JP2005232001A - 新規なロイコトリエンb4受容体 - Google Patents
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Abstract
【課題】創薬標的分子としての可能性が非常に高い、新規ロイコトリエンB4受容体を コードする遺伝子を単離・同定し、それらの活性を修飾する物質を探索する ために必要となる組換え蛋白の提供。
【解決手段】新規なロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を単離し、全長ORF配列を 決定して、該ロイコトリエンB4受容体を発現させた。該ロイコトリエンB4受 容体、該ロイコトリエンB4受容体の遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベ クターを含む宿主細胞、該宿主細胞を用いた該ロイコトリエンB4受容体の製 造法、及び、該ロイコトリエンB4受容体及び該ロイコトリエンB4受容体の活 性を修飾する物質(化合物、ペプチド及び抗体)のスクリーニング法を提供 する。
【選択図】 なし
【解決手段】新規なロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を単離し、全長ORF配列を 決定して、該ロイコトリエンB4受容体を発現させた。該ロイコトリエンB4受 容体、該ロイコトリエンB4受容体の遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベ クターを含む宿主細胞、該宿主細胞を用いた該ロイコトリエンB4受容体の製 造法、及び、該ロイコトリエンB4受容体及び該ロイコトリエンB4受容体の活 性を修飾する物質(化合物、ペプチド及び抗体)のスクリーニング法を提供 する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なロイコトリエンB4受容体のポリペプチド、該ポリペプチドをコードする遺伝子、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換細胞及び該細胞を使用する薬物のスクリーニング法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンのようなエイコサノイドはアラキドン酸の代謝産物の一つのファミリーであり、生体のホメオスタシスを維持するために様々な生理作用を発揮している(講座プロスタグランジン1〜8、鹿取信、室田誠逸、山本尚三 編 (1988)参照)。それらの生理作用はそれぞれのエイコサノイドに特有の細胞膜受容体を介して発揮されていると考えられている。エイコサノイドの一つロイコトリエンはアラキドン酸の5-リポキシゲナーゼ系の代謝産物の中で低濃度で強い生理活性を示す一連の生理活性脂質である(Samuelsson, B. et al. (1987) Science. 237, 1171-1176)。ロイコトリエン類はロイコトリエンB4(LTB4)と脂肪酸にペプチドが結合したペプチドロイコトリエン(LTC4、LTD4、LTE4)の二つ大別される。LTC4、LTD4、LTE4は気道平滑筋をはじめとする種々の平滑筋の収縮、気道の粘膜分泌亢進、細動静脈の収縮、血清成分の漏出などの作用を持っている(Taylor, G. W. et al. (1986) Trends Pharmacol. Sci. 7, p100-103)。また、LTB4は白血球の強力な活性化因子であり、炎症免疫反応や感染防御などで重要な役割を果たしている(Chen, X. S. et al. (1994) Nature 372. p179-182)。そのほかに、リソソーム酵素の遊離や活性酸素産生、血管内皮細胞への接着なども引き起こす(Palmblad, J. et al. (1994) J. Immunol. 152. p262-269)。LTB4はおもに白血球など骨髄球系の細胞で産生されるが、LTB4前駆体であるLTA4が供給されれば腸管、肺などの実質細胞でも産生される。このような作用から、LTB4は慢性関節リウマチ、浮腫、糸球体腎炎などの腎疾患、気管支炎や気道過敏症などの呼吸器疾患、湿疹や皮膚炎などの皮膚疾患、乾せんやinflammatory bowel diseaseや潰瘍性大腸炎などの腸疾患、脳脊髄炎などの中枢性疾患の発症、進展、増悪に関与していると考えられている(鹿取信、室田誠逸、山本尚三 編 (1988) 講座プロスタグランジン3, 225-227, 484-486, William T. J.(1999) Novel Inhibitors of Leukotrienes, 299-316)。実際、抗炎症薬を目指して多くのLTB4受容体拮抗薬(Negro, J. M. et al. (1997) Allergol. Immunopathol. Madr. 25, 104-112, Kishikawa, K. et al. (1995) Adv. Prostaglandin Thromboxane Leukot. Res. 23, 279-281)が研究開発されている。
現在までにロイコトリエンの受容体としては、LTB4を特異的に認識する受容体(BLT受容体)がヒト(Yokomizo, T. et al (1997) Nature 387. 620-624)、マウス(Martin, V. et al. (1999) J. Biol. Chem. 274. 8597-8603)で単離同定されている。また、LTD4を高親和性で認識する受容体(CysLT1)がヒトで単離同定されている(Lynch, K. R. et al. (1999) Nature 399, 789-793)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なロイコトリエン受容体又は該受容体と同等の機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子を提供することである。また、本発明の別の目的は、該遺伝子を用いて発現させたロイコトリエン受容体または該受容体と同様の機能を有するポリペプチドを提供することである。さらに、ロイコトリエン受容体のポリペプチドを使用したロイコトリエン受容体の活性を修飾する物質のスクリーニング法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、既存のロイコトリエン受容体とは異なる、新規なヒトロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を単離することに成功し、ヒトロイコトリエンB4受容体蛋白質のアミノ酸配列、ヒトロイコトリエンB4受容体をコードするDNA配列を決定した。さらに、該ロイコトリエンB4受容体を発現させ、組み換え蛋白質の生産を可能にし、該遺伝子を含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、該宿主細胞を用いたロイコトリエンB4受容体蛋白質、該ロイコトリエンB4受容体に対する抗体の製造法を確立した。これにより、該ロイコトリエンB4受容体および該ロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質のスクリーニングを可能にし、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、
(1)配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体、あるいは、該受容体の同効物であるロイコトリエンB4受容体、
(2)(1)記載のロイコトリエンB4受容体のアミノ酸配列をコードする遺伝子、
(3)(2)記載の遺伝子を含むベクター、
(4)(3)記載のベクターを含む宿主細胞、
(5)(4)記載の宿主細胞を用いることを特徴とする、(1)に記載のロイコトリエンB4受容体の製造方法、
(6)(1)記載のロイコトリエンB4受容体に結合する抗体、
(7)(1)記載のロイコトリエンB4受容体と被験化合物とを接触させることを特徴とする、当該ロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質をスクリーニングする方法、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で使用される用語につき説明する。
本明細書中で使用される「ロイコトリエンB4受容体」は「ロイコトリエンB4受容体蛋白質」を表す。
【0007】
本発明のロイコトリエンB4受容体は、配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体、あるいは、該ロイコトリエンB4受容体の同効物なら何れでもよい。本発明のロイコトリエンB4受容体の「同効物」とは、配列番号2記載のアミノ酸配列中のいずれかの1乃至複数個の部位において、1乃至複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、および/または挿入されていてもよく、かつ、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を示すロイコトリエンB4受容体をいう。本発明のロイコトリエンB4受容体の「同効物」として好ましくは配列番号2記載のアミノ酸配列において1乃至10個、更に好ましくは1乃至7個、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸でアミノ酸の置換、欠失または挿入があるアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号2記載のアミノ酸配列で示される蛋白質と同種の活性を有するロイコトリエンB4受容体であり、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが最適である。本発明の配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を有することは、実施例3記載の方法で、ロイコトリエンB4の共存下においてフォルスコリン(Forskolin)刺激によるcAMP発現量が用量依存的に抑制されることにより、確認できる。本発明のロイコトリエンB4受容体として特に好ましくは、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0008】
また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする塩基配列を有する遺伝子は、配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体、あるいは、それらの同効物をコードする塩基配列を有する遺伝子なら何れでもよい。好ましくは、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子であり、さらに好ましくは、配列番号1記載の塩基配列である。
【0009】
(製造法)
本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のロイコトリエンB4受容体、本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質のスクリーニング方法、ロイコトリエンB4受容体に反応する抗体の製造方法は、以下1)〜4)に記載する。
【0010】
1)本発明のヒトのロイコトリエンB4受容体遺伝子の製造方法
a)第1製造法
本発明のロイコトリエンB4受容体を産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織からmRNAを抽出する。次いでこのmRNAを鋳型として該受容体mRNAまたは一部のmRNA領域をはさんだ2種類のプライマーを作製する。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(以下RT−PCRという)を行うことにより、該ロイコトリエンB4受容体cDNAまたはその一部を得ることができる。さらに、得られたヒトのロイコトリエンB4受容体cDNAまたはその一部を適当な発現ベクターに組み込むことにより、宿主細胞で発現させ、該受容体の蛋白質を製造することができる。
まず、本発明のロイコトリエンB4受容体の産生能力を有する細胞あるいは組織、例えばヒト脳から該蛋白質をコードするものを包含するmRNAを既知の方法により抽出する。抽出法としては、グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法等が挙げられるが、好ましくはグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法が挙げられる。該蛋白質の産生能力を有する細胞あるいは組織は、該蛋白質をコードする塩基配列を有する遺伝子あるいはその一部を用いたノーザン ブロッティング法、該蛋白質に特異的な抗体を用いたウエスタン ブロッティング法などにより特定することができる。
【0011】
mRNAの精製は常法に従えばよく、例えばmRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着・溶出させ、精製することができる。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAをさらに分画することもできる。また、mRNAを抽出せずとも、市販されている抽出済mRNAを用いても良い。
次に、精製されたmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い第1鎖cDNAを合成する。この合成は常法によって行うことができる。得られた第1鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(Saiki, R. K. et al. (1988) Science 239, 487-491;以下、PCRという)に供し、目的とするロイコトリエンB4受容体DNAを増幅する。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。所望により、上記DNAを制限酸素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。
【0012】
b)第2製造法
本発明の遺伝子は上述の製造法の他、常法の遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。まず、前述の方法で得たmRNAを鋳型として逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後、この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としてはS1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis, A. et al. (1976) Cell, 7, 279-288)、Land法(Land, H. et al. (1981) Nucleic Acids Res., 9, 2251-2266)、 O. Joon Yoo法(Yoo, O. J. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 1049-1053)、Okayama-Berg法(Okayama, H. and Berg, P. (1982) Mol. Cell. Biol., 2, 161-170)などが挙げられる。
