JP2005282854A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】 転がり軸受の更なる長寿命化及び低コスト化を図る。
【解決手段】 一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、前記転動体の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該転動体の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、前記転動体の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該転動体の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受に関し、特に自動車、農業機械、建設機械、鉄鋼機械等の変速機やエンジン、減速機等に用いられる玉軸受に関する。
玉軸受の転動体及び内外輪の材料として、一般にSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼鋼材が良く使用されている。これらの材料は、通常、焼入れ、焼戻し処理が施すことで、硬さをHRC58〜62程度に硬化させ、必要な疲労寿命を確保している。
このような軸受鋼からなる転がり軸受の定格疲れ寿命は、玉軸受であれば、L=(C/P)3 、ころ軸受であれば、L=(C/P)10/3(ここで、L:定格疲れ寿命、C:基本動定格荷重、P:軸受荷重)で示される。
このような軸受鋼からなる転がり軸受の定格疲れ寿命は、玉軸受であれば、L=(C/P)3 、ころ軸受であれば、L=(C/P)10/3(ここで、L:定格疲れ寿命、C:基本動定格荷重、P:軸受荷重)で示される。
近年、製鋼技術の飛躍的進歩によって、鋼の清浄度が格段に向上したことによって、清浄な油浴潤滑下で、上記定格疲れ寿命(計算寿命)を満足することなく早期に転がり疲れによるフレーキングが生じて不具合が発生することは殆どなくなっているが、転がり軸受は、実際には、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ及び摩耗粉等が混入したり、劣悪な潤滑環境下で使用される場合も多く、このような場合には、上記定格疲れ寿命(計算寿命)を満足できずに、早期にフレーキングが発生する場合がある(以下、清浄な油浴潤滑下において、介在物等を起点として生じるフレーキングを内部起点型フレーキング、潤滑油中の異物や劣悪な潤滑環境下で、表面を起点として生じるフレーキングを表面起点型フレーキングと称する) 。
そこで、従来においては、浸炭等の熱処理により、低中炭素低合金鋼表面に球状炭化物を析出させることで、軌道輪や転動体の表面硬さを向上させ、表面起点型フレーキングに対する寿命改善を目的とした技術が開示されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
しかしながら、このように、軌道輪及び転動体の表面硬さを向上すると、異物による圧痕のつき方は軽微になるが、その反面、軌道輪及び転動体の靭性が乏しくなり、潤滑油中に存在する異物により引き起こされる損傷箇所からクラックが発生し、それが起点となって早期にフレーキングが発生する場合があり、寿命を改善するためには、その効果が不十分であった。
しかしながら、このように、軌道輪及び転動体の表面硬さを向上すると、異物による圧痕のつき方は軽微になるが、その反面、軌道輪及び転動体の靭性が乏しくなり、潤滑油中に存在する異物により引き起こされる損傷箇所からクラックが発生し、それが起点となって早期にフレーキングが発生する場合があり、寿命を改善するためには、その効果が不十分であった。
そこで、表面層の残留オーステナイト量と硬さ、あるいは炭窒化物の含有量等を適正値にすることで、異物の噛み込みにより生じる圧痕縁における応力の集中を緩和し、表面起点型フレーキングに対して寿命向上を図ったものが開示されている(例えば特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照)。
また、潤滑油中の異物による表面損傷とフレーキング発生メカニズム、及び残留オーステナイトによる圧痕縁の応力集中低減効果と寿命延長効果等については、下記文献(例えば非特許文献1参照)に詳細に報告されており、現在の表面起点型はくり寿命に対する長寿命化技術の基礎となっている。
特公昭62−24499号公報
特開平2−34766号公報
特開昭64−55423号公報
特開平4−26752号公報
特開平5−78814号公報
ASTM−STP1195(1993)P199−210 TheDevelopment of Bearing Steels for Long Llfe Rolling Bearings Under Clean Lubrication
また、潤滑油中の異物による表面損傷とフレーキング発生メカニズム、及び残留オーステナイトによる圧痕縁の応力集中低減効果と寿命延長効果等については、下記文献(例えば非特許文献1参照)に詳細に報告されており、現在の表面起点型はくり寿命に対する長寿命化技術の基礎となっている。
ところで、省エネルギーを目的として輪送機器や構造物の軽量化や鉄鋼材料の更なる高強度化が求められていることに加え、装置の高性能化や低トルク化等を背景とした潤滑環境の過酷化等もあって、これらの装置等に組み込まれる転がり軸受の更なる長寿命化のニーズが高まっており、また、近年の価格競争を背景として、一層のコストダウンが求められている。
本発明はこのような技術的要請を鑑みてなされたものであり、更なる長寿命化及び低コスト化を図ることができる転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明はこのような技術的要請を鑑みてなされたものであり、更なる長寿命化及び低コスト化を図ることができる転がり軸受を提供することを目的とする。
上述したように、異物混入潤滑下における転がり軸受の寿命低下は、これまで異物の噛み込みによって形成された圧痕縁の盛り上がり部における応力集中が原因とされ、従来の長寿命化技術は、軌道面もしくは転動面を硬くして、圧痕そのものを形成させ難くすると同時に、圧痕が形成された場合であっても、圧痕縁の盛り上がり部における残留オーステナイトの応力集中軽減効果を最大限活用することによって、長寿命化を図るというものであった。
また、従来においては、軌道輪の軌道面表面に前記特性を備えさせ、且つ必要硬化層深さを満足するように長時間の浸炭もしくは浸炭窒化処理を行なわなければならず、一般の軸受鋼製の転がり軸受よりも大幅なコストアップが余儀無くされていた。
そこで、本発明者らは、前記盛り上がり部における応力集中により疲労は進行するのであるが、最終的に、圧痕縁からクラックが発生、伝播するための駆動力は、転動体と盛り上がり部との間に生じる接線力であると考え、圧痕縁での接線力を低減できれば、クラック発生、伝播を結果的に遅延させることができ、長寿命化が図れるとの知見を得、かかる知見に基づいて鋭意検討を行なった。
そこで、本発明者らは、前記盛り上がり部における応力集中により疲労は進行するのであるが、最終的に、圧痕縁からクラックが発生、伝播するための駆動力は、転動体と盛り上がり部との間に生じる接線力であると考え、圧痕縁での接線力を低減できれば、クラック発生、伝播を結果的に遅延させることができ、長寿命化が図れるとの知見を得、かかる知見に基づいて鋭意検討を行なった。
