JP2006026850A - 磁気インパクト工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 衝撃的な回転に伴う騒音を抑制することができ、かつより低出力のモータを用いて構成することができる磁気インパクト工具を得る。
【解決手段】 制御回路21は、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に作用する吸引トルクより出力トルクの小さいモータ2を揺動制御して、モータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分にねじれ共振を生じさせ、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的な結合を解除させる。
【選択図】 図1
【解決手段】 制御回路21は、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に作用する吸引トルクより出力トルクの小さいモータ2を揺動制御して、モータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分にねじれ共振を生じさせ、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的な結合を解除させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁気を利用して衝撃的なトルクを発生させる磁気インパクト工具に関する。
従来より、機械的に衝撃的なトルクを発生させるインパクト工具が知られている(例えば特許文献1参照)。
図16および図17に示すように、上記特許文献1のインパクト工具100は、モータ101のトルクが減速機構102およびモータ出力軸103を介して伝達されて回転するハンマ104と、軸方向においてハンマ104と噛み合って回転するアンビル105と、軸方向で可動とされた同ハンマ104をアンビル105側に向けて付勢するスプリング106とを備え、前記ハンマ104とアンビル105との噛合部107でこのアンビル105に対しハンマ104の回転する方向に断続的な打撃を付与して同アンビル105を回動させることにより、このアンビル105の前端に形成された出力軸108に装着されるビットを衝撃的に回転させることができるものである。
そして、前記インパクト工具は、ビットホルダ114にドライバビットのようなビットを装着するインパクトドライバのようなものであって、外殻ケース112のグリップ部112aの下端に電源となる電池パック(図示せず)が装着されており、同グリップ部112aの前面側にはトリガスイッチ113が設けられている。外殻ケース112内にはモータ取付台121を介してモータ101が配設され、モータ101の出力回転軸にはピニオン122が圧入固定されており、このピニオン122にはモータ出力軸103の後端部分のキャリア部123に取り付けられたプラネタリギヤ124が噛み合っている。
前記モータ出力軸103は軸受125によって支持されると共に、軸受126で支持されたアンビル105によって支持されているもので、前記プラネタリギヤ124はモータ取付台121と一体に形成されたインターナルギヤ127にも噛み合っている。そのため、モータ101の出力回転軸が回転されると、ピニオン122、プラネタリギヤ124、インターナルギヤ127、およびキャリア部123で構成される遊星歯車機構(減速機構102)によって減速され、前記モータ出力軸103が回転する。
また、前記モータ出力軸103の外周には環状のハンマ104が軸方向及び回転方向に移動自在に配設されている。このハンマ104はその前面に前記アンビル105の後端部分に形成されたアンビル腕105aと噛み合うハンマ爪104aを備え、その内周に軸方向の直溝128を備えたものであり、モータ出力軸103の外周面に形成されたV字状溝129と同直溝128とに係合する鋼製のボール130の存在故に、同モータ出力軸103に対する軸方向及び回転方向の移動について制限を受けている。
そして、ハンマ104の背面には、スプリング106の一端がスラスト板131及び球132を介して当接される一方、スプリング106の他端はスラスト板133で支持されており、ハンマ104は前方へと付勢されている。アンビル105は軸受126によって回転自在に支持されており、その前端部分にはビットが装着されるビットホルダ114を備え、その後端部分には前記ハンマ爪104aと噛み合うアンビル腕105aが形成されている。したがって、このインパクト工具100において、モータ101のトルクは、ボール130を介してハンマ104に伝えられ、そして、スプリング106による付勢力で同ハンマ104はアンビル105と噛合部107で噛み合った状態にあるため、そのトルクはアンビル105に形成された出力軸108を通じてドライバビットのようなビットに伝達される。
