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JP2006169341A - 情報化核酸含有インキ組成物 - Google Patents

情報化核酸含有インキ組成物 Download PDF

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JP2006169341A JP2004362170A JP2004362170A JP2006169341A JP 2006169341 A JP2006169341 A JP 2006169341A JP 2004362170 A JP2004362170 A JP 2004362170A JP 2004362170 A JP2004362170 A JP 2004362170A JP 2006169341 A JP2006169341 A JP 2006169341A
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博志 横山
Masahiko Yamanaka
雅彦 山中
Kentaro Watanabe
健太郎 渡邉
Tsunehiko Higuchi
恒彦 樋口
Shigeki Hirabayashi
茂樹 平林
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Abstract

【課題】どのような出所・履歴の製品であるかを個別具体的に特定できる情報化核酸を含有した情報化核酸含有インキ組成物及びこれを用いた印刷物を提供すること。
【解決手段】任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有する情報化核酸含有インキ組成物。
任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有し、該情報化核酸が微粒子に担持されている情報化核酸含有インキ組成物。
任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有する情報化核酸含有インキ組成物を用いて得られる印刷物。
【選択図】なし

Description

本発明は、情報化核酸含有インキ組成物に係り、更に詳細には、個別認証に利用できる情報化核酸を含有するインキ組成物及びこれを用いて得られる印刷物に関する。
従来から、個別認証には、ナンバープレート、紙幣などの透かし印刷、ICチップ及びクレジットカードの写真などが利用されている。
しかし、これらの個別認証手段は、剥離、切断、消去などにより製品から除去することができるという欠点があった。このため、製品から取り除くことのできない、即ち消失しない認証情報の開発が期待されていた。
一方、DNAは、元来全ての生物が保有し、それぞれの生物において、全ての遺伝情報を含む情報生体分子である。その多くは多数のタンパク質のアミノ酸配列に対応するものである。即ち、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシトシン(dC)及びデオキシチミン(dT)がリン酸エステル結合を介し一定の方向性をもって結合して成り、その塩基数をn個とすると、その長さのDNAは4種類存在することになる。従って、例えばわずか16種類の塩基数でも約43億種類のそれぞれ区別できるDNAが存在し得る。現在では、数十塩基配列を有するDNAであれば、どのような配列のものでも任意に合成することができる。また、DNAは、ある程度以上の量があれば、自動配列読み取り装置(シーケンサー)で自動的にその配列を決定することができる。
このような背景から、水不溶性媒体にDNAを含ませた偽造防止ラベルを製品に用いることにより、該DNAの存在・不存在を手掛かりにして、その製品の真偽を明らかにすることが提案されている(特許文献1参照。)。
特開2004−159502号公報
しかし、特許文献1に記載の技術は、基本的にはDNAと水不溶媒体の混合方法に係るものであり、製品の真偽確認方法としては、PCR法によるリボ核酸の増幅の有無を確認することにより、リボ核酸入りの対象製品を同定することが示されているに過ぎない。
また、DNAの存在・不存在を検定指標とする真偽確認データは元より、DNAの配列を検定指標とし、同種製品であっても個々の製品毎の認証を可能とする、個別認証に関するデータは開示されていない。
一方、自動車事故において加害者が逃走したときなどには、事故現場に残された塗膜片やガラス片、プラスチック片などから対象車両を特定したいという要請がある。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、どのような出所・履歴の製品であるかを個別具体的に特定できる情報化核酸を含有した情報化核酸含有インキ組成物及びこれを用いて得られる印刷物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、DNAに代表される核酸を一つの認証情報としてとらえ、製品中の情報化核酸を後から検出することなどにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の情報化核酸含有インキ組成物は、任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有するインキ組成物である。
