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JP2006144702A - 内燃機関及び内燃機関の運転制御装置 - Google Patents

内燃機関及び内燃機関の運転制御装置 Download PDF

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JP2006144702A JP2004337871A JP2004337871A JP2006144702A JP 2006144702 A JP2006144702 A JP 2006144702A JP 2004337871 A JP2004337871 A JP 2004337871A JP 2004337871 A JP2004337871 A JP 2004337871A JP 2006144702 A JP2006144702 A JP 2006144702A
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Abstract

【課題】排ガスと燃料との混合気を改質するにあたって、燃料消費を抑制すること。
【解決手段】この内燃機関1は、燃料と排ガスとの混合気を改質用触媒により改質して水素を含む改質ガスを生成し、この改質ガスを内燃機関1の吸気通路3に還流させる改質器20と、内燃機関1の排気通路9から取り出した排ガス中に含まれる炭化水素を吸着するとともに、吸着した炭化水素を放出して改質器20へ供給する炭化水素吸着・放出材を含む炭化水素吸着・放出手段60と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃焼後の排ガスと燃料との混合気を改質して得られた改質ガスを吸気側へ還流させる内燃機関及び内燃機関の運転制御装置に関するものである。
内燃機関から排出される排ガス中に燃料を添加し、両者の混合気を改質用触媒で改質した改質ガスを内燃機関の吸気管に供給するものが知られている。このような技術において、例えば特許文献1には、ノッキングが発生したときのように、内燃機関の点火時期が所定角度以上遅角されたときに、燃料消費の増加を抑制する技術が開示されている。
特開2004−92520号公報
ところで、一般に、冷間時に内燃機関が始動してから暖機が完了するまでは、燃焼が霧化しにくくなるため燃料を増量するが、これにともなって未燃の燃料が多く発生する。その結果、冷間始動後、暖機完了前においては燃料の消費量が増加する。これは、改質部を備える内燃機関でも同様である。特許文献1には、点火時期の遅角に起因する燃料消費の増加を抑制する技術が開示されてはいるが、内燃機関の冷間始動から暖気完了までの燃料消費の増加については言及されておらず、燃料消費の抑制には改善の余地がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排ガスと燃料との混合気を改質するにあたって、燃料消費を抑制できる内燃機関及び内燃機関の運転制御装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内燃機関は、改質用燃料と排ガスとの改質用混合気を改質用触媒により改質して水素を含む改質ガスを生成し、この改質ガスを、燃焼室とつながる吸気通路に還流させる改質手段と、炭化水素吸着・放出材を含み、前記排ガス中に含まれる炭化水素を前記炭化水素吸着・放出材に吸着させるとともに、吸着させた炭化水素を前記炭化水素吸着・放出材から放出させて前記改質手段へ供給する炭化水素吸着・放出手段と、を備えることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記炭化水素吸着・放出手段は、暖機完了前に前記炭化水素吸着手段へ排ガスを導き、暖機終了後、かつ改質可能な条件を満たした後に、吸着した炭化水素を前記改質手段に対して放出して、前記改質手段へ炭化水素を供給することを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記炭化水素吸着・放出手段は、前記改質手段が改質に必要な温度を満たしており、かつ前記改質手段へ供給する排ガスの空燃比が、改質に必要な空燃比よりも燃料が薄い状態である場合には、前記改質手段へ供給される前記排ガス中へ、吸着した炭化水素を放出することを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記炭化水素吸着・放出材の温度を変更する温度調整手段を備えることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記温度調整手段は、改質のために前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出するまでは、前記炭化水素吸着・放出材の温度を予め定めた温度に保持し、改質する際には、前記炭化水素吸着・放出材の温度を炭化水素の放出温度よりも高い温度に昇温させることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関の運転制御装置は、改質用燃料と排ガスとの改質用混合気を改質した改質ガスを吸気通路に還流させる改質手段と、排ガス中の炭化水素を吸着・放出する炭化水素吸着・放出材を含む炭化水素吸着・放出手段と、を備える内燃機関を制御するものであり、前記内燃機関の暖機が完了したか否か、及び改質可能な条件を満たしているか否かを判定する運転状態判定部と、前記内燃機関の暖機が完了する前には、前記炭化水素吸着・放出材に前記内燃機関が排出する排ガス中の炭化水素を吸着させ、前記内燃機関の暖機が完了し、かつ改質可能な条件を満たした後には、前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出させて前記改質手段へ供給させる吸着・放出制御部と、を含んで構成されることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関の運転制御装置は、排ガスと燃料との混合気を改質した改質ガスを吸気通路に還流させる改質手段と、排ガス中の炭化水素を吸着・放出する炭化水素吸着・放出材を含む炭化水素吸着・放出手段と、を備える内燃機関を制御するものであり、前記内燃機関の暖機が完了したか否か、及び改質可能な条件を満たしているか否かを判定する運転状態判定部と、前記内燃機関の暖機が完了する前には、前記炭化水素吸着・放出材に前記内燃機関が排出する排ガス中の炭化水素を吸着させ、前記内燃機関の暖機が完了し、かつ改質に必要な温度を満たしており、さらに前記改質手段へ供給する排ガスの空燃比が改質に必要な空燃比よりも燃料が薄い状態である場合には、前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出させ、この排ガスを前記改質手段へ供給させる吸着・放出制御部と、を含んで構成されることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関の運転制御装置は、前記内燃機関の運転制御装置において、前記内燃機関は、前記炭化水素吸着・放出材の温度を変更する温度調整手段を備えており、前記吸着・放出制御部は、改質のために前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出するまでは、前記炭化水素吸着・放出材の温度を予め定めた温度に保持し、改質する際には、前記温度調整手段により前記炭化水素吸着・放出材の温度を炭化水素の放出温度よりも高い温度に昇温させることを特徴とする。
この発明に係る内燃機関及び内燃機関の運転制御装置では、排ガスと燃料との混合気を改質するにあたって、燃料消費を抑制できる。
以下、この発明につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、本発明は、特に乗用車やバス、あるいはトラック等の車両に搭載される内燃機関に対して好ましく適用できる。
実施例1に係る内燃機関は、排ガスと燃料との混合気を改質して得られた改質ガスを燃焼室へ還流させるものであって、排ガス中に含まれる炭化水素を吸着・放出可能な炭化水素吸着・放出手段を備え、内燃機関の冷間始動時から暖機完了前までの期間においては排ガス中の炭化水素を吸着し、排ガスと燃料との混合気を改質する際には、炭化水素吸着・放出手段に吸着した炭化水素を放出させて、前記改質に供する点に特徴がある。
