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JP2005305782A - ポリプロピレン系の二軸延伸複層フィルム - Google Patents

ポリプロピレン系の二軸延伸複層フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】ヒートシール性ポリプロピレン系積層フィルムのヒートシール強度を格段に高くさせ、低温ヒートシール性や透明性及び耐ブロッキング性などもバランスよく改良する。
【解決手段】オレフィン系重合体の基材層の少なくとも片面に、均質な組成分布並びに立体規則性を付与しえる触媒を用いて逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体からなる表面層が積層されて成り、ヒートシール強度試験で得られる最高の強度(HSmax:単位g/15mm)と表面層厚み(t:単位μm)とが、下記の式の関係を満たすポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。600+100t≦HSmax≦1500+100t
【選択図】なし

Description

本願の発明は、ポリプロピレン系の二軸延伸複層フィルムに関し、具体的には、ヒートシール強度に格別に優れ、併せて、低温ヒートシール性と透明性及び耐ブロッキング性などもバランスよく良好な、ヒートシール性ポリプロピレン系二軸延伸複層フィルムに係わるものである。
ヒートシール性ポリプロピレン系フィルムは、ポリプロピレン系フィルムの透明性や経済性及び耐衝撃性などの優れた物性により、食品や日用品及び雑貨などを主として多くの分野においてヒートシール性包装材料フィルムとして汎用されている。
そして、ヒートシール接着は、包装を密封するために包装フィルム双方を熱溶着により接合する手段であるが、包装材料フィルムの包装のための接着接合手段として、簡易で作業性と接着性及び衛生性などに優れた接合手段であるので、その必要性と重要性が非常に高くなっている。
ところが、ポリプロピレン系フィルム、特に、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、透明性や剛性及び表面硬度や耐衝撃性さらには防湿性などに優れ、包装材料フィルムとして優れた機能を有するが、その高結晶性により比較的高融点なので耐熱性が良い反面、ヒートシール強度が低くヒートシール可能温度が高すぎて、本来はヒートシール性が良くなく、そのヒートシール性を改善するために、以前から、他の低融点樹脂とブレンドしたり他のヒートシール性の高い樹脂との積層フィルムにするなどの種々の改良手段が採用されている。
他の低融点樹脂とブレンドする改良手法としては、従来から非常に多くの提案がなされているが、例えば、ヒートシール強度と耐衝撃性が高くレトルト殺菌処理適性を有す、プロピレン−α−オレフィンエラストマーブロック共重合体と軟質プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体との組成物から成形したフィルム(特許文献1)、ヒートシール強度と耐ブロッキング性や剛性のなどの向上を図る、プロピレン重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の組成物から成形したフィルム(特許文献2)などが開示され、他のヒートシール性の高い樹脂層との積層フィルムにする改良手法としても、従来から非常に多くの提案がなされているが、例えば、剛性や透明性及びヒートシール性などの向上を図る、メルトフローレートや沸騰ヘプタン不溶成分の13C−NMR特性を規定したプロピレン重合体基材層と厚さを規定したプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体からなる多層フィルム(特許文献3)、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体とポリオレフィンの組成物を表面層に用いてヒートシール性とスリップ性及び開封性の改良を図る積層フィルム(特許文献4)、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体の組成物を表面層に用いて、ヒートシール性とすべり性の改良を図る積層フィルム(特許文献5)、ヒートシール強度や引裂性及び防湿性の向上を図る、直鎖状低密度ポリエチレンもしくはそのグラフト変性物を混合したシール層を有す積層フィルム(特許文献6)、温度昇温溶離分別法による温度規定の溶出成分を特定したプロピレン−エチレンブロック共重合体を表面層に用いてヒートシール性の改良を図る積層フィルム(特許文献7)、ヒートシール性や防湿性及び引裂性の向上を図る、石油樹脂と結晶性ポリプロピレンからなるコア層に共重合型のポリプロピレンスキン層を設けた積層フィルム(特許文献8)、ヒートシール強度や溶断シール強度及びラミネート強度に優れた、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体との組成物からなる基材層にプロピレン−α−オレフィン共重合体が積層された包装用フィルム(特許文献9)などが開示されている。
このように、ポリプロピレン系包装用フィルムにおいては、ヒートシール性を改善するために、他の低融点樹脂とブレンドしたり他のヒートシール性の高い樹脂層との積層フィルムにするなどの改良手段が採用され、ヒートシール性と共に透明性や剛性あるいは防湿性やスリップ性などの他の性質を向上させることを目指して、従来から非常に多くの改良提案がなされているが、低融点樹脂成分を増量したりヒートシール層を厚くしてヒートシール強度を高めると、他の性質の向上が不充分ないしは他の性質が劣化しプロピレン系樹脂の本来の優れた特性も有効に生かせず、他の性質の向上を図るとヒートシール性が充分には改良されず望ましいヒートシール強度が得られなく、特に、包装用フィルムとして重要な機能である、透明性や耐ブロッキング性あるいは柔軟性などを改良すると共に、ヒートシール強度を格段に高くさせ、シール温度適性などのヒートシール性をも向上させる、包装用フィルム材料として格別に有用なポリプロピレン系の積層(複層)フィルムは未だ実現されていない。
さらに、基材フィルムが二軸延伸されて剛性が高いものである場合と、無延伸又はそれに準じるような低延伸度で剛性の低い場合では、これらが同様の構成を持つフィルムであったとしても、そのヒートシール強度の最高到達レベルは異なる。基材フィルムにあまり延伸がかからず剛性が低い場合は、ヒートシール試験においてヒートシール部に変形がかかる際に、ヒートシール層だけでなく同時に基材部が適度に変形することによって比較的大きな強度を示すことができるが、それに対して基材フィルムの剛性が極めて高い二軸延伸フィルムの場合は、ヒートシール試験時に変形がヒートシール層のみに集中するため破壊が起こりやすく、そのため高いヒートシール強度を得ることが極めて困難である。このように、特に、二軸延伸フィルムにおいて、高いヒートシール強度を得るのが困難なので、それを得る手法が要望されている。
特開2001−59028号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1) 特開2003−55510号公報(要約) 特開平7−32559号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1) 特開平9−227757号公報(要約) 特開平9−239925号公報(要約) 特開平10−76618号公報(要約) 特開2000−239462号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1、請求項6、請求項7) 特開2001−171056号公報(要約) 特開2003−175574号公報(要約)
以上において(段落0002〜0005)記述した背景技術を踏まえて、包装用フィルムとして非常に有用で需要も格別に高いヒートシール性ポリプロピレン系積層フィルムにおいて、本願の発明は、ポリプロピレン系積層フィルムの主要な機能であるヒートシール強度を格段に高くさせ、高温でなく適当な温度でシールできるヒートシール性を付与し、低温ヒートシール性をも向上させ、併せて、包装用フィルムとして重要な機能である、透明性や耐ブロッキング性などをもバランスよく改良して、包装用フィルム材料として格別に卓越したポリプロピレン系の積層(複層)フィルムを実現することを、発明が解決すべき課題とするものである。
本願の発明者らは、上記の発明の課題の解決を実現するために、先ず、ポリプロピレン系積層フィルムの主要な機能であるヒートシール強度の向上を目指し、その強度と密接な関係を有す、ヒートシール性表面層の層の厚みを重視して、それと共に、包装用フィルムとして重要な機能である、透明性や耐ブロッキング性をもバランスよく改良する手法を求めて、ポリプロピレン系材料や複層フィルムのヒートシール性を担う要素などについて、多観点からの考察と実験的な検討を重ねて、ヒートシール強度をヒートシール層の厚みに関連由来する要素として捉え、その観点において、併せて、透明性や耐ブロッキング性及び柔軟性などをもバランスよく改良するために、その役割を担う新規なポリプロピレン系樹脂材料を表面層用の樹脂材料として採用すれば、本願の発明の課題の解決をなしうることを認識することができた。
具体的には、ヒートシール強度における最高の強度(以下において、「HSmax」と略す。単位:g/15mm)を、ヒートシール性の要素として捉え、ヒートシール性を担うヒートシール表面層の厚み(記号:t 単位:μm)と関連付けて実験的データに基づいて合理的に規定し、ヒートシール強度がヒートシール層の厚みと特別の関係を有する場合に、表面層用の新規なポリプロピレン系樹脂材料として、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒などを用いる、逐次重合法である特定の重合方法による特定の組成比や結晶分布を有すプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を採用し、これらの特別の規定と採用の複合によって、ヒートシール強度が格段に向上せられた、かつ低温ヒートシール性と透明性及び耐ブロッキング性もバランス良く優れたポリプロピレン複層フィルムが得られることを知見しえた。
