以下、本発明に係る超音波流量計、その流量測定方法およびその流量測定プログラムについて添付の図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1に本発明の第1の実施形態に係る超音波流量計の一実施例である第1の超音波流量計20について適用場面の一例を説明する説明図を示す。
図1に示す第1の超音波流量計20の適用場面の一例では、自流式(水路式)の水力発電所において河川を流れる水21を取水口22から導水路(山手水路)23へ導入する場面を示しており、図1に示す適用場面においては、河川側の水路(川手水路)24に流入する水の流量を測定している。尚、図1に示す矢印21は、水21の流動方向を示す。
これらの水路23,24は、上方が自由面となる流路、すなわち、開渠(かいきょ)であり、第1の超音波流量計20は、このような開渠において流量を測定するものである。流量を求める際には、まず、流量の測定対象となる流体(ここでは水となる)が通過する断面における流速分布を求める。そして、求めた流速分布をその断面について積分することによって断面を通過する流体の流量を求める。
このような流速分布から流量を算出する方法は多くの流量計で採用されており、第1の超音波流量計20も超音波を用いて測定した流速分布を演算処理することにより流量を算出し、算出した流量値を測定流量とするものである。
尚、超音波流量計20における流速分布および流量測定の基本的な原理は、本案発明者が特開2000−97742号公報や特開2003−130699号公報で開示したドップラ式超音波流量計を利用したものである。従って、流速分布および流量測定の基本的な測定原理や詳細な構成等についてはその説明を割愛する。
また、流量を測定する対象流体は、水以外にも多種の流体に適用できる点についても、上述した公報で説明しているが、以下の説明では、説明を簡潔にするべく流量を測定する対象流体を水21、流体が流動する流路を水路24として説明する。
図2に第1の超音波流量計20の全体的な構成の概略を表した構成概略図を示す。
尚、図2では、水21が流動する水路24の軸方向をx軸方向、このx軸方向と直行する水路24の幅方向をy軸方向、水路24の水深方向をz軸方向として示しているが、これらの3軸方向については、図2以外の他図および以下の本文中の説明においても同様とする。
第1の超音波流量計20は、測定者(ユーザ)の流量測定要求に基づき、流量測定の対象となる水21の中において発信した超音波が水中に定常的に混在する粒子(以下、反射体とする)により反射した反射波を受信し、受信した超音波の反射波を信号処理および信号解析して水21の流速分布を得るものである。また、水21の流量は、他の流量計と同様に水21の流速分布を積分演算処理することで算出し、この算出した流量を流量測定結果として表示する。
図2によれば、第1の超音波流量計20は、流量測定を行う水中において超音波を発信する超音波発信手段および水中に混在する多数の反射体(以下、反射体群とする)により反射した反射波を受信する超音波受信手段として、水中かつ水面(空気および水の境界面)近傍において超音波の発信および受信を行う水面ユニット26と、流路(川手水路)24の底に着面して超音波の発信および受信を行う水底ユニット27とを具備する。
また、第1の超音波流量計20は、水面ユニット26が測定対象となる水21が流動する水路24の軸方向(x軸方向)と直行する水路24の幅方向(y軸方向)とほぼ平行にスライド移動可能なように測定対象となる水21が流動する水路24を跨いで設けられるガイドレール28を具備する。
さらに、第1の超音波流量計20は、水面ユニット26、水底ユニット27およびガイドレール28に加え、水面ユニット26および水底ユニット27が行う超音波の発信を制御したり、受信した超音波の反射波から水21の流速分布を取得し流量を測定するトリガ発生手段、信号処理手段、信号解析手段および流量表示手段としての演算処理ユニット29とを具備する。つまり、演算処理ユニット29は、本実施例において、測定者からの測定開始要求を受け付けてトリガを発生したり、受信した超音波の反射波を信号処理および信号解析して流量測定対象となる水の流速分布を取得し、取得した水の流速分布を積分演算処理して流量を算出して、算出した流量値を流量測定値として表示する役割を担う。
第1の超音波流量計20の水面ユニット26は、ガイドレール28に沿って図2中のy軸方向に移動可能に取り付けられる。そして、この水面ユニット26から流量の測定を行う水路24の水底に接し、かつ、水21の流れ方向に対して上流を向くように水底ユニット27が配置される。また、水底ユニット27と水面ユニット26との間はユニット接続手段としてのワイヤ30によって物理的に接続されており、ワイヤ30の長さを調整することで両ユニット間の距離を自在に調整できる。
さらに、演算処理ユニット29と水面ユニット26および水底ユニット27とは、コネクターコード31で電気的に接続されており、水面ユニット26および水底ユニット27から出力された超音波エコー信号は、コネクターコード31を介して演算処理ユニット29に伝送され入力される。
図3に第1の超音波流量計20の水面ユニット26について全体的な構成の概略を表した構成概略図を、図4に第1の超音波流量計20の水底ユニット27について全体的な構成の概略を表した構成概略図を示す。
図3によれば、第1の超音波流量計20の水面ユニット26は、ガイドレール28に沿う方向(図2中のy軸方向)にスライド可能な状態で固着されたベース部33と、ベース部33に設置され、ベース部33をガイドレール28に沿ってスライド自在に駆動させる動力部34と、ベース部33に設置され、流量測定に使用する機器群を設置したブラケット部35とを備える。
ベース部33には、ガイドレール28に沿う方向にスライド移動するためのガイド37が固定されており、このガイド37はベース部33がスライド移動可能なようにガイドレール28を少し余して掴んでいる。また、動力部34から動力を得ることで、ベース部33はガイドレール28に沿ってスライド自在に移動することができ、水面ユニット26のスライド移動を実現している。
一方、ブラケット部35には、流量測定を行うべく水面付近(水面から30cm以内)の位置から水底側に向けて超音波を発信し、水中で反射した超音波の反射波を受信する水面側超音波トランスデューサ38と、水底側の水深方向の流速分布を得る水底ユニット27に取り付けられる第1のワイヤ30aおよび第2のワイヤ30bをそれぞれ巻き取りまたは送り出す第1のワイヤリール39および第2のワイヤリール40が設置される。
第1のワイヤリール39が巻き取りまたは送り出しを行う第1のワイヤ30aは、水底ユニット27の荷重を支えることを主目的としたワイヤである。一方、第2のワイヤリール40が巻き取りまたは送り出しを行う第2のワイヤ30bは、水底ユニット27の方向を微調整することを主目的とするワイヤであり、水底ユニット27の荷重を支えるという点においては補助的な役割を果たす。
図4によれば、第1の超音波流量計20の水底ユニット27は、水21の中での姿勢をできるだけ安定して保持するべく、前方(船首)側および後方(船尾)側を船体中央部分よりも細くした船舶に近い形状をした本体部41を有し、この本体部41の中心線上、かつ、船尾部分に水21の流体抵抗を受けるプレート42が取り付けられている。
このように構成された水底ユニット27は、水底ユニット27を水中で吊った状態(水底に接面していない状態)において、船尾部分に取り付けられたプレート42が水21の流体抵抗を受けることで、船首が水21の流れに対し上流方向を向き易くなる。従って、水21の流れ方向に対して直行する面を通過する水21の流速分布を測定するのにより有効である。
また、水底ユニット27は、水底に着面させた後、第1のワイヤ30aおよび第2のワイヤ30bを弛めた状態にあっても、流動する水21により押し流されず安定した状態を保つのに十分な重量がある。従って、水底に着面させた後においても、測定中の船首方向が安定する。
