定的に収容配置していると共に、その開口部分が上側ヨーク100の上端部よりも上方に所定長さで延びている。また、ハウジング96の開口部分には、径方向外方に拡がる環状の取付フランジ部108が一体的に形成されている。更に、ハウジング96の開口部の内径寸法が、環状保持金具72の外周側壁部82の外径寸法よりも僅かに大きくされている。更にまた、ハウジング96の取付フランジ部108の外径寸法が、環状保持金具72の圧入部78の内径寸法よりも小さくされている。
また、滑動子106は全体として略円筒形状を有しており、外周面においてガイドスリーブ104に摺動可能とされて、上下ヨーク100,102間に形成された磁気ギャップの領域に配設されており、コイル98に通電することにより磁力が及ぼされて、ガイドスリーブ104で案内されつつ軸方向に駆動されるようになっている。また、滑動子106は、軸方向に延びる挿通孔110を有する全体として略円筒形状を有しており、外周面においてガイドスリーブ104に摺動可能とされている一方、内周面には、環状の係合突部112が内方に向かって突出形成されている。
そして、電磁式加振器94の中心軸上で上方から差し入れられた加振板74の駆動軸92が、滑動子106の係合突部112に挿通されていると共に、駆動軸92の係合突部112に挿通された先端部分には位置決め部材としての位置決めナット114が螺着されて、滑動子106が駆動軸92から抜け出し不能に支持されている。また、駆動軸92には付勢手段としてのコイルスプリング116が外挿されて、加振板74と滑動子106の係合突部112の対向面間に跨がって配設されている。即ち、位置決めナット114を駆動軸92にねじ込み、滑動子106の係合突部112を介して、加振板74との間でコイルスプリング116を圧縮せしめることにより、滑動子106はコイルスプリング116によって抜け出し不能に支持されている。これにより、滑動子106は駆動軸92に対して軸方向に固定的に位置決めされている。
なお、本実施形態においては、コイルスプリング116の両端には、カラー部材118,118が冠着されており、コイルスプリング116と他部材との擦れによる磨耗を軽減している。而して、駆動軸92と滑動子106は、コイルスプリング116の付勢力で軸方向において実質的に固着状態で連結されて、コイル98への通電で滑動子106に作用せしめられる駆動力が駆動軸92に及ぼされるようになっている。
また、位置決めナット114には、滑動子106の係合突部112に重ね合わされる面において、径方向に連続して延びる凹溝120が形成されている。かかる凹溝120によって、位置決めナット114が駆動軸92に取り付けられた状態下で、位置決めナット114と滑動子106の係合突部112との重ね合わせ面間には、凹溝120によって連通路が形成されており、この連通路を通じて、滑動子106の上下の空間が相互に連通状態に維持されて、密閉空間での空気ばねによる影響が回避されるようになっている。
なお、位置決めナット114の外周縁部と滑動子106との対向面間には僅かな間隙が形成されており、滑動子106は駆動軸92に対して軸直角方向の滑り変位が許容される状態で位置決めナット114と重ね合わされて当接状態に保持されている。これにより、各部材の製造上の寸法誤差や組み付け時の位置決め誤差等に起因する駆動軸92と滑動子106との相対的な位置ずれを有利に吸収することが出来て、滑動子106をコイル98に対して軸直角方向に安定して位置決めすることが出来る。また、アクチュエータ作動時における一時的な軸ずれも有利に吸収されることとなって、安定した作動特性を得ることが出来るのである。なお、かかる軸直角方向の相対変位の許容量としては、0.2mm〜3mmの範囲が好適に採用される。
そして、電磁式加振器94のハウジング96の底壁部中央には、透孔122が貫設されており、滑動子106に対向位置せしめられて磁力を及ぼす下側ヨーク102が外部に露呈されている。そして、透孔122を通じて滑動子106の中心孔124に六角レンチ等の工具を差し入れて、位置決めナット114乃至は位置決めナット114の中央に締め込まれたロックボルト126を操作することにより、滑動子106の駆動軸92に対する位置を外部から調節することが出来るようになっている。
また、ハウジング96の透孔122を通じて外部に露出されている下側ヨーク102の中心孔128の軸方向下側の開口部には、周方向に連続して延びる複数条の溝部からなる取付口130が設けられており、この取付口130に対して蓋板部材132が配設されている。蓋板部材132は、硬質のベース板134の表面にゴム層136が被着形成された構造とされて、取付口130に嵌め入れられると共に、取付口130の端部に弾性を利用して係合された略平面視C字状の板ばね138に支持されることによって、取付口130に着脱可能に取り付けられている。これにより、下側ヨーク102の中心孔128が、ゴム層136を介したベース板134で流体密に覆蓋されている。また、ゴム層136が加振板74の駆動軸92の先端面に対して軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていることによって、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に大きな振動荷重が入力されて駆動軸92が蓋板部材132に当接される際に、駆動軸92の先端がゴム層136を介してベース板134に当接されることに基づいて、加振板74の変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
