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JP2006069192A - 熱可塑性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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JP2006069192A JP2005183620A JP2005183620A JP2006069192A JP 2006069192 A JP2006069192 A JP 2006069192A JP 2005183620 A JP2005183620 A JP 2005183620A JP 2005183620 A JP2005183620 A JP 2005183620A JP 2006069192 A JP2006069192 A JP 2006069192A
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Abstract

【課題】延伸によって得られる熱可塑性フィルムのRe、Rthの均一性を高めるとともに、位相差板として液晶表示素子に組み込んだ際に微細な表示ムラの少ない熱可塑性フィルムの製造方法及びその熱可塑性フィルムを提供する。
【解決手段】テンタ2は、フィルム3の幅方向の両端部をクリップ10、10…で把持し、搬送方向A及び幅方向Bに同時延伸する。これにより、粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下である熱可塑性フィルムが製造される。
【選択図】 図1

Description

本発明は熱可塑性フィルム及びその製造方法に係り、特に液晶表示装置に使用される熱可塑性フィルム及びその製造方法に関する。
従来、熱可塑性フィルムを延伸し、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、液晶表示素子の位相差膜として使用し、視野角拡大を図ることが実施されている。
熱可塑性フィルムを延伸する方法としては、縦(長手)方向に延伸する方法(縦延伸)や、横(幅)方向に延伸する方法(横延伸)、或いは縦延伸と横延伸を順に行う方法(逐次2軸延伸)が挙げられる。
これらのうち、縦延伸は設備がコンパクトなため、従来から多く用いられてきた。通常、縦延伸は、2対以上のニップロールの間でフィルムをガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、入口側のニップロールの搬送速度より出口側の搬送速度を速くすることで縦方向に延伸する。
特許文献1には、セルロースエステルを縦延伸する方法が記載されている。この特許文献1によれば、流延製膜方向の反対方向に縦延伸することによって遅相軸の角度むらを改良することができる。
特許文献2には、縦横比(L/W)が2以下の短スパン間に設置したニップロールを延伸ゾーン中に設置して延伸する方法が記載されている。この特許文献2によれば、厚み方向の配向(Rth)を改良することができる。
特許文献3には、飽和ノルボルネン系フィルムを延伸する方法が記載されている。この特許文献3によれば、延伸中の温度ムラを小さくすることによってReのばらつきを小さくすることができる。
特開2002−311240 特開2003−315551 特開2001−42130
しかしながら、上述した従来の方法で製造した延伸フィルムを位相差膜として使用すると、微細な表示ムラが発現するという問題があり、液晶表示装置に適さないという問題があった。
そこで、本発明の発明者が表示ムラの発生原因を調べたところ、縦延伸を行った際に延伸ロールによってフィルムにスリキズや粘着跡のような表面故障が発生し、これが表示ムラになることが明らかになった。特にフィルム幅(W)に比べて延伸用のロール間隔(L)が小さく縦横比が小さい(L/W<1)条件で縦延伸を行った場合には、粘着故障が発生し、表示ムラになりやすい。ここで、粘着故障とは、フィルム表面に確認される数mm程度の「ハ」字状(鳥の足型状)の模様であり、フィルムが延伸ロールに接触したとき粘着し、フィルムが延伸ロールから離れる際に、粘着点を起点として放射状にフィルム表面が剥ぎ取られ、発生するものであり、特に高温で延伸するときに顕著に表れる。このような粘着故障等が原因となり、液晶表示素子に組み込んだ際の微細な表示ムラが発生している。
また、従来の方法で製造した熱可塑性フィルムは、幅方向のRe、Rthが不均一であり、光学フィルムとしての用途に適さないという問題があった。これは、縦延伸時におけるフィルムの端部と中央部のネッキングの起こり方が異なるためで、端部の方が中央部に比べて縦配向が進みやすくなるためである。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、延伸によって得られる熱可塑性フィルムのRe、Rthの均一性を高めるとともに、位相差板として液晶表示素子に組み込んだ際に微細な表示ムラの少ない熱可塑性フィルムの製造方法及びその熱可塑性フィルムを提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は前記目的を達成するために、熱可塑性フィルムを延伸して製造する熱可塑性フィルムの製造方法において、前記熱可塑性フィルムを縦方向と横方向に同時に延伸することによって、粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下である熱可塑性フィルムを製造することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、縦方向と横方向に同時に延伸するようにしたので、面内における延伸のばらつきの発生を抑制することができ、面内で均一な光学特性を得ることができる。また、縦方向と横方向に同時に延伸すると、延伸時の粘着跡を減らすことができる。さらに、縦方向と横方向に同時に延伸した場合には、縦方向と横方向の延伸倍率をそれぞれ自由に設定することができるので、Re、Rthを所望する値に制御することができる。したがって、請求項1の発明によれば、粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下となる、光学特性の優れた熱可塑性フィルムを製造することができる。ここで、粘着跡とは、フィルムを黒色の平坦な布の上に置き、タングステンランプの下で反射光で目視観察した際に、表面に確認される数mm程度の「ハ」字状(鳥の足型状)の模様をいう。
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、縦方向及び横方向の延伸倍率が1倍以上2.5倍以下であることを特徴とする。請求項1に記載の光学特性を有する熱可塑性フィルムを製造する場合、2.5倍を超える延伸を行うと、延伸時にフィルムを破断をするおそれがある。
請求項3に記載の発明は請求項1の発明において、縦方向と横方向の一方の延伸倍率が0.8倍以上1.0倍以下であり、他方の延伸倍率が1.0倍以上2.5倍以下であることを特徴とする。縦方向と横方向の一方を縮めて熱可塑性フィルムを製造することができる。このように製造することによって、Reの大きな熱可塑性フィルムを製造することができる。
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1に記載の発明において、前記延伸は、前記熱可塑性フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して行うことを特徴とする。したがって、請求項4の発明によれば、粘着跡を少なくすることができ、液晶表示素子に組み込んだ際に発現する微細な表示むらを減少させることができる。
請求項5に記載の発明は前記目的を達成するために、粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下であることを特徴とする。このような光学特性の熱可塑性フィルムは、上述した製造方法によって製造することができる。
請求項6に記載の発明は請求項5の発明において、前記レターデーションRe、Rthは幅方向、長手方向における変動がそれぞれ5%以下であることを特徴とする。したがって、請求項6に記載のフィルムは、レターデーションと配向角が幅方向、長手方向に均一であり、面内において光学特性のばらつきが非常に少ない。
請求項7に記載の発明は請求項5又は6の発明において、前記熱可塑性フィルムがセルロースアシレートフイルム又は飽和ノルボルネン系フィルムであることを特徴とする。セルロースアシレートフィルムや飽和ノルボルネン系フィルムは、延伸後に結晶化させる必要のないフィルムであり、上述した方法による不具合が発生せず、特に有効である。
請求項8に記載の発明は請求項7の発明において、前記セルロースアシレートフィルムは、アシレート基が置換度、2.5≦A+B<3.0、1.25≦B<3.0、(A:アセテート基の置換度、B:プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和)、を満足することを特徴とする。このような置換度を満足するフィルムは、融点が低い、延伸しやすい、防湿性に優れているという特徴を有する。また、このような置換度を満足するフィルムは結晶化させる必要がないので、上述した方法で製造する際に不具合を発生せず、特に有効である。