水底ユニット27の重量については、水底ユニット27の安定度を考慮すれば、できるだけ重いほうが良い。しかしながら、水底ユニット27を吊るワイヤ30の強度およびワイヤを巻き上げるワイヤリール39,40の巻き上げ能力を考慮すれば、できるだけ軽い方が良い。そこで、第1の超音波流量計20では、水底ユニット27の安定度、ワイヤ30の強度およびワイヤを巻き上げるワイヤリール39,40の巻き上げ能力を比較考慮した結果、水底ユニット27の重量を約25kgとした。
尚、水底ユニット27の重量は、上記の25kgに限定されるものではなく、使用環境に応じて、適宜25kgよりも軽くしたり、重たくしても良い。また、水底ユニット27は、おもりを事後的に付加および削除することで、重量を可変できる構成としても良い。
水底ユニット27には、水面上に設置される水面ユニット26から水底に吊り下げる第1のワイヤ30aおよび第2のワイヤ30bを取り付けるワイヤ取付部43が設けられる。本実施例ではバランス良く水底ユニット27を吊り下げたり、引き上げたりできるようにワイヤ取付部43は、水底ユニット27の前後左右にそれぞれ設けられる。
水底ユニット27のワイヤ取付部43は、本体部41においては、前方、左方および右方にそれぞれ1箇所の計3箇所に取り付けられる。また、プレート42においては、前方および後方の2箇所に取り付けられる。従って、水底ユニット27全体としては、計5箇所のワイヤ取付部43が設けられている。
水底ユニット27の5箇所のワイヤ取付部43のうち、第1のワイヤ30aが取り付けられるワイヤ取付部43は、本体部41の全ワイヤ取付部43およびプレート42の前方側のワイヤ取付部43の計4箇所であり、第2のワイヤ30bが取り付けられるワイヤ取付部43は、残りの1箇所、すなわち、プレート42の後方に取り付けられるワイヤ取付部43となる。
一方、水底ユニット27の本体部41は、内部空間を有し、水底ユニット27を水中に沈めた際にも周囲を覆う水が内部に浸入しないように構成されている。この内部空間には2つの水底側超音波トランスデューサ45,46が水面方向に超音波を発信可能に設置されている。尚、水底側超音波トランスデューサ45,46および水面側超音波トランスデューサ38とは、設置場所が異なるだけであり、本質的には同様の超音波トランスデューサである。
水底ユニット27に設置された2つの水底側超音波トランスデューサ45,46のコネクターコード31は、例えば、図4に示すように、第2のワイヤ30bをガイドにして、水面ユニット26側から水底ユニット27のプレート42の後方まで沈められた後、本体部41の上面中央付近に設けられたコード導入穴47に導かれ、各々の水底側超音波トランスデューサ45,46と接続される。
また、2つのトランスデューサ45,46は、水底ユニット27の前後および左右の中心位置を通る水深方向(z軸方向)と平行な線Lに対して、一方(図4においては超音波トランスデューサ45)が前(船首)方向に、他方(図4においては超音波トランスデューサ46)は、後(船尾)方向に同じ角度θで傾けた状態で設置される。
図5に演算処理ユニット29の代表的な一例について構成概略を表した構成概略図を示す。
演算処理ユニット29は、いわゆる電子計算機を本発明に係る超音波流量計として機能させるのに必要なプログラム(以下、プログラムをPGとする)を備えている。具体的には、図5に示すように、PGを読み出し演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ(MPU)等の演算処理手段48と、電子データを一時的に格納するメモリ50と、電子データを記録して格納する記録手段51と、測定者が入力を行う入力手段52と、演算処理結果を表示する表示手段53と、外部機器とのインターフェース(以下、I/Fとする)を担うI/F手段54とを備える。
記録手段51には、演算処理手段48が読み出し実行可能なPGとしてOS(Operating System)等の基本的な処理操作を担う基本処理PG56と、流量測定に必要な流速分布を算出し校正して取得する流速分布取得PG57と、の流量測定に必要な演算処理を実行する流量測定PG58とが格納される。これらのPG56,57,58と演算処理ユニット29とが協働することによって、演算処理ユニット29は、水面ユニット26および水底ユニット27から取得した超音波エコー信号を信号処理および演算処理し、超音波流量計として機能する。
このように構成される第1の超音波流量計20では、まず、演算処理ユニット29が流量測定を開始する旨の要求を受け付け、流量測定開始要求としてのトリガを水面ユニット26および水底ユニット27に出力する。次に、水面ユニット26および水底ユニット27にトリガが入力されると、水面ユニット26および水底ユニット27は、流量測定対象となる水中に超音波を発信する。そして、水中に混在する反射体群により反射した超音波の反射波(超音波エコー)を受信し、受信した超音波エコーに対応する電気信号(以下、超音波エコー信号とする)が水面ユニット26および水底ユニット27から演算処理ユニット29に出力される。
水面ユニット26および水底ユニット27から超音波エコー信号を受信すると、演算処理ユニット29は、受信した超音波エコー信号に対して信号処理および演算処理を行い、その演算処理結果として得られる水21の流量を演算処理ユニット29の表示手段53に表示することができる。また、第1の超音波流量計20は、ある断面における流速分布を積分して当該断面を通過する水21の流量を得る原理に基づくものであり、一旦、流速分布を測定している。従って、演算処理ユニット29において、水21の流量ではなく流速分布を時系列的に表示するように構成することもできる。
図6に第1の超音波流量計20を機能的に捉えた構成、すなわち機能ブロックを概略的に表した機能ブロック図を示す。
図6に示す第1の超音波流量計20は、測定開始の要求を受け付けてトリガを発生させるトリガ発生手段60と、流量測定の基礎となる流速分布を取得する流速分布取得手段61と、流速分布取得手段61が取得した流速分布に基づき流量を算出する流量算出手段62と、流量算出手段62が算出した流量を流量測定値として表示する流量表示手段63とを具備する。
第1の超音波流量計20を構成する各手段は、演算処理ユニット29に備えられる演算処理手段48が基本処理PG56、流速分布取得PG57および流量測定PG58を読み込んで実行することで実現される。第1の超音波流量計20が具備する上記手段のうち、トリガ発生手段60および流速分布取得手段61は、演算処理手段48が基本処理PG56および流速分布取得PG57を読み込んで実行することによって、流量算出手段62および流量表示手段63は、演算処理手段48が基本処理PG56および流量測定PG58を読み込んで実行することによって実現される。
第1の超音波流量計20におけるトリガ発生手段60は、測定者からの測定開始の要求を受け付けてトリガを発生する。発生したトリガは、流速分布取得手段61が超音波パルスを発振するために使用する。また、発生したトリガは、流速分布取得手段61が超音波エコー信号を信号処理する際に同期を取るためにも使用される。
流速分布取得手段61は、トリガ発生手段60が発生したトリガを受信して流量の測定対象である水に発信する超音波を発振する。そして、発振した超音波を水に発信する一方水中の反射体群からの反射波(超音波エコー)を受信する。超音波エコーを受信すると、超音波エコー信号が生成され、この超音波エコー信号を信号処理し解析することで流速分布を取得する。
流量算出手段62は、流速分布取得手段61から出力された流速分布に基づき積分演算を行うことで流量を算出する。また、流量表示手段63は、流量算出手段62が算出した流量を測定値として表示して測定者が流量の測定値を視認できるように表示する。
第1の超音波流量計20は、図6のみを見れば、従来のドップラ式超音波流量計とその機能構成に大差はなく本質的に異ならないとも思われる。また、第1の超音波流量計20の流量測定の原理は、ある断面における流速分布をその断面について積分演算して求めるものであり、この点においても従来のドップラ式超音波流量計と共通している。しかしながら、流量測定の基礎となる流速分布を取得する流速分布取得手段61の構成および流速分布の取得方法が従来のドップラ式超音波流量計とは相違する。
