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JP2005336246A - 酸二無水物、配向膜、および液晶表示素子 - Google Patents

酸二無水物、配向膜、および液晶表示素子 Download PDF

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JP2005336246A JP2004154424A JP2004154424A JP2005336246A JP 2005336246 A JP2005336246 A JP 2005336246A JP 2004154424 A JP2004154424 A JP 2004154424A JP 2004154424 A JP2004154424 A JP 2004154424A JP 2005336246 A JP2005336246 A JP 2005336246A
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典央 田村
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Abstract

【課題】本発明の酸無水物は、特別な反応設備を用いずに短い合成ルートで製造することができ、産業上非常に有利である。また、本発明の酸無水物を出発原料として用い、本発明の反応生成物であるポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドアミック酸またはポリアミドイミド、該反応生成物と溶剤とからなるワニス、該ワニスを電極付ガラス基板に塗布し加熱することによって得られた配向膜、および該配向膜を備えた液晶表示素子は、電圧保持率が高く焼き付きが少なく、しかも液晶のプレチルト角が加熱に対して安定している。従って本発明により、高機能な液晶表示素子をより安価に提供することが可能になった。
【解決手段】脂環を有する化合物において、脂環を構成する任意の2つの炭素原子が、無水コハク酸、無水グルタル酸、またはα,α-ジフルオロ無水グルタル酸のいずれか一種、2分子の炭素原子の一部となっていることを特徴とする酸二無水物。
【選択図】なし

Description

本発明はテトラカルボン酸二無水物(これ以降、本明細書においては「酸二無水物」という。)、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドアミック酸、ポリアミドイミド、ワニス、配向膜、および液晶表示素子に関する。
液晶表示素子は、画面の大型化やカラー化、コントラストや発色等の表示品位や応答速度向上に関する要求の変化に伴い、ツイステッド ネマチック(Twisted Nematic:TN)型液晶表示素子から、スーパー ツイステッド ネマチック(Super Twisted Nematic:STN)型液晶表示素子、さらに、画素一つ一つに薄膜トランジスタ(Thin Filmed Transistor:TFT)を取り付けたTFT型表示素子へと発展してきた。近年ではTFT型表示素子の駆動方式の改良が進み、例えばより広い視野角を獲得するため、イン プレーン スイッチング(In-Plain Switching:IPS)方式や垂直配向(Vertical Alignment:VA)方式、さらに動画対応可能な応答速度を持つ光学補償ベンド(Optically Compensated Bend:OCB)方式が開発されている。
液晶表示素子において配向膜は、液晶分子を一定方向に配向させること、液晶分子の基板平面に対する傾き角(プレチルト角)を所望の角度にすること、の2つの役割を果たしている。配向膜の材料には、配向膜の経時劣化、化学劣化、または熱的劣化を最小限に抑えるため、ガラス転移点が高く耐薬品性や耐熱性に優れたポリイミドが主に使用されている。配向膜は一般的に、ワニス(ポリアミック酸やポリイミドなどの溶液)を、スピンナー法や印刷法等により電極付ガラス基板に塗布し、塗布された電極付ガラス基板を加熱してポリアミック酸を脱水閉環するか、またはポリイミド溶液の溶媒を蒸発させてポリイミドの薄膜とし、ラビング等の配向処理を行うことにより得られる。
配向膜に求められる5つの特性:
配向膜には、液晶表示素子に下記のような特性をもたらすことが要求される。
1)液晶分子に適切なプレチルト角を付与すること。しかもこのプレチルト角がラビング、洗浄等のセル製造工程における条件や液晶セルの周囲温度等環境変化に対して安定であること。
2)液晶分子の配向欠陥が発生しないこと。
3)液晶表示素子に適切な電圧保持率(Voltage Holding Ratio:VHR)を与えること。
4)液晶表示素子に、任意の画像を長時間表示させた後、別の画像に変えたときに、前の画像が残像として残る「焼き付き」と呼ばれる現象が起きにくいこと。
5)液晶表示素子に同時に用いられる他の材料からの影響を受けないこと。
式(2)および(3)で表される酸二無水物は、配向膜用ポリイミドの原料として一般的に知られている。また、式(4)で表される酸二無水物は特許文献1に記載されている。
Figure 2005336246
特開昭58−109479号公報
しかしながら、式(2)の酸二無水物を出発原料として得られた配向膜を用いた液晶表示素子は、電圧保持率が低下しやすく、焼き付き現象も起こり易い。式(3)の酸二無水物を出発原料として得られた配向膜は、ラビング時の押込み強度や加熱時の温度の差によりプレチルト角が変化する。また式(4)の酸二無水物は合成反応にオゾンを使用するため、製造時に特別な装置が必要であるなど製造方法に問題があった。
本発明者らは鋭意研究開発を進めた。その結果、本発明者らは、式(1)で表される新規な酸二無水物を得、さらに、この酸二無水物を出発原料として得られるポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミド、およびポリアミドイミドの中から選ばれる少なくとも1つを含有するワニスから形成された配向膜は、その配向膜を用いた液晶表示素子に、前述の5つの特性をもたらすことが可能であるとともに、プレチルト角の安定性に優れていることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。なお、式(1)で表される新規な酸二無水物は、特別な反応装置を必要とせず容易に合成可能である。