請求項9に記載の発明は請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
請求項10に記載の発明は請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
請求項11に記載の発明は請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
本発明によれば、Re、Rthのバラツキがなく、表示ムラのない熱可塑性フィルムを製造することができ、液晶表示素子に組み込んだ際に面内で均一な表示が得られる。
以下添付図面に従って本発明に係る熱可塑性フィルム及びその製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の特徴部分である同時二軸延伸を行うテンタ2の平面図である。同図に示すテンタ2は、フィルム3を搬送方向Aに搬送しながら、その搬送方向A及び幅方向Bに同時に延伸する装置であり、二本のレール5、6と無端チェーン7、8を備えている。二本のレール5、6は、フィルム3を挟んで両側に配置されており、その間隔は、搬送方向Aの上流側よりも下流側が拡くなるように形成されている。
無端チェーン7、8はそれぞれ、テンタ入口16側の原動スプロケット11、12と、テンタ出口17側の従動スプロケット13、14との間に掛け渡されるとともに、レール5、6に案内されるようにして配置されている。そして、原動スプロケット11、12を駆動することによって、無端チェーン7、8がレール5、6に案内されながら周回走行するようになっている。
無端チェーン7、8には、多数のクリップ10、10…が所定ピッチで多数取り付けられ、このクリップ10によってフィルム3の側縁部が把持される。クリップ10は、無端チェーン7、8を走行させることによって、無端チェーン7、8とともに移動する。クリップ10のピッチ(搬送方向Aにおけるクリップ10、10同士の間隔)は、クリップ10が移動することによって変化するようになっており、搬送方向Aの上流側での間隔よりも下流側での間隔の方が拡がるようになっている。なお、クリップ10のピッチを変化させる機構としては、例えばパンタグラフ機構やリニアガイド機構が利用される。
前述した原動スプロケット11、12にはそれぞれ開放部材21、22が取り付けられており、従動スプロケット13、14にはそれぞれ開放部材23、24が取り付けられている。開放部材21〜24は、後述するクリップ10のフラッパ29を把持位置から開放位置に変位させる装置であり、これによって、フラッパ29によるフィルム3の把持、開放動作が自動的に行われる。
図2、図3はクリップ10の構造を示す側面図であり、図2は開放位置のクリップ10を示し、図3は把持位置のクリップ10を示している。
これらの図に示すように、クリップ10は、略コ字状のフレーム26、フィルム載せ部27、回動レバー28、及びフラッパ29で構成される。フラッパ29は、回動レバー28の下端に取付軸32を介して回動自在に取り付けられる。フラッパ29にはコイルバネ33の一端が取り付けられており、このコイルバネ33の他端が回動レバー28に取り付けられている。このコイルバネ33によって、図中右側のフラッパ29は矢印C方向に付勢され、図中左側のフラッパ29は矢印D方向に付勢される。また、フラッパ29には突起29aが形成されており、コイルバネ33の付勢力で回動レバー28が回動すると、この突起29aによって回動が規制される。
回動レバー28は、フレーム26に取付軸31を介して回動自在に支持されている。この回動レバー28は通常、自重によって図3の把持位置に配置され、この把持位置では、フィルム載せ部27の載せ面27aと、フラッパ29の把持面29bによってフィルム3が把持される。また、回動レバー28は、図1の開放部材21〜24に上端部が当接することによって回動され、これによって、図2に示す如くフラッパ29が上方に退避してフィルム3を開放する開放位置に配置される。
上記の如く構成されたテンター2において、無端チェーン7、8を走行させ、クリップ10、10…を周回移動させると、各クリップ10は、開放部材21、22の位置でフラップ29が開放位置になり、そして開放部材21、22を通過することでフラッパ29が把持位置になってフィルム3の両側縁部が把持される。フィルム3の両側縁部を把持した各クリップ10は、搬送方向Aに進む過程で、クリップ10、10同士の間隔が搬送方向Aと幅方向Bに拡がる。これにより、フィルム3が縦方向、及び横方向に同時に延伸される。クリップ10が搬送方向Aの下流まで搬送させると、クリップ10は、開放部材23、24によってフラッパ29が開放位置になり、フィルム3が開放される。フィルム3を開放したクリップ10は、上流側の開放部材21、22まで戻され、再びフィルム3を把持し、これを繰り返す。以上の動作を繰り返すことによって、フィルム3は縦方向と横方向に延伸され、同時二軸延伸が行われる。
同時二軸延伸工程において、延伸温度はTg−10℃以上Tg+50℃以下が好ましく、Tg以上Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+2℃以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。フイルム3の加熱方法は熱風以外にヒーター加熱、マイクロ波加熱等の方法を用いてもよく、その他の加熱方法を用いてもよい。
また、上述した同時二軸延伸において、好ましい延伸倍率は縦、横ともに0.8倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.4倍以下、さらに好ましくは1.1倍以上2.3倍以下である。ただし、縦、横の一方で0.8倍以上1倍以下に延伸する場合には、もう一方を1倍以上2.5倍以下とすることが必要である。
同時二軸延伸の後に縦、横のいずれか、または両方に緩和させるようにしてもよい。これによって幅方向の遅相軸の角度分布を小さくすることができる。また、同時二軸延伸において、粘着跡は10点/m2 以下が好ましく、より好ましくは8点/m2 以下が好ましく、さらに好ましくは5点/m2 以下が好ましい。
上記の如く延伸を行うことにより、レターデーションRe、Rthを発現させることができる。Reは、0nm以上500nm以下が好ましく、10nm以上400nm以下がより好ましく、15nm以上300nm以下がさらに好ましい。一方、Rthは、30nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上400nm以下がより好ましく、70nm以上350nm以下がさらに好ましい。このうちRe≦Rthを満足するものがより好ましく、Re×2≦Rthを満足するものがさらに好ましい。このような高Rth、低Reを実現するためには、上述のように二軸に延伸するのが好ましい。即ち、縦方向と横方向の配向の差が面内のレターデーションの差(Re)となるが、縦方向に加えその直交方向である横方向にも延伸することで、縦横の配向の差を小さくし、面内配向(Re)を小さくできる。また、縦に加え横にも延伸することで面積倍率は増加するため、厚みの減少に伴い厚み方向の配向は減少し、Rthを増加させることができる。
Re、Rthの幅方向、長手方向の場所による変動をいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることが好ましい。
ここで、レターデーションRe、Rthは、以下の式で求められる。
Re(nm)=|n(MD)−n(TD)|×T(nm)
Rth(nm)=|{(n(MD)+n(TD))/2}−n(TH)|×T(nm)
式中のn(MD)、n(TD)、n(TH)は長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率を示し、Tはnm単位で表した厚みを示す。
次に本実施の形態の作用について説明する。
2軸延伸を行う場合、従来は、縦延伸を行った後に横延伸を行う方法(逐次二軸延伸)が一般的であり、その縦延伸は速度の異なるロールで搬送方向(縦方向)に延伸を行っている。しかし、このような縦延伸を行うと、幅方向に配向ムラ、特に端部の配向が中央部に比べ高くなるという問題が生じ、均一な配向のフィルムを得ることが困難であった。また、ロール間の縦延伸では、フィルムにスリキズや、粘着後のような表面故障を発生させやすいという問題もあった。
これに対して、本実施の形態では、テンター2によって縦方向と横方向に同時二軸延伸を行っている。したがって、上述した端部のネッキングを防ぐことができ、幅方向の均一性を達成することができる。これにより、面内の光学特性が均一な熱可塑性フィルム3を製造することができる。
