JP2005029590A - 臭気を低減した天然ゴム - Google Patents
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Abstract
【課題】合成ゴムでは発揮できない、優れた物理的特性を有する天然ゴムにおいて、混練り中などに発生する天然ゴム特有の臭気を低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物を提供する。
【解決手段】凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【選択図】 なし
【解決手段】凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成ゴムでは発揮できない、優れた物理的特性を有する天然ゴムにおいて、混練り中などに発生する天然ゴム特有の臭気を低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴム業界で用いられている天然ゴムは、熱帯地方に栽培されるへベア・ブラジリエンスと呼ばれるゴムの樹の樹液(天然ゴムラテックス)を凝固・乾燥して得られるものである。
この天然ゴムラテックス粒子は、平均粒径1.0μm程度であり、タンパク質、ポリイソプレン、リン脂質等が複合的に絡み合ったものであり、また、このラテックスを遠心分離すると、上澄みからは、タンパク質、脂質などを含有するゴム層(35%)、中間層には、タンパク質、アミノ酸、有機酸を含有するセラム層(天然ゴム漿液、55%)、底部層には、タンパク質、窒素化合物、リン脂質等を含有するボトム層(沈積物層、10%)に分離される。
この天然ゴム成分以外に各種非ゴム成分を含む天然ゴムラテックスから天然ゴムを製造する方法には、その製法により、主として技術的各付けゴム(TSR)と燻製ゴム(RSS)に大別されている。
【0003】
TSRは、上級グレードと下級グレードに分類されている。上級グレードTSRは、新鮮ならラテックスを酸で凝固し、それを水洗・粉砕し、更に120℃前後の熱風で乾燥して製造される。また、下級グレードTSRは、ゴムの樹のラテックス回収カップ内でラテックスが自然凝固してできたカップランプや、小規模農家が採取したラテックスを箱状に凝固させて得られるスラブ等を水洗・粉砕し、更に乾燥して製造される。
これに対して、RSSは、ラテックスを酸で凝固し、ロールでシート状に圧延して未燻製シート(USS)を作り、更にこれを燻製して得られる。
【0004】
上記上級グレードTSRの生産工程においては、凝固前のラテックス、及びそれが凝固された直後には臭気は殆んどないが、120℃前後の熱風の乾燥工程中に天然の非ゴム成分である脂肪酸やタンパク質が酸化したり分解したりして悪臭を発するようになる。なお、この最上級グレードTSRは、ゴミ含有量が0.03%以下である。
また、上記下級グレードTSRの原料のカップランプやスラブは、農家で収穫されてから工場に入荷する前に約1ヶ月前後の流通期間があり、その間に非ゴム成分が酸化・分解して強い悪臭を発するようになる。
これらの悪臭は、水洗・粉砕工程でかなりの程度、洗い流されるが、次工程の熱風乾燥で再び非ゴム成分である脂肪酸やタンパク質が酸化したり分解したりして悪臭を発するようになる。
【0005】
一方、RSSの原料となるUSSは、燻製工場でラテックスを凝固させて準備されることもあるが、多くの場合、農家で生産されて燻製工場に売却される。上記前者のラテックスを凝固させたUSSでは臭気はほとんどないが、後者のUSSは、売却前に日陰干しで水分が3%前後になるまで乾燥される。その間、酸化・分解はあまり進行せず、臭気は有るがカップランプなどと比べるとかなり小さいものである。また、RSSの燻製温度は、TSRより低くて65℃前後であるので燻製中の非ゴム分の酸化・分解が小さく、TSRよりも臭気がかなり小さいものである。
【0006】
これらの製法により製造された天然ゴムは、出荷前にポリエチレンで梱包されたり、タルクで表面をコーティングされたりすること、ゴムの温度が既に室温まで下がっていることによって、流通時点では臭気は小さくて問題にならないものである。
【0007】
しかしながら、一般的に、天然ゴムは、合成ゴムと比較して分子量が大きいため、ゴム製品工場において各種配合剤を均一に混練りすることが難しいものである。従って、天然ゴムを少量の素練り促進剤と共に混練りし、ゴム分子量を適度な大きさに下げる操作などが必要となるものである。この操作等を、「素練り」という。
この素練り中にゴム温度が130〜150℃程度に上昇するものである。この温度上昇(発熱)により、天然ゴムに含有されていた臭気成分が発散すると共に、非ゴム成分が更に酸化・分解し新たな臭気を発散することとなる。これら臭気が工場内外に漏れると環境問題になりかねないのである。
【0008】
上記天然ゴムの素練りにより発生する臭気を捕捉してGC−MSで分析すると、酢酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸類、アルデヒド類、ピラジン類やピロール類等の窒素環状化合物、アンモニア等が検出された。
一般的に、高級脂肪酸が高温に晒されると、自動酸化を生じて低級脂肪酸とアルデヒド類を生成することが知られている。また、タンパク質とカルボニル化合物とが加熱されると、ストレッカー分解を生じて窒素環状化合物を、タンパク質が分解するとアンモニアを生成することも知られている。
他方、天然ゴムには、天然の高級脂肪酸やタンパク質などの非ゴム分が含まれることは上述の如く。良く知られている。従って、天然ゴムに含有される高級脂肪酸、タンパク質が、天然ゴム生産工程での燻製や熱乾燥、ゴム製品工場での素練りにおいても上記同様の反応を生じることは容易に推察される。
【0009】
この素練りゴムは、更に、カーボンブラックや各種配合薬品と共に混練りされるが、この工程では臭気がカーボンブラックなどに吸収されるため臭気問題は素練りほど大きくないが未だ特有の臭気を有するものである。
この臭気問題の対策のため、これまでに、混練り設備の排気ダクトに脱臭フィルターを設置したり、混練り設備周辺に香料を散布したり、様々な対応策を講じてきたが、それでも、対策が充分でない場合があり、更に、天然ゴムそのものの改善、すなわち、臭気が低減できる天然ゴムの出現が切望されているのが現状である。
【0010】
一方、天然ゴムの臭気を低減する方法としては、例えば、天然ゴムラテックスから天然ゴムを製造するに際し、天然ゴムラテックスを凝固前又は凝固後に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムから選ばれる1種以上のアルカリ溶液に接触させることにより、微生物によって非ゴム分から作り出される臭気成分の揮発性脂肪酸を不揮発性の脂肪酸に変えることにより臭いを低減した天然ゴムの製造方法が知られている(特許文献1参照)。
また、臭気を低減したものではないが、高品質天然ゴムを製造するプロセスとして、粉砕・水洗されたカップランプとラテックス凝固ゴムとをブレンドし、最大3mmの大きさに粉砕し、これを空気搬送中に0.1〜0.2%のヒドロキシルアミンサルファイト等の酸化防止剤を混合することにより、高品質天然ゴム(最上級グレードTSR)を得ることができることなどが知られている(特許文献2参照)。
更に、天然ゴム製品の使用によるアレルギー症状の発現を防止するために、近年、脱タンパク天然ゴムラテックスが開発され、使用されている。この脱タンパク天然ゴムラテックスは、耐老化性が劣るためラテックスにフェノール系等の老化防止剤を添加すること、更にこの老化防止剤の添加による変色防止(白色のラテックス全体が桃色に変色するピンキング現象防止)のために水溶性ジチオカルバミン酸誘導体の塩などの脱タンパク天然ゴムラテックスの変色防止剤を添加することなどが知られている(特許文献3参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−81504号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