図1は、実施例1に係る内燃機関の全体構成図である。図2は、実施例1に係る内燃機関が備える炭化水素吸着・放出手段を示す概略図である。図1を用いて、実施例1に係る内燃機関の構成について説明する。実施例1に係る内燃機関1は、改質手段である改質器20に排ガスExの一部を導き、この排ガスExに炭化水素(以下HCともいう)を含む燃料を供給することによって水素(H2)を生成する。そして、この改質反応によって得られた水素を含むガス(以下改質ガスという)Exrを内燃機関1に還流させる。
内燃機関1は、4個の気筒が直列に配置されているが、気筒数及び気筒配置はこれに限られるものではない。また、内燃機関1は、いわゆるロータリー式の内燃機関であってもよい。内燃機関1に供給される燃料Fは、燃料タンク70内のフィードポンプ71によってポート噴射弁6に供給される。そして、ポート噴射弁6から吸気通路3内に噴射され、吸気通路3を通る空気Aと混合気を形成する。この混合気は、吸気通路を構成するインテークマニホールド71〜74を通って各気筒1s1〜1s4へ導入される。
実施例1においては、単独のポート噴射弁6により内燃機関1の各気筒へ燃料Fを供給するが、気筒数分のポート噴射弁を用意して、各気筒1s1〜1s4のインテークマニホールド71〜74へそれぞれ燃料Fを噴射してもよい。また、ポート噴射弁の代わりに、気筒内へ直接燃料を噴射する、いわゆる直噴噴射弁を用いて、内燃機関1へ燃料Fを供給してもよい。さらに、ポート噴射弁と直噴噴射弁とを備え、内燃機関1の運転条件に応じて両者の燃料噴射割合を変更して、内燃機関1へ燃料を供給してもよい。
内燃機関1に供給される空気Aは、吸気通路3の入口に取り付けられるエアクリーナ13でごみ等が除去されてから、内燃機関1へ送られる。内燃機関1へ供給される空気Aは、吸気通路3に設けられるスロットル弁4によって流量が調整される。スロットル弁4の開度は、アクセル17と連動する。実施例1において、アクセル17の開度はアクセル開度センサ47で検出されて、エンジンECU50に取り込まれる。アクセル開度センサ47からのアクセル開度情報を元に、エンジンECU50はスロットル弁4の開度を調整する。
アクセル開度が大きくなると、スロットル弁4の開度は大きくなり、アクセル開度が小さくなると、スロットル弁4の開度は小さくなる。内燃機関1へ供給される空気は、吸気通路3であってスロットル弁4の上流に設けられるエアフローセンサ42で流量が計測されて、その計測値はエンジンECU(Electronic Control Unit)50に取り込まれる。エンジンECU50は、エアフローセンサ42により計測された吸入空気量Gaと、回転数センサ43で計測される内燃機関1の機関回転数NEとから、内燃機関1に対する燃料供給量τeを決定する。
内燃機関1の各気筒1s1〜1s4で燃焼した混合気は、排ガスExとなってエキゾーストマニホールド8へ排出される。この排ガスExは、排気通路9を通って改質器20の排気通路22へ導入され、排ガスExを改質するための熱を与える。改質器20から排出された排ガスExは、浄化触媒16で浄化された後、大気中へ放出される。浄化触媒16には、例えば三元触媒が用いられる。
実施例1においては、浄化触媒16と改質器20との間に、浄化触媒温度検出手段である排気温度センサ48が設けられる。これによって検出された排ガスExの温度が、浄化触媒16の温度を示すパラメータとして取り扱われる。エンジンECU50は、排気温度センサ48の出力信号を取り込み、内燃機関1の運転制御に使用する。なお、浄化触媒16は、改質器20と内燃機関1との間に配置してもよい。この場合、排気温度センサ48は、内燃機関1と改質器20との間に配置される。また、排気温度センサ48の測温部を浄化触媒16内に配置して、浄化触媒16の温度を直接測定できるように配置してもよい。
排気通路9からは改質用導管11が分岐している。この改質用導管11は、改質器20の改質室21と接続されている。改質用導管11には改質用燃料噴射弁24が取り付けられており、この改質用燃料噴射弁24が、改質用導管11へ導かれた排ガスExへ改質用燃料Frを噴射する。改質用燃料噴射弁24には、燃料タンク70内のフィードポンプ71から燃料が供給される。また、改質用導管11には、A/F(Air/Fuel:空燃比)センサ45が取り付けられており、排ガスExの空燃比を計測する。
改質器20は、改質室21と排気通路22とで構成される。改質室21の内壁面には改質用触媒が担持されており、排気通路22を流れる排ガスExの熱により改質用触媒が加熱されて、活性温度Ta以上に保持される。改質器20は、複数の改質室21を備え、各改質室21はそれぞれ連通しており、排ガスExと改質用燃料Frとの混合気(改質用混合気)Gmrは、改質室21を通過する間に改質される。ここで、改質用触媒には、例えばロジウム系の触媒が用いられる。なお、改質器20では、改質触媒の温度が活性温度以上になったときに改質が開始される。このときには、改質器20へ供給される排ガスExの空燃比は、理論空燃比(λ=1)あるいは理論空燃比よりも燃料が濃い(リッチ)状態であることが必要である。理論空燃比よりも燃料が薄い(リーン)状態では、たとえ改質触媒の温度が活性温度以上であっても改質できない。したがって、改質可能な条件には、少なくとも前記改質触媒の温度が活性温度以上になっていることが必要となる。
改質器20には、改質用触媒の温度を測定するため、改質用触媒床温度センサ44が取り付けられる。改質用触媒そのものの温度を測定することは困難であるため、改質用触媒を担持する触媒床の温度を測定して、改質用触媒温度とする。改質用触媒温度が低い場合、改質ガスExr中の水素濃度は低く、改質用触媒温度が高くなるほど改質ガスExr中の水素濃度は高くなる。このため、改質用触媒温度が活性温度Ta以上になってから改質を開始するように、改質用触媒床温度センサ44により改質用触媒の温度を監視する。なお、ロジウム系の改質用触媒を用いる場合、前記改質用触媒の反応が活発になる活性温度Taは600℃程度である。
改質室21の出口21oには、改質室21と、吸気通路3とを接続する、ガス還流通路10が取り付けられている。ガス還流通路10は、排ガスEx又は改質ガスExrを、内燃機関1の吸気側、すなわち吸気通路3へ還流させる機能を持つ。ガス還流通路10には、冷却器12が設けられており、改質室21で改質された排ガス(すなわち改質ガスExr)を冷却する。また、冷却器12とガス還流通路10の出口10oとの間には、還流流量調整手段である還流流量調整弁5が設けられており、エンジンECU50からの指令により、吸気通路3へ還流させる改質ガスExrの流量を調整する。さらに、ガス還流通路10には、水素濃度センサ49が取り付けられている。この水素濃度センサ49により、改質器20が所定の水素量を発生しているか否かを確認できる。水素濃度センサ49の出力はエンジンECU50に取り込まれ、エンジンECU50が前記確認をする。次に、炭化水素吸着・放出手段について説明する。
図2に示すように、炭化水素吸着・放出手段60は、吸着・放出部61と、排ガス導入通路62と、排ガス放出通路64とを含んで構成される。吸着・放出部61は、排ガスEx中に含まれる未燃の炭化水素を吸着するとともに、一旦吸着した炭化水素を放出する機能を有する。この機能を実現するため、吸着・放出部61は、炭化水素吸着・放出材(以下吸着・放出材)61zを含んで構成される。
前記吸着・放出材61zには、例えば、シリカを主成分とする多孔質吸着剤(例えば、SiO4の層状結晶間にSiO2を担持させたもの)や、ZSM−5あるいはモルデナイトのようなゼオライト等の多孔質材料等が用いられる。そして、前記吸着・放出材61zは、前記多孔質材料等を、多数の細い軸線方向流路(セルという)を有する円筒状に形成して構成される。これは、浄化触媒16に用いられるモノリス担体と略同様の形状である。また、前記吸着・放出材61zには、通常用いられるコージェライト等のモノリス触媒担体のセル壁面に、アルミナ、シリカ等の無機多孔質材料をコーティングしたものも使用できる。