その結果、例えば、Siを0.5重量%以上2.0重量%以下を含有する鋼に、表面窒素濃度が0.5重量%以上となるように浸炭窒化処理された転動体を用い、軌道輪と転動体との摩擦を低減させることによって、クラックの発生、伝播が遅延して転がり軸受の長寿命化が図れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、
前記転動体の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該転動体の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%としたことを特徴とする。
即ち、上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、
前記転動体の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該転動体の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%としたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、
前記転動体の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.4〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ該転動体の表面に、窒素濃度:0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量:5〜20体積%の浸炭窒化層を形成したことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記転動体の表面粗さを0.03μmRa以下としたことを特徴とする。
前記転動体の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.4〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ該転動体の表面に、窒素濃度:0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量:5〜20体積%の浸炭窒化層を形成したことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記転動体の表面粗さを0.03μmRa以下としたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2又は3において、前記浸炭窒化層が、400〜1200MPaの圧縮残留応力とHv820以上の表面硬さを有することを特徴とする。
請求項4に係る発明では、例えば、Siを0.4〜2.0重量%を含有する鋼に、表面窒素濃度が0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量を5〜20体積%とすると共に、400〜1200MPaの圧縮残留応力とHv820以上の表面硬さを有する浸炭窒化層を形成した転動体を用いることによって、軌道輪の軌道面に形成された圧痕縁を起点としたクラックの発生、伝播が遅延するとともに、転動体自身の寿命も十分に確保でき、結果として、長寿命化が図ることができる。
請求項4に係る発明では、例えば、Siを0.4〜2.0重量%を含有する鋼に、表面窒素濃度が0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量を5〜20体積%とすると共に、400〜1200MPaの圧縮残留応力とHv820以上の表面硬さを有する浸炭窒化層を形成した転動体を用いることによって、軌道輪の軌道面に形成された圧痕縁を起点としたクラックの発生、伝播が遅延するとともに、転動体自身の寿命も十分に確保でき、結果として、長寿命化が図ることができる。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記軌道輪の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.15〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%、Mo:0〜2.0%、V:0〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ軌道面表面に、残留オーステナイト量:20〜40体積%の浸炭窒化層を形成したことを特徴とする。
請求項5に係る発明では、軌道輪表面に20〜40体積%の残留オーステナイト量の浸炭窒化層を形成することにより、前述した圧痕縁における応力集中軽減効果との相乗効果によって、これまでにない寿命延長効果を得ることができる。
請求項5に係る発明では、軌道輪表面に20〜40体積%の残留オーステナイト量の浸炭窒化層を形成することにより、前述した圧痕縁における応力集中軽減効果との相乗効果によって、これまでにない寿命延長効果を得ることができる。
本発明によれば、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ及び摩耗粉等が混入したり、劣悪な潤滑魔境下で使用された場合に、定格疲れ寿命(計算寿命)よりも短時間に発生する表面起点型フレーキングに対して、転動体の摩擦特性を改善することによって、接線力による応力集中部からのクラックの発生、伝播を遅延させるとともに、転動体自身も強化させているので、転動体を変更するのみで容易に転がり軸受の長寿命化を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態では、転がり軸受として玉軸受を例に採るが、これに限定されるものではない。
本発明の実施の形態の一例である玉軸受は、内輪と外輪との間に転動体としての複数の鋼球が周方向に転動自在に配設されたものである。
ここで、鋼球の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該鋼球の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%としている。具体的には、鋼球の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.4〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ該鋼球の表面に、窒素濃度:0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量:5〜20体積%の浸炭窒化層を形成している。また、鋼球の表面粗さは0.03μmRa以下とされている。
本発明の実施の形態の一例である玉軸受は、内輪と外輪との間に転動体としての複数の鋼球が周方向に転動自在に配設されたものである。
ここで、鋼球の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該鋼球の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%としている。具体的には、鋼球の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.4〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ該鋼球の表面に、窒素濃度:0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量:5〜20体積%の浸炭窒化層を形成している。また、鋼球の表面粗さは0.03μmRa以下とされている。