米国特許公開2001/0049411(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開平10−139926号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に記載される技術は、微生物によって非ゴム分から作り出される臭気成分の揮発性脂肪酸を不揮発性の脂肪酸に変えることにより臭いを低減するものであるが、天然ゴムの臭気成分は揮発性脂肪酸のみならず、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなど多く存在するものであり、この技術では未だ天然ゴムの臭気を低減できないという課題を有するものである。
また、上記特許文献2に記載される技術には、臭気を低減させるために、特定量の酸化防止剤を添加するという認識等はなく、本願発明とは、その目的、技術思想などは相違するものである。
更に、上記特許文献3に記載される技術は、脱タンパク天然ゴムラテックスにおける耐老化性のために、老化防止剤を添加するものであるが、これは天然ゴムのポリマー鎖自身の老化を抑えるために添加するものであり、また、臭気を低減するためのものではない。従って、この特許文献3に記載される技術は、本願発明の脱タンパク処理をしない通常の天然ゴムのラテックスの臭気を低減を対象とし、ポリマー鎖自身の老化でなく、含まれているタンパク質、脂肪酸等の酸化を防いで、臭気を低減するものものとは、その目的、技術思想などは相違するものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、天然ゴムに含まれる揮発性脂肪酸のみならず、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなどの分解などによる特有の臭気成分の生成を簡易な手段等により抑制せしめて、臭気をより効果的に低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、天然ゴムの生産工程において、凝固前のラテックスに特定の臭気低減成分を乾燥ゴム分100質量部に対して、特定量の範囲で添加することにより、上記目的の天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)に存する。
(1) 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(2) 酸化防止剤の添加量が乾燥ゴム分100質量部に対して、0.001〜0.1質量部である上記(1)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(3) ラテックスは脱タンパク処理をしてないものである上記(1)又は(2)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(4) 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(5) 天然ゴム原料がラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種である上記(4)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(6) 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(7) 酸化防止剤がL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
(8) 酸化防止剤が硫黄系2次老化防止剤を含む少なくとも2種以上の酸化防止である上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
(9) 上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の天然ゴムに充填剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物。
(10) 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
(11) 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
(12) 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
【0015】
【発明の実施形態】
以下に、本発明の実施形態を発明ごとに詳しく説明する。
本発明の臭気を低減した天然ゴム及びその製造方法は、用いる天然ゴムラテックスの形態、加工度合い等に応じて好適な実施形態を規定するものであり、まず第1発明では、凝固前のラテックスに対しては、該凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とするものであり、第2発明では、10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を用いる場合、例えば、ラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種の天然ゴム原料の場合には、この天然ゴム原料を酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とするものであり、第3発明では、未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記第1発明〜第3発明の全てを含む場合をいう。
【0016】
本第1発明となる天然ゴム及びその製造方法は、凝固前のラテックスに対して、すなわち、ゴム成分の他、非ゴム成分(セラム成分、ボトム成分)を含む凝固前のラテックスに対して、酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加することを特徴とするものである。
本発明に用いる天然ゴムラテックスは、ゴム農園で採取(タッピング)された天然ゴムラテックス(ゴム樹液)であれば、特に限定されるものではない。なお、用いる天然ゴムラテックスは、タンパク質が優れたゴム物性の発現に有効である点から、脱タンパク処理をしてないものが好ましい。
【0017】
本発明で用いる酸化防止剤は、天然ゴムラテックスに含有される脂肪酸、タンパク質等が、分解・反応等して、天然ゴム生産工程での燻製や熱乾燥工程等や、ゴム製品工場での素練りにおいても生じる特有の臭気を低減するために使用するものである。
用いることができる酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類(Na,K等)、亜硫酸アルカリ土類金属塩類(Mg,Ca等)、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
【0018】