かかる相違は、流速分布を取得する範囲が広範である等の従来のドップラ式超音波流量計とは適用環境が異なることから生ずる問題を解決するために生じている。より具体的には、図1に示す水路24のように、一般に幅がm単位になると、水路24を流動する水21の流速分布を一様な流速分布として取り扱うのは流量測定の測定精度を確保する上で困難であるためである。
そこで、第1の超音波流量計20では、流速分布取得手段として、水面ユニット26および水底ユニット27の2つのユニットを使用して、流速およびその変化率が大きく異なる水底近傍、水面近傍および水路幅方向の壁面近傍において、流速分布の取得を行い、それぞれの取得した流速分布データを演算処理して流量測定用の流速分布を算出する構成としている。
図7に第1の超音波流量計20の流速分布取得手段61のより詳細な機能単位を表す機能ブロック図を示す。
第1の超音波流量計20の流速分布取得手段61は、水面ユニット26から伝送された超音波エコー信号に基づき流速分布を取得する水面側流速分布取得手段65と、水底ユニット27から伝送された超音波エコー信号に基づき流速分布を取得する水底側流速分布取得手段66と、水面側流速分布取得手段65および水底側流速分布取得手段66が取得したそれぞれの流速分布に基づき、必要なデータ校正処理を施して流量算出用の流速分布を得る流速分布校正処理手段67とを備える。
流速分布取得手段61は、水面側流速分布取得手段65が水面ユニット26に設置される水面側超音波トランスデューサ38の位置から水底に向かう方向(図2中におけるz軸方向)における流速分布を取得する。その一方で、水底側流速分布取得手段66が水底ユニット27に設置される水底側超音波トランスデューサ45,46の位置から水面に向かう方向(図2中におけるz軸方向)における流速分布を取得する。そして、これらの両流速分布取得手段65,66によって水面から水底までの水深方向の流速分布を取得する。
流速分布取得手段61の水面側流速分布取得手段65は、トリガの入力を受け付け、トリガが入力されると、超音波パルスを発振して流量測定対象となる水中に超音波パルスを発信する超音波パルス発信部69と、流量の測定対象となる水中で反射した超音波エコーを受信し、受信した超音波エコーに対応する超音波エコー信号を出力する超音波エコー受信部70と、入力された超音波エコー信号を信号処理する信号処理部71と、信号処理された超音波エコー信号から流量測定対象となる水21の流速分布を算出する流速分布算出部72とを備える。
すなわち、超音波パルス発信部69は、水21の中に超音波パルスを発信する超音波発信手段として、超音波エコー受信部70は、水中で受信した超音波エコーに対応した超音波エコー信号を出力する超音波受信手段として、信号処理部71は、超音波エコー信号を信号処理する信号処理手段として、流速分布算出部72は、信号処理後の超音波エコー信号から水21の流速分布を算出する流速分布算出手段として機能する。
一方、水底側流速分布取得手段66は、水面側流速分布取得手段65とほぼ同様の構成であるが、その構成は若干相違する。この相違は、水底ユニット27は、測定中の姿勢の安定を図るべく水底に着面させる点に起因する。水路24の水底には、水21の流動により生じる運搬・堆積作用によって堆積物が堆積し、凹凸となっているので、水底の凹凸によって傾きが生じて所望の方向に超音波を水中に発信することが困難となる。
そこで、水底の凹凸に起因する水底ユニット27の傾きの影響を無効化するべく、水底ユニット27の超音波を発信し受信する超音波トランスデューサを2台等の複数台設置する。例えば、2台の場合には、図4に示すように、水底側超音波トランスデューサ45,46を前方および後方に配置する。そして、それぞれの水底側超音波トランスデューサ45,46が取得した2つの流速分布を用いて演算処理することで水底ユニット27の傾きの影響を無効化している。
水底側流速分布取得手段66は、それぞれの水底側超音波トランスデューサ45,46が各々で流速分布を取得する必要性から、第1の水底側超音波トランスデューサ45から取得された超音波エコー信号に基づき流速分布を算出する第1の水底側流速分布取得手段75と、第2の水底側超音波トランスデューサ46から取得された超音波エコー信号に基づき流速分布を算出する第2の水底側流速分布取得手段76とを備える。
水底側流速分布取得手段66が備える第1の水底側流速分布取得手段75は、図7からもわかるように、各々が超音波パルス発信部69、超音波エコー受信部70、信号処理部71および流速分布算出部72とを備えており、本質的に水面側流速分布取得手段65と異ならない。また、第2の水底側流速分布取得手段76については、第1の水底側流速分布取得手段75と同様である。
さらに、水底側流速分布取得手段66は、水底ユニット27の傾きの影響を無効化する傾き補正演算処理手段としての傾き補正演算処理部77をさらに備える。この傾き補正演算処理部77が第1の水底側流速分布取得手段75および第2の水底側流速分布取得手段76で各々取得された流速分布を用いて加重平均処理を施す。傾き補正演算処理部77が行う加重平均処理によって水底ユニット27の傾きの影響を相殺して無効化する。
図8に水底ユニット27の傾きの影響を無効化するべく傾き補正演算処理部77が行う加重平均処理の原理について説明する説明図を示す。
図8に示される水底ユニット27は、x軸に対して平行な状態(理想測定状態)ではなく、x軸に対してα傾いており、x軸に対して先端が起きた状態にある。図8に示される場合において、船首(前)方向を向いて取り付けられる第1の水底側超音波トランスデューサ45が流速として測定する流速値Vfは、実際の流れ方向を(x,y,z)=(U,0,0)とした場合、実際の流速値はUであり、このUを用いて、
のように表すことができる。
一方、船尾(後)方向を向いて取り付けられる第2の水底側超音波トランスデューサ46が流速として測定する流速値Vrは、実際の流れ方向が(x,y,z)=(U,0,0)なので、実際の流速値Uを用いて
のように表すことができる。
水底ユニット27で取得された流速分布に基づき、算出される流速は、上記の数式(1)および(2)の2つの数式に加重平均処理を施した値である。加重平均処理とは、各数式に重み付けをした平均処理である。水底ユニット27に設置された2つのトランスデューサ45,46が前後対称な状態にあることを考慮して、その重み付けを1:1として加重平均を算出すれば、加重平均流速値Vは実際の流速値Uを用いて
のように表すことができる。
さらに、数式(3)の式を三角関数の加法定理を使用して式を展開すれば、
[数4]
V=Ucosα…(4)
となる。
従って、傾きαに起因する流速についての測定誤差率は、上記数式(4)を用いて計算すれば、1−cosαとなる。実際の測定環境で想定し得るαの最大値を5°(勾配率8.7%)とした場合、水底ユニット27の傾きαによる流速測定の誤差率は約0.4%となり、実用範囲として要求される測定誤差(3%以内)を十分満足することができる。
尚、実際の測定環境下では、水21の流れ方向が、水深方向のベクトル成分を持つ場合がある。しかしながら、流量または流速分布の測定時において、水21の流れ方向について水深方向のベクトル成分を持つ地点を避けて測定することも十分可能なので、水21の流れの方向が水深方向成分を持つ地点を避けて流速分布を測定する場合、流速測定の誤差率は、傾きαに専ら依存すると考えて差し支えない。
敢えて、水21の流れの方向が水面からβ傾いている地点(流速をUとする)で流速の測定を行うとした場合、第1のトランスデューサ45および第2のトランスデューサ46は、水面と平行な流れ成分であるUcosβを流速値として算出することになる。
従って、水面からの水21の流れ方向の傾き角度がβという点およびUがUcosβとなる点を考慮して、上記数式(1)〜(3)を計算をすれば、加重平均流速値Vは実際の流速値Uを用いて
のように表すことができ、さらに、数式(5)の式を三角関数の加法定理を使用して式を展開すれば、
[数6]