ポリプロピレン二軸延伸複層フィルムとしては、基材層としてポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン系樹脂を用い、機械的な強度を充分に発揮させるために二軸延伸した複層フイルムが好適である。
ヒートシール強度における最高の強度HSmaxと、ヒートシール性を担うヒートシール表面層の厚みtとの関連付けは、表面層用の新規なポリプロピレン系樹脂材料との複合的な関係において、実験的データに基づいて、100〜160℃の温度範囲でのヒートシール強度試験で得られる最高の強度(HSmax:単位g/15mm)と表面層厚み(t:単位μm)とが、下記の式(1)の条件により設定される。
600+100t≦HSmax≦1500+100t (1)
ヒートシール強度を格段に向上させ、かつ低温ヒートシール性と透明性及び耐ブロッキング性などもバランス良く向上させるためには、表面層用の新規なポリプロピレン系樹脂材料として、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒などを用いた、より好ましくはメタロセン系触媒を用いた、逐次多段重合方法による、特定のブロック共重合体の組成比や結晶分布を有すプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を採用することが必要である。
また、高いヒートシール強度を得るためには、表面層として積層する逐次多段重合によるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が適度の柔軟性を持つこともヒートシール強度の向上に重要な要件であることも判明し、柔軟性は主としてブロック共重合体の組成比率とエチレン含量に依り、他方で、透明性や低温ヒートシール性及び耐ブロッキング性を高く維持するために、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造において、好ましくはメタロセン系触媒による、逐次多段重合を選択し、さらに、透明性は共重合体の相溶性に因み、相溶性は分子量分布ないしは結晶性分布に関連して、分子量分布などは好ましくはメタロセン系触媒の使用による逐次重合法により特定される。低温ヒートシール性及び耐ブロッキング性は溶融特性や表面特性に依り、溶融特性と表面特性は分子量や分子量分布あるいはブロック共重合体の組成比率とエチレン含量などにより影響される。
さらに好ましくは補足的に、基材層の結晶性プロピレン系重合体が、基材の剛性の保持のためにアイソタクチックインデックスやメルトフローレートで規定され、表面層のプロピレン系重合体が、透明性の確保のために固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線の特徴及び耐ブロッキング性のために分子量が5,000以下の成分量などにおいても規定される。
以上において、本願の発明の基本的な構成について記載したが、本願の発明の主要な特徴は、ヒートシール強度とヒートシール層の厚みの関係を使用するので外観からは部分的には格別のものでないと見えるかもしれないが、しかし、この基本的な構成は、ヒートシール強度をヒートシール層の厚みに関連由来する要素として捉え、その観点において、併せて、透明性や耐ブロッキング性及び柔軟性などをもバランスよく改良するために、その役割を担う新規なポリプロピレン系樹脂材料を表面層用の樹脂材料として採用して複合的に組み合わせて、従来ではなし得なかった、ヒートシール強度を格段に高くさせ、それに加えて、包装用フィルムとして重要な機能である、透明性や耐ブロッキング性あるいは柔軟性などをもバランスよく改良することができる効果を奏する、画期的な技術思想であるといえる。
そして、本願発明に関連する先行技術を俯瞰しても、例えば、特開平8−244182号においては、ポリプロピレン成分またはプロピレンに基づく単量体単位を90モル%より多く含むプロピレン系ランダム共重合体成分1〜70重量%、エチレンに基づく単量体単位を10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜60モル%含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分30〜99重量%を含み、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1〜4であるプロピレン系ブロック共重合体よりなる樹脂層が、少なくとも一方のフィルム表面に積層されてなる、可剥性とヒートシール性や開封性に優れた積層ヒートシールフィルムが開示されており、本願の発明とは、表面層のプロピレン−エチレンランダム共重合体における成分の量比において一部重なる部分はあるが、しかしながら、この積層フィルムにおいては、プロピレン−エチレンランダム共重合体における成分の量比と分子量比を単に規定するだけで、積層ヒートシールフィルム技術を広く含めてしまうものであり、また、専ら可剥性と開封性の向上を目指すものであって、一方、本願の発明は、段落0014に記述したような、特別の構成を有し格別の効果を奏するものであるから、本願の発明が実質的には当先行技術と相違するのは明らかであり、また、他の先行技術を概観しても全て同様であるといえる。
以上において、本願の発明の創作の経緯と、発明の構成の特徴及び先行技術との相違などについて、概括的に記述したので、ここで本願の発明の構成全体を記載すると、本願の発明は次の発明単位群からなるものである。
[1]に記載の発明が基本発明であり、[2]以下の発明は基本発明に付随的な要件を加え、あるいは実施態様化するものである。
[1]オレフィン系重合体の基材層の少なくとも片面に、逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体からなる表面層が積層されて成り、100〜160℃の温度範囲でのヒートシール強度試験で得られる最高の強度(HSmax:単位g/15mm)と表面層厚み(t:単位μm)とが、下記の式(1)の関係を満たすことを特徴とする、ポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
600+100t≦HSmax≦1500+100t (1)
[2]オレフィン系重合体の基材層が結晶性プロピレン系重合体又はこれを主成分とする重合体からなる基材層であり、表面層厚みtが0.2≦t≦10であることを特徴とする、[1]におけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
[3]基材層の結晶性プロピレン系重合体が、アイソタクチックインデックス80%以上であり、メルトフローレート(MFR)0.5〜10g/10分を有することを特徴とする、[2]におけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
[4]表面層のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が、メタロセン系触媒によって製造され、第1工程でエチレン含量1〜7wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を30〜70wt%、第2工程で第1工程よりも6〜15wt%多くのエチレンを含む低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分を70〜30wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であり、かつ固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
[5]表面層のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体において、第1工程によって製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分と、第2工程によって製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のいずれかの成分の230℃におけるメルトフローレート(MFR)が100g/10分以上であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
[6]表面層におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布において、分子量が5,000以下の成分量が全体の0.8wt%以下であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
[7]表面層におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に結晶性ブテン−1系重合体又はプロピレン−ブテン−1共重合体5〜45重量部が添加されることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおけるポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
本願の発明のポリプロピレン二軸延伸複層フイルムは、従来のポリプロピレン二軸延伸複層フイルムに比べて、ヒートシール強度が格段に向上したものであり、シール温度が通常で適性なヒートシール性や低温ヒートシール性をも備え、併せて、包装用フィルムとして重要な機能である、透明性や耐ブロッキング性などをもバランスよく改良され、包装用フィルム材料として格別に卓越したヒートシール性ポリプロピレン系積層(複層)フィルムである。