また、本発明の印刷物は、上記本発明の情報化核酸含有インキ組成物を用いて得られるものである。
本発明によれば、工業製品などの量産品であっても、微量に含まれる情報化核酸の塩基配列を決定することにより、対象となる製品を個別的に認証できる。
以下、本発明の情報化核酸含有インキ組成物について詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「%」は特記しない限り質量百分率を示す。
上述の如く、本発明の情報化核酸含有インキ組成物は、任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有するインキ組成物である。
ここで、情報化核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)及びこれらの誘導体をいい、天然型でも人工型でもよいが、使用環境が厳しいインキ組成物中に含めることを考慮すると、構造的に安定している人工型を使用するのが好ましい。人工型においては天然型には存在しない配列を形成できる。
また、情報化核酸において、塩基配列部位が任意であるとは、検出可能な塩基配列である限り無作為に選択され得ることを示し、塩基配列部位が既知であるとは、個別認証に用いられる塩基配列が予め把握されていることを示す。
このようなインキ組成物は、除去することが困難な情報化核酸を含有するため、個別具体的に認証することができる。
なお、インキ組成物としては、従来公知のものを使用することができ、その構成としては、例えば顔料やビヒクル、添加剤を適宜混合したインキ組成物を挙げることができる。 顔料としては、無機顔料や有機顔料などを特に限定されることなく用いることができる。 また、ビヒクルとしても、天然若しくは合成樹脂や植物油若しくは鉱油などを使用することができ、更に、添加剤として、流動性調整剤や乾燥調整剤、用途加工調整剤などを用いることができる。
更に、インキ組成物は、着色透明であっても、着色不透明であってもよい。
更にまた、インキ組成物は、溶剤系や水系、粉体系インキであってもよく、溶剤型インキから形成してもよいし、粉体インキから形成してもよい。溶剤型インキとしては、一液型又は二液型樹脂を用いてもよい。
本発明において、用いられる情報化核酸は、特に限定されるものではないが、情報化核酸の含有量が、インキ固形分100gに対して、0.5〜500μgであることが好ましく、50〜100μgであることがより好ましい。
0.5μgより少ない場合には、インキ組成物ないし被印刷体に固定された印刷物から情報化核酸を検出し、塩基配列を決定することができない可能性があり、500μgを超える場合には、水分がインキ組成物ないし印刷物に浸透したときに色味が変化する可能性が高くなる。
ここで、「インキ固形分」とは、情報化核酸含有インキ組成物を用いて、従来公知の方法により印刷した際に被印刷体に固定された印刷物を形成する固形分をいう。
また、本発明において、情報化核酸の大きさは、核酸全体における塩基数が200以下であることが好ましい。200を超えると合成の段階でごくわずかずつ未反応部位が生成し、塩基が欠けたものの含有量が増大し易い。より好ましくは100塩基程度であることが良い。
更に、上記塩基配列においてチミン同士が隣接しないことが好ましい。これより、チミンがダイマー化するのを抑制できる。
また、本発明において、情報化核酸は、OH基と反応する化合物と併用する場合や厳しい環境下で使用される場合の安定性を向上させる観点から、保護基により誘導化されていることが好ましい。具体的には、5´位、3´位のいずれか一方又は双方にある水酸基を、リン酸エステル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ベンジル基、置換ベンジル基及びアリル基などを用いて誘導化することができる。図1の(A)に天然型DNA、(B)に5´位を誘導化したDNAを示す。
更に、単離や精製の利便性を高める観点から、5´位の水酸基をビオチン又は蛍光分子により誘導化することが好ましい。具体的には、ビチオンを用いるとアビジンというタンパク質を結合したカラムに選択的に吸着され易くなる。一方、フルオレセインなどの蛍光分子を用いると核酸自体が蛍光をもつようになるため、感度よく検出でき精製等が容易になる。このように、単離や精製の利便性を高めると、個別認証が極めて容易になる。
更にまた、例えば5´位を硫黄に置換した場合には、水で抽出したものを更に金(Au)をコーティングした担体のカラムを通すことで容易に分離をすることができる。
なお、情報化核酸としてRNAを用いるときは、安定性を向上させる観点から2´位の水酸基を上記保護基により誘導化することもできる。