これにより、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ及び摩耗粉等が混入したり、劣悪な潤滑魔境下で使用された場合に、定格疲れ寿命(計算寿命)よりも短時間に発生する表面起点型フレーキングに対して、鋼球の摩擦特性が改善されて、接線力による応力集中部からのクラックの発生、伝播を遅延させることができるとともに、鋼球自身も強化されるので、既存の玉軸受に対して鋼球を変更するのみで容易に玉軸受の長寿命化を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
以下、詳述する。
転動体表面の摩擦抵抗を低減すると、圧痕縁における接線力が低減し、クラックの発生、伝播を遅延させる効果があり、転動体を変えるだけで、軌道輪に発生するフレーキング寿命を改善できる効果がある。摩擦抵抗が鋼球より小さいものの代表例として、セラミックス球があるが、セラミックス球の場合、コストが大幅に高くなるだけでなく、そのヤング率が鋼球の場合に比較して著しく大きいため、圧痕縁での応力集中がかえって大きくなり、寿命を低下させる場合がある。
転動体表面の摩擦抵抗を低減すると、圧痕縁における接線力が低減し、クラックの発生、伝播を遅延させる効果があり、転動体を変えるだけで、軌道輪に発生するフレーキング寿命を改善できる効果がある。摩擦抵抗が鋼球より小さいものの代表例として、セラミックス球があるが、セラミックス球の場合、コストが大幅に高くなるだけでなく、そのヤング率が鋼球の場合に比較して著しく大きいため、圧痕縁での応力集中がかえって大きくなり、寿命を低下させる場合がある。
また、摩擦抵抗だけ低くしても、表面層の残留オーステイト量が十分に確保されていないと、転動体にフレーキングが発生しやすくなるため、上記摩擦抵抗に加え、転動体表面層には、少なくとも5体積%以上、好ましくは8体積%以上の残留オーステナイト量の確保が必要である。
残留オーステナイト量は、多いほど、転動体に発生する圧痕縁を起点としたフレーキングは生じにくくなるが、多すぎると、かえって耐疲労性が低下したり、摩擦特性が低下して、転動体の低摩擦抵抗化による寿命延長効果が得られなくなる場合がある。そこで、本発明においては、転動体表面層の残留オーステナイト量は5〜20体積%、好ましくは、8〜20体積%とする。
残留オーステナイト量は、多いほど、転動体に発生する圧痕縁を起点としたフレーキングは生じにくくなるが、多すぎると、かえって耐疲労性が低下したり、摩擦特性が低下して、転動体の低摩擦抵抗化による寿命延長効果が得られなくなる場合がある。そこで、本発明においては、転動体表面層の残留オーステナイト量は5〜20体積%、好ましくは、8〜20体積%とする。
また、転動体に十分な疲れ寿命と高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも良好な摩擦特性(低摩擦抵抗)を付与するため、後述する鋼を浸炭窒化処理し、表面層の窒素濃度を0.5重量%以上、且つ、残留オーステナイト量を5〜20体積%とした鋼球を用い、また、表面粗さを0.3μmRa以下としている。
一般に、転動体には、軸受鋼を焼入れ、焼戻し処理した鋼球が使用されるが、潤滑油中に異物を含む劣悪な環境下で軸受が使用される場合には、外輪、内輪だけを浸炭窒化処理することにより強化しても、鋼球にフレーキングが発生し、結果として、軸受寿命が改善されない場合もある。そこで、異物混入潤滑下での寿命対策として、内輪、外輪だけでなく、軸受鋼を浸炭窒化処理によって強化し、表面層の残留オーステナイト量を20〜40体積%程度とした鋼球等が使用されている。
一般に、転動体には、軸受鋼を焼入れ、焼戻し処理した鋼球が使用されるが、潤滑油中に異物を含む劣悪な環境下で軸受が使用される場合には、外輪、内輪だけを浸炭窒化処理することにより強化しても、鋼球にフレーキングが発生し、結果として、軸受寿命が改善されない場合もある。そこで、異物混入潤滑下での寿命対策として、内輪、外輪だけでなく、軸受鋼を浸炭窒化処理によって強化し、表面層の残留オーステナイト量を20〜40体積%程度とした鋼球等が使用されている。
しかしながら、表面層の残留オーステナイト量を20〜40体積%程度とした鋼球は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼球と比較して、摩擦抵抗はほぼ同等であり、軌道輪を浸炭もしくは浸炭窒化処理等によって強化しなければ、軌道輪のフレーキング寿命そのものを改善する効果はない。
一般に、異物混入潤滑下で生じるフレーキングは、内外輪及び転動体が同じ材料で形成されている場合、鋼球よりも軌道輪に発生しやすく、軸受寿命は軌道輪の寿命に律速される傾向にある。そこで、これまでは残留オーステナイトによる応力集中軽減効果を有効活用することで、主として軌道輪についての寿命改善が図られてきた。
一般に、異物混入潤滑下で生じるフレーキングは、内外輪及び転動体が同じ材料で形成されている場合、鋼球よりも軌道輪に発生しやすく、軸受寿命は軌道輪の寿命に律速される傾向にある。そこで、これまでは残留オーステナイトによる応力集中軽減効果を有効活用することで、主として軌道輪についての寿命改善が図られてきた。
本発明者等は、先に述べたように、さらに優れた寿命延長効果を、前述の残留オーステナイトによる応力集中軽減効果に加えて、圧痕縁に作用する接線力を低減させることで達成し得ないか鋭意検討した。
軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力を低減する手法として、(1)軸受動作条件、(2)軸受内部緒言、(3)潤滑油の変更が考えられるが、これらは、各アプリケーションに求められる必要性能を満足するために決定されるべきものであり、場合によっては、装置自身の性能や耐久性を制約してしまうという問題がある。
軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力を低減する手法として、(1)軸受動作条件、(2)軸受内部緒言、(3)潤滑油の変更が考えられるが、これらは、各アプリケーションに求められる必要性能を満足するために決定されるべきものであり、場合によっては、装置自身の性能や耐久性を制約してしまうという問題がある。
この他に、軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力を低減する手法として、(4)低摩擦特性を有する鋼球を使用すること等が考えられる。この場合、軸受の回転性能が向上するのは言うまでも無い。
そこで、本発明者等は、(4)低摩擦特性を有する鋼球を使用して軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力を低減する手法に着目し、主として転動体の材料面からアプローチした。
そこで、本発明者等は、(4)低摩擦特性を有する鋼球を使用して軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力を低減する手法に着目し、主として転動体の材料面からアプローチした。