V=Ucosβ(cosα−sinαtanβ)…(6)
となる。
従って、水底ユニット27の傾きαおよび水21の流れ方向の傾き角度βに起因する流速についての測定誤差率は、上記数式(6)を使用して計算すれば、1−cosα+sinαtanβとなる。仮にβが、αと同じ5°である場合を想定しても、測定誤差率は、約1.2%であり、実用範囲として要求される測定誤差(3%以内)を十分満足することができる。
流速分布校正処理手段67は、水面側流速分布取得手段65が取得した流速分布と水底側流速分布取得手段66が取得した流速分布とを用いて流量計算に使用する水深方向の流速分布を校正する。
流体の水深方向における流速は、一般に水面よりやや深い部分で最大の流速となる。そして、流速が最大となる水深よりも水底側(境界層でない箇所)では、流速がほぼ一定となる定常流領域となる。さらに、定常領域から水底方向に進んで壁面となる水底に近づくと、ある水深を境にして水底に近づくにつれ流速が遅くなる特性がある。
水底に近づくにつれ流速が遅くなるのは、水底側に境界層が形成されるためである。ここで、境界層とは、一般的に定常流領域における水21の流速(主流速度)の0〜99%となる領域である。
このような流体の特性を利用して、水面側の流速分布は、水面側流速分布取得手段65が取得した流速分布を採用し、水底側の流速分布は水底側流速分布取得手段66が取得した流速分布を採用して校正する。換言すれば、水面側流速分布取得手段65は、最大流速となる地点(水深)を含む流速分布を測定し取得するための手段であり、水底側流速分布取得手段66は、境界層における流速分布を測定し取得するための手段である。
図9に第1の超音波流量計20を用いて行う本発明の流量測定方法(以下、第1の流量測定方法とする)を行う際、流速分布の測定を行う場所について説明する説明図を示す。
図9に示される流路は、図1に示す第1の超音波流量計20の適用場面と対応しており、水路24である。この水路24を流動する水21の流量を測定するにあたり、第1の流量測定方法では、開渠の水路幅方向の流速分布が、水路幅の中央を結ぶ中心線(図9に示す1点鎖線)に対して略線対称となることに着目し、一方の流速分布を得ることで、他方の流速分布を推定し得ることにしている。
また、第1の流量測定方法では、水路幅(y軸方向)の中央を結ぶ中心線に対する左右のいずれか一方の流速分布を得るべく、3箇所で流速分布の測定を行う。具体的には、図9に示すように、(1)側壁近傍領域、(2)速度境界領域、(3)流路中央領域での測定を行う。
ここで、側壁近傍領域とは、一般に知られる開渠を流動する流体の幅方向の流速分布において壁面側に形成される流速変化率の大きい領域をいう。水深側の流速分布を取得する位置は、側壁近傍領域における水路24の幅方向に対する流速変化をより容易に捉える観点から側壁近傍領域となる側壁からの距離に対する中央位置とする。具体的には、側壁から60cmとし、側面の速度境界層厚さの推定値(50cm)に対して余裕をもたせる。
尚、水面ユニット26は、水面ユニット26および水底ユニット27が水深方向の流速分布を測定可能な状態で最も水路24の側壁側に移動した場合、水面ユニット26および水底ユニット27が側壁近傍領域に位置するように構成される。
速度境界領域とは、水路24の中央側に形成され、水路幅方向の位置によらず流速の変化がほとんどない領域と側壁近傍領域との境界であり、流量算出に影響を及ぼさない範囲を許容した領域である。流路中央領域とは、水路24のほぼ中央であり、流量算出に影響を及ぼさない範囲を許容した領域、換言すれば、水21の流速が主流速度となる定常流領域である。
尚、流量算出に影響を及ぼさない範囲は、水路24の幅や測定時に要する測定精度によっても変化するので、一義的に定義はできないが、およそ、50cm以上離れた範囲内と考えられる。
このように、水路幅(y軸方向)に対し、3箇所で流速分布の測定を行うのは、1箇所を測定するのみでは、流量測定の基礎データとして使用し得る精度で流速分布が取得できないためである。そこで、第1の流量測定方法では、一般に知られる開渠を流動する流体の幅方向の流速分布に倣い、流速変化率の高い側壁から1m未満の範囲を細かく測定し、その他の範囲は、測定した上記(1)〜(3)の流速分布を用いて補間することで幅広い水路24における流速分布の取得を行う。
尚、図9に示す例では、第1の超音波流量計20を1個用いて、時間差で流速分布の測定を行っているが、測定の順番は任意で良い。また、第1の超音波流量計20を1個ではなく、各箇所に1個ずつ計3個の第1の超音波流量計20を用いて同時に行っても良い。
次に、図10に第1の超音波流量計20を用いて行う第1の流量測定方法について手順を追って説明する説明図(処理フロー図)を示す。
第1の流量測定方法は、図9に示す(1)〜(3)の場所のそれぞれにおいて、演算処理ユニット29の演算処理手段48が基本処理PG56、流速分布取得PG57および流量測定PG58を読み出して実行することで、演算処理ユニット29が図6に示す各手段として機能することでなされる。従って、図6に示す各手段が水路24を流動する水21の流量の測定を行うこととなる。
図10によれば、第1の流量測定方法は、流量測定の基礎となる流速分布を取得する全体流速分布取得手順(ステップS1)と、全体流速分布取得手順で取得した流速分布に基づき流量を測定する流量算出手順(ステップS2)と、算出された流量を流量測定値として表示する流量表示手順(ステップS3)とを具備する。
第1の流量測定方法を開始するには、まず、流速分布を取得する測定箇所に第1の超音波流量計20の水面ユニット26および水底ユニット27の位置決めを行う必要がある。具体的には、(1)側壁近傍領域、(2)速度境界領域、(3)流路中央領域のうちのいずれかに位置決めする。例えば、上記(1)に水面ユニット26および水底ユニット27を位置決めする。
水面ユニット26が流速分布を測定する位置に位置決めするには、ガイドレール28に沿って水面ユニット26をスライド移動させることで行うことができる。水面ユニット26は、測定者の遠隔操作によって、動力部34を作動させることができ、動力部34が作動することによって、ガイドレール28に沿って流速分布を測定する位置に移動することができる。
一方、水底ユニット27を位置決めするには、水面ユニット26をスライド移動させる(位置決めする)前に、予め、水底ユニット27を水面ユニット26から吊り下げ可能な状態に設置しておく必要がある。そして、水面ユニット26の位置決めをした後に、ワイヤリール39,40からワイヤ30を送り出すことで、水面ユニット26を位置決めした場所から、水底ユニット27を水底に沈めることで行う。
ワイヤリール39,40が、ワイヤ30を送り出したり、巻き戻したりする動作は、測定者の遠隔操作によって、ワイヤリール39,40を順方向または逆方向に回転動作させることで行う。ワイヤリール39,40を作動させると、ワイヤ30の長さが変化し、水底ユニット27を水面側から水底側に沈めたり、水底側から位置決めすることができる。
尚、水底に水底ユニット27が着面したら、第1のワイヤ30aおよび第2のワイヤ30bを弛めておく。両ワイヤ30a,30bを弛めておくのは、両ワイヤ30a,30bに余計な荷重がかかるのを防止するとともに、両ワイヤ30a,30bが水底側超音波トランスデューサ45,46から水中に発信される超音波と干渉しないようにするためである。
次に、水面ユニット26および水底ユニット27の位置決めが完了したら、演算処理手段48が基本処理PG56および流速分布取得PG57を実行して流量測定をいつでも開始できる状態(初期状態)とする必要がある。初期状態になると、演算処理ユニット29は、測定開始の要求を待機する測定開始要求待機状態となる。そして、演算処理ユニット29の演算処理手段48が測定開始の要求を認識すると、ステップS1に進み、ステップS1で全体流速分布取得手順がなされる。
図11に全体流速分布取得手順(ステップS1)における処理行程を順を追って説明する説明図(処理フロー図)を示す。