ここで、ドライバビットのようなビットによるビス締め作業等を行っている際に、回転の負荷が大きくなってくると、ハンマ104とアンビル105との噛合部107において、モータ出力軸103に設けられたV字状溝129の存在故に、ハンマ104を後退させる方向の分力が生じ、このハンマ104はモータ出力軸103に対して回転しながら後退する。そして、ハンマ104とアンビル105との噛合部107でハンマ爪104aとアンビル腕105aとの噛み合いが外れ、モータ101からの回転エネルギとスプリング106の復元力とによって、同ハンマ104はアンビル105を打撃し、この打撃による回転方向の衝撃がドライバビットのようなビットに繰り返し加えられることによって、強力なトルクを発生することができる。
特開平11−333742号公報
しかしながら、上記従来のインパクト工具では、打撃により強力なトルクを発生させることができるが、ハンマ爪とアンビル腕とが直接衝突するため、大きな騒音(金属音)が発生する。したがって、この騒音を低減することが望まれている。
そこで、インパクト工具を、モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する磁気ハンマブロックと、磁気ハンマブロックに対向して配置される磁気アンビルブロックと、磁気アンビルブロックと共に回転する出力軸と、を備え、磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、磁気ハンマブロックの回転によって、磁気アンビルブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させるように構成することが考えられる。かかる構成により、ハンマ爪とアンビル腕とを直接衝突させることなく、相互に非接触で回転する磁気ハンマブロックおよび磁気アンビルブロックによって磁力を利用して衝撃的かつ強大なトルクを発生することができるので、騒音を大幅に低減することができる。
ところが、このような磁力を利用したインパクト工具(以下、磁気インパクト工具と記す)では、ねじを増し締めするときや、ねじを緩める場合等には、負荷トルクとして、回転開始当初から、磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの間の磁力による吸引トルクが加わることになる。ここで、上記磁気インパクト工具では、一旦回転動作が始まると、可動部分の慣性トルクを利用して、比較的低出力のモータでも当該吸引トルクを超える衝撃的なトルクを発生させることができるが、起動することができず磁気ハンマブロックが回転していない状態では、かかる慣性トルクを発生させることができない。かと言って、吸引トルクを超える駆動トルクを発生することが可能な、より高出力のモータを装備すると、その分、磁気インパクト工具が大型化して重量が増大するという問題が生じる。
そこで、本発明は、衝撃的な回転に伴う騒音を抑制することができ、かつ、より低出力のモータを用いて構成することができる磁気インパクト工具を得ることを目的とする。
本発明にかかる磁気インパクト工具にあっては、モータを所定の回転方向に回転制御する回転制御手段と、モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する主動側ブロックと、主動側ブロックに対向して配置される従動側ブロックと、従動側ブロックと共に回転する出力軸と、を備え、主動側ブロックと従動側ブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、主動側ブロックの回転によって、従動側ブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させる磁気インパクト工具において、モータから主動側ブロックまでの可動部分を回転軸周りに揺動させ、主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除する揺動制御手段を備えることを最も主要な特徴とする。
このような構成によれば、相互に接触しない主動側ブロックと従動側ブロックとの間に作用する磁力を利用して衝撃的なトルクを発生させるため、機械的な打撃音が発生せず、騒音を低減することができる。また、より低出力のモータを装備した場合であっても、揺動制御手段によって可動部分にねじれ共振を生じさせることにより、主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除し、モータが吸引トルクに対抗して可動部分を回転させることができない状態(ロック状態)から抜け出すことができる。かかるロック状態を抜け出すことにより、可動部分の慣性トルクを利用した衝撃的で強大なトルクを生じる回転動作が可能となる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記揺動制御手段によって主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除した後に、上記回転制御手段による回転制御を行うのが好適である。こうすれば、上記ロック状態にあったとしても、上記揺動制御によって当該ロック状態から抜け出すことができ、その後、より確実に衝撃的な回転動作を行わせることができる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記回転制御手段からモータに制御信号が入力されているにも拘わらず当該モータが回転しないロック状態であることを検出するロック状態検出手段を備え、上記ロック状態検出手段によってロック状態であることが検出されたときに、上記揺動制御手段によって主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除するのが好適である。