JP2006070811A - 内燃機関の動弁機構用ローラフォロアおよびこれに用いる金属製ブッシュ並びにローラフォロアの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の動弁機構用ローラフォロアに用いる金属製ブッシュにおいて、その内周面を研磨する作業を不要とすること。
【解決手段】ローラ5の内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュ4を圧入嵌合した内燃機関の動弁機構用ローラフォロア1において、金属製ブッシュ4が、滑り層用非鉄金属材13と裏金層用鋼材12との複合板に対するプレス絞り加工により、非鉄金属材からなる滑り層10を内径側とし、鋼材からなる裏金層11を外径側とした2層構造の円筒形状のブッシュに成形されたものであり、かつ、金属製ブッシュ4が、ローラ5の内周面に圧入嵌合されており、かつ、金属製ブッシュ4の内周面の表面粗さが、その圧入嵌合前後でほぼ同等になっている。
【選択図】図2
【解決手段】ローラ5の内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュ4を圧入嵌合した内燃機関の動弁機構用ローラフォロア1において、金属製ブッシュ4が、滑り層用非鉄金属材13と裏金層用鋼材12との複合板に対するプレス絞り加工により、非鉄金属材からなる滑り層10を内径側とし、鋼材からなる裏金層11を外径側とした2層構造の円筒形状のブッシュに成形されたものであり、かつ、金属製ブッシュ4が、ローラ5の内周面に圧入嵌合されており、かつ、金属製ブッシュ4の内周面の表面粗さが、その圧入嵌合前後でほぼ同等になっている。
【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関における動弁機構用ローラフォロアに係り、特には、非回転の軸に回転自在なローラを支持する滑り軸受としての金属製ブッシュを備えた内燃機関の動弁機構用ローラフォロアと、そのローラフォロアに用いる金属製ブッシュと、ローラフォロアの製造方法に関する。
ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関の動弁機構においては、エンジンの駆動によりバルブを開閉させるローラフォロアが設けられている。このようなローラフォロアの中には、エンジンの駆動により動作するカムシャフトのカムが転接するローラと、ローラの内周面に嵌着される金属製ブッシュと、この金属製ブッシュの挿通孔に挿通される固定軸とを備えたタイプがある(特許文献1参照)。上記構成のローラフォロアにおいては、固定軸と金属製ブッシュとの隙間寸法が大きすぎると、振動騒音の増大等の不具合があり、隙間寸法が小さすぎると、固定軸との摩擦損失の増大等の不具合があり、金属製ブッシュと固定軸との隙間寸法は最適な寸法に設定する必要がある。この隙間寸法の設定のため、金属製ブッシュはローラの内周面に所要の締め代により圧入嵌合されている。
このような金属製ブッシュには、外径側において金属製ブッシュの強度確保や形状維持のため鋼製の裏金層とし、内径側において鋼製裏金層に焼結された銅系合金等からなる非鉄金属層との2層構造となっているものがある。金属製ブッシュの内径側が非鉄金属層とされているのは、固定軸の外周面を摺動するときに焼付きを防止する等のためである。この非鉄金属層は多孔質焼結金属層である。
このような金属製ブッシュの製造方法として、従来、裏金層と該裏金層に焼結結合された非鉄金属層との2層からなる積層板材を所定長さに切断し、切断した積層板材の両端を突合わせるように円筒形状に丸め加工して製造するものがある。
特開平03−31503号公報
このように金属製ブッシュを円筒形に丸め加工されて製造してある場合、金属製ブッシュの外周面には、所定長さに切断した積層板材の切断された両端(切断部)が丸め加工により突き合わされた状態になっており、その金属製ブッシュをローラの内周部に嵌合装着させた時点ではこの突き合わせ部には隙間が無いので、割れが発生したりしなくても、使用に伴い金属製ブッシュの内周面が摩耗してくると、該突き合わせ部に隙間が発生し、その隙間から割れが生じたり、あるいは、積層金属材の剥離等の損傷が発生したりするおそれがあった。
