JP2005025953A - 放電管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】両端が開口したセラミックよりなるケース部材12の両端開口部を、無酸素銅より成る放電電極を兼ねた一対の蓋部材14,14で気密に封止することによって気密外囲器16を形成すると共に、上記蓋部材14,14の放電電極部18,18間に所定の放電間隙22を形成し、また、ケース部材12の内壁面24に、その両端が、放電電極を兼ねた上記蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて対向配置された線状のトリガ放電膜28を複数形成すると共に、上記放電電極部18の表面に、アルカリヨウ化物が含有された絶縁性の被膜30を形成し、さらに、上記気密外囲器16内に、アルゴンより成る放電ガスを0.3〜5気圧の圧力で封入した放電管10。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は放電管に係り、特に、プロジェクターや自動車のメタルハライドランプ等の高圧放電ランプやガス調理器等の着火プラグに、点灯用又は着火用の定電圧を供給するためのスイッチングスパークギャップとして、或いは、サージ電圧を吸収するためのガスアレスタ(避雷管)として好適に使用できる放電管に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の放電管として、本出願人は、先に特開2003−7420号を提案した。この放電管60は、図5に示すように、両端が開口した絶縁材よりなる円筒状のケース部材62の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材64,64で気密に封止することによって気密外囲器66を形成し、該気密外囲器66内に、所定の放電ガスを封入してなる。
【0003】
上記蓋部材64は、気密外囲器66の中心に向けて大きく突き出た平面状の放電電極部68と、ケース部材62の端面に接する接合部70を備えており、両蓋部材64,64の放電電極部68,68間には、所定の放電間隙72が形成されている。
また、上記ケース部材62の内壁面74には、微小放電間隙76を隔てて対向配置された一対のトリガ放電膜78,78が、複数組形成されている。一対のトリガ放電膜78,78の内、一方のトリガ放電膜78は、一方の放電電極部68と電気的に接続され、他方のトリガ放電膜78は、他方の放電電極部68と電気的に接続されている。
上記放電電極部68の表面には、放電開始電圧の安定に効果的なアルカリヨウ化物が含有された絶縁性の被膜80が形成されている。
上記気密外囲器66内に封入する放電ガスとしては、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、キセノン等の希ガスあるいは窒素ガス等の不活性ガスの単体又は混合ガスが該当する。また、希ガスあるいは不活性ガスの単体又は混合ガスと、H2等の負極性ガスとの混合ガスが該当する。
【0004】
上記構成を備えた放電管60の放電電極部68,68間に、当該放電管60の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜78,78間の微小放電間隙76に電界が集中し、これにより微小放電間隙76に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部68,68間の放電間隙72へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。
【0005】
この種従来の放電管60においては、放電電極部68の構成材料として無酸素銅が広く用いられている。その理由は、無酸素銅で構成された放電電極部68が、放電生成時に酸素等の不純ガスを放出することがなく、気密外囲器66内の放電ガス組成に悪影響を与えることがないためである。
【特許文献1】
特開2003−7420号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、放電電極部68を無酸素銅で構成した場合には、追随放電開始電圧の低下を生じ、これが放電管60の寿命を短くする要因となっていた。
【0007】
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、追随放電開始電圧の低下を生じることのない長寿命な放電管を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、放電ガスの構成材料、及び放電ガスの封入ガス圧について種々検討を試みた結果、放電ガスをアルゴン単体で構成すると共に、その封入ガス圧を0.3〜5気圧とした場合に、追随放電開始電圧の低下を防止でき、放電管の寿命特性の向上に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明に係る放電管は、無酸素銅で構成された複数の放電電極を放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密外囲器内に封入してなる放電管において、上記放電ガスをアルゴンで構成すると共に、該アルゴンを0.3〜5気圧の圧力で気密外囲器内に封入したことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る放電管にあっては、放電ガスをアルゴンで構成すると共に、該アルゴンを0.3〜5気圧の圧力で気密外囲器内に封入したことにより、追随放電開始電圧の低下を防止することができ、長寿命な放電管を実現することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る放電管10は、図1に示すように、両端が開口した絶縁材としてのセラミックよりなる円筒状のケース部材12の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材14,14で気密に封止することによって気密外囲器16を形成してなる。