本発明の目的は、配向膜に用いるワニスの原料であるポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミド、ポリアミドイミド等の出発原料として有用である新規な酸二無水物、その酸二無水物を出発原料として得られるポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミド、およびポリアミドイミド、それらワニス原料を含有するワニス、該ワニスを用いて得られ、液晶表示素子に使用した場合その液晶表示素子に前述の5つの特性をもたらす配向膜、およびその配向膜を用いた液晶表示素子を提供することである。
本発明は下記の構成要件を有する。
(1)式(1)で表される酸二無水物。
Figure 2005336246
式(1)において、Cycleと記載された構造は脂環構造であり、この脂環構造の任意の水素は有機基で置換されていてもよく、;Aはスピロ炭素を表し、;mは0または1である。X〜Xは独立して水素またはフッ素である。
(2)脂環構造が、式(1−a)〜式(1−r)から選択される少なくとも1つの構造である前記第1項に記載の酸二無水物。
Figure 2005336246
式(1−q)において、Zは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない。
(3)脂環構造が、式(1−a)、式(1−b)、式(1−e)、式(1−f)、式(1−g−1)、式(1−h)、および式(1−k)から選択される少なくとも1つの構造である前記第1項に記載の酸二無水物。
(4)脂環構造が、式(1−a)、式(1−b)、式(1−f)、および式(1−k)から選択される少なくとも1つの構造である前記第1項に記載の酸二無水物。
(5)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物とジアミンとの反応生成物であるポリアミック酸。
(6)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、下記No.1−1、No.1−2、No.1−3、およびNo.1−5から選択される少なくとも1つの酸二無水物である前記第5項に記載のポリアミック酸。
Figure 2005336246
(7)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、下記No.1−4、およびNo.1−7〜No.1−16から選択される少なくとも1つの酸二無水物である前記第5項に記載のポリアミック酸。

Figure 2005336246
No.1−15およびNo.1−16において、Zは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない。
(8)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、前記第7項に記載のNo.1−4およびNo.1−7から選択される少なくとも1つの酸二無水物である前記第5項に記載のポリアミック酸。
(9)前記第5項から第8項の何れか1項に記載のポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミド。
(10)トリカルボン酸、トリカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、およびジカルボン酸誘導体から選ばれた少なくとも1つと、前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物と、ジアミンとの反応生成物であるポリアミドアミック酸。
(11)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、前記だ6項および第7項に記載のNo.1−1、No.1−2、No.1−4、およびNo.1−5から選択される酸二無水物である前記第10項に記載のポリアミドアミック酸。
(12)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、前記第6項および第7項に記載のNo.1−3、およびNo.1−8〜No.1−16から選択される酸二無水物である前記第10項に記載のポリアミドアミック酸。
(13)前記第1項から第4項のいずれか1項に記載の酸二無水物が、前記第7項に記載のNo.1−4およびNo.1−7から選択される酸二無水物である前記第10項に記載のポリアミドアミック酸。
(14)前記第10項から第13項の何れか1項に記載のポリアミドアミック酸を脱水閉環して得られるポリアミドイミド。
(15)前記第5項から第8項の何れか1項に記載のポリアミック酸、前記第9項に記載のポリイミド、前記第10項から第13項の何れか1項に記載のポリアミドアミック酸、および前記第14項に記載のポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1つを含有するワニス。
(16)前記第15項に記載のワニスを用いて得られる配向膜。
(17)前記第16項に記載の配向膜を用いた液晶表示素子。
本発明の新規な酸二無水物は、特別な反応設備を用いること無く比較的短い合成ルートで製造することができる。本発明の新規な酸二無水物の用途は限定されるものではないが、本発明の酸二無水物を出発原料として得られるポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミド、およびポリアミドイミドの中から選ばれる少なくとも1つを含有するワニスから形成された配向膜は、その配向膜を用いた液晶表示素子に、前述の5つの特性をもたらすことが可能であるとともに、プレチルト角の安定性に優れている。従って本発明によれば、高機能な液晶表示素子をより安価に提供することができる。
以下、ポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミド、およびポリアミドイミドの総称としてポリマーと云うことがある。