このような金属製ブッシュの従来の製造方法を図8を参照して説明する。図8(a)に示す、滑り用非鉄金属材の板材と裏金用鋼材の板材とを積層した積層板材20を、図8(b)で示すように所定長さで切断し、切断した所定長さの積層板材21に対して図8(c)で示すように丸め加工を施し(一次成形)、図8(d)で示すように積層板材21の切断部分同士を突き合わせる(最終成形)。このようして巻きタイプの金属製ブッシュ22が製造される。
このような製造方法では、積層板材21を丸め加工していく工程(一次成形から最終成形に至る工程)において、金属製ブッシュの周面が実際的には多角形状に変形することになる。したがって、このような丸め加工に伴い周面が多角形状となっているために、軸と摺接する内周面を円滑な摺接面(真円度の高い円筒内周面)としたり、寸法精度を良好なものとする研磨加工(ホーニング加工など)を最終成形後の金属製ブッシュに対して実施することが必要となっていた。このため加工コストの増大を招くなどの問題があった。
本発明に係る内燃機関の動弁機構用ローラフォロアは、ローラの内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュを圧入嵌合した内燃機関の動弁機構用ローラフォロアにおいて、前記金属製ブッシュが、滑り層用非鉄金属材と裏金層用鋼材との複合板をプレス絞り加工により、前記非鉄金属材からなる滑り層を内径側とし、鋼材からなる裏金層を外径側とした2層構造の円筒形状のブッシュに成形されたものであり、かつ、前記金属製ブッシュが、前記ローラの内周面に圧入嵌合されており、かつ、前記金属製ブッシュの内周面の表面粗さが、前記ローラへの圧入嵌合前の表面粗さとほぼ同等になっていることを特徴とするものである。
本発明に係るローラフォロアによると、金属製ブッシュがプレス絞り加工により製造されたものであるから、切断部が無い円筒形状であり、従来の板状素材の丸め加工により成形する金属製ブッシュとは異なって、円筒形の内周面の真円度、円筒度が高い。そして、金属製ブッシュが、前記ローラの内周面に圧入嵌合されており、かつ、前記金属製ブッシュの内周面の表面粗さが、前記圧入嵌合前後でほぼ同等になっているので、ローラの内周面に圧入嵌合した後に、従来のように金属製ブッシュの内周面を研磨する作業が不要となり、研磨作業を必要としない分、加工ないし製造コストが安く済む上に、丸め加工による金属製ブッシュとは異なって、本発明の金属製ブッシュでは切断部が無い円筒形状であるから、上記課題において説明したような割れや剥離等の損傷が発生するおそれが無い。
上記内燃機関としてはディーゼルエンジン、ガソリンエンジンがある。
上記非鉄金属層には、青銅、鉛青銅、燐青銅等の銅系合金や、アルミニウム系合金、等がある。これらは多孔質焼結金属でもよい。非鉄金属層の肉厚は、0.1−1.0mmである。
上記非鉄金属層の表面粗さは、その素材の表面粗さと同等以下である。
上記非鉄金属層の表面粗さは3.2μmRz以下が好ましい。
このような非鉄金属層の表面粗さの上限値は量産時の工程能力、下限値は加工設備の能力で決まる。内径側に非鉄金属とするのは、鉄系では軸材料と同種金属となり、金属結合により内径側の滑り面に焼付きが起こるなどの不具合があり、これを防止する上で、非鉄金属とされている。
上記裏金層の材料の鋼種として冷間圧延鋼板(SPCC;JISG4141)、一般構造用圧延鋼板(SS:JISG3101)等であり、肉厚は0.5−2.5mmである。
上記非鉄金属層と裏金層との肉厚比率は、非鉄金属層を1.0mmとしたとき裏金層が1.4−1.5mmの範囲が好ましい。
上記非鉄金属層と裏金層との肉厚比率は、非鉄金属層を1.0mmとしたとき裏金層が1.4−1.5mmの範囲が好ましい。
本発明に係る金属製ブッシュにおいては、プレス絞り加工であるから、そのプレス絞り加工を切絞り加工、中荒絞り加工、荒絞り加工、仕上げ加工というように段階的な絞り加工により製造されている場合では、板厚が一定の金属製ブッシュとなって好ましい。また、本発明の金属製ブッシュは、プレス絞り加工の中に切絞り加工が含まれていると、積層板材からブランク材を打ち抜く工程が無くなり、製造工程を1つ減らせるものとなって製造コストの低減を図る上では好ましい。
本発明に係るローラフォロアの製造方法は、ローラの内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュを嵌合した内燃機関用の動弁機構用ローラフォロアの製造方法において、共に板状の滑り層用非鉄金属材と裏金層用鋼材とを複合して板状とした積層板材を作製し、前記積層板材に対してプレス絞り加工を行うことにより、非鉄金属材からなる滑り層を内径側とし、鋼材からなる裏金層を外径側とした2層構造の円筒形状の金属製ブッシュを得るとともに、その金属製ブッシュをローラの内周面に圧入嵌合するとともに、圧入嵌合後の金属製ブッシュの内周面に対して非研磨状態とすることを特徴とするものである。