フェノール系老化防止剤としては、ゴム業界で使用される2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのモノフェノール系、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのポリフェノール系、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどのハイドロキノン系などが挙げられ、また、p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、例えば、N,N´−ジフェニル−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、(N−フェニル−N´−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(以下、「6C」と略称する)等が挙げられ、アミン・ケトン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
また、上述のL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ金属塩類、カテキン、トコフェロールは、食品の酸化防止剤として使用されるものであり、その安全性は確認されているものである。
更に、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリル−3,3´−チオジプロピオネートなどの硫黄系2次老化防止剤は、自動酸化で生じるヒドロペルオキシドを安定なアルコールに変えるので、他の酸化防止剤と併用することが特に有効であり、臭気低減効果が高いものである。
【0019】
これらの酸化防止剤において、上記フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤等は、ゴム業界において使用するものであるが、その使用時期は、素練り以後に用いるものであり、本発明では天然ゴム製造工程中等における臭気低減を目的としてラテックス凝固前等に添加するものであり、その使用時期、使用目的、用途が相違し、両者は区別化されるものである。
【0020】
これらの酸化防止剤の添加量は、凝固前のラテックスにおける乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部、好ましくは、0.001〜0.1質量部、更に好ましくは、0.01〜0.05質量部とすること望ましい。
この添加量が0.0001質量部未満では、添加量が少ないため、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、1.0質量部を越えると、添加量が多くなり、酸化防止剤がゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
なお、上述の酸化防止剤はそのまま添加してもよいが、更に良好な分散性を発揮させるために、水溶性の場合は、水溶液にして用いても良く、また、非水溶性の酸化防止剤は、まずエチルアルコール等に溶解し、それをカルボン酸塩ないしアルキルアリールスルホン産塩の界面活性剤入りの水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等)で希釈して懸濁液として添加してもよいものである。
【0021】
本第1発明では、凝固前のラテックスに対して、上記酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加して分散せしめた上で、凝固、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した天然ゴムが得られることとなる。
【0022】
本第2発明の天然ゴム及びその製造方法は、10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を上述の酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬するか、又は該水溶液でスプレーすることを特徴とするものである。
また、本第3発明の天然ゴム及びその製造方法は、未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とするものである。
【0023】
本第2発明で用いる天然ゴム原料としては、ラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの天然ゴム原料は、熱風乾燥のしやすさの点から、10mm以下、好ましくは、2〜5mmの大きさの粒子に粉砕されたものを用いることが望ましい。なお、10mm超過の天然ゴム原料では、乾燥に多大な時間を要するため、好ましくない。
また、本第3発明で用いる未燻製ゴムシートとしては、燻製による乾燥のしやすさの点から、大きさ(縦×横)が(400〜500)×(1000〜1300)mmであり、厚さが3〜5mmとなるものを用いることが好ましい。
【0024】
本第2及び第3発明において、用いる上述の酸化防止剤が水溶性の場合は、そのまま水溶液として用いる。また、非水溶性の酸化防止剤は、まずエチルアルコール等に溶解し、それをカルボン酸塩ないしアルキルアリールスルホン産塩の界面活性剤入りの水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等)で希釈して懸濁液とする。以下、懸濁液も含めて「水溶液」と呼ぶこととする。
本第2及び第3発明では、上述のように調製した酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に上記10mm以下の天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートを浸漬するか、または、該水溶液でスプレーすることにより、天然ゴム材料酸化防止剤をゴム表面に均一に付着させることができ、その上で、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した天然ゴムが得られることとなる。
【0025】
本第2及び第3発明において、用いる上述の酸化防止剤の水溶液濃度が0.005%未満では、薄すぎるため、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、5%超過の濃度では、酸化防止剤が多量にゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
また、浸漬時間は、原料ゴム材料又は未燻製ゴムシートの表面が水溶液で満遍無く濡れる時間だけでよいが、時間を増すにつれて酸化防止剤がゴム中に僅かながら浸透するのでより好ましく、生産効率上の観点から1秒〜10分、好ましくは、20秒〜1分程度とすることが望ましい。
また、スプレーの場合は、そのスプレーは、天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートのゴム表面がまんべんなく酸化防止剤で濡れるまで実施することが望ましい。
【0026】
このように構成される本発明では、▲1▼凝固前のラテックスに対して、酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加することにより、▲2▼10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を用いる場合には、この天然ゴム原料を酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬するか、又は該水溶液でスプレーすることにより、▲3▼未燻製ゴムシートの場合には、該シートを酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬することにより、凝固前のラテックスに均一に分散させることができ、また、天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートに対して酸化防止剤をゴム表面に均一に付着させることができ、その上で、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した目的の天然ゴムが得られることとなる。