図11によれば、全体流速分布取得手順は、測定開始の要求を受け付けて、測定を開始して良いか否かを確認する測定準備完了確認行程(ステップS11)と、流路の水深方向の流速分布を取得する水深方向流速分布取得行程(ステップS12〜ステップS18)と、他の場所で水深方向の流速分布を測定する必要性の有無について確認する測定残存確認行程(ステップS19)とを備える。
水深方向流速分布取得行程は、トリガを発生させるトリガ発生行程(ステップS12)と、水面ユニット26に設置された水面側超音波トランスデューサ38が出力した超音波エコー信号に基づき水面側の流速分布を取得する水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)と、水底ユニット27に設置された水底側超音波トランスデューサ45,46が出力した超音波エコー信号に基づき水路24の底側の流速分布を取得する水底側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS17)とを備える。
また、水深方向流速分布取得行程は、トリガ発生行程、水面側流速分布取得行程および水底側流速分布取得行程に加え、水面側流速分布取得行程および水底側流速分布取得行程で取得したそれぞれの流速分布に基づき、必要なデータ校正処理を施して流量算出用の流速分布を得る流速分布校正処理行程(ステップS18)をさらに備える。
全体流速分布取得手順では、まず、ステップS11で測定準備完了確認行程がなされる。測定開始の要求を受け付けて、トリガを発生させて良いか否か、すなわち、測定を開始する準備ができているか否かを確認する。トリガを発生させて良いか否かの確認は、演算処理ユニット29の演算処理手段48が表示手段53に表示し、測定者からの確認結果を認識することで行う。
測定準備完了確認行程で、演算処理ユニット29の演算処理手段48が測定者からの確認結果を認識し、トリガを発生させて良い旨の確認結果を認識した場合(ステップS11でYESの場合)、測定準備完了確認行程を完了し、続いて、ステップS12でトリガ発生行程がなされる。
トリガ発生行程では、トリガ発生手段60がトリガを発生する。そして、発生したトリガを流速分布取得手段61に送ると、ステップS12のトリガ発生行程を完了する。トリガ発生行程を完了すると、続いて、ステップS13に進み、ステップS13で水面側流速分布取得行程および水底側流速分布取得行程がなされる。
流速分布取得手順の水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)は、ステップS1のトリガ発生手順において発生したトリガを受信し超音波パルスを発振して流量測定対象となる水中に超音波パルスを発信する超音波パルス発信ステップ(ステップS13)と、流量の測定対象となる水中で反射した超音波エコーを受信し、受信した超音波エコーに対応する超音波エコー信号を出力する超音波エコー受信ステップ(ステップS14)と、超音波エコー信号を信号処理する信号処理ステップ(ステップS15)と、信号処理された超音波エコー信号から流量測定対象となる水の流速分布を算出する流速分布算出ステップ(ステップS16)とを備える。
一方、水底側流速分布取得行程は、第1の水底側流速分布取得手段75が行う第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得手段76が行う第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)に加え、第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップで取得された同時刻における水深方向の流速分布の各々を用いて水底ユニット27の傾きの影響を無効化する加重平均処理を行う傾き補正演算処理ステップ(ステップS17)をさらに備える。
水面側流速分布取得行程は、水面側流速分布取得手段65が水面ユニット26に設置される水面側超音波トランスデューサ38の位置から水底に向かう方向(図2中におけるz軸方向)における流速分布を取得することでなされる。また、水底側流速分布取得行程は、水底側流速分布取得手段66が水底ユニット27に設置される水底側超音波トランスデューサ45,46の位置から水面に向かう方向(図2中におけるz軸方向)における流速分布を取得することでなされる。
尚、水底側流速分布取得行程における第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップは、処理内容としては水面側流速分布取得行程と本質的に異ならない。すなわち、第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップは、超音波パルス発信ステップ(ステップS13)と、超音波エコー受信ステップ(ステップS14)と、信号処理ステップ(ステップS15)と、流速分布算出ステップ(ステップS16)とを備える。
また、以下の説明では、第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップの処理ステップのいずれかを明確に区別するため、以下、第1の水底側流速分布取得ステップにおける処理ステップについては、「第1の〜ステップ」とし、第2の水底側流速分布取得ステップにおける処理ステップについては、「第2の〜ステップ」とする。
このような全体流速分布取得手順(ステップS11〜ステップS19)では、水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)および水底側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS17)が並行してなされる。そして、水面側流速分布取得行程および水底側流速分布取得行程が完了すると、続いて、ステップS18以降の処理行程がなされる。
一方、水底側流速分布取得行程に着目すると、水底側流速分布取得行程では、まず、第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)が並行してなされ、第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)が完了すると、ステップS17に進み、ステップS17の傾き補正演算処理ステップがなされる。
従って、水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)、水底側流速分布取得行程の第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)の3つの処理行程は、処理内容に関していずれも同様である。そこで、ステップS13〜ステップS16の処理ステップについては、代表して水面側流速分布取得行程を例として説明する。
水面側流速分布取得行程では、まず、ステップS13で超音波パルス発信ステップがなされる。超音波パルス発信ステップでは、超音波発信部69がトリガを受信して超音波パルスの発振を行う。発振された超音波パルスは、超音波発信部69から流量測定対象となる水中に発信される。超音波発信部69が発振した超音波パルスを流量測定対象となる水中に発信すると、超音波パルス発信ステップは完了してステップS14に進む。そして、ステップS14で超音波エコー受信ステップがなされる。
超音波エコー受信ステップでは、超音波エコー受信部70が流量測定対象となる水中に混在する反射体群で反射した超音波エコーを受信する。超音波エコー受信部70が超音波エコーを受信すると、超音波エコー受信部70は超音波エコーに対応する超音波エコー信号を出力する。超音波エコー信号が出力されると、超音波エコー受信ステップは完了し、ステップS15に進む。そして、ステップS15で信号処理ステップがなされる。
信号処理ステップでは、信号処理部71が超音波エコー受信部70から出力された超音波エコー信号およびトリガ発生手段60から出力されるトリガを受け取り、超音波エコー信号の信号処理を行う。信号処理部71は、信号処理として超音波エコー信号に重畳するノイズ成分の低減を目的としたノイズ低減処理およびアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換(以下、AD変換とする)を行う。