次に、上述の方法で得られる組換えプラスミドを大腸菌、例えばDH5α株に導入して形質転換させて、テトラサイクリン耐性あるいはアンピシリン耐性を指標として組換体を選択することができる。宿主細胞の形質転換は、例えば、宿主細胞が大腸菌の場合にはHanahanの方法(Hanahan, D. (1983) J. Mol. Biol., 166, 557-580)、すなわちCaCl2やMgCl2またはRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に該組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお、ベクターとしてはプラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターも用いることができる。
【0013】
上記により得られる形質転換株から、目的のロイコトリエンB4受容体のDNAを有する株を選択する方法としては、例えば以下に示す各種方法を採用できる。
▲1▼合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法
本発明のロイコトリエンB4受容体の全部または一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し(この場合コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列または考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列のどちらでもよく、また後者の場合、イノシンを含ませてその種類を減らすこともできる)、これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として、形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルターとハイブリダイズさせ、得られたポジティブ株を検索して、これを選択する。
【0014】
▲2▼ポリメラーゼ連鎖反応により作製したプローブを用いるスクリーニング法
本発明のロイコトリエンB4受容体の一部に対応するセンスプライマーとアンチセンスプライマーのオリゴヌクレオチドを合成し、これらを組合せてPCRを行い、目的のロイコトリエンB4受容体の全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、該ロイコトリエンB4受容体を産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、またはゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNAの断片を32P又は33Pで標識し、これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより目的のクローンを選択する。
【0015】
▲3▼他の動物細胞でのロイコトリエンB4受容体を産生させてスクリーニングする方法
形質転換株を培養し、遺伝子を増幅させ、その遺伝子を動物細胞にトランスフェクトし(この場合、自己複製可能で転写プロモーター領域を含むプラスミドもしくは動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれでもよい)、遺伝子にコードされた蛋白を細胞表面に産生させる。本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体を用いて該受容体を検出することにより、元の形質転換株より目的のロイコトリエンB4受容体をコードするcDNAを有する株を選択する。
【0016】
▲4▼本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体を用いて選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体および該抗体に対する2次抗体を用いて、所望のロイコトリエンB4受容体産生株を検出し、目的の株を選択する。
【0017】
▲5▼本発明のロイコトリエンB4受容体に対するLTB4の結合を指標として選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、標識したLTB4を用いて所望のロイコトリエンB4受容体産生株を検出し、目的株を選択する。
【0018】
▲6▼セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーションの系を用いる方法
形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルター等にブロットし本発明のロイコトリエンB4受容体産生細胞からのmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収されたmRNAを蛋白翻訳系、例えばアフリカツメガエルの卵母細胞への注入や、ウサギ網状赤血球ライゼートや小麦胚芽等の無細胞系で蛋白に翻訳させる。本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体や標識したLTB4を用いて検出して、目的の株を選択する。
得られた目的の形質転換株より本発明のロイコトリエンB4受容体をコードするDNAを採取する方法は、公知の方法(Maniatis, T. et al.(1982):“ Molecular Cloning-A Laboratory Manual "Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
【0019】
c)第3製造法
配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子は、化学合成法によって製造したDNA断片を結合することによっても製造できる。各DNA断片は、DNA合成機(例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer (Beckman社)、あるいは、394 DNA/RNA Synthesizer (Applied Biosystems社)など)を用いて合成することができる。
【0020】
d)第4製造法
本発明の遺伝子を利用して遺伝子工学的手法により得られる物質が本発明のロイコトリエンB4受容体の機能を発現するためには、必ずしも配列表 配列番号2に示されるアミノ酸配列のすべてを有するものである必要は無く、例えばその一部の配列であっても、あるいは他のアミノ酸配列が付加されていても、それが配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を示す限り、それらの蛋白質もまた本発明のロイコトリエンB4受容体に包含される。また、一般に真核生物の遺伝子はインターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を示すと考えられ(例えば、Nishi, T. et al. (1985) J. Biochem., 97, 153-159を参照)、この多型現象によって1または複数個のアミノ酸が置換される場合もあれば、ヌクレオチド配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。したがって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の中の1もしくは複数個の部位において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、または挿入されている蛋白質でも配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体と同種の活性を有していることがありえる。これらの蛋白質は、本発明のロイコトリエンB4受容体の同効物と呼び、本発明に含まれる。
【0021】
これらの本発明のロイコトリエンB4受容体の同効物をコードする塩基配列を有する遺伝子はすべて本発明に含まれる。このような各種の本発明の遺伝子は、上記本発明のロイコトリエンB4受容体の情報に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller, M. et al.(1984) Nature, 10, 105-111)等の常法に従い、核酸の化学合成により製造することもできる。なお、所望アミノ酸に対するコドンはそれ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる(Crantham, R. et al.(1981) Nucleic Acids Res.,9 r43-r74)。さらに、これら塩基配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用したサイトスペシフィック・ミュータジェネシス(site specific mutagenesis)(Mark, D. F. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666)等に従うことができる。
【0022】
以上、a)乃至d)により得られるDNAの配列決定は、例えばマキサム−ギルバートの化学修飾法(Maxam, A. M. and Gilbert, W. (1980):“ Methods in Enzymology "65, 499-559)やM13を用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing, J. and Vieira, J (1982) Gene, 19, 269-276)等により行うことができる。
【0023】
また、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のロイコトリエンB4受容体は、下記の方法によって得ることができる。
2)本発明のロイコトリエンB4受容体の組み換え蛋白質の製造方法
単離された本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を含む断片は、適当なベクターDNAに再び組込むことにより、真核生物及び原核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに、これらのベクターに適当なプロモーターおよび形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現させることが可能である。
例えば、真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell, 23, 175-182)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216-4220)、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞および同細胞にEpstein Barr VirusのEBNA−1遺伝子を導入した293−EBNA細胞(Invitrogen社製)等がよく用いられているが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列等を有するものを使用でき、これはさらに必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr (Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol., 1, 854-864)、ヒトのelongation factorプロモーターを有するpEF-BOS (Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)、cytomegalovirusプロモーターを有するpCEP4(Invitrogen社製)等を例示できるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自律増殖が可能であり、さらに転写プロモーター、転写終結シグナルおよびRNAスプライス部位を備えたものを用いることができ、例えば、 pME18S、 (Maruyama, K. and Takebe,Y. (1990) Med. Immunol., 20, 27-32)、pEF-BOS (Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)、 pCDM8(Seed, B. (1987) Nature, 329, 840-842) 等が挙げられる。該発現ベクターはDEAE−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res., 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Ed, A. J. (1973) Virology, 52, 456-457)、 FuGENE6(Boeringer Mannheim社製)を用いた方法、および電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al.(1982) EMBO J., 1, 841-845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0025】
また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook, J. et al. (1989): “ Molecular Cloning-A Laboratory Manual "Cold Spring Harbor Laboratory, NY)やpSV2-neo(Southern, P. J. and Berg,P. (1982) J. Mol. Appl. Genet., 1, 327-341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することによりロイコトリエンB4受容体を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞として293−EBNA細胞を用いる場合には、Epstein Barr Virusの複製起点を有し、293−EBNA細胞で自己増殖が可能なpCEP4(Invitrogen社)などの発現ベクターを用いて所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0026】
上記で得られる所望の形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内または細胞表面に本発明のロイコトリエンB4受容体が生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば上記COS細胞であればRPMI-1640培地やダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に必要に応じ牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したものを使用できる。また、上記293−EBNA細胞であれば牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えたものを使用できる。
【0027】