第一に、本発明の酸二無水物について説明する。本発明の酸二無水物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば下記のような方法を挙げることができる。
Figure 2005336246
式中、Rはシアノまたはエステルを表し、Xは水素またはフッ素を表し、Rはシアノまたは−CHCOを表し、Rは−COHまたは−CHCOHを表す。
なお、本発明において脂環構造とは、脂環骨格を有する構造のことであり、脂環骨格を有するものであれば、その構造中に芳香族環を有するものであってもよい。
式(8)で表される脂環構造を有する公知のジケトンを、J.Org.Sci.,Vol.63,3452(1941)に記載された方法に準じて、マロノニトリルまたはシアノ酢酸エチルと反応させることにより式(9)で表される化合物が容易に得られる。これを、J.Org.Chem.,47,2840(1982)、Synthesis,611(1988)、またはJ.Fluorine Chem.,111,217(2001)に記載の方法に準じ、CNまたは式(12)で表される亜鉛試薬と反応させることにより、式(10)で表される化合物が容易に得られる。この化合物を塩酸等により加水分解することによって式(11)で表されるテトラカルボン酸が得られる。このテトラカルボン酸を無水酢酸により無水化することにより、本発明の酸二無水物が容易に合成できる。
前述の製法方法であれば、本発明の酸二無水物の出発原料は脂環を有するジケトンである。本発明においては、脂環を有する公知のジケトンの脂環構造は全て、本発明の酸二無水物の脂環構造に利用することができる。本発明の酸二無水物の脂環構造は、前述の通り脂環骨格を有する構造であれば特に限定されるものではないが、例えば、本発明の酸二無水物を配向膜の原料として使用する場合であれば、配向膜に求められる特性に応じ任意に脂環構造を選択すればよい。
脂環構造の例としては、下記式(1−a)〜式(1−r)を挙げることができる。式(1−q)中のZは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない基である。これらは特に限定されるものではないが、例えば−O−、―(CH−、−(CF−などを挙げることができる。なお、前記nは1から10の整数である。これら式(1−a)〜式(1−r)のうち、式(1−a)、式(1−b)、式(1−e)、式(1−f)、式(1−g−1)、式(1−g−2)、式(1−h)、式(1−i)、式(1−j)、式(1−k)、式(1−o)、および(1−r)で表される脂環構造を有する酸二無水物を出発原料として得られる配向膜は、該配向膜を用いた液晶表示素子に高いVHRを与えることができる。さらにその中でも、式(1−a)、式(1−b)、式(1−e)、式(1−f)、式(1−g−1)、式(1−h)、および式(1−k)で表される脂環構造は、本発明において特に好ましい脂環構造である。
Figure 2005336246
式(1)で示される本発明の酸二無水物のうち、下記のNo.1−1からNo.1−16は、前述の配向膜に求められる5つの特性に優れ合成が容易であることから、本発明において好ましい酸二無水物である。
No.1−1からNo.1−16で表される酸二無水物を原料とする本発明の配向膜を用いた液晶表示素子は、高い電圧保持率を有する。特に高い電圧保持率を液晶表示素子に付与したい場合には、No.1−1〜No.1−11およびNo.1−15〜No.1−16を配向膜の出発原料として用いることが好ましい。またNo.1−1からNo.1−16において、脂環構造中の水素はアルキル基により置き換えられていてもよい。
なお、No.1−15およびNo.1−16において、Zは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない。
Figure 2005336246
これら好適例の酸二無水物を用いて得られるワニスから形成された配向膜は、いずれも前述の配向膜に求められる5つの特性に優れることから、TFT表示素子用配向膜として好適である。
本発明の酸二無水物は、配向膜用のポリマーの原料としての用途の他、各種ポリイミドコーティング剤、あるいはポリイミド樹脂成形品、フィルムまたは繊維などに利用することができる。本発明の酸二無水物はスピロ環構造を有するため、これを用いたポリイミド樹脂は高い耐熱性を有することから、この特性に見合った用途に最適である。
第二に、本発明のポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミドおよびポリアミドイミドについて説明する。
本発明のポリアミック酸の溶液は、溶媒中、本発明の酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得られる。なお、ポリアミック酸は、このポリアミック酸の溶液から、再沈殿や蒸留により溶媒を除去することにより得ることができる。このとき、本発明の酸二無水物は、単独であっても複数であってもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲であれば、本発明の酸二無水物の他に、他の酸二無水物を使用してもよい。
本発明のポリアミドアミック酸の溶液は、溶媒中、本発明の酸二無水物およびジカルボン酸もしくはその誘導体とジアミンとを反応させることによって得られる。また本発明のポリアミドアミック酸の溶液は、本発明の酸二無水物およびトリカルボン酸もしくはその誘導体とジアミンとを反応させることによっても得られる。なお、得られたポリアミドアミック酸は、前述のポリアミドアミック酸の溶液から、再沈殿や蒸留により溶媒を除去することにより得ることができる。本発明の酸二無水物は、単独であっても複数であってもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲であれば、本発明の酸二無水物の他に、他の酸二無水物を使用してもよい。
ジカルボン酸誘導体とは、例えば、フタル酸二塩化物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸二塩化物などのジカルボン酸塩化物もしくはフタル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステルなどのエステルであり、トリカルボン酸誘導体とは、例えば、トリメリット酸塩化物無水物などのトリカルボン酸塩化物無水物、もしくはトリメリット酸三塩化物である。
