JP2005248651A - 耐震補強構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 両側に立設した柱部材11,12及び当該両側の柱部材に横設されている上下の梁部材13,14から形成されている既設梁柱架構10と、複数のコンクリートブロック21〜27を結合手段によって積層することにより前記既設梁柱架構の内面に構築された組積壁20と、から構成されている耐震補強構造Kであって、前記既設梁柱架構と前記組積壁との間には所定間隔の間隙部16,17が設けられており、当該間隙部には無筋状態でグラウト材46が充填されることにより、前記既設梁柱架構と前記組積壁とが一体化されている耐震補強構造とした。
【選択図】 図1
Description
(1)特殊な形状のコンクリートブロックを使用するためその設置が煩雑であり、当該コンクリートブロック自体の施工費用が高くなってしまう。また、地震時水平力に抵抗するための鉄筋の配筋が煩雑である。
(2)コンクリートブロックを一体化するためにグラウト材を用いている。このグラウト材はエポキシ樹脂等の接着剤に比べて安価ではあるが、硬化したコンクリート面に対する付着力は通常のモルタルやセメントペーストと変わらないため、コンクリートブロック同士をグラウト材で接着しても個々のコンクリートブロックの母材強度に達する以前に接着面で破壊する場合が多い。したがって、複数のコンクリートブロックで構成される壁材の一体性を終局時でも保証し、既設架構の耐震性を向上させるために必要な接着強度を発揮させることができない。
また、地震時におけるせん断抵抗は、壁が斜め圧縮材となって層せん断力と釣合う機構を想定し、既設柱梁架構と組積壁との間の応力伝達は、圧縮力と摩擦によるせん断力により行うとして設計するため、両者の隙間を直接繋いで引張力を伝達する鉄筋は設置しない。したがって、既設柱梁架構に、あと施工アンカーを打設する必要もなく、それに伴う騒音、粉塵や振動の問題もない上に、せん断力を負担するために壁筋を配する必要もない。
加えて、グラウト材の充填は柱部材及び上側の梁部材と組積壁との間隙部のみに行うため、特許文献2に記載の補強構造と比べて少量の充填量で済み、経済性に優れる補強構造とすることができる。また壁面全体を覆う型枠の設置や脱型およびコンクリートの養生期間も必要ないため、迅速に短工期で施工することが可能となる。
本実施の形態では、既設建物の耐震強度を増加させることを目的として、既設建物の梁柱架構10(以下、単に「既設梁柱架構」という)の内面に、当該既設梁柱架構10を補強するための組積壁20を設置する場合について述べる。
なお、前記既設梁柱架構10の上下の梁部材13,14の上面部に直交する向き(図1における紙面に直交する向き)に床スラブ19が設けられているとともに、当該床スラブ19に接続するように左右の柱部材11,12には梁部材18が設けられている。
なお、左右の柱部材11,12とコンクリートブロック21〜27、及び、上梁部材13とコンクリートブロック27の間には、間隙部16,17が形成されている。
各コンクリートブロック21〜27の中空部31は原則的には空洞(なにも充填されていない状態)であり、前記縦鉄筋41及び横鉄筋42が配筋されている中空部31のみにモルタルが充填されている。また、各コンクリートブロック21〜27の間に形成される縦目地及び横目地には目地材としてポリマーセメントモルタル45が介装されている。この構造により、前記縦目地及び横目地に、コンクリートブロック21〜27と同等以上の強度が確保され、結合された複数のコンクリートブロック21〜27が一体となって、圧縮やせん断などの力に対して抵抗することができる。
ている。
なお、ポリマーセメントモルタル45の圧縮強度は、コンクリートブロック21〜27の母材破壊を保証するためには1.5N/mm2であることが好ましい。
なお、この場合におけるポリマーセメントモルタル45の圧縮強度は、コンクリートブロック21〜27の母材破壊を保証するためには2.0N/mm2程度又はそれ以上であることが好ましい。
従って、上下の梁部材13,14、及び、左右の柱部材11,12の柱頭部と柱脚部の組積壁20との間隙部16,17に関しては強固に接合するものとする。一方、左右の柱部材11,12の柱頭部及び柱脚部以外の部分と組積壁20との間隙部に関しては、強固な接合は必要ではないため、水平方向の力の伝達程度や遮音性能、及び防火区画の有無等、必要に応じてグラウト材46の充填を行えばよい。
