JP2005263653A - 芳香族カルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】分離器を用いてスラリーから結晶と溶媒を分離する際に、長期間連続して結晶と溶媒を円滑に分離可能な芳香族カルボン酸の製造方法の提供。
【解決手段】分離器を用いてスラリーから結晶と溶媒を分離する芳香族カルボン酸の製造方法において、晶析槽で降温する際、凝縮器で冷却して得られる凝縮液を晶析槽に還流せず抜き出すことにより、分離器に供給する溶媒量を低減する。
【選択図】なし
【解決手段】分離器を用いてスラリーから結晶と溶媒を分離する芳香族カルボン酸の製造方法において、晶析槽で降温する際、凝縮器で冷却して得られる凝縮液を晶析槽に還流せず抜き出すことにより、分離器に供給する溶媒量を低減する。
【選択図】なし
Description
本発明は、芳香族カルボン酸を製造する方法に関するものであり、例えばパラキシレを液相酸化してテレフタル酸を製造するプロセスにおいて、ロータリーバキュームフィルターにおけるスラリーからの結晶と溶媒の分離を、長期間連続して円滑に行うことが可能な芳香族カルボン酸の製造方法に関するものである。
パラキシレンの液相空気酸化によってテレフタル酸を製造する場合には、生成するテレフタル酸は母液中に結晶となって析出し、テレフタル酸の結晶を含むスラリーが生成する。そして、このスラリーから結晶を回収することにより粗テレフタル酸が得られる。また、得られた粗テレフタル酸を溶解し、酸化処理、還元処理等の精製工程を経てテレフタル酸を析出させると、結晶を含むスラリー得られる。このスラリーからテレフタル酸を析出させる方法としては、1段以上の晶析槽を用いて溶媒のフラッシュ蒸発で発生した溶媒蒸気を凝縮器で冷却し、凝縮液を晶析槽に還流しスラリーの温度を下げる方法が知られている。
テレフタル酸を析出させ得られたスラリーから結晶を回収する方法としては、ロータリーバキュームフィルターにより吸引濾過、洗浄、吸引濾過、剥離を一操作で行う方法が広く採用されている。
また、ロータリーバキュームフィルターの上流に設置させている晶析槽において、フラッシュ蒸発により発生した溶媒蒸気をロータリーバキュームフィルターのケークを剥離するためのブロー用ガスに供給する方法(例えば、特許文献1参照)もよく知られている。
このロータリーバキュームフィルターは、円筒状の濾材を回転させながら吸引濾過、洗浄、吸引濾過、剥離を順次行い、スラリーから円滑に結晶と溶媒を分離する装置である。
しかしながら、ロータリーバキュームフィルターの使用においては、運転の継続によって結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなり、溶媒の分離が不完全となる分離不良や洗浄液によるケークの洗浄が不完全となる洗浄不良が発生するために、長期間の運転が困難であり、このような現象はロータリーバキュームフィルターにおける単位時間当たりの処理量を増加させる場合や、生産量を増加させる場合に発生し易いという問題があった。
特開2002−20324号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、ロータリーバキュームフィルターにおけるスラリーからの結晶と溶媒の分離を、長期間連続して円滑に行うことが可能な芳香族カルボン酸の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者らはロータリーバキュームフィルターを用いて結晶と溶媒を分離する方法について鋭意検討した結果、ロータリーバキュームフィルターの上流に設置されている晶析槽の凝縮液の一部を抜き出すことにより、ロータリーバキュームフィルターにおける単位時間当たりの処理量を減少させ、さらにはその凝縮液の一部をロータリーバキュームフィルターにおけるケークの洗浄液とすることによって、スラリーからの結晶と溶媒の分離を長期間連続して円滑に実施可能となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記の目的を達成するために本発明によれば、芳香族炭化水素を高温・高圧下、触媒成分を含む溶媒中で分子状酸素により酸化して芳香族カルボン酸を生成させ、反応生成液を降温する晶析工程を経て、芳香族カルボン酸の結晶と溶媒からなるスラリーを、分離器で結晶と溶媒とに分離することからなる芳香族カルボン酸の製造方法において、晶析槽で反応生成液を降温する際に、凝縮器で冷却して得られる凝縮液の全量を晶析槽に還流せず、その少なくとも一部を抜き出すことを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法、および同じく晶析槽で反応生成液を降温する際に、凝縮器で冷却して得られる凝縮液の少なくとも一部を、分離器で結晶を洗浄するための洗浄液として使用することを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法が提供される。