また、テンター2では、クリップ10によってフィルム3の側縁部を把持して縦延伸と横延伸を行うので、粘着跡を減少させることができる。よって、位相差フィルムとして液晶表示素子に組み込んだ際に発生する微小な表示ムラを減少させることができる。このような効果は、特に熱可塑性フィルムとしてセルロースアシレートフィルム、或いは飽和ノルボルネン系フィルムを用いた場合に有効である。これらの樹脂は延伸に用いるニップロール上で粘着しやすいので、本発明の方法を用いると粘着跡を減少させることができるので非常に有効である。
また、本実施の形態では、テンター2において、縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率を自由に設定できるので、Re、Rthを任意の値にすることができる。したがって、所望する光学特性の熱可塑性フィルムを製造することができる。例えば、縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率の差を大きくすることによってReを大きくしたり、両方の延伸倍率を大きくしてRthを大きくしたりすることができる。さらに、縦延伸と横延伸の一方の延伸倍率を1倍以下、すなわち、フィルム3を縦方向と横方向の一方向に縮めることができる。よって、Re、Rthをより広い範囲で設定することができ、所望する光学特性の熱可塑性フィルムを得ることができる。
なお、上述した実施の形態は、フイルム3の端部をクリップ10を用いて把持して延伸するようにしたが、同時二軸延伸方法はこれに限定されるものではない。また、クリップ10の駆動方法としては、機械式(パンタグラフ式)やリニアモーター式のものに限定されず、いかなる方法を用いてもよい。
本発明における同時二軸延伸とは、縦方向と横方向に略同時に延伸されればよく、必ずしも同時に始まり同時に終了しなくとも良い。したがって、クリップ10に把持されたままで搬送されながら縦、及び横に延伸されるものであれば、縦延伸終了後に横延伸を行ってもよい。また、本発明における延伸とは、延伸倍率が1倍以下、すなわち一方向に収縮させる場合も含む。さらに、同時二軸延伸に用いるフイルムは未延伸フイルムであっても、1軸又は2軸に予備延伸されたフイルムであっても構わない。
以下、本発明に適した樹脂、製膜方法、フィルム加工方法について説明する。
(1)熱可塑性樹脂
上述した延伸を行う熱可塑性樹脂は特に制限されないが、より好ましいのがセルロースアシレートフィルム、および飽和ノルボルネン系フィルムである。これらは、延伸により適度なRe、Rth発現性を有している上、延伸むらが発現しにくく優れているためである。以下、セルロースアシレート樹脂と飽和ノルボルネン系樹脂について説明する。
(セルロースアシレート樹脂)
本発明で用いるセルロースアシレートは以下の特徴を有するものが好ましい。アシレート基が、下記の置換度、
2.5≦A+B≦3.0
1.25≦B≦3
を満足することを特徴とするセルロースアシレートフィルム(Aはアセテート基の置換度、Bはプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和を示す)。より好ましい置換度は、Bの1/2以上がプロピオネート基の場合に、
2.6≦A+B≦2.95
2.0≦B≦2.95
であり、Bの1/2未満がプロピオネート基の場合に、
2.6≦A+B≦2.95
1.3≦B≦2.5、である。さらに好ましい置換度は、Bの1/2以上がプロピオネート基の場合に、
2.7≦A+B≦2.95
2.4≦B≦2.9
であり、Bの1/2未満がプロピオネート基の場合に、
2.7≦A+B≦2.95
1.3≦B≦2.0、である。
本発明では、アセテート基の置換度を少なくし、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和を多くしていることが特徴である。これにより、延伸中に伸びむらが発生し難く、Re、Rthむらが発現しにくい上、結晶融解温度(Tm)を下げることができ、溶融製膜の熱による分解で発生する黄変を抑制することもできる。これらの効果は、なるべく大きな置換基を用いることで達成できるが、大きすぎるとガラス転移温度(Tg)や弾性率を低下させすぎるため好ましくない。このためアセチル基より大きなプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基が好ましく、より好ましくはプロピオネート基、ブチレート基であり、さらに好ましくはブチレート基である。
これらのセルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンターや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
このような重合度の調整には低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。さらに重合方法でも分子量を調整できる。例えば、低分子成分の少ないセルロースアシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100重量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。また、セルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。
本発明では、セルロースアシレートに可塑剤を添加することにより、セルロースアシレートの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されるものではなく、低分量でもよく高分子量でもよい。可塑剤の種類は、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行う場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。
リン酸エステルの具体例としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、1,4―フェニレンーテトラフェニル燐酸エステル等を挙げることができる。また特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることも好ましい。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
カルボン酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類、およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジエチルアゼレート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、アセチル化グリセライド、モノグリセライド、ジグリセライドなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類などを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
また、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などの高分子量系可塑剤が挙げられる。可塑剤はこれらを単独もしくは低分量可塑剤と併用して使用することができる。
多価アルコール系可塑剤は、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
可塑剤の添加量は、0〜20重量%とするものが好ましく、より好ましくは2〜18重量%、最も好ましくは4〜15重量%である。可塑剤の含有量が20重量%より多い場合、セルロースアシレートの熱流動性は良好になるもの、可塑剤が溶融製膜したフィルムの表面にしみ出したり、また耐熱性であるガラス転移温度Tgが低下する。
更に、本発明におけるセルロースアシレートには、要求される性能を損なわない範囲内で、必要に応じて熱劣化防止用、着色防止用の安定剤を添加することができる。
安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979の段落〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることが出来る。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることが出来る。
本発明における安定剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.005〜0.5重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0. 4重量%以上、さらに好ましくは0.05〜0. 3重量%である。添加量を0.005重量%未満の場合、溶融製膜時の劣化防止及び着色抑制の効果が不十分であるため、好ましくない。一方、0.5重量%以上の場合、溶融製膜したセルロースアシレートフィルムの表面にしみ出し、好ましくない。
また、劣化防止剤及び酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化及び酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