本発明の耐震補強構造Kの構築方法について説明する。
本実施の耐震補強構造Kの構築方法は、(1)コンクリートブロック設置工程と、(2)被覆部材貼設工程と、(3)グラウト材充填工程と、から成り立っている。
本工程は、既設梁柱架構10の内側空間部に、複数のコンクリートブロック21〜27を積層する作業を行う工程である。
本工程は、組積壁20の裏面を被覆するために、被覆部材である鉄板(図示せず)を貼設する作業を行う工程である。
本工程では、ポリマーセメントモルタル45をコンクリートブロック21〜27の裏面に吹き付け又は塗布して接着剤層を設けた上に鉄板を貼り付けることにより行う。
本工程は、既設梁柱架構10と組積壁20との間に形成された間隙部16,17にグラウト材46を充填する作業を行う工程である。
本工程では、左右の柱部材11,12及び上梁13と組積壁20との間隙部16,17の前面及び後面に型枠(図示せず)を設置して密閉し、当該間隙部16,17にグラウト材46を充填し、既設梁柱架構10と組積壁20とを一体化する作業を行う。
本発明の耐震補強構造Kによれば、特殊な形状のコンクリートブロックを使用することなく、市販のコンクリートブロック21〜27を用いて安価に組積壁20を構築することができる。そのため、工事中に種々の制限が課されて現場打ちで補強用耐震壁を構築することができない場合であっても、騒音の発生を抑えながら、人力で容易に施工を行うことができる。
また、コンクリートブロック21〜27は、目地材としてのポリマーセメントモルタル45により一体化され、目地の強度はコンクリートブロック21〜27と同等以上であるために目地が弱点となることはなく、当該コンクリートブロック21〜27と同様に圧縮やせん断などの力を負担することができる。
また、コンクリートブロック21〜27の中空部31は、原則的に空洞となっているため、グラウト材や接着剤等を節約することができ、材料、手間、時間等を節約して施工費を安価にすることができる。
特に、既設梁柱架構は鉄筋コンクリート造としたが、当該構造に限定されるものではなく、例えば鉄骨鉄筋コンクリート造の既設梁柱架構に適用してもよい。
さらにグラウト材は既設柱梁架構と組積壁の間の間隙部を充填して、圧縮力やせん断力を伝達できるものであればよく、モルタルやセメントペーストまたはコンクリートなど、同様の機能を発揮できるものであればよい。また組積壁の内部に設けられる縦筋及び横筋については、他の方法で施工性や安全性を確保できる場合には、必ずしも設ける必要はない。
11,12 柱部材
13,14 梁部材
16,17 間隙部
20 組積壁
21〜27 コンクリートブロック
45 ポリマーセメントモルタル
46 グラウト材
50,50’ 被覆部材
K,K’ 耐震補強構造
Claims (4)
- 両側に立設した柱部材及び当該両側の柱部材に横設されている上下の梁部材から形成されている既設梁柱架構と、
複数のコンクリートブロックを結合手段を用いて積層することにより前記既設梁柱架構の内面に構築された組積壁と、から構成されている耐震補強構造であって、
前記既設梁柱架構と前記組積壁との間には所定間隔の間隙部が設けられており、
当該間隙部には無筋状態でグラウト材が充填されることにより、前記既設梁柱架構と前記組積壁とが一体化されていることを特徴とする耐震補強構造。 - 前記結合手段は、接着剤により貼設され、前記組積壁の少なくとも一部を被覆する被覆部材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐震補強構造。
- 両側に立設した柱部材及び当該両側の柱部材に横設されている上下の梁部材から形成されている既設梁柱架構と、
目地材に接着剤を用いて複数のコンクリートブロックを積層することによって、前記既設梁柱架構の内面に構築された組積壁と、から構成されている耐震補強構造であって、
前記既設梁柱架構と前記組積壁との間には所定間隔の間隙部が設けられており、
当該間隙部には無筋状態でグラウト材が充填されることにより、前記既設梁柱架構と前記組積壁とが一体化されていることを特徴とする耐震補強構造。 - 前記接着剤は、ポリマーセメントモルタルであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耐震補強構造。
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