吸着・放出材61zは、ここに流入する排ガスExの温度が低いとき、すなわち吸着・放出材61zの温度が低いときには、排ガスEx中に含まれる炭化水素(HC)を多孔質の細孔内に吸着する。そして、吸着・放出材61zの温度が上昇してHCの放出温度を超えると、吸着したHC成分を放出する。前記放出温度は、一般的には吸着したHCの沸点である。内燃機関1の冷間始動時から暖機完了前においては、排ガスExの温度は前記放出温度以下となっているので、このような場合には、排ガスExに含まれるHCを吸着・放出材61zに吸着させることができる。ここで、「内燃機関1の暖機完了」とは、少なくとも浄化触媒16が、排ガスEx中に含まれるCOやHCを所定値よりも少なくできる程度に浄化できる温度に到達したときをいう。
炭化水素吸着・放出手段60の排ガス導入通路62は、その入口が内燃機関1の排気通路9に開口しており、内燃機関1の排出する排ガスExを、炭化水素吸着・放出手段60へ導く。炭化水素導管63の出口は改質用導管11に開口しており、吸着・放出部61が放出した炭化水素を改質用導管11に導く。そして、この炭化水素は、改質用導管11を通って改質器20へ導入される。排ガス放出通路64は、その出口が内燃機関1の排気通路9に開口しており、炭化水素を吸着した後の排ガスExを排気通路9へ戻す。
排気通路9には、排ガス通路切替手段である排ガス切替弁65が設けられる。この排ガス切替弁65を閉じた場合、内燃機関1から排出された排ガスExは、前記排ガス導入通路62を通って炭化水素吸着・放出手段60へ流入する。この排ガス切替弁65を開いた場合、内燃機関1から排出された排ガスExは、炭化水素吸着・放出手段60へ流入しないで排ガス切替弁65の下流側へ流れ、一部は改質室21へ、残りは改質器20の排気通路22へ流れる。このように、排ガス切替弁65は、内燃機関1から排出された排ガスExの流れる方向を切り替える機能を有する。
炭化水素導管63には、炭化水素放出手段である炭化水素放出弁(以下、HC放出弁)66が備えられている。HC放出弁66は、炭化水素吸着・放出手段60の吸着・放出部61から放出された炭化水素を、改質用導管11を介して改質器20の改質室21へ導く。また、排ガス放出通路64には、排ガス放出手段である排ガス放出弁67が設けられる。排ガス放出弁67は、炭化水素吸着・放出手段60の吸着・放出部61に炭化水素を吸着させる際に開き、吸着・放出部61を通過した排ガスExを排気通路9へ戻す。排ガス切替弁65、HC放出弁66及び排ガス放出弁67の動作は、いずれもエンジンECU50により制御される。
ここで、HC吸着後、改質可能な条件が満たされるまで、HC放出弁66及び排ガス放出弁67を閉じて、吸着・放出部61内に吸着したHCの漏れを低減させる。このとき、排ガス導入通路62に切替弁を設け、HC吸着後、改質可能な条件が満たされるまでの期間は、前記切替弁を閉じるようにしてもよい。このようにすれば、吸着・放出部61内に吸着したHCの漏れ量をより低減できる。このときには、吸着・放出部61の内圧が上昇し過ぎないように、規定の圧力値を超えた場合には、前記排ガス導入通路62に設けた切替弁を開くように制御してもよい。次に、改質について説明する。
排気通路9から改質用導管11へ導かれた排ガスExは、改質用燃料噴射弁24から改質用燃料Frが噴射される。改質用燃料Frは、内燃機関1の各気筒1s1〜1s4へ供給される燃料Fの一部であり、内燃機関1の運転条件に応じて改質用燃料Frの供給量τrが決定される。改質用燃料Frと排ガスExとの改質用混合気Gmrは、改質用導管11から改質室21へ導入され、改質室21の内壁面に担持された改質用触媒により、式(1)に示す改質反応により改質されて改質ガスExrとなる。
1.56(7.6CO2+6.8H2O+40.8N2)+3C7.613.6+4122kJ→31H2+34.7CO+63.6N2・・・(1)
ここで、左辺第1項が排ガスEx、左辺第2項が燃料(炭化水素HCであり、実施例1ではガソリン)、右辺が改質ガスExrを示す。右辺の改質ガスExrに含まれる水素は、全改質ガスの体積に対して24vol%である。また、この改質反応は吸熱反応であり、これにより排ガスExの熱エネルギを回収することになる。このように、吸熱反応により排ガスExが改質されるため、内燃機関1に供給する燃料の量が同一であっても、排ガスExの熱を吸収した分だけ内燃機関1での燃焼における発熱量が増加する。
また、水素(H2)の発熱量は241.7kJ/molであり、ガソリン(CH1.869)の発熱量は596.5kJ/molである。しかし、式(1)の改質反応により、3モルのガソリン(燃料)から31モルの水素が発生する。したがって、前記発熱量と、式(1)の改質によるモル数変化とを乗ずると、ガソリン単独を燃焼させる場合と比較して、改質ガスExrの発熱量は大幅に増加する。これにより、内燃機関1の出力トルクが増加し、また燃料消費は低減される。
改質室21で生成された改質ガスExrは、ガス還流通路10を通って、吸気通路3へ導入される。改質ガスExrは、700℃前後の高温になるため、ガス還流通路10の途中に設けられた冷却器12で冷却されてから吸気通路3へ導入される。吸気通路3へ導入される改質ガスExrの流量(還流流量)は、還流流量調整弁5で制御される。吸気通路3へ導入される改質ガスExrの流量は、内燃機関1の運転条件に基づき、当該運転条件における最大限の改質ガスを内燃機関1に導入できるように決定される。この場合、改質ガスExrに含まれる水素、一酸化炭素(CO)の量を考慮し、ポート噴射弁6の燃料噴射量を補正して空燃比A/Fを最適化する。
改質ガスExrに含まれる水素(H2)は、ガソリンと比較して最大点火エネルギが1/10程度であり、最大燃焼速度が10倍弱である。このため、水素はガソリンと比較して急速燃焼する。上記改質反応によって得られた水素を含む改質ガスExrを内燃機関1に供給すると、改質ガスExr中の水素により、燃焼改善効果が得られる。
内燃機関1の運転においては、排ガスExを吸気側に還流させる、いわゆるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を実行することがある。内燃機関1が軽負荷で運転されているときにEGRを実行すると、ポンプロスが低減されて燃料消費を低減できるが、排ガスExの環流量(EGR量)が多すぎると燃焼速度が遅くなって燃焼が悪化する。その結果、内燃機関1の出力トルクが低下し、ドライバビリティが悪化する。実施例1に係る内燃機関1は、水素を含む改質ガスExrを内燃機関1に還流させるので、改質ガスExrの還流量を増加させた場合でも、水素が急速燃焼することで、燃焼悪化が抑制される。その結果、燃料消費を低減できるとともに、燃焼悪化に起因する出力トルクの低下を抑制して、ドライバビリティの悪化を抑えることができる。
また、内燃機関1が高負荷(例えばWOT(Wide Open Throttle)領域での運転や負荷率で80%程度を超える領域での運転)においてEGRを実行すると、燃焼室の温度を低下させることができるので、ストイキ(λ=1)で運転できる領域が拡大する。しかし、EGRにより燃焼が悪化して、出力トルクが低下し、ドライバビリティを悪化させることがある。実施例1に係る内燃機関1は、排ガスExだけではなく、水素を含む改質ガスExrを内燃機関1に還流させるので、改質ガスExr中の水素が急速燃焼することで燃焼悪化が抑制される。また、水素の急速燃焼によりノッキングを改善できるので、点火時期を進角させて、内燃機関1の出力トルクを向上させることができる。その結果、燃料消費を低減できるとともに、燃焼悪化に起因する出力トルクの低下を抑制して、ドライバビリティの悪化を抑えることができる。
次に、実施例1に係る内燃機関の運転制御装置について説明する。図3は、実施例1に係る内燃機関の運転制御装置を示す説明図である。実施例1に係る内燃機関の運転制御は、実施例1に係る内燃機関の運転制御装置30によって実現できる。図3に示すように、内燃機関の運転制御装置30は、エンジンECU50に組み込まれて構成されている。エンジンECU50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pと、記憶部50mと、入力及び出力ポート55、56と、入力及び出力インターフェイス57、58とから構成される。
なお、エンジンECU50とは別個に、実施例1に係る内燃機関の運転制御装置30を用意し、これをエンジンECU50に接続してもよい。そして、実施例1に係る内燃機関の運転制御方法を実現するにあたっては、エンジンECU50が備える内燃機関1の制御機能を、前記内燃機関の運転制御装置30が利用できるように構成してもよい。