その結果、少なくともSiを0.4重量%以上含む鋼に、浸炭窒化処理を行ない、表面に微細な窒化物あるいは炭窒化物を多量に析出させるとともに、表面硬さHv820以上とし、さらに、表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%とすることで、転動体表面層の摩擦・摩耗特性を向上させるとともに、転動体に圧痕を形成させ難くし、さらに、残留オーステナイトの分解に伴なう転動体表面の形状崩れを極力防止することで、軌道輪の軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力の増大を効果的に防止できてクラックの発生、伝播を遅延させることができることを見出した。
また、転動体の材料には、従来の軸受鋼よりも耐疲労性に優れる材料を用い、且つその表面には、400〜1200MPaの圧縮残留応力をもった浸炭窒化層を形成することで、転動体自身の寿命も十分確保でき、結果として軸受寿命を大幅に向上させることが可能であるとの知見に至った。
さらに、軌道輪に所定の材料を用い、その軌道面表面に、残留オーステナイト量が20〜40体積%である浸炭窒化層を形成することによって、より一層の寿命延長効果が得られることを知見した。
さらに、軌道輪に所定の材料を用い、その軌道面表面に、残留オーステナイト量が20〜40体積%である浸炭窒化層を形成することによって、より一層の寿命延長効果が得られることを知見した。
そこで、本発明においては次のような材料組成とする。
[C:0.3〜1.2重量%(転動体、内外輪)]
炭素は、鋼に必要な強度と寿命を得るために必要な元素であるが、これが少なすぎると、十分な強度が得られないだけでなく、後述する浸炭窒化処理の際に、必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなり、熱処理コストの増大につながる。そのため、炭素含有量は0.3重量%以上、好ましくは、0.8重量%以上とする。
また、逆に、炭素含有量が多すぎると、製鋼時に巨大炭化物が生成され、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与えたり、ヘッダー性が低下してコストの上昇を招く虞れがあるため、上限を1.2重量%とする。なお、軌道輪の場合は、高い心部靱性が求められるため、好ましくは0.3〜0.6重量%とし、転動体の場合は、好ましくは0.6〜1.2重量%とする。
[C:0.3〜1.2重量%(転動体、内外輪)]
炭素は、鋼に必要な強度と寿命を得るために必要な元素であるが、これが少なすぎると、十分な強度が得られないだけでなく、後述する浸炭窒化処理の際に、必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなり、熱処理コストの増大につながる。そのため、炭素含有量は0.3重量%以上、好ましくは、0.8重量%以上とする。
また、逆に、炭素含有量が多すぎると、製鋼時に巨大炭化物が生成され、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与えたり、ヘッダー性が低下してコストの上昇を招く虞れがあるため、上限を1.2重量%とする。なお、軌道輪の場合は、高い心部靱性が求められるため、好ましくは0.3〜0.6重量%とし、転動体の場合は、好ましくは0.6〜1.2重量%とする。
[Si:0.4〜2.0重量%(転動体)、0.15〜2.0重量%(内外輪)]
Siは、製鋼時に脱酸剤として必要であるだけでなく、基地マルテンサイトを強化するとともに、焼戻し軟化抵抗性を高め、疲労寿命を延長するのに極めて有効な元素である。また、浸炭窒化層の諸特性を満足するための、表面窒素濃度や残留オーステナイト量等をバランス良く確保するためには、なくてはならない必須元素である。その効果を十分に発揮させるためには、軌道輪については、少なくとも0.15重量%以上、好ましくは0.2重量%以上が必要である。特に、転動体においては、表面層に微細な窒化物を多量に析出させるためにはなくてはならない元素であり、転動体の場合には、0.4重量%以上とする。
一方、Siは含有量が多すぎると、ヘッダー性、被削性等を低下させるだけでなく、浸炭窒化処理特性が低下して十分な硬化層深さや窒素拡散深さを確保できなくなる場合があり、完成品鋼球においては、後述する所定の表面品質が得られない場合があるため、上限を2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下とする。
Siは、製鋼時に脱酸剤として必要であるだけでなく、基地マルテンサイトを強化するとともに、焼戻し軟化抵抗性を高め、疲労寿命を延長するのに極めて有効な元素である。また、浸炭窒化層の諸特性を満足するための、表面窒素濃度や残留オーステナイト量等をバランス良く確保するためには、なくてはならない必須元素である。その効果を十分に発揮させるためには、軌道輪については、少なくとも0.15重量%以上、好ましくは0.2重量%以上が必要である。特に、転動体においては、表面層に微細な窒化物を多量に析出させるためにはなくてはならない元素であり、転動体の場合には、0.4重量%以上とする。
一方、Siは含有量が多すぎると、ヘッダー性、被削性等を低下させるだけでなく、浸炭窒化処理特性が低下して十分な硬化層深さや窒素拡散深さを確保できなくなる場合があり、完成品鋼球においては、後述する所定の表面品質が得られない場合があるため、上限を2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下とする。
[Mn:0.2〜2.0重量%(転動体、内外輪)]
Mnは、Siと同様に、脱酸剤としての働きがある他、焼入れ性を向上させたり、また、転がり寿命に有効な残留オーステナイトの生成を促進させる作用があり、0.2重量%以上必要である。
一方、Mnは含有量が多すぎると、被削性、ヘッダー性を低下させるだけでなく、熱処理後においては、多量の残留オーステナイトが生成して、かえって耐疲労性が低下して良好な寿命が得られなくなる場合もあるため、上限を2.0重量%以下、好ましくは0.7重量%以下とする。なお、転動体においては、後述するように多量の残留オーステナイトが残存する場合には、寿命改善効果が低下するため、好ましくは1.2重量%以下とする。
Mnは、Siと同様に、脱酸剤としての働きがある他、焼入れ性を向上させたり、また、転がり寿命に有効な残留オーステナイトの生成を促進させる作用があり、0.2重量%以上必要である。
一方、Mnは含有量が多すぎると、被削性、ヘッダー性を低下させるだけでなく、熱処理後においては、多量の残留オーステナイトが生成して、かえって耐疲労性が低下して良好な寿命が得られなくなる場合もあるため、上限を2.0重量%以下、好ましくは0.7重量%以下とする。なお、転動体においては、後述するように多量の残留オーステナイトが残存する場合には、寿命改善効果が低下するため、好ましくは1.2重量%以下とする。
[Cr:0.5〜2.0重量%(転動体、内外輪)]
Crは、基地に固溶して焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性などを高めるとともに、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用がある。その効果を出すためには少なくとも0.5重量%以上、好ましくは1.3重量%以上必要であるが、2.0重量%を超えると、製鋼過程で巨大炭化物が生成して、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与えたり、ヘッダー性や被削性が低下するため、その上限は、2.0重量%以下、好ましくは1.6重量%以下とする。