また、情報化核酸を抽出して個別認証をする場合において、少ない含有量でも効率良く検出されるようにする観点から、上記塩基配列部位が該情報化核酸の増幅に用いられる部位であることが好ましい。かかる情報化核酸の増幅方法としては、相乗的に増幅させることのできるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を適宜採用することができる。
上記PCR法では、情報化核酸が極微量であっても極度に増幅することができ、例えば、DNAの末端数十塩基と相補的な塩基(プライマー)の存在下に温度制御を行いつつ、耐熱性のDNAポリメラーゼを作用させると、元のDNAを倍増させることができる。例えば、これを30回繰り返せば、数億倍に増幅させることができる。
このような増幅によって微量のサンプルからでもその配列を決定するのに十分な量のDNAを得ることができるようになり、延いては配列に対応する情報からそれが含まれていた製品の「身元」が判明することになる。
また、このとき、上記増幅に用いられる部位として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に必要なプライマー対応部位を両端に有することが好ましい。即ち、情報化核酸としては、プライマー対応部位を備えていないものを使用することもできるが、プライマー対応部位を備えることによってより短時間で識別できるようになることによる。
このようなプライマー対応部位について、塩基数の下限値は5であることが好ましい。より好ましくは10以上であることが良い。塩基数が5未満では、区別できる核酸の数が減少し、多くの製品の識別に時間がかかるようになる。一方、塩基数の上限値としては、100であることが好ましい。これは、塩基数が100を超えると、いずれかの位置の塩基を欠いた副生成物の比率が高くなり、精製に手間が掛かり、場合によっては困難となる傾向があることによる。
なお、情報化核酸としてRNAを用いるときは、逆転写酵素を用いて配列の相補的なDNAを得、このDNAを用いてPCR法を行うことができる。
また、上記情報化核酸としては、上記塩基配列部位の他に更に認証情報部位を有することが好ましく、これによって、より詳細な情報設定により個別認証を実行できる。
例えば、図2に示すように、両端にプライマー対応部位を備えた情報化DNAであれば、中央にm個の塩基数の配列を置き(B〜B)、この部分の配列情報を認証情報に対応させる。その両端には、それぞれl(エル)個、n個のプライマーに相補的な配列(X〜X,P〜P)を連結する。この部分が存在することにより初めてPCR法の採用が可能となる。
情報化DNAはこの1本鎖のもの又はそれと相補的な配列のDNAと複合体を形成した2本鎖のものを情報素子として用いることができる。このプライマー対応部位の配列は、できるだけ相補的配列の結合が安定になり且つPCR法による増幅が円滑に進行するように工夫することができる。
なお、図2において、X〜X、B〜B、P〜P のそれぞれは、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシトシン(dC)又はデオキシチミン(dT)及びこれらの任意の組み合わせにより構成される。
上記PCR法の好適例としては、インキ組成物に含まれる情報化核酸の塩基配列を決定するに当たり、インキ組成物から抽出された情報化核酸の溶液、PCR緩衝液、滅菌蒸留水、少なくとも1種のプライマー、2,3−ジデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びポリメラーゼを混合し、(1)92〜95℃で2〜5分間加熱し、次いで、(2a)92〜95℃で30〜60秒間、(2b)20〜50℃で30〜60秒間、(2c)70〜80℃で30〜120秒間、の加熱サイクルを20〜50回繰り返し、しかる後、(3)70〜80℃で1〜10分間加熱処理することが好ましい。なお、情報化核酸の塩基配列の任意性を高めるという観点からは2種のプライマーを用いることが好ましい。
例えば、(1)において、94℃で5分が特に好ましい。92℃で2分より短いとDNAの2本差への分離が困難になり、95℃で5分より長いと、酵素が失活するからである。なお、製品に含まれる情報化核酸が1本鎖である場合には不要である。
また、(2a)において94℃で30秒が特に好ましい。92℃で30秒より短いと増幅率が低下し、95℃で60秒より長いと、酵素が失活するからである。
更に、(2b)において40℃で30秒が特に好ましい。20℃で30秒より短いとプライマーとDNAの結合が困難になり、50℃で60秒より長いと、酵素が失活するからである。
また、(2c)において72℃で30秒が特に好ましい。70℃で30秒より短いと伸長が不十分になり、80℃で120秒より長いと酵素が失活するからである。
更に、(3)において72℃で7分が特に好ましい。70℃で1分より短いと伸長が不十分になり、80℃で10分より長いと時間の無駄になるからである。
更にまた、加熱サイクル(2a)〜(2c)の繰り返しは、30回が特に好ましく、20回より少ないと増幅率が低下し、50回より多いと時間の無駄になるからである。