本発明に係るローラフォロアの製造方法によると、金属製ブッシュを、積層板材に対してプレス絞り加工により成形するから、従来の板状素材を丸め加工により成形するブッシュとは異なって、円筒度が高く、板厚が一定の形状になっており、かつ、その金属製ブッシュをローラの内周面に圧入嵌合した場合、その圧入嵌合の前後の内周面の表面粗さが小さいために、ローラの内周面に圧入嵌合後に、金属製ブッシュの内周面に対する研磨作業が不要となり、製作コストが安く済む。また、従来のローラフォロアの金属製ブッシュとは異なって、本発明のローラフォロアにおける金属製ブッシュでは、切断分が無い円筒形状であるから、その切断部に起因した割れや剥離等の損傷が発生するおそれが無い。
好ましくは、プレス絞り加工が、絞り深さを段階的に深くする複数の工程からなる。
好ましくは、前記プレス絞り加工が、板状の鋼材と非鉄金属材とを複合してなる積層板材に対してケース体を得る切絞り加工を含む。
本発明の内燃機関の動弁機構用ローラフォロアによれば、金属製ブッシュとして、プレスによる深絞り加工により切断部が無い円筒形に形成されているから、従来の板状素材の丸め加工により成形する金属製ブッシュとは異なって、前記円筒形の内周面の真円度が高くなっており、したがって、円筒形の内周面を研磨する作業が不要となり、製作コストが安く済むものである。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る内燃機関の動弁機構用ローラフォロアとその製造方法を説明する。
図1(a)は、ローラフォロアの側面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。これらの図を参照して、ローラフォロア1は、対向する一対の側壁2,2間に固定軸3が設けられ、この固定軸3に金属製ブッシュ4を介してローラ5が外装されている。金属製ブッシュ4はローラ5の内周面に圧入により嵌合されている。カム6は、エンジンの駆動により動作するカムシャフト7に設けられており、ローラ5の外周面上を転接するようになっている。両側壁2,2の長手方向両側に連接壁8,9が設けられ、一方の連接壁8はラッシュアジャスタ受けとなり、他方の連接壁9はバルブステム受けとなる。
図1(a)は、ローラフォロアの側面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。これらの図を参照して、ローラフォロア1は、対向する一対の側壁2,2間に固定軸3が設けられ、この固定軸3に金属製ブッシュ4を介してローラ5が外装されている。金属製ブッシュ4はローラ5の内周面に圧入により嵌合されている。カム6は、エンジンの駆動により動作するカムシャフト7に設けられており、ローラ5の外周面上を転接するようになっている。両側壁2,2の長手方向両側に連接壁8,9が設けられ、一方の連接壁8はラッシュアジャスタ受けとなり、他方の連接壁9はバルブステム受けとなる。
図2を参照して、金属製ブッシュ4の断面構成を説明すると、この金属製ブッシュ4は、プレス絞り加工により、板状の滑り層用の非鉄金属材と板状の裏金層用の鋼材との複合板から、滑り層10を内径側に、裏金層11を外径側にした2層構造からなる、切断部が無い円筒形状のブッシュに成形された構造を備えている。金属製ブッシュ4は、ローラ5の内周面に締め代をもって圧入嵌合されており、その内周面の表面粗さが、ローラ5への圧入嵌合前後でほぼ同等になっているものである。
滑り層10には、青銅、鉛青銅、燐青銅等の銅系合金や、アルミニウム系合金、等がある。これらは多孔質焼結金属である。滑り層10の表面粗さは、その素材の表面粗さと同等以下である。滑り層10を鉛青銅とするとその素材の表面粗さは、5.8μmRz程度であり、プレス絞り加工により、ローラ5への圧入前後ではその表面粗さは、2.754μmRzである。そのため、滑り層10の内周面、つまり、金属製ブッシュ4の内周面4aは研磨が不要である。なお、滑り層10の内周面の表面粗さは、摩耗対策として可能な限り、良好であることが好ましいが、製造工程における能力からは、その表面粗さは最大でも3.2μmRzであり、好ましくは、2.5μmRz以下であることが好ましい。このような表面粗さは、プレス絞り加工だけで達成することができる。滑り層10の表面粗さの上限値は、金属製ブッシュ4の量産工程の能力、下限値は加工設備の能力で決まる。また、金属製ブッシュ4の滑り層10が非鉄金属材から構成されているのは、金属製ブッシュ4の内径側を鉄系とすると、固定軸3の材料と同種金属となり、金属製ブッシュ4と固定軸3との金属結合により金属製ブッシュ4の内周面に焼付きが起こるなどの不具合があり、これを防止するためである。