なお、本発明の芳香族カルボン酸の製造方法においては、
前記分離器がロータリーバキュームフィルターであること、
前記溶媒が酢酸であること、および
前記芳香族カルボン酸がテレフタル酸であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
前記分離器がロータリーバキュームフィルターであること、
前記溶媒が酢酸であること、および
前記芳香族カルボン酸がテレフタル酸であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
本発明の芳香族カルボン酸の製造方法によれば、以下に説明するとおり、晶析槽で反応生成液を降温する際に、凝縮器で冷却して得られる凝縮液を晶析槽に還流せず抜き出すことによって、分離器に供給する溶媒量が低減でき、結晶と溶媒の分離を長期間連続して円滑に行うことができる。
以下、本発明の方法を図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は本発明の芳香族カルボン酸の製造方法の実施形態の一例を示す概念図である。
図1は例えばパラキシレを液相酸化してテレフタル酸を製造するプロセスを示し、図1において、反応で生成した結晶と溶媒のスラリーは晶析槽1に送られ降温される。晶析槽1 の上部には凝縮器2が設置されており、凝縮器2で凝縮された凝縮液は晶析槽1に還流される。スラリーは晶析槽1からポンプ3により、分離器としてのロータリーバキュームフィルター(以下、RVFと略称する)4のスラリー供給部5に供給され、真空ポンプ6の作動によって吸引部7を経て回転する濾材8の内側が負圧になる結果、RVF4の底部に供給されたスラリーが回転する濾材8で濾過され、スラリーの結晶は濾材8に補足されてケーク9になって上昇する。スラリーの一部はスラリー液面を保持するダム10をオーバーフローして、スラリー循環部11 から晶析槽1に循環する。ケーク9は洗浄液管12から吹き付けられる洗浄液によって洗浄された後、洗浄液がケーク9から除去されて下降する。ケーク9はブロー用ガス供給管13から吹き付けられるブロー用ガスによって剥離され、ケーク取出口14から取り出される。取り出されたケーク9は再スラリー槽15において溶媒で再度スラリーにされ、分離器16 で濾過液とケーク9に再分離され、ドライヤー17で乾燥されて、製品取出口18から結晶(製品)として回収される。
吸引部7から吸引される濾過液およびブロー用ガスは気液分離槽19に送られ、濾過液受槽20を経由してポンプ21により濾過液が排出される。気液分離槽19の上部には冷却器22が設置されており、冷却されたガスは真空ポンプ6により排出される。真空ポンプ6の吐出側には封液受槽23があり、真空ポンプ6から排出されたガスはRVF4のブロー用ガスとして使用される。
ここで、本発明の特徴は、晶析槽1で反応生成液を降温する際凝縮器2で冷却して得られる凝縮液を晶析槽1に還流せず抜き出すことより、RVF4に供給する単位時間当たりのスラリー量を減少させることにある。凝縮液は凝縮液受槽24に抜き出しポンプ25により濾過液受槽20に送液することが好ましく、さらにはRVF4の洗浄液管12から吹き付けられる洗浄液の代替として使用することが好都合である。凝縮液は凝縮液受槽24を経由せずに使用しても構わない。
本発明においては、抜き出す凝縮液量は多ければ多いほどRVF4に供給されるスラリー量が減少して結晶と溶媒の分離が長期間円滑に行われるようになるため、抜き出し量は凝縮液量の0.1〜100重量%、好ましくは50〜80重量%の範囲の量であることが適当である。
晶析槽1の凝縮液をRVF4の洗浄液として使用する量は、洗浄液の全量および一部の代替のいずれでもよい。またいずれの洗浄液管12に使用するかは特にこだわらない。洗浄液として使用される凝縮液の温度は、20〜100℃、好ましくは50〜80℃の範囲が適当である。
本発明によれば、晶析槽1で反応生成液を降温する際、凝縮器2で冷却して得られる凝縮液を晶析槽1に還流せず抜き出すことにより、RVF4を用いて結晶と溶媒を分離する際に、RVF4の濾材を通過する液量が低減でき、結晶と溶媒の分離を長期間連続して円滑に行うことができる。
RVF4の運転の継続によって結晶と溶媒の分離が円滑に行われず、溶媒の分離が不完全となる原因は、溶媒が濾材8を通過する際溶媒に溶解していた結晶が析出し、濾材の目詰まりが発生したためと考えられる。