上記により、形質転換体の細胞内または細胞表面に生産される本発明のロイコトリエンB4受容体は、該受容体蛋白質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、それらより分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば受容体蛋白質を含む膜分画を可溶化した後、通常の蛋白沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せ等を例示できる。なお、膜分画は常法に従って得ることができる。例えば本発明のロイコトリエンB4受容体を表面に発現した細胞を培養し、これらをバッファーに懸濁後、ホモジナイズし遠心分離することにより得られる。また、できるだけ緩和な可溶化剤(CHAPS、 Triton X-100、ジキトニン等)でロイコトリエンB4受容体を可溶化することにより、可溶化後も受容体の特性を保持することができる。
【0028】
本発明のロイコトリエンB4受容体はマーカー配列とインフレームで融合して発現させることで、該ロイコトリエンB4受容体の発現の確認、細胞内局在の確認、精製等が可能になる。マーカー配列としては、例えば、FLAG epitope、Hexa-Histidine tag、Hemagglutinin tag、myc epitopeなどがある。また、マーカー配列とロイコトリエンB4受容体の間にエンテロキナーゼ、ファクターXa、トロンビンなどのプロテアーゼが認識する特異的な配列を挿入することにより、マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼにより切断除去する事が可能である。例えば、ムスカリンアセチルコリン受容体とHexa-Histidine tagとをトロンビン認識配列で連結した報告がある(Hayashi, M.K. and Haga, T. (1996) J. Biochem., 120, 1232-1238)
【0029】
3)本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質(化合物、ペプチド及び抗体)のスクリーニング方法
本発明にはロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物,ペプチド及び抗体のスクリーニング法が包含される。該スクリーニング法は、前記により構築されたロイコトリエンB4受容体を用いて、該受容体の生理学的な特性に応じた該受容体の修飾の指標を測定する系に被験薬を添加し、該指標を測定する手段を含む。該測定系は、具体的には、以下のスクリーニング方法が挙げられる。また、被験薬はケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物やペプチド、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett, N.K., et al. (1995) Tetrahedron, 51, 8135-8137)によって得られた化合物群やファージ・ディスプレイ法(Felici, F., et al. (1991) J. Mol. Biol., 222, 301-310)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物などもスクリーニングの対象となる。あるいは本発明のスクリーニング法により選択された化合物またはペプチドを化学的または生物学的に修飾した化合物またはペプチドを用いうる、がそれらに限らない。
【0030】
a)リガンド結合アッセイ法を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体に結合する化合物、ペプチド及び抗体はリガンド結合アッセイ法によりスクリーニングすることができる。該受容体蛋白質を発現させた細胞膜、あるいは該受容体蛋白質精製標品を調製する。緩衝液、イオン、pHのようなアッセイ条件を最適化し、最適化したバッファー中で同受容体蛋白質を発現させた細胞膜、あるいは該受容体蛋白質精製標品を、標識リガンド、例えば[3H]LTB4を被検薬と共に一定時間インキュベーションする。反応後、ガラスフィルター等で濾過し適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標に該受容体蛋白質のアゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体、アンタゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。
【0031】
b) GTPγS結合法を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物、ペプチド及び抗体はGTPγS結合法によりスクリーニングすることが可能である(Lazareno, S. and Birdsall, N.J.M. (1993) Br. J. Pharmacol. 109, 1120-1127)。該受容体を発現させた細胞膜を20 mM HEPES (pH 7.4), 100 mM NaCl, 10 mM MgCl2, 50 mM GDP溶液中で、35Sで標識されたGTPγS 400 pMと混合する。被検薬存在下と非存在下でインキュベーション後、ガラスフィルター等で濾過し、結合したGTPγSの放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。被検薬存在下における特異的なGTPγS結合の上昇を指標に、該ロイコトリエンB4受容体のアゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。また、被検薬存在下における、LTB4によるGTPγS結合上昇の抑制を指標に該受容体蛋白質のアンタゴニスト活性を有する化合物,ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。
【0032】
c)細胞内Ca++およびcAMP濃度の変動を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物、ペプチド及び抗体はロイコトリエンB4受容体を発現させた細胞の細胞内Ca++またはcAMP濃度の変動を利用してスクリーニングすることが可能である。Ca++濃度の測定はfura2、fluo3等を用い、cAMP濃度の測定は市販のcAMP測定キット(Amersham社等)を用いて測定できる。また、Ca++およびcAMP濃度に依存して転写量が調節される遺伝子の転写活性を検出することにより間接的にCa++およびcAMP濃度を測定することが可能である。該受容体を発現させた細胞と受容体を発現させていない宿主細胞(コントロール細胞)に化合物、ペプチド、抗体等を一定時間作用させ、Ca++およびcAMP濃度を直接あるいは間接的に測定する。コントロール細胞と比較して、該受容体を発現させた細胞特異的なCa++の上昇および/またはcAMP濃度の上昇または低下を指標にアゴニスト活性を有する化合物,ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。また、被検薬存在下における、LTB4によるCa++の上昇および/またはcAMP濃度の上昇または低下の阻害作用を指標に該ロイコトリエンB4受容体のアンタゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。好ましくは、実施例3記載の条件で、EC50 =100μM以下の物質を、更に好ましくは、 EC50 =10μM以下の物質をアゴニスト活性を有する物質として、選択することができる。また、実施例3記載のアッセイ条件に被験薬を追加することにより、IC50 =10μM以下の物質を、更に好ましくはIC50 =1μM以下の物質をアンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
【0033】
4)本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体の作成方法
本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、は各種動物に該ロイコトリエンB4受容体や該ロイコトリエンB4受容体の断片を直接投与することで得ることができる。また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を導入したプラスミドを用いてDNAワクチン法(Raz, E. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9519-9523; Donnelly, J. J. et al. (1996) J. Infect. Dis., 173, 314-320)によっても得ることができる。
ポリクローナル抗体は該受容体蛋白質またはその断片をフロイント完全アジュバントなどの適当なアジュバントに乳濁し、腹腔、皮下また静脈等に免疫して感作した動物、例えばウサギ、ラット、ヤギ、またはニワトリ等の血清または卵から製造される。このように製造された血清または卵からポリクローナル抗体は常法の蛋白質単離精製法により分離精製することができる。そのような方法としては例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、DEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、プロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法が挙げられる。
以上のように分離精製された抗体につき、常法により、ペプシン、パパイン等の蛋白質分解酵素によって消化を行い、引き続き常法の蛋白質単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fvを得ることができる。
【0034】
モノクローナル抗体は、ケーラーとミルスタインの細胞融合法(Kohler, G. and Milstein, C. (1975) Nature, 256, 495-497)により当業者が容易に製造することが可能である。
本発明のロイコトリエンB4受容体またはその断片をフロイント完全アジュバントなどの適当なアジュバントに乳濁した乳濁液を数週間おきにマウスの腹腔、皮下または静脈に数回繰り返し接種することにより免疫する。最終免疫後、脾臓細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製する。
ハイブリドーマを得るためのミエローマ細胞としては、ヒポキサンチンーグアニンーホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損やチミジンキナーゼ欠損のようなマーカーを持つミエローマ細胞、例えば、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8.U1、を利用する。また、融合剤としてはポリエチレングリーコールを利用する。さらにはハイブリドーマ作製における培地として、イーグル氏最小必須培地、ダルベッコ氏変法最小必須培地、RPMI-1640などの通常よく用いられているものに適宜10〜30%の牛胎児血清を加えて用いる。融合株はHAT選択法により選択する。ハイブリドーマのスクリーニングは培養上清を用い、ELISA法、免疫組織染色法などの周知の方法または前記のスクリーニング法により行い、目的の抗体を分泌しているハイブリドーマのクローンを選択する。また、限界希釈法によって、サブクローニングを繰り返すことによりハイブリドーマの単クローン性を保証する。このようにして得られるハイブリドーマは培地中で2〜4日間、あるいはプリスタンで前処理したBALB/c系マウスの腹腔内で10〜20日培養することで精製可能な量の抗体が産生される。
【0035】
このように製造されたモノクローナル抗体は培養上清あるいは腹水から常法の蛋白質単離精製法により分離精製することができる。そのような方法としては例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、DEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、プロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法が挙げられる。また、モノクローナル抗体またはその一部分を含む抗体断片は該抗体をコードする遺伝子の全部または一部を発現ベクターに組み込み、大腸菌、酵母、または動物細胞に導入して生産させることもできる。以上のように分離精製された抗体につき、常法により、ペプシン、パパイン等の蛋白質分解酵素によって消化を行い、引き続き常法の蛋白質単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fvを得ることができる。
【0036】
さらには、本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体を、クラクソンらやゼベデらの方法(Clackson, T. et al. (1991) Nature, 352, 624-628; Zebedee, S. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3175-3179)によりsingle chain FvやFabとして得ることも可能である。また、マウスの抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウス(Lonberg, N. et al. (1994) Nature, 368, 856-859)に免疫することでヒト抗体を得ることも可能である。
【0037】
本発明には、該ロイコトリエンB4受容体または前記スクリーニング法により選択された該受容体の活性を有意に修飾する化合物、ペプチド及び抗体を有効成分とする医薬が包含される。
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を有意に修飾する化合物、ペプチド、抗体または抗体断片を有効成分とする製剤は、該有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製されうる。
【0038】
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液剤などによる経口投与、あるいは静注、筋注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、経粘膜投与剤などによる非経口投与が挙げられる。特に胃で消化されるペプチドにあっては静注等の非経口投与が望まれる。
本発明による経口投与のための固体組成物は、一つ又はそれ以上の活性物質が少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤などを含有していてもよい。錠剤や丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆していてもよい。
【0039】
経口のための液体組成物は、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。該組成物は不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含む。水溶性の溶液剤や懸濁剤には、希釈剤として例えば注射用蒸留水、生理用食塩水などが含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等を含む。該組成物はさらに湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤、防腐剤などを含んでいてもよい。組成物は例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、または照射によって無菌化される。また、無菌の固体組成物を製造し、使用に際し無菌水その他の無菌用注射用媒体に溶解し使用することもできる。