更に、本発明におけるセルロースアシレートには、紫外線防止剤を含有することができ、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させてもよい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルセルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
また、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルセルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜3.0%が好ましく、10ppm〜2%がさらに好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、市販品として下記のものがあり利用できる。
ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 234 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 320 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 326 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 327 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 328 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、スミソーブ340 (住友化学)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100 (シプロ化成)、シーソーブ101 (シプロ化成)、シーソーブ101S(シプロ化成)、シーソーブ102 (シプロ化成)、シーソーブ103 (シプロ化成)、アデカスタイプLA-51 (旭電化)、ケミソープ111 (ケミプロ化成)、UVINUL D-49(BASF)などを挙げられる。オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)やTINUBIN 315 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)がある。またサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201 (シプロ化成)やシーソーブ202 (シプロ化成)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501 (シプロ化成)、UVINUL N-539 (BASF)がある。
(飽和ノルボルネン系樹脂)
本発明で使用する飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などが挙げることができる。重合方法および水素添加方法は、常法により行なうことができる。
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン;等が挙げられる。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個有する化合物が例示される。
本発明で使用する飽和ノルボルネン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量が通常25000〜100000、好ましくは30000〜80000、より好ましくは35000〜70000の範囲のものである。数平均分子量が小さすぎると物理的強度が劣り、大きすぎると成形の際の操作性が悪くなる。
本発明では、飽和ノルボルネン樹脂のガラス転位温度(Tg )は100℃以上250℃以下が好ましく、より好ましくは115℃以上220℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
本発明で用いる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。特に、液晶は通常、紫外線により劣化するので、ほかに紫外線防護フィルターを積層するなどの防護手段を取らない場合は、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾル系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤などを用いることができ、それらの中でもベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、添加量は、通常10〜100000ppm、好ましくは100〜10000ppmである。また、溶液流延法によりシートを作製する場合は、表面粗さを小さくするため、レベリング剤の添加が好ましい。レベリング剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤など塗料用レベリング剤を用いることができ、それらの中でも溶媒との相溶性の良いものが好ましく、添加量は、通常5〜50000ppm、好ましくは10〜20000ppmである。
(2)製膜
これらの樹脂は溶液製膜、溶融製膜いずれでもフィルム化することができるが、飽和ノルボルネン樹脂の場合は溶融製膜法が好ましく、セルロースアシレート樹脂の場合はどちらも好ましい。以下、溶液製膜と溶融製膜について説明する。
(溶液製膜)
セルロースアシレート樹脂の溶液製膜に用いる溶剤は、下記の(a)塩素系溶剤、(b)非塩素系溶剤のいずれも用いることができる。
(a)塩素系溶剤
塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが必要である。
本発明の併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステル、炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれる。なお好ましい併用される非塩素系有機溶媒は、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができる。
本発明の好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒の組み合わせとしては以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない(下記の括弧内の数字は質量部を示す)。・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(72/9/9/4/6)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10)
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
(b)非塩素系溶剤
好ましい非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
さらに、本発明のセルロースアシレートの好ましい溶媒は、異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールの好ましくは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20〜90質量%、第3の溶媒が5〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86質量%であり、さらに第3の溶媒が7〜25質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて12頁〜16頁に詳細に記載されている。
本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組み合わせは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない(括弧内の数字は質量部を示す)。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/8/4/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/5)
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5)
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5)
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
・アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