内燃機関の運転制御装置30は、運転状態判定部31と、吸着・放出制御部32とを含んで構成される。これらが、実施例1に係る内燃機関の運転制御方法を実行する部分となる。実施例1において、内燃機関の運転制御装置30は、エンジンECU50を構成するCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pの一部として構成される。この他に、CPU50pには、改質を制御する改質制御部33、及び内燃機関1の運転を制御する制御部53が含まれている。
CPU50pと、記憶部50mとは、バス541〜543を介して、入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。これにより、内燃機関の運転制御装置30を構成する運転状態判定部31と吸着・放出制御部32とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。また、内燃機関の運転制御装置30は、エンジンECU50が有する内燃機関1の負荷KLや機関回転数NEその他の内燃機関の運転制御データを取得したり、内燃機関の運転制御装置30の制御をエンジンECU50の内燃機関の運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55には、入力インターフェイス57が接続されている。入力インターフェイス57には、エアフローセンサ42、回転数センサ43、改質用触媒床温度センサ44、A/Fセンサ45、冷却水温センサ46、アクセル開度センサ47、排気温度センサ48、水素濃度センサ49その他の、燃料供給制御や内燃機関1の運転制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェイス57内のA/Dコンバータ(A/D)57aやディジタル入力バッファ57dにより、CPU50pが利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU50pは、燃料供給制御や内燃機関1の運転制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート56には、出力インターフェイス58が接続されている。出力インターフェイス58には、排ガス切替弁65、HC放出弁66、排ガス放出弁67その他の、内燃機関1の運転制御に必要な制御対象が接続されている。出力インターフェイス58は、制御回路581、582等を備えており、CPU50pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記センサ類からの出力信号に基づき、エンジンECU50のCPU50pは、内燃機関1の運転を制御することができる。
記憶部50mには、実施例1に係る燃料供給制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや制御マップ、あるいは内燃機関1の運転制御に用いる燃料噴射量のデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへすでに記録されているコンピュータプログラムと組み合わせによって、実施例1に係る燃料供給制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この内燃機関の運転制御装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、運転状態判定部31及び吸着・放出制御部32の機能を実現するものであってもよい。次に、実施例1に係る燃料供給制御及び内燃機関の運転制御装置等の動作について説明する。この説明においては、適宜図1〜図3を参照されたい。
図4は、実施例1に係る内燃機関の運転制御を説明するフローチャートである。図5−1〜図5−3は、実施例1に係る炭化水素吸着・放出手段の動作を示す説明図である。実施例1に係る内燃機関の運転制御を実行する際には、まず、内燃機関の運転制御装置30が備える運転状態判定部31は、内燃機関1の暖機が完了しているか否かを判定する(ステップS101)。内燃機関1の暖機が完了したか否かは、冷却水温センサ46が検出した内燃機関1の冷却水温に基づいて判定することができる。また、浄化触媒16が浄化条件を満たしているか否かにより、内燃機関1の暖機が完了したか否かを判定してもよい。浄化条件を満たしているか否かは、浄化触媒16の温度により判定することができる。すなわち、浄化触媒16の温度がある温度以上であれば、排ガスExに含まれるCOやHCを所定値よりも少なくできるので、これをもって暖機が完了したと判定できる。浄化触媒16の温度は、例えば、排気温度センサ48から取得した排気温度に基づいて求めたり、内燃機関1の運転条件から計算により推定したりすることができる。
内燃機関1の暖機が完了していない場合(ステップS101;No)、内燃機関の運転制御装置30が備える吸着・放出制御部32は、炭化水素吸着・放出手段60の吸着・放出部61に、排ガスEx中に含まれる炭化水素(HC)を吸着させる(ステップS102)。内燃機関1の暖機が完了するまでは、内燃機関1に供給される燃料が増量されるので、一般に内燃機関1の暖機中には多量の未燃の炭化水素が内燃機関1から排出される。また、内燃機関1の暖機が完了していない場合は、通常浄化触媒16は浄化条件を満たしていない。したがって、内燃機関1の暖機が完了していない場合には、暖機完了後よりも多くのHCが排出され、かつ浄化触媒16で十分に浄化されないことになる。このため、実施例1に係る内燃機関1は、内燃機関1の暖機完了前に、排ガスEx中に含まれるHCを前記吸着・放出部61に吸着させる。
排ガスEx中に含まれるHCを前記吸着・放出部61に吸着させるには、前記吸着・放出制御部32が炭化水素吸着・放出手段60の排ガス切替弁65、HC放出弁66及び排ガス放出弁67を作動させ、排ガスExを前記吸着・放出部61に流入させる。より具体的には、図2に示すように、排ガス切替弁65及びHC放出弁66を閉じ、排ガス放出弁67を開く。これにより、内燃機関1から排気通路9に排出された排ガスExは、排ガス切替弁65に妨げられて炭化水素吸着・放出手段60の排ガス導入通路62へ流入し、吸着・放出部61へ導かれる。そして、排ガスEx中に含まれるHCは、吸着・放出部61の吸着・放出材61zに吸着される。HCが吸着された後の排ガスExは、HC放出弁66が閉じているため、排ガス放出通路64を通って排気通路9へ流れる。このようにして、吸着・放出部61の吸着・放出材61zへ排ガスEx中に含まれるHCを吸着させたら、STARTに戻って内燃機関1の運転状態を監視する。
内燃機関1の暖機が完了した場合(ステップS101;Yes)、内燃機関の運転制御装置30が備える吸着・放出制御部32は、内燃機関1が排出する排ガスExを、暖機後の排気経路へ流す(ステップS103)。内燃機関1の暖機が完了すれば、排ガスEx中に含まれる未燃のHCは少なくなり、また、浄化触媒16も浄化条件を満たすことになるからである。
ここで、暖機後の排気経路とは、排ガスExが排気通路9を通って改質器20へ流れる経路であり、排ガスEx炭化水素吸着・放出手段60を通らずに排気通路9を流れることになる。このようにするため、前記吸着・放出制御部32は、図5−1に示すように、排ガス切替弁65を開くとともに、HC放出弁66及び排ガス放出弁67を閉じる。これにより、排ガスExは排気通路9に設けられた排ガス切替弁65を通って、暖機後の排気経路を流れる。
次に、前記運転状態判定部31は、改質可能な条件を満たしているか否かを判定する(ステップS104)。改質可能な条件を満たしていない場合(ステップS104;No)、前記吸着・放出制御部32は、炭化水素吸着・放出手段60のHC放出弁66を閉じて(ステップS105)、改質可能な条件を満たすまで待機する。改質可能な条件を満たしていない場合に前記HC放出弁66を開き、吸着・放出部61からHCを放出してこれを改質器20へ導入しても、十分に改質されないからである。なお、ステップS104における判定では、改質室21内の改質用触媒の温度が活性温度Ta以上になっているか否か、及び排ガスExが理論空燃比、あるいは理論空燃比よりも燃料が濃い状態であるか否かを判定する。
改質可能な条件を満たしている場合(ステップS104;Yes)、改質器20での改質を開始する。改質を開始するにあたって、まず、改質制御部33は、内燃機関1へ還流させる改質ガスExrのガス還流率(以下改質ガス還流率という)を決定する(ステップS106)。この改質ガス還流率は、内燃機関1の運転条件を考慮して決定される。次に、この改質ガス還流率の決定手順の一例について説明する。