投与量は前記スクリーニング法により選択された有効成分の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して適宜決定される。
【0040】
本発明はまた、診断薬としてのロイコトリエンB4受容体をコードするDNAの使用法が包含される。機能障害と関連したロイコトリエンB4受容体遺伝子の変異型の検出は、ロイコトリエンB4受容体の過少発現、過剰発現または変化した発現により生ずる疾患またはその罹病性の診断に利用される。診断用のDNAは、被験者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料から得ることができる。欠失および挿入変異は、正常な遺伝子型と比較したときの増幅産物のサイズの変化により検出できる。点突然変異は増幅DNAを標識ロイコトリエンB4受容体ヌクレオチドとハイブリダイズさせることで同定できる。完全にマッチした配列とミスマッチの二重鎖とはRNアーゼ消化により、または融解温度の差異により区別できる。また、DNA配列の差異は、変性剤を用いるまたは用いないゲルでのDNA断片の電気泳動の移動度の変化により、または直接DNA配列決定によっても検出できる(Myers, R. M. et al. (1985) Science. 230, 1242-1246)。特定位置での配列変化はヌクレアーゼプロテクションアッセイ(例えば、RNアーゼおよびS1プロテクション)または化学的開裂法によっても確認できる(Cotton et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397-4401)。また、ロイコトリエンB4受容体のヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築することができる。このアレイ技法は公知で、遺伝子発現、遺伝的連鎖および遺伝的変異性を解析するために用いられている(Chee, M. et al. (1996) Science, .274, 610-613)。さらに、被験者から得られたサンプルからのロイコトリエンB4受容体のレベルの異常な低下または増加を測定する方法により、ロイコトリエンB4受容体の過少発現、過剰発現または変化した発現により生ずる疾患またはその罹病性の診断に利用される。発現の低下または増加は、当業者で公知のポリヌクレオチド定量法のいずれか、例えばPCR、RT−PCR、RNアーゼプロテクション、ノーザンブロット、その他のハイブリダイゼーション法によりRNAレベルで測定することができる。また、被験者から得られたサンプル中のロイコトリエンB4受容体のような蛋白質のレベルの低下または増加は当業者で公知のアッセイ法により測定できる。こうしたアッセイ法として、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット法、ELISAアッセイなどがある。
【0041】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述するが,本発明は該実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(Maniatis, T. at al. (1982) : "Molecular Cloning - A Laboratory Manual" Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従って実施可能である。
【0042】
(実施例1)新規受容体JULF2をコードする遺伝子の単離
本発明の新規受容体(以下JULF2とする)をコードする全長cDNAは、ヒトゲノムDNA(Clontech社製)をテンプレート(template)としてPCRにより取得した。配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマー(forward primer)として、配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドをリバースプライマー(reverse primer)として用いた(それぞれの5'末端にはXbaI siteが付加してある)。PCRはPfu DNA polymerase(Stratagene社製)を用い、5% DMSO存在下で98 ℃ (20秒)/58 ℃(30秒)/74 ℃(3分)のサイクルを34回繰り返した。その結果、約1.0 kbpのDNA断片が増幅された。この断片をXbaIで消化した後、pEF-BOS plasmid(Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)を用いてクローニングした。得られたクローンの塩基配列はジデオキシターミネーター法によりABI377 DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)を用いて解析した。明らかになった配列を配列番号1に示す。
配列番号1で示される塩基配列は1077 baseのORFを持っている。ORFから予測されるアミノ酸配列(358アミノ酸)を配列番号2に示す。予想アミノ酸配列は、G蛋白共役型受容体の特徴である7個の膜貫通ドメインと思われる疎水性領域を有していることから、本JULF2遺伝子がG蛋白共役型受容体をコードすることが判った。
【0043】
(実施例2)組織におけるヒト新規JULF2遺伝子の発現分布
ノーザン ブロット ハイブリダイゼーション法によりJULF2遺伝子の発現分布を解析した。ヒトJULF2のプローブにはcDNA断片(配列番号:1の第22番目から第615番目)を用いた。ヒトの各臓器由来のpoly A+ RNA(2 μg)をブロットしたメンブレン(Clontech社製)とプローブのハイブリダイゼーションは50% ホルムアミド(formamide)、5x SSPE、10 x Denhardt's溶液、2% SDS、100 μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃(18時間)で行った。メンブレンは、最終的に0.2 x SSC、0.1% SDSを含む溶液で2回(65℃、30分)洗浄した。
ヒトの各臓器(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球、胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管、副腎、骨髄)についてNorthern解析を行ったところ、図1、図2および図3に示すように約2.5 kbのmRNAが脾臓、末梢血白血球、副腎、骨髄、気管、甲状腺、卵巣、リンパ節で強く検出され、膵臓、心臓、脊髄でも若干シグナルが検出された。また、末梢血白血球では3.5 kbと5 kbと9.5 kbのmRNAが発現しており、特に5 kbのmRNAは脾臓、骨髄、副腎で強く検出された。さらに、6.5 kbのmRNAは気管にのみ特異的に検出された。本発明のG蛋白質共役型レセプターヒトJULF2遺伝子は少なくとも5種類大きさのmRNAがヒト組織の広範に発現していることがわかった。以上のことから、既存のBLT受容体が末梢血白血球にのみ発現しているのに対し、本発明のJULF2は脾臓、末梢血白血球、骨髄をはじめ、広範に遺伝子発現が確認されたことから、LTB4に起因する広範な生理作用に重要な役割を担っている可能性が示唆された。さらに、BLT受容体が脾臓で殆ど遺伝子発現が認められず、本発明JULF2で脾臓で遺伝子発現が観察されることは、JULF2は単核球(リンパ球、単球)を含む血球細胞全般に発現している可能性が示唆される。
【0044】
(実施例2−1)血球細胞におけるヒト新規JULF2遺伝子の発現分布
健常人ボランティアよりヘパリン採血し、6% デキストラン/生理食塩水を1/3量加えて室温にて1時間放置した。上清を取り、150 x gで5分遠心処理後、沈査をHunk's Balanced Solt Solution (HBSS)に懸濁した。これを等量のFicoll (Pharmacia社)に重層し、400 x gで30分遠心処理を行った。中間層を単核球画分、沈査を多核白血球として分取した。多核白血球は、CD16マイクロビーズ(第一化学薬品社製)を加え、磁器スタンドにて好中球画分と好酸球分画に分離した。単核球画分、好中球画分、好酸球画分のそれぞれは生理食塩水にて洗浄後、isogen(日本ジーン社製)を用いてtotal RNAを精製した。各分画由来のtotal RNA 5 μgをDNase(Nippon Gene社製)を用い37 ℃で15分反応させた。DNase処理したtotal RNAをスーパースクリプト ファーストストランドシステム(RT-PCR用)(GIBCO社製)にてcDNA変換した。
JULF2の発現分布は上記血球画分のcDNAを鋳型として、primerセットは配列番号5で示されるオリゴヌクレオチドと配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドを用いた。PCRはpfu DNA polymerase(Stratagene社製)を用い5% DMS0存在下で98 ℃(20秒)/60 ℃(30秒)/74 ℃(2分)のサイクルを35回繰り返した。また、内部標準としては上記のヒトの各臓器のcDNAを鋳型として、Human G3PDH Control Amplimer Set(Clontech社製)を用いて、同条件のPCRを行った。また、ゲノムDNAの混入を確認するために、cDNA変換を行わなかったtotal RNA(RT(-))を対象においた。反応産物は1%アガロースゲルにて電気泳動して解析した(図5)。JULF2の約400bpの増幅産物は健常人A、Bともに各血球画分で検出されたが、とりわけ単核球でよく検出された。
BLTは好中球に多く発現していると考えられているのに対し、JULF2は単核球でよく検出されていたことから、ロイコトリエンB4に起因する炎症性疾患のなかでも慢性疾患にJULF2がより関与していることが示唆された。
【0045】
(実施例3)CHO細胞によるJULF2の発現とLTB4によるcAMP産生阻害実験
ヒトJULF2を発現させるための発現ベクターとしてpEF-BOSを用いた。構築したプラスミドをpEF-BOS-Jul22とした。
10cmシャーレにCHO-dhfr(-)株を1x106細胞でαMEM(核酸存在)培地を用いて播種し1日培養後、8μgのpEF-BOS-Jul22およびpEF-BOS(空ベクター)をFuGENE6(Boeringer Mannheim社製)を用いて遺伝子導入した。24時間後、遺伝子導入した細胞を回収し、αMEM(核酸非存在)培地/100 nM Methotrexate(和光純薬社製)に懸濁後、段階希釈して10cmシャーレに播き直した。2週間後に出現したコロニーを個別に取得し、JULF2発現細胞とした。
【0046】
JULF2発現CHO細胞と空ベクター導入CHO細胞を24ウェルプレートに1x105細胞で播種した。1日培養後、αMEM(核酸非存在)培地/1 mM 3-isobutyl-1-methlxanthine (Sigma社製)/0.1% BSAで10分間処理した後、1μMフォルスコリン (和光純薬社製)/LTB4 0〜1 μMを滴下した。37 ℃で30分後に培養上清を除去し、cAMP EIAシステム(BIOTRAK; アマシャム社製)細胞溶解液を用いて細胞を溶解した。
各条件における細胞のcAMP産生量の測定はcAMP EIAシステムを用いて行い、添付プロトコールに従って実施した。1 μM フォルスコリン単独刺激でのcAMP産生量を100%とし、LTB4共存下でのcAMP量の用量依存曲線を作製した(図4)。用量依存曲線から、JULF2に対するLTB4の応答性は EC50 = 10 nM以下であった。一方、空ベクター導入CHO細胞ではLTB4添加によるcAMP産生量に変化は見られなかった。さらに、JULF2発現CHO細胞のフォルスコリン刺激によるcAMP産生量がLTB4によって抑制されたことから、JULF2が細胞内三量体G蛋白のうちGαiと共役していることが示唆された。
【0047】
(実施例4)JULF2発現CHO細胞のLTB4による細胞遊走実験
8μm ポア ポリカーボネト フレームフィルター(Neuroprobe社製)を10μg/mlフィブロネクチン(旭テクノグラス社)/PBSにて4 ℃で一晩処理した。96 blindウェルチャンバー(Neuroprobe社製)の下層にLTB4 0〜1 μMを入れ、フィブロネクチン処理したフレームフィルターをセットし、JULF2発現CHO細胞と空ベクター導入CHO細胞をαMEM(核酸非存在)培地/0.1% BSAで懸濁後、2x105細胞でチャンバー上層に播種した。37 ℃ CO2インキュベーターにて4時間培養後、フレームフィルターをメタノールにて固定し、Diff-Quik染色キット(国際試薬株式会社)にて染色した。このフィルターの上層面(細胞をのせた側)を拭き取り、風乾後、プレートリーダー(Molecular Devices社)で595 nmの吸光度を測定した。また、JULF2発現CHO細胞のpertussis toxin (PTX)感受性を検討するため、50 ng/ml PTXにて20時間処理したJULF2発現CHO細胞を細胞遊走実験に供した(図6)。JULF2発現CHO細胞はLTB4によりフィルター下層へと遊走することが観察された。細胞遊走は、30 nM濃度のLTB4に対して遊走活性が最大となり、さらに高濃度では遊走活性が抑制されるというベル型の走化性を示した。この反応はPTX前処理によって完全に阻害されたことから、JULF2を介する細胞遊走にはGai様のG蛋白が関与することが強く示唆された。
【0048】
以上のように、本発明のロイコトリエンB4受容体は、これまでその存在が示唆されながら実体が不明であったLTB4に親和性を持つ新たな受容体であり、本ロイコトリエンB4受容体で形質転換した細胞を用いることで初めて結合実験および拮抗薬のスクリーニングが可能となった。
【0049】
【発明の効果】
本発明は新規なヒトのロイコトリエンB4受容体を提供することにある。本発明の受容体はヒトのロイコトリエンB4に起因する疾患、例えば炎症性疾患(気管支炎や皮膚炎、乾せん、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、浮腫)の予防及び/または治療剤としての該受容体の活性を修飾する物質の探索及び評価に有用であり、該受容体の関与する疾患に対する治療薬を提供することができる。また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子はロイコトリエンB4受容体の製造に利用されるのみならず、ロイコトリエンB4受容体の変異や異常な発現変動に起因する疾患の診断に有用である。該受容体のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は該受容体作動薬,診断薬又はポリペプチドの分離精製の手段等に有用である。
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓)の結果を示す。
【図2】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球)の結果を示す。