・1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5)
さらに下記のように、溶解後、一部の溶剤をさらに追加添加し、多段で溶解することも好ましい(括弧内の数字は質量部を示す)。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)でセルロースアシレート溶液を作製し、ろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/10/4/2)でセルロースアシレート溶液を作製し、ろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6)でセルロースアシレート溶液を作製し、ろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加
本発明では、塩素系、非塩素系溶剤いずれの場合でも、溶媒にセルロースアシレートを10〜40質量%溶解していることが好ましく、より好ましくは13〜35質量%であり、特には15〜30質量%である。溶解に先立ち、0℃〜50℃で0.1時間〜100時間膨潤させることが好ましい。なお、種々の添加剤は膨潤工程の前に添加しても良く、膨潤工程中あるいは後でもよく、さらには、この後冷却溶解中あるいは後でも構わない。
本発明では、セルロースアシレートを溶解するために、冷却・昇温法を用いても良い。冷却・昇温法は、特開平11−323017号公報、特開平10−67860号公報、特開平10−95854号公報、特開平10−324774号公報、特開平11−302388号公報に記載のような方法を用いることができる。即ち、溶剤とセルロースアシレートを混合し膨潤させたものを、冷却ジャケットを付与したスクリュウ型混練機を用い溶解する。
さらに本発明のドープは、濃縮,ろ過を実施することが好ましく、これらは発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されているものを使用できる。
(溶融製膜)
(a)セルロースアシレートフィルム
[乾燥]
樹脂は粉体のまま用いても良いが、製膜の厚み変動を少なくするためにはペレット化したものを用いるのがより好ましい。この樹脂は含水率を1%以下、より好ましくは0.5%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーをTg−50℃以上Tg+30℃以下、より好ましくはTg−40℃以上Tg+10℃以下、さらに好ましくはTg−30℃以上Tg以下にする。これによりホッパー内での水分の再吸着を抑制し、上記乾燥の効率をより発現し易くできる。
[混練押出し]
120℃以上250℃以下、より好ましくは140℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下で混練し溶融する。この時、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御しても良い。好ましい混練時間は2分以上60分以下であり、より好ましくは3分以上40分以下であり、さらに好ましくは4分以上30分以下である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
[キャスト]
熔融した樹脂をギヤポンプに通し、押し出し機の脈動を除去した後、金属メッシュフィルター等でろ過を行い、この後ろに取り付けたT型のダイから冷却ドラム上にシート状に押し出す。押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイを用いて複数層押出しても良い。この時、ダイのリップの間隔を調整することで幅方向の厚みむらを調整することができる。
この後キャスティングドラム上に押出す。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。
キャスティングドラムは60℃以上160℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上150℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分以上100m/分以下が好ましく、より好ましくは15m/分以上80m/分以下、さらに好ましくは20m/分以上70m/分以下である。
製膜幅は1m以上5m以下、さらに好ましくは1.2m以上4m以下、さらに好ましくは1.3m以上3m以下が好ましい。このようにして得られた未延伸フイルムの厚みは30μm以上400μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以上300μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
(b)飽和ノルボルネンフィルム
飽和ノルボルネン樹脂のペレットを熔融押出し機に入れ、100℃以上200℃以下で1分以上10時間以下脱水した後、混練押出しする。混練は1軸あるいは2軸の押出し機を使用できる。
溶融温度を240〜320℃、より好ましくは250〜310℃、さらに好ましくは260〜300℃にし、キャスティングドラムの温度を80〜170℃、より好ましくは90℃以上160℃以下、さらに好ましくは100℃以上150℃以下とする以外は、上記セルロースアシレートフィルムと同様に製膜することができる。
上記方法で製膜した熱可塑性フィルムの厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%以上2%以下が好ましく、より好ましくは0%以上1.5%以下、さらに好ましくは0%以上1%以下であり、これらを上記方法で延伸し、本発明の熱可塑性フィルムを得る。
(3)熱可塑性フィルムの加工
上述の方法で2軸に延伸した延伸熱可塑性フィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板とを組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用しても良い。これらは以下の工程により達成できる。
(表面処理)
熱可塑性フィルムは表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上させることができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。
これらの中でも特に好ましくは、セルロースアシレートフィルムの場合、アルカリ鹸化処理であり飽和ノルボルネンフィルムの場合グロー放電処理、コロナ処理、火炎処理である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬しても良く(浸漬法)、鹸化液を塗布しても良い(塗布法)。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分から10分通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設しても良い。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
(機能層の付与)
本発明の熱可塑性フィルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(イ)偏光層の付与(偏光板の作成)
(イ−1)使用素材
現在、市販の偏光層は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、特開平9−152509号、及び特開平9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合しても良く、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与しても良い。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1乃至20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
(イ−2)偏光層の延伸
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5乃至30.0倍が好ましく、3.0乃至10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5乃至5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0乃至10.0倍が好ましい。延伸はMD方向に平行に行っても良く(平行延伸)、斜め方向におこなっても良い(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
a)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の重量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2〜3.5倍、就中1.5〜3.0倍である。この後、50℃から90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