こうすれば、ロック状態である場合、あるいは動作中にロック状態となったときには、直ちに揺動制御を実行し、より早期にロック状態から抜け出すことができる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記回転制御手段から入力された制御信号によって上記モータが回転可能であることを検出する回転可能状態検出手段を備え、上記回転可能状態検出手段によって回転可能であることが検出されたときに、上記揺動制御手段による制御を終了するとともに、上記回転制御手段による回転制御を行うのが好適である。こうすれば、ロック状態から抜け出して回転可能な状態となったときに、直ちに回転動作を行わせることができる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、前記揺動制御手段は、モータに、制御信号として、前記ねじれ共振周波数の矩形波信号または正弦波信号若しくはその半波形信号を入力するのが好適である。こうすれば、入力する制御信号を比較的容易に生成することができる。特に、正弦波信号またはその半波形信号とした場合は、揺動制御に伴う電気エネルギの浪費を少なくすることができる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段を備え、上記揺動制御手段は、上記電圧検出手段によって検出された駆動電圧の低下に応じて、当該駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くするのが好適である。こうすれば、駆動電圧が低下した場合にも、モータに印加される電力を確保することができ、より確実に揺動制御を行うことができるようになるとともに、無駄な電力消費を抑制し、電池寿命をより長くすることができる。
本発明によれば、騒音を低減することができるため、作業者やその近隣に対し、騒音による悪影響を及ぼすことがなくなるという効果がある。また、より低出力のモータを用いた場合であっても、吸引トルクによってモータがロックされた状態から抜け出すことができるので、磁気インパクト工具を、より小型かつより軽量に構成することができ、工具の重量による作業者への負担を軽減することができるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)図1〜図9は、本発明の第1実施形態を示しており、図1は、磁気インパクト工具の内部構造を示す側断面図、図2は、磁気インパクト工具に含まれるインパクト回転発生機構の分解斜視図、図3〜図6は、インパクト回転発生機構の断面図(図1のA−A断面図)であって、回転制御の各段階におけるインパクト回転発生機構の磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの位置関係を示す図、図7は、磁気インパクト工具の制御回路の概略構成を示すブロック図、図8は、揺動制御された磁気ハンマブロックの回転角の経時変化の一例を示す図、図9は、図8の揺動制御の各段階におけるインパクト回転発生機構の断面図である。なお、図8では、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電圧)、右側の縦軸を磁気ハンマブロック7の回転角としている。
本実施形態にかかる磁気インパクト工具1は、回転駆動力を発生するモータ2、モータ2による回転を減速する減速機構3、および磁力を利用して衝撃的な回転動作を発生させるインパクト回転発生機構4を備えており、出力軸5のビットホルダ6に装着したビット(図示せず)を衝撃的に回転させるものである。
モータ2は、制御回路21から入力される制御信号によって制御され、モータ出力軸(図示せず)を所定方向に回転させるものであり、例えば、直流電源(例えば蓄電池26)によって駆動されるDCモータとして構成される。また、減速機構3は、例えば、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤ(いずれも図示せず)を備える遊星歯車機構として構成され、モータ出力軸の回転を減速してインパクト回転発生機構4に伝達する。
インパクト回転発生機構4は、軸方向後側(モータ2側)の磁気ハンマブロック(主動側ブロック)7と、軸方向前側(出力軸5側)の磁気アンビルブロック(従動側ブロック)8とを含んでいる。本実施形態では、磁気ハンマブロック7に磁石9が設けられる一方、磁気アンビルブロック8は磁性体によって構成され、これらの間で非接触で磁気的吸引力が作用するようにしてある。
磁気ハンマブロック7では、筒状のコア部10の外周に、軸方向視で略十字状に突出する四つの板状の極取付部11が設けられるとともに、各極取付部11の径方向外側(先端側)に、極取付部11と同じ厚みの板状の磁石9が隣接して配置されている。そして、極取付部11および磁石9は、周方向の両側から磁性体からなる磁極板12で挟み込むようにして接着され、こうして90°おきに四つのハンマ部13が形成されている。また、コア部10の筒状部分には、減速機構3の出力軸(図示せず)と連結されて前側に伸びる駆動軸14が圧入されている。