Crは、基地に固溶して焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性などを高めるとともに、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用がある。その効果を出すためには少なくとも0.5重量%以上、好ましくは1.3重量%以上必要であるが、2.0重量%を超えると、製鋼過程で巨大炭化物が生成して、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与えたり、ヘッダー性や被削性が低下するため、その上限は、2.0重量%以下、好ましくは1.6重量%以下とする。
[Mo:0〜2.0重量%(内外輪)]
Moは、基地に固溶して焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性などを高めるとともに、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用があるが、高価であるため、選択的に0〜2.0重量%の範囲で添加される。その効果を十分に出すためには、好ましくは0.5重量%以上添加する。
Moは、基地に固溶して焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性などを高めるとともに、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用があるが、高価であるため、選択的に0〜2.0重量%の範囲で添加される。その効果を十分に出すためには、好ましくは0.5重量%以上添加する。
[V:0〜2.0重量%(内外輪)]
Vは、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用があるが、高価であるため、選択的に0〜2.0重量%の範囲で添加される。その効果を十分に出すためには、好ましくは、0.5重量%以上添加する。
また、その他残部は、実質的にFeからなるが、不可避不純物としてS、P、Al、Ti、O等を含有する。これらの元素は、表面起点型フレーキングには特に際立った影響はないとされているが、その品質が著しく悪い場合には、内部起点型フレーキングが生じるようになるので、コストアップを招くような厳しい不純物規制は行なわないが、通常、軸受材料として使用できる清浄度規制(JIS G 4805)を満足する品質(ベアリングクオリティー)レベルとする。
Vは、高硬度の微細な炭化物または炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止して軸受寿命を高める作用があるが、高価であるため、選択的に0〜2.0重量%の範囲で添加される。その効果を十分に出すためには、好ましくは、0.5重量%以上添加する。
また、その他残部は、実質的にFeからなるが、不可避不純物としてS、P、Al、Ti、O等を含有する。これらの元素は、表面起点型フレーキングには特に際立った影響はないとされているが、その品質が著しく悪い場合には、内部起点型フレーキングが生じるようになるので、コストアップを招くような厳しい不純物規制は行なわないが、通常、軸受材料として使用できる清浄度規制(JIS G 4805)を満足する品質(ベアリングクオリティー)レベルとする。
次に、材料組成を除く、転動体表面の浸炭窒化層の窒素含有量、残留オーステナイト量、表面粗さ等について述べる。
まず、上記材料組成の線材をヘッダー加工及びフラッシング加工等によって、素球を製作し、その後、表面層に所定の窒素を富化させるために浸炭窒化処理を行なう。
窒素は、炭素と同じように、マルテンサイトの固溶強化及び残留オーステナイトの安定確保に作用するだけでなく、窒化物または炭窒化物を形成して、摩擦摩耗特性を著しく高める作用がある。その効果を十分に発揮させるためには、少なくとも窒素濃度は0.2重量%以上、好ましくは0.3重量%以上が必要である。
まず、上記材料組成の線材をヘッダー加工及びフラッシング加工等によって、素球を製作し、その後、表面層に所定の窒素を富化させるために浸炭窒化処理を行なう。
窒素は、炭素と同じように、マルテンサイトの固溶強化及び残留オーステナイトの安定確保に作用するだけでなく、窒化物または炭窒化物を形成して、摩擦摩耗特性を著しく高める作用がある。その効果を十分に発揮させるためには、少なくとも窒素濃度は0.2重量%以上、好ましくは0.3重量%以上が必要である。
但し、窒素濃度が必要以上に高いと、窒化物または炭窒化物の析出量が増大して、十分な残留オーステナイト量が確保できなくなったり、焼入れ性が低下して、十分な耐疲労性が得られない場合がある。そこで、窒素濃度の上限は2.0重量%以下とする。残留オーステナイトの作用、効果については、前述した通りである。
また、浸炭窒化処理は、鋼を一旦オーステナイト化させ、焼入れ後において、表面層に十分な残留オーステナイト量を確保できるように、炭素と窒素を基地組織に固溶させるとともに、表面層に摩擦、摩耗低減効果の高い窒化物あるいは炭窒化物を析出分散させることを狙いとして行なわれる。
また、浸炭窒化処理は、鋼を一旦オーステナイト化させ、焼入れ後において、表面層に十分な残留オーステナイト量を確保できるように、炭素と窒素を基地組織に固溶させるとともに、表面層に摩擦、摩耗低減効果の高い窒化物あるいは炭窒化物を析出分散させることを狙いとして行なわれる。
具体的には、RXガス、エンリッチガス及びアンモニアガスの混合ガス雰囲気中で行なわれるが、アンモニアガスは処理温度が高くなるほど分解しやすく、その結果、前記混合ガス中の残留アンモニアガスの濃度が小さくなり、十分な窒素量を転動体表面に富化できなくなる場合がある。また、温度が低いと、十分な炭素と窒素を基地組織に固溶させることができず、所定の残留オーステナイト量確保と耐疲労性確保が難しくなる。そこで、浸炭窒化処理は、820〜850°C程度、Cp(カーボンポテンシャル)=1.0〜1.4、上記窒素濃度を満足させるアンモニアガス投入量で行われることが好ましい。
また、浸炭窒化処理した後は、油焼入れし、組織の安定化のため200〜270°C程度の焼戻しに供される。その後、タンブリング加工あるいはボールピーニング加工等を行ない、最終的に、残留する加工歪による経時的な表面のウェービネス変化を抑制するため、140〜180°C程度で焼戻しを行ない、ラップ加工に供される。
完成球表面に極めて多量の残留オーステナイトが存在すると、それ自身に形成される圧痕縁に作用する応力集中を緩和することができるが、摩擦摩耗特性の観点からは少ない方が良く、圧痕形成と転がり疲労に伴なう残留オーステナイトの分解等によって、経時的に転動体の表面形状が著しく劣化して、次第に軌道輪軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力が増大するようになる。また、完成球表面の残留オーステナイト量が少なすぎると、圧痕が形成された際、それ自身、十分な寿命を確保することが難しくなる。
完成球表面に極めて多量の残留オーステナイトが存在すると、それ自身に形成される圧痕縁に作用する応力集中を緩和することができるが、摩擦摩耗特性の観点からは少ない方が良く、圧痕形成と転がり疲労に伴なう残留オーステナイトの分解等によって、経時的に転動体の表面形状が著しく劣化して、次第に軌道輪軌道面に形成された圧痕縁に作用する接線力が増大するようになる。また、完成球表面の残留オーステナイト量が少なすぎると、圧痕が形成された際、それ自身、十分な寿命を確保することが難しくなる。