特に、酸化防止剤は通常、粉状か粒子状であり、これらを天然ゴム材料、未燻製ゴムシートの表面に均一に付着させるのは難しいが、本題2及び第3発明では、酸化防止剤を水溶液又は水懸濁液にし、その中に粉砕ゴム粒子である天然ゴム材料や未燻製ゴムシートを浸漬したり、液をゴム粒子にスプレーしたりするので、必要最低限の量を簡便な手段でゴム粒子表面に均一に添加できる利点を有すると共に、燻製中又は熱風乾燥中、あるいは素練り中の非ゴム分の酸化・分解を抑制して臭気を低減した目的の天然ゴムが得られるものとなる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、上記で得られた天然ゴムに対して、充填剤、例えば、カーボンブラックやシリカなどの補強性補強剤、加硫促進剤、老化防止剤、イオウなどの加硫剤などを配合してなることを特徴とするものである。
本発明のゴム組成物では、臭気を低減した天然ゴムを用いるので、素練り以後の各種ゴム組成物製造工程においても、天然ゴム由来の臭気は低減した状態でゴ組成物が得られることとなる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を試験例、実施例及び比較例に基づいて具体的かつ詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〜7及び比較例1〕
下記表1に天然ゴム原料がカップランプの場合における下級グレードTSRの実施例及び比較例を示す。
下級グレードTSRの場合は、カップランプを水洗・粉砕し、最終的にシュレッダーマシンで10mm以下にしたゴム粒10kgを、予め準備しておいた下記表1に示す酸化防止剤の各水溶液濃度(50リットル)に1分間浸漬した。
浸漬後の各ゴムは、業界で一般に行われている常法で熱風乾燥し、各天然ゴム(下級グレードTSR)を得た。
得られた各天然ゴムについて、下記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0030】
1) 臭気濃度は、以下のような手順1)〜6)で実施された。すなわち、試験室用の3.7リッターのバンバリーミキサーで、循環水70℃、ローター回転数70rpmの条件で、天然ゴム2.2kgを素練り促進剤(ノクタイザーSK、大内新興化学工業社製)1.3kgと共に、3分30秒間素練りした。
2)素練り後、直ちにラムを上昇させ、ゴム投入口から排出する臭気の混じった空気をポンプでサンプリングバックに約2分間、約5リッター回収した。
3)サンプリングバッグに回収された臭気の混じった空気を、化学用シリンジで規定量採取し、それを予め清浄な空気を満たしておいた3リッターの臭い袋に注入した(サンプル)。注入量mlと3リッターとで希釈倍率を求めておく。例えば、注入量が1mlであれば、希釈倍率は3000である。
4)少なくとも3名の臭気モニターによって、清浄な空気と比較してサンプルに臭いが感じられるかどうかを鼻で臭いを判定した。
5)臭いが感じられるなら、希釈倍率を上げたサンプルを準備し、再度モニターによって臭いが感じられるかどうかを判定した。
6)臭いが感じられなくなった希釈倍率を臭気濃度とした。
以上の素練り臭気濃度測定手順は、以下の実施例においても共通である。
【0031】
【表1】
【0032】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜7は、比較例1(コントロール)に較べ、臭気濃度の低減効果を発揮することが判明した。
特に、実施例7では他の実施例1〜6に較べて2次老化防止剤の併用効果(更なる臭気濃度低減効果)が大きいことが判った。
【0033】
(試験例1)
上記実施例5と比較例1との天然ゴム夫々約10mgを150℃で10分間加熱し、発生するガスをGC−MSで分析し比較した。
その結果、比較例1の天然ゴムからは、多量の低級脂肪酸、アルデヒド類、アンモニア類、窒素環状化合物であるピロリジンが検出されたが、実施例5の天然ゴムからは約10分の1の低級脂肪酸が検出されたのみであった。
このことは、酸化防止剤が、非ゴム成分の脂肪酸やタンパク質の分解を防止していることを裏付けることが判る。
【0034】
〔実施例8〜12及び比較例2〕
下記表2に天然ゴム原料が未燻製ゴムシートの場合におけるRSSの実施例及び比較例を示す。
RSSの場合は、ラテックスを凝固し、絞りロールでシートにして得られたUSS(400×1200mm、厚さ4mm)1900gを、予め準備しておいた下記表2に示す酸化防止剤の各水溶液濃度(20リットル)に1分間浸漬した。
浸漬後の各ゴムは、業界で一般に行われている常法で燻製し、各天然ゴム(RSS)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表2に示す。
【0035】
〔実施例13〜19及び比較例3〕
下記表3に天然ゴム原料がラテックスの場合におけるTSRの実施例及び比較例を示す。
乾燥ゴム分5kgを含有するラテックス17リットルに下記表3に示す添加量で酸化防止剤(水溶液)を添加して、撹拌棒で撹拌することにより充分分散せしめた。
このラテックスをギ酸で凝固し、業界で一般に行われている常法で各天然ゴム(上級TSR)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表3に示す。
【0036】
〔実施例20〜23及び比較例4〕
下記表4に天然ゴム原料がラテックスの場合におけるRSSの実施例及び比較例を示す。
乾燥ゴム分5kgを含有するラテックス17リットルに下記表4に示す添加量で酸化防止剤(水溶液)を添加して、撹拌棒で撹拌することにより充分分散せしめた。
このラテックスをギ酸で凝固し、業界で一般に行われている常法で各天然ゴム(RSS)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表4に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
上記表2〜表4の結果に示すように、本発明範囲となる実施例8〜12の天然ゴム原料が未燻製ゴムシートの場合におけるRSSの場合、実施例13〜19の天然ゴム原料がラテックスの場合におけるTSRの場合及び実施例20〜23の天然ゴム原料がラテックスの場合におけるRSSの場合においても、比較例2〜4(各コントロール)に較べ、臭気濃度の低減効果を発揮することが判明した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、天然ゴムに含まれる脂肪酸、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなどの分解などによる特有の臭気成分の生成を簡易な手段等により抑制せしめて、天然ゴム特有の臭気をより効果的に低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成ゴムでは発揮できない、優れた物理的特性を有する天然ゴムにおいて、混練り中などに発生する天然ゴム特有の臭気を低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴム業界で用いられている天然ゴムは、熱帯地方に栽培されるへベア・ブラジリエンスと呼ばれるゴムの樹の樹液(天然ゴムラテックス)を凝固・乾燥して得られるものである。