この方法によりポリアミドアミック酸を製造する場合、塩化水素、ピリジンまたは3級アミンの塩が生成する。ポリアミドイミドを配向膜として使用する場合、それらの塩が配向膜に混入することにより、それを用いた液晶表示素子のVHRが低下したり、焼き付き減少が起きる場合がある。これらを避けるために反応によって得られたポリアミドアミック酸の溶液を水、アルコール、ハロゲン化炭化水素等の貧溶媒に添加し、再沈殿による精製を行うことが好ましい。
本発明のポリイミドは、本発明の酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得られる本発明のポリアミック酸の溶液、もしくはポリアミック酸の溶液から溶媒を除去して得られるポリアミック酸を、別の溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸の溶液に、無水酢酸およびピリジンを加え加熱することにより得られる。さらに、本発明のポリイミドは、本発明のポリアミック酸や前述の何れかのポリアミック酸の溶液を約200℃以上に加熱することによっても得られる。
本発明のポリアミドイミドは、本発明の酸二無水物と、ジカルボン酸とその誘導体およびトリカルボン酸とその誘導体から選ばれた一種以上と、ジアミンとを反応させることによって得られる本発明のポリアミドアミック酸の溶液、もしくはポリアミドアミック酸の溶液から溶媒を除去して得られるポリアミドアミック酸を別の溶媒に溶解させて得られるポリアミドアミック酸の溶液に、無水酢酸およびピリジンを加え加熱することにより得られる。さらに、本発明のポリアミドイミドは、本発明のポリアミドアミック酸や前述の何れかのポリアミドアミック酸の溶液を約200℃以上まで加熱することによっても得られる。
前述の、ポリアミック酸、ポリアミドアミック酸、ポリイミドおよびポリアミドイミドの合成に用いる溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノエチルエーテル、g−ブチロラクトンなどを挙げることができる。本発明においては、上記溶媒から選ばれた2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明のポリマーが可溶であれば上記以外の溶媒を用いてもよい。
本発明の酸二無水物と反応させるジアミンは特に限定されるものではないが、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンなどである。これらジアミンの例を表1〜表3に示す。本発明においてジアミンは単独で使用してもよく、2つ以上を併用してもよい。
Figure 2005336246




Figure 2005336246


Figure 2005336246
さらに、本発明には下記式(13)で表されるシロキサン系のジアミンを使用することができる。
Figure 2005336246
式(13)において、RおよびRは炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、RとRは同じ基であっても異なる基であってもよい。また、Rはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。mは1〜6の整数を表し、nは1〜10の整数を表す。
本発明に使用し得る他の酸二無水物は特に限定されるものではないが、例えば表4〜表6に示す化合物である。



















Figure 2005336246


Figure 2005336246


Figure 2005336246
上記酸二無水物の中には異性体を含むものがあるが、本発明の効果を損なわない限り、異性体混合物も使用することができる。また、本発明においては、上記酸二無水物を2つ以上併用してもよい。
上記の配向膜に求められる効果を発現させるため、本発明のポリマーに含まれる式(1)の本発明の酸二無水物の割合は、全酸二無水物に対し、10モル%以上が必要であるが、好ましくは20モル%〜100モル%、より好ましくは30モル%〜100モル%である。
第三に、本発明のワニスについて説明する。本発明のワニスは、本発明のポリマーから選ばれた少なくとも1つを含有するポリマー溶液である。本発明のワニスの具体的な例は、本発明の酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得られる本発明のポリアミック酸の溶液、該ポリアミック酸の溶液から溶媒を除去して得られるポリアミック酸を、別の溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸の溶液、ジカルボン酸とその誘導体およびトリカルボン酸とその誘導体から選ばれた一種以上と、本発明の酸二無水物と、ジアミンとを反応させることによって得られる本発明のポリアミドアミック酸の溶液、該ポリアミドアミック酸の溶液から溶媒を除去して得られるポリアミドアミック酸を別の溶媒に溶解させて得られるポリアミドアミック酸の溶液、およびそれらの混合物などである。
配向膜に所望の特性を付与するため、本発明のポリマーを2種類以上含有するワニスを用いてもよい。(このような複数のポリマーをブレンドすることを「ポリマーブレンド」と言うことがある。)特に本発明のポリアミドアミック酸またはポリアミドイミドを用いる場合には、VHRの低下を抑え、配向の熱的、機械的な安定性を損なわないようにするため、本発明のポリアミドアミック酸またはポリアミドイミドを、本発明ポリアミック酸またはポリイミドに混合して用いることが好ましい。その際のポリアミドアミック酸またはポリアミドイミドの添加割合は、ポリアミック酸またはポリイミドに対し0.01〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