本発明においては、少なくともSiを0.4重量%以上含有した組織安定性に優れる鋼で転動体を形成するとともに、浸炭窒化処理により表面層を強化しており、さらに、転動体表面には400〜1200MPaの高い圧縮残留応力を付与しているため、残留オーステナイト量の減少に伴なう寿命低下を十分にカバーできる。そこで、軌道輪の寿命延長効果を最大限引き出せるように、転動体表面の残留オーステナイト量を5〜20体積%とする。
また、完成鋼球の表面硬さは、異物の噛み込み時の圧痕形成を抑制し、転動体表面の形状崩れを防止することと、転動体自身を強化して、転動体、軌道輪を共に長寿命とするため、Hv820以上とする。好ましくは、Hv850〜1000程度とする。
また、転動体の表面粗さが大きくなると、潤滑条件が厳しい場合は勿論であるが、圧痕の盛り上がり部において、金属接触が生じ、接線力が大きくなることによって、十分な寿命延長効果が得られない場合がある。そのため、鋼球表面の粗さを、0.03μmRa以下、好ましくは0.01μmRa以下とする。
また、転動体の表面粗さが大きくなると、潤滑条件が厳しい場合は勿論であるが、圧痕の盛り上がり部において、金属接触が生じ、接線力が大きくなることによって、十分な寿命延長効果が得られない場合がある。そのため、鋼球表面の粗さを、0.03μmRa以下、好ましくは0.01μmRa以下とする。
次に、軌道輪軌道面の浸炭窒化層と残留オーステナイトについて説明する。
軌道輪についても同様に浸炭窒化処理を行なうことで強化するとともに、所定の残留オーステナイト量を確保する。
軌道輪の残留オーステナイトは、前述したように軌道面に形成された圧痕縁の応力集中を軽減する作用があり、十分な寿命を確保する上では、20体積%以上が必要である。また、残留オーステナイト量が多すぎると、それ自身の耐疲労性が低下したり、摩擦摩耗特性が低下したり、硬さが低下することによって軌道輪軌道面に圧痕が形成されやすくなって、軌道輪軌道面に形成された圧痕によって転動体への攻撃性が強まり、転動体の疲労度が増して寿命が低下する場合がある。そのため、残留オーステナイト量の上限を40体積%以下とするとともに、好ましくは、軌道輪の軌道面の表面硬さをHv750〜850とする。
軌道輪についても同様に浸炭窒化処理を行なうことで強化するとともに、所定の残留オーステナイト量を確保する。
軌道輪の残留オーステナイトは、前述したように軌道面に形成された圧痕縁の応力集中を軽減する作用があり、十分な寿命を確保する上では、20体積%以上が必要である。また、残留オーステナイト量が多すぎると、それ自身の耐疲労性が低下したり、摩擦摩耗特性が低下したり、硬さが低下することによって軌道輪軌道面に圧痕が形成されやすくなって、軌道輪軌道面に形成された圧痕によって転動体への攻撃性が強まり、転動体の疲労度が増して寿命が低下する場合がある。そのため、残留オーステナイト量の上限を40体積%以下とするとともに、好ましくは、軌道輪の軌道面の表面硬さをHv750〜850とする。
なお、軌道輪については、窒素濃度が高すぎると、研削性が大幅に低下して著しく生産性の低下を来たす場合があるため、好ましくはこれを0.05〜0.3重量%とする。
浸炭窒化処理は、転動体の場合と同様、表面層に所定の残留オーステナイト量と硬さを確保できるように、炭素と窒素を基地組織に固溶させるとともに、窒化物あるいは炭窒化物を析出分散させることを狙いとして行なわれる。
浸炭窒化処理は、転動体の場合と同様、表面層に所定の残留オーステナイト量と硬さを確保できるように、炭素と窒素を基地組織に固溶させるとともに、窒化物あるいは炭窒化物を析出分散させることを狙いとして行なわれる。
具体的には、RXガス、エンリッチガス及びアンモニアガスの混合ガス雰囲気中で行なわれる。ただし、軌道輪の湯合は、転動体よりも熱処理後の取りしろが必要であり、また、表面窒素濃度が大きいと研削時に加工性低下がしばしば問題となる場合がある。そこで、十分な硬化層深さを確保することと、表面層の窒素濃度を最適化することを目的として、例えは、880〜950°C程度、Cp(カーボンポテンシャル)=1.0〜1.4、窒素濃度が0.05〜0.3重量%を満足させ得るアンモニアガス投入量で実施されることが好ましい。
また、浸炭窒化処理した後は、再度、820〜860°C程度に加熱保持して焼入れし、160〜180°C程度の焼戻しを行ない、研削仕上げ加工に供される。
以上のように、本発明の転がり軸受は、従来の異物混入潤滑下における長寿命化技術をさらに発展させて成し遂げられたものであり、圧痕縁に作用する応力集中を軽減する効果に加えて、圧痕縁に作用する接線力をも低減することで、圧痕縁の応力集中部におけるクラックの発生、伝播を抑制し、大きな寿命延長効果が得られる長寿命な転がり軸受を提供するものである。
以上のように、本発明の転がり軸受は、従来の異物混入潤滑下における長寿命化技術をさらに発展させて成し遂げられたものであり、圧痕縁に作用する応力集中を軽減する効果に加えて、圧痕縁に作用する接線力をも低減することで、圧痕縁の応力集中部におけるクラックの発生、伝播を抑制し、大きな寿命延長効果が得られる長寿命な転がり軸受を提供するものである。
[第1実施例]
表1に、本発明例である実施例及び比較例の転がり軸受に用いた転動体素材の成分及び完成品鋼球の品質を示す。なお、転動体径はφ3/8インチである。
表1に、本発明例である実施例及び比較例の転がり軸受に用いた転動体素材の成分及び完成品鋼球の品質を示す。なお、転動体径はφ3/8インチである。
鋼球は、まず、表1記載の線材をヘッダー加工、フラッシング加工、粗旋削加工により、素球を製作し、次に示す熱処理及び後工程を行なった。
1.浸炭窒化焼入れ(830°C×3hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
2.浸炭焼入れ(840°C×3hr、RXガス+エンリッチガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
3.焼入れ(840°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
また、上記熱処理を行なった後、タンブラー加工(バレル加工)を行ない、その後、再度、150〜170°Cで焼戻しを行ない、0.01μmRa以下までラップ仕上げして完成球とした。
1.浸炭窒化焼入れ(830°C×3hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
2.浸炭焼入れ(840°C×3hr、RXガス+エンリッチガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
3.焼入れ(840°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
また、上記熱処理を行なった後、タンブラー加工(バレル加工)を行ない、その後、再度、150〜170°Cで焼戻しを行ない、0.01μmRa以下までラップ仕上げして完成球とした。
なお、完成球の表面窒素量の測定には、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用い、定量分析を行った。また、表面層の残留オーステナイト量γR の測定は、X線回折法により測定した。いずれも、転動体表面を直接分析測定した。