この天然ゴムラテックス粒子は、平均粒径1.0μm程度であり、タンパク質、ポリイソプレン、リン脂質等が複合的に絡み合ったものであり、また、このラテックスを遠心分離すると、上澄みからは、タンパク質、脂質などを含有するゴム層(35%)、中間層には、タンパク質、アミノ酸、有機酸を含有するセラム層(天然ゴム漿液、55%)、底部層には、タンパク質、窒素化合物、リン脂質等を含有するボトム層(沈積物層、10%)に分離される。
この天然ゴム成分以外に各種非ゴム成分を含む天然ゴムラテックスから天然ゴムを製造する方法には、その製法により、主として技術的各付けゴム(TSR)と燻製ゴム(RSS)に大別されている。
【0003】
TSRは、上級グレードと下級グレードに分類されている。上級グレードTSRは、新鮮ならラテックスを酸で凝固し、それを水洗・粉砕し、更に120℃前後の熱風で乾燥して製造される。また、下級グレードTSRは、ゴムの樹のラテックス回収カップ内でラテックスが自然凝固してできたカップランプや、小規模農家が採取したラテックスを箱状に凝固させて得られるスラブ等を水洗・粉砕し、更に乾燥して製造される。
これに対して、RSSは、ラテックスを酸で凝固し、ロールでシート状に圧延して未燻製シート(USS)を作り、更にこれを燻製して得られる。
【0004】
上記上級グレードTSRの生産工程においては、凝固前のラテックス、及びそれが凝固された直後には臭気は殆んどないが、120℃前後の熱風の乾燥工程中に天然の非ゴム成分である脂肪酸やタンパク質が酸化したり分解したりして悪臭を発するようになる。なお、この最上級グレードTSRは、ゴミ含有量が0.03%以下である。
また、上記下級グレードTSRの原料のカップランプやスラブは、農家で収穫されてから工場に入荷する前に約1ヶ月前後の流通期間があり、その間に非ゴム成分が酸化・分解して強い悪臭を発するようになる。
これらの悪臭は、水洗・粉砕工程でかなりの程度、洗い流されるが、次工程の熱風乾燥で再び非ゴム成分である脂肪酸やタンパク質が酸化したり分解したりして悪臭を発するようになる。
【0005】
一方、RSSの原料となるUSSは、燻製工場でラテックスを凝固させて準備されることもあるが、多くの場合、農家で生産されて燻製工場に売却される。上記前者のラテックスを凝固させたUSSでは臭気はほとんどないが、後者のUSSは、売却前に日陰干しで水分が3%前後になるまで乾燥される。その間、酸化・分解はあまり進行せず、臭気は有るがカップランプなどと比べるとかなり小さいものである。また、RSSの燻製温度は、TSRより低くて65℃前後であるので燻製中の非ゴム分の酸化・分解が小さく、TSRよりも臭気がかなり小さいものである。
【0006】
これらの製法により製造された天然ゴムは、出荷前にポリエチレンで梱包されたり、タルクで表面をコーティングされたりすること、ゴムの温度が既に室温まで下がっていることによって、流通時点では臭気は小さくて問題にならないものである。
【0007】
しかしながら、一般的に、天然ゴムは、合成ゴムと比較して分子量が大きいため、ゴム製品工場において各種配合剤を均一に混練りすることが難しいものである。従って、天然ゴムを少量の素練り促進剤と共に混練りし、ゴム分子量を適度な大きさに下げる操作などが必要となるものである。この操作等を、「素練り」という。
この素練り中にゴム温度が130〜150℃程度に上昇するものである。この温度上昇(発熱)により、天然ゴムに含有されていた臭気成分が発散すると共に、非ゴム成分が更に酸化・分解し新たな臭気を発散することとなる。これら臭気が工場内外に漏れると環境問題になりかねないのである。
【0008】
上記天然ゴムの素練りにより発生する臭気を捕捉してGC−MSで分析すると、酢酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸類、アルデヒド類、ピラジン類やピロール類等の窒素環状化合物、アンモニア等が検出された。
一般的に、高級脂肪酸が高温に晒されると、自動酸化を生じて低級脂肪酸とアルデヒド類を生成することが知られている。また、タンパク質とカルボニル化合物とが加熱されると、ストレッカー分解を生じて窒素環状化合物を、タンパク質が分解するとアンモニアを生成することも知られている。
他方、天然ゴムには、天然の高級脂肪酸やタンパク質などの非ゴム分が含まれることは上述の如く。良く知られている。従って、天然ゴムに含有される高級脂肪酸、タンパク質が、天然ゴム生産工程での燻製や熱乾燥、ゴム製品工場での素練りにおいても上記同様の反応を生じることは容易に推察される。
【0009】
この素練りゴムは、更に、カーボンブラックや各種配合薬品と共に混練りされるが、この工程では臭気がカーボンブラックなどに吸収されるため臭気問題は素練りほど大きくないが未だ特有の臭気を有するものである。
この臭気問題の対策のため、これまでに、混練り設備の排気ダクトに脱臭フィルターを設置したり、混練り設備周辺に香料を散布したり、様々な対応策を講じてきたが、それでも、対策が充分でない場合があり、更に、天然ゴムそのものの改善、すなわち、臭気が低減できる天然ゴムの出現が切望されているのが現状である。
【0010】
一方、天然ゴムの臭気を低減する方法としては、例えば、天然ゴムラテックスから天然ゴムを製造するに際し、天然ゴムラテックスを凝固前又は凝固後に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムから選ばれる1種以上のアルカリ溶液に接触させることにより、微生物によって非ゴム分から作り出される臭気成分の揮発性脂肪酸を不揮発性の脂肪酸に変えることにより臭いを低減した天然ゴムの製造方法が知られている(特許文献1参照)。
また、臭気を低減したものではないが、高品質天然ゴムを製造するプロセスとして、粉砕・水洗されたカップランプとラテックス凝固ゴムとをブレンドし、最大3mmの大きさに粉砕し、これを空気搬送中に0.1〜0.2%のヒドロキシルアミンサルファイト等の酸化防止剤を混合することにより、高品質天然ゴム(最上級グレードTSR)を得ることができることなどが知られている(特許文献2参照)。
更に、天然ゴム製品の使用によるアレルギー症状の発現を防止するために、近年、脱タンパク天然ゴムラテックスが開発され、使用されている。この脱タンパク天然ゴムラテックスは、耐老化性が劣るためラテックスにフェノール系等の老化防止剤を添加すること、更にこの老化防止剤の添加による変色防止(白色のラテックス全体が桃色に変色するピンキング現象防止)のために水溶性ジチオカルバミン酸誘導体の塩などの脱タンパク天然ゴムラテックスの変色防止剤を添加することなどが知られている(特許文献3参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−81504号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
米国特許公開2001/0049411(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開平10−139926号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に記載される技術は、微生物によって非ゴム分から作り出される臭気成分の揮発性脂肪酸を不揮発性の脂肪酸に変えることにより臭いを低減するものであるが、天然ゴムの臭気成分は揮発性脂肪酸のみならず、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなど多く存在するものであり、この技術では未だ天然ゴムの臭気を低減できないという課題を有するものである。
また、上記特許文献2に記載される技術には、臭気を低減させるために、特定量の酸化防止剤を添加するという認識等はなく、本願発明とは、その目的、技術思想などは相違するものである。
