JP2005137771A - 薬液接触面に固着したフッ素含有層が形成された医療用機器及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも薬液接触面に固着したフッ素含有層が形成されていることを特徴とする医療用機器及び医療用機器の少なくとも薬液接触面に液状フッ素系ポリマーをコーティングし、次いでプラズマ処理することを特徴とする薬液接触面にフッ素含有層が形成された医療用機器の製造方法。
【選択図】 なし
Description
又、プラスチック製プレフィルド注射器の密封性を向上させるために、少なくとも摺動面にフッ素系樹脂薄膜が形成されたゴム製ピストンの該薄膜上に更に液状フッ素系ポリマーの薄膜を設けることで、ゴム製ピストンと該注射器の内面との隙間からの液漏れを防止し、優れた摺動性を保持する方法も提案されている(特許文献2)。この方法でも、液状フッ素系ポリマーが剥離するおそれがある。
本発明における医療用機器は、ゴム製ピストンの摺動によって薬液が投与される注射器、薬液等の容器兼注射器であるプレフィルド注射器、採血用注射器等の注射器類、カートリッジ等である。
プラスチックとしては、注射器やプレフィルド注射器の製造に従来から使用されているプラスチックがいずれも使用可能であり、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂や環状オレフィン−エチレン共重合樹脂(例えば、特開平5−300939号公報等に記載の)等が挙げられるが、硬質で透明性や耐熱性に優れ、医薬品との化学的相互作用のない環状オレフィン系樹脂や環状オレフィン−エチレン共重合樹脂の使用が好ましい。
注射器は、通常、薬液が充填される円筒(注射筒)とその一方の頂部に薬液を投与する注射針の取付け口(ノズル)及び他端にフランジが形成された構造を有している。
本発明で使用するフッ素系ポリマーとしては、液状のフッ素系ポリマーが好ましい。ここで液状ポリマーとは、オリゴマーないし分子量に関係なく低分子量の液状の重合体をいう。液状フッ素系ポリマーとしては、フッ素系モノマーの液状の重合体又は共重合体が挙げられる。例えば、三フッ化塩化エチレンの低重合体(下記の式(1)) 、パーフルオロポリエーテル(下記の式(2)、(3))、パーフルオロアルキルポリエーテル(下記の式(4))等のパーフルオロポリエーテル類の低重合体等が挙げられる。
本発明におけるプラズマ処理は、公知のプラズマ処理装置を用いて行なうことができ、処理装置は特に制限されない。導入ガスとしては、例えば、酸素、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が好ましい。出力は処理時間にもより、特に制限されないが、通常、数W〜300W程度である。処理は真空下でも大気圧下でもよい。処理温度も特に制限されないが、通常、常温〜100℃程度である。このプラズマ処理によって、注射器の内面にコーティングされた液状フッ素系ポリマーからのフッ素含有層は注射器内面に固着され、良溶剤で拭いても除去されず、ピストンを繰り返し摺動させても内面から剥離せず、摺動抵抗の変化は見られない。
本発明では、気密性保持の点から上記の内面に固着したフッ素含有層が形成された注射器に使用する特に好ましいピストンは、少なくとも注射器内面との接触面と薬液接触面にフッ素系ポリマーの薄膜がラミネートされたピストン又はフッ素系ポリマー製ピストンである。両者の親和性によって気密性が保持される。上記のラミネートされたピストンの代わりに、フッ素系ポリマーを使用しないピストンを、前記同様に液状フッ素系ポリマーでコーティングし、プラズマ処理して固着したフッ素含有層を形成したものを使用することもできる。
市販の環状オレフィン系ポリマーを用い、内径が7mmの容量1mlの注射器を射出成形により作製した。以下の比較例もこの注射器を使用する。
一方、液状フッ素系ポリマー(ダイキン工業社製デムナムS−200)の0.5重量%のコーティング溶液(溶剤HCFC)を用意し、この溶液に上記の注射器を浸漬し、引き上げて室温で風乾した。
上記の内面が液状フッ素系ポリマーでコーティングされた注射器をプラズマ処理装置(サムコ社製RFジェネレーター:サムコRFG−300)を用いて処理した。
処理条件は、導入ガスが窒素ガス、真空度約0.015Torr、温度23℃、出力100W、処理時間2分である。プラズマ処理した注射器(サンプルNo.1)及びプラズマ処理後、滅菌処理(乾燥滅菌を実施)した注射器(サンプルNo.2)を作製した。
(乾燥滅菌:サンプルを滅菌袋に入れ、オートクレーブで121℃で30分滅菌)
実施例1と同様にして内面が液状フッ素系ポリマーでコーティングされた注射器を作製した(サンプルNo.3)。更に実施例1と同様に滅菌した注射器(サンプルNo.4)も作製した。
上記実施例及び比較例の注射器(サンプルNo.1〜4)についてピストン挿入時及び摺動時の摺動抵抗を測定した。ゴム製ピストンとしてプランジャー接合面以外の全面がフッ素系樹脂薄膜でラミネートされているブチルゴム製ピストンをポリプロピレン製プランジャーと連結した。注射器を下向きに固定し、圧力センサー付き島津製作所製オートグラフAG−100Bの球座式圧縮試験用圧盤により、100mm/secの速度でプランジャーを注射筒に押し込み、この時の摺動抵抗値を測定する。得られた摺動測定チャートからピストン挿入時の最大値及びピストン摺動時の定常状態の平均値を読み取り、それぞれ最大摺動抵抗及び平均中間摺動抵抗とした。同一注射器とピストンを用いて上記試験を繰り返した。繰り返し時には、ピストン表面をHCFCで拭いた。以上の測定結果を表1及び表2に示す。
単に注射器の内面を液状フッ素系ポリマーでコーティングした場合(比較例1)には、繰り返し回数が3回以上ではコーティングの効果は消失する。
コーティング後にプラズマ処理することで(実施例1)、コーティングの効果は繰り返し回数が増加しても変わらない。このことは、注射器内面に固着したフッ素含有薄膜が形成されていることを示している(尚、フッ素原子の存在は別に用意した環状オレフィン系ポリマーシートに液状フッ素系ポリマーをコーティングし、注射器と同じ条件でプラズマ処理した面のATRから確認した。)。
プラズマ処理後に滅菌すると効果はより良好となるが、理由は不明である。
Claims (6)
- 少なくとも薬液接触面に固着したフッ素含有層が形成されていることを特徴とする医療用機器。
- フッ素含有層が、フッ素系ポリマー層である請求項1に記載の医療用機器。
- フッ素系ポリマーがパーフルオロポリエーテル類である請求項1又は2に記載の医療用機器。
- 注射器類である請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用機器。
- 医療用機器の少なくとも薬液接触面に液状フッ素系ポリマーをコーティングし、プラズマ処理することを特徴とする薬液接触面にフッ素含有層が形成された医療用機器の製造方法。
- 請求項5に記載の方法で製造される薬液接触面にフッ素含有層が形成された医療用機器。
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