一方、磁気アンビルブロック8は、略十字状に形成される板状の基体部15と、十字の各先端で折れ曲がって軸方向の後側(モータ2側)に伸びるアーム部16と、基体部15の中心部から軸方向の前側に向けて伸びる円柱状の出力軸5とを備える。アーム部16は、磁気ハンマブロック7のハンマ部13の外周に、微小なギャップをあけて90°間隔で四つ配設され、その幅はハンマ部13の幅とほぼ同じになるように形成されており、図3に示すように、各ハンマ部13の径方向外側に各アーム部16が対向配置される位置関係となったときに、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間で作用する磁力(吸引力)が最も強くなる。なお、本実施形態では、磁気アンビルブロック8の一部としての出力軸5が、磁気インパクト工具1の本体部の一部としてのケーシング17に設けられた軸受19に回転自在に支持されている。また、磁気ハンマブロック7の駆動軸14の前端部は磁気アンビルブロック8の基体部15の後端面に形成された有底孔15aに取り付けられた軸受20に回動自在に支持される一方、当該駆動軸14の後端部は減速機構3の出力に連結されている。
ここで、図3〜図6を参照して、インパクト回転発生機構4において衝撃的な回転が発生する原理について説明する。
まず、ねじの締め付け工程の初期状態など、負荷トルクが比較的小さい状態では、図3に示すように、磁気ハンマブロック7および磁気アンビルブロック8は、ハンマ部13とアーム部16とが周方向にほとんどずれることなく相互に重なり合った状態で回転する。
そして、ねじの締め付け等が進み、負荷トルクがより大きくなると、図4に示すように、磁気アンビルブロック8は磁気ハンマブロック7に対して周方向に遅れをもって回転するようになる。
さらに負荷トルクが増大し、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間の磁力による吸引トルクを越えると、それらの間の磁気的な結合が解除され、図5に示すように、ハンマ部13とアーム部16との同期が外れて周方向に大きくずれ、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に角速度の差が生じる。
しかし、磁気ハンマブロック7の回転がさらに進むと、ハンマ部13(13a)は、図6に示すように、従前に(図3の状態で)重なり合っていたアーム部16(16a)の先方側(回転先側)に隣接するアーム部16(16b)と重なり合う位置に到達する。このとき、磁気アンビルブロック8には、磁気ハンマブロック7から、モータ2の駆動トルクとモータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分の慣性トルクとの和となって吸引トルクを超えるトルクが衝撃的に伝達される。そして、上述した図3〜図6の動作が繰り返され、出力軸5のビットホルダ6に装着したビットを、断続的かつ衝撃的に印加される強大なトルクによって効率よく回転させることができる。
上述した衝撃的なトルクは、モータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分(本実施形態では、モータ2のロータ、減速機構3、および磁気ハンマブロック7)が回動している状態で生じるものであり、当該可動部分が停止している状態では生じない。回転していない状態では、可動部分の慣性トルクが得られないからである。そして、停止している状態(図3に示す状態)では、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に、磁力による吸引トルクが加わっているから、その出力(停動トルク)が吸引トルクを下回る低出力のモータ2では、この状態でロックされてしまい、回転を開始することができない。しかし、本実施形態では、その停動トルクが吸引トルクよりも低いモータ2を揺動制御し、可動部分にねじれ共振を生じさせることによって、かかるロック状態を抜け出すことができるようにしている。以下、かかる揺動制御およびその制御による可動部分の動作について説明する。
モータ2の動作を制御する制御回路21は、モータ2に制御信号を入力するモータ制御部22(本発明の回転制御手段および揺動制御手段に相当)の他、諸状態を検出する検出部として、ロック状態検出部23(本発明のロック状態検出手段に相当)、および回転可能状態検出部24(本発明の回転可能状態検出手段に相当)を備える。
ロック状態検出部23は、モータ2に、当該モータ2を回転させる制御信号が入力されているにも拘わらず当該モータ2が回転しないロック状態であることを検出する。具体的には、ロック状態検出部23は、モータ2の回転角度を検出するエンコーダ25から出力された角度検出パルスと、トリガスイッチ18からの操作入力信号に基づいて、トリガスイッチ18によって操作入力信号が入力されているにも拘わらず、当該操作入力信号に応じた回転数(単位時間あたりの角度検出パルスの数)が、それに対応する回転数未満である場合に、ロック状態検出信号を出力する。なお、ここで入力される操作入力信号は、引き込み操作の有無を示す信号であってもよいし、引き込み操作量を示す信号であってもよい。