更に、上記特許文献3に記載される技術は、脱タンパク天然ゴムラテックスにおける耐老化性のために、老化防止剤を添加するものであるが、これは天然ゴムのポリマー鎖自身の老化を抑えるために添加するものであり、また、臭気を低減するためのものではない。従って、この特許文献3に記載される技術は、本願発明の脱タンパク処理をしない通常の天然ゴムのラテックスの臭気を低減を対象とし、ポリマー鎖自身の老化でなく、含まれているタンパク質、脂肪酸等の酸化を防いで、臭気を低減するものものとは、その目的、技術思想などは相違するものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、天然ゴムに含まれる揮発性脂肪酸のみならず、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなどの分解などによる特有の臭気成分の生成を簡易な手段等により抑制せしめて、臭気をより効果的に低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、天然ゴムの生産工程において、凝固前のラテックスに特定の臭気低減成分を乾燥ゴム分100質量部に対して、特定量の範囲で添加することにより、上記目的の天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)に存する。
(1) 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(2) 酸化防止剤の添加量が乾燥ゴム分100質量部に対して、0.001〜0.1質量部である上記(1)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(3) ラテックスは脱タンパク処理をしてないものである上記(1)又は(2)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(4) 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(5) 天然ゴム原料がラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種である上記(4)記載の臭気を低減した天然ゴム。
(6) 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
(7) 酸化防止剤がL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
(8) 酸化防止剤が硫黄系2次老化防止剤を含む少なくとも2種以上の酸化防止である上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
(9) 上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の天然ゴムに充填剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物。
(10) 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
(11) 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
(12) 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
【0015】
【発明の実施形態】
以下に、本発明の実施形態を発明ごとに詳しく説明する。
本発明の臭気を低減した天然ゴム及びその製造方法は、用いる天然ゴムラテックスの形態、加工度合い等に応じて好適な実施形態を規定するものであり、まず第1発明では、凝固前のラテックスに対しては、該凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とするものであり、第2発明では、10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を用いる場合、例えば、ラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種の天然ゴム原料の場合には、この天然ゴム原料を酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とするものであり、第3発明では、未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記第1発明〜第3発明の全てを含む場合をいう。
【0016】
本第1発明となる天然ゴム及びその製造方法は、凝固前のラテックスに対して、すなわち、ゴム成分の他、非ゴム成分(セラム成分、ボトム成分)を含む凝固前のラテックスに対して、酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加することを特徴とするものである。
本発明に用いる天然ゴムラテックスは、ゴム農園で採取(タッピング)された天然ゴムラテックス(ゴム樹液)であれば、特に限定されるものではない。なお、用いる天然ゴムラテックスは、タンパク質が優れたゴム物性の発現に有効である点から、脱タンパク処理をしてないものが好ましい。
【0017】
本発明で用いる酸化防止剤は、天然ゴムラテックスに含有される脂肪酸、タンパク質等が、分解・反応等して、天然ゴム生産工程での燻製や熱乾燥工程等や、ゴム製品工場での素練りにおいても生じる特有の臭気を低減するために使用するものである。
用いることができる酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類(Na,K等)、亜硫酸アルカリ土類金属塩類(Mg,Ca等)、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
【0018】
フェノール系老化防止剤としては、ゴム業界で使用される2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのモノフェノール系、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのポリフェノール系、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどのハイドロキノン系などが挙げられ、また、p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、例えば、N,N´−ジフェニル−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、(N−フェニル−N´−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(以下、「6C」と略称する)等が挙げられ、アミン・ケトン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
また、上述のL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ金属塩類、カテキン、トコフェロールは、食品の酸化防止剤として使用されるものであり、その安全性は確認されているものである。
更に、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリル−3,3´−チオジプロピオネートなどの硫黄系2次老化防止剤は、自動酸化で生じるヒドロペルオキシドを安定なアルコールに変えるので、他の酸化防止剤と併用することが特に有効であり、臭気低減効果が高いものである。
【0019】