さらに本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、配向膜の特性コントロールするなどの目的で、本発明ワニスに、本発明のポリマーではないポリマーをポリマーブレンドしてもよい。このときワニス中の全ポリマー中に占める本発明ポリマーの割合は、50〜100重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは70〜100重量%の範囲である。本発明ポリマーの割合がこの範囲であれば、本発明の効果を顕著に発現させることができる。
本発明のワニスに含まれるポリマーの割合は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ、最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、ワニス重量に対し0.1〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%の範囲である。
本発明のワニスに有機シリコーン化合物を添加すれば、配向膜のガラス基板への密着性や硬さの調節が可能となり、ラビング等によりポリイミドが削れることに起因する表示不良を改善することができる。本発明のワニスに添加する有機シリコーン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルである。
該有機シリコーン化合物のワニスへの添加割合は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、ワニスに含有されるポリマーの重量に対し0.01〜5重量%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。この範囲であれば、上記の配向膜に要求される特性を損なうことなく、表示不良を良好に改善することができる。
本発明のワニスに用いる溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノエチルエーテル、g−ブチロラクトンなどを挙げることができる。本発明においては、上記溶媒から選ばれた2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明のポリマーが可溶であれば上記以外の溶媒を用いてもよい。
第四に、本発明の配向膜について説明する。本発明の配向膜は本発明のワニスを用いて得られる配向膜である。本発明の配向膜は、本発明のワニスの中から選ばれた1種を用いて得られたものであってもよく、既述のように2種以上を混合して用い、得られたものであってもよい。
既述のように配向膜に求められる5つの特性をさらに効果的に発現させる目的で、ポリマーブレンドがしばしば行われる。このとき薄膜化したときの表面エネルギーの値が異なる複数のポリマーでこれを行った場合、表面張力の低い成分は自発的に膜表面に偏析しやすい。このようなポリマーブレンドを行うことによって、配向膜の表面に良好な液晶配向性を示す層を、バルクに良好な電気的特性を発現する層を形成し、これら両方の特性に優れた配向膜を得る方法が、特開平8−43831号公報に開示されている。
本発明の酸二無水物のうち、No.1−1、No.1−2、No.1−3、およびNo.1−5を原料とするポリマーは表面張力が比較的大きいので、表面張力が求められる用途に好適である。表面張力は、これらの酸二無水物と反応させるジアミンの種類を選択することにより制御可能である。
No.1−4およびNo.1−7〜No.1−16から選ばれた酸二無水物を含有するポリマーは、表面張力の小さなポリマーの原料として好適である。
また、フッ素を含有する本発明の酸二無水物であるNo.1−4またはNo.1−7を含有するポリマーで形成される膜の表面張力は小さい。従ってこのポリマーと、膜を形成した際の表面張力が大きなものとなるポリマーとを含有するワニスを用いて得られる配向膜の樹脂多層構造においては、樹脂層間の表面エネルギーの差が大きくなり、樹脂層分離の状態が著しいものとなる。以上のように、本発明の酸二無水物であるNo.1−4およびNo.1−7は、樹脂層間の表面エネルギーの差が大きな樹脂多層構造を有する配向膜を形成する目的に好ましく使用することができる。
本発明の配向膜の製造方法は特に限定されるものではないが、下記工程を有する製造方法が例示できる。
1)本発明のワニスを刷毛塗り法、浸漬法、スピンナー法、スプレー法、印刷法等により基板上に塗布する。
2)50〜150℃、好ましくは80〜120℃で溶媒を蒸発させる。
3)150〜400℃、好ましくは180〜280℃で加熱し成膜する。
4)膜表面を布などでラビング処理する。
さらに、ワニスの塗布前に基板表面上をシランカップリング剤で処理しその上に成膜すれば、膜と基板との接着性が改善される。
第五に本発明の液晶表示素子について説明する。本発明の液晶表示素子は、配向膜を用いた液晶表示素子であり、その他の構成要素については特に限定はない。本発明の配向膜を使用すれば、公知の全ての液晶表示素子に関し、その特性を改善できるが、特に高い電圧保持率が要求されるTFT用液晶表示素子の焼き付き改善に本発明の配向膜は効果が大きい。このようなTFT用液晶表示素子に使用される液晶組成物の例として、特許第3086228号、特許2635435号、特表平5−501735、および特平開9−255956等に記載されたそれらが挙げられる。したがって、本発明の配向膜はこれらに記載された液晶組成物と組み合わせて用いることが特に好ましい。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。実施例中、核磁気共鳴法(NMR法)による測定はすべて重クロロホルム中で行った。分子量の測定はゲル パーミエーション クロマトグラフィー装置(GPC)を用い、ポリスチレンを標準溶液とし、溶出液はDMFを用いた。粘度は、回転粘度計(東機産業株式会社製、TV−20)を用い測定した。なお本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
液晶表示素子の評価法
以下に実施例で用いた液晶表示素子の評価法を記載する。
プレチルト角
クリスタルローテーション法により測定した(温度;25℃)。
2.焼き付き(残留DC電圧)
液晶セルの焼き付きの起こりやすさは、「三宅他、信学技報、EID91−111,p19」に記載の方法により、液晶セルに50mV、1kHzの交流に周波数0.0036Hzの三角波を重畳させて残留DC電圧を測定することにより評価した。残留DC電圧が高いほど焼き付きやすい液晶セルであることを示す。