b)斜め延伸法
これには特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%以上100%以下、より好ましくは10%以上100%以下である。
延伸時の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上80℃以下である。湿度は50%rh以上100%rh以下が好ましく、より好ましくは70%rh以上100%rh以下、さらに好ましくは80%rh以上100%rh以下である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、50℃以上100℃以下より好ましくは60℃以上90℃以下で、0.5分以上10分以下乾燥する。より好ましくは1分以上5分以下である。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10度から80度が好ましく、より好ましくは30度から60度であり、さらに好ましくは実質的に45度(40度から50度)である。
(イ−3)貼り合せ
上記鹸化後のセルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光層を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01乃至10μmが好ましく、0.05乃至5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましく、40乃至50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作成することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/ 4板を用いることが好ましい。
(ロ)光学補償層の付与(光学補償シートの作成)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(ロ−1)配向膜
上記表面処理したセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができるし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行って良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上又は上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光層のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1乃至90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50゜が好ましく、45゜が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
(ロ−2)棒状液晶性分子
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001乃至0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
(ロ−3)円盤状液晶性分子
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
(ロ−4)光学異方性層の他の組成物
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(ロ−5)光学異方性層の形成
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μmであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。
(ロ−6)液晶性分子の配向状態の固定
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、米国特許2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、米国特許2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 の範囲にあることが好ましく、20乃至5000mJ/cm2 の範囲にあることがより好ましく、100乃至800mJ/cm2 の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
この光学補償フィルムと偏光層を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフイルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光層と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
(ロ−7)液晶表示装置
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
(TNモード液晶表示装置)
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、米国特許5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
(ハ)反射防止層の付与(反射防止フィルム)
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(ハ−1)塗布型反射防止フィルムの層構成
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率又、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。また、、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(ハ−2)高屈折率層および中屈折率層
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11 −295503号公報、特開平11 −153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(ハ−3)低屈折率層
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001- 40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と、特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[ 0020] 〜[ 0038] に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。
安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハー4)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、特開2000−9908号公報、WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(ハ−5)前方散乱層
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(ハ−6)その他の層
上記の層以外にプライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハ−7)塗布方法
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(ハ−8)アンチグレア機能
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、特開2000−95893号公報、特開2001−100004号公報、特開2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
次に本発明における各種測定方法について説明する。
(粘着跡の測定方法)
サンプルフィルムを黒色の平坦な布の上に置き、タングステンランプの下で反射光で目視観察する。表面に確認される数mm程度の「ハ」字状(鳥の足型状)の模様を20m2 観察し、その個数を数え、1m2 あたりの平均値として表す。
(R e、Rth、幅方向、長手方向のR e、Rth変動の測定方法)
MD方向(長手方向)サンプリングは、長手方向に0.5m間隔で100点、1cm角の大きさに切り出した。TD方向(幅方向)サンプリングは、製膜全幅にわたり1cm角の大きさに50点、等間隔で切り出した。Re、Rth測定は、上記サンプルフィルムを25℃60%rhに3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA-21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃60%rhにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定した。垂直方向から面内のレターデーション(Re)、垂直方向±40°方向の測定値からRthを算出した。上記サンプリング点の全平均をRe、Rthとした。