まず、得られた完成球を用いて、ボールオンディスク試験により、転動体と相手部材である平板試験片との摩擦抵抗の違いを測定した。なお、測定は、回転速度200min-1、荷重9.8Nとし、相手部材(平板試験片)には、焼入れ、焼戻しを施した、硬さHRC62のSUJ2試験片を用いた。測定結果は、表1中に、従来の高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼球である比較例1に対する摩擦力の比(以下、摩擦抵抗比と称する)として示してある。
まず、得られた完成球を用いて、ボールオンディスク試験により、転動体と相手部材である平板試験片との摩擦抵抗の違いを測定した。なお、測定は、回転速度200min-1、荷重9.8Nとし、相手部材(平板試験片)には、焼入れ、焼戻しを施した、硬さHRC62のSUJ2試験片を用いた。測定結果は、表1中に、従来の高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼球である比較例1に対する摩擦力の比(以下、摩擦抵抗比と称する)として示してある。
本発明においては、Si含有量が高いため、浸炭窒化処理によって高濃度の窒素が富化できる。窒素濃度と摩擦抵抗比の相関を図1に示す。図1より、窒素濃度が多くなるほど、摩擦抵抗比は小さくなっており、特に、窒素濃度が0.5重量%以上で、大きな摩擦低減効果があることが確認できる。また、残留オーステナイトは、転がり寿命には、有益な作用効果を発揮するのであるが、摩擦抵抗においては、特に20体積%を超える場合にかえって大きくなる傾向にある。
上記転動体を用いて、次に示す条件により転がり疲れ寿命試験を行なった。なお、試験軸受の軌道輪には、焼入れ、焼戻しを施した高炭素クロム軸受鋼製(SUJ2)の6206深溝玉軸受を用い、保持器には、プラスチック保持器を使用した。
(寿命試験条件)
荷重:6223N
回転速度:3000min-1
潤滑油:#68タービン油
混入異物組成:Fe3 C系粉
混入異物硬さ:HRC52
混入異物粒径:74〜147μm
混入異物混入量:潤滑油中に300ppm
(寿命試験条件)
荷重:6223N
回転速度:3000min-1
潤滑油:#68タービン油
混入異物組成:Fe3 C系粉
混入異物硬さ:HRC52
混入異物粒径:74〜147μm
混入異物混入量:潤滑油中に300ppm
寿命は、各サンプルをそれぞれn=10試験して、フレーキングが発生した時点までの累積応力繰り返し回数(寿命)を調査してワイブルプロットを作成し、各ワイブル分布の結果から各々のL10寿命を求めた。
表1中には、摩擦抵抗比と同様に、従来の高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼球である比較例1に対する寿命比として示してある。
表1からも明らかなように、本発明例である実施例1〜11においては、いずれも、比較例1の2倍以上の寿命を呈しており、明らかな寿命延長効果が認められる。
表1中には、摩擦抵抗比と同様に、従来の高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼球である比較例1に対する寿命比として示してある。
表1からも明らかなように、本発明例である実施例1〜11においては、いずれも、比較例1の2倍以上の寿命を呈しており、明らかな寿命延長効果が認められる。
図2には、表面窒素濃度と転がり疲れ寿命比との相関を示す。図2から明らかなように、表面窒素濃度が0.3重量%以上、特に、0.5重量%以上の領域で、著しく寿命延長効果が大きくなっており、比較例1の3.5倍から4.5倍程度の寿命が得られた。これは、図1の表面窒素濃度と摩擦抵抗比との相関と非常に一致しており、転動体による摩擦低減が、結果として、寿命改善につながった結果と考えられる。
なお、実施例2は、摩擦抵抗比は、最も低い結果を示しているが、やや、他の実施例に比較して寿命が劣る結果となっている。これは、他の実施例が、ほとんどすべて内輪または外輪でフレーキングが発生したのに対し、実施例2では、転動体の残留オーステナイト量γR が5体積%と低く、転動体に形成される圧痕縁での残留オーステナイトによる応力集中軽減効果が十分得られず、転動体のフレーキングが多発したためであると考えられる。また、比較例6では、転動体表面の窒素濃度が、約1%程度と高いにもかかわらず、寿命改善効果が小さい。これは、表1及び図1からも明らかなように、転動体表面層の残留オーステナイト量γR が28体積%と非常に多く、窒素富化による摩擦低減が十分に図れなかったためと考えられる。
以上、述べてきたように、転動体表面の窒素濃度の増加による転がり摩擦低減と残留オーステナイト量γR の適正化によって、異物混入潤滑下における軸受の長寿命化が達成可能であるということが確認された。
本発明者らは、さらに、本発明例の転動体表面の粗さに及ぼす寿命の影響を評価するため、実施例5の鋼球を用いて、表面粗さと寿命との相関を調査した。なお、評価は、転動体表面粗さを、ラップ仕上げ加工の途中で中断した0.03μmRa、0.05μmRa、0.2μmRaの鋼球を別途用意し、前記寿命試験により行なった。
本発明者らは、さらに、本発明例の転動体表面の粗さに及ぼす寿命の影響を評価するため、実施例5の鋼球を用いて、表面粗さと寿命との相関を調査した。なお、評価は、転動体表面粗さを、ラップ仕上げ加工の途中で中断した0.03μmRa、0.05μmRa、0.2μmRaの鋼球を別途用意し、前記寿命試験により行なった。
図3に、比較例1に対するL10寿命比で整理した結果を示す。図3より、転動体の表面粗さが0.03μmRa以下の場合に良好な比較例との寿命差が確保されており、このことから、十分な寿命改善効果を得るためには、鋼球の表面粗さを0.03μmRa以下とするのが好ましいことが判る。
[第2実施例]
本発明の効果を検証する手法として、深溝玉軸受6206を用い、以下の実験を行った。
表2に、実施例及び比較例に該当する転動体及び軌道輪に用いた素材の成分を示す。
転動体は、まず、表2に示す鋼材からなる線材をヘッダー加工、フラッシング加工、粗旋削加工して、素球を製作し、次に示す熱処理及び後工程を行なった。
本発明の効果を検証する手法として、深溝玉軸受6206を用い、以下の実験を行った。
表2に、実施例及び比較例に該当する転動体及び軌道輪に用いた素材の成分を示す。
転動体は、まず、表2に示す鋼材からなる線材をヘッダー加工、フラッシング加工、粗旋削加工して、素球を製作し、次に示す熱処理及び後工程を行なった。
(転動体の熱処理)
1.浸炭窒化焼入れ(830°C×4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
2.浸炭窒化焼入れ(830°C×4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、−80°C×1hrサブゼロ処理、200〜270°C焼戻し
3.焼入れ(840°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
また、上記熱処理を行なった後、種々の時間でタンブラー加工を行ない、その後、再度、150〜170°Cで焼戻しを行ない、0.01μmRa以下までラップ仕上げして完成球とした。
1.浸炭窒化焼入れ(830°C×4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