これらの酸化防止剤において、上記フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤等は、ゴム業界において使用するものであるが、その使用時期は、素練り以後に用いるものであり、本発明では天然ゴム製造工程中等における臭気低減を目的としてラテックス凝固前等に添加するものであり、その使用時期、使用目的、用途が相違し、両者は区別化されるものである。
【0020】
これらの酸化防止剤の添加量は、凝固前のラテックスにおける乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部、好ましくは、0.001〜0.1質量部、更に好ましくは、0.01〜0.05質量部とすること望ましい。
この添加量が0.0001質量部未満では、添加量が少ないため、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、1.0質量部を越えると、添加量が多くなり、酸化防止剤がゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
なお、上述の酸化防止剤はそのまま添加してもよいが、更に良好な分散性を発揮させるために、水溶性の場合は、水溶液にして用いても良く、また、非水溶性の酸化防止剤は、まずエチルアルコール等に溶解し、それをカルボン酸塩ないしアルキルアリールスルホン産塩の界面活性剤入りの水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等)で希釈して懸濁液として添加してもよいものである。
【0021】
本第1発明では、凝固前のラテックスに対して、上記酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加して分散せしめた上で、凝固、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した天然ゴムが得られることとなる。
【0022】
本第2発明の天然ゴム及びその製造方法は、10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を上述の酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬するか、又は該水溶液でスプレーすることを特徴とするものである。
また、本第3発明の天然ゴム及びその製造方法は、未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とするものである。
【0023】
本第2発明で用いる天然ゴム原料としては、ラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの天然ゴム原料は、熱風乾燥のしやすさの点から、10mm以下、好ましくは、2〜5mmの大きさの粒子に粉砕されたものを用いることが望ましい。なお、10mm超過の天然ゴム原料では、乾燥に多大な時間を要するため、好ましくない。
また、本第3発明で用いる未燻製ゴムシートとしては、燻製による乾燥のしやすさの点から、大きさ(縦×横)が(400〜500)×(1000〜1300)mmであり、厚さが3〜5mmとなるものを用いることが好ましい。
【0024】
本第2及び第3発明において、用いる上述の酸化防止剤が水溶性の場合は、そのまま水溶液として用いる。また、非水溶性の酸化防止剤は、まずエチルアルコール等に溶解し、それをカルボン酸塩ないしアルキルアリールスルホン産塩の界面活性剤入りの水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等)で希釈して懸濁液とする。以下、懸濁液も含めて「水溶液」と呼ぶこととする。
本第2及び第3発明では、上述のように調製した酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に上記10mm以下の天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートを浸漬するか、または、該水溶液でスプレーすることにより、天然ゴム材料酸化防止剤をゴム表面に均一に付着させることができ、その上で、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した天然ゴムが得られることとなる。
【0025】
本第2及び第3発明において、用いる上述の酸化防止剤の水溶液濃度が0.005%未満では、薄すぎるため、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、5%超過の濃度では、酸化防止剤が多量にゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
また、浸漬時間は、原料ゴム材料又は未燻製ゴムシートの表面が水溶液で満遍無く濡れる時間だけでよいが、時間を増すにつれて酸化防止剤がゴム中に僅かながら浸透するのでより好ましく、生産効率上の観点から1秒〜10分、好ましくは、20秒〜1分程度とすることが望ましい。
また、スプレーの場合は、そのスプレーは、天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートのゴム表面がまんべんなく酸化防止剤で濡れるまで実施することが望ましい。
【0026】
このように構成される本発明では、▲1▼凝固前のラテックスに対して、酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加することにより、▲2▼10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料を用いる場合には、この天然ゴム原料を酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬するか、又は該水溶液でスプレーすることにより、▲3▼未燻製ゴムシートの場合には、該シートを酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬することにより、凝固前のラテックスに均一に分散させることができ、また、天然ゴム材料又は未燻製ゴムシートに対して酸化防止剤をゴム表面に均一に付着させることができ、その上で、TSR又はRSSの製造方法により燻製、熱風乾燥等を行えば、天然ゴムに含有される非ゴム分の酸化・分解が抑制され、臭気を低減した目的の天然ゴムが得られることとなる。
特に、酸化防止剤は通常、粉状か粒子状であり、これらを天然ゴム材料、未燻製ゴムシートの表面に均一に付着させるのは難しいが、本題2及び第3発明では、酸化防止剤を水溶液又は水懸濁液にし、その中に粉砕ゴム粒子である天然ゴム材料や未燻製ゴムシートを浸漬したり、液をゴム粒子にスプレーしたりするので、必要最低限の量を簡便な手段でゴム粒子表面に均一に添加できる利点を有すると共に、燻製中又は熱風乾燥中、あるいは素練り中の非ゴム分の酸化・分解を抑制して臭気を低減した目的の天然ゴムが得られるものとなる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、上記で得られた天然ゴムに対して、充填剤、例えば、カーボンブラックやシリカなどの補強性補強剤、加硫促進剤、老化防止剤、イオウなどの加硫剤などを配合してなることを特徴とするものである。
本発明のゴム組成物では、臭気を低減した天然ゴムを用いるので、素練り以後の各種ゴム組成物製造工程においても、天然ゴム由来の臭気は低減した状態でゴ組成物が得られることとなる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を試験例、実施例及び比較例に基づいて具体的かつ詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〜7及び比較例1〕