裏金層11の鋼材としては、冷間圧延鋼板(SPCC;JISG4141)、一般構造用圧延鋼板(SS:JISG3101)等、が好ましく、裏金層11の肉厚は0.5−2.5mmである。
非鉄金属層11の肉厚は、0.1−1.0mmである。
滑り層10と裏金層11との肉厚比率は、滑り層10の肉厚:裏金層11の肉厚=1.0mm:1.4mm−2.0mmが好ましく、より好ましくは1.0mm:1.4mm−1.5mmである。
裏金層11は、プレス絞り加工による加工硬化により、その素材よりも硬くなり、例えば、プレス絞り加工前の素材硬度である150(Hv)前後から、200(Hv)前後に硬くなる。同様に、滑り層10は、プレス絞り加工による加工硬化により、その素材よりも硬くなり、例えば、プレス絞り加工前の素材硬度である45(Hv)程度から、70(Hv)程度に硬くなる。このように、プレス絞り加工を行うと、裏金層11の剛性が向上し、耐摩耗性が向上するので、金属製ブッシュ4をローラフォロア1に使用する場合に好ましい。
また、従来の金属製ブッシュと本実施の形態の金属製ブッシュ4との円筒度を比較すると、従来の金属製ブッシュでは、ローラ5に圧入後で内周面研磨前では円筒度42.3μm、内周面研磨後では円筒度2.6μmであり、実施の形態の金属製ブッシュ4では、ローラ5に圧入前(研磨無し)では円筒度17.1μmであるが、圧入後(研磨無し)では円筒度2.4μmである。したがって、実施の形態の金属製ブッシュ4では、その内周面の円筒度が、従来の金属製ブッシュの内周面の円筒度と同程度である。
これらを図3ないし図6を参照して説明する。なお、図3ないし図6は、本発明の発明者によって作製された本発明に係る金属製ブッシュ、従来の製法による金属製ブッシュから得られた測定結果を図示したものである。
まず、図3は従来の金属製ブッシュのローラに圧入するときの内周面の形状において、研磨前を図3(a)に、研磨後を図3(b)にそれぞれ示したものである。従来の金属製ブッシュにおいては、ローラの内周面に圧入した状態では、外周面の形状が内周面に反映されている。金属製ブッシュの外周面が丸め加工により多角形に変形しており、ローラの内周面に圧入されると、その外周面の多角形の変形形状が内周面に反映するのである。図3(a)での従来の金属製ブッシュの内周面の真円度は42.3μmであり、同軸度は8.6μmであり、真円度平均は33.1μmである。図3(a)で示す従来の金属製ブッシュの内周面に対してホーニングにより、金属製ブッシュの内周面を図3(b)で示す形状に研磨する。図3(b)で示す従来の金属製ブッシュの内周面の真円度は2.6μmであり、同軸度は0.8μmであり、真円度平均は1.4μmである。したがって、図3(a)と図3(b)とを対比して明らかであるように、従来の金属製ブッシュにおいては、ローラの内周面に圧入後には、ホーニングによる研磨が必要不可欠である。これは、従来の金属製ブッシュでは、積層板材材を所定長さに切断し、その切断部を合わせるように丸め加工するために、外周面が多角形に変形し、そのため、ローラの内周面に金属製ブッシュを圧入すると、外周面の多角形の形状が内周面に反映しており、そのため、加工コストがかかる内周面研磨の工程が必要となる。
図4は、実施の形態の金属製ブッシュ4をローラ5の内周面に圧入するときの内周面の形状において、図4(a)では、ローラ5の内周面に圧入する前、図4(b)ではローラ5の内周面に圧入後の金属製ブッシュ4の内周面形状を示している。図4(a)で示す実施の形態の金属製ブッシュ4の内周面の真円度は17.1μmであり、同軸度は1.7μmであり、真円度平均は13.8μmである。図4(b)で実施の形態の金属製ブッシュ4の内周面の真円度は2.4μmであり、同軸度は6.2μmであり、真円度平均は1.2μmである。実施の形態の金属製ブッシュ4においては、ローラ5の内周面に圧入後に研磨を実施していないが、ローラ5の内周面に圧入嵌合する前後でそれぞれ図4(a)(b)で示すような内周面形状を有しており、その内周面に研磨を行う必要が無いからである。