以下において、本発明における発明群を詳細に説明するために、発明の実施の形態を具体的に詳しく述べる。
1.ヒートシール最高強度と表面層の厚みの関係
(1)関係式
本願の発明においては、ヒートシール強度における最高の強度HSmaxと、ヒートシール性を担うヒートシール表面層の厚みtとの関連付けは、表面層用の新規なポリプロピレン系樹脂材料との複合的な関係において、実験的データに基づいて形成されたものであり、100〜160℃の温度範囲でのヒートシール強度試験で得られる最高の強度(HSmax:単位g/15mm)と表面層厚み(t:単位μm)とが、下記の式(1)の条件を満たすことが必要である。
この条件と、表面層用の樹脂材料である、逐次多段重合方法によるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体との複合関係により、ヒートシール強度が格段に向上し、かつ透明性と低温ヒートシール性と耐ブロッキング性などもバランス良く向上する結果が得られる。
600+100t≦HSmax≦1500+100t (1)
好ましくは、(1´)式を、より好ましくは(1´´)式を満たすものである。
700+100t≦HSmax≦1400+100t (1´)
750+100t≦HSmax≦1350+100t (1´´)
(2)測定方法
ここで、ヒートシール最高強度は、以下の測定方法によって得られたものとする。
本願の発明における、0.2〜10μm程度の範囲内の表面層厚み(μm)を有し、ポリオレフィン系基材層の厚さ18±2μmを有す、ヒートシール性表面層を有するポリポリプロピレン系二軸延伸複層フィルムを作製する。この際基材層にはアイソタクチックインデックス80%以上であり、メルトフローレート(MFR)0.5〜10g/10分の高結晶性ポリプロピレンを採用することが好ましい。
5mm×200mmのヒートシールバーを用い、二軸延伸複層フィルムの表面層双方を各温度設定において、ヒートシール圧力0.1MPa、ヒートシール時間1秒の条件下でフィルムの溶融押出しした方向(MD方向)に垂直になるようにヒートシールする。
ヒートシールした試料から15mm幅のサンプルを取り、ショッパー型試験機を用いて引張速度500mm/分にてMD方向に引き離し、その時の荷重を読みとる。フィルム作成時に同時二軸延伸法を採用した場合には、どちらの方向に引き離してもかまわない。
基材層厚み及び表面層厚みは、フィルム製造時の樹脂の押出し量と延伸比などからも推定可能であるが、正確には電子顕微鏡観察によって実測することが好ましい。通常、二軸延伸複層フィルムにおいては、表面層の厚みは1〜10μmの範囲である。
(3)ヒートシール最高強度と表面層の厚み
上記の式(1)は、単にある特定の表面層厚みにおいてヒートシール強度が強いことを規定するものではなく、表面層の厚みを大きくすることによって、従来の二軸延伸複層フィルムでは得ることのできなかった極めて高いヒートシール強度を得るために必要な条件であって、従来の技術では達成し得ない新たな技術を開示するものである。
従来の技術においても、表面層の厚みを増すことにより、ある程度のヒートシール強度の向上は得られることは知られているが、その向上の程度は不充分なものであった。しかしながら、本願の発明に開示するように、表面層としてメタロセン系触媒などで逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を採用し、式(1)を満たすものを用いた場合には、驚くべきことに、表面層の厚みを増した場合のヒートシール強度の増加の割合が従来技術では到達し得なかったレベルであることが明らかとなった。
この技術を用いれば、特定の条件下で表面層の厚みを増すことで、極めてヒートシール強度の高い二軸延伸複層フィルムが製造できる。式(1)は厚みを増すことによって高いヒートシール強度を得るための必要な条件であって、HSmaxが式(1)の下限を下回る場合には、表面層の厚みを増しても充分なヒートシール強度を得ることができない。また、式(1)には本来は上限を設けなくともよいが、フィルムの他の性質との関連で実質的に式(1)の上限を上回るようなフィルムを設定するのは困難である。
2.基材層
(1)結晶性プロピレン系重合体
本発明の二軸延伸複層フィルムの基材層は基本的にはポリオレフィン系材料が使用され、好ましくは、表面層との接合性や基材層としての物性の観点から、二軸延伸された結晶性プロピレン系重合体が採用される。すなわち、結晶性ポリプロピレン二軸延伸フィルムが、剛性や引張強度及び表面強度や耐衝撃性あるいは柔軟性などの機械的物性に卓越し、透明性や光沢性などの光学特性にも優れ、耐薬品性や防湿性なども良好なので、結晶性ポリプロピレン二軸延伸フィルムを基材フィルムとして採用する。
結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、あるいは、過半重量割合のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテンなど)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸など)、芳香族ビニル単量体(スチレンなど)などとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が使用される。
このような結晶性プロピレン系重合体のアイソタクチックインデックス(I.I)は、40%以上、さらには60%以上、特に80%以上のものが好ましい。したがって、プロピレン単独重合体を使用することが最も好ましいが、その場合にはI.Iが90%以上、さらには95%以上、特に98%以上のものを使用することが、フィルムの腰の強さやフィルム送り出し部の紙落ち性及び高速自動包装適性の観点から好適である。アイソタクチックインデックスは、樹脂をn−ヘプタンによって抽出した際の不溶分の割合として定義する。また、メルトフローレート(MFR)は0.5〜10g/10分、特に1〜5g/10分のものが好ましい。これら結晶性プロピレン系重合体は単独でも、あるいは、複数種類の重合体の混合物としても使用することもできるし、結晶性プロピレン系重合体を主成分としてなる樹脂でもよい。
(2)配合材
本願の発明の二軸延伸複層フィルムの基材層には、上記の結晶性プロピレン系重合体を主成分とし、基材層の各種の物性を向上させるために、任意成分として各種の通常の配合材を基材層の重合体の特性を低下させない範囲内の量で、例えば30重量%以下の範囲内で、配合してもよい。
その様な配合材の例としては、エチレン重合体、ブテン重合体、石油樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂などの炭化水素重合体(それらの水添物も含む)やその他の熱可塑性重合体を挙げることができる。酸化防止剤や耐候剤等の安定剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などの添加剤も例示される。
これら添加材の中でも、特に、帯電防止剤の使用が好ましい。該帯電防止剤の中でも好ましいものとしては、グリセリンの脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物及びその脂肪酸エステルなどを挙げることができる。良好な帯電防止性能が付与されていないフィルムでは、フィルム走行中に静電気が蓄積し、作業性が不良となる場合がある。
3.表面層
(1)表面層樹脂
表面層樹脂としては、段落0008と0009及び段落0011と0012において前述した理由により、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が用いられる。ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、結晶性のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)(以下、成分(A)という。)と、低結晶性あるいは非晶性のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)(以下、成分(B)という。)を、好ましくはメタロセン系触媒で逐次多段重合することより得られる、通称でのブロック共重合体である。
(1−1)プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の好ましい形態としては、第1工程でエチレン含量1〜7wt%のプロピレンエチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70wt%、第2工程で第1工程よりも6〜15wt%多くのエチレンを含むプロピレンエチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30wt%を逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であり、かつ固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδが0℃以下に単一のピークを有するものが挙げられる。
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の成分(A)のエチレン含量は共重合体全体の融点を決定する因子であり、通常には複層フィルムの表面層としては低温ヒートシール性が要求されるために、成分(A)はプロピレン単独重合体であるよりも、エチレン含量1〜7wt%のランダム共重合体であることが望ましく、好ましくは2〜6wt%である。エチレン含量が1wt%を下回る場合にはブロック共重合体の融点が高くなり、その結果ヒートシール温度が高くなり、好ましくない。エチレン含量が7wt%を超える場合には表面層(シーラント層)の結晶性が低くなりすぎて、フィルムの耐ブロッキング性が悪化し、好ましくない。