さらに、下側ヨーク102の中央部分は、山形に厚肉とされた中央突部140とされており、この中央突部140が、ガイドスリーブ104に対して下方から入り込んでいる。
なお、下側ヨーク102は、ハウジング96と上側ヨーク100に対して磁気的に接続されており、それらハウジング96と上側ヨーク100と協働して、コイル98の周りに延びる環状の磁路を形成している。また、この磁路には、コイル98の中心孔内において、上側ヨーク100と下側ヨーク102の間に磁気ギャップが形成されており、この磁気ギャップに相当する位置にアーマチャである滑動子106が配設されている。かかる滑動子106は、上側ヨーク100に対してガイドスリーブ104を挟んだ内周側において、下側ヨーク102から上方に所定距離だけ離隔して位置せしめられている。
これにより、周方向に巻回されたコイル98に通電すると、磁気ギャップを形成する上下ヨーク100,102の対向面間に対峙する磁極が生ぜしめられるようになっている。そして、かかる磁気ギャップに配設された滑動子106に対して、磁気抵抗を最も小さくする方向への駆動力、即ち下側ヨーク102に向かう軸方向の駆動力が及ぼされるようになっているのである。そして、滑動子106に及ぼされる駆動力に基づいて加振板74に軸方向での加振駆動力が及ぼされるようになっている。
更にまた、電磁式加振器94の径方向外方を取り囲むようにブラケット部材としての筒状ブラケット142が配設されている。筒状ブラケット142は、全体として略円筒形状を有しており、その軸方向一方(図1中、上)の開口部に径方向外方に向かって延び出して広がる上部フランジ144が一体形成されていると共に、軸方向他方(図1中、下)の開口部側が軸方向下方に行くに従って次第に拡開せしめられたテーパ脚部146とされている。なお、本実施形態においては、筒状ブラケット142が車両ボデー側にボルト固定等によって取り付けられることにより、第二の取付金具14が車両ボデー側に固定されている。
これら蓋部材68と電磁式加振器94と筒状ブラケット142は、何れも、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ片60によってかしめ固定されている。即ち、蓋部材68の環状保持金具72における取付板部76及び圧入部78と電磁式加振器94のハウジング96における取付フランジ部108と筒状ブラケット142における上部フランジ144が軸方向で重ね合わせられていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24におけるフランジ状部58に軸方向下方から重ね合わせられた本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部38に対して、軸方向下方から重ね合わせられており、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部38と蓋部材68の取付板部76及び圧入部78と電磁式加振器94の取付フランジ部108と筒状ブラケット142の上部フランジ144が軸方向で重ね合わせられた状態で、ダイヤフラムアウタ筒金具24に一体形成されたかしめ片60でかしめ固定されることにより、蓋部材68と電磁式加振器94と筒状ブラケット142がダイヤフラムアウタ筒金具24に対して取り付けられている。これにより、本実施形態における第二の取付金具14がダイヤフラムアウタ筒金具24と筒状ブラケット142によって構成されている。また、このような取付状態下において、本実施形態における環状保持金具72は、本体ゴムアウタ筒金具22と略同軸状に配設されている。なお、本実施形態において、複数の部材を同軸状に配設するとは、それら複数の部材が略同一の中心軸を有するように配設されると共に、かかる中心軸に対する軸直角方向の投影において、少なくともそれらの部材の一部が重なり合うように配設されていることをいうものとする。
これにより、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部が、蓋部材68で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴム弾性体16と蓋部材68の対向面間には、非圧縮性流体が封入された主液室としての圧力変動作用室148が形成されている。この圧力変動作用室148は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて振動が入力されて圧力変動が惹起されるようになっている。