また、信号処理部71はトリガ発生手段60から出力されるトリガを受け取っているが、トリガは、超音波エコー信号のAD変換するタイミングを取る(同期を取る)ために使用される。受信した超音波エコー信号に対してアナログ信号からデジタル信号に変換すると、信号処理ステップは完了してステップS16に進む。そして、ステップS16で流速分布算出ステップがなされる。
流速分布算出ステップでは、流速分布算出部72がジタル信号化された超音波エコー信号を受信して、流量算出に必要な流速分布を算出する。流速分布算出ステップで算出する流速分布は、水深方向(図2におけるz軸方向)の流速分布である。流速分布の算出は、水中に混在する反射体群の個々の反射体における位置およびその位置における反射体の速度を求めることにより行う。水に混在する反射体群は水とともに移動するので、反射体の速度は、その反射体の位置における水の流速とみなすことができるからである。
反射体の速度は、超音波エコー信号を信号解析することによって、流量測定対象となる水中に混在する反射体を一定時間間隔で追跡した位置情報を取得することができるので、一定時間間隔における反射体の移動距離を求めることができる。あとは、単位時間当たりの移動距離に換算すれば、速度を得ることができる。このようにして水中に混在する各々の反射体から反射された超音波エコーを取得することで反射体の位置および速度が求まり、ひいては水中の水深方向における流速分布を取得ことができる。
流速分布算出部72が流速分布を算出すると、流速分布算出ステップは完了し、流速分布算出ステップの完了をもって水面側流速分布取得行程も完了する。水面側流速分布取得行程が完了すると、次に、ステップS18に進む。尚、ステップS18の処理ステップは、水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)および水底側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS17)が完了した後になされる。
一方、水底側流速分布取得行程では、まず、第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)が並行してなされる。そして、第1の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)および第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16)が完了すると、次に、ステップS17に進み、ステップS17で水底側流速分布取得手段66の傾き補正演算処理部77が傾き補正演算処理ステップを実行する。
まず、ステップS15の傾き補正演算処理ステップでは、水底側流速分布取得手段66の傾き補正演算処理部77が傾き補正演算処理を実行する。傾き補正演算処理は、第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップでそれぞれ取得された流速分布を用いてなされる。
傾き補正演算処理部77は、第1の水底側流速分布取得ステップおよび第2の水底側流速分布取得ステップでそれぞれ取得された流速分布を用いて、第1の水底側超音波トランスデューサ45および第2の水底側超音波トランスデューサ46の位置関係から、加重平均処理を行い、水底ユニット27の傾きをキャンセルする。
傾き補正演算処理部77が傾き補正演算すると、傾き補正演算処理ステップは完了し、ステップS18に進む。そして、ステップS18で流速分布校正処理行程がなされる。
流速分布校正処理行程では、流速分布校正処理手段67が、水面側の流速分布と傾き補正後の水底側の流速分布とを用いて、水面から水底までの水深方向の流速分布を演算処理することによって取得する。水面側の流速分布は、水面側流速分布取得手段65が水面側流速分布取得行程を行うことによって取得されるものであり、水底側の流速分布は、水底側流速分布取得手段66が水底側流速分布取得行程を行うことによって取得される。
また、流速分布校正処理手段67が取得する水面から水底までの水深方向の流速分布は、流体力学で導かれる開渠を流動する水21の水深方向の流速分布を考慮した演算処理を行った結果、得られるものである。つまり、水面および水底から1.5m以内の範囲では、水21の流速の変化が大きく、水面からも水底からも1.5m以上離れている範囲では、水21の流速の変化がほとんどない(流速がほぼ一定)点を考慮している。
より具体的に説明すれば、水面および水底から1.5m以内の範囲については、流速の変化が大きく流速の正確な推定が困難なので、水面側の流速分布と水底側の流速分布とを別々のユニット、すなわち、水面ユニット26および水底ユニット27が取得している。一方、その他の水深については、流速がほぼ一定とみなせることから取得した水面側の流速分布と水底側の流速分布を用いて、流速分布が取得されていない水深の流速のデータを補間する演算処理を行うことで、水面から水底までの水深方向の流速分布を取得する。
水面から1.5m程度の範囲としているのは、水21の流速ピーク値が水面に比較的近い箇所(少なくとも、従来の超音波流量計で測定可能といわれる1.5m以下)に現れる点を考慮したものである。一方、水底から1.5m程度の範囲としているのは、水底付近に形成される境界層の大きさが、実用レベルでは大きく見積もっても、従来の超音波流量計で測定可能といわれる1.5m以下には収まる点を考慮したものである。
一方、水面および水底から1.5m以内の範囲にあっても、水面側超音波トランスデューサ38および水底側超音波トランスデューサ45,46が水21の流速を測定できない水深がある。水面側超音波トランスデューサ38および水底側超音波トランスデューサ45,46が水21の流速を測定できない水深については、水面および水底から1.5m以内の範囲にあっても、水21の流速のデータを補間する必要がある。
具体的には、水面側超音波トランスデューサ38および水底側超音波トランスデューサ45,46の死角ともいうべき位置、すなわち、水面から水面側超音波トランスデューサ38の先端部までの水深および水底から水底側超音波トランスデューサ45,46の先端部までの水深である。尚、水面から水面側超音波トランスデューサ38の先端部までの水深および水底から水底側超音波トランスデューサ45,46の先端部までの水深が小さく流量測定に支障がないと判断できる場合には、データの補間を行わずに無視しても構わない。
図12は、流速分布校正処理手段67が流速分布校正処理行程を実行して取得した水面から水底までの水深方向の流速分布の一例である。
流速分布校正処理手段67が、流速分布校正処理行程を実行し、図12に示すような水面から水底までの水深方向の流速分布を取得すると、流速分布校正処理行程を完了する。流速分布校正処理行程の完了は、図9に示す(1)、(2)または(3)のいずれかの位置における水深方向(水面から水底)の流速分布の取得が完了したことを意味する。
尚、図2に示される超音波流量計20の場合、水面から水底までの水深方向の流速分布は、演算処理ユニット29の表示手段53に表示させることもできる。しかしながら、全体流速分布取得手順の処理行程上、必ずしも表示させる必要がない任意の行程であるため、図11の説明図から水深方向の流速分布を表示手段に表示する行程は省略している。
流速分布校正処理行程が完了すると、ステップS19に進み、ステップS19で測定残存確認行程がなされる。測定残存確認行程を行うのは、水路24を流動する水21の流量を算出するのに必要な水路24の幅方向(図2におけるy軸方向)の流速分布を取得する必要があるからである。つまり、水路24の幅方向(図2におけるy軸方向)の流速分布を取得するには、図9に示す(1)、(2)および(3)のそれぞれの場所で水深方向の流速測定を行っておく必要がある。
そこで、測定残存確認行程では、流速分布を測定する場所が残存しているか否か、すなわち、他の場所で流速分布を測定する必要性が有るか無いかを確認する。流速分布を測定する場所が残存しているか否かの確認は、演算処理ユニット29の演算処理手段48が表示手段53に表示し、測定者からの確認結果を認識することで行う。