成分(B)はブロック共重合体に柔軟性を付与し、ヒートシール強度を高めるために重要な成分であり、成分(A)と(B)の各々のエチレン含量は、透明性の向上のために、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体内に、両成分からなる相分離構造を形成せしめないようにする必要があり、比較的近い値であることが要求され、成分(B)のエチレン含量を(A)より多くすべきで、その差は6〜15wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは7〜13wt%の範囲である。その差が上記範囲を下回る場合には表面層の柔軟性が不十分で、ヒートシール強度の向上が達成されない。逆に、上記範囲を上回る場合には、成分(A)と成分(B)が相分離構造をとるために、フィルムの透明性が悪化し、または成分(A)と成分(B)の界面での破壊が容易に起こるため、ヒートシール強度の向上効果が見られなくなるため好ましくない。
成分(A)と(B)の量としては、ブロック共重合体の柔軟性は、成分(B)の量の増加によって向上するため、ヒートシール強度を向上するための柔軟性を発揮するためには、成分(B)のブロック共重合体全体に対する割合は少なくとも30wt%必要であり、好ましくは40wt%以上である。30wt%未満の場合には、柔軟性を十分に発揮できずにヒートシール強度の向上が得られないか、柔軟にするためには成分(A)の結晶性を極端に落とすことが必要となり、それに伴い結晶融解温度が低くなりすぎるためにフィルムの耐ブロッキング性が悪化する。一方、成分Bの割合が多くなりすぎると、耐ブロッキング性が顕著に悪化するという問題が生じるため、70wt%以下でなくてはならならず、好ましくは65wt%以下である。すなわち、成分(B)は30〜70wt%、好ましくは40〜65wt%の範囲であり、したがって成分(A)は70〜30wt%とされ、好ましくは60〜35wt%の範囲である。
(1−2)特定の触媒による重合
上記のような特徴を持つプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を製造するに当たっては、触媒としてメタロセン系触媒を用いることで、透明性などの物性の良好なプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を得ることができる。
従来に用いられてきたチーグラー・ナッタ系触媒を用いても、成分(A)と(B)のエチレン含量をある範囲に調整すれば、ある程度透明性の高いブロック共重合体を得ることは可能ではあるが、通常のチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されるプロピレン−エチレンランダム共重合体は一般的に組成分布が広く、そのために成分(A)と(B)の中で、相分離を起こす程度に異なるエチレン含量を有する成分が不可避的に製造されやすく、メタロセン触媒等の組成の均一性の高い触媒を用いる場合に比べて、透明性の高い、すなわち相溶性の高い樹脂を製造することがやや困難である。
また、上記のような相当量のエチレンを含み、結晶化度の低いプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を表面層として採用する場合には、往々にしてブロッキング性の悪化が問題になるが、耐ブロッキング性の悪化の原因となりうる低分子量成分や低規則性成分の発生が抑えられる観点からも、分子量分布並びに結晶性分布という特性で均一性の高い触媒が好ましく用いられる。
共重合の際の組成の均一性、分子量分布、結晶性分布の均一なプロピレンエチレンブロック共重合体を製造可能な触媒としては、チタン担持率が低くアイソタクチック規則性の特に高い規則性を示す電子供与体で処理された特定のチーグラー・ナッタ系触媒や、高アイソタクチックポリプロピレンを製造可能な特定のメタロセン触媒があげられる。本願の発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、好ましい触媒の一例として使用されるメタロセン系触媒は、本願の発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(a)と(b)及び必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
成分(a)としては、下記一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C−aR)(C−bR)MeXY
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又はリン含有炭化水素基を示す。a 及びb は置換基の数である。]
成分(b)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、通常の材料の中から適宜選択して使用することができる。
ここで、成分(b−1)と成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式 AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
なお、触媒の形成法や触媒成分の使用量及び予備重合処理なども常法に沿って行われる。
(1−3)重合方法
本願発明のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体成分を製造実施するに際しては、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)と低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレン共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性と透明性が十分でなく、柔軟性と透明性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が悪化し、これらの全てを満たすことは困難である。
そこで、本願の発明においてプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが透明性と柔軟性などをバランスさせるために必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
(1−4)成分(A)と(B)の成分量及びエチレン含量
成分(A)と(B)の成分の量をそれぞれW(A)及びW(B)、エチレン含量を[E]A及び[E]Bと表記する。本願の発明においては、W(A)及びW(B)、エチレン含量[E]A及び[E]Bを規定するので、それらの量の実測が必要となる。(これらの単位は、wt%である。)
イ.W(A)及びW(B)の特定
成分(A)と(B)の成分量及び各エチレン含量は、重合による製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを実測するためには、温度昇温溶離分別(TREF)を用いることが望ましい。プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本願の発明におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、成分(A)と(B)各々の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン系触媒などを用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから、双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く分別することが可能である。
TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(A)と(B)は結晶性の違いにより各々は温度T(A)とT(B)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A)+T(B)}/2)においてほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(B)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(このとき測定温度下限、すなわち−15℃において溶媒に溶解した成分(B)の濃度は検出される。)このとき、T(B)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することができないため、このような場合にはT(B)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量のW(B)wt%、T(C)以上で溶出する部分の積算量のW(A)wt%については、W(B)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(B)の量とほぼ対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A)は結晶性が比較的高い成分(A)の量とほぼ対応している。
なお、TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は、図1のグラフ図に例示するように行われる。
ロ.TREF測定方法
本願の発明においては、具体的には以下のように測定を行う。試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
ハ.[E]A及び[E]Bの特定
先のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)可溶成分(成分(B))と、T(C)不溶成分(成分(A))とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules 21,314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いた。