Re、Rth変動は、上記MD方向100点、TD方向50点の各最大値と最小値の差を、各平均値で割り、百分率で示したものをRe、Rth変動とした。
(セルロースアシレートの置換度)
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
1.熱可塑性樹脂
(1)セルロースアシレート
表1(図4)に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100重量部に対し7.8重量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することで、アシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。このようにして得たセルロースアシレートの重合度は下記の方法で求め、表1、2に記載した。
(重合度測定法)絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=(1nηrel )/C
DP=[η]/Km
ただし、T:測定試料の落下秒数、T0 :溶剤単独の落下秒数、C:濃度(g/l)、Km:6×10-4とする。
これらのTgは以下の方法で測定し、表1、2に記載した。なお、可塑剤を添加したものは、可塑剤添加後に測定した値を示した。
(Tg測定)DSCの測定パンにサンプルを20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却する。この後、再度30℃から250℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とし表1、2に記載した。また、全水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%を添加した。
(2)飽和ノルボルネン樹脂
6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンに、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液10部、トリエチルアミン5部、および四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液10部を添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は40000、水素添加率は99.8%以上、Tgは139℃であった。
(3)ポリカーボネイト樹脂(PC樹脂)
特開2003−29040の実施例1に従い、9,9−ビス(3−メチルー4−ヒドロキシフェニル)フルオレンで変性したPC樹脂を得た。このPC樹脂のTgは215℃であった。
2.製膜
(1)溶融製膜
上記セルロースアシレート、飽和ノルボルネン樹脂を直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。この際、可塑剤は以下の中から選定し(表1に記載)ペレットに混練した。これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.1%以下とした後、Tg−10℃になるように調整したホッパーに投入した。
表1において、TPP:トリフェニルフォスフェート、BDP:ビフェニルジフェニルフォスフェート、DOA:ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、PTP:1,4−フェニレンーテトラフェニルリン酸エステル、を示している。
溶融粘度が5000Pa・sとなるように溶融温度を調整し、この温度で5分間かけて1軸混練機を用い溶融した後、溶融温度より10℃高く設定したT−ダイからTg−5℃に設定したキャスティングドラム上に流延し固化しフィルムとした。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μm の厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。
(2)溶液製膜
(セルロースアシレート)
(イ)仕込み
上記セルロースアシレート樹脂を含水率が0.1wt%以下になるように乾燥した後、表1記載の可塑剤を添加し、下記から選んだ溶剤で溶解した後、セルロースアシレートが25重量%となるように溶解した。
・非塩素系:酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/5/7/5/3、質量部)
・塩素系 :ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(85/6/5/4、質量部)
可塑剤は上記TPP,BDP、DOA、PTPから選定し表2(図5)に記載した。これ以外にも、各水準に下記添加剤を加えた。
・光学異方性コントロール剤;特開2003−66230に記載の(化1)に記載の板状化合物(3wt%)
・UV剤a:2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.5wt%)
・UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(0.2wt%)
・UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(0.1wt%)
・微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm)、モース硬度 約7(0.25wt%)
・クエン酸エチルエステル(モノエステルとジエステルが1:1混合、0.2wt%)
ただし、上記添加量(wt%)は全てセルロースアシレートに対する割合である。
(ロ)膨潤・溶解
これらのセルロースアシレート、溶剤、添加剤を溶剤中に撹拌しながら投入した。投入が終わると撹拌を停止し、25℃で3時間膨潤させスラリーを作成した。これを再度撹拌し、完全にセルロースアシレートを溶解した。
(ハ)ろ過・濃縮
この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
(ニ)製膜
上述のドープを35℃に加温し、下記いずれかの方法で流延した(表2に記載)。
(ニ−1)バンド法
ギーサーを通して、15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは60m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が100wt%で剥ぎ取った後、130℃で乾燥した後、表1に示す残留溶剤となったところで巻き取り、セルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
(ニ−2)ドラム法
ギーサーを通して、−15℃に設定した直径3mの鏡面ステンレスのドラムに流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは100m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が200wt%で剥ぎ取った後、130℃で乾燥した後、表1に残留溶剤となったところで巻き取ったとりセルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
(PC)
特開2003−29040の実施例1に準じ、ジクロロメタンに19wt%で溶解した後、T−ダイからバンド上に押出し、残留溶剤が35wt%となったところで剥ぎ取り、この後延伸に用いた。
3.延伸
(同時二軸延伸)
上記溶融製膜、溶液製膜で得た熱可塑性フィルムを上述の残留揮発分を保持したまま表2に記載した条件で延伸した。また延伸温度はいずれも各水準の素材(可塑剤が入っているものはこの状態で測定したもの)のTgに対し、何℃高いか、低いかをそれぞれ+、−の温度で表1に「対Tg」として示した。このようにして得た延伸フィルムの評価結果を表1、2に示した。このようにして得た延伸フィルムのRe、Rth(平均値)、配向角およびこれらの変動率を上記の方法で測定し、表1、2に表示した。併せて粘着ムラも上述の方法で測定し、表1、2に表示した。
4.偏光板の作成
(1)表面処理
(1-1 )セルロースアシレートフィルム
延伸後のセルロースアシレートフィルムを下記のいずれかの方法で鹸化を行い、表1,2に記載した。
(a)塗布鹸化
iso- プロパノール80重量部に水20重量部を加え、これにKOHを1.5規定となるように溶解し、これを60℃に調温したものを鹸化液として用いた。これを60℃のセルロースアシレートフィルム上に10g/m2 塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーを用い、10l/m2 ・分で1分間吹きかけ洗浄した。