また、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム28が、それぞれの内周縁部と外周縁部において第一の取付金具12と第二の取付金具14に固着されることにより、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム28の対向面間には、非圧縮性流体が封入された副液室としての平衡室150が形成されている。即ち、この平衡室150は、壁部の一部が変形容易なダイヤフラム28で構成されており、ダイヤフラム28の弾性変形に基づいて容易に容積変化が許容されるようになっている。
なお、圧力変動作用室148や平衡室150に封入される非圧縮性流体としては、後述するオリフィス通路182を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を自動車用のエンジンマウント10に要求される振動周波数域で効率的に得るために、一般に、0.1Pa.s以下の低粘性流体が好適に採用される。
一方、圧力変動作用室148には、仕切部材としての仕切板金具152が配設されている。仕切板金具152は、軸直角方向に広がる厚肉の略円板形状を有しており、その外径寸法が、環状保持金具72における外周側壁部82よりも径方向外側まで至る大きさとされている。そして、その径方向外周部分が環状保持金具72の上面に重ね合わせられており、仕切板金具152が蓋部材68と略同一中心軸で蓋部材68の上方に配設されている。また、仕切板金具152の下面中央部分には、略逆すり鉢状の中央凹所154が形成されており、仕切板金具152の径方向中央部分が外周部分に比して薄肉とされた薄肉部156とされている。かかる中央凹所154によって仕切板金具152の径方向中央部分に形成された薄肉部156が加振板74の上方に離隔して位置せしめられている。また、仕切板金具152における薄肉部156には複数の連通路としてのオリフィス通孔158が軸方向で貫設されている。更に、仕切板金具152の下面外周部分には、軸方向下方に開口して周方向に一周弱の所定の長さで延びる蓋溝160が形成されている。更にまた、仕切板金具152の外周面には、その下端部から径方向外方に向かって延び出す薄肉円環板形状の固定フランジ部162が略全周に亘って一体形成されている。
そして、仕切板金具152は、その外周部分が蓋部材68の上面に重ね合わせられている一方、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部38と蓋部材68の取付板部76の間で固定フランジ部162が挟圧保持されると共に、外周面が本体ゴムアウタ筒金具22の筒壁部36に対してシールゴムを介して径方向で重ね合わせられることにより、圧力変動作用室148内で軸直角方向に広がるように取り付けられている。これにより、圧力変動作用室148が径方向中央部分において仕切板金具152を挟んで上下に二分されており、仕切板金具152を挟んで一方の側(図1中、上)が壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に圧力変動が惹起される受圧室164とされていると共に、他方の側(図1中、下)が壁部の一部が蓋部材68で構成されて、電磁式加振器94による加振力が作用せしめられる加振室166とされている。なお、加振板74の環状連結部90の付近には、環状連結部90を覆う形でストッパゴム168が形成されており、加振板74の仕切板金具152への接近方向の移動量が緩衝的に制限されると共に、当接時の衝撃や打ち当たり音が軽減されている。
さらに、これら受圧室164と加振室166は、仕切板金具152の薄肉部156に形成されたオリフィス通孔158を通じて相互に連通せしめられており、加振室166の壁部の他の一部を構成する蓋部材68が電磁式加振器94によって加振変位せしめられることによる加振力がオリフィス通孔158を通じて受圧室164に及ぼされるようになっている。
特に本実施形態では、オリフィス通孔158の直径と薄肉部156の厚さ寸法が適宜に設定されていることにより、オリフィス通孔158を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、能動的な防振効果を目的とする防振すべき振動の周波数以上に設定されており、能動的な防振効果を得るに際して、加振板74を防振すべき振動周波数域で加振駆動することで加振室166に生ぜしめられる圧力変動が、オリフィス通孔158を通じての流体流動によって受圧室164に対して効率的に伝達されるようになっている。しかも、加振室166に高次成分や高周波成分の圧力変動が惹起された場合には、オリフィス通孔158が流体の反共振的な作用によって実質的に閉塞せしめられて、そのような防振すべき振動周波数よりも高い周波数成分の圧力変動が加振室166から受圧室164に伝達することを抑えることが出来る。
また、本体ゴムアウタ筒金具22におけるフランジ状部38の外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のフランジ状部58に対して軸方向に重ね合わされていると共に、その上端部においてテーパ筒状部40の開口端縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面に対して径方向で重ね合わせられており、これらの重ね合わせ部位には、それぞれ、本体ゴム弾性体16またはダイヤフラム28と一体成形されたシールゴムが介在されて、流体密にシールされている。これにより、本体ゴムアウタ筒金具22に形成された第一の周溝42がダイヤフラムアウタ筒金具24で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴムアウタ筒金具22の筒壁部36とダイヤフラムアウタ筒金具24の径方向対向面間を周方向に所定長さで乃至は全周に亘って連続して延びる第一の環状流路としての外側環状流路170が形成されている。