2.浸炭窒化焼入れ(830°C×4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、−80°C×1hrサブゼロ処理、200〜270°C焼戻し
3.焼入れ(840°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、200〜270°C焼戻し
また、上記熱処理を行なった後、種々の時間でタンブラー加工を行ない、その後、再度、150〜170°Cで焼戻しを行ない、0.01μmRa以下までラップ仕上げして完成球とした。
なお、完成球の表面窒素量の測定には、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用い、定量分析を行った。また、表面層の残留オーステナイト量γR 及び圧縮残留応力σの測定は、X線回折法により測定した。いずれも、転動体表面を直接分析測定した。また、表面硬さも直接、転動体表面を測定し、球面補正した値を転動体の表面硬さとした。
軌道輪は、表2記載の鋼材を旋削加工により所望の形状に加工した後、次に示す熱処理を行なった。
(軌道輪の熱処理)
1.浸炭窒化処理(890〜930°C×3.5〜4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、840〜860°C×30min加熱保持後、油焼入れ、160〜180°C焼戻し
2.焼入れ(840〜860°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、160〜180°C焼戻し
なお、軌道輪の軌道面の表面硬さは、断面硬さ測定により得られた軌道面直下100μm深さの硬さとして測定し、また、表面層の残留オーステナイト量γR の測定は、軌道面表面を100μm電解研磨を行い、X線回折法により測定した。
(軌道輪の熱処理)
1.浸炭窒化処理(890〜930°C×3.5〜4.5hr、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気)、840〜860°C×30min加熱保持後、油焼入れ、160〜180°C焼戻し
2.焼入れ(840〜860°C×0.5hr、RXガス雰囲気)、160〜180°C焼戻し
なお、軌道輪の軌道面の表面硬さは、断面硬さ測定により得られた軌道面直下100μm深さの硬さとして測定し、また、表面層の残留オーステナイト量γR の測定は、軌道面表面を100μm電解研磨を行い、X線回折法により測定した。
上記熱処理を施された転動体と軌道輪を用いて、次に示す条件により、転がり疲れ寿命試験を行なった。なお、保持器には、プラスチック保持器を使用した。
寿命試験条件:
荷重 :6223N
回転数:3000min-1
潤滑油:♯68タービン油
混入異物組成 :Fe3 C系粉
混入異物硬さ :Hv870
混入異物粒径 :74〜147μm
混入異物混入量:潤滑油中に300ppm
寿命試験条件:
荷重 :6223N
回転数:3000min-1
潤滑油:♯68タービン油
混入異物組成 :Fe3 C系粉
混入異物硬さ :Hv870
混入異物粒径 :74〜147μm
混入異物混入量:潤滑油中に300ppm
寿命は、各サンプルをそれぞれn=10試験して、フレーキングが発生した時点までの累積応力繰り返し回数(寿命)を調査してワイブルプロットを作成し、各ワイブル分布の結果から各々のL10寿命を求めた。
表3に実施例1〜14及び比較例1〜3の寿命試験結果を示す。なお、表3の寿命比は、比較例1のL10寿命を1とした比で示した。
表3に実施例1〜14及び比較例1〜3の寿命試験結果を示す。なお、表3の寿命比は、比較例1のL10寿命を1とした比で示した。
本発明例である実施例1〜14は、転動体に本発明で規定する所定の材料を用い、且つ、表面層の窒素濃度N、硬さ、残留オーステナイト量γR 、圧縮残留応力σが本発明の所定の範囲となるように調整されたものであり、いずれも比較例1〜3に比べて大幅に寿命が延長した。
これは、転動体が浸炭窒化処理により強化されたことに加え、その表面層が摩擦摩耗特性に優れ、さらに、その表面硬さを高めたことによって、異物を噛みこんだ際に圧痕形成が抑制されるとともに、表面層の残留オーステナイトを適正量となるようにコントロールしたため、その後の転動疲労に伴なう残留オーステナイトの分解による転動体表面形状の崩れが抑制されて、結果的に軌道輪の圧痕縁に作用する接線力が低減したためと考えられる。
これは、転動体が浸炭窒化処理により強化されたことに加え、その表面層が摩擦摩耗特性に優れ、さらに、その表面硬さを高めたことによって、異物を噛みこんだ際に圧痕形成が抑制されるとともに、表面層の残留オーステナイトを適正量となるようにコントロールしたため、その後の転動疲労に伴なう残留オーステナイトの分解による転動体表面形状の崩れが抑制されて、結果的に軌道輪の圧痕縁に作用する接線力が低減したためと考えられる。
また、本発明例である実施例1〜14においては、転動体表面の残留オーステナイト量γR が従来の浸炭窒化処理鋼球の場合に比べて少ないが、硬さと圧縮残留応力σ等のバランスを向上させたため、転動体は十分な寿命を有していることが確認された。
これに対して、比較例1は、内外輪、転動体すべてが従来のSUJ2製の軸受の場合の例、比較例2は、転動体のみが従来の浸炭窒化処理鋼球を使用した場合の例、比較例3は、軌道輪の軌道面を浸炭窒化処理によって強化した場合の例であるが、いずれも寿命が低いことが確認された。
これに対して、比較例1は、内外輪、転動体すべてが従来のSUJ2製の軸受の場合の例、比較例2は、転動体のみが従来の浸炭窒化処理鋼球を使用した場合の例、比較例3は、軌道輪の軌道面を浸炭窒化処理によって強化した場合の例であるが、いずれも寿命が低いことが確認された。
Claims (5)
- 一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、
前記転動体の素材として高炭素クロム軸受鋼SUJ2より低摩擦抵抗の鋼を用い、且つ該転動体の表面層の残留オーステナイト量を5〜20体積%としたことを特徴とする転がり軸受。 - 一対の軌道輪間に複数の転動体が転動自在に配設された転がり軸受において、
前記転動体の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.4〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ該転動体の表面に、窒素濃度:0.2〜2.0重量%、残留オーステナイト量:5〜20体積%の浸炭窒化層を形成したことを特徴とする転がり軸受。 - 前記転動体の表面粗さを0.03μmRa以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載した転がり軸受。
- 前記浸炭窒化層が、400〜1200MPaの圧縮残留応力とHv820以上の表面硬さを有することを特徴とする請求項2又は3に記載した転がり軸受。
- 前記軌道輪の素材として、少なくともC:0.3〜1.2重量%、Si:0.15〜2.0重量%、Mn:0.2〜2.0重量%、Cr:0.5〜2.0重量%、Mo:0〜2.0%、V:0〜2.0重量%を含有する鋼を用い、且つ軌道面表面に、残留オーステナイト量:20〜40体積%の浸炭窒化層を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載した転がり軸受。
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