【図3】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管、副腎、骨髄)の結果を示す。
【図4】ロイコトリエンB4受容体に対するLTB4のcAMP発現抑制作用の結果を示す。
【図5】RT-PCR解析によるロイコトリエンB4受容体の血球発現分布(単核球、好中球、好酸球)の結果を示す。
【図6】LTB4のによるロイコトリエンB4受容体発現CHO細胞の細胞遊走実験の結果を示す。
【0051】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なロイコトリエンB4受容体のポリペプチド、該ポリペプチドをコードする遺伝子、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換細胞及び該細胞を使用する薬物のスクリーニング法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンのようなエイコサノイドはアラキドン酸の代謝産物の一つのファミリーであり、生体のホメオスタシスを維持するために様々な生理作用を発揮している(講座プロスタグランジン1〜8、鹿取信、室田誠逸、山本尚三 編 (1988)参照)。それらの生理作用はそれぞれのエイコサノイドに特有の細胞膜受容体を介して発揮されていると考えられている。エイコサノイドの一つロイコトリエンはアラキドン酸の5-リポキシゲナーゼ系の代謝産物の中で低濃度で強い生理活性を示す一連の生理活性脂質である(Samuelsson, B. et al. (1987) Science. 237, 1171-1176)。ロイコトリエン類はロイコトリエンB4(LTB4)と脂肪酸にペプチドが結合したペプチドロイコトリエン(LTC4、LTD4、LTE4)の二つ大別される。LTC4、LTD4、LTE4は気道平滑筋をはじめとする種々の平滑筋の収縮、気道の粘膜分泌亢進、細動静脈の収縮、血清成分の漏出などの作用を持っている(Taylor, G. W. et al. (1986) Trends Pharmacol. Sci. 7, p100-103)。また、LTB4は白血球の強力な活性化因子であり、炎症免疫反応や感染防御などで重要な役割を果たしている(Chen, X. S. et al. (1994) Nature 372. p179-182)。そのほかに、リソソーム酵素の遊離や活性酸素産生、血管内皮細胞への接着なども引き起こす(Palmblad, J. et al. (1994) J. Immunol. 152. p262-269)。LTB4はおもに白血球など骨髄球系の細胞で産生されるが、LTB4前駆体であるLTA4が供給されれば腸管、肺などの実質細胞でも産生される。このような作用から、LTB4は慢性関節リウマチ、浮腫、糸球体腎炎などの腎疾患、気管支炎や気道過敏症などの呼吸器疾患、湿疹や皮膚炎などの皮膚疾患、乾せんやinflammatory bowel diseaseや潰瘍性大腸炎などの腸疾患、脳脊髄炎などの中枢性疾患の発症、進展、増悪に関与していると考えられている(鹿取信、室田誠逸、山本尚三 編 (1988) 講座プロスタグランジン3, 225-227, 484-486, William T. J.(1999) Novel Inhibitors of Leukotrienes, 299-316)。実際、抗炎症薬を目指して多くのLTB4受容体拮抗薬(Negro, J. M. et al. (1997) Allergol. Immunopathol. Madr. 25, 104-112, Kishikawa, K. et al. (1995) Adv. Prostaglandin Thromboxane Leukot. Res. 23, 279-281)が研究開発されている。
現在までにロイコトリエンの受容体としては、LTB4を特異的に認識する受容体(BLT受容体)がヒト(Yokomizo, T. et al (1997) Nature 387. 620-624)、マウス(Martin, V. et al. (1999) J. Biol. Chem. 274. 8597-8603)で単離同定されている。また、LTD4を高親和性で認識する受容体(CysLT1)がヒトで単離同定されている(Lynch, K. R. et al. (1999) Nature 399, 789-793)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なロイコトリエン受容体又は該受容体と同等の機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子を提供することである。また、本発明の別の目的は、該遺伝子を用いて発現させたロイコトリエン受容体または該受容体と同様の機能を有するポリペプチドを提供することである。さらに、ロイコトリエン受容体のポリペプチドを使用したロイコトリエン受容体の活性を修飾する物質のスクリーニング法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、既存のロイコトリエン受容体とは異なる、新規なヒトロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を単離することに成功し、ヒトロイコトリエンB4受容体蛋白質のアミノ酸配列、ヒトロイコトリエンB4受容体をコードするDNA配列を決定した。さらに、該ロイコトリエンB4受容体を発現させ、組み換え蛋白質の生産を可能にし、該遺伝子を含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、該宿主細胞を用いたロイコトリエンB4受容体蛋白質、該ロイコトリエンB4受容体に対する抗体の製造法を確立した。これにより、該ロイコトリエンB4受容体および該ロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質のスクリーニングを可能にし、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、
(1)配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体、あるいは、該受容体の同効物であるロイコトリエンB4受容体、
(2)(1)記載のロイコトリエンB4受容体のアミノ酸配列をコードする遺伝子、
(3)(2)記載の遺伝子を含むベクター、
(4)(3)記載のベクターを含む宿主細胞、
(5)(4)記載の宿主細胞を用いることを特徴とする、(1)に記載のロイコトリエンB4受容体の製造方法、
(6)(1)記載のロイコトリエンB4受容体に結合する抗体、
(7)(1)記載のロイコトリエンB4受容体と被験化合物とを接触させることを特徴とする、当該ロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質をスクリーニングする方法、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で使用される用語につき説明する。
本明細書中で使用される「ロイコトリエンB4受容体」は「ロイコトリエンB4受容体蛋白質」を表す。
【0007】
本発明のロイコトリエンB4受容体は、配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体、あるいは、該ロイコトリエンB4受容体の同効物なら何れでもよい。本発明のロイコトリエンB4受容体の「同効物」とは、配列番号2記載のアミノ酸配列中のいずれかの1乃至複数個の部位において、1乃至複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、および/または挿入されていてもよく、かつ、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を示すロイコトリエンB4受容体をいう。本発明のロイコトリエンB4受容体の「同効物」として好ましくは配列番号2記載のアミノ酸配列において1乃至10個、更に好ましくは1乃至7個、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸でアミノ酸の置換、欠失または挿入があるアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号2記載のアミノ酸配列で示される蛋白質と同種の活性を有するロイコトリエンB4受容体であり、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが最適である。本発明の配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を有することは、実施例3記載の方法で、ロイコトリエンB4の共存下においてフォルスコリン(Forskolin)刺激によるcAMP発現量が用量依存的に抑制されることにより、確認できる。本発明のロイコトリエンB4受容体として特に好ましくは、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0008】
また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする塩基配列を有する遺伝子は、配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体、あるいは、それらの同効物をコードする塩基配列を有する遺伝子なら何れでもよい。好ましくは、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子であり、さらに好ましくは、配列番号1記載の塩基配列である。
【0009】
(製造法)
本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のロイコトリエンB4受容体、本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質のスクリーニング方法、ロイコトリエンB4受容体に反応する抗体の製造方法は、以下1)〜4)に記載する。
【0010】
1)本発明のヒトのロイコトリエンB4受容体遺伝子の製造方法
a)第1製造法
本発明のロイコトリエンB4受容体を産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織からmRNAを抽出する。次いでこのmRNAを鋳型として該受容体mRNAまたは一部のmRNA領域をはさんだ2種類のプライマーを作製する。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(以下RT−PCRという)を行うことにより、該ロイコトリエンB4受容体cDNAまたはその一部を得ることができる。さらに、得られたヒトのロイコトリエンB4受容体cDNAまたはその一部を適当な発現ベクターに組み込むことにより、宿主細胞で発現させ、該受容体の蛋白質を製造することができる。
まず、本発明のロイコトリエンB4受容体の産生能力を有する細胞あるいは組織、例えばヒト脳から該蛋白質をコードするものを包含するmRNAを既知の方法により抽出する。抽出法としては、グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法等が挙げられるが、好ましくはグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法が挙げられる。該蛋白質の産生能力を有する細胞あるいは組織は、該蛋白質をコードする塩基配列を有する遺伝子あるいはその一部を用いたノーザン ブロッティング法、該蛋白質に特異的な抗体を用いたウエスタン ブロッティング法などにより特定することができる。
【0011】
mRNAの精製は常法に従えばよく、例えばmRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着・溶出させ、精製することができる。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAをさらに分画することもできる。また、mRNAを抽出せずとも、市販されている抽出済mRNAを用いても良い。
次に、精製されたmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い第1鎖cDNAを合成する。この合成は常法によって行うことができる。得られた第1鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(Saiki, R. K. et al. (1988) Science 239, 487-491;以下、PCRという)に供し、目的とするロイコトリエンB4受容体DNAを増幅する。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。所望により、上記DNAを制限酸素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。
【0012】
b)第2製造法
本発明の遺伝子は上述の製造法の他、常法の遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。まず、前述の方法で得たmRNAを鋳型として逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後、この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としてはS1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis, A. et al. (1976) Cell, 7, 279-288)、Land法(Land, H. et al. (1981) Nucleic Acids Res., 9, 2251-2266)、 O. Joon Yoo法(Yoo, O. J. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 1049-1053)、Okayama-Berg法(Okayama, H. and Berg, P. (1982) Mol. Cell. Biol., 2, 161-170)などが挙げられる。
次に、上述の方法で得られる組換えプラスミドを大腸菌、例えばDH5α株に導入して形質転換させて、テトラサイクリン耐性あるいはアンピシリン耐性を指標として組換体を選択することができる。宿主細胞の形質転換は、例えば、宿主細胞が大腸菌の場合にはHanahanの方法(Hanahan, D. (1983) J. Mol. Biol., 166, 557-580)、すなわちCaCl2やMgCl2またはRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に該組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお、ベクターとしてはプラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターも用いることができる。
【0013】
上記により得られる形質転換株から、目的のロイコトリエンB4受容体のDNAを有する株を選択する方法としては、例えば以下に示す各種方法を採用できる。
▲1▼合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法