すなわち、実施の形態のようにプレス絞り加工により切断部が無い円形形状に成形した金属製ブッシュ4では、ローラ5の内周面に圧入した後で、内周面の研磨工程が不要となる分、研磨による加工コストを削減でき、ローラフォロア1の製造コストを低減することができる。
なお、図3および図4はいずれも、その測定条件は同じであり、倍率を1.000、フィルタをN150、検出器を1b、演算法を最小二乗法として行ったものである。
図5は、従来の金属製ブッシュの内周面の表面粗さに関わり、図6は実施の形態の金属製ブッシュ4の内周面の表面粗さに関わる。なお、図5,図6において、横方向の一目盛り分長さは0.2mm分の長さを示し、縦方向の一目盛り分長さは2μm分を示す。図5で示す従来の金属製ブッシュの内周面の表面粗さ(滑り層10の表面粗さ)において、ローラ5の内周面に圧入後でかつ研磨前の表面粗さを図5(a)に、ローラ5の内周面に圧入後でかつ研磨後の表面粗さを図5(b)に示す。図5(a)では、Raが0.9927μm、Ryが8.614μm、Rzが5.765μm、Rmaxが12.18であることを示しており、図5(b)では、Raが0.3100μm、Ryが2.209μm、Rzが2.266μm、Rmaxが2.515μmであることを示している。表記としては、例えばRzが2.209μmは2.209μmRzと表記することができる。従来の金属製ブッシュの場合では、研磨前での表面粗さは大きく、例えば、Rzが研磨前の5.765μmから研磨後の2.266μmになっている。すなわち、従来の金属製ブッシュの場合では、その内周面を研磨しないと、表面粗さが多きすぎて、金属製ブッシュの内周面は、固定軸回りを回転摺動するときに、摺動摩擦で摩耗しやすくなる。一方、実施の形態の金属製ブッシュ4の場合では、プレス絞り加工後の内周面の表面粗さは2.275μmであり、この表面粗さの大きさでは、従来の金属製ブッシュのごとく、その内周面を研磨する必要が無い。これによって、実施の形態の金属製ブッシュ4では、プレス絞り加工後に、研磨加工が不要であり、その分、加工コストが安価に済む。なお、図5および図6において、測定条件は同一であり、送り速さは0.5mm/s、カットオフは、0.8mm、測定長さは、4.00mm、基準長さは0.80mm、極性は通常である。なお、JIS B0601−1994で定義される表面粗さにおいて、Raは算術平均粗さ、Ryは最大高さ、Rzは十点平均粗さを示す。なお、この測定は、株式会社小坂研究所製、表面粗さ測定器、SE−3400を用いて行った。
図7を参照して、ローラフォロア1の製造方法において、金属製ブッシュ4のプレスによる深絞り加工(プレス絞り加工)による製造方法を説明する。なお、このプレス絞り加工を行うために用いるプレス機械、プレス金型の図示は省略する。
図7(a)で示すように、板状の裏金層用の鋼材12に板状の滑り層用の非鉄金属材13(非鉄の多孔質焼結金属)を焼結して2層の積層構造とした積層板材14を用意する。この積層板材14に対してプレス機械とプレス金型とにより、図7(b)で示すように、切絞り加工を施す。図7(b)で示すように、積層板材14の表面(非鉄金属材13側の表面)に切絞り加工の切断位置を示すブランク打ち抜きのためのテーパーをもった形状の溝15(ブランク打ち抜き線)を環状に形成する。このブランク打ち抜き線で切絞り加工を行うことにより、図7(b)で示す第1ケース体16を得ることができる。この切絞り加工においては、ブランク打ち抜き線で切断するときに、同時に第1ケース体16に打ち抜いているから、ブランク打ち抜き線で一旦、平坦なブランク材に切断し、そのブランク材に対して第1ケース体に絞り加工する必要が無くなり、絞り加工の工程を1つ削減することができる。もちろん、ブランク打ち抜き線を形成することなく、切絞り加工を行ってもよい。切絞り加工とすると、第1ケース体の材料間隔を短くすることができるので、材料使用効率が向上する。この第1ケース体16は、絞り深さは浅く、円形底部16aと、この円形底部の外周縁から径方向外方に拡径して広がる側面部16bとから構成されている。なお、切絞り加工を行うことなく、金属製ブッシュの外形に一回で深絞り加工を行い、最後にブランク打ち抜きを行う場合、ブランク打ち抜き後に、さらに、その外形に対する加工を行う必要があり、加工コストが高くなる。本実施の形態では、切絞り加工を行って第1ケース体16を得るとともに、第1ケース体16に対して、切絞り加工より以降、以下に示すように、絞り深さを段階的に深くする絞り加工を行うことにより、肉厚の不平等が無い金属製ブッシュを製造することができるようにしている。