流速分布を測定する場所が残存している場合(ステップS19でYESの場合)、未測定の場所、すなわち、(2)または(3)の位置に水面ユニット26および水底ユニット27を移動し、位置決めした後、位置決めした場所において、ステップS11に進み、ステップS11以降の処理行程を行う。
一方、全体流速分布取得手順の測定準備完了確認行程において、演算処理手段48が、トリガを発生させられない、すなわち、測定の準備が完了していない旨の確認結果を認識した場合(ステップS11でNOの場合)、ステップS11に進み、ステップS11以降の処理行程を繰り返す。
また、全体流速分布取得手順の測定残存確認行程において、流速分布を測定する全ての場所、すなわち、図9に示す(1)〜(3)のそれぞれの位置で流速分布の測定が完了している場合(ステップS19でNOの場合)、全体流速分布取得手順の全処理行程を完了する(END)。
全体流速分布取得手順(ステップS1)が完了すると、次に、ステップS2に進み、ステップS2で流量算出手順がなされる。流量算出手順では、流量算出手段62が、全体流速分布取得手順において取得した水路24を流動する水21の水路幅方向および水深方向の流速分布を用いて、流量の算出を行う。流量算出は、上述したように流速分布を水路24全体について積分演算することにより行うことができる。
流量算出手段62が、流量測定の対象となる水21の流量を算出すると、ステップS2の流量算出手順を完了する。流量算出手順を完了すると、続いて、ステップS3に進み、ステップS3で流速表示手順がなされる。流量表示手順では、流量表示手段63が、流量算出手順において算出された流量を流量測定値として演算処理ユニット29が備える表示手段53に表示する。流量測定値が表示手段53に表示されると、ステップS3の流量表示手順は完了し、第1の流量測定方法は完了する。
第1の超音波流量計20、第1の流量測定方法および第1の流量測定方法を実行するPG(流速分布取得PG57および流量測定PG58)によれば、水面ユニット26、水底ユニット27、ガイドレール28および演算処理ユニット29という簡便な装置構成で水路24を流動する水21の水路幅方向および水深方向の流速分布を取得することができる。また、取得した水21の水路幅方向および水深方向の流速分布を演算処理することで、流量を測定することができる。
従って、河川や大人工開水路においても、流量測定の測定精度を保持しつつ装置構成を従来の超音波流量計より簡便化した超音波流量計とその流量測定方法およびその流量測定PGを提供することができる。
尚、第1の超音波流量計20では、水底側超音波トランスデューサが2本であるが、3本であっても良い。水底側超音波トランスデューサが3本の場合、傾き角度のパラメータは1つ増えることになるが、傾きの補正についての考え方は、2本の場合と全く同様である。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る超音波流量計(以下、第2の超音波流量計とする)80は、第1の超音波流量計20と比べて、水底ユニット27の代わりに水底ユニット27Aを具備する点と、演算処理ユニット29が読み出して実行するPGのうち、流速分布取得PG57が流速分布取得PG57Aとなる点とで相違するがその他の点においては相違しない。そこで、本質的に相違しない箇所については同じ符号を付して説明を省略する。
第2の超音波流量計80の適用場面は、第1の超音波流量計20の適用場面と同様の場面で適用する。すなわち、図1に示す第1の超音波流量計20を第2の超音波流量計80と読み替えれば第2の超音波流量計80の適用場面となる。
第2の超音波流量計80は、水面ユニット26と、水底に着面して超音波の発信および受信を行う水底ユニット27Aと、ガイドレール28と、演算処理ユニット29を具備している。また、演算処理ユニット29が読み出して実行するPGには、基本処理PG56、流速分布取得PG57Aおよび流量測定PG58がある。
つまり、第2の超音波流量計80の構成概略図は、図2に示す第1の超音波流量計20の構成概略図において水底ユニット27を水底ユニット27Aに、演算処理ユニット29が読み出して実行するPGのうち、流速分布取得PG57を流速分布取得PG57Aに読み替えたものに相当する。従って、第2の超音波流量計80の構成概略図については図を省略し、第1の超音波流量計20と異なる水底ユニット27A流速分布取得PG57Aについて説明する。
図13に第2の超音波流量計80の水底ユニット27Aについて全体的な構成の概略を示す構成概略図を示す。
図13によれば、水底ユニット27Aは、本体部41にプレート42を取り付けている点で水底ユニット27と本質的に同じであるが、本体部41の内部空間に設置される超音波トランスデューサが水底側超音波トランスデューサ45の1つである点と、流れ方向(図2におけるx軸方向)、水路幅方向(図2におけるy軸方向)、水深方向(図2におけるz軸方向)に対する傾きを検出する傾き検出手段としての3次元角度検出装置82を本体部41の内部空間に設置している点で相違する。
3次元角度検出装置82は、水底ユニット27Aの本体部41に設置され、本体部41の3軸方向の傾きを直接的に検出する。3次元角度検出装置82が検出した傾き情報は、コネクターケーブル31を介して演算処理ユニット29が受け取り、そして、検出した傾き情報を考慮して流速分布を求める。
つまり、第1の超音波流量計20では、流速分布を求める際に、水底ユニット27の傾きを演算処理によって無効化するのに対し、第2の超音波流量計80では3軸方向の傾きを直接的に検出して、検出した傾き情報を考慮して流速分布を求める点で相違する。このような相違から、第2の超音波流量計80の機能は、第1の超音波流量計20の機能と相違する。
尚、本実施例における第2の超音波流量計80においては、傾き検出手段を3次元角度検出装置82としたが、必ずしも3次元角度検出装置82に限定されない。傾き検出手段とは、3次元(x軸、y軸、z軸)の角度を検出する手段であるから結果として3次元の角度を検出することができれば良く、必ずしも単一装置である必要は無い。
図14に第2の超音波流量計80を機能的に捉えた構成、すなわち機能ブロックを概略的に表した機能ブロック図を示す。
図14に示す第2の超音波流量計80を構成する各手段は、演算処理ユニット29に備えられる演算処理手段48が基本処理PG56、流速分布取得PG57Aおよび流量測定PG58を読み込んで実行することで実現される。尚、流速分布取得PG57と流速分布取得PG57Aとの違いは、流速分布取得手段61を実現するか流速分布取得手段61Aを実現するかの違いであり、その他の点は本質的に異ならない。
従って、演算処理ユニット29の演算処理手段48が基本処理PG56、流速分布取得PG57Aおよび流量測定PG58を読み込んで実行することで実現される第2の超音波流量計80は、第1の超音波流量計20に対して流速分布取得手段61を具備する代わりに流速分布取得手段61Aを具備する点で相違し、流速分布取得手段61Aは、第1の超音波流量計20の流速分布取得手段61に対し、水底側流速分布取得手段66に代わり水底ユニット27Aから伝送された超音波エコー信号に基づき流速分布を取得する水底側流速分布取得手段66Aを備える点で相違する。
図14によれば、流速分布取得手段61Aの水底側流速分布取得手段66Aは、水面側流速分布取得手段65が備える超音波パルス発信部69と、超音波エコー受信部70と、信号処理部71とおよび流速分布算出部72に加え、水底ユニット27Aの3軸方向の傾き角度を検出する傾き角度検出部84と、傾き角度検出部84が検出した傾き角度情報を考慮した数値補正(傾き補正処理)を流速分布算出部72が算出した流速分布に対して施す傾き補正演算処理部77Aとをさらに備える。