【0011】
上記蓋部材14は、気密外囲器16の中心に向けて大きく突き出た平面状の放電電極部18と、ケース部材12の端面に接する接合部20を備えており、両蓋部材14,14の放電電極部18,18間には、所定の放電間隙22が形成されている。尚、ケース部材12の端面と蓋部材14の接合部20とは、銀ろう等のシール材(図示せず)を介して気密封止されている。上記放電間隙22は、例えば1.5mm程度と成される。
【0012】
また、上記ケース部材12の内壁面24には、その両端が、放電電極を兼ねた上記蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて対向配置された線状のトリガ放電膜28が複数形成されている。該トリガ放電膜28は、カーボン系材料等の導電性材料で構成されている。
【0013】
放電電極部18と接合部20を備えた上記蓋部材14は、無酸素銅で構成されている。無酸素銅で構成された放電電極部18は、放電生成時に酸素等の不純ガスを放出することがなく、気密外囲器16内の放電ガス組成に悪影響を与えることがない。
【0014】
上記放電電極部18の表面には、放電開始電圧の安定に効果的なアルカリヨウ化物が含有された絶縁性の被膜30が形成されている。この被膜30は、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化ルビジウム(RbI)等のアルカリヨウ化物の単体又は混合物を、珪酸ナトリウム溶液と純水よりなるバインダーに添加したものを、放電電極部18表面に塗布することによって形成することができる。
この場合、アルカリヨウ化物の単体又は混合物が0.01〜70重量%、バインダーが99.99〜30重量%の配合割合で混合される。また、バインダー中の珪酸ナトリウム溶液と純水との配合割合は、珪酸ナトリウム溶液が0.01〜70重量%、純水が99.99〜30重量%となされる。
【0015】
上記被膜30中に、臭化セシウム(CsBr)、臭化ルビジウム(RbBr)、臭化ニッケル(NiBr2)、臭化インジウム(InBr3)、臭化コバルト(CoBr2)、臭化鉄(FeBr2、FeBr3)等の臭化物の1種類以上を添加すると、より一層、サージ吸収素子10の放電開始電圧の安定化を図ることができる。
尚、塩化バリウム(BaCl)、フッ化バリウム(BaF)、酸化イットリウム(Y2O3)、塩化イットリウム(YCl2)、フッ化イットリウム(YF3)、モリブデン酸カリウム(K2MoO4)、タングステン酸カリウム(K2WO4)、クロム酸セシウム(Cs2CrO4)、酸化プラセオジウム(Pr6O11)、チタン酸カリウム(K2Ti4O9)の1種類以上を、上記臭化物と共に、或いは上記臭化物以外に、上記被膜30中に添加しても、サージ吸収素子10の放電開始電圧の安定化に寄与する。
これら物質は、上記アルカリヨウ化物の単体又は混合物とバインダーとの混合物中に、0.01〜10重量%の配合割合で添加される。
【0016】
尚、アルカリヨウ化物が含有された絶縁性の上記被膜30は、仕事関数が小さく電子放出特性に優れているため放電開始電圧を低下させる作用を有しており、特に、ヨウ化カリウム(KI)を珪酸ナトリウム溶液と純水よりなるバインダーに添加して被膜30を形成した場合に、放電開始電圧の低下作用が顕著である。
この場合、バインダー(珪酸ナトリウム溶液と純水の配合比は1:1)に添加するヨウ化カリウムの配合割合が40重量%を越えると、バインダーに対するヨウ化カリウムの溶解度が飽和となりそれ以上溶解されないため、ヨウ化カリウムの配合割合は、0.1重量%〜40重量%の範囲と成すのが好ましく、ヨウ化カリウムの配合割合が40重量%の場合に、放電開始電圧の低下作用が最も大きくなる。
【0017】
上記気密外囲器16内には、アルゴンより成る放電ガスが、0.3〜5気圧の圧力で封入されている。
このように、気密外囲器16内にアルゴンより成る放電ガスを0.3〜5気圧の圧力で封入したことにより、本発明に係る放電管10を一定の時間間隔で繰り返し動作させた場合における初回の放電開始電圧(初期放電開始電圧)に続く2回目以降の放電開始電圧(追随放電開始電圧)の低下を防止することができる。
【0018】
気密外囲器16内へのアルゴンの封入ガス圧を0.3〜5気圧の範囲とするのは次の理由による。すなわち、封入ガス圧が0.3気圧より低い場合には、気密外囲器16中のガス分子量が少ないため、放電生成時に陽イオンがガス分子と衝突することなく陰極側の放電電極部18に衝突する割合が高くなり、この結果、陰極側の放電電極部18のスパッタ量が増加する。そして、スパッタされた陰極側の放電電極部18の電極材料は、原子状態で飛散し、ガス分子を吸着しつつ気密外囲器16の内壁に付着するため、気密外囲器16内の放電ガス組成を変質させることとなり、その結果、放電開始電圧が不安定化するのである。
一方、封入ガス圧が5気圧より高い場合には、放電電極部18,18の電界集中が生じ易い部分間において低電圧で局所放電が生成されることがあり、放電開始電圧が不安定化する。
従って、アルゴンの封入ガス圧は、上記の通り、0.3〜5気圧の範囲内とするのが適当である。
【0019】