また、仕切板金具152の外周部分に形成された蓋溝160の開口部が環状保持金具72の溝状部80の開口部が径方向で位置合せされており、互いに軸方向で重ね合わせられることにより、第二の周溝88の開口部が仕切板金具152によって流体密に覆われている。それによって、仕切板金具152の外周部分における蓋部材68の溝状部80と仕切板金具152の対向面間において、周方向に一周弱の所定長さで延びる第二の環状流路としての内側環状流路172が形成されている。
なお、本実施形態において、外側環状流路170は、内側環状流路172の径方向外方に形成されており、外側環状流路170と内側環状流路172が径方向で重なり合うように形成されている。また、本実施形態においては、外側環状流路170と内側環状流路172が、軸方向で重ね合わせられた本体ゴムアウタ筒金具22と環状保持金具72を利用してそれぞれ形成されていることにより、軸方向で互いにずれた位置に各環状流路170,172が形成されている。即ち、外側環状流路170の上壁面が内側環状流路172の上壁面よりも軸方向で上方に位置するように形成されていると共に、外側環状流路170の底壁面が内側環状流路172の底壁面よりも軸方向で上方に位置するように形成されている一方、外側環状流路170の底壁面が内側環状流路172の上壁面よりも軸方向で下方に位置するように形成されている。
ここにおいて、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24の対向面間に形成された外側環状流路170の周方向一方の端部と蓋部材68と仕切板金具152の外周部における対向面間に形成された内側環状流路172の周方向一方の端部が軸直角方向で略直線的に延びる接続流路174を通じて直列に接続されており、これによって、外側環状流路170と内側環状流路172を含んで構成された環状流路176が形成されている。
また、環状流路176の一方の端部が連通孔178を通じて受圧室164に接続されている。連通孔178は、仕切板金具152の下面に蓋溝160が形成されている径方向位置で蓋溝160の上底壁の一部に形成されており、仕切板金具152の上面に開口して環状流路176の一方の端部を受圧室164に連通せしめている。
一方、環状流路176の他方の端部は、連通窓180を通じて平衡室150に接続されている。連通窓180は、環状流路176の軸方向上方の壁面を構成する本体ゴムアウタ筒金具22においてテーパ筒状部40の一部が切り欠かれることにより形成されている。かかる連通窓180は、本体ゴム弾性体16のテーパ状側壁面に形成されたスロープ44の軸方向下端に接続されており、それによって連通窓180とスロープ44を通じて環状流路176の他方の端部が平衡室150に連通せしめられている。
これにより、環状流路176が受圧室164と平衡室150を相互に連通せしめて両室158,144間での流体流動を許容するオリフィス通路182が所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路182は、振動入力時に受圧室164と平衡室150の間に惹起される圧力差に基づいて内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が、例えばアイドリング振動等の特定の周波数域で有効に発揮されるように、その通路断面積や通路長さが適当に設定されてチューニングされている。
このような本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、外側環状流路170と内側環状流路172を接続流路174を通じて直列的に接続して形成された環状流路176を含んでオリフィス通路182が構成されている。それ故、オリフィス通路182の通路長を十分に長くすることが出来て、オリフィス通路182の通路長と通路断面積の比によって決定されるオリフィス通路182のチューニング周波数を広い設定自由度をもって設定することが出来る。
また、従来のエンジンマウントに比してオリフィス通路182の通路長を十分に長く確保することが出来るため、オリフィス通路182の通路長と通路段面積の比を変えることなく、通路断面積を拡大することが出来て、オリフィス通路182を通じて流動せしめられる流動流体量を有利に得ることが可能となる。それ故、オリフィス通路182を流動せしめられる流体の共振作用などに基づく防振効果を有効に発揮せしめることが可能となるのである。