3.電圧保持率
電圧保持率の測定は、「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78」に記載の方法で行った。測定は、ゲート幅69μs、周波数60Hz、波高±4.5Vの矩形波を液晶セルに印加して行った。
実施例1 No.1−2の合成
Figure 2005336246
シクロヘキサン−1,4−ジオン(20g,160mmol)、シアノ酢酸エチル(48g,420mmol)、酢酸ナトリウム(3.5g,2.6mmol)、酢酸(12ml)、およびトルエン(200ml)を用い、J.Org.Sci.,Vol.63,3452(1941)の記載の方法に準じて、1,4−シクロヘキシリデンビスシアノ酢酸エチルを得た。収量は48g、収率は89%であった。
得られた1,4−シクロヘキシリデンビスシアノ酢酸エチル(40g,130mmol)およびシアン化ナトリウム(17.2g,260mmol)の混合物を、酢酸エチル−純水(100ml/20ml)の2層系溶媒中、室温で一晩攪拌した。有機層を分離後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後溶媒を減圧留去し、得られた残さをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=10:1)法で精製ことによって目的とする(1,4−ジシアノシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビスシアノ酢酸エチルを得た。収量は36g、収率は77%であった。
得られた(1,4−ジシアノシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビスシアノ酢酸エチル(35g,98mmol)を濃塩酸(350ml)中、50時間還流した。溶媒を減圧留去後、メタノール(200ml)および濃硫酸を加えエステル化した。酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出操作を行った後、上記と同様に分液、乾燥、ろ過、溶媒留去などの後処理を行い粗生成物を得た。該粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製することによって、(1,4−ジメトキシカルボニルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸メチルを得た。収量は23g、収率は69%であった。
得られた(1,4−ジメトキシカルボニルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸メチルを6N塩酸水中で還流しカルボン酸に変換した後、溶媒を減圧留去した。残さを無水酢酸中で還流することにより、目的とする(1,4−ジカルボキシシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸二無水物を得た。収量は16g、収率は94%であった。
実施例2 No.1−5の合成
Figure 2005336246
シクロヘキサン−1,3−ジオンを用い、実施例1の方法に準じてNo.1−5の酸二無水物を合成した。
実施例3 No.1−3の合成
Figure 2005336246
実施例1で得た中間体である1,4−シクロヘキシリデンビスシアノ酢酸エチル(10g、33mmol)のTHF(80ml)溶液中に、ブロモ酢酸エチル(13g、78mmol)と、亜鉛粉末(5.1g、78mmol)から常法に従って調製した亜鉛試薬とを室温で滴下した。室温で1時間攪拌後、この反応液に塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加えた。酢酸エチルを用いて抽出操作を行った後、上記と同様に分液、乾燥、ろ過、溶媒留去などの後処理を行い、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製することによって、(1,4−エトキシカルボニルメチルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビスシアノ酢酸エチルを得た。収量は1.9g、収率は12%であった。
得られた(1,4−エトキシカルボニルメチルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビスシアノ酢酸エチル(1.9g,4.0mmol)を実施例1に準じた方法に従い、濃塩酸で加水分解反応し、その後メタノールでエステル化し粗生成物を得た。該粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製することによって、(1,4−メトキシキシカルボニルメチルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸メチルを得た。収量は1.2g、収率は84%であった。
得られた(1,4−メトキシキシカルボニルメチルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸メチル(1.2g,3.2mmol)を6N塩酸水中で還流しカルボン酸に変換した後、溶媒を減圧留去した。残さを無水酢酸中で還流することにより、目的とする(1,4−カルボキシメチルシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸二無水物を得た。収量は570mg、収率は64%であった。
実施例4(ポリアミック酸の合成)
攪拌機、窒素導入口、温度計、及び原料導入口を供えた100mlの4つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下DDM)0.8922mg(4.500mmol)を入れ、NMP10gに溶解した。ここに実施例1で得られた(1,4−ジカルボキシシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸二無水物0.5675g(2.2500mmol)およびピロメリット酸無水物0.4908g(2.2500mmol)を加え、6時間攪拌した。その後この溶液をNMP30gで希釈することにより、ポリアミック酸を約5重量%の割合で含有する褐色溶液が得られた。この溶液の重量平均分子量は4.3万であり、25℃での粘度は25mPa・sであった。以下この溶液をワニスAとする。