水底側流速分布取得手段66Aは、水底側流速分布取得手段66と同様にして、超音波パルス発信部69が流量測定対象となる水に超音波パルスの発信を行い、超音波エコー受信部70が水中から受信した反射波に対応する超音波エコー信号を発信する。そして、信号処理部71は、超音波エコー信号を受信して、受信した超音波エコー信号に対して信号処理を行い、流速分布算出部72は、信号処理部71が信号処理した超音波エコー信号から信号解析して流速分布を求めている。
流速分布算出部72では、3軸方向の傾き角度の情報を取得しないので、いずれの軸に対しても傾きは0度として信号解析して流速分布を求めている。つまり、流速分布算出部72が算出する流速分布は、傾きの影響を考慮せずに算出していることになる。従って、水底ユニット27Aがいずれかの軸に対して傾いていると、求めている速度成分は、求めたい速度成分に対して傾いてしまい、この傾きの影響により測定誤差が生じてしまうこととなる。
そこで、水底側流速分布取得手段66Aでは、傾き角度検出部84が検出した水底ユニット27Aの3軸方向の傾き角度の情報を用いて、傾き補正演算処理部77Aが流速分布算出部72により算出された流速分布を数値補正する傾き補正演算処理を行う。
第2の超音波流量計80を用いて行う本発明の流量測定方法(以下、第2の流量測定方法とする)については、演算処理ユニット29の演算処理手段48が基本処理PG56、流速分布取得PG57Aおよび流量測定PG58を読み出して実行することで、演算処理ユニット29が図14に示す各手段として機能することでなされる。従って、図14に示す各手段が水路24を流動する水21の流量の測定を行うこととなる。
ところで、図6および図14を参照して、第2の超音波流量計80が具備する手段と第1の超音波流量計20が具備する手段とを比較すると、両者の相違点は、第1の超音波流量計20が水底側流速分布取得手段66を備える流速分布取得手段61を具備するのに対し、第2の超音波流量計80は、水底側流速分布取得手段66Aを備える流速分布取得手段61Aを具備する点である。
従って、第2の流量測定方法が具備する処理手順について相違する処理手順は、第1の超音波流量計20と相違する手段、すなわち、流速分布取得手段61Aが実行する流速分布取得手順において相違し、その他の処理手順については本質的には異ならない。換言すると、第2の流量測定方法は、第1の流量測定方法と同様に、全体流速分布取得手順、流量算出手順および流量表示手順を具備し、このうち、全体流速分布取得手順の処理内容が相違する。
そこで、第2の流量測定方法についての全体的な処理手順について手順を追って説明する説明図(処理フロー図)は、第1の流量測定方法についての処理フロー図をもって説明に代えるものとして図を省略する。以下、処理内容が相違する全体流速分布取得手順について図を参照し順を追って説明する。
図15に第2の流量測定方法における全体流速分布取得手順(以下、第2の全体流速分布取得手順とする)における処理行程を順を追って説明する説明図(処理フロー図)を示す。
尚、図15に示す処理フロー図において第1の流量測定方法における全体流速分布取得手順(以下、第1の全体流速分布取得手順とする)と本質的に異ならない処理行程については、同じ番号を付して説明を省略する。
図15によれば、第2の全体流速分布取得手順は、測定準備完了確認行程(ステップS11)と、トリガ発生行程(ステップS12)と、水面側流速分布取得行程(ステップS13〜ステップS16)と、水底ユニット27Aから伝送された超音波エコー信号に基づき流速分布を取得する第2の水底側流速分布取得ステップ(ステップS13〜ステップS16,ステップS21)と、流速分布校正処理行程(ステップS18)と、測定残存確認行程(ステップS19)とを備える。
第1の全体流速分布取得手順と比較すれば、水底側流速分布取得行程の代わりに第2の水底側流速分布取得ステップを備える点で異なる。さらに詳細をみれば、水底側流速分布取得行程の傾き補正演算処理ステップ(ステップS17)の代わりに、第2の水底側流速分布取得ステップの第2の傾き補正演算処理ステップ(ステップS21)を備える点で異なる。
また、第2の全体流速分布取得手順の処理行程の実行順番に着目しても、第1の全体流速分布取得手順において、ステップS17の傾き補正演算処理ステップが第2の傾き補正演算処理ステップに代わる点で相違し、その他の点については同様である。
ここで、傾き補正演算処理ステップと第2の傾き補正演算処理ステップとの処理内容の相違について説明する。傾き補正演算処理ステップと第2の傾き補正演算処理ステップとの処理内容の相違は、第1の全体流速分布取得手順が、複数(例えば2つ)の流速分布を用いて、水底ユニット27の傾きの影響により生じる流速測定誤差をキャンセルする演算処理を行うのに対し、第2の全体流速分布取得手順は、水底ユニット27Aの傾きを直接的に検出し、検出した傾きにより生じた流速測定誤差を補正する補正演算処理を行う点で相違する。
より具体的には、第1の全体流速分布取得手順の傾き補正演算処理ステップが、水底側超音波トランスデューサ45,46を用いて取得される2つの流速分布を加重平均処理して傾きの影響をキャンセルするのに対し、第2の傾き補正演算処理ステップは、3次元角度検出装置82が測定した傾きを直接的に検出し、検出した傾きの影響を考慮して取得された単一の流速分布を補正演算処理する点で相違する。
以上、第2の超音波流量計80、第2の流量測定方法および第2の流量測定方法を実行するPG(流速分布取得PG57Aおよび流量測定PG58)によれば、第1の超音波流量計20、第1の流量測定方法および第1の流量測定方法を実行するPG(流速分布取得PG57および流量測定PG58)の場合と同様の効果が得られる。
従って、河川や大人工開水路においても、流量測定の測定精度を保持しつつ装置構成を従来の超音波流量計より簡便化した超音波流量計とその流量測定方法およびその流量測定PGを提供することができる。
尚、本発明に係る超音波流量計は、演算処理ユニット29において、水21の流量ではなく流速分布を時系列的に表示するように構成することもできる。つまり、本発明に係る超音波流量計の流量表示手段63を流速分布を時系列的に表示する流速分布手段として構成することもできる。
本発明に係る超音波流量計が、水21の流量ではなく流速分布を時系列的に表示するように構成できるのは、流速分布を積分して当該断面を通過する水21の流量を得る原理に基づくものであり、一旦、流速分布を測定しているためである。この場合、本発明に係る超音波流量計は、超音波流速分布計として機能することとなる。
また、演算処理ユニット29において、水21の流量のみならず、流速分布も時系列的に表示するように構成することも当然可能であり、この場合、本発明に係る超音波流量計は、流量計として機能することはもちろんのこと、流速分布計としても機能することができる流量計となる。
さらに、本発明に係る超音波流量計としての機能を実現するプログラム、すなわち、基本処理PG56、流速分布取得PG57および流量計測PG58は、演算処理ユニット29に格納されているが、演算処理手段48が読み取り可能であれば、必ずしも記録手段51に格納されている必要は無い。例えば、演算処理ユニット29のI/F手段54を介して電気的に接続された外部機器内に格納されていても構わない。
さらにまた、流量または流速分布の表示は、必ずしも演算処理ユニット29の表示手段53でなくても良く、他の表示手段を有する外部機器を演算処理ユニット29のI/F手段54と電気的に接続して表示させても差し支えない。また、演算処理ユニット29の表示手段53および他の表示手段を有する外部機器の両者に表示させても良い。
一方、水面ユニット26および水底ユニット27,27Aと演算処理ユニット29とは、コネクターコード31で電気的に接続されているが、必ずしもコネクターコード31でなくても良い。無線で水面ユニット26および水底ユニット27,27Aと演算処理ユニット29とを電気的に接続し、相互に信号の授受を可能に構成しても良い。
また、水面ユニット26は、遠隔操作により移動するため、本来、人が乗ることを前提として構成されるものではないが、人が乗れるように構成としても良い。そして、水面ユニット26に乗る人が水面ユニット26を運転操作して水面ユニット26や水底ユニット27,27Aの位置決めを行うようにしても良い。