本発明のロイコトリエンB4受容体の全部または一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し(この場合コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列または考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列のどちらでもよく、また後者の場合、イノシンを含ませてその種類を減らすこともできる)、これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として、形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルターとハイブリダイズさせ、得られたポジティブ株を検索して、これを選択する。
【0014】
▲2▼ポリメラーゼ連鎖反応により作製したプローブを用いるスクリーニング法
本発明のロイコトリエンB4受容体の一部に対応するセンスプライマーとアンチセンスプライマーのオリゴヌクレオチドを合成し、これらを組合せてPCRを行い、目的のロイコトリエンB4受容体の全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、該ロイコトリエンB4受容体を産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、またはゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNAの断片を32P又は33Pで標識し、これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより目的のクローンを選択する。
【0015】
▲3▼他の動物細胞でのロイコトリエンB4受容体を産生させてスクリーニングする方法
形質転換株を培養し、遺伝子を増幅させ、その遺伝子を動物細胞にトランスフェクトし(この場合、自己複製可能で転写プロモーター領域を含むプラスミドもしくは動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれでもよい)、遺伝子にコードされた蛋白を細胞表面に産生させる。本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体を用いて該受容体を検出することにより、元の形質転換株より目的のロイコトリエンB4受容体をコードするcDNAを有する株を選択する。
【0016】
▲4▼本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体を用いて選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体および該抗体に対する2次抗体を用いて、所望のロイコトリエンB4受容体産生株を検出し、目的の株を選択する。
【0017】
▲5▼本発明のロイコトリエンB4受容体に対するLTB4の結合を指標として選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、標識したLTB4を用いて所望のロイコトリエンB4受容体産生株を検出し、目的株を選択する。
【0018】
▲6▼セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーションの系を用いる方法
形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルター等にブロットし本発明のロイコトリエンB4受容体産生細胞からのmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収されたmRNAを蛋白翻訳系、例えばアフリカツメガエルの卵母細胞への注入や、ウサギ網状赤血球ライゼートや小麦胚芽等の無細胞系で蛋白に翻訳させる。本発明のロイコトリエンB4受容体に対する抗体や標識したLTB4を用いて検出して、目的の株を選択する。
得られた目的の形質転換株より本発明のロイコトリエンB4受容体をコードするDNAを採取する方法は、公知の方法(Maniatis, T. et al.(1982):“ Molecular Cloning-A Laboratory Manual "Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
【0019】
c)第3製造法
配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子は、化学合成法によって製造したDNA断片を結合することによっても製造できる。各DNA断片は、DNA合成機(例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer (Beckman社)、あるいは、394 DNA/RNA Synthesizer (Applied Biosystems社)など)を用いて合成することができる。
【0020】
d)第4製造法
本発明の遺伝子を利用して遺伝子工学的手法により得られる物質が本発明のロイコトリエンB4受容体の機能を発現するためには、必ずしも配列表 配列番号2に示されるアミノ酸配列のすべてを有するものである必要は無く、例えばその一部の配列であっても、あるいは他のアミノ酸配列が付加されていても、それが配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体と同種の活性を示す限り、それらの蛋白質もまた本発明のロイコトリエンB4受容体に包含される。また、一般に真核生物の遺伝子はインターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を示すと考えられ(例えば、Nishi, T. et al. (1985) J. Biochem., 97, 153-159を参照)、この多型現象によって1または複数個のアミノ酸が置換される場合もあれば、ヌクレオチド配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。したがって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の中の1もしくは複数個の部位において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、または挿入されている蛋白質でも配列番号2記載のアミノ酸配列で示されるロイコトリエンB4受容体と同種の活性を有していることがありえる。これらの蛋白質は、本発明のロイコトリエンB4受容体の同効物と呼び、本発明に含まれる。
【0021】
これらの本発明のロイコトリエンB4受容体の同効物をコードする塩基配列を有する遺伝子はすべて本発明に含まれる。このような各種の本発明の遺伝子は、上記本発明のロイコトリエンB4受容体の情報に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller, M. et al.(1984) Nature, 10, 105-111)等の常法に従い、核酸の化学合成により製造することもできる。なお、所望アミノ酸に対するコドンはそれ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる(Crantham, R. et al.(1981) Nucleic Acids Res.,9 r43-r74)。さらに、これら塩基配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用したサイトスペシフィック・ミュータジェネシス(site specific mutagenesis)(Mark, D. F. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666)等に従うことができる。
【0022】
以上、a)乃至d)により得られるDNAの配列決定は、例えばマキサム−ギルバートの化学修飾法(Maxam, A. M. and Gilbert, W. (1980):“ Methods in Enzymology "65, 499-559)やM13を用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing, J. and Vieira, J (1982) Gene, 19, 269-276)等により行うことができる。
【0023】
また、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のロイコトリエンB4受容体は、下記の方法によって得ることができる。
2)本発明のロイコトリエンB4受容体の組み換え蛋白質の製造方法
単離された本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を含む断片は、適当なベクターDNAに再び組込むことにより、真核生物及び原核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに、これらのベクターに適当なプロモーターおよび形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現させることが可能である。
例えば、真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell, 23, 175-182)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216-4220)、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞および同細胞にEpstein Barr VirusのEBNA−1遺伝子を導入した293−EBNA細胞(Invitrogen社製)等がよく用いられているが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列等を有するものを使用でき、これはさらに必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr (Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol., 1, 854-864)、ヒトのelongation factorプロモーターを有するpEF-BOS (Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)、cytomegalovirusプロモーターを有するpCEP4(Invitrogen社製)等を例示できるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自律増殖が可能であり、さらに転写プロモーター、転写終結シグナルおよびRNAスプライス部位を備えたものを用いることができ、例えば、 pME18S、 (Maruyama, K. and Takebe,Y. (1990) Med. Immunol., 20, 27-32)、pEF-BOS (Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)、 pCDM8(Seed, B. (1987) Nature, 329, 840-842) 等が挙げられる。該発現ベクターはDEAE−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res., 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Ed, A. J. (1973) Virology, 52, 456-457)、 FuGENE6(Boeringer Mannheim社製)を用いた方法、および電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al.(1982) EMBO J., 1, 841-845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0025】
また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook, J. et al. (1989): “ Molecular Cloning-A Laboratory Manual "Cold Spring Harbor Laboratory, NY)やpSV2-neo(Southern, P. J. and Berg,P. (1982) J. Mol. Appl. Genet., 1, 327-341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することによりロイコトリエンB4受容体を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞として293−EBNA細胞を用いる場合には、Epstein Barr Virusの複製起点を有し、293−EBNA細胞で自己増殖が可能なpCEP4(Invitrogen社)などの発現ベクターを用いて所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0026】
上記で得られる所望の形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内または細胞表面に本発明のロイコトリエンB4受容体が生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば上記COS細胞であればRPMI-1640培地やダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に必要に応じ牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したものを使用できる。また、上記293−EBNA細胞であれば牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えたものを使用できる。
【0027】
上記により、形質転換体の細胞内または細胞表面に生産される本発明のロイコトリエンB4受容体は、該受容体蛋白質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、それらより分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば受容体蛋白質を含む膜分画を可溶化した後、通常の蛋白沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せ等を例示できる。なお、膜分画は常法に従って得ることができる。例えば本発明のロイコトリエンB4受容体を表面に発現した細胞を培養し、これらをバッファーに懸濁後、ホモジナイズし遠心分離することにより得られる。また、できるだけ緩和な可溶化剤(CHAPS、 Triton X-100、ジキトニン等)でロイコトリエンB4受容体を可溶化することにより、可溶化後も受容体の特性を保持することができる。
【0028】
本発明のロイコトリエンB4受容体はマーカー配列とインフレームで融合して発現させることで、該ロイコトリエンB4受容体の発現の確認、細胞内局在の確認、精製等が可能になる。マーカー配列としては、例えば、FLAG epitope、Hexa-Histidine tag、Hemagglutinin tag、myc epitopeなどがある。また、マーカー配列とロイコトリエンB4受容体の間にエンテロキナーゼ、ファクターXa、トロンビンなどのプロテアーゼが認識する特異的な配列を挿入することにより、マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼにより切断除去する事が可能である。例えば、ムスカリンアセチルコリン受容体とHexa-Histidine tagとをトロンビン認識配列で連結した報告がある(Hayashi, M.K. and Haga, T. (1996) J. Biochem., 120, 1232-1238)