また、本実施形態では、本体ゴムアウタ筒金具194を含んで外側環状流路170が形成されると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24と仕切板金具152の協働により内側環状流路172が形成されており、オリフィス通路182がこれら外側環状流路170と内側環状流路172を含んで構成されている。それ故、特別な部材を新たに設けることなく、巧くオリフィス通路182が形成されており、部品点数の増加に伴う製造の複雑化やコストの増大といった問題を回避することが可能である。しかも、既存の部材を活用してオリフィス通路182を形成することにより、装置の大型化といった問題も有利に回避できる。
更に、内側環状流路172の壁面の一部を構成する仕切板金具152が外側環状流路170の壁面を構成する本体ゴム弾性体16の軸直角方向内方に位置せしめられており、外側環状流路170と内側環状流路172が径方向で重なるように形成されている。これにより、オリフィス通路182を軸方向で有利に小型化することが出来て、オリフィス通路182の通路長延長に伴う装置全体の軸方向での大型化を有効に防ぐことが出来る。
しかも、耐久性に対する要求から、ある程度大きなゴムボリュームを有するように形成される本体ゴム弾性体16の大径側外周面に固着される本体ゴムアウタ筒金具22を利用して外側環状流路170を形成すると共に、振動入力時に圧力変動作用室148に惹起される圧力変動の弾性変形による吸収を低減するために比較的小さな径寸法で軸直角方向に広がるように形成される支持ゴム弾性体70の外周縁部に固着される環状保持金具72を利用して内側環状流路172を形成することによって、大幅な設計の変更を要することなく容易に外側環状流路170と内側環状流路172を径方向で異なる位置に形成して、これらの通路68,156を径方向で互いに重なり合うように形成することが出来るのである。
また、仕切板金具152が設けられることにより圧力変動作用室148が受圧室164と加振室166に仕切られており、受圧室164と加振室166がオリフィス通孔158によって相互に連通せしめられていると共に、オリフィス通孔158が防振すべき振動の周波数にチューニングされている。それ故、加振板74が防振すべき振動周波数域で加振駆動されることによって加振室166に生ぜしめられる圧力変動が、流体の共振作用によって、オリフィス通孔158を通じて受圧室164に対して積極的に伝達されることとなって、能動的な防振効果を効果的に発揮させることが出来る。
しかも、加振室166に惹起される高次成分や高周波数成分の振動が受圧室164に伝達されることをオリフィス通孔158における流体の反共振的な作用を利用して抑える有利に抑えることが出来て、かかるフィルタ効果により圧力変動作用室148において、防振すべき振動の周波数や波形に対して高度に対応した圧力制御を行うことが可能となり、能動的な防振効果が有効に発揮され得るのである。
次に、図2には、能動型流体封入式防振装置に関する本発明の第二の実施形態としての自動車のエンジンマウント184が示されている。このエンジンマウント184は、第一の取付部材としての第一の取付金具186と第二の取付部材としての第二の取付金具188が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具186が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具188が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、第一の取付金具186と第二の取付金具188の間には、パワーユニットの分担荷重と、防振すべき主たる振動が、何れも、エンジンマウント184の略軸方向(図2中、上下方向)に入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図2中の上下方向を言うものとする。また、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部位乃至は部材については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
より詳細には、第一の取付金具186は、本体ゴムインナ金具190とダイヤフラムインナ金具192によって構成されていると共に、第二の取付金具188は、外筒部材としてのダイヤフラムアウタ筒金具196によって構成されている。そして、本体ゴム弾性体16に対して本体ゴムインナ金具190と第一の環状固定部材としての本体ゴムアウタ筒金具194が加硫接着されて第一の一体加硫成形品198とされている一方、ダイヤフラムインナ金具192とダイヤフラムアウタ筒金具196が、可撓性膜としてのダイヤフラム28に対して加硫接着されて第二の一体加硫成形品200とされており、これら第一及び第二の一体加硫成形品198,200が相互に組み合わされている。
ここにおいて、第一の一体加硫成形品198を構成する本体ゴムインナ金具190は、逆向きの略円錐台形状を有しており、本体ゴムインナ金具190の上端面(大径側端面)の径方向略中央部分に肉抜凹部202が形成されている一方、上端面の外周縁部が全周に亘って嵌合段差部204とされている。即ち、本体ゴムインナ金具190の下部が逆向きの略円錐台形状を有する固着部206とされていると共に、上部が固着部206の大径側端部よりも小径とされた厚肉の略円筒形状を有する嵌合部208とされている。