図3に、情報化核酸含有インキ組成物に含まれる情報化核酸の検出方法の一実施形態のフロー図を示す。
同図に示すように、S1において、製品(インキ組成物又は印刷物)から情報化DNAを抽出する。S2において、凍結乾燥により濃縮する。S3において、2種類のプライマーとポリメラーゼを加える。S4において、PCRを繰り返すことによりDNAを増幅する。S5において、残った余分なプライマーを一本鎖DNA開裂酵素により分解する。S6において、二本鎖である情報化DNAをゲル濾過で精製する。S7において、シーケンサーにより配列決定を行う。
ここで、S1においては、例えばインキ組成物を少量の水と混ぜればよいが、例えば情報化DNAを微粒子に担持させる際に化学的結合させた場合には、加水分解などすることにより効率良く抽出することができる。また、S2においては、例えば遠心エバポレーターを用いて濃縮してもよい。更に、S5においては、一本鎖DNA切断酵素として、例えばTaq DNA ポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Tfl DNAポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Bca BESTポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼなどを使用できる。また、S6とS7との間に、更にS3及び4と同様の操作を繰り返して、目的のDNAを増幅させてもよい。S7においては、質量分析装置によって配列決定を行ってもよく、シーケンサーによる配列決定と組み合わせてもよい。
また、塩基配列を決定するに当たり、製品から抽出される情報化核酸のデータと、該情報化核酸のデータを少なくとも含む情報化核酸データベースとを対比することが望ましい。予め把握された情報化核酸のデータベースと比較することにより製品認証にかかる時間を大幅に減らすことが可能となるからである。
かかるデータベースに蓄えられるデータとしては、例えば電気泳動時間やゲル濾過した際の移動距離(これは、情報化核酸自体をコントロールレーンに流せば足りる)などを挙げることができる。
また、本発明において、含有する情報化核酸は微粒子に担持されていることが望ましい。
ここで、本発明において「担持」とは、情報化核酸が上記微粒子の表面に乗せられた状態で微粒子と共に移動できる程度に密着していることを意味し、情報化核酸が上記微粒子の表面に強固に固着していても、微粒子表面やその凹部内に使用に耐える程度の強度で付着していてもよい。
核酸は、水溶性であることから、製品に組込んだとしても製品から水と共に流出する可能性がないとは言えず、微粒子に担持させることによって、長期間にわたって製品内に保持されやすくなる。
上記微粒子としては、情報化核酸を担持することができれば特に限定されるものではないが、シリカや酸化亜鉛の他、酸化チタンや酸化モリブデン、酸化タングステン、チタン酸バリウムなどを好適に用いることができる。なお、表面をシリカコートすることによって、樹脂組成物に混合した場合の分散性を向上させることができる。
また、本発明において、当該微粒子の含有量としては、インキ固形分に対して0.5〜10%であることが好ましく、0.5〜2%であることがより好ましい。
微粒子の含有量が0.5%未満である場合には、サンプリングされたインキ組成物ないし印刷物中の微粒子の量が少ない場合があり、検出の精度が低下する可能性がある。また、10%を超える場合には、色味の一致性が低下する場合がある。
更に、当該微粒子のサイズとしては、平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましく、0.02〜0.1μmであることがより好ましい。
微粒子の平均粒径が0.01μm未満である場合には、情報化核酸の検出精度が低下し、1μmを超える場合には、印刷物の平滑性が低下する傾向がある。また、例えば被印刷体が紙である場合には、浸透性の低下によって、印刷物の平滑性が低下するという傾向もある。
かかる情報化核酸担持微粒子は、例えば微粒子に滅菌蒸留水を加えて成る懸濁液に、情報化核酸をそのまま、あるいは情報化核酸の一部又は全部を滅菌蒸留水に溶解して成る溶液として加え、望ましくはさらに特定の溶媒を添加して、乾燥させることによって得ることができる。
シリカや亜鉛華などの微粒子の懸濁液に、任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備えた情報化核酸を直接、あるいは情報化核酸の一部又は全部を滅菌蒸留水に溶解させた溶液の状態で加えたのち、乾燥させることによって、微粒子の表面に情報化核酸を確実に担持することができ、このような情報化核酸担持微粒子を用いて、情報化核酸を微粒子に担持させた状態でインキ組成物中に導入することによって、情報化核酸単独の状態で導入した場合に較べて、情報化核酸をインキ組成物中に確実に添加し、安定に分散させることができるようになり、しかも情報化核酸の水分による流出を防止することができ、情報化核酸の塩基配列を検出指標とする製品の出所・経歴の個別認証が長期にわたって可能なものになるという極めて優れた効果がもたらされる。