実施例1では、改質ガスExrを内燃機関1に最大限供給できるように改質ガス還流率を決定する。図6は、ガス還流率と燃料消費率との関係を示す説明図である。図7は、実施例1に係るGRrマップの一例を示す説明図である。図6の点線は、排ガスExのみを還流させた場合の燃料消費率ρとガス還流率(GR率)との関係を示している。ここで、ガス還流率とは、ガス還流量/(ガス還流量+吸入空気量)である。また、排ガスExのみを還流させた場合のガス還流率(GR率)は、いわゆるEGR率であり、実施例1ではGReで表す。実施例1におけるEGR率は、内燃機関1のある機関回転数NEとある負荷(吸入空気量Ga)との組み合わせに対して、燃料消費率ρが最も少なくなるとき(ρmin1)のガス還流率である。このガス還流率は、図6中のGReとなる。
図6の実線は、改質ガスExrを還流させた場合の燃料消費率とガス還流率との関係を示している。ここで、「改質ガス還流率」とは、水素を含む改質ガスExrを内燃機関1に還流させる場合のガス還流率をいう。図6において、改質ガス還流率は、改質ガスExrを内燃機関1に還流させる場合において、内燃機関1のある機関回転数NEとある負荷(吸入空気量Ga)との組み合わせに対して、燃料消費率ρが最も少なくなるとき(ρmin2)のガス還流率である。
このガス還流率は、図6中のGRrとなる。GRrマップ80(図7)は、複数の機関回転数NEと吸入空気量Gaとの組み合わせにおいて求めた改質ガス還流率GRrmnが記述されている。なお、GRrマップ80には、改質ガス還流率GRrmnの代わりに、当該ガス還流率に相当する改質ガスExrの還流流量を記述してもよいし、当該ガス還流率になる還流流量調整弁5の開度を記述してもよい。吸着・放出制御部32は、GRrマップ80に内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとを与え、当該運転条件における改質ガス還流率を決定する。
内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとが決定されれば、そのときの改質用触媒温度Tcも決まる。改質用触媒温度Tcが決まれば、その改質用触媒温度Tcにおいて得られる改質ガスExr中に含まれる水素濃度(改質ガス水素濃度)DH(vol%)も決まる。すなわち、内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとが決定されると、改質ガス水素濃度DHが決定される。
改質ガス還流率を決定するにあたっては、例えば、内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとから決定される改質用触媒温度Tc及び改質ガス水素濃度DHとを考慮した実験をして、例えば燃料消費率ρが最も小さくなるガス還流率を改質ガス還流率として決定する。そして、それぞれの機関回転数NEと吸入空気量Gaとの組み合わせに対して改質ガス還流率を求め、GRrマップ80を作成する。このように、改質ガス還流率は、改質用触媒温度Tc及び改質ガス水素濃度DHの情報も含んで決定される。そして、改質器20に供給する改質用燃料供給量を決定するため、GRrマップ80には、改質ガス還流率の他に、改質ガス水素濃度DHも記述されている。
なお、実施例1では、内燃機関1の燃料消費を低減する目的から燃料消費率ρが最も小さくなるガス還流率を改質ガス還流率としてGRrマップを作成しているが、例えば、内燃機関1が搭載される車両のドライバビリティに着目して、内燃機関1のトルク変動の許容限度におけるガス還流率を改質ガス還流率としてGRrマップを作成してもよい。このように、目的に応じて、改質ガス還流率を決定することができる。
このようにして決定された改質ガス還流率GRrは、図6に示すように、排ガスExのみを還流させるときのEGR率よりも大きくなる。すなわち、改質ガス還流率を用いて決定される改質ガスExrの還流量は、EGR率を用いて決定される排ガスExの還流量よりも大きくなる。これにより、改質ガスExrを還流させるときは、排ガスExのみを還流させるときよりも多くの改質ガスを内燃機関1に還流させることができる。
ある機関回転数NE、吸入空気量Gaがわかれば、内燃機関1が排出する総排ガス量がわかる。また、前記機関回転数NE、吸入空気量Gaのときにおける改質ガス還流率及びそのときの改質ガス水素濃度DHもわかるので、総排ガス量と改質器20に導入される排ガスExの量とがわかる。すなわち、改質ガス還流率に内燃機関1が排出する総排ガス量を乗じた値が、改質器20に導入される排ガスExの量である。そして、改質器20に導入される排ガスExの量と、改質ガス水素濃度DHとから、改質器20に供給する改質用燃料Frの量を決定できる。上記手順によれば、ある機関回転数NE、吸入空気量Gaにおいて得られる改質ガスExrに含まれる水素の濃度が最大となるように、改質用燃料が改質器20に供給されることになる。
改質ガス還流率GRrを決定したら、改質制御部33は、決定した改質ガス還流率及びそのときの改質ガス水素濃度DHに基づいて、改質用燃料Frの供給量を決定する。第2のガス還流量を決定する際、内燃機関1の運転条件は機関回転数NE及び吸入空気量Gaであり、かつλ=1(ストイキ)なので、このときに内燃機関1から排出される総排ガス量Qex_allがわかる。また、改質ガス還流率はGRrマップ80により決定されているので、この総排ガス量Qex_allに、GRrマップ80から決定された改質ガス還流率GRrを乗ずれば、改質器20へ導かれる排ガスExの量、すなわち、改質器20で改質される排ガス量Qexrを求めることができる。
実施例1においては、ある機関回転数NEと吸入空気量Gaとにおいて、改質ガス水素濃度DHが最大となるように、改質用燃料Frと排ガスExとの改質用混合気Gmrを改質する。このため、改質用燃料Frの供給量τrは、改質される排ガス量Qexrが決定されれば、一義的に決定される。すなわち、改質ガスExrの改質ガス水素濃度DHが最大になるように、例えば、式(1)を用いて改質用燃料Frの供給量τrを決定すればよい。また、改質用燃料Frの供給量τrは、予め実験により求めて、機関回転数NEと吸入空気量Gaとに対してマップ化しておいてもよい。
第2のガス還流量を決定したとき、内燃機関1は機関回転数NE及び吸入空気量Gaであり、λ=1(ストイキ)なので、このときに内燃機関1へ供給する全燃料供給量τallがわかる。上記手順により、改質用燃料Frの供給量τrが決定されるので、内燃機関1へ供給する燃料Feの供給量τeはτall−τrで求めることができる。このような手順により、内燃機関1へ供給する燃料Feの供給量τeと、改質用燃料Frの供給量τrと、改質される排ガス量Qexrを決定するための改質ガス還流率とが決定される。改質制御部33は、決定された改質ガス還流率に基づいて、還流流量調整弁5の開度を制御する。同時に、改質制御部33は、内燃機関1へ供給する燃料Feの供給量τe及び改質用燃料Frの供給量τrで燃料が噴射されるように、ポート噴射弁6及び改質用燃料噴射弁24を制御する。
改質器20で生成される改質ガスExrは、水素を含む。上述したように、水素は、燃焼速度が速く、可燃限界が広い。また、ガソリンに比べ等モルで1/3弱の発熱量を持つ。このため、水素を含んだ改質ガスExrを内燃機関1に還流させると、排ガスExのみを内燃機関1に還流させる場合よりガス還流率を高くしても安定した燃焼が得られる。したがって、図4に示すように、水素を含んだ改質ガスExrを内燃機関1に還流させる場合、水素を含まない通常の排ガスExを内燃機関1に還流させる場合よりも多くの改質ガスExrを還流させることができる。すなわち、図6に示すように、改質ガス還流率GRrは、EGR率GReよりもΔGRだけ大きく設定することができる。
これにより、最大限の改質ガスExrを内燃機関1に還流させることができるので、ポンピングロスを低減させて、燃料消費を効果的に抑制できる。そして、改質ガスExrの還流による燃焼悪化は、改質ガスExr中に含まれる水素により抑制できる。特に、実施例1では、改質ガスExrに含まれる水素濃度が最大となるように制御できるので、改質ガスExrの還流量増加に起因する燃焼悪化も効率的に抑制できる。