更にまた、本体ゴムアウタ筒金具194は、略大径円筒形状を有する筒壁部210を備えており、この筒壁部210の軸方向上端部分は、軸方向上方に行くに従って次第に拡開するテーパ筒状部212とされていると共に、テーパ筒状部212の上端縁部には、軸直角方向外方に向かって広がる略円環板形状のフランジ状部214が一体形成されている。そして、本体ゴムアウタ筒金具194の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具190が略同一中心軸上で離隔配置されており、本体ゴムインナ金具190の固着部206における逆テーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具194におけるテーパ筒状部212の内周面が相互に離隔して対向位置せしめられており、これら本体ゴムインナ金具190と本体ゴムアウタ筒金具194との対向面間が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
また一方、第二の一体加硫成形品200を構成するダイヤフラムインナ金具192は、薄肉の略円環形状を有しており、その上端部が軸直角方向外方に屈曲せしめられている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具196は、筒状部216と取付板部218を含んで形成されている。筒状部216は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、その軸方向中間の一部に段差部220が形成されている。かかる段差部220は、軸直角方向に広がる略円環板形状を有しており、筒状部216における段差部220より軸方向下方の部分が大径部222とされている一方、段差部220より軸方向上方の部分が小径部224とされている。大径部222は、段差部220の外周側端縁部から軸方向下方に向かって延び出して形成されており、略円筒形状とされている。一方、小径部224は、段差部220の内周側端縁部から軸方向上方に向かって延び出して形成されており、大径部222に比して小径の略円筒形状を有している。また、小径部224の軸方向上端縁部には、取付板部218が一体形成されている。取付板部218は、軸直角方向で広がる略円環板形状であって、板厚方向に貫通された複数の固定ボルト挿通孔226が形成されている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具196の取付板部218には、樹脂ブラケット228が取り付けられている。かかる樹脂ブラケット228は略円筒形状であって、軸方向上端部に径方向外方に向かって広がる上部フランジ230が形成されている。そして、この上部フランジ230には、固定ボルト232が軸方向上方に向かって突設されており、かかる固定ボルト232がダイヤフラムアウタ筒金具196の取付板部218に形成された固定ボルト挿通孔226に対して位置決めされており、軸方向下方から挿通されるようになっている。そして、ダイヤフラムアウタ筒金具196の外周面に被着形成された圧入ゴム234によってダイヤフラムアウタ筒金具196が軸方向上方から樹脂ブラケット228に対して圧入されて取り付けられている。なお、樹脂ブラケット228に対してダイヤフラムアウタ筒金具196が取り付けられた状態で、軸方向上方に図示しないリバウンドストッパが配設されて、固定ボルト232によってボルト固定されることにより、樹脂ブラケット228と図示しないリバウンドストッパの間にダイヤフラムアウタ筒金具196の取付板部218が挟装されて、樹脂ブラケット228とダイヤフラムアウタ筒金具196が連結固定される。また、樹脂ブラケット228の軸方向下端部に配設された取付ナットに対して車両ボデー側に取り付けられた図示しない取付ボルトが螺着されることにより、第二の取付金具188が車両ボデー側に固定されている。
そして、ダイヤフラムアウタ筒金具196の軸方向上方に離隔して、ダイヤフラムインナ金具192が、略同一中心軸上に配設されており、ダイヤフラム28の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具192の外周縁部に対して加硫接着されていると共に、ダイヤフラム28の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具196の軸方向上側の開口部に加硫接着されている。これにより、ダイヤフラム28は、ダイヤフラムインナ金具192およびダイヤフラムアウタ筒金具196を備えた第二の一体加硫成形品200として形成されている。
而して、かかる第二の一体加硫成形品200が、前述の第一の一体加硫成形品198に対して上方から重ね合わせられて組み付けられており、ダイヤフラムインナ金具192が本体ゴムインナ金具190に固着されていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具196が本体ゴムアウタ筒金具194に固着されており、更にダイヤフラム28が、本体ゴム弾性体16の外方に離隔して、本体ゴム弾性体16の外周面を全体に亘って覆うようにして配設されている。