実施例5(可溶性ポリイミドの合成)
ワニスA(50g)に、無水酢酸1.0g(9.8mmol)およびピリジン0.8g(10mmol)を加え、100℃で1時間反応させた。冷却後、反応液を純水50mlに加え、生じた沈殿をろ別した。沈殿を純水(25ml)およびメタノール(25ml)で洗浄し、これを真空乾燥することにより可溶性ポリイミドを得た。この可溶性ポリイミドの重量平均分子量は2.8万であった。
実施例6(ポリアミドイミドの合成)
攪拌機、窒素導入口、温度計、及び原料導入口を供えた100mlの4つ口フラスコに、実施例1で得られた(1,4−ジカルボキシシクロヘキシ−1,4−ジイル)ビス酢酸二無水物1.0593g(4.200mmol)、テレフタル酸クロリド(以下「TPC」と言うことがある。)0.2030g(1.000mmol)、およびプロピレンオキシド60mg(1.0mmol)を入れ、NMP10gに溶解した。ここにDDM0.6146g(3.100mmol)および4−n−ブチル−1,1−ビス(4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル)シクロヘキサン(以下「BuBDMA」と言うことがある。)1.0055g(2.000mmol)のNMP(10g)溶液を加え、室温で6時間攪拌した。その後この溶液をNMP10gで希釈した後、水(200ml)に注ぎ、再沈殿を行った。生じた沈殿をろ過し、得られたポリマーをNMP(10ml)に加え、さらに無水酢酸1.0g(9.8mmol)およびピリジン0.8g(10mmol)を加え100℃で2時間攪拌した。冷却後、水(200ml)に注ぎ、再沈殿を行った。生じた沈殿をろ過し、この沈殿をメタノール(100ml)で煮沸洗浄し、ポリアミドイミドを得た。このポリアミドイミドの重量平均分子量は1.5万であった。
実施例7〜16、比較例1および2(ワニスB〜Mの調製)
酸二無水物およびジアミンを表7に示したものに代えた以外は、実施例4および5に記載の方法の準じてワニスB〜Mをそれぞれ調製した。これらの重量平均分子量および粘度を表8に示す。
Figure 2005336246
カッコ内はモル%
*1 PMDA:ピロメリット酸無水物(No.3−1)
Figure 2005336246
*2 CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(No.3−2)
Figure 2005336246
*3 BuBDMA:4−n−ブチル−1,1−ビス(4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル)シクロヘキサン(No.2−35)
Figure 2005336246
*4 PnDMA:4’−(4−ペンチルシクロヘキシル)−3,5−ジフェニルメタン(No.2−43)
Figure 2005336246
Figure 2005336246
実施例17
スクリューバイアルに実施例4で得られたワニスAを18.2ml、および実施例7で得られたワニスBを0.18ml量り取り、室温で1時間攪拌した。その後BC12mlを加え、溶液重量に対して約3重量%ポリマーを含有するポリマー溶液を得た。片面にITO電極を設けた透明ガラス基板上に、このポリマー溶液を滴下し、スピンナー法により塗布した(2500rpm、15秒)。塗布後80℃で5分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、オーブン中で250℃、30分間加熱処理を行い、膜厚約60nmのポリイミド樹脂薄膜を得た(膜厚はエリプソメーターにより測定)。該ポリイミド樹脂薄膜が形成されたガラス基板をラビング処理し、ラビング方向が逆平行になるようにこれらの2枚を貼り合わせ、セル厚20μmの液晶セルを組み立てた。この液晶セルに下記液晶組成物を注入し、110℃で30分間アイソトロピック処理を行い、室温まで冷却し液晶表示素子を得た。この液晶表示素子の残留DC電圧は25℃で0.19Vであり、20、60、および90℃における電圧保持率はそれぞれ98.1、96.9、94.4%であった。またこの表示素子を用いてプレチルト角を測定した結果、5.8度であった。このセルを偏光顕微鏡観察した結果、配向欠陥は全く観察されなかった。このセルを110℃で20時間静置し、室温まで冷却した後、これらの値を再測定した。その結果残留DC電圧は25℃で0.25Vであり、20、60、および90℃における電圧保持率は98.3、96.4、93.7%、プレチルト角は5.8度であった。このセルを偏光顕微鏡観察した結果、配向欠陥は全く観察されなかった。なお、110℃、20時間静置する前の残留DC電圧および電圧保持率を「初期値」と云い、静置後の残留DC電圧および電圧保持率を「高温後値」と云う。


液晶セルに注入した液晶組成物
Figure 2005336246
実施例18
ワニスBの代わりにワニスCを用いた以外は、実施例17の方法に準じて液晶表示素子を製作し、残留DC電圧、電圧保持率およびプレチルト角を測定(以下「特性測定」ということがある。)した。
初期値:残留DC電圧:0.08V
電圧保持率 :97.3(20)、96.1(60)、94.7(90℃)%
プレチルト角:6.6度
配向欠陥なし
高温後値:残留DC電圧:0.09V
電圧保持率 :97.1(20)、96.2(60)、94.2(90℃)%
プレチルト角:6.6度
配向欠陥なし
実施例19、20
ワニスBの代わりにワニスDまたはEを用いた以外は、実施例17の方法に準じて液晶表示素子を製作し特性測定を行った。結果を表9に示す。
Figure 2005336246
実施例21