[分別条件]
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/時の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒o−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
13C−NMRによるエチレン含量の測定]
上記分別により得られた成分(A)と(B)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種: 日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数1
00MHz以上)
溶媒: o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度: 100mg/mL
温度: 130℃
パルス角: 90°
パルス間隔: 15秒
積算回数: 5,000回以上
スペクトルの帰属は例えばMacromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10, 536 (1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2005305782
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本願の発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
Figure 2005305782
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本願の発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ系触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100 ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
なお、ブロック共重合体全体のエチレン含量[E]Wは、上記より測定された成分(A)と(B)それぞれのエチレン含量[E]Aと[E]B及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A)とW(B)から以下の式により算出される。
[E]W={[E]A×W(A)+[E]B×W(B)}/100 (wt%)
(1−5)相溶性(tanδ曲線による規定)
成分(A)と(B)が相分離構造をとる場合には、ヒートシール試験を行う際に、シール部の破壊は成分(A)と成分(B)の界面に沿って容易に進展し、高いヒートシール強度を得ることはできない。また、このような相分離構造をとる樹脂を表面層に用いる場合には、複層フィルムの基材層と表面層の界面の接着強度が落ち、その結果、高いヒートシール強度が得られないこともあるし、フィルムの透明性も損なわれる。このような状況を回避するためには、表面層の樹脂としては、明確な界面を有する相分離構造をとらない樹脂を採用することが重要である。
このように、表面層に使用するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が相分離していないことが必要であるが、相分離の可否の条件はエチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が相分離構造を取る場合には、成分(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定におけるtanδ曲線において判別可能であり、tanδ曲線が0℃以下に単一のピーク(ガラス転移温度Tgに相当する)を有することが必要である。
よって、ヒートシール性及び透明性に主として深く関与する相溶性を特定するために、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線におけるtanδ曲線に表される相溶特性を採用するのが好ましい。このtanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有すると、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が相溶性に優れ、成形フィルムのヒートシール性及び透明性を高く維持することができる。
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率と損失弾性率を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
なお、図2のグラフ図はtanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する例示であり、図3のグラフ図はtanδ曲線が複数のピークを持つ例示である。
(1−6)メルトフローレート
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体全体のメルトフローレート(MFR 単位:g/10分)としては特に制限はないが、通常0.1〜50、好ましくは0.5〜40のものが好適に用いられる。この範囲を外れるものは、フィルム形成性などの観点からフィルムの用途として適さない。
なお、本発明におけるMFRは、すべてJIS K7210 A法 条件M に従い、温度230℃で荷重2.16kgにて測定したものである。
表面層に用いるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の成分(A)又は成分(B)のいずれかのMFRが100以上のものが、高いヒートシール強度を得るために好ましく用いられる。この理由については必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
表面層を有する二軸延伸複層フィルムにおいて、高いヒートシール強度を得るためには、ヒートシール試験時に、表面層樹脂が容易に破断せずに変形し、大きな破断エネルギーを示す必要がある。ところで、二軸延伸複層フィルムは、その製造上の理由からフィルムに大きな分子配向あるいは結晶配向があることが知られており、基材層のみならず表面層においても相当の配向が生じることが予想される。配向した樹脂をさらに延伸した場合には、無配向の場合に比べて弾性率が高く、引張試験における破断歪みが小さくなる、すなわち脆性的になる。この場合はヒートシール試験時の破断エネルギーが小さくなると考えられるので、高いヒートシール強度を得るためには、表面層はなるべく配向が少ない状態が好ましいと推測する。プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の成分(A)又は成分(B)のどちらかの成分のMFRが高い場合には、フィルムの延伸時の高温状態から冷却する際に、分子は容易に配向を緩和させることができ、より無配向の表面層を作ることができると考えられる。
成分(A)又は成分(B)のMFRの上限は、特にないが、あまり高すぎると、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体全体のMFRが高くなりすぎて、フィルムの用途に適さないものとなるので、全体のMFRが0.1〜50g/10分となるように、各成分のMFRおよび量比を決定すればよい。
成分(A)のMFR(A)は逐次重合を行う際に、1段目の重合終了時に成分(A)を抜き出して測定することができる。成分(B)のMFR(B)は、MFR(A)と2段目の重合終了時のMFR(W)から下記式を用いて算出する。
logMFR(B)={logMFR(W)−logMFR(A)×W(A)/100}/(W(B)/100)
(1−7)分子量及び低分子量成分
本願の発明で使用するブロック共重合体においては、重量平均分子量の下限は、特にないが、Mw≦5,000の成分が0.8wt%を超えない範囲において、あまり分子量を低くしすぎると、フィルムの成形性の問題が生じるため、100,000以上の範囲にあることが好ましい。上限は400,000であり、これ以上ではフィルム成形性が低下する。
本願の発明で使用するブロック共重合体は、低分子量成分が少ないことを特徴とする。低分子量成分、特に、その分子量が絡み合い点間分子量に満たない成分は、成形体の表面にブリードアウトし、耐ブロッキング性や透明性などを悪化させると考えられる。
ポリプロピレンの絡み合い点間分子量は、Journal of Polymer Science:Part B:Polyer Physics;37, 1023−1033(1999)に記載されるように、約5,000である。
したがって、表面層のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布において、分子量が5,000以下の成分量Wが全体の0.8wt%以下、好ましくは0.6wt%以下であるものが好ましく用いられる。分子量が5,000以下の成分が多く存在する場合には、これらの成分がフィルムの表面にブリードアウトし、耐ブロッキング性が悪化する。
GPC測定は、通常の手法によりなされ、標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PP : K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置 : WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器 :FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長 :3.