また、改質ガスExrに含まれる水素濃度が最大となるように制御できるので、ノッキングの改善効果や、改質して得られた水素による発熱量の増加によるトルク増加効果も得られる。さらに、内燃機関1の運転条件を考慮して改質ガス還流率を決定することにより、改質ガスExrを最大限供給できるので、燃焼温度低減によるNOx低減効果も得られる。
上述した手順で改質ガス還流率を決定したら(ステップS106)、改質器20へ排ガスExとHC(ここでは未燃の燃料)との改質用混合気Gmrを改質器20へ供給して、改質を開始する(ステップS107)。このときには、図5−2に示すように、前記吸着・放出制御部32が排ガス放出弁67を閉じ、排ガス切替弁65及びHC放出弁66を開く。これにより、前記吸着・放出部61に吸着されているHCを、改質用導管11を通して改質器20の改質室21へ供給する。このように、改質時には、内燃機関1の暖機完了前に前記吸着・放出部61へ吸着したHCを優先して消費するようにするので、改質器20に対する燃料供給量を低減して、内燃機関1全体としての燃料消費を抑制することができる。また、暖機完了前に回収した未燃のHCがそのまま浄化触媒16で浄化される割合を極めて低減できるので、回収したHCを有効に活用することができる。
なお、前記吸着・放出部61から改質器20へHCを供給する際には、必要に応じて排ガス切替弁65をある程度閉じ、前記排ガス導入通路62内の圧力を前記吸着・放出部61よりも高くして、効率的に前記吸着・放出部61からHCを改質用導管11へ送り込んでもよい。また、改質時においては排ガスExの温度も改質するために十分高くなっている。このため、高温の排ガスExを前記吸着・放出部61へ導入することで、前記吸着・放出部61内の吸着・放出材61zの温度を上昇させ、HCの脱離を促進することもできる。
改質制御部33は、前記吸着・放出部61内から改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かを判定する(ステップS108)。改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かは、例えば、改質器20から発生する改質ガスExrに含まれる水素の濃度と、内燃機関1の運転条件から決定されるガス還流率においての改質ガスExrに含まれるべき水素の濃度(改質ガス水素濃度)とを比較することによって判定できる。改質器20から発生する改質ガスExrの水素の濃度は、ガス還流通路10に設けられる水素濃度センサ49により検出できる。
内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとが決定されれば、そのときの改質用触媒の温度(改質用触媒温度)Tcも決まる。改質用触媒温度Tcが決まれば、その改質用触媒温度Tcにおいて得られる改質ガスExr中に含まれる改質ガス水素濃度DH(vol%)も決まる。すなわち、内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとが決定されると、改質ガス水素濃度DHが決定される。この改質ガス水素濃度DHと、前記機関回転数NE及び吸入空気量Gaにおいて水素濃度センサ49で測定した水素濃度とを比較することによって、改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かを判定することができる。
また、水素濃度センサ49によらず、A/Fセンサ45を用いて改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かを判定してもよい。改質時においては、理論空燃比、あるいは理論空燃比よりも燃料が濃い状態で内燃機関1が運転される。これは、理論空燃比よりも燃料が希薄の状態、すなわち酸素過多の状態では改質できないからである。
例えば、改質時に理論空燃比で内燃機関1を運転する場合、内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとが決定されると、そのときの全燃料供給量τallがわかる。改質時においては、この全燃料供給量τallは、内燃機関1に対する燃料の供給量τeと、改質器20に供給する燃料の供給量τrとに振り分けられる。改質器20へ供給されるHCが不足している場合、改質器20に振り分けられる燃料の供給量τrが不足することになるので、そのときの空燃比は、内燃機関1の機関回転数NEと吸入空気量Gaとから決定される空燃比よりも燃料が薄くなる方向に変化する。A/Fセンサ45によりこの変化を検出すれば、改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かを判定することができる。なお、A/Fセンサ45を用いる場合、A/Fセンサ45は、炭化水素導管63の出口よりも排気通路9側(図1の点線で示すA/Fセンサ45)で空燃比を検出するようにすることが好ましい。
また、改質器20へ供給されるHCが不足している場合には、改質器20から内燃機関1へ還流される改質ガスExrに含まれる水素は少なくなる。その結果、内燃機関1の燃焼が不安定になって燃焼変動が大きくなる。この燃焼変動の変化を、例えば内燃機関1の回転変動から検出したり、内燃機関1の燃焼室内の燃焼イオン電流から検出したりすることによって、改質器20へ供給されるHCが不足しているか否かを判定することもできる。
前記HCが不足していない場合(ステップS108;No)、一旦、この内燃機関の運転制御ルーチンから抜け、STARTからこの内燃機関の運転制御を再び実行する。前記HCが不足している場合(ステップS108;Yes)、さらに多くのHCを改質器20へ供給する必要がある。このため、前記吸着・放出制御部32がHC放出弁66の開度を現状よりも大きくする(ステップS109)。
次に、前記吸着・放出制御部32は、HC放出弁66が全開か否かを判定する(ステップS110)。HC放出弁66が全開でない場合(ステップS110;No)、HC放出弁66が全開(図5−3参照)になるまで、ステップS108〜ステップS110を繰り返す。HC放出弁66が全開である場合(ステップS110;Yes)、前記吸着・放出部61からはこれ以上HCを改質室21へ供給することができないと判断できる。この場合には、改質制御部33が改質用燃料噴射弁24から改質用導管11内に燃料を噴射させることにより、内燃機関1の運転条件によって定められたガス還流率が要求する改質用燃料の不足分を補う(ステップS111)。また、前記吸着・放出部61からHCをほとんど放出してしまい、ここからはHCを改質室21へ供給することができない場合には、改質用燃料噴射弁24によって、内燃機関1の運転条件によって定められたガス還流率が要求する改質用燃料の全量を供給する。
以上、実施例1では、改質時には、内燃機関の暖機完了前に炭化水素吸着・放出手段へ吸着したHCを優先して消費するようにするので、改質器に対する燃料供給量を低減して、内燃機関全体としての燃料消費を抑制することができる。また、暖機完了前に回収した未燃のHCがそのまま浄化触媒で浄化される割合を極めて低減できるので、回収した未燃のHCを有効活用することができる。なお、実施例1で開示した構成は、適宜以下の実施例に適用することができる。
実施例2は、実施例1と略同様の構成であるが、理論空燃比よりも燃料が希薄の状態においては、炭化水素吸着・放出手段に吸着したHCを排ガスに供給することで、理論空燃比よりも燃料が濃い状態の排ガスを改質器へ供給して、燃料改質を可能とする点が異なる。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略する。
図8は、実施例2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。実施例2に係る内燃機関の運転制御は、実施例1に係る内燃機関の運転制御装置30(図3)により実現できる。実施例2に係る内燃機関の運転制御のステップS201〜ステップS205までは、実施例1に係る内燃機関の運転制御のステップS101〜ステップS105までと同様であるので、説明を省略する。なお、実施例2に係る内燃機関の運転制御のステップS204における判定では、改質室21が備える改質用触媒の温度が活性温度Ta以上になっているか否かを判定する。すなわち、前記改質用触媒での改質反応によって、十分な水素を発生することができる条件になっているか否かを判定する。