モータ制御部22は、ロック状態検出部23でロック状態であることが検出されると、モータ2に対し、可動部分を揺動させるべく、揺動制御信号を入力する。本実施形態では、図8に示すように、揺動制御信号を、周波数が一定で、電圧値:+V0をハイレベル、電圧値:−V0をローレベルとする矩形波の電圧信号としている。
ここで、この可動部分に関しては、当該可動部分の慣性、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間の磁気バネ、およびモータ2内のロータ−磁石間の磁気バネからなるねじれ共振系が構成されており、当該可動部分を共振周波数(ねじれ共振の固有振動数およびその整数(2以上の整数)分の1の振動数)で揺動させると、ねじれ共振が生じる。すなわち、モータ2に、ねじれ共振周波数またはその近傍の周波数の揺動制御信号を入力すると、可動部分の揺動振幅が徐々に大きくなり、ついには、ロック状態から抜け出すことができる。本実施形態では、図8に示す揺動制御信号の入力により、図9に示すように、揺動の各段階(a)〜(e)の揺動角度(図3の正対状態からの角度差β1〜β5)がβ1からβ5まで漸増し(β1<β2<β3<β4<β5)、図8に示すように、可動部分の回転角が変化することになる。
回転可能状態検出部24は、可動部分が回転可能な状態にあることを検出する。具体的には、回転可能状態検出部24は、所定方向の回転について連続して検出される角度検出パルス数を積算して(ただし、回転方向が替わるたびにリセットする)揺動角度(振幅)を取得し、当該揺動角度が所定の閾値(例えば図8のα)以上であるときに、回転可能状態検出信号を出力する。あるいは、回転可能状態検出部24は、モータ2の回転数(単位時間あたりの角度検出パルスの数)が、所定の閾値以上であるときに、回転可能状態検出信号を出力するようにしてもよい。
そして、モータ制御部22は、回転可能状態検出部24において回転可能状態であることが検出されると、モータ2に対し、可動部分を所定方向(時計回りまたは反時計回り)に回転させるべく、回転制御信号を入力する。このとき、ロック状態からは既に抜け出しているから、かかる回転制御信号によって、モータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分は所定方向に回転することができる。よって、慣性トルクによって衝撃的かつ強大なトルクが生じることになる。
以上説明した本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、相互に接触しない磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に作用する磁力を利用して衝撃的なトルクを発生させるため、機械的な打撃音が発生せず、騒音を低減することができる。また、停動トルクが吸引トルクより低いモータ2を装備した場合であっても、揺動制御によって可動部分にねじれ共振を生じさせ、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的な結合を解除することができるため、その吸引トルクによってモータ2が可動部分を回転させることができない状態(ロック状態)から抜け出すことができる。そして、ロック状態を抜け出すことにより、可動部分の慣性トルクを利用した衝撃的で強大なトルクを生じる回転動作が可能となる。
すなわち、本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、吸引トルクによる上記ロック状態にあったとしても、上記揺動制御によって当該ロック状態から抜け出すことができ、その後、より確実に衝撃的な回転動作を行わせることができる。
また、本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、ロック状態検出部23を備え、当該ロック状態検出部23によってロック状態であることが検出されたときに、モータ制御部22によって揺動制御を行うため、ロック状態である場合、あるいは動作中にロック状態となったときには、直ちに揺動制御を実行し、より早期にロック状態から抜け出すことができる。
また、本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、回転可能状態検出部24を備え、当該回転可能状態検出部24によって回転可能であることが検出されたときに、モータ制御部22による揺動制御を終了するとともに、モータ制御部22による回転制御を行うので、ロック状態から抜け出して回転可能な状態となったときに、直ちに回転動作を行わせることができる。
そして、本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、モータに、制御信号として、可動部分のねじれ共振周波数の矩形波信号を入力するため、入力する制御信号を容易に生成することができる。