【0029】
3)本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質(化合物、ペプチド及び抗体)のスクリーニング方法
本発明にはロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物,ペプチド及び抗体のスクリーニング法が包含される。該スクリーニング法は、前記により構築されたロイコトリエンB4受容体を用いて、該受容体の生理学的な特性に応じた該受容体の修飾の指標を測定する系に被験薬を添加し、該指標を測定する手段を含む。該測定系は、具体的には、以下のスクリーニング方法が挙げられる。また、被験薬はケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物やペプチド、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett, N.K., et al. (1995) Tetrahedron, 51, 8135-8137)によって得られた化合物群やファージ・ディスプレイ法(Felici, F., et al. (1991) J. Mol. Biol., 222, 301-310)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物などもスクリーニングの対象となる。あるいは本発明のスクリーニング法により選択された化合物またはペプチドを化学的または生物学的に修飾した化合物またはペプチドを用いうる、がそれらに限らない。
【0030】
a)リガンド結合アッセイ法を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体に結合する化合物、ペプチド及び抗体はリガンド結合アッセイ法によりスクリーニングすることができる。該受容体蛋白質を発現させた細胞膜、あるいは該受容体蛋白質精製標品を調製する。緩衝液、イオン、pHのようなアッセイ条件を最適化し、最適化したバッファー中で同受容体蛋白質を発現させた細胞膜、あるいは該受容体蛋白質精製標品を、標識リガンド、例えば[3H]LTB4を被検薬と共に一定時間インキュベーションする。反応後、ガラスフィルター等で濾過し適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標に該受容体蛋白質のアゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体、アンタゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。
【0031】
b) GTPγS結合法を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物、ペプチド及び抗体はGTPγS結合法によりスクリーニングすることが可能である(Lazareno, S. and Birdsall, N.J.M. (1993) Br. J. Pharmacol. 109, 1120-1127)。該受容体を発現させた細胞膜を20 mM HEPES (pH 7.4), 100 mM NaCl, 10 mM MgCl2, 50 mM GDP溶液中で、35Sで標識されたGTPγS 400 pMと混合する。被検薬存在下と非存在下でインキュベーション後、ガラスフィルター等で濾過し、結合したGTPγSの放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。被検薬存在下における特異的なGTPγS結合の上昇を指標に、該ロイコトリエンB4受容体のアゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。また、被検薬存在下における、LTB4によるGTPγS結合上昇の抑制を指標に該受容体蛋白質のアンタゴニスト活性を有する化合物,ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。
【0032】
c)細胞内Ca++およびcAMP濃度の変動を利用したスクリーニング方法
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する化合物、ペプチド及び抗体はロイコトリエンB4受容体を発現させた細胞の細胞内Ca++またはcAMP濃度の変動を利用してスクリーニングすることが可能である。Ca++濃度の測定はfura2、fluo3等を用い、cAMP濃度の測定は市販のcAMP測定キット(Amersham社等)を用いて測定できる。また、Ca++およびcAMP濃度に依存して転写量が調節される遺伝子の転写活性を検出することにより間接的にCa++およびcAMP濃度を測定することが可能である。該受容体を発現させた細胞と受容体を発現させていない宿主細胞(コントロール細胞)に化合物、ペプチド、抗体等を一定時間作用させ、Ca++およびcAMP濃度を直接あるいは間接的に測定する。コントロール細胞と比較して、該受容体を発現させた細胞特異的なCa++の上昇および/またはcAMP濃度の上昇または低下を指標にアゴニスト活性を有する化合物,ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。また、被検薬存在下における、LTB4によるCa++の上昇および/またはcAMP濃度の上昇または低下の阻害作用を指標に該ロイコトリエンB4受容体のアンタゴニスト活性を有する化合物、ペプチド及び抗体をスクリーニングすることができる。好ましくは、実施例3記載の条件で、EC50 =100μM以下の物質を、更に好ましくは、 EC50 =10μM以下の物質をアゴニスト活性を有する物質として、選択することができる。また、実施例3記載のアッセイ条件に被験薬を追加することにより、IC50 =10μM以下の物質を、更に好ましくはIC50 =1μM以下の物質をアンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
【0033】
4)本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体の作成方法
本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、は各種動物に該ロイコトリエンB4受容体や該ロイコトリエンB4受容体の断片を直接投与することで得ることができる。また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子を導入したプラスミドを用いてDNAワクチン法(Raz, E. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9519-9523; Donnelly, J. J. et al. (1996) J. Infect. Dis., 173, 314-320)によっても得ることができる。
ポリクローナル抗体は該受容体蛋白質またはその断片をフロイント完全アジュバントなどの適当なアジュバントに乳濁し、腹腔、皮下また静脈等に免疫して感作した動物、例えばウサギ、ラット、ヤギ、またはニワトリ等の血清または卵から製造される。このように製造された血清または卵からポリクローナル抗体は常法の蛋白質単離精製法により分離精製することができる。そのような方法としては例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、DEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、プロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法が挙げられる。
以上のように分離精製された抗体につき、常法により、ペプシン、パパイン等の蛋白質分解酵素によって消化を行い、引き続き常法の蛋白質単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fvを得ることができる。
【0034】
モノクローナル抗体は、ケーラーとミルスタインの細胞融合法(Kohler, G. and Milstein, C. (1975) Nature, 256, 495-497)により当業者が容易に製造することが可能である。
本発明のロイコトリエンB4受容体またはその断片をフロイント完全アジュバントなどの適当なアジュバントに乳濁した乳濁液を数週間おきにマウスの腹腔、皮下または静脈に数回繰り返し接種することにより免疫する。最終免疫後、脾臓細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製する。
ハイブリドーマを得るためのミエローマ細胞としては、ヒポキサンチンーグアニンーホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損やチミジンキナーゼ欠損のようなマーカーを持つミエローマ細胞、例えば、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8.U1、を利用する。また、融合剤としてはポリエチレングリーコールを利用する。さらにはハイブリドーマ作製における培地として、イーグル氏最小必須培地、ダルベッコ氏変法最小必須培地、RPMI-1640などの通常よく用いられているものに適宜10〜30%の牛胎児血清を加えて用いる。融合株はHAT選択法により選択する。ハイブリドーマのスクリーニングは培養上清を用い、ELISA法、免疫組織染色法などの周知の方法または前記のスクリーニング法により行い、目的の抗体を分泌しているハイブリドーマのクローンを選択する。また、限界希釈法によって、サブクローニングを繰り返すことによりハイブリドーマの単クローン性を保証する。このようにして得られるハイブリドーマは培地中で2〜4日間、あるいはプリスタンで前処理したBALB/c系マウスの腹腔内で10〜20日培養することで精製可能な量の抗体が産生される。
【0035】
このように製造されたモノクローナル抗体は培養上清あるいは腹水から常法の蛋白質単離精製法により分離精製することができる。そのような方法としては例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、DEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、プロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法が挙げられる。また、モノクローナル抗体またはその一部分を含む抗体断片は該抗体をコードする遺伝子の全部または一部を発現ベクターに組み込み、大腸菌、酵母、または動物細胞に導入して生産させることもできる。以上のように分離精製された抗体につき、常法により、ペプシン、パパイン等の蛋白質分解酵素によって消化を行い、引き続き常法の蛋白質単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fvを得ることができる。
【0036】
さらには、本発明のロイコトリエンB4受容体に反応する抗体を、クラクソンらやゼベデらの方法(Clackson, T. et al. (1991) Nature, 352, 624-628; Zebedee, S. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3175-3179)によりsingle chain FvやFabとして得ることも可能である。また、マウスの抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウス(Lonberg, N. et al. (1994) Nature, 368, 856-859)に免疫することでヒト抗体を得ることも可能である。
【0037】
本発明には、該ロイコトリエンB4受容体または前記スクリーニング法により選択された該受容体の活性を有意に修飾する化合物、ペプチド及び抗体を有効成分とする医薬が包含される。
本発明のロイコトリエンB4受容体の活性を有意に修飾する化合物、ペプチド、抗体または抗体断片を有効成分とする製剤は、該有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製されうる。
【0038】
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液剤などによる経口投与、あるいは静注、筋注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、経粘膜投与剤などによる非経口投与が挙げられる。特に胃で消化されるペプチドにあっては静注等の非経口投与が望まれる。
本発明による経口投与のための固体組成物は、一つ又はそれ以上の活性物質が少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤などを含有していてもよい。錠剤や丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆していてもよい。
【0039】
経口のための液体組成物は、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。該組成物は不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含む。水溶性の溶液剤や懸濁剤には、希釈剤として例えば注射用蒸留水、生理用食塩水などが含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等を含む。該組成物はさらに湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤、防腐剤などを含んでいてもよい。組成物は例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、または照射によって無菌化される。また、無菌の固体組成物を製造し、使用に際し無菌水その他の無菌用注射用媒体に溶解し使用することもできる。
投与量は前記スクリーニング法により選択された有効成分の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して適宜決定される。
【0040】