改質可能な条件を満たしている場合(ステップS204;Yes)、前記運転状態判定部31は、A/Fセンサ45から信号を取得し、改質用導管11内における排ガスExの空燃比が、基準値よりも希薄(理論空燃比よりも燃料が希薄)であるか否かを判定する(ステップS206)。改質器20は、排ガスExの空燃比が理論空燃比、あるいはそれよりも燃料が濃い状態(リッチ)でなければ改質できない。したがって、実施例2において、前記基準値は理論空燃比となる。
改質用導管11内における排ガスExの空燃比が基準値よりも希薄でない場合(ステップS206;No)、改質器20での改質に影響はない。このため、改質用燃料噴射弁24から改質用導管11内へ燃料を噴射することにより、改質器20での改質を実行する。この場合、HC放出弁66を閉じて(ステップS207)、吸着・放出部61からHCを放出する必要があるときまで待機する。これにより、吸着・放出部61から改質用導管11へHCが流入することを抑制する。改質用導管11内における排ガスExの空燃比が基準値よりも希薄である場合(ステップS206;Yes)、このような排ガスExを改質器20へ導いても改質できない。この場合、前記吸着・放出部61から改質用導管11内へHCを放出する。
このようにすれば、高温の排ガスExにHCが噴射されるので、排ガスEx中に含まれる過剰な酸素が燃焼する。これによって、改質用導管11内における排ガスExの空燃比が基準値、あるいは基準値よりも燃料が濃い状態となる。これによって、改質用導管11内における排ガスExの空燃比が基準値よりも希薄である場合であっても、前記排ガスExの空燃比を改質に適した状態に調整できる。
なお、実施例2における改質用導管11内の空燃比の判定にあたっては、A/Fセンサ45を炭化水素導管63の出口と改質器20との間、すなわち、炭化水素導管63よりも改質器20側(図1の実線で示すA/Fセンサ45の位置)に取り付けることが好ましい。これにより、HCが放出されて空燃比が調整された排ガスExの空燃比を検出できるので、改質器20へ導入する排ガスExの空燃比を迅速かつ正確に調整できる。
改質用導管11内へHCを放出するときには、図5−2に示すように、前記吸着・放出制御部32が排ガス放出弁67を閉じ、排ガス切替弁65及びHC放出弁66を開く(ステップS208)。これにより、前記吸着・放出部61に吸着されているHCを、改質用導管11内に供給する。次に、前記吸着・放出制御部32は、HC放出弁66が全開であるか否かを判定する(ステップS209)。HC放出弁66が全開でない場合(ステップS209;No)、前記運転状態判定部31は、改質用導管11内の空燃比が、基準値よりもリーンであるか否かを判定する(ステップS206)。
改質用導管11内の空燃比が基準値よりもリーンである場合(ステップS206;Yes)、さらにHCを供給して改質用導管11内の空燃比を基準値以上にする必要がある。このため、前記吸着・放出制御部32がHC放出弁66の開度を現状よりも大きくし(ステップS208)、HC放出弁66が全開(図5−3参照)になるまで、ステップS206〜ステップS209を繰り返す。このような手順により、炭化水素吸着・放出手段に吸着したHCを排ガスに供給することで、理論空燃比よりも燃料が濃い状態の排ガスを改質器へ供給できるので、理論空燃比よりも燃料が希薄の状態における排ガスExに対しても燃料改質ができる。
HC放出弁66が全開である場合(ステップS209;Yes)、前記吸着・放出部61からはこれ以上HCを改質用導管11内に供給することができないと判断できる。この場合には、改質制御部33が改質用燃料噴射弁24から改質用導管11内に燃料を噴射させることにより、改質用導管11内に導かれた排ガスExに対して、改質に不足する分の燃料を供給する(ステップS210)。
なお、改質用導管11内における排ガスExの空燃比が基準値よりも希薄でない場合は(ステップS206;No)、改質用燃料噴射弁24から改質用導管11内へ燃料を噴射することにより、改質器20での改質を実行する。このとき、上記手順では、HC放出弁66を閉じて(ステップS207)、吸着・放出部61からHCを放出する必要があるときまで待機している。しかし、HC放出弁66を開き、吸着・放出部61に吸着されているHCを改質用導管11へ優先的に放出して、改質器20での改質に供してもよい。この場合、HC放出弁66を閉じるステップ(ステップS207)の代わりに、実施例1におけるステップS107〜ステップS111が実行される。このようにすれば、吸着・放出部61に吸着したHCを優先的に使用して、内燃機関1の燃料消費を抑制できるとともに、排ガスExが理論空燃比よりも燃料が希薄の状態においても燃料改質ができる。
以上、実施例2では、炭化水素吸着・放出手段を備え、これに吸着したHCを内燃機関1から排出される排ガスに供給することで、理論空燃比、あるいは理論空燃比よりも燃料が濃い状態の排ガスを改質器へ供給できる。これによって、理論空燃比よりも燃料が希薄の状態における排ガスに対しても燃料改質ができる。その結果、改質できる期間を増加させることができるので、改質ガスを内燃機関に還流させる期間が増加し、その分、燃料消費を抑制できる。なお、実施例2で開示した構成は、適宜以下の実施例に適用することができる。
実施例3は、実施例1と略同様の構成であるが、炭化水素吸着・放出手段の温度を調整できる温度調整手段を備える点が異なる。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略する。
図9は、実施例3に係る炭化水素吸着・放出手段を示す説明図である。この炭化水素吸着・放出手段60aは、温度調整手段として、吸着・放出部61の外側に内燃機関1の冷却液を流すウォータージャケット68wが設けられている。そして、内燃機関1の冷却液を、冷却液供給通路68iからウォータージャケット68wへ供給し、冷却液回収通路68oから内燃機関1側へ冷却液を回収する。
内燃機関1とウォータージャケット68wとの間には、冷却手段68rが備えられており、内燃機関1の冷却液が高温の場合には、冷却手段68rで冷却液の温度を冷却してからウォータージャケット68wへ供給する。冷却手段は、例えば、熱交換器と送風器とを組み合わせて構成することができる。なお、冷却手段68rは、内燃機関1が搭載される車両のラジエーターを用いてもよい。また、この例では、内燃機関1の冷却液により炭化水素吸着・放出手段60aの温度を調整する。すなわち、内燃機関1の冷却系の途中に炭化水素吸着・放出手段60aの温度調整手段を配置する。このような構成の他に、内燃機関1の冷却系とは独立して、炭化水素吸着・放出手段60aの温度調整手段を設けてもよい。さらに、冷却液以外にも、例えば吸着・放出部61の外側にフィンを設け、これに空気を流すとともに、前記フィンに流す空気の量を調整することにより、吸着・放出部61の温度調整手段を構成してもよい。
改質可能な条件を満たさない場合(上記ステップS104;No、ステップS204;No)には、改質可能な条件を満たすまで、吸着・放出制御部32が炭化水素吸着・放出手段60aのHC放出弁66を閉じて待機させる。これによって、実施例3に係る炭化水素吸着・放出手段60aは、前記待機中において、吸着・放出材61zの温度をHCの放出温度よりも低く保持することができる。
改質可能な条件を満たしたら(例えば、改質用触媒温度が活性温度以上になったとき)、その後、吸着・放出制御部32が炭化水素吸着・放出手段60aの吸着・放出材61zの温度を、HCの放出温度よりも高い温度に昇温させる。具体的には、冷却手段68rによる冷却を停止したり、ウォータージャケット68wに対する冷却液の循環を停止させたりする。そして、吸着・放出材61zの温度がHCの放出温度よりも高い温度に昇温したら、炭化水素吸着・放出手段60aのHC放出弁66を開き、改質用導管11内へHCを放出する。このようにすることで、吸着・放出材61zへ吸着させたHCの放出を低減して、排気通路9へのHCの流失を抑制できるので、吸着したHCをより効率的に利用することができる。そして、内燃機関1の燃料消費をより抑制できる。