(第2実施形態)図10および図11は、本発明の第2実施形態を示しており、図10は、揺動制御された磁気ハンマブロックの回転角の経時変化の一例を示す図、図11は、図10に示す揺動制御の各段階におけるインパクト回転発生機構の断面図である。なお、図10では、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電圧)、右側の縦軸を磁気ハンマブロック7の回転角としている。本実施形態では、モータ制御部22によって出力する揺動制御信号が上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と異なっており、それ以外は上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と全く同様である。
図10に示すように、本実施形態では、モータ制御部22は、ロック状態検出部23でロック状態であることが検出されると、モータ2に対し、周波数が一定で、電圧値:+2V0をハイレベル、電圧値:0をローレベルとする正電圧のみの揺動制御信号を入力する。この場合も、各段階(a)〜(e)の揺動角度は、β1からβ5まで漸増するが、その大きさは、β1≒β2<β3≒β4<β5となる。これは、揺動制御信号が負の成分を含まないため、当該負の電圧によって回転する方向(逆転方向)の揺動量が小さくなるからである。本実施形態によれば、制御信号の生成がより容易である上、正電圧によって回転する方向(正転方向)に揺動角度が漸増するため必ず当該正転方向に閾値αを超えることになり、より実用性の高いものである。
(第3実施形態)図12は、本発明の第3実施形態を示しており、揺動制御された磁気ハンマブロックの回転角の経時変化の一例を示す図である。なお、図12では、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電流)、右側の縦軸を磁気ハンマブロック7の回転角としている。本実施形態では、モータ制御部22によって出力する揺動制御信号が上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と異なっており、それ以外は上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と全く同様である。
図12に示すように、本実施形態では、モータ制御部22は、ロック状態検出部23でロック状態であることが検出されると、モータ2に対し、電流値:+I0をハイレベル、電流値:−I0をローレベルとする正弦波形の揺動制御信号(電流)を入力する。この場合、揺動角度は、上記第1実施形態と同様にβ1からβ5まで漸増し、その大きさは、β1<β2<β3<β4<β5となる。本実施形態によれば、入力電流を正弦波形としたので無駄が少なく、可動部分を効率良く揺動させ、より早期にロック状態から抜け出すことができる。
(第4実施形態)図13は、本発明の第4実施形態を示しており、揺動制御された磁気ハンマブロックの回転角の経時変化の一例を示す図である。なお、図13でも、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電流)、右側の縦軸を磁気ハンマブロック7の回転角としている。本実施形態では、モータ制御部22によって出力する制御信号が異なる以外は上記第2実施形態にかかる磁気インパクト工具と全く同様である。
図13に示すように、本実施形態では、モータ制御部22は、ロック状態検出部23でロック状態であることが検出されると、モータ2に対し、電流値:+2I0をハイレベル、電流値:0をローレベルとする正弦波形の揺動制御信号(電流)を入力する。この場合、揺動角度は、上記第2実施形態と同様にβ1からβ5まで漸増し、その大きさは、β1≒β2<β3≒β4<β5となる。本実施形態によれば、入力電流を正弦波形としたので無駄が少なく、可動部分を効率良く揺動させ、より早期にロック状態から抜け出すことができる。
(第5実施形態)図14および図15は、本発明の第5実施形態を示しており、図14は、制御回路のブロック図、図15は、図14のモータ制御部による揺動制御信号のデューティ比の制御の一例を示す図である。なお、図15では、横軸を時間とし、縦軸を制御信号の電圧値としている。本実施形態では、上記第1実施形態と同様の構成要素を有している。よって、それら同様の構成要素については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図14に示すように、本実施形態にかかる制御回路21Aは、駆動電圧を検出する駆動電圧検出部27(本発明の電圧検出手段に相当)を備え、当該駆動電圧に応じて揺動制御信号の波形を変化させるものである。具体的には、駆動電圧検出部27は、電源としての蓄電池26の電圧をモニタしており、揺動制御信号の周期(周波数)は変化させることなく、駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くするものである。例えば、図15に示すように、通常時の駆動電圧を2[V(ボルト)]に対して有効な正電圧印加期間をT(デューティ比50%、すなわち周期は2T)と設定している場合には、駆動電圧がそれより高く例えば2.4[V]であるときには、正電圧印加期間をより短く0.83Tとする一方、駆動電圧がそれより低く例えば1.6[V]であるときには、正電圧印加期間をより長く1.25Tとする。これにより、駆動電圧が低下した場合にも、モータ2に印加される電力(すなわち電圧値と印加期間の積)をほぼ一定とすることができ、より確実にロック状態から抜け出すことができるようになるとともに、無駄な電力消費を抑制し、電池寿命をより長くすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。例えば、上記実施形態では、磁石を主動側ブロック(磁気ハンマブロック)に配置した場合を例にあげて説明したが、この磁石を従動側ブロック(磁気アンビルブロック)に設けてもよい。