すなわち、ダイヤフラムインナ金具192が本体ゴムインナ金具190の嵌合部208に対して外挿されて径方向で相互に位置決めされると共に、ダイヤフラムインナ金具192の下端が本体ゴムインナ金具190の嵌合段差部204に重ね合わせられて軸方向で相互に位置決めされて連結固定されている。これによって、本体ゴムインナ金具190とダイヤフラムインナ金具192を含んで本実施形態における第一の取付金具186が構成されている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具196は本体ゴムアウタ筒金具194に対して軸方向上方から外挿されており、ダイヤフラムアウタ筒金具196に形成された段差部220が本体ゴムアウタ筒金具194のフランジ状部214に軸方向上方から重ね合わせられることにより、軸方向で相互に位置決めされている。
一方、第一の一体加硫成形品198の軸方向下方には、蓋部材236が組み付けられている。蓋部材236は、略円環板形状の支持ゴム弾性体70に対して、その中央部分に加振部材としての加振板74が加硫接着されていると共に、その外周部分に第二の環状固定部材としての環状保持金具238が加硫接着されており、それら加振板74と環状保持金具238が支持ゴム弾性体70で弾性的に連結されている。
環状保持金具238は、略円環板形状とされた取付板部240の外周縁部に軸方向上方に突出する略円筒形状の筒状部242が一体形成されている一方、取付板部240の内周縁部には、周方向に一周弱の所定長さで延びる溝状部80が一体的に形成されている。また、筒状部242の上端は、本体ゴムアウタ筒金具194のフランジ状部214に対して軸方向下方から重ね合わせられており、環状保持金具238が本体ゴムアウタ筒金具194に対して軸方向で相互に位置決めされている
そして、環状保持金具238の径方向内方に離隔して略同一中心軸上に加振板74が配設されており、これら環状保持金具238と加振板74の径方向対向面間に広がるようにして支持ゴム弾性体70が配設されている。また、かかる支持ゴム弾性体70は、その内外周縁部が加振板74の環状連結部90と環状保持金具238の溝状部80の対向面に対してそれぞれ加硫接着されており、加振板74と環状保持金具238の間が支持ゴム弾性体70で流体密に閉塞されている。なお、環状保持金具238及び加振板74は、その上面及び内周面が略全面に亘って支持ゴム弾性体70と一体的に形成されたシールゴムによって被覆されている。更に、環状保持金具238における筒状部216の外周面には支持ゴム弾性体70とは別体として形成された挟圧ゴム層244が被着形成されている。
また、蓋部材236の軸方向下方には電磁式加振器94が配設されており、かかる電磁式加振器94におけるハウジング96が環状保持金具238における取付板部240及び外周側壁部82に対して重ね合わせられることにより、電磁式加振器94と蓋部材236が相互に位置決め固定されている。
このように、第一の一体加硫成形品198と環状保持金具238と電磁式加振器94が相互に位置決めされた状態で、軸方向上方から第二の一体加硫成形品200が外挿状態で嵌め付けられる。即ち、本体ゴムインナ金具190に対してダイヤフラムインナ金具192が外嵌固定される一方、本体ゴムアウタ筒金具194の軸方向上方から外挿されたダイヤフラムアウタ筒金具196は、上述の如く、その段差部220が本体ゴムアウタ筒金具194のフランジ状部214に対して軸方向上方から重ね合わせられることにより軸方向で相互に位置決め固定されている。更に、ダイヤフラムアウタ筒金具196の大径部222が本体ゴムアウタ筒金具194のフランジ状部214と環状保持金具238の筒状部216と電磁式加振器94のハウジング96における取付フランジ部108に対して外挿されており、かかる外挿状態において、ダイヤフラムアウタ筒金具196の大径部222に対して八方絞り等の縮径加工が施されることにより、本体ゴムアウタ筒金具194と環状保持金具238と電磁式加振器94に対してダイヤフラムアウタ筒金具196が固着されている。これにより、本体ゴムアウタ筒金具194を介して本体ゴム弾性体16が本実施形態における第二の取付部材としてのダイヤフラムアウタ筒金具196に対して固着せしめられている。
これにより、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム28の対向面間に流体密な領域が形成されており、かかる領域に非圧縮性流体が封入されることにより、壁部の一部がダイヤフラム28で構成されて容積変動が容易に許容される平衡室150が形成されている一方、本体ゴム弾性体16と蓋部材236の対向面間に流体密な領域が形成されており、かかる領域に非圧縮性流体が封入されることにより、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて振動入力時に圧力変動が惹起される主液室としての圧力変動作用室148とされている。