なお、上記例では、改質可能な条件を満たした後に吸着・放出材61zの温度をHCの放出温度よりも高い温度に昇温させるが、改質器20の改質可能な条件を満たす時期を予測して、改質可能な条件を満たす前に、吸着・放出材61zの温度を昇温させてもよい。例えば、改質用触媒床温度センサ44の昇温速度から、運転状態判定部31により、改質用触媒の温度が活性温度以上になる時期を予測する。そして、予測した時期に吸着・放出材61zの温度がHC放出温度を超えるように、吸着・放出制御部32は、ウォータージャケット68wに流す冷却液の温度を調整したり、あるいはウォータージャケット68wに対する冷却液の循環を停止したりする。このようにすれば、改質可能な条件を満たすとともに、改質器20へHCを供給することができるので、改質可能な条件を満たしたら、ただちに改質へ移行することができる。
図10は、実施例3に係る炭化水素吸着・放出手段の他の例を示す説明図である。この炭化水素吸着・放出手段60bは、上記炭化水素吸着・放出手段60aの温度調整手段として、さらに加熱手段としてヒータ69hを設けている。このヒータ69hは、バッテリ69bの電力が、制御装置69cを介して供給される。改質可能な条件を満たす場合(上記ステップS104;No、ステップS204;Yes)、ただちに吸着・放出材61zの温度をHCの放出温度以上に上昇させる必要がある。このため、排ガス切替弁65を多少閉じて、排ガスExの一部を吸着・放出部61内へ導いてもよいが、これによって排気抵抗が上昇し、内燃機関1の出力が低下したり、燃料消費が増加したりする。
この炭化水素吸着・放出手段60bによれば、改質可能な条件を満たした後、吸着・放出材61zの温度をHCの放出温度よりも高い温度に上昇させる場合には、ヒータ69hで吸着・放出材61zを加熱するので、排ガス切替弁65を閉じることによる排気抵抗の上昇を抑制できる。その結果、内燃機関1の出力低下や燃料消費の増加を抑制できる。
以上、実施例3では、炭化水素吸着・放出手段の温度を調整可能な、温度調整手段を備える。そして、改質可能な条件を満たすまで、炭化水素吸着・放出手段の炭化水素吸着・放出部をHC放出温度よりも低い温度に保つことができる。これによって、一旦吸着させたHCの放出を低減して、排気通路へのHCの流失を抑制できるので、吸着したHCをより効率的に利用することができる。その結果、内燃機関の燃料消費をより抑制できる。
以上のように、本発明に係る内燃機関及び内燃機関の運転制御装置は、排ガスに燃料を供給して、水素を含む改質ガスを生成する内燃機関に有用であり、特に、燃料消費を抑制することに適している。
実施例1に係る内燃機関の全体構成図である。 実施例1に係る内燃機関が備える炭化水素吸着・放出手段を示す概略図である。 実施例1に係る内燃機関の運転制御装置を示す説明図である。 実施例1に係る内燃機関の運転制御を説明するフローチャートである。 実施例1に係る炭化水素吸着・放出手段の動作を示す説明図である。 実施例1に係る炭化水素吸着・放出手段の動作を示す説明図である。 実施例1に係る炭化水素吸着・放出手段の動作を示す説明図である。 ガス還流率と燃料消費率との関係を示す説明図である。 実施例1に係るGRrマップの一例を示す説明図である。 実施例2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。 実施例3に係る炭化水素吸着・放出手段を示す説明図である。 実施例3に係る炭化水素吸着・放出手段の他の例を示す説明図である。
符号の説明
1 内燃機関
9 排気通路
11 改質用導管
16 浄化触媒
20 改質器
21 改質室
22 排気通路
24 改質用燃料噴射弁
30 内燃機関の運転制御装置
31 運転状態判定部
32 吸着・放出制御部
33 改質制御部
44 改質用触媒床温度センサ
45 A/Fセンサ
46 冷却水温センサ
48 排気温度センサ
49 水素濃度センサ
60、60a、60b 炭化水素吸着・放出手段
61 吸着・放出部
61z 吸着・放出材
62 排ガス導入通路
63 炭化水素導管
64 排ガス放出通路
65 排ガス切替弁
66 HC放出弁(炭化水素放出弁)
67 排ガス放出弁
68w ウォータージャケット
68r 冷却手段
69h ヒータ
50 エンジンECU

Claims (8)

  1. 改質用燃料と排ガスとの改質用混合気を改質用触媒により改質して水素を含む改質ガスを生成し、この改質ガスを、燃焼室とつながる吸気通路に還流させる改質手段と、
    炭化水素吸着・放出材を含み、前記排ガス中に含まれる炭化水素を前記炭化水素吸着・放出材に吸着させるとともに、吸着させた炭化水素を前記炭化水素吸着・放出材から放出させて前記改質手段へ供給する炭化水素吸着・放出手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関。
  2. 前記炭化水素吸着・放出手段は、暖機完了前に前記炭化水素吸着手段へ排ガスを導き、暖機終了後、かつ改質可能な条件を満たした後に、吸着した炭化水素を前記改質手段に対して放出して、前記改質手段へ炭化水素を供給することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記炭化水素吸着・放出手段は、前記改質手段が改質に必要な温度を満たしており、かつ前記改質手段へ供給する排ガスの空燃比が、改質に必要な空燃比よりも燃料が薄い状態である場合には、前記改質手段へ供給される前記排ガス中へ、吸着した炭化水素を放出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  4. 前記炭化水素吸着・放出材の温度を変更する温度調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
  5. 前記温度調整手段は、改質のために前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出するまでは、前記炭化水素吸着・放出材の温度を予め定めた温度に保持し、改質する際には、前記炭化水素吸着・放出材の温度を炭化水素の放出温度よりも高い温度に昇温させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
  6. 改質用燃料と排ガスとの改質用混合気を改質した改質ガスを吸気通路に還流させる改質手段と、排ガス中の炭化水素を吸着・放出する炭化水素吸着・放出材を含む炭化水素吸着・放出手段と、を備える内燃機関を制御するものであり、
    前記内燃機関の暖機が完了したか否か、及び改質可能な条件を満たしているか否かを判定する運転状態判定部と、
    前記内燃機関の暖機が完了する前には、前記炭化水素吸着・放出材に前記内燃機関が排出する排ガス中の炭化水素を吸着させ、前記内燃機関の暖機が完了し、かつ改質可能な条件を満たした後には、前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出させて前記改質手段へ供給させる吸着・放出制御部と、
    を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
  7. 排ガスと燃料との混合気を改質した改質ガスを吸気通路に還流させる改質手段と、排ガス中の炭化水素を吸着・放出する炭化水素吸着・放出材を含む炭化水素吸着・放出手段と、を備える内燃機関を制御するものであり、
    前記内燃機関の暖機が完了したか否か、及び改質可能な条件を満たしているか否かを判定する運転状態判定部と、
    前記内燃機関の暖機が完了する前には、前記炭化水素吸着・放出材に前記内燃機関が排出する排ガス中の炭化水素を吸着させ、前記内燃機関の暖機が完了し、かつ改質に必要な温度を満たしており、さらに前記改質手段へ供給する排ガスの空燃比が改質に必要な空燃比よりも燃料が薄い状態である場合には、前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出させ、この排ガスを前記改質手段へ供給させる吸着・放出制御部と、
    を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
  8. 前記内燃機関は、前記炭化水素吸着・放出材の温度を変更する温度調整手段を備えており、
    前記吸着・放出制御部は、改質のために前記炭化水素吸着・放出材から炭化水素を放出するまでは、前記炭化水素吸着・放出材の温度を予め定めた温度に保持し、改質する際には、前記温度調整手段により前記炭化水素吸着・放出材の温度を炭化水素の放出温度よりも高い温度に昇温させることを特徴とする請求項6又は7に記載の内燃機関の運転制御装置。
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