また、懸濁液には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなど)、ケトン(例えば、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなど)及び芳香族溶剤(トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレンなど)の溶媒をさらに添加することが望ましく、これによって微粒子の懸濁液中における分散性が向上すると共に、情報化核酸が添加された後の水分及び溶剤分の揮発が促進されることになる。
なお、これら溶媒は1種のみに限定されず、2種以上の溶媒を併用することも可能である。また、これら溶媒は、情報化核酸と同時、あるいは情報化核酸を加えた後に添加しても、特に差し支えはない。
更に、溶媒の添加量としては、アルコールの場合には、滅菌蒸留水/アルコールの容量比を1〜99の範囲とすることが好ましく、アルコール以外の溶媒の場合、即ちエステル、ケトン、芳香族溶剤の場合には、滅菌蒸留水/溶媒の容量比を1〜75の範囲とすることが好ましい。
即ち、溶媒の添加量が少な過ぎると、溶媒添加による上記効果が十分に得られず、逆に多過ぎても、水との相溶性低下によって水が揮発せずに残り易くなり、上記効果が十分に得られないようになる傾向がある。
次に、本発明の印刷物について説明する。
上述の如く、本発明の印刷物は、上記本発明の情報化核酸含有インク組成物を用いて得られるものである。つまり、情報化核酸含有インク組成物が被印刷体に固定されているものである。
印刷物は、単層であっても複層であってもよく、層厚としては、特に限定されるものではないが、5〜10μmであることが好ましい。
被印刷体としては、例えば紙、段ボール、ブリキ板、セロハン、プラスチックフィルム、メタルフォイル、合成紙、布、ガラス、アルミ缶などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、その際の印刷方法についても特に限定されるものではなく、例えばオフセット、ドライオフ、凸版、シルクスクリーン、グラビア、フレキソなどの方式により印刷することができる。
以下、本発明をいくつかの実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[情報化核酸担持微粒子の作製]
配列番号1で表される情報化DNA(配列番号2で表される可認証DNAを含む)を、ホスホアミダイト法にてヌクレオシドを逐次結合させることによって合成した。
以下、実施例1〜22において、情報化核酸としては、配列番号1で表される情報化DNAを用いた。
担体用の微粒子として、シリカコートを施した平均粒径0.02μmの酸化亜鉛(昭和電工(株)製ZS−032)を使用し、当該酸化亜鉛4gに、容量比で30%のエタノールを含有する滅菌蒸留水15mLを加えて撹拌し、酸化亜鉛の懸濁液を得た。
情報化DNA10nmol(164μg)を滅菌蒸留水15mLに溶解し、得られた情報化DNA水溶液を実施懸濁液に加えて良く撹拌し、さらに4mLのエタノールを加えて撹拌した。
情報化DNAを加えた懸濁液をプラスチック製の円形皿に注ぎ、その上部を通気性の良い紙あるいは布で覆った状態で、2日間自然乾燥した。更に、ほぼ乾燥したものをデシケータに入れ、40℃の加熱下で減圧乾燥し、十分に乾燥させた。
十分に乾燥された塊状の微粉末を乳鉢に入れて砕き、もとの微粉末状として、情報化核酸担持微粒子を得た。
[情報化核酸含有インキ組成物の作製]
1000gの市販インキ(十条ケミカル株式会社製、FUN−COATシルバー、固形分50%)を撹拌しながら、50gの情報化核酸担持微粒子を添加、混合し、更に1時間撹拌して情報化核酸含有インキ組成物を得た。
(実施例2〜22)
担体用の微粒子として、シリカコートを施した平均粒径0.02μmの酸化亜鉛(昭和電工(株)製ZS−032)、平均粒径1μmのシリカ(鈴木油脂工業(株)製E−2C)若しくは平均粒径4μmのシリカ(鈴木油脂工業(株)製E−16C)を用いて、微粒子に担持する情報化核酸の含有量を調整し、又は情報化核酸担持微粒子の含有量を調整して、本例の情報化核酸含有インキ組成物を作製した。上記各例の情報化核酸含有インキ組成物の仕様を表1及び表2に示す。
Figure 2006169341
Figure 2006169341
[評価試験]
(印刷物の作製)
図面を用いて説明する。図4は、本発明の印刷物の一実施形態を示す断面図である。被印刷体であるアクリル板20上に、情報化核酸含有インキ組成物を用いて得られる印刷物10が固定されている。
被印刷体の縦210mm、横297mm、厚み2mmのアクリル板上に、上記各例の情報化核酸含有インキ組成物をガラス棒で印刷物の総厚が10μmとなるように塗布後、80℃で20分間焼き付けて、各例の印刷物を作製した。
(情報化核酸の識別)