42μm)
カラム : 昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒 :ο-ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速 : 1.0ml/分
注入量 : 0.2ml
試料の調製: 試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。クロマトグラムより得られた分子量に対する溶出割合のプロットから、分子量5,000以下の成分量を求めることができる。
(2)プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の構成要素の制御方法
本願の発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体成分の各要素は以下のように制御され、本願の発明の共重合体に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
(2−1)エチレン含量
[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜に調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いる触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。
(2−2)W(A)とW(B)
成分(A)の量W(A)と成分(B)の量W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、触媒の活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本願の発明にて実施するエチレン含有量[E]A及び[E]Bの範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に触媒の活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、 第1工程にてエチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二工程にてエチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
(2−3)ガラス転移温度Tg
本願の発明のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体では、段落0043において記述したように、成分(A)と(B)の相溶性を得るために、ガラス転移温度Tgは、単一のピークを持つ必要がある。Tgが単一のピークを持つためには、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの差の[E]gap(=[E]B−[E]A)を15wt%以下、好ましくは13wt%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
結晶性の共重合体成分(A)のエチレン含有量[E]Aに応じて、低結晶性あるいは非晶性の共重合体成分(B)のエチレン含量[E]Bを適正範囲に入るよう、成分(B)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有する重合体を得ることが可能である.
(2−4)メルトフローレートMFR
メルトフローレートは分子量と密接な関連があるので、常法による重合における分子量調整により、メルトフローレートを制御できる。
(2−5)W(Mw≦5,000)
分子量が5,000以下の成分W(Mw≦5,000)を小さく制御するためには、第1工程から第2工程へ移送する時間を短くしたり、移送工程に於いて第1工程に対応するモノマーガス混合物を窒素などの不活性ガスで完全に置換したりすることにより、重合条件とは独立に、W(Mw≦5,000)を小さく制御することができる。
(3)付加的成分
本願の発明の二軸延伸複層フィルムの表面層には、必須成分である成分(A)と(B)の構成成分の他に、ヒートシール性などのより一層の改善を行なうために、あるいは、他の性質の付与などの目的のために上記必須成分以外の付加的成分を添加することができる。
付加的成分としては、例えば結晶性ブテン−1系重合体やプロピレン−ブテン−1共重合体などを上記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に対して5〜45重量部添加することによって低温ヒートシール性をさらに改良することができる。このような結晶性ブテン−1系重合体としては、ブテン−1の単独重合体の他に、ブテン−1と他のα−オレフィン、例えばエチレンやプロピレンなどとの共重合体がある。これらの共重合体のMFRが180〜300℃の範囲での同一温度において、必須成分のブロック共重合体のMFRと等しいか、あるいは、より大であるものを使用するのが透明性の改良を行うことができることから好ましい。
また、高速包装適性を改良する上で、各種のシリコーン油やシリコーンガムなどを始めとする有機系の滑剤を添加することが好ましい。特に好ましい滑剤としては、重合度が3,500〜8,000のポリジオルガノシロキサンガム、あるいは、粘度が100〜100,000cstのシリコーン油などの0.1〜1重量部の添加が挙げられる。
また、酸化防止剤・中和剤・耐候剤などの安定剤、加工助剤、着色剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤などの添加剤を使用してもよい。特にブロッキング防止剤の使用が好ましい。
ブロッキング防止剤としては、好ましいものとして平均粒子系が0.5〜5μm、好ましくは1〜4μmの有機系または無機系の微粒子が挙げられる。0.5μm未満ではブロッキング防止効果が劣り、5μmを超えると透明性の悪化が起こる。配合量はプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に対して0.05重量部〜0.6重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。0.05重量部未満ではブロッキング防止効果が劣り、0.6重量部を超えると透明性の悪化が起こる。有機系微粒子としては、例えば、非溶融型のポリシロキサン、ポリアミド、アクリル系樹脂などの微粒子を挙げることができる。この中でも非溶融型のポリシロキサン微粒子や架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を用いることが好ましい。無機系微粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、カオリン、タルクなどを挙げることができる。この中でもシリカを用いることが好ましい。
3.二軸延伸複層フィルムの製造
(1)積層
本願の発明における二軸延伸複層フィルムは、ポリオレフィン系、特に結晶性プロピレン系重合体又はこれを主成分としてなる基材層の少なくとも片面に、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体よりなる表面層を積層し、延伸することによって製造することができる複層フィルムである。
この表面層用共重合体を二軸延伸された基材層の結晶性プロピレン系重合体へ積層する方法としては、例えば、基材層の結晶性プロピレン系重合体の片面又は両面に、該表面層用共重合体を溶融共押出することによってシート状となし、これらを二軸延伸する方法が、この共重合体を容易に、均一にかつ薄く積層できることから好ましい。しかし、未延伸又は一軸延伸した基材層シートに該表面層用共重合体を溶融押出し被覆した後、二軸延伸又は基材層の延伸方向と直角方向に一軸延伸する方法も採用することができる。
(2)延伸
延伸することによりフィルムの機械的な強度が増大され、特に、結晶性ポリプロピレン延伸フィルムが包装材料としての引張強度などを充分に備えることとなる。延伸はフィルムの縦と横に二軸方向に行われる。
二軸延伸のうちの先ず縦延伸については、送り出しロールと巻き取りロールのロール周速差を利用して行うことができる。90〜140℃、好ましくは105〜135℃の温度で3〜8倍、好ましくは4〜6倍に延伸し、次に、引き続いて横方向にテンターオーブン中で3〜12倍、好ましくは6〜11倍に延伸する。ヒートシール時の熱収縮防止のため、横延伸に引き続き、120〜170℃の温度で熱セットするのが望ましい。
(3)その他の処理
印刷適性の付与や帯電防止剤のブリードを促進するなどの目的で、コロナ放電処理などの表面処理を施すことができる。
(4)フィルムの肉厚
二軸延伸複層フィルムの厚さは、その用途に応じて決められるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。また、このような二軸延伸複層フィルムの厚さの中でも表面層の厚み部分は、一般に0.2〜10μmとされる。表面層の厚みが上記範囲を超える場合には包装適性が不良となる場合があるし、また、上記範囲未満の場合には均一なヒートシール強度が付与されないときがある。
本願の発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を掲げて説明するが、本願の発明をより明確にするために好適な実施の例などを記述するものであって、本願の発明の特徴をより明瞭にし、本願の発明の構成の合理性とその優位性を実証するためになされたものである。
以下の実施例及び比較例において得られた共重合体及びフィルムの各種物性の測定方法は、次のとおりである。
1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210 A法 条件M に従い、以下の条件で測定した。
試験温度: 230℃
公称加重: 2.16kg
ダイ形状: 直径2.095mm 長さ8.00mm
2)TREF