下記表1に天然ゴム原料がカップランプの場合における下級グレードTSRの実施例及び比較例を示す。
下級グレードTSRの場合は、カップランプを水洗・粉砕し、最終的にシュレッダーマシンで10mm以下にしたゴム粒10kgを、予め準備しておいた下記表1に示す酸化防止剤の各水溶液濃度(50リットル)に1分間浸漬した。
浸漬後の各ゴムは、業界で一般に行われている常法で熱風乾燥し、各天然ゴム(下級グレードTSR)を得た。
得られた各天然ゴムについて、下記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0030】
1) 臭気濃度は、以下のような手順1)〜6)で実施された。すなわち、試験室用の3.7リッターのバンバリーミキサーで、循環水70℃、ローター回転数70rpmの条件で、天然ゴム2.2kgを素練り促進剤(ノクタイザーSK、大内新興化学工業社製)1.3kgと共に、3分30秒間素練りした。
2)素練り後、直ちにラムを上昇させ、ゴム投入口から排出する臭気の混じった空気をポンプでサンプリングバックに約2分間、約5リッター回収した。
3)サンプリングバッグに回収された臭気の混じった空気を、化学用シリンジで規定量採取し、それを予め清浄な空気を満たしておいた3リッターの臭い袋に注入した(サンプル)。注入量mlと3リッターとで希釈倍率を求めておく。例えば、注入量が1mlであれば、希釈倍率は3000である。
4)少なくとも3名の臭気モニターによって、清浄な空気と比較してサンプルに臭いが感じられるかどうかを鼻で臭いを判定した。
5)臭いが感じられるなら、希釈倍率を上げたサンプルを準備し、再度モニターによって臭いが感じられるかどうかを判定した。
6)臭いが感じられなくなった希釈倍率を臭気濃度とした。
以上の素練り臭気濃度測定手順は、以下の実施例においても共通である。
【0031】
【表1】
【0032】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜7は、比較例1(コントロール)に較べ、臭気濃度の低減効果を発揮することが判明した。
特に、実施例7では他の実施例1〜6に較べて2次老化防止剤の併用効果(更なる臭気濃度低減効果)が大きいことが判った。
【0033】
(試験例1)
上記実施例5と比較例1との天然ゴム夫々約10mgを150℃で10分間加熱し、発生するガスをGC−MSで分析し比較した。
その結果、比較例1の天然ゴムからは、多量の低級脂肪酸、アルデヒド類、アンモニア類、窒素環状化合物であるピロリジンが検出されたが、実施例5の天然ゴムからは約10分の1の低級脂肪酸が検出されたのみであった。
このことは、酸化防止剤が、非ゴム成分の脂肪酸やタンパク質の分解を防止していることを裏付けることが判る。
【0034】
〔実施例8〜12及び比較例2〕
下記表2に天然ゴム原料が未燻製ゴムシートの場合におけるRSSの実施例及び比較例を示す。
RSSの場合は、ラテックスを凝固し、絞りロールでシートにして得られたUSS(400×1200mm、厚さ4mm)1900gを、予め準備しておいた下記表2に示す酸化防止剤の各水溶液濃度(20リットル)に1分間浸漬した。
浸漬後の各ゴムは、業界で一般に行われている常法で燻製し、各天然ゴム(RSS)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表2に示す。
【0035】
〔実施例13〜19及び比較例3〕
下記表3に天然ゴム原料がラテックスの場合におけるTSRの実施例及び比較例を示す。
乾燥ゴム分5kgを含有するラテックス17リットルに下記表3に示す添加量で酸化防止剤(水溶液)を添加して、撹拌棒で撹拌することにより充分分散せしめた。
このラテックスをギ酸で凝固し、業界で一般に行われている常法で各天然ゴム(上級TSR)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表3に示す。
【0036】
〔実施例20〜23及び比較例4〕
下記表4に天然ゴム原料がラテックスの場合におけるRSSの実施例及び比較例を示す。
乾燥ゴム分5kgを含有するラテックス17リットルに下記表4に示す添加量で酸化防止剤(水溶液)を添加して、撹拌棒で撹拌することにより充分分散せしめた。
このラテックスをギ酸で凝固し、業界で一般に行われている常法で各天然ゴム(RSS)を得た。
得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表4に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
上記表2〜表4の結果に示すように、本発明範囲となる実施例8〜12の天然ゴム原料が未燻製ゴムシートの場合におけるRSSの場合、実施例13〜19の天然ゴム原料がラテックスの場合におけるTSRの場合及び実施例20〜23の天然ゴム原料がラテックスの場合におけるRSSの場合においても、比較例2〜4(各コントロール)に較べ、臭気濃度の低減効果を発揮することが判明した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、天然ゴムに含まれる脂肪酸、アルデヒド類、窒素環状化合物、アンモニアなどの分解などによる特有の臭気成分の生成を簡易な手段等により抑制せしめて、天然ゴム特有の臭気をより効果的に低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物が提供される。
Claims (12)
- 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
- 酸化防止剤の添加量が乾燥ゴム分100質量部に対して、0.001〜0.1質量部である請求項1記載の臭気を低減した天然ゴム。
- ラテックスは脱タンパク処理をしてないものである請求項1又は2記載の臭気を低減した天然ゴム。
- 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
- 天然ゴム原料がラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の臭気を低減した天然ゴム。
- 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴム。
- 酸化防止剤がL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
- 酸化防止剤が硫黄系2次老化防止剤を含む少なくとも2種以上の酸化防止剤である請求項1〜7の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
- 請求項1〜8の何れか一つに記載の天然ゴムに充填剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物。
- 凝固前のラテックスに酸化防止剤を乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
- 10mm以下の大きさの粒子に粉砕された天然ゴム原料が酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
- 未燻製ゴムシートが酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されることを特徴とする臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
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