本発明はまた、診断薬としてのロイコトリエンB4受容体をコードするDNAの使用法が包含される。機能障害と関連したロイコトリエンB4受容体遺伝子の変異型の検出は、ロイコトリエンB4受容体の過少発現、過剰発現または変化した発現により生ずる疾患またはその罹病性の診断に利用される。診断用のDNAは、被験者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料から得ることができる。欠失および挿入変異は、正常な遺伝子型と比較したときの増幅産物のサイズの変化により検出できる。点突然変異は増幅DNAを標識ロイコトリエンB4受容体ヌクレオチドとハイブリダイズさせることで同定できる。完全にマッチした配列とミスマッチの二重鎖とはRNアーゼ消化により、または融解温度の差異により区別できる。また、DNA配列の差異は、変性剤を用いるまたは用いないゲルでのDNA断片の電気泳動の移動度の変化により、または直接DNA配列決定によっても検出できる(Myers, R. M. et al. (1985) Science. 230, 1242-1246)。特定位置での配列変化はヌクレアーゼプロテクションアッセイ(例えば、RNアーゼおよびS1プロテクション)または化学的開裂法によっても確認できる(Cotton et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397-4401)。また、ロイコトリエンB4受容体のヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築することができる。このアレイ技法は公知で、遺伝子発現、遺伝的連鎖および遺伝的変異性を解析するために用いられている(Chee, M. et al. (1996) Science, .274, 610-613)。さらに、被験者から得られたサンプルからのロイコトリエンB4受容体のレベルの異常な低下または増加を測定する方法により、ロイコトリエンB4受容体の過少発現、過剰発現または変化した発現により生ずる疾患またはその罹病性の診断に利用される。発現の低下または増加は、当業者で公知のポリヌクレオチド定量法のいずれか、例えばPCR、RT−PCR、RNアーゼプロテクション、ノーザンブロット、その他のハイブリダイゼーション法によりRNAレベルで測定することができる。また、被験者から得られたサンプル中のロイコトリエンB4受容体のような蛋白質のレベルの低下または増加は当業者で公知のアッセイ法により測定できる。こうしたアッセイ法として、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット法、ELISAアッセイなどがある。
【0041】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述するが,本発明は該実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(Maniatis, T. at al. (1982) : "Molecular Cloning - A Laboratory Manual" Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従って実施可能である。
【0042】
(実施例1)新規受容体JULF2をコードする遺伝子の単離
本発明の新規受容体(以下JULF2とする)をコードする全長cDNAは、ヒトゲノムDNA(Clontech社製)をテンプレート(template)としてPCRにより取得した。配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマー(forward primer)として、配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドをリバースプライマー(reverse primer)として用いた(それぞれの5'末端にはXbaI siteが付加してある)。PCRはPfu DNA polymerase(Stratagene社製)を用い、5% DMSO存在下で98 ℃ (20秒)/58 ℃(30秒)/74 ℃(3分)のサイクルを34回繰り返した。その結果、約1.0 kbpのDNA断片が増幅された。この断片をXbaIで消化した後、pEF-BOS plasmid(Mizushima, S. and Nagata, S. (1990) Nucleic Acids Res., 18, 5322)を用いてクローニングした。得られたクローンの塩基配列はジデオキシターミネーター法によりABI377 DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)を用いて解析した。明らかになった配列を配列番号1に示す。
配列番号1で示される塩基配列は1077 baseのORFを持っている。ORFから予測されるアミノ酸配列(358アミノ酸)を配列番号2に示す。予想アミノ酸配列は、G蛋白共役型受容体の特徴である7個の膜貫通ドメインと思われる疎水性領域を有していることから、本JULF2遺伝子がG蛋白共役型受容体をコードすることが判った。
【0043】
(実施例2)組織におけるヒト新規JULF2遺伝子の発現分布
ノーザン ブロット ハイブリダイゼーション法によりJULF2遺伝子の発現分布を解析した。ヒトJULF2のプローブにはcDNA断片(配列番号:1の第22番目から第615番目)を用いた。ヒトの各臓器由来のpoly A+ RNA(2 μg)をブロットしたメンブレン(Clontech社製)とプローブのハイブリダイゼーションは50% ホルムアミド(formamide)、5x SSPE、10 x Denhardt's溶液、2% SDS、100 μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃(18時間)で行った。メンブレンは、最終的に0.2 x SSC、0.1% SDSを含む溶液で2回(65℃、30分)洗浄した。
ヒトの各臓器(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球、胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管、副腎、骨髄)についてNorthern解析を行ったところ、図1、図2および図3に示すように約2.5 kbのmRNAが脾臓、末梢血白血球、副腎、骨髄、気管、甲状腺、卵巣、リンパ節で強く検出され、膵臓、心臓、脊髄でも若干シグナルが検出された。また、末梢血白血球では3.5 kbと5 kbと9.5 kbのmRNAが発現しており、特に5 kbのmRNAは脾臓、骨髄、副腎で強く検出された。さらに、6.5 kbのmRNAは気管にのみ特異的に検出された。本発明のG蛋白質共役型レセプターヒトJULF2遺伝子は少なくとも5種類大きさのmRNAがヒト組織の広範に発現していることがわかった。以上のことから、既存のBLT受容体が末梢血白血球にのみ発現しているのに対し、本発明のJULF2は脾臓、末梢血白血球、骨髄をはじめ、広範に遺伝子発現が確認されたことから、LTB4に起因する広範な生理作用に重要な役割を担っている可能性が示唆された。さらに、BLT受容体が脾臓で殆ど遺伝子発現が認められず、本発明JULF2で脾臓で遺伝子発現が観察されることは、JULF2は単核球(リンパ球、単球)を含む血球細胞全般に発現している可能性が示唆される。
【0044】
(実施例2−1)血球細胞におけるヒト新規JULF2遺伝子の発現分布
健常人ボランティアよりヘパリン採血し、6% デキストラン/生理食塩水を1/3量加えて室温にて1時間放置した。上清を取り、150 x gで5分遠心処理後、沈査をHunk's Balanced Solt Solution (HBSS)に懸濁した。これを等量のFicoll (Pharmacia社)に重層し、400 x gで30分遠心処理を行った。中間層を単核球画分、沈査を多核白血球として分取した。多核白血球は、CD16マイクロビーズ(第一化学薬品社製)を加え、磁器スタンドにて好中球画分と好酸球分画に分離した。単核球画分、好中球画分、好酸球画分のそれぞれは生理食塩水にて洗浄後、isogen(日本ジーン社製)を用いてtotal RNAを精製した。各分画由来のtotal RNA 5 μgをDNase(Nippon Gene社製)を用い37 ℃で15分反応させた。DNase処理したtotal RNAをスーパースクリプト ファーストストランドシステム(RT-PCR用)(GIBCO社製)にてcDNA変換した。
JULF2の発現分布は上記血球画分のcDNAを鋳型として、primerセットは配列番号5で示されるオリゴヌクレオチドと配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドを用いた。PCRはpfu DNA polymerase(Stratagene社製)を用い5% DMS0存在下で98 ℃(20秒)/60 ℃(30秒)/74 ℃(2分)のサイクルを35回繰り返した。また、内部標準としては上記のヒトの各臓器のcDNAを鋳型として、Human G3PDH Control Amplimer Set(Clontech社製)を用いて、同条件のPCRを行った。また、ゲノムDNAの混入を確認するために、cDNA変換を行わなかったtotal RNA(RT(-))を対象においた。反応産物は1%アガロースゲルにて電気泳動して解析した(図5)。JULF2の約400bpの増幅産物は健常人A、Bともに各血球画分で検出されたが、とりわけ単核球でよく検出された。
BLTは好中球に多く発現していると考えられているのに対し、JULF2は単核球でよく検出されていたことから、ロイコトリエンB4に起因する炎症性疾患のなかでも慢性疾患にJULF2がより関与していることが示唆された。
【0045】
(実施例3)CHO細胞によるJULF2の発現とLTB4によるcAMP産生阻害実験
ヒトJULF2を発現させるための発現ベクターとしてpEF-BOSを用いた。構築したプラスミドをpEF-BOS-Jul22とした。
10cmシャーレにCHO-dhfr(-)株を1x106細胞でαMEM(核酸存在)培地を用いて播種し1日培養後、8μgのpEF-BOS-Jul22およびpEF-BOS(空ベクター)をFuGENE6(Boeringer Mannheim社製)を用いて遺伝子導入した。24時間後、遺伝子導入した細胞を回収し、αMEM(核酸非存在)培地/100 nM Methotrexate(和光純薬社製)に懸濁後、段階希釈して10cmシャーレに播き直した。2週間後に出現したコロニーを個別に取得し、JULF2発現細胞とした。
【0046】
JULF2発現CHO細胞と空ベクター導入CHO細胞を24ウェルプレートに1x105細胞で播種した。1日培養後、αMEM(核酸非存在)培地/1 mM 3-isobutyl-1-methlxanthine (Sigma社製)/0.1% BSAで10分間処理した後、1μMフォルスコリン (和光純薬社製)/LTB4 0〜1 μMを滴下した。37 ℃で30分後に培養上清を除去し、cAMP EIAシステム(BIOTRAK; アマシャム社製)細胞溶解液を用いて細胞を溶解した。
各条件における細胞のcAMP産生量の測定はcAMP EIAシステムを用いて行い、添付プロトコールに従って実施した。1 μM フォルスコリン単独刺激でのcAMP産生量を100%とし、LTB4共存下でのcAMP量の用量依存曲線を作製した(図4)。用量依存曲線から、JULF2に対するLTB4の応答性は EC50 = 10 nM以下であった。一方、空ベクター導入CHO細胞ではLTB4添加によるcAMP産生量に変化は見られなかった。さらに、JULF2発現CHO細胞のフォルスコリン刺激によるcAMP産生量がLTB4によって抑制されたことから、JULF2が細胞内三量体G蛋白のうちGαiと共役していることが示唆された。
【0047】
(実施例4)JULF2発現CHO細胞のLTB4による細胞遊走実験
8μm ポア ポリカーボネト フレームフィルター(Neuroprobe社製)を10μg/mlフィブロネクチン(旭テクノグラス社)/PBSにて4 ℃で一晩処理した。96 blindウェルチャンバー(Neuroprobe社製)の下層にLTB4 0〜1 μMを入れ、フィブロネクチン処理したフレームフィルターをセットし、JULF2発現CHO細胞と空ベクター導入CHO細胞をαMEM(核酸非存在)培地/0.1% BSAで懸濁後、2x105細胞でチャンバー上層に播種した。37 ℃ CO2インキュベーターにて4時間培養後、フレームフィルターをメタノールにて固定し、Diff-Quik染色キット(国際試薬株式会社)にて染色した。このフィルターの上層面(細胞をのせた側)を拭き取り、風乾後、プレートリーダー(Molecular Devices社)で595 nmの吸光度を測定した。また、JULF2発現CHO細胞のpertussis toxin (PTX)感受性を検討するため、50 ng/ml PTXにて20時間処理したJULF2発現CHO細胞を細胞遊走実験に供した(図6)。JULF2発現CHO細胞はLTB4によりフィルター下層へと遊走することが観察された。細胞遊走は、30 nM濃度のLTB4に対して遊走活性が最大となり、さらに高濃度では遊走活性が抑制されるというベル型の走化性を示した。この反応はPTX前処理によって完全に阻害されたことから、JULF2を介する細胞遊走にはGai様のG蛋白が関与することが強く示唆された。
【0048】
以上のように、本発明のロイコトリエンB4受容体は、これまでその存在が示唆されながら実体が不明であったLTB4に親和性を持つ新たな受容体であり、本ロイコトリエンB4受容体で形質転換した細胞を用いることで初めて結合実験および拮抗薬のスクリーニングが可能となった。
【0049】
【発明の効果】
本発明は新規なヒトのロイコトリエンB4受容体を提供することにある。本発明の受容体はヒトのロイコトリエンB4に起因する疾患、例えば炎症性疾患(気管支炎や皮膚炎、乾せん、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、浮腫)の予防及び/または治療剤としての該受容体の活性を修飾する物質の探索及び評価に有用であり、該受容体の関与する疾患に対する治療薬を提供することができる。また、本発明のロイコトリエンB4受容体をコードする遺伝子はロイコトリエンB4受容体の製造に利用されるのみならず、ロイコトリエンB4受容体の変異や異常な発現変動に起因する疾患の診断に有用である。該受容体のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は該受容体作動薬,診断薬又はポリペプチドの分離精製の手段等に有用である。
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓)の結果を示す。
【図2】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球)の結果を示す。
【図3】ノーザン解析によるロイコトリエンB4受容体の組織分布(胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管、副腎、骨髄)の結果を示す。
【図4】ロイコトリエンB4受容体に対するLTB4のcAMP発現抑制作用の結果を示す。
【図5】RT-PCR解析によるロイコトリエンB4受容体の血球発現分布(単核球、好中球、好酸球)の結果を示す。
【図6】LTB4のによるロイコトリエンB4受容体発現CHO細胞の細胞遊走実験の結果を示す。
【0051】
【配列表】
Claims (7)
- 配列番号2記載のアミノ酸配列を有するロイコトリエンB4受容体、あるいは、該受容体の同効物であるロイコトリエンB4受容体。
- 請求項1記載のロイコトリエンB4受容体のアミノ酸配列をコードする遺伝子。
- 請求項2記載の遺伝子を含むベクター。
- 請求項3記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項4記載の宿主細胞を用いることを特徴とする、請求項1に記載のロイコトリエンB4受容体の製造方法。
- 請求項1記載のロイコトリエンB4受容体に結合する抗体。
- 請求項1記載のロイコトリエンB4受容体と被験化合物とを接触させることを特徴とする、当該ロイコトリエンB4受容体の活性を修飾する物質をスクリーニングする方法。
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