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温して溶出曲線を得る。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム: 4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材: 100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式: アルミヒートブロック
冷却方式: ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布: ±0.5℃
温調器: (株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式: 空気浴式オーブン
測定時温度: 140℃
温度分布: ±1℃
バルブ: 6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式: ループ注入方式
注入量: ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式: アルミヒートブロック
測定時温度: 140℃
(検出部)
検出器: 波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長: 3.42μm
高温フローセル: LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度: 140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ: センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒: o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度: 5mg/mL
試料注入量: 0.1mL
溶媒流速: 1mL/分
3)固体粘弾性測定(DMA)
試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
[試験片の作成]
規格番号: JIS−7152(ISO 294−1)
成形機: 東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度: ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃
金型温度: 40℃
射出速度: 200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
射出圧力: 800kgf/cm
保持圧力: 800kgf/cm
保圧時間: 40秒
金型形状: 平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
4)NMRによるエチレン含量の決定
段落0038〜0042において前述した方法による。
5)GPC
分子量5,000以下の成分の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。なお、GPC測定は、段落0048において前述した方法による。
6)表面層厚み
二軸延伸複層フイルムの表面層の厚みは電子顕微鏡観察によって測定した。
7)ヘイズ
ASTM−D−1003に準拠して測定した。
8)ヒートシール強度
5mm×200mmのヒートシールバーを用い、フィルムの表面層双方を密着させ、各設定温度においてヒートシール圧力0.1MPa、ヒートシール時間1秒の条件下で、フィルムの溶融押出しした方向(MD方向)に垂直になるようにヒートシールを行い、ヒートシールした試料から15mm幅のサンプルを取り、ショッパー型試験機を用いて引張速度500mm/分にてMD方向に引き離し、その荷重を読みとった。この値が大きいほどヒートシール性が優れていることを意味する。
9)耐ブロッキング性の評価
複層フィルムより、2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムを採り、表面層双方をそれぞれ長さ5cmにわたり重ね(接触面積10cm)、0.5N/cmの荷重下で温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した後、それぞれの荷重を除き、23℃の温度に充分調整して、ショッパー型引張試験機を用いて500mm/分の速度で試料の剪断剥離に要する力(単位:mN/10cm)を求めた。この値が小さいほど耐ブロッキング性はよい。
[製造例−1](表面層用重合体の製造)
予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き 回転数:2rpm 傾斜角:20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に乾燥珪酸塩20gを導入し、混合ヘプタン116ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを200mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)0.96mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕を218mg(0.3mmol)と混合ヘプタンを87mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を3.31ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調製した。
(予備重合/洗浄)続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに、先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを240mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.95ml、さらに混合ヘプタンを560ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを560ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
(以上の触媒の調製は、特開2002−284808号公報の実施例1に記載された方法により行った。)
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造を行った。
[第一工程]
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液2.76ml(2.02mmol)を加え、エチレン18g、水素350ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、60℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)25mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を60℃に維持して20分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、エチレン含量1.7wt%、MFR133g/10分であった。
[第二工程]
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第二工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は80℃、混合ガス組成はエチレン19.99vol%、プロピレン79.94vol%、水素700volppmであった。第一工程にてポリマーを一部サンプリングした後、この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給し第二工程の重合を開始した。重合温度は80℃、圧力2.5MPaGにて56分重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。収量は327g、活性は13.1kg/g−触媒、エチレン含量5.6wt%、MFR32.0g/10分であった。
[製造例−2]
製造例−1と同様にしてプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造を行った。重合条件および重合結果を表1に示す。
[製造例−3] (1段重合のみの例)
製造例−1で用いた予備重合触媒を用いて、プロピレン−エチレンランダム共重合体の製造を行った。
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液2.76ml(2.02mmol)を加え、エチレン38g、水素80ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、45℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)45mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を45℃に維持して75分重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止し、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。収量は209g、活性は4.6kg/g−触媒、エチレン含有量3.7wt%、MFR16.3g/10分であった。
[製造例−4](二成分が相分離した例)
製造例−1と同様にしてプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造を行った。重合条件および重合結果を表3に示す。
Figure 2005305782
上記の各重合を必要に応じて繰り返し行い、少なくとも2kgの重合パウダーを製造し、以下の評価に用いた。
重合によって得られた表面層用重合体パウダーを造粒してペレットを作成し、TREF、DMA、NMR、GPCによって表面層樹脂のキャラクタリゼーションを行った。測定により得られた各数値を表4に示す。