本発明の上記放電管10にあっては、放電電極を兼ねた上記一対の蓋部材14,14間に、当該放電管10の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜28の両端と蓋部材14,14間の微小放電間隙26に電界が集中し、これにより微小放電間隙26に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部18,18間の放電間隙22へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。本発明の放電管10においては、微小放電間隙26に生ずる元来応答速度の速い沿面コロナ放電をトリガ放電として利用するものであるため、高い応答性を実現できるものである。
【0020】
尚、本発明の放電管10の各トリガ放電膜28の両端は、放電電極を兼ねた上記蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて配置されているので、トリガ放電膜28の両端に設けられた微小放電間隙26の双方に、放電電極部18がスパッタされて飛散する電極材料が付着しない限り絶縁劣化を生じることがない。このため、本発明の放電管10は、微小放電間隙76を隔てて一対のトリガ放電膜78,78を対向配置して成る従来の放電管60に比べて、絶縁劣化の発生を抑制することができる。
この場合、トリガ放電膜28が放電電極を兼ねた蓋部材14,14と電気的に接続されていないため微小放電間隙26における電子の放出量は抑制されるが、放電電極部18の表面に、仕事関数が小さく電子放出特性に優れているアルカリヨウ化物が含有された被膜30を形成しているので、高い応答性も確保できる。
【0021】
上記した通り、本発明の放電管10にあっては、気密外囲器16内にアルゴンより成る放電ガスを0.3〜5気圧の圧力で封入したことにより、追随放電開始電圧の低下を生じることがなく、長寿命な放電管を実現することができる。
【0022】
図2は、アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器16内に2気圧で封入して成り、その直流放電開始電圧が800Vに設定されている本発明に係る放電管10を、100ms間隔で動作させた場合の直流放電開始電圧の推移を示すチャートであり、当該チャートに示される通り、この放電管10にあっては、追随放電開始電圧が常に定格の800V程度で安定していることがわかる。
一方、図3は、アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器16内に6気圧で封入して成り、その直流放電開始電圧が800Vに設定されている放電管を、100ms間隔で動作させた場合の直流放電開始電圧の推移を示すチャートであり、当該チャートに示される通り、この放電管の場合には、追随放電開始電圧が定格の800Vより低下する場合が多発し、極めて不安定である。
【0023】
また、図4は、アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器内に2気圧で封入した本発明に係る放電管10と、アルゴン(40%)、ネオン(40%)及びH2(20%)の混合ガスを気密外囲器16内に2気圧で封入した放電管における、放電回数と追随放電開始電圧との関係を示すグラフである。このグラフに示される通り、アルゴン、ネオン及びH2の混合ガスを気密外囲器16内に封入した放電管の場合(図4のグラフB)には、放電回数が40万回に達する前に追随放電開始電圧が低下して使用できなくなるのに対し、本発明の放電管10の場合(図4のグラフA)には、放電回数が100万回を越えても追随放電開始電圧に大きな変化はなく、長寿命化が実現されている。
【0024】
【発明の効果】
本発明に係る放電管にあっては、放電ガスをアルゴンで構成すると共に、該アルゴンを0.3〜5気圧の圧力で気密外囲器内に封入したことにより、追随放電開始電圧の低下を防止することができ、長寿命な放電管を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放電管を示す断面図である。
【図2】アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器内に2気圧で封入した本発明に係る放電管を、100ms間隔で動作させた場合の直流放電開始電圧の推移を示すチャートである。
【図3】アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器内に6気圧で封入した放電管を、100ms間隔で動作させた場合の直流放電開始電圧の推移を示すチャートである。
【図4】アルゴンより成る放電ガスを気密外囲器内に2気圧で封入した本発明に係る放電管と、アルゴン、ネオン及びH2の混合ガスを気密外囲器内に2気圧で封入した放電管における、放電回数と追随放電開始電圧との関係を示すグラフである。
【図5】従来の放電管を示す断面図である。
【符号の説明】
10 放電管
12 ケース部材
14 蓋部材
16 気密外囲器
18 放電電極部
22 放電間隙
26 微小放電間隙
28 トリガ放電膜
30 被膜
Claims (1)
- 無酸素銅で構成された複数の放電電極を放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密外囲器内に封入してなる放電管において、上記放電ガスをアルゴンで構成すると共に、該アルゴンを0.3〜5気圧の圧力で気密外囲器内に封入したことを特徴とする放電管。
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- 2003-06-30 JP JP2003186739A patent/JP2005025953A/ja active Pending
Cited By (2)
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