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JP2006162822A - 回折光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】回折光学素子のフレア発生による性能劣化を低減する。
【解決手段】傾斜した光学面11と壁面12を交互に配設したブレーズド型の回折格子において、壁面12に入射する入射光Lbを、壁面12による反射の後に光学面11で吸収するための光吸収部13を設ける。光学面11の光吸収部13は、撥油性を有するコーティング膜10a上にレジストインキを塗布し、光学面11と壁面12の交点12aにインキ溜りを生じさせることで簡単に形成することができる。壁面12に薄膜を設けたり、壁面12を粗面化することにより反射防止を行う場合に比べて、低コストで効果的にフレア防止を行うことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、撮像装置、観察装置、およびその他の光学装置の光学系に適用される回折光学素子に関するものである。
撮像装置等の光学系に用いられる回折光学素子は、レンズ素子として利用する場合が多い。中でも、ブレーズド型回折格子を有する回折光学素子においては、加工上の問題や、光学系の配置上の制約から、レリーフパターンの壁面に平行に入射しない光線があり、この光線が壁面を通過してフレア光となって撮像面に達し、回折光学素子の光学性能を低下させる。
例えば図5の(a)に示すように、回折格子110の壁面112に対して入射光Lが平行である場合はそのほとんどが光学面111に入射するため光学性能に問題は生じないが、図5の(b)に示すように、レリーフパターンを形成する型成形性を向上させるため壁面112が入射光Lの光軸に対して平行でない場合や、図5の(c)に示すように、ブレーズド型回折格子に対して入射光Lが斜めに入射する場合は、壁面112に入射する光量が増大し、いずれの場合もフレア光となって回折格子の光学性能を低下させる。そこでこの問題点を解決するため種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、非レンズ面の総面積と光学系に含まれる回折面の光軸に対して垂直な平面(壁面)への射影面との平均値との比を所定の値以下とし、非レンズ面のフレアを抑制した回折格子を有する光学系が提案されている。
また、特許文献2には、図6に示すように、回折格子120のエッヂ部(壁面)122に階段形状部123を設けた構成や、回折格子の光学部表面に使用波長より小さい微小凹凸構造を設ける等の提案がなされている。
さらに、特許文献3には、図7に示すように、回折格子140のエッヂ部(壁面)142に入射し、光学基材130に射出する光Lbを遮光する遮光手段143を有する回折光学素子が提案され、また、特許文献4には、回折格子の縦面(壁面)にのみアッシングによる艶消し処理を施す方法が開示され、特許文献5には、異種材料からなる2つの光学部材の境界にレリーフパターンを有する光学材料の境界面に二酸化珪素、硫化亜鉛、酸化アルミニウムの一種からなる薄膜層を形成した回折光学素子が提案されている。
特開2001−305323号公報 特開2002−071925号公報 特開2002−048906号公報 特開2003−240931号公報 特開2001−337214号公報
しかしながら、上記従来の技術によれば、いずれも、フレアの抑制が不充分であったり、製造コストが上昇する等の未解決の課題があった。
特許文献1の提案では、撮影レンズを通して入射する散乱光を光軸に対して垂直な平面(壁面部)で遮断することがないためフレアの発生を完全に抑制できない。
また、特許文献2に開示された構成では、図6の回折格子120の光学面121と階段形状部123を有する壁面122の交差部122aで僅かな入射光Lbを遮断できないため、フレア発生の防止は完全ではない。なお、この提案では、レリーフパターンを成形する際の離型性の点で階段形状部の形状安定性に問題がある。
さらに、特許文献3の構成では、フレア因子を含んだ入出射光が、図7の破線で示す矢印の方向に光光路を辿った場合に、フレア光を抑制することができるのみである。また、傾斜壁面(エッヂ部)142の反射光には対応しているが、壁面が光軸と平行である場合には対応が難しく、また、遮光部の形成が容易ではなく、製造工程が複雑化すると予想される。
特許文献4の構成では、回折格子の縦面(壁面)への艶消し処理により縦面への入射光、縦面からの出射光が完全に遮断され、フレア光を完全に抑制可能である。しかしながらこの素子の製造は、アッシングによる艶消し処理工程が複雑でタクト時間が延び、製造コストが増大する問題があり、特許文献5の構成では、回折効率の波長依存特性を低減し、不要次数光によるフレア発生を防止することを目的とし、回折格子壁面においては薄膜層を安定して定着させるのが難しく、また、薄膜層を形成する工程で設備、管理スペースなどについてコストが上昇する。