Figure 2005305782
[実施例−1]
(基材層用ポリプロピレン系樹脂組成物の作製)
MFR=2.4のプロピレン単独重合体パウダー(Tm=161.5℃)100重量部に酸化防止剤としてチバガイギー社製イルガノックス1010を0.1重量部、チバガイギー社製イルガフォス168を0.1重量部、ステアリン酸カルシウムを0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーにて撹拌した後、押出機にて溶融押出し、ペレット化した。
(二軸延伸複層フイルムの製造)
表面層用樹脂として製造例−1の樹脂を用いる。基材層用ポリプロピレン系樹脂組成物と表面層用樹脂組成物を各々個別に2台の押出機に投入し、2層の全厚20μmの延伸フィルムにした時の表面層厚みが2μmとなるようにTダイから共押出しし、冷却ロールで急冷することにより、厚さ約1mmのシートを得、このシートをテンター式逐次二軸延伸装置にて120℃で縦方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後158℃で横方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚さ20μm、表面層厚みが2μmの2種2層二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムの基材層面に41dyn/cmとなるようコロナ放電処理を施した。
上記のように製造されたポリプロピレン二軸延伸複層フイルムの各種の物性の測定結果を表5に示す。
[実施例−2]
延伸後のフィルムの全厚が21.8μm、表面層厚みが3.8μmになるようにフィルムを作製した以外は、実施例−1と同様に行った。結果を表5に示す。
[実施例−3]
延伸後のフィルムの全厚が22.5μm、表面層厚みが4.5μmになるようにフィルムを作製した以外は、実施例−1と同様に行った。結果を表3に示す。
[実施例−4]
表面層樹脂として製造例−2のものを用いた以外は、実施例−1と同様に行った。結果を表5に示す。
[実施例−5]
延伸後のフィルムの全厚が21.8μm、表面層厚みが3.8μmになるようにフィルムを作製した以外は、実施例−2と同様に行った。結果を表5に示す。
[実施例−6]
延伸後のフィルムの全厚が22.5μm、表面層厚みが4.5μmになるようにフィルムを作製した以外は、実施例−2と同様に行った。結果を表5に示す。
[比較例−1]
表面層樹脂として製造例−3のものを用いた以外は、実施例−1と同様に行った。結果を表5に示す。
[比較例−2]
延伸後のフィルムの全厚が21.8μm、表面層厚みが3.8μmになるようにフィルムを作製した以外は比較例−1と同様に行なった。結果を表3に示す。
[比較例−3]
表面層用樹脂として、製造例−3において得られた共重合体70部に市販のエチレン−プロピレンゴム(EPR)(230℃におけるMFR=5.4、密度0.87のもの)を30部ドライブレンドし、造粒したものを用いた以外は、比較例−1と同様に行なった。結果を表3に示す。
[比較例−4]
延伸後のフィルムの全厚が21.8μm、表面層厚みが3.8μmになるようにフィルムを作製した以外は比較例−3と同様に行なった。結果を表3に示す。
[比較例−5]
表面層樹脂として製造例−4のものを用いた以外は、実施例−1と同様に行った。結果を表3に示す。
[比較例−6]
延伸後のフィルムの全厚が21.8μm、表面層厚みが3.8μmになるようにフィルムを作製した以外は、比較例−5と同様に行った。結果を表3に示す。
Figure 2005305782
[実施例と比較例との対照による考察]
以上の各実施例と各比較例の結果を対照して考察すれば、本願の発明においては、ヒートシール強度をヒートシール層の厚みに関連由来する要素として捉え、その観点において、併せて、透明性や耐ブロッキング性及び柔軟性などをもバランスよく改良するために、その役割を担う新規なポリプロピレン系樹脂材料を表面層用の樹脂材料として採用して、式(1)の条件規定と複合的に組み合わせたので、ヒートシール強度が格段に向上し、透明性と低温ヒートシール性と耐ブロッキング性がバランスよく良好な、二軸延伸複層フィルムを製造できることが実証されていることが明らかとなる。
具体的には、各実施例においては、いずれも、ヒートシール強度が格段に向上し、120℃程度の低温ヒートシール性と透明性及び耐ブロッキング性がバランスよく良好であることが示されている。
比較例−1,2は、1段重合で製造したプロピレン−エチレンランダム共重合体を表面層樹脂に用いた例であり、式(1)を満たしていないので、ヒートシール強度が充分でなく、表面層の厚みを増した場合でもヒートシール強度の向上効果は小さい。
比較例−3,4は、逐次二段重合によらない通常の混合組成物であり、表面層樹脂が相分離して、式(1)を満たしていなので、ヒートシール性強度が充分でなく、フィルムのヘイズも劣っている。表面層の厚みを増した場合でもヒートシール性強度の向上効果は小さい。これは、相分離しているために界面に沿って剥離が起こりやすく、表面層の厚みを増加することによるヒートシール強度の改良効果が小さいためであると推定される。
比較例−5,6は、表面層樹脂が相分離しているためにtanδ曲線が二つのピークを有する。これらの樹脂を表面層に用いた場合は、フィルムの透明性が悪化し、また、表面層の厚みが薄い場合は式(1)をほぼ満たしているが、表面層を厚くした場合には式(1)を満たさなくなる。これは、相分離しているために界面に沿って剥離が起こりやすく、表面層の厚みを増加することによるヒートシール強度の改良効果が小さいためであると推定される。
以上の結果からして、本願の発明の各構成要件の規定が有意性を有し、実験で立証されていることが明らかであり、本願の発明においては、ヒートシール強度が格段に向上し、透明性と低温ヒートシール性と耐ブロッキング性がバランスよく良好な二軸延伸複層フイルムを実現提供することができるので工業的に極めて有用である。
温度昇温溶離分別法(TREF)による溶出量及び溶出量積算を示すグラフ図である。 固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線などを示すグラフ図である。 固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線などを示すグラフ図である。

Claims (7)

  1. オレフィン系重合体の基材層の少なくとも片面に、逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体からなる表面層が積層されて成り、100〜160℃の温度範囲でのヒートシール強度試験で得られる最高の強度(HSmax:単位g/15mm)と表面層厚み(t:単位μm)とが、下記の式(1)の関係を満たすことを特徴とする、ポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
    600+100t≦HSmax≦1500+100t (1)
  2. オレフィン系重合体の基材層が結晶性プロピレン系重合体又はこれを主成分とする重合体からなる基材層であり、表面層厚みtが0.2≦t≦10であることを特徴とする、請求項1に記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
  3. 基材層の結晶性プロピレン系重合体が、アイソタクチックインデックス80%以上であり、メルトフローレート(MFR)0.5〜10g/10分を有することを特徴とする、請求項2に記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
  4. 表面層のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が、メタロセン系触媒によって製造され、第1工程でエチレン含量1〜7wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を30〜70wt%、第2工程で第1工程よりも6〜15wt%多くのエチレンを含む低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分を70〜30wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であり、かつ固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
  5. 表面層のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体において、第1工程によって製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分と、第2工程によって製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のいずれかの成分の230℃におけるメルトフローレート(MFR)が100g/10分以上であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
  6. 表面層におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布において、分子量が5,000以下の成分量が全体の0.8wt%以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
  7. 表面層におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に結晶性ブテン−1系重合体又はプロピレン−ブテン−1共重合体5〜45重量部が添加されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたポリプロピレン系二軸延伸複層フイルム。
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