(b)浸漬鹸化
NaOHの1.5規定水溶液を鹸化液として用いた。これを60℃に調温し、セルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。この後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
(1-2) 飽和ノルボルネンフィルム、PCフィルム
表面の水との接触角が60度になるように、フィルム表面にコロナ処理を行った。
(2)偏光層の作成
下記方法のいずれか(表1,2に記載)厚み20μmの偏光層を調製した。なお、本発明では、延伸し偏光能を付与したフィルムを偏光層と呼び、これを少なくとも2枚の保護フィルムあるいは位相差フィルムで挟みこんだものを偏光板と呼び区別した。
(a)斜め延伸法
特開2002−86554の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が斜め45度となるように延伸した。
(b)平行延伸法
特開2001−141926の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層を、上記鹸化処理した延伸熱可塑性フィルム(位相差板)と鹸化処理した偏光板保護フィルム(商品名:フジタック)の間に挟み込んだ。この際、位相差板と偏光層の接着は、位相差板がセルロースアシレートの場合はPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤とし、位相差板がこれ以外の場合はエポキシ系接着剤を用いて貼り合せた。またフジタックと偏光層の間は上述のPVA水溶液を接着剤として貼り合わせた。貼り合わせ方向は、偏光軸と位相差板の長手方向が45度となるようした。このようにして得た偏光板は位相差板を液晶側に、フジタックを外側(目視側)になるようにして、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に取り付け、目視評価し表示むらの単位面積あたりの発生頻度を表1、2に記載した。本発明を実施したものは均一で良好な性能が得られた。
5.光学補償フィルムの作成
特開平11−316378号の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の延伸熱可塑性フィルムを使用したところ、表3に示すような(光学補償フィルムA と記載)良好な光学補償フィルムを作成できた。
特開平7−333433の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明の延伸熱可塑性フィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製したところ(光学補償フィルムBと記載)、良好な光学補償フィルムを作成できた。
一方、本発明の範囲外のものは、光学特性が低下した。特に、特開2002−311240の実施例1に準じたもの(表1の比較例1−4)、特開2003−315551の実施例中の試料No. S-11 に準じたもの(表2の比較例2−4)、特開2001−42130の実施例1に準じたもの(表2の比較例2−5)は、特にその低下が著しかった。
6.低反射フィルムの作成
本発明の延伸熱可塑性フィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い本発明の延伸熱可塑性フィルムを用いて低反射フィルムを作成したところ、均一で良好な光学性能が得られた。
7.液晶表示素子の作成
上記本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明の低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、表1、2に示したように粘着跡由来の表示むらの無い、均一で良好な液晶表示素子を得た。
8.結果
表1は溶融製膜フィルムで延伸を行った結果を示している。表1において、実施例1−1〜6は、セルロースアシレートフィルムで同時二軸延伸を行った結果であり、Re、Rth、及び粘着跡がそれぞれ適切な範囲に収まったフィルムを製造することができた。これに対して、比較例1−1は、逐次二軸延伸を行ったため、Re、Rthの変動率が大きくなり、さらに粘着跡も増加して不適切な範囲になった。
実施例1−7〜10では延伸ゾーンの温度を変えて試験を行っており、実施例1−12〜14では横延伸倍率を変えて試験を行い、実施例1−19では縦延伸倍率を変えて試験を行っている。これらの場合にも、同時二軸延伸を行っているため、Re、Rth、粘着跡に関して適切なフィルムが得られた。ただし、延伸倍率が2.5倍を超える比較例1−2、3では、延伸時にフィルムが破断したため、フィルム製品が得られなかった。
実施例1−20〜35では、様々な置換度において試験を行っているが、全ての場合に良好な結果が得られた。特に、置換度Bが1.25〜3.0、置換度A+Bが2.5〜3.0を満たす範囲では良好な結果が得られた。
実施例1−36及び比較例1−4は、飽和ノルボルネン系フィルムを延伸した結果であるが、この場合にも、同時二軸延伸を行った場合に良好な結果が得られ、逐次二軸延伸を行った場合に不適切なフィルムが製造された。
表2は溶液製膜フィルムで延伸を行った結果を示している。表2に示すように、実施例2−1〜34は、延伸ゾーンの温度、縦延伸倍率、横延伸倍率、置換度、さらにはフィルムの種類を変えて試験を行っているが、同時二軸延伸を行っているため、良好なフィルムが得られた。
これに対して、逐次二軸延伸を行った比較例2−1〜3及び6、7は、粘着跡が増加し、表示ムラが多くなるという欠点がみられた。また、延伸倍率が2.5を超える比較例2−4、5は、延伸時にフィルムが破断してフィルム製品が得られなかった。
本発明における同時二軸延伸を行うテンタの平面図 図2のテンタの側面図 図2のテンタの側面図 実施例の結果を示す表図 実施例の結果を示す表示図
符号の説明
2…テンタ、3…フィルム、5、6…レール、7、8…無端チェーン、10…クリップ、11、12…原動スプロケット、13、14…従動スプロケット、16…テンタ入口、17…テンタ出口、21〜24…開放部材、26…フレーム、27…フィルム載せ部、28…回転レバー、29…フラッパ

Claims (11)

  1. 熱可塑性フィルムを延伸して製造する熱可塑性フィルムの製造方法において、
    前記熱可塑性フィルムを縦方向と横方向に同時に延伸することによって、
    粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下である熱可塑性フィルムを製造することを特徴とする熱可塑性フィルムの製造方法。
  2. 縦方向及び横方向の延伸倍率が1倍以上2.5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  3. 縦方向と横方向の一方の延伸倍率が0.8倍以上1.0倍以下であり、他方の延伸倍率が1.0倍以上2.5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  4. 前記延伸は、前記熱可塑性フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  5. 粘着跡が10点/m2 以下、面内のレターデーションReが0nm以上500nm以下、厚み方向のレターデーションRthが30nm以上500nm以下であることを特徴とする熱可塑性フィルム。
  6. 前記レターデーションRe、Rthは幅方向、長手方向における変動がそれぞれ5%以下であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性フィルム。
  7. 前記熱可塑性フィルムがセルロースアシレートフイルム又は飽和ノルボルネン系フィルムであることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱可塑性フィルム。
  8. 前記セルロースアシレートフィルムは、アシレート基が置換度、2.5≦A+B<3.0、1.25≦B<3.0、(A:アセテート基の置換度、B:プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和)、を満足することを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性フィルム。
  9. 請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
  10. 請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
  11. 請求項7又は8の発明に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
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