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でフレア光を効率的に減少させ、低コストで製造可能な品質性と生産性に優れた回折光学素子を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するため、本発明の回折光学素子は、光回折を行う複数の光学面と、前記複数の光学面を互いに分離する複数の壁面とを備えた回折格子を有し、各光学面の所定の部位に、隣接する壁面によって散乱される入射光を吸収するための光吸収部が設けられていることを特徴とする。
回折格子の壁面で反射する光を光学面で吸収することでフレア発生を防ぐものであるため、フレア光による光学性能の低下を安価にしかも効果的に防ぐことができる。
図1に示すように、回折格子10の光学面11および壁面12にそれぞれ入射する入射光La、Lbのうちで、壁面12に入射する入射光Lbの反射光を、光学面11の一部に設けられた光吸収部13によって吸収させることで、フレア発生を低減する。
回折格子10の光学面11に設けられる光吸収部13は、光学面11と壁面12との交点12aの近傍(交差部)に配設され、光学面11の光回折作用に大きく影響しないように構成する。
例えば、ブレーズド型回折格子においては、回折格子の壁面によって反射されて散乱する光を、光学面上で遮断することで、極めて効果的にフレア光による光学性能の低下を防ぐことができる。
簡単な構成でフレア光を確実に吸収することができ、しかも、回折格子を形成する工程で光学面に光吸収部を付加することが容易であるため、高性能な回折光学素子を低コストで実現できる。
図1は、実施例1による回折光学素子の一部分を示す部分模式断面図である。ベースとなる光学基材1上に樹脂製の回折格子(ブレーズド型回折格子)10が配設され、その光学面11および壁面12はコーティング膜10aによって被覆され、光学面11上には、光学面11と壁面12の交点12aに近接して光吸収部13を構成する光吸収剤が被着されている。
入射光La、Lbのうちで光学面11の入射光Laは、レリーフパターン転写面である光学面11により所望の角度で光学基材1側に射出光Leとして回折する。しかし、壁面12の入射光Lbは、壁面12で反射屈折した後、光吸収部13に向かうため、光学面11上で吸収される。従って、光学基材1を透過することなく、撮像面等にフレア光となって到達しない。このようにして、フレア光による画質劣化等を防止できる。
図2は光学面11と壁面12の交点近傍に光吸収部13を形成する方法を示す工程図である。まず、図2の(a)に示すように、樹脂材料である光硬化反応型のモノマーを使用し、光学基材1上に図示しないスタンパ型と光照射装置を用いてレリーフパターン転写面の光学面11と壁面12を有する回折格子10をレプリカ成形する。回折格子10の樹脂材料は、熱硬化型樹脂、あるいは光硬化・熱硬化併用型樹脂を用いる。
レリーフパターン転写面上の光学面11と壁面12には、フッ素基を含有したコーティング膜10aがスピンコートによって塗膜される。ここで用いるコーティング膜10aはフッ素系溶媒液中にフッ素を含有した有機コーティング材料を0.1〜0.5wt%に希釈して調製したものである。このコーティング膜10aを塗膜した光学面11と壁面12上に光吸収材料(不透明材料)を含浸した光吸収剤であるレジストインキをディッピングすると、コーティング膜10aの表面の極めて撥水性、撥油性の高いフッ素基反応によって、レジストインキはより多くが安定化面に定着しようとする。この安定化面は、レジストインキが最も集合し易い高低差の低い方の位置、すなわち光学面11と壁面12の交点12aの近傍を中心にレジストインキのインキ溜り13aとなって定着し、残りはレジストインキの表層13bとなる。
この後、コロナ放電などのアッシング処理を行ない、厚さ20〜30nmのレジストインキの表層13bを活性化し、図2の(b)に示すように、安定化面に定着したインキ溜り13a以外のレジストインキを除去する。
安定化面に、所定量のレジストインキが図2の(c)に示すようなインキ溜り13aとして滞留し、安定状態を確認した後、同図の(d)に示すように、一定の温度プロファイルでキュア処理をして光吸収部13を形成する。
なお、この光吸収部は、電子マスクやフォトリソグラフィー法などの手法を用いて酸化クロム、クロムメッキ膜などを形成してもよいが、高価な装置や複雑な工程の導入により高コスト化してしまう可能性がある。また、印刷や、蒸着などの方法を用いても、マスキングなど製造工程が複雑化する等の問題があるため、製造効率を向上させ、安定した品質の光学素子を提供するためには図2に示した方法が望ましい。