また、圧力変動作用室148には、軸直角方向に広がるように仕切板金具246が配設されている。仕切板金具246は、厚肉の略円板形状を有しており、その外径寸法が、環状保持金具238における外周側壁部82まで至る大きさとされている。そして、その径方向外周部分が環状保持金具72の上面に重ね合わせられており、仕切板金具246が蓋部材236と略同一中心軸で蓋部材236の上方に配設されている。また、仕切板金具246の上面中央部分に大径の円形凹所である上面凹所248が形成されていると共に、下面中央部分には、略逆すり鉢状の下面凹所250が形成されており、それによって、仕切板金具246の径方向中央部分が薄肉部252とされている。また、仕切板金具246の径方向外周側端部には、軸方向下方に開口する蓋溝254が一周弱の長さで周方向に延びるように形成されている。更に、薄肉部252には、厚さ方向に貫通して形成されたオリフィス通孔158が形成されている。更にまた、仕切板金具246の上面外周縁部には、略全周に亘って延びる係合段差部256が形成されている。
そして、仕切板金具246は、環状保持金具238の上面にその外周部分が重ね合わせられていると共に、その上面外周縁部に形成された係合段差部256に対して、本体ゴムアウタ筒金具194の筒状部216の下端が軸方向で重ね合わせられており、もって、仕切板金具246は、環状保持金具238と本体ゴムアウタ筒金具194の軸方向間に挟装されて軸直角方向に広がっている。これにより、圧力変動作用室148が仕切板金具246を挟んで軸方向一方の側(図2中、上)が本体ゴム弾性体16で壁部の一部が構成された受圧室164とされていると共に、他方の側(図2中、下)が壁部の一部が蓋部材236で構成された加振室166とされており、これら両室160,162がオリフィス透孔142を通じて連通せしめられている。なお、係合段差部256に対して本体ゴムアウタ筒金具194の筒状部216の下端が重ね合わせられていることによって、仕切板金具246は本体ゴムアウタ筒金具194に対して径方向で位置決め固定されている。
ここにおいて、本体ゴムアウタ筒金具194と環状保持金具238の筒状部216及び取付板部240と仕切板金具246がシールゴム層によって流体密に組み合わせられており、周方向に所定の長さで延びる第一の環状流路としての外側環状流路258が形成されている。更に、環状保持金具238における溝状部80と仕切板金具246における蓋溝254の開口部が相互に重ね合わせられることにより、周方向に所定の長さで延びる第二の環状流路としての内側環状流路260が形成されている。そして、内側環状流路260の外周側の側壁面の一部に貫通形成された接続流路262によって、これらの環状流路252,254が直列的に接続されており、環状流路264が構成されている。また、環状流路264の一方の端部が連通孔178を通じて受圧室164に連通せしめられていると共に、他方の端部が連通窓180を通じて平衡室150に連通せしめられており、受圧室164と平衡室150を相互に連通せしめるオリフィス通路266が環状流路264を含んで構成されている。なお、本実施形態におけるオリフィス通路266においても、前記第一の実施形態と同様に、振動入力時に受圧室164と平衡室150の間に惹起される圧力差に基づいて内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が、例えばアイドリング振動等の特定の周波数域で有効に発揮されるように、その通路断面積や通路長さが適当に設定されてチューニングされている。
このような本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント184においても、前記第一の実施形態に係る自動車用エンジンマウント10において発揮された種々の効果と同様の効果を有効に得ることが可能とされている。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一,第二の実施形態では、圧力変動作用室148内で軸直角方向に広がるように仕切板金具152,246が配設されており、仕切板金具152,246を挟んで圧力変動作用室148が受圧室164と加振室166に二分されていたが、このような仕切板金具152,246は必ずしも必要ではない。また、仕切板金具152,246の具体的な構造は前記第一,第二の実施形態における例示によって何等限定されるものではない。
また、本体ゴムアウタ筒金具22,194や環状保持金具72,238の具体的な形状は、前記各実施形態における具体的な例示によって何等限定されるものではなく、それらの金具22,72(194,238)を利用して外側及び内側環状流路170,172(258,260)がそれぞれ形成されると共に、それらの環状流路170,172(258,260)が直列的に接続されてオリフィス通路182(266)が構成されていれば良い。更に、それら本体ゴムアウタ筒金具22,194や環状保持金具72,238の材料は金属に限定されるものではなく硬質の樹脂等、各種の材料が適宜に採用され得る。
さらに、電磁式加振器の具体的構造は、何等限定されるものでない。例えば、例示の構造の他、軸直角方向に広がるプレート状の磁力作用部分を備えたアーマチャ乃至はプランジャを有する電磁式加振器なども、本発明において同様に採用可能である。更にまた、加振器は必ずしも電磁式でなくても良く、空気圧式の加振器なども選択されて採用され得る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。