この切絞り加工により得られた第1ケース体16に対して、図7(c)で示すように、荒絞り加工を行うことにより、絞り深さが中程度の第2ケース体17を得る。第2ケース体17は、円形底部17aとこの円形底部の外周縁からほぼ垂直に立ち上がる側面円筒部17bとにより構成されている。この円形底部と円筒形側面部との境界においてのR(アール)部の曲率は大きくなっている。次いで、この第2ケース体に対して、図7(d)で示すように、中荒絞り加工を行うことにより、絞り深さが最も深い第3ケース体18を得る。第3ケース体18は、円形底部18aと、この円形底部18aの外周縁からほぼ垂直に立ち上がる円筒形側面部18bとから構成されているが、その円形底部18aと円筒形側面部18bとの境界においてのR部の曲率は、第2ケース体17のそれよりも小さくされている。このように、深絞り加工を数回に分けて段階的に行うことにより、円周方向に板厚の不同等が無い精度の高い金属製ブッシュを製造することができる。最後に、第3ケース体18に対して、図7(e)で示すように、板厚を一定にするための仕上げ成形を行う。この仕上げ成形においては、第3ケース体18の円形底部18aを切断しており、円筒形の構成となっている。このようにしてプレス絞り加工により得られた実施の形態の金属製ブッシュ4においては、その外周面に切断部が無い。
なお、本実施の形態では、切絞り加工、荒絞り加工、中荒絞り加工を行うが、本発明はこのような加工に限定されるものではなく、切絞り加工を省略してもよい。もちろん、中荒絞り加工を上記のように2段階で行うことに限定されるものではなく、要するに、プレスによる深絞り加工であればよい。
1 ローラフォロア
4 金属製ブッシュ
5 ローラ
10 滑り層
11 裏金層
4 金属製ブッシュ
5 ローラ
10 滑り層
11 裏金層
Claims (5)
- ローラの内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュを圧入嵌合した内燃機関の動弁機構用ローラフォロアにおいて、前記金属製ブッシュが、滑り層用非鉄金属材と裏金層用鋼材との複合板をプレス絞り加工により、前記非鉄金属材からなる滑り層を内径側とし、鋼材からなる裏金層を外径側とした2層構造の円筒形状のブッシュに成形されたものであり、かつ、前記金属製ブッシュが、前記ローラの内周面に圧入嵌合されており、かつ、前記金属製ブッシュの内周面の表面粗さが、前記ローラへの圧入嵌合前の表面粗さとほぼ同等になっている、ことを特徴とする内燃機関の動弁機構用ローラフォロア。
- 前記滑り層の表面粗さが、3.2μmRz以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁機構用ローラフォロア。
- 内燃機関の動弁機構用ローラフォロアが備えるローラの内周面に滑り軸受として嵌合される金属製ブッシュにおいて、滑り層用非鉄金属材と裏金層用鋼材との複合板をプレス絞り加工により、前記非鉄金属材からなる滑り層を内径側とし、鋼材からなる裏金層を外径側とした2層構造の円筒形状のブッシュに成形されたものであり、かつ、前記金属製ブッシュの内周面の表面粗さが、前記ローラへの圧入嵌合前の表面粗さとほぼ同等である、ことを特徴とする金属製ブッシュ。
- ローラの内周面に滑り軸受となる金属製ブッシュを嵌合した内燃機関用の動弁機構用ローラフォロアの製造方法において、
共に板状の滑り層用非鉄金属材と裏金層用鋼材とを積層した積層板材を作製し、前記積層板材に対してプレス絞り加工を行うことにより、非鉄金属材からなる滑り層を内径側とし、鋼材からなる裏金層を外径側とした2層構造の円筒形状の金属製ブッシュを得るとともに、その金属製ブッシュをローラの内周面に圧入嵌合するとともに、圧入嵌合後の金属製ブッシュの内周面に対して非研磨状態とする、ことを特徴とする内燃機関用の動弁機構用ローラフォロアの製造方法。 - プレス絞り加工が、絞り深さを段階的に深くする複数の工程からなる、ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用の動弁機構用ローラフォロアの製造方法。
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