図3は、実施例2による回折光学素子の一部分を示す部分模式断面図である。これは、実施例1の光学基材1を凸型球面光学基材として適用し、回折格子10の上に、凹型球面光学基材である光学基材20上の回折格子30を積層したレリーフ型回折光学素子であり、回折格子10、30の光学面11、31にそれぞれ光吸収部13、33が設けられる。
入射光Laは光学基材20の表面より、所望の角度でレリーフパターン転写面の光学面31に到達して回折する。光学面31の間の回折した光は2つの回折格子30、10のエアギャップを通過して回折格子10のレリーフパターン転写面の光学面11に入射して回折し、光学基材1側に出射光Leとして射出する。しかし、入射光Lbは光学基材20を通過した後、回折格子30の光学面31の光吸収部33に向かうためここで吸収され、光学面31の間の壁面32に達しない。従って、壁面反射によるフレア光の発生はなく、撮影画質の劣化等を招かない。
なお、光学基材1、回折格子10、光学面11、壁面12、光吸収部13については図1と同様であるから説明は省略する。
図4は、回折格子30を製造する工程を示すもので、回折格子30のレリーフパターンを転写成形するためのスタンパ型40に対して、開口部41aから光吸収材料を含浸したレジストインキをスタンパ型上に塗布するためのスクリーンマスク41を位置決めする。すなわち、このスクリーンマスク41をスタンパ型40の回折格子成形先端部40aにアライメントし、開口部41aからサイトップなどの有機離型膜40bを塗布し、続いて光吸収材料を含浸したレジストインキをスタンパ型40上に塗布して、直ちに所定の温度プロファイルでキュアする。このようにして、スタンパ型40の回折格子成形先端部40a上に光吸収剤33aが塗膜される。
このスタンパ型40を用いてレリーフパターン転写面を有する回折格子30を成形すると、壁面32と交差して隣接する光学面31に光吸収剤33aが転写される。ここで有機離型膜40bをスタンパ型40上に塗布しているため、光吸収剤33aのスタンパ型40からの転写が容易であり、また、スクリーンマスク41のアライメントには厳しい位置合わせ精度が要求されない。従って、製造工程が複雑化するおそれはない。
なお、実施例1と同様の製法を用いた方が適当な場合は適宜それを選択することが好ましい。
本実施例は、実施例1のコーティング膜10aを設けることなく、光学面11の光吸収部13を形成する部位以外の面をカバーリングし、光吸収部13に相当する部位にサンドブラスト加工による二次加工を施すものである。ブラスト処理による面粗さはRmax0.8〜1.3μmとしたが、光学素子の性能に合わせて適宜設定することが好ましく、この範囲に限定されるものではない。その他の点は実施例1と同様である。
本実施例は、実施例1のコーティング膜10aを必要とせず、光吸収部13を梨地転写面で形成する。転写型は、図4のスタンパ型40と同様のスタンパ型の回折格子成形先端部に梨地面を処理加工した型を用い、実施例1と同様の樹脂材料でレプリカ成形し、転写面を得る。ここで得た梨地面はRaで1〜3μm、外観は半艶面であるが、光学素子の性能に合わせて適宜設定することが好ましく、この範囲に限定されるものではない。その他の点は実施例1と同様である。
実施例1の構成を示す部分模式断面図である。 実施例1の製造方法を示す工程図である。 実施例2の構成を示す部分模式断面図である。 実施例2の製造工程を説明する図である。 回折格子の入射光と回折格子の関係を説明する図である。 一従来例を示す部分模式断面図である。 別の従来例を示す部分模式断面図である。
符号の説明
1、20 光学基材
10、30 回折格子
10a コーティング膜
11、31 光学面
12、32 壁面
13、33 光吸収部
40 スタンパ型

Claims (4)

  1. 光回折を行う複数の光学面と、前記複数の光学面を互いに分離する複数の壁面とを備えた回折格子を有し、各光学面の所定の部位に、隣接する壁面によって散乱される入射光を吸収するための光吸収部が設けられていることを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記光吸収部が、各光学面の所定の部位に不透明な光吸収剤を被着させることによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の回折光学素子。
  3. 前記光吸収部が、各光学面の所定の部位を粗面化することによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の回折光学素子。
  4. 前記光吸収部が、光学面と壁面の交差部に配設されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の回折光学素子。
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