また、ロック状態検出部23は、エンコーダ25の出力パルスを用いて可動部分の角速度または角加速度からロック状態を検出するようにしたが、これに替えて、モータ2に入力される制御信号の電流値を検出する電流検出部(図示せず)や、磁気ハンマブロック7の動作を検出するホール素子(図示せず)を設け、それらの検出結果を用いてロック状態を検出するようにしてもよい。前者の場合には、負荷トルクが大きいほどモータ制御信号の電流値が大きくなることを利用し、当該制御信号の電流値が所定の閾値より大きい場合に、ロック状態として検出することができる一方、後者の場合には、ホール素子によって検出した磁気ハンマブロック7の動作状態(パルス数等)から、ロック状態を検出することができる。
1 磁気インパクト工具
2 モータ
5 出力軸
7 磁気ハンマブロック(主動側ブロック)
8 磁気アンビルブロック(従動側ブロック)
9 磁石(磁極)
14 駆動軸
18 トリガスイッチ(操作指示手段)
22 モータ制御部(揺動制御手段、回転制御手段)
23 ロック状態検出部(ロック状態検出手段)
24 回転可能状態検出部(回転可能状態検出手段)
27 駆動電圧検出部(電圧検出手段)
2 モータ
5 出力軸
7 磁気ハンマブロック(主動側ブロック)
8 磁気アンビルブロック(従動側ブロック)
9 磁石(磁極)
14 駆動軸
18 トリガスイッチ(操作指示手段)
22 モータ制御部(揺動制御手段、回転制御手段)
23 ロック状態検出部(ロック状態検出手段)
24 回転可能状態検出部(回転可能状態検出手段)
27 駆動電圧検出部(電圧検出手段)
Claims (6)
- モータを所定の回転方向に回転制御する回転制御手段と、モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する主動側ブロックと、主動側ブロックに対向して配置される従動側ブロックと、従動側ブロックと共に回転する出力軸と、を備え、主動側ブロックと従動側ブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、主動側ブロックの回転によって、従動側ブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させる磁気インパクト工具において、
モータから主動側ブロックまでの可動部分を回転軸周りに揺動させ、主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除する揺動制御手段を備えることを特徴とする磁気インパクト工具。 - 前記揺動制御手段によって主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除した後に、前記回転制御手段による回転制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気インパクト工具。
- 前記回転制御手段からモータに制御信号が入力されているにも拘わらず当該モータが回転しないロック状態であることを検出するロック状態検出手段を備え、
前記ロック状態検出手段によってロック状態であることが検出されたときに、前記揺動制御手段によって主動側ブロックと従動側ブロックとの磁気的な結合を解除することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気インパクト工具。 - 前記回転制御手段から入力された制御信号によって前記モータが回転可能であることを検出する回転可能状態検出手段を備え、
前記回転可能状態検出手段によって回転可能であることが検出されたときに、前記揺動制御手段による制御を終了するとともに、前記回転制御手段による回転制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の磁気インパクト工具。 - 前記揺動制御手段は、モータに、制御信号として、前記ねじれ共振周波数の矩形波信号または正弦波信号若しくはその半波形信号を入力することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の磁気インパクト工具。
- モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記揺動制御手段は、前記電圧検出手段によって検出された駆動電圧の低下に応じて、当該駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くすることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の磁気インパクト工具。
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