片面にITO電極を設けた透明ガラス基板上に、ワニスGを滴下し、スピンナー法により塗布した(2500rpm、15秒)。塗布後80℃で5分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、オーブン中で250℃、30分間加熱処理を行い、膜厚約60nmのポリイミド樹脂薄膜を得た。該ポリイミド樹脂薄膜が形成されたガラス基板をラビング処理し、ラビング方向が逆平行になるようにこれらの2枚を貼り合わせ、セル厚20μmの液晶セルを組み立てた。この液晶セルに実施例17で使用した液晶組成物を注入し、110℃で30分間アイソトロピック処理を行い、室温まで冷却し液晶表示素子を得た。この液晶表示素子の残留DC電圧は25℃で0.24Vであり、20、60、および90℃における電圧保持率はそれぞれ98.4、97.1、96.1%であった。またこの表示素子を用いてプレチルト角を測定した結果、6.0度であった。このセルを110℃で20時間静置し、室温まで冷却した後、これらの値を再測定した。その結果残留DC電圧は0.26V(25℃)であり、20、60、および90℃における電圧保持率は98.2、97.1、96.0%、プレチルト角は6.0度であった。
実施例22〜24
ワニスGの代わりにワニスH〜Jの何れかを用いた以外は、実施例21の方法に準じて液晶表示素子を製作し特性測定を行った。結果を表10に示す。
Figure 2005336246
比較例3、4
ワニスGの代わりにワニスLまたはMを用いた以外は、実施例21の方法に準じて液晶表示素子を製作し特性測定を行った。結果を表11に示す。
Figure 2005336246
実施例と比較例から明らかなように、本発明の酸二無水物を原料とする配向膜を用いた液晶表示素子は残留DC電圧が低く、かつ電圧保持率が高いことが分かる。

Claims (17)

  1. 式(1)で表される酸二無水物。
    Figure 2005336246
    式(1)において、Cycleと記載された構造は脂環構造であり、この脂環構造の任意の水素は有機基で置換されていてもよく;Aはスピロ炭素を表し、;mは0または1である。X〜Xは独立して水素またはフッ素である。
  2. 脂環構造が、式(1−a)〜式(1−r)から選択される少なくとも1つの構造である請求項1に記載の酸二無水物。
    Figure 2005336246
    式(1−q)において、Zは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない。
  3. 脂環構造が、式(1−a)、式(1−b)、式(1−e)、式(1−f)、式(1−g−1)、式(1−h)、および式(1−k)から選択される少なくとも1つの構造である請求項1に記載の酸二無水物。
  4. 脂環構造が、式(1−a)、式(1−b)、式(1−f)、および式(1−k)から選択される少なくとも1つの構造である請求項1に記載の酸二無水物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物とジアミンとの反応生成物であるポリアミック酸。
  6. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、下記No.1−1、No.1−2、No.1−3、およびNo.1−5から選択される少なくとも1つの酸二無水物である請求項5に記載のポリアミック酸。
    Figure 2005336246
  7. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、下記No.1−4、およびNo.1−7〜No.1−16から選択される少なくとも1つの酸二無水物である請求項5に記載のポリアミック酸。
    Figure 2005336246
    No.1−15およびNo.1−16において、Zは炭素数1〜10のアルキル基であり、その中の任意のCHはOもしくはCFで置換されていても良いが、Oが連続して結合することはない。
  8. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、請求項7に記載のNo.1−4およびNo.1−7から選択される少なくとも1つの酸二無水物である請求項5に記載のポリアミック酸。
  9. 請求項5から8の何れか1項に記載のポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミド。
  10. トリカルボン酸、トリカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、およびジカルボン酸誘導体から選ばれた少なくとも1つと、請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物と、ジアミンとの反応生成物であるポリアミドアミック酸。
  11. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、請求項6および7に記載のNo.1−1、No.1−2、No.1−4、およびNo.1−5から選択される酸二無水物である請求項10に記載のポリアミドアミック酸。
  12. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、請求項6および7に記載のNo.1−3、およびNo.1−8〜No.1−16から選択される酸二無水物である請求項10に記載のポリアミドアミック酸。
  13. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸二無水物が、請求項7に記載のNo.1−4およびNo.1−7から選択される酸二無水物である請求項10に記載のポリアミドアミック酸。
  14. 請求項10から13の何れか1項に記載のポリアミドアミック酸を脱水閉環して得られるポリアミドイミド。
  15. 請求項5から8の何れか1項に記載のポリアミック酸、請求項9に記載のポリイミド、請求項10から13の何れか1項に記載のポリアミドアミック酸、および請求項14に記載のポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1つを含有するワニス。
  16. 請求項15に記載のワニスを用いて得られる配向膜。
  17. 請求項16に記載の配向膜を用いた液晶表示素子。
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