本発明は、テレフタル酸の結晶を分離する場合に適しているが、芳香族カルボン酸の結晶を分離する場合にも適用できる。芳香族カルボン酸は芳香族にカルボキシル基が直接結合したものでありモノ−、ジ−、トリ−等の置換基は一つに限られるものでなく、2つ以上置換していても良い。また、複数個の置換基を有する場合は、各々の置換基は同一でも異なるものでも良い。芳香核には、ベンゼン環のような短環式のみならず、ナフタレンのような多環式芳香核も含まれる。ここでは主に、パラキシレンを高温、高圧下、触媒成分を含む溶媒中で分子状酸素により酸化してテレフタル酸を製造するプロセスにおける結晶の分離に適用ができる。芳香族炭化水素を酸化して芳香族カルボン酸を生成させるためには高温・高圧が必要であるが、ここで高温とは100〜300℃、好ましくは150〜250℃であり、高圧とは10〜25K/G、好ましくは12〜20K/Gである。
さらに、酸化反応により生成したテレフタル酸は、酸化反応混合物から、通常、晶析、遠心分離等により固液分離される。晶析の前に、未反応の中間体をさらに追酸化してテレフタル酸とする等の精製が施される場合でも、追酸化の前に固液分離を行い、テレフタル酸を水などに溶解し還元により精製を施し晶析した後、再び固液分離を行い乾燥して製品とする場合でも本発明は適用される。
固液分離器はRVFに限らず遠心分離器等のいずれでもよく、また、晶析槽は固液分離器の直前の晶析槽に限らず反応生成液を降温する晶析槽であればいずれの場合でも本発明に適用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
[実施例1]
溶媒に対して、コバルト原子として300ppmの酢酸コバルト、マンガン原子として200ppmの酢酸マンガンおよび臭素原子として1000ppmの臭化水素を含有する酢酸(10%)を溶媒とし、溶媒/パラキシレン重量比3で反応温度200℃、圧力2.0MPa、滞留時間120分、排ガス中の酸素濃度5%の条件下、液相酸化を行った。減圧冷却後、得られたテレフタル酸/含水酢酸スラリー(テレフタル酸40重量%、温度100℃)を、図1に示すプロセスで処理し、テレフタル酸ケークと含水酢酸に分離した。
溶媒に対して、コバルト原子として300ppmの酢酸コバルト、マンガン原子として200ppmの酢酸マンガンおよび臭素原子として1000ppmの臭化水素を含有する酢酸(10%)を溶媒とし、溶媒/パラキシレン重量比3で反応温度200℃、圧力2.0MPa、滞留時間120分、排ガス中の酸素濃度5%の条件下、液相酸化を行った。減圧冷却後、得られたテレフタル酸/含水酢酸スラリー(テレフタル酸40重量%、温度100℃)を、図1に示すプロセスで処理し、テレフタル酸ケークと含水酢酸に分離した。
晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrを濾過液受槽20に抜き出した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は50時間であった。
[比較例1]
実施例1において、晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrの濾過液受槽20への抜き出しを停止した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は16時間であった。
実施例1において、晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrの濾過液受槽20への抜き出しを停止した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は16時間であった。
[実施例2]
溶媒に対して、コバルト原子として300ppmの酢酸コバルト、マンガン原子として200ppmの酢酸マンガンおよび臭素原子として1000ppmの臭化水素を含有する酢酸(10%)を溶媒とし、溶媒/パラキシレン重量比3で反応温度200℃、圧力2.0MPa、滞留時間120分、排ガス中の酸素濃度5%の条件下、液相酸化を行った。減圧冷却後、得られたテレフタル酸/含水酢酸スラリー(テレフタル酸40重量%、温度100℃)を、図1に示すプロセスで処理し、テレフタル酸ケークと含水酢酸に分離した。
溶媒に対して、コバルト原子として300ppmの酢酸コバルト、マンガン原子として200ppmの酢酸マンガンおよび臭素原子として1000ppmの臭化水素を含有する酢酸(10%)を溶媒とし、溶媒/パラキシレン重量比3で反応温度200℃、圧力2.0MPa、滞留時間120分、排ガス中の酸素濃度5%の条件下、液相酸化を行った。減圧冷却後、得られたテレフタル酸/含水酢酸スラリー(テレフタル酸40重量%、温度100℃)を、図1に示すプロセスで処理し、テレフタル酸ケークと含水酢酸に分離した。
晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrを抜き出し、RVF4の洗浄液管12から吹き付けられる洗浄液の代替として使用した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は48時間であった。
[比較例2]
実施例2において、晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrの抜き出しを停止した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は17時間であった。
実施例2において、晶析槽1の凝縮器2で凝縮した凝縮液5,000kg/hrの抜き出しを停止した。この結果、RVF4において結晶と溶媒の分離が円滑に行われなくなるまでの時間は17時間であった。
本発明によれば、例えばパラキシレを液相酸化してテレフタル酸を製造するプロセスにおいて、晶析槽で反応生成液を降温する際、凝縮器で冷却して得られる凝縮液を晶析槽に還流せず抜き出すことによって、ロータリーバキュームフィルターを用いて結晶と溶媒を分離する際の分離器に供給する溶媒量が低減でき、結晶と溶媒の分離を長期間連続して円滑に行うことができる。したがって、本発明は、液相酸化による芳香族カルボン酸を製造するプロセス等の多くのプロセスに適用することができ、その工業的意義は極めて大きい。
1:晶析槽
2:凝縮器
3:ポンプ
4:分離器(RVF;ロータリーバキュームフィルター)
5:スラリー供給部
6:真空ポンプ
7:吸引部
8:濾材
9:ケーク
10:ダム
11:スラリー循環部
12:洗浄液管
13:ブロー用ガス供給管
14:ケーキ取出口
15:再スラリー槽
16:分離器
17:ドライヤー
18:製品取出口
19:気液分離槽
20:濾過液受槽
21:ポンプ
22:冷却器
23:封液受槽
24:凝縮液受槽
25:ポンプ
2:凝縮器
3:ポンプ
4:分離器(RVF;ロータリーバキュームフィルター)
5:スラリー供給部
6:真空ポンプ
7:吸引部
8:濾材
9:ケーク
10:ダム
11:スラリー循環部
12:洗浄液管
13:ブロー用ガス供給管
14:ケーキ取出口
15:再スラリー槽
16:分離器
17:ドライヤー
18:製品取出口
19:気液分離槽
20:濾過液受槽
21:ポンプ
22:冷却器
23:封液受槽
24:凝縮液受槽
25:ポンプ
Claims (5)
- 芳香族炭化水素を高温・高圧下、触媒成分を含む溶媒中で分子状酸素により酸化して芳香族カルボン酸を生成させ、反応生成液を降温する晶析工程を経て、芳香族カルボン酸の結晶と溶媒からなるスラリーを、分離器で結晶と溶媒とに分離することからなる芳香族カルボン酸の製造方法において、晶析槽で反応生成液を降温する際に、凝縮器で冷却して得られる凝縮液の全量を晶析槽に還流せず、その少なくとも一部を抜き出すことを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法。
- 芳香族炭化水素を高温・高圧下、触媒成分を含む溶媒中で分子状酸素により酸化して芳香族カルボン酸を生成させ、反応生成液を降温する晶析工程を経て、芳香族カルボン酸の結晶と溶媒からなるスラリーを、分離器で結晶と溶媒とに分離することからなる芳香族カルボン酸の製造方法において、晶析槽で反応生成液を降温する際に、凝縮器で冷却して得られる凝縮液の少なくとも一部を、分離器で結晶を洗浄するための洗浄液として使用することを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法。
- 分離器がロータリーバキュームフィルターである請求項1または2記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 溶媒が酢酸である請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 芳香族カルボン酸がテレフタル酸である請求項1〜4のいずれか1項記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
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2004
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