(1)上記各例の印刷物付きアクリル板から試験片(縦150mm、横70mm)を切り出し、試験片の印刷物をカッターを用いて削り取った。
(2)得られたインキ組成物細片に滅菌蒸留水5mLを加え、マグネチックスターラーにより攪拌して、DNAを水層に抽出した。
(3)遠心分離機を用いて、インキ組成物細片と水層を分離し、水層を遠心エバポレータを用いて濃縮した。
(4)溶出回収したDNA溶液(5μL)に、PCR buffer(5μL)、Taq polymerase(0.25μL)、滅菌蒸留水(24.75μL)、配列番号3で表される5μMのプライマー1(5μL)、配列番号4で表される5μMのプライマー2(5μL)、及び2mMのdNTP(5μL)を混合した。
(5)94℃で5分間加熱後、[94℃で30秒間加熱→40℃で30秒間加熱→72℃で30秒間加熱]のサイクルを30回繰り返した。
(6)72℃で7分間加熱処理した後、4℃で保存した。
(7)1本鎖DNA開裂酵素(S1ヌクレアーゼ(一本鎖DNAに特異的に反応))を用いて、余分なプライマーを分解し、目的の2本鎖情報化DNAをゲル濾過で精製した。
(8)精製した情報化DNAに1種類のプライマー(配列番号3で表されるプライマー1)及び蛍光標識した2,3−ジデオキシヌクレオシド三リン酸を混合した。
(9)上記工程(4)〜(6)と同様のPCR条件でサイクル操作を行った。
(10)ゲル濾過精製後、自動シーケンサーに供し、配列決定を行った。
得られた結果を表1及び表2に併記する。表中「情報化DNAの識別」において、「○」は上記情報化核酸の検出方法により識別することが可能であったもの、「△」はPCRの増幅回数を増やした以外は、上記情報化核酸の検出方法と同様の操作により識別することが可能であったものを示す。
(平滑性評価)
上記各例の印刷物を目視評価した。得られた結果を表1及び表2に併記する。なお、表中「平滑性評価」において「○」は「かなり平滑である」、「△」は「若干凹凸がある」、「×」は「凹凸がある」を示す。
(色味一致性評価)
上記各例の印刷物の色味と情報化核酸を含有しない印刷物の色味との差異を目視評価した。得られた結果を表1及び表2に併記する。なお、表中「色味一致性評価」において「○」は「同等」、「△」は「少し異なる」、「×」は「明らかに異なる」を示す。
表1及び表2より、本発明の情報化核酸含有インキ組成物を用いた印刷物は、情報化核酸の識別をすることができ、特に、実施例1〜12及び実施例18〜22の情報化核酸含有インキ組成物は、実施例13〜17の情報化核酸含有インキ組成物と比較してPCRの増幅回数を少なくしても情報化核酸の識別をすることができることが分かる。
また、特に実施例1〜17は、平滑性及び色味一致性に優れていることが分かる。
更に、本発明の情報化核酸含有インキ組成物は、特に厳密に規定された狭い成形条件に限定されることなく、従来と同様の印刷方法で、同等の外観を有する印刷物を作製することができる。
天然DNAとこの5´位を誘導化したDNAを示す構造式である。 認証情報部位に両端にプライマー対応部位を有する情報化核酸を示す概略図である。 情報化核酸含有インキ組成物に含まれる情報化核酸の検出方法の一実施形態を示すフロー図である。 本発明の一実施形態を示す断面図である。
符号の説明
10 印刷物
20 アクリル板

Claims (8)

  1. 任意かつ既知の塩基配列を有する部位を備えた情報化核酸を含有することを特徴とする情報化核酸含有インキ組成物。
  2. 上記情報化核酸の含有量が、インキ固形分100gに対して0.5〜500μgであることを特徴とする請求項1に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  3. 上記情報化核酸が微粒子に担持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  4. 上記微粒子の平均粒径が、0.01〜1μmであることを特徴とする請求項3に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  5. 上記微粒子の含有量が、インキ固形分全量に対して0.5〜10%であることを特徴とする請求項3又は4に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  6. 上記インキが、着色透明インキないし着色不透明インキであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  7. 上記インキが、溶剤系、水系又は粉体系インキであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の情報化核酸含有インキ組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の情報化核酸含有インキ組成物を用いて得